(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電気接続クリップ
(51)【国際特許分類】
H01R 11/24 20060101AFI20241203BHJP
H01H 85/02 20060101ALI20241203BHJP
H01R 13/684 20110101ALI20241203BHJP
【FI】
H01R11/24
H01H85/02 S
H01R13/684
(21)【出願番号】P 2021015551
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 真稔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和文
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-003093(JP,U)
【文献】米国特許第06162098(US,A)
【文献】実開昭53-131592(JP,U)
【文献】特開2009-301818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R11/00-11/32
H01H85/02
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口する絶縁筒と、
基部が前記絶縁筒の一端の開口に取り付けられ、先端が開閉可能な導電性のクリップ本体と、
前記絶縁筒の内側から前記絶縁筒の外側に延び出たリード線と、
前記絶縁筒の他端の開口に取り付けられるヒューズホルダと、
前記ヒューズホルダに保持され、前記ヒューズホルダの導体によって前記クリップ本体と前記リード線との間に直列接続されるヒューズと、を備え、
前記ヒューズホルダが、
開口部を有し、その開口部が前記絶縁筒の他端の開口から
突出して露出
するように前記絶縁筒の他端の開口に嵌め込まれ、前記ヒューズが収納される容器と、
前記容器に着脱可能に装着されて前記容器の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、
前記クリップ本体の基部及び前記リード線が前記容器に接続される
電気接続クリップ。
【請求項2】
前記リード線が前記絶縁筒の一端の開口から前記クリップ本体の先端の方へ延び出ている
請求項1に記載の電気接続クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
計器用変圧器等の電気機器を点検し或いは監視するべく、電気機器の端子を配線によって計測器に接続し、計測器によって電圧又は電流を計測することが行われる。計測器に短絡又は地絡が発生すると、計測器に接続された電気機器に悪影響を及ぼす。そのため、計測器から電気機器までの配線の中途部にヒューズを設けて、短絡又は地絡が発生した場合に、ヒューズが切断されることによって過大電流が電気機器に流れないようにする。ところが、配線の中途部にヒューズを設けると、配線長が長くなってしまう。また、電気機器の端子からヒューズまでの区間が電気的に保護されない。そこで、例えば特許文献1,2に開示されたヒューズ付きのワニ口クリップを配線の端部に接続し、電気機器の端子をワニ口クリップによって挟み込み、もって電気機器の端子と計測器をワニ口クリップ及び配線によって接続することが考えられる。
【0003】
特許文献1,2の記載の技術では、ワニ口クリップの柄部にヒューズホルダが設けられ、ヒューズがそのヒューズホルダに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭50-3093号公報
【文献】実開昭58-24980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1,2の記載の技術では、配線がヒューズホルダの蓋体に接続されているため、リード線の取り扱いに次のような問題がある。
第1に、蓋体を掴んで蓋体を取り外す際にリード線が邪魔になって、蓋体を取り外しづらくなってしまう。第2に、取り外された蓋体と一緒にリード線が紛失してしまう虞がある。第3に、電子機器の端子をワニ口クリップで挟み込んだ状態で蓋体を取り外すと、リード線が邪魔になって、例えばリード線及び蓋体の置き場に困ることもある。第4に、リード線が蓋体の頭部からワニ口クリップのクリップ片の延長方向に延び出ているため、リード線が絡みやすい上、リード線をワニ口クリップに巻き付けて片付ける際に、リード線の蓋体側の端部が無理に曲げられて断線する虞もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、リード線の取り扱い上の問題を解消できる電気接続クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、電気接続クリップは、両端が開口する絶縁筒と、基部が前記絶縁筒の一端の開口に取り付けられ、先端が開閉可能な導電性のクリップ本体と、 前記絶縁筒の内側から前記絶縁筒の外側に延び出たリード線と、前記絶縁筒の他端の開口に取り付けられるヒューズホルダと、前記ヒューズホルダに保持され、前記ヒューズホルダの導体によって前記クリップ本体と前記リード線との間に直列接続されるヒューズと、を備え、前記ヒューズホルダが、開口部を有し、その開口部が前記絶縁筒の他端の開口から突出して露出するように前記絶縁筒の他端の開口に嵌め込まれ、前記ヒューズが収納される容器と、前記容器に着脱可能に装着されて前記容器の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記クリップ本体の基部及び前記リード線が前記容器に接続される。
【0008】
以上によれば、クリップ本体の基部及びリード線がヒューズホルダの容器に接続されるため、ヒューズホルダの蓋体を容器から取り外す際に、リード線が蓋体の取り外し操作の邪魔にならない。また、蓋体が容器から取り外されても、リード線がクリップ本体側に残るため、リード線の紛失を防止できる。クリップ本体を端子等に固定した状態で蓋体を取り外しても、リード線の置き場に困らない。また、リード線が蓋体に接続されるのではなく、容器に接続されるとともに絶縁筒の内側から外側に延び出ているため、リード線をクリップ本体に巻き付けてクリップ本体に片付ける際に、リード線の絶縁筒から出る部分を大きく曲げる必要がなく、リード線の断線を抑えられる。
