(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ストレーナ設備
(51)【国際特許分類】
B01D 35/02 20060101AFI20241203BHJP
B01D 35/16 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B01D35/02 A
B01D35/16
(21)【出願番号】P 2021014714
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】今岡 侑太
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-140010(JP,A)
【文献】特開2011-230094(JP,A)
【文献】特表昭58-501460(JP,A)
【文献】特開2009-160537(JP,A)
【文献】特開2005-288311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/05
B01D 35/10-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水口の下流側に設けられて該取水口を介して取り込まれる海水中の固形物を収集する常用側ストレーナと、この常用側ストレーナをバイパスして前記固形物を収集するバイパス側ストレーナと、を備え、
前記常用側ストレーナが設けられた常用系統には、前記常用側ストレーナの入口側に設けられた常用側入口弁と、前記常用側ストレーナの出口側に設けられた常用側出口弁と、を備え、
前記バイパス側ストレーナが設けられたバイパス系統には、前記バイパス側ストレーナの入口側に設けられたバイパス側入口弁と前記バイパス側ストレーナの出口側に設けられたバイパス側出口弁とを備え、
前記常用側出口弁及び前記バイパス側出口弁を介して流出したろ過水を共通のろ過水系統を介して下流側へ送出するストレーナ設備であって、
前記常用側ストレーナは、前記取水口から導入した海水を流入する流入口と、前記ろ過水系統へろ過した海水を流出する流出口と、を筐体の側部に備え、前記
筐体の底部にブロー弁により開閉されるブロー配管が接続され、前記筐体の上部にベント弁により開閉されるベント配管が接続され、
前記筐体の内部に、前記流入口と前記流出口との間を遮るように設けられ、上端部が開口されると共に前記流入口および前記流出口よりも下方にかけて配置されたバケット状フィルタを収容し、
前記
常用側ストレーナの底部に、工水を供給可能とする工水供給管を直接又は前記ブロー配管を介して接続し、
前記ベント配管に捕集かごを接続し
、また、
前記バイパス側ストレーナは、筐体の内部に、略鉛直方向に延設された鉛直流路部と、この鉛直流路部の下端部に接続されて略水平方向へ延設された水平流路部と、を備え、前記水平流路部の一方の端部は閉塞されており、前記筐体の上端部には、前記鉛直流路部の上部と接続し、前記取水口から導入した海水を流入する流入口を備え、前記筐体の側部には、前記水平流路部の他方の端部に接続し、前記ろ過水系統へろ過した海水を流出する流出口を備え、前記水平流路部の前記流出口と対峙する部分に該水平流路部を遮るろ過用フィルタを配置し、
前記水平流路部の前記一方の端部であって、下側角部となる部分に、ブロー弁で開閉されるブロー配管を接続し、このブロー配管に捕集かごを接続した、
ことを特徴とするストレーナ設備。
【請求項2】
前記常用側ストレーナに設けられたベント管に設けられる捕集かごと、前記バイパス側ストレーナに設けられたブロー配管に設けられる捕集かごとは、同じ捕集かごを共用していることを特徴とする
請求項1記載のストレーナ
設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取水口の下流側に設けられて海水中の固形物を収集するためのストレーナ設備に関し、特に、常用側ストレーナと、この常用側ストレーナをバイパスするバイパス側ストレーナとを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所等においては、冷却器の冷却水として海水を利用している。海水は、循環用ポンプを利用して取水口から取り込まれるが、海水中には、貝類等の固形物が含まれるため、海水をストレーナ設備で事前にろ過し、固形物を取り除いた海水を冷却器へ供給するようにしている。
【0003】
代表的なストレーナ設備1としては、
図7に示されるように、常用側ストレーナ20を配置した常用系統2と、この常用側ストレーナ20をバイパスするバイパス側ストレーナ30を配置したバイパス系統3の2系統を有している。各系統には、ストレーナ20,30、入口ライン2a,3a、出口ライン2b.3b、及び排水ライン2e,3eを備え、それぞれの入口ライン2a,3aは原水ライン4から海水が導入され、それぞれの出口ライン2b,3bは合流されてろ過水ライン5を介して冷却器へ導かれる。
常用系統において、入口ライン2aは常用側入口弁2cによって開閉され、出口ライン2bは常用側出口弁2dによって開閉され、排水ライン2eは常用側ブロー弁2fによって開閉される。また、バイパス系統において、入口ライン3aはバイパス側入口弁3cによって開閉され、出口ライン3bはバイパス側出口弁3dによって開閉され、排水ライン3eはバイパス側ブロー弁3fによって開閉される。さらに、ろ過水ライン5は、ろ過水弁5aにより開閉されるようになっている。
【0004】
このようなストレーナ設備1は、通常においては常用系統2だけを利用しているが、一定期間運転すると、常用側ストレーナ20には、貝類等の固形物が溜り、圧力損失が増加する。そこで、常用側ストレーナ20に溜まった固形物を除去するために常用系統2の利用を一時的に休止させ、ろ過水の連続的な供給を確保するためにバイパス系統3に切り換える。また、常用側ストレーナ20の洗浄を行うために、バイパス系統3で生成されたろ過水の一部を常用側ストレーナ20に供給し、逆洗を行うようにしている。なお、逆洗に利用したろ過水は常用系統2の排水ライン2eを介して系外に排出させるようにしている。
また、バイパス側ストレーナ30に溜まった固形物を除去する場合も、同じ要領で、常用系統2で生成されたろ過水の一部をバイパス側ストレーナ30に供給し、逆洗を行うようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなストレーナ設備1を利用して各ストレーナ20.30を逆洗する場合においても、ストレーナに捕獲された固形物の除去が十分に行えない場合が生じている。
例えば、常用側ストレーナ20として、
図8に示されるように、取水口から導入した海水を流入する流入口24と、ろ過した海水を出口ライン2bへ送出する流出口25と、を筐体23の側部に備え、筐体23の内部に、流入口24と流出口25との間を遮るように設けられ、上端が開口されると共に流入口24および流出口25よりも下方に延設されたバケット状フィルタ26を収容し、筐体23の下部にブロー弁2fで開閉されるブロー配管27を接続し、筐体23の上部に空気抜きを行うためのベント弁2kで開閉されるベント配管29を接続する構成においては、逆洗時に、常用側入口弁2cを閉、常用側出口弁2dを開、常用側ブロー弁2fを開とし、逆洗水を流出口25を介して常用側ストレーナ20に供給しても、フィルタはバケット状に形成されているので、バケット状フィルタ26内に溜まった固形物を排出することができない。そこで、逆洗時に常用側ブロー弁を閉止し、筐体23の上部に設けられたベント配管29のベント弁2kを開とし、供給した逆洗水をベント配管29から排出してバケット状フィルタ内を洗浄することも考えられるが、流出口から供給された逆洗水はバケット状フィルタの底部や入口付近を経由せずにそのまま上方へ方向を変えてベント配管へ導かれるため、バケット状フィルタ26の下部に溜まった固形物を浮き上がらせて回収することができず、また流入口付近に溜まった固形物も回収されにくく、逆洗効果は小さいものであった。また、従来のベント配管29は、もともと空気抜きを意図して設けられているため、固形物を捕集する機能は付いていない。
【0007】
また、バイパス側ストレーナ30として、
図9に示されるように、筐体34を水平胴体31とこれに接続された鉛直胴体32とにより形成し、鉛直胴体32の上端部に取水口から導入した海水を流入する流入口37を設け、水平胴体の一端(流入口37より下方に位置する筐体34の側部)にろ過した海水を出口ライン2bへ送出する流出口38を設け、筐体34の内部を略L字状の流路に形成し、流出口38と対峙する水平胴体31の内部にろ過用フィルタ39を配置した構成においては、排水ラインが設けられていない場合は、逆洗を行うことができないため、水平胴体31の流出口38と反対側の端部に設けられた蓋体33を開放させ、ろ過用フィルタ39の手前に捕獲された貝類等の固形物を人力で系外へ掻き出すしかない。
そこで、特許文献1に示すように、排水ラインを設けることが望ましいが、L字状の流路を有するストレーナにおいては、流出口38から逆洗水が供給されると、固形物は流路下部の角部(水平胴体31の蓋体33で閉塞された角部)に集められやすくなるため、従来のように排水ライン(ブロー配管)を水平胴体31の底部に設けた構成では逆洗効果が十分に行えないことが懸念される。
また、バイパス系統に排水ラインを設ける場合でも、固形物などの捕集かごを系統毎に設ける場合には、固形物の捕集かごが系統毎で異なるため、捕集した固形物を廃棄する際に捕集かごを間違えないように配慮する必要があり、また、構成部品が多くなる不都合もある。
【0008】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、常用側ストレーナとバイパス側ストレーナを備えたストレーナ設備において、逆洗効果を大きくすることが可能なストレーナ設備を提供することを主たる課題としている。また、そのようなストレーナ設備を構築する場合でも、各系統において、固形物の捕集を同じ箇所で行えるようにすることで、作業性を良くすると共に構成部品の増加を回避することをも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係るストレーナ設備は、取水口の下流側に設けられて該取水口を介して取り込まれる海水中の固形物を収集する常用側ストレーナと、この常用側ストレーナをバイパスして前記固形物を収集するバイパス側ストレーナと、を備え、
前記常用側ストレーナが設けられた常用系統には、前記常用側ストレーナの入口側に設けられた常用側入口弁と、前記常用側ストレーナの出口側に設けられた常用側出口弁と、を備え、
前記バイパス側ストレーナが設けられたバイパス系統には、前記バイパス側ストレーナの入口側に設けられたバイパス側入口弁と前記バイパス側ストレーナの出口側に設けられたバイパス側出口弁とを備え、
前記常用側出口弁及び前記バイパス側出口弁を介して流出したろ過水を共通のろ過水系統を介して下流側へ送出するストレーナ設備であって、
前記常用側ストレーナは、前記取水口から導入した海水を流入する流入口と、前記ろ過水系統へろ過した海水を流出する流出口と、を筐体の側部に備え、前記筐体の底部又はその近傍にブロー弁により開閉されるブロー配管が接続され、前記筐体の上部にベント弁により開閉されるベント配管が接続され、
前記筐体の内部に、前記流入口と前記流出口との間を遮るように設けられ、上端部が開口されると共に前記流入口および前記流出口よりも下方にかけて配置されたバケット状フィルタを収容し、
前記常用側ストレーナの底部又は底部近傍に、工水を供給可能とする工水供給管を直接又は前記ブロー配管を介して接続し、
前記ベント配管に捕集かごを接続したことを特徴としている。
【0010】
このような構成においては、常用側ストレーナを逆洗洗浄するにあたり、工水供給管を介して工水を常用側ストレーナの底部又はその近傍から筐体内部に供給することで、筐体下部から上方へ向かう流れが形成されるので、バケット状フィルタ内の貝類等を浮かび上がらせ、ベント配管から排出させることが可能となる。このため、バケット状フィルタ内の貝類等を効果的に捕集かごに捕集することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るストレーナ設備は、取水口の下流側に設けられて該取水口を介して取り込まれる海水中の固形物を収集する常用側ストレーナと、この常用側ストレーナをバイパスして前記固形物を収集するバイパス側ストレーナと、を備え、
前記常用側ストレーナが設けられた常用系統には、前記常用側ストレーナの入口側に設けられた常用側入口弁と、前記常用側ストレーナの出口側に設けられた常用側出口弁と、を備え、
前記バイパス側ストレーナが設けられたバイパス系統には、前記バイパス側ストレーナの入口側に設けられたバイパス側入口弁と前記バイパス側ストレーナの出口側に設けられたバイパス側出口弁とを備え、
前記常用側出口弁及び前記バイパス側出口弁を介して流出したろ過水を共通のろ過水系統を介して下流側へ送出するストレーナ設備であって、
前記バイパス側ストレーナは、筐体の内部に、略鉛直方向に延設された鉛直流路部と、この鉛直流路部の下端部に接続されて略水平方向へ延設された水平流路部と、を備え、前記水平流路部の一方の端部は閉塞されており、前記筐体の上端部には、前記鉛直流路部の上部と接続し、前記取水口から導入した海水を流入する流入口を備え、前記筐体の側部には、前記水平流路部の他方の端部に接続し、前記ろ過水系統へろ過した海水を流出する流出口を備え、前記水平流路部の前記流出口と対峙する部分に該水平流路部を遮るろ過用フィルタを配置し、
前記水平流路部の前記一方の端部であって、下側角部となる部分又はその近傍に、ブロー弁で開閉されるブロー配管を接続し、このブロー配管に捕集かごを接続したことを特徴としている。
【0012】
したがって、バイパス側ストレーナを逆洗洗浄するにあたり、水平流路部の一端から逆洗水が供給される場合は、ろ過用フィルタで捕集された貝類等は、水平流路部の鉛直流路部に近い他端部であって、下側の角部となる部分に集められやすくなるが、水平流路部の蓋体で閉塞された他端部の下側の角部となる部分又はその近傍には、ブロー弁で開閉されるブロー配管が接続されているので、ブロー弁を開放することで、貝類等をブロー配管から排出させることが可能となる。このため、筐体内の貝類等を効果的に捕集かごに捕集することが可能となる。
【0013】
以上の常用側ストレーナの構成と、バイパス用ストレーナの構成は、組み合わせて用いられるとよい。
すなわち、本発明に係るストレーナ設備を、
取水口の下流側に設けられて該取水口を介して取り込まれる海水中の固形物を収集する常用側ストレーナと、この常用側ストレーナをバイパスして前記固形物を収集するバイパス側ストレーナと、を備え、
前記常用側ストレーナが設けられた常用系統には、前記常用側ストレーナの入口側に設けられた常用側入口弁と、前記常用側ストレーナの出口側に設けられた常用側出口弁と、を備え、
前記バイパス側ストレーナが設けられたバイパス系統には、前記バイパス側ストレーナの入口側に設けられたバイパス側入口弁と前記バイパス側ストレーナの出口側に設けられたバイパス側出口弁とを備え、
前記常用側出口弁及び前記バイパス側出口弁を介して流出したろ過水を共通のろ過水系統を介して下流側へ送出するストレーナ設備であって、
前記常用側ストレーナは、前記取水口から導入した海水を流入する流入口と、前記ろ過水系統へろ過した海水を流出する流出口と、を筐体の側部に備え、前記筐体の底部にブロー弁により開閉されるブロー配管が接続され、前記筐体の上部にベント弁により開閉されるベント配管が接続され、
前記筐体の内部に、前記流入口と前記流出口との間を遮るように設けられ、上端部が開口されると共に前記流入口および前記流出口よりも下方にかけて配置されたバケット状フィルタを収容し、
前記常用側ストレーナの底部に、工水を供給可能とする工水供給管を直接又は前記ブロー配管を介して接続し、
前記ベント配管に捕集かごを接続し、
前記バイパス側ストレーナは、筐体の内部に、略鉛直方向に延設された鉛直流路部と、この鉛直流路部の下端部に接続されて略水平方向へ延設された水平流路部と、を備え、前記水平流路部の一方の端部は閉塞されており、前記筐体の上端部には、前記鉛直流路部の上部と接続し、前記取水口から導入した海水を流入する流入口を備え、前記筐体の側部には、前記水平流路部の他方の端部に接続し、前記ろ過水系統へろ過した海水を流出する流出口を備え、前記水平流路部の前記流出口と対峙する部分に該水平流路部を遮るろ過用フィルタを配置し、
前記水平流路部の前記一方の端部であって、下側角部となる部分に、ブロー弁で開閉されるブロー配管を接続し、このブロー配管に捕集かごを接続したことを特徴とする構成にするとよい。
【0014】
なお、常用側ストレーナに設けられたベント管に接続される捕集かごと、前記バイパス側ストレーナに設けられたブロー配管に接続される捕集かごとは、同じ捕集かごを共用するとよい。
このような構成においては、それぞれの系統で捕集かごを別々に設ける必要がなくなり、貝類等の固形物の捕集を系統に拘わらず同じ箇所で行うことができるので、捕集した固形物を廃棄する場合に捕集かごを間違えることがなくなり、作業性が良くなり、また、ストレーナ設備の構成部品が多くなる不都合もなくなる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、常用側ストレーナとバイパス側ストレーナを備えたストレーナ設備において、ストレーナの逆洗効果を大きくすることが可能となる。
また、それぞれのストレーナの逆洗時において、貝類等の固形物を捕集する捕集かごを共用することで、固形物の捕集を系統に拘わらず同じ箇所で行うことが可能となり、作業性を良くすると共に構成部品の増加を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係るストレーナ設備の系統概略図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明に係る常用側ストレーナの構成例を示す図であり、
図2(b)は、常用側ストレーナを逆洗する状態を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明に係るバイパス側ストレーナの構成例を示す図であり、
図3(b)は、バイパス側ストレーナを逆洗する状態を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明のストレーナ設備の各弁の動作例を示す表である。
【
図5】
図5(a)は、本発明に係るストレーナ設備の常用側ストレーナで海水をろ過する場合の海水の流れを示す系統図であり、
図5(b)は、常用側ストレーナを逆洗する場合の海水の流れを示す系統図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明に係るストレーナ設備のバイパス側ストレーナで海水をろ過する場合の海水の流れを示す系統図であり、
図6(b)は、バイパス側ストレーナを逆洗する場合の海水の流れを示す系統図である。
【
図7】
図7は、従来のストレーナ設備を示す系統図である。
【
図8】
図8(a)は、従来の常用側ストレーナの構成を示す図であり、
図8(b)は、従来の常用側ストレーナを逆洗する状態を示す図である。
【
図9】
図9(a)は、従来のバイパス側ストレーナの構成を示す図であり、
図9(b)は、従来のバイパス側ストレーナを洗浄する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に本発明に係るストレーナ設備1の概略系統例が示されている。この例において、ストレーナ設備1は、図示しないポンプを介して取水口から導入された海水が供給されるもので、この海水中の貝類等の固形物を回収し、このストレーナ設備でろ過した海水を冷却器へ供給するようにしている。
【0019】
ストレーナ設備1は、通常時に利用される常用側ストレーナ20を配した常用系統2と、常用側ストレーナの洗浄等の運転停止時において利用されるバイパス側ストレーナ30を配したバイパス系統3との2系統から構成されている。
【0020】
常用系統2には、常用側ストレーナ20の入口側に設けられて原水ライン4上の図示しないポンプによって取水口から導入された海水が供給される入口ライン2aと、常用側ストレーナ20の出口側に設けられてこのストレーナでろ過された海水を送出する出口ライン2bと、を有し、入口ライン2aには、このラインを開閉する常用側入口弁2cが設けられ、出口ライン2bには、このラインを開閉する常用側出口弁2dが設けられている。
【0021】
バイパス系統3には、バイパス側ストレーナ30の入口側に設けられて原水ライン4上の前記ポンプによって導入された海水が供給される入口ライン3aと、バイパス側ストレーナ30の出口側に設けられてこのストレーナでろ過された海水を送出する出口ライン3bと、を有し、入口ライン3aには、バイパス側入口弁3cが設けられ、出口ライン3bには、バイパス側出口弁3dが設けられている。各系統の出口ライン2b,3bは、ろ過水ライン5に合流され、このろ過水ライン5を介してろ過された海水(ろ過水)を冷却器へ導くようにしている。なお、ろ過水ライン5は、ろ過水弁5aにより開閉されるようになっている。
【0022】
また、常用系統には、常用側ストレーナ20の海水を排出させる排水ライン2eと、逆洗時に常用側ストレーナに捕獲された固形物を非出させるベントライン2jとが設けられている。
【0023】
排水ライン2eには、第1ブロー弁2fとその下流側に配された第2ブロー弁2gが設けられ、これらブロー弁の間には、工水(工業用水)を供給可能する工水供給ライン2hが接続されている。この工水供給ライン2hは、工水供給弁2iによって開閉されるようになっている。
【0024】
ベントライン2jは、ベント側ストレーナ内の気泡を排出させ、また、海水と共に常用側ストレーナ20に捕獲された固形物を排出させるラインであり、排出された固形物を捕集する捕集かご50に接続されている。このベントライン2jは、ベント弁2kにより開閉されるようになっている。
【0025】
また、バイパス系統には、バイパス側ストレーナ30の海水を排出させると共に逆洗時に固形物を排出させる排出ライン3eが設けられている。この排出ライン3eは、前記捕集かご50に接続され、ブロー弁3fによって開閉されるようになっている。
【0026】
各ストレーナから排出された貝類等の固形物は、海水と共に捕集かごに供給され、この捕集かご50で捕集された後に捕集かごから取り出されて廃棄される。なお、捕集かご50に導かれた海水は、ここで固形物が取り除かれた後に系外へ放出される。
【0027】
このようなストレーナ設備において、常用側ストレーナ20は、
図2(a)に示されるように、有底筒状に形成された胴体21と、この胴体21の上端開口部を閉塞する蓋体22とによって構成された筐体23を備え、この筐体23の側部(周面)には、入口ライン2aを介して取水口から導入した海水を流入する流入口24と、ろ過した海水を出口ライン2bへ送出する流出口25と、が例えば180度の位相をずらして設けられている。
筐体23の内部には、上端が開口された有底筒状のバケット状フィルタ26が配置されている。このバケット状フィルタ26は、流入口24と流出口25との間を遮るように設けられて流入口24から流入された海水の全てを通過させるようにしている。上端の開口部26aは、流入口24と対向するように斜めに形成され、海水中の固形物をバケット状フィルタ26の内部に捕獲しやすくしている。
【0028】
また、筐体23(胴体21)の底部又はその近傍には、排水ラインを構成するブロー配管27が接続されている。このブロー配管27の途中には、工水を供給可能な工水供給ラインを構成する工水供給管28が接続され、この工水供給管28は、工水供給弁2iにより開閉されるようになっている。ブロー配管27の工水供給管28との接続部位と筐体23との間には第1ブロー弁2fが設けられ、工水供給管28との接続部位と開放端との間には第2ブロー弁2gが設けられている。工水供給弁2iを閉、第1及び第2ブロー弁2f,2gを開とすることで、常用側ストレーナ20の内部の海水を系外へ放出させることができ、また、第2ブロー弁2gを閉、工水供給弁2iと第1ブロー弁2fを開とすることで、工水をブロー配管27を介して筐体23(胴体21)の底部又はその近傍から筐体内へ導入させることができるようになっている。
【0029】
さらに、筐体23の上端部(蓋体22)には、ベント弁2kにより開閉されるベントライン2jを構成するベント配管29が接続されている。このベント配管29は、常用側ストレーナ20に捕獲された固形物を排出させることができる程度の口径(例えば、100A)に形成されている。このベント配管29から排出された固形物は、前記捕集かご50に導かれる。
【0030】
なお、上述の例では、工水供給管28を常用側ストレーナ20の底部又は底部近傍にブロー配管27を介して接続するようにしたが、工水供給管28を常用側ストレーナ20(筐体23)の底部又は底部近傍に直接接続させるようにしてもよい。
【0031】
これに対して、バイパス側ストレーナ30は、
図3(a)に示されるように、両端が開放された水平胴体31とこの水平胴体31に対して略垂直に接続された鉛直胴体32とを備え、水平胴体31の一方の開放端を蓋体33で閉塞して略L字状の筐体34を有している。筐体34の内部には、略鉛直方向に延設された鉛直流路部35と、この鉛直流路部35の下端部に接続されて略水平方向へ延設された水平流路部36と、を備えた略L字状の流路が形成されている。筐体34の上端部、すなわち鉛直胴体32(鉛直流路部35)の上部には、取水口から導入した海水を流入する流入口37が形成され、筐体34の水平胴体31(水平流路部36)の蓋体33で閉塞された側と反対側の端部には、ろ過した海水を出口ライン3bへ送出する流出口38が形成されている。そして、水平流路の流出口38の手前には、この水平流路を遮るろ過用フィルタ39が下端部を上端部よりも上流側に位置させるように斜めに配置されている。
【0032】
そして、前記水平流路部36の前記鉛直流路部35に近い蓋体33で閉塞された端部であって、下側の角部となる部分又はその近傍に、ブロー弁3fで開閉される前記排水ライン3eを構成するブロー配管40の一端が接続されている。このブロー配管40の他端は前記捕集かご50が接続されている。
【0033】
以上の構成において、常用側ストレーナを通常運転する場合には、
図4に示すように、常用側入口弁2cを開、常用側出口弁2dを開、第1ブロー弁2fを閉、第2ブロー弁2gを閉、工水供給弁2iを閉、ベント弁2kを開(空気抜き時)又は閉、バイパス側入口弁3cを閉、バイパス側出口弁3dを閉、バイパス側ブロー弁3fを閉、ろ過水弁5aを開とする。
【0034】
すると、
図5(a)に示されるように、取水口から導入された海水は、常用側ストレーナの流入口24から筐体内に導入され、バケット状フィルタ26を通過した後に流出口25から流出されて冷却器へ導かれる。このため、海水に混在する固形物は、バケット状フィルタ26に捕獲される。
【0035】
所定期間経過すると、固形物が流入口付近やバケット状フィルタ26の内部(特に底部)に蓄積されるため、これら固形物の除去が必要となってくる。そこで、常用側ストレーナ20に捕獲された固形物を逆洗にて排出させる。
この場合には、
図4に示すように、常用側入口弁2cを閉、常用側出口弁2dを開、第1ブロー弁2fを開、第2ブロー弁2gを閉、工水供給弁2iを開、ベント弁2kを開、バイパス側入口弁3cを開、バイパス側出口弁3dを開、バイパス側ブロー弁3fを閉、ろ過水弁5aを開とする。
【0036】
すると、
図5(b)に示されるように、バイパス側ストレーナ30でろ過された海水の一部が、バイパス側出口弁3d、常用側出口弁2dを介して常用側ストレーナ20の流出口25から筐体内に供給され、この逆洗水により常用側ストレーナ20の内部にベント配管29へ向かう流れが形成される。
ところが、この逆洗水は、筐体内に流入した直後に上方へ向きを変えてベント配管29へ導かれるので、この逆洗水のみではバケット状フィルタ26の底部に捕獲されている固形物や流入口付近に蓄積されている固形物を効果的にベント配管29へ導くことができない。
【0037】
しかし、逆洗時には、工水供給管28から供給される工水がブロー配管27を介して筐体23の底部又はその近傍から筐体23内へ導入させるので、
図2(b)に示されるように、バケット状フィルタ26の下部に溜まった固形物を、この工水によって浮き上がらせ、前記逆洗水の流れと相まって浮き上がらせた固形物をベント配管29へ導くことが可能となる。また、筐体下部から上方へ流れる工水により流入口付近の洗浄も効果的に行うことが可能となる。
このため、バケット状フィルタ26に捕獲された固形物(流出口付近のみならず底部や流入口付近の固形物)を効果的にベント配管29を介して捕集かご50に捕集させることが可能となる。
【0038】
なお、工水の供給は、逆洗水の供給と同時に行う例を示したが、逆洗水と工水を交互に供給してバケット状フィルタ26に捕獲されている固形物をベント配管29へ導くようにしてもよい。
【0039】
次に、常用側ストレーナの利用を一時的に停止させてバイパス側ストレーナを利用するには、
図4に示すように、常用側入口弁2cを閉、常用側出口弁2dを閉、第1ブロー弁2fを閉、第2ブロー弁2gを閉、工水供給弁2iを閉、ベント弁2kを開(空気抜き時)又は閉、バイパス側入口弁3cを開、バイパス側出口弁3dを開、バイパス側ブロー弁3fを閉、ろ過水弁5aを開とする。
【0040】
すると、
図6(a)に示されるように、取水口から導入された海水は、バイパス側ストレーナ30の流入口37から筐体内に導入され、ろ過用フィルタ39を通過した後に流出口38から流出されて冷却器へ導かれる。このため、海水に混在する固形物は、
図3(a)に示されるように、ろ過用フィルタ39に捕獲され、このろ過用フィルタ39の手前に蓄積される。
【0041】
また、バイパス側ストレーナ30のろ過用フィルタ39に捕獲された固形物を逆洗にて排出する場合には、
図4に示すように、常用側入口弁2cを開、常用側出口弁2dを開、第1ブロー弁2fを閉、第2ブロー弁2gを閉、工水供給弁2iを閉、ベント弁2kを開(空気抜き時)又は閉、バイパス側入口弁3cを閉、バイパス側出口弁3dを開、バイパス側ブロー弁3fを開、ろ過水弁5aを開とする。
【0042】
すると、
図6(b)に示されるように、常用側ストレーナ20でろ過された海水の一部が、常用側出口弁2d、バイパス側出口弁3dを介してバイパス側ストレーナ30の流出口38から筐体内に供給され、この逆洗水によりバイパス側ストレーナ30の内部にブロー配管40へ向かう流れが形成される。
【0043】
このため、
図3(b)に示されるように、この逆洗水の水圧によってバイパス側ストレーナ30の水平流路部36のろ過用フィルタ39と蓋体33との間に蓄積された固形物は、蓋体33に向かって押し寄せられ、特に、水平流路部36の蓋体33の内側の下側角部に押し寄せられるが、バイパス側ストレーナ30には、水平流路部36の鉛直流路部35に近い端部であって、下側の角部となる部分又はその近傍に、ブロー配管40が接続されているので、蓋体33の内側の下部角部に押し寄せられた固形物をブロー配管40にスムーズに導くことができ、このブロー配管40を介して捕集かご50に捕集させることが可能となる。
したがって、逆洗により固形物を効果的に排出させることができるので、水平流路部を閉塞する蓋体33を外してストレーナ内部に残った固形物を掻き出す清掃作業が不要となり、清掃費用を削減することが可能となる。
【0044】
また、上述した構成においては、捕集かご50を常用側ストレーナ20とバイパス側ストレーナ30で共用する構成としたので、それぞれのストレーナ毎に捕集かごを設ける必用がなくなり、捕集かご内の固形物を廃棄する場合に、捕集かごを間違える不都合がなく、また、ストレーナ設備の部品点数の増加を回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 ストレーナ設備
2c 常用側入口弁
2d 常用側出口弁
3c バイパス側入口弁
3d バイパス側出口弁
5a ろ過水弁
20 常用側ストレーナ
24 流入口
25 流出口
26 バケット状フィルタ
27 ブロー配管
28 工水供給管
29 ベント配管
30 バイパス側ストレーナ
35 鉛直流路部
36 水平流路部
37 流入口
38 流出口
39 ろ過用フィルタ
40 ブロー配管
50 捕集かご