よって、リード線の取り扱い上の問題が解消される。
【0009】
好ましくは、前記リード線が前記絶縁筒の一端の開口から前記クリップ本体の先端の方へ延び出ている。
【0010】
以上によれば、リード線をクリップ本体に巻き付けてクリップ本体に片付ける際に、リード線の絶縁筒から出る部分を大きく曲げる必要がなく、リード線の断線を抑えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リード線の取り扱い上の問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているところ、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
[電気接続クリップ]
図1は電気接続クリップの側面図であり、
図2は電気接続クリップの断面図である。
この電気接続クリップは、電気機器の端子等を挟んで、端子等を他の機器(例えば計測器)に電気的に導通させる。電気接続クリップは、クリップ本体10、絶縁性カバー20、連結プラグ30、絶縁筒40、ヒューズホルダ50、ヒューズ60及びリード線70を備える。
【0015】
[クリップ本体]
クリップ本体10は、金属材料からなるとともに、導電性を有する。クリップ本体10は、その中間部よりも先端側の部分(以下、挟持部という。)が開閉するように設けられているとともに、その挟持部がばね14によって閉じるように付勢されている。クリップ本体10の挟持部が閉じて、端子等を挟み込む。クリップ本体10の中間部よりも基端側の部分を基部という。
【0016】
クリップ本体10は第1クリップ片11、第2クリップ片12、枢軸13及びばね14を有する。
【0017】
第2クリップ片12の中間部が枢軸13によって第1クリップ片11の中間部に回転可能に連結され、第1クリップ片11及び第2クリップ片12のうち枢軸13から先端側の部分が枢軸13によって開閉可能とされている。第1クリップ片11及び第2クリップ片12のうち枢軸13から先端側の部分がクリップ本体10の挟持部に相当する。第1クリップ片11及び第2クリップ片12のうち枢軸13から基端側の部分がクリップ本体10の基部に相当する。
【0018】
ばね14はトーションスプリングである。このばね14が枢軸13に巻き掛けられ、ばね14の両端部が第1クリップ片11及び第2クリップ片12の内側からこれらの基部に当てられている。ばね14は第1クリップ片11及び第2クリップ片12の先端側の部分が開く方向にこれらクリップ片11,12を付勢する。
【0019】
第1クリップ片11及び第2クリップ片12の先端側の部分であって互いに向き合う内側部分には、鋸歯状の歯11a,12aが形成されている。クリップ片11,12の先端側の部分が閉じると、これら歯11a,12aが噛み合う。
【0020】
第1クリップ片11の基部には、後述の連結プラグ30を弾性的に咥え込む筒状保持部11bが形成されている。
【0021】
[絶縁性カバー]
絶縁性カバー20は、樹脂材料からなるとともに、絶縁性を有する。絶縁性カバー20は、クリップ本体10の挟持部の内側部分、つまりクリップ片11,12の歯11a,12aを露出させるようにしてクリップ本体10を覆う。絶縁性カバー20は、その先端側の部分がクリップ本体10の挟持部と一緒に開閉するように設けられている。ここで、絶縁性カバー20のうちクリップ本体10の基部を覆う部分を柄部という。
【0022】
絶縁性カバー20は第1カバー21及び第2カバー22を有する。第1カバー21は、第2クリップ片12に向き合う第1クリップ片11の先端側の部分以外を除いて第1クリップ片11を覆うとともに、第1クリップ片11と一体に組み付けられている。第2カバー22は、第1クリップ片11に向き合う第2クリップ片12の先端側の部分以外を除いて第2クリップ片12を覆うとともに、第2クリップ片12と一体に組み付けられている。第2クリップ片12の中間部が第1クリップ片11の中間部に回転可能に連結されることによって、第2カバー22の中間部が第1カバー21の中間部に部分的に嵌め合い、絶縁性カバー20がクリップ本体10と一緒に開閉するように設けられる。第1カバー21及び第2カバー22の基端部21a,22aが摘まみ用又は握り用の柄部となる。
【0023】
第1カバー21の基端部21aには、筒状保持部11bを囲う挿入筒21bが形成されている。
【0024】
[連結プラグ]
導体としての連結プラグ30はクリップ本体10に電気的に接続されている。具体的には、連結プラグ30が筒状保持部11bに着脱可能に嵌め合い、第1クリップ片11に電気的に接続されている。連結プラグ30の一部が挿入筒21bから後述のヒューズホルダ50の方へ突き出ている。
【0025】
[絶縁筒]
絶縁筒40は、電気絶縁性を有するように、ゴム又は樹脂からなる。絶縁筒40は、両端41,42が開口するよう筒状に設けられている。第1クリップ片11の基部となる筒状保持部11b及び第1カバー21の挿入筒21bが絶縁筒40の一端41の開口に嵌め込まることによってその開口が弾性的に拡径し、これにより絶縁筒40がその弾性力によって挿入筒21bを締め付けて固定する。これにより、第1クリップ片11の基部が絶縁筒40の一端の開口に装着される。補助的に止め輪が絶縁筒40の外側から絶縁筒40を挿入筒21bに締め付けてもよい。
【0026】
挿入筒21bが絶縁筒40の一端41の開口に嵌め込まれた状態において、連結プラグ30のうち挿入筒21bからヒューズホルダ50の方へ突き出た部分は絶縁筒40によって保護されている。
【0027】
[ヒューズ]
ヒューズ60は、両端に口金を有するとともに、これら口金間を結ぶヒューズ線を内部に有するガラス管ヒューズである。
【0028】
[ヒューズホルダ]
ヒューズホルダ50は、ヒューズ60を収納して保持するとともに、ヒューズホルダ50の導体51a,51b,52aによってヒューズ60を連結プラグ30とリード線70の間に電気的に直列接続する。ヒューズホルダ50が絶縁筒40の他端42の開口に装着されている。なお、連結プラグ30が第1クリップ片11の基部となる筒状保持部11bに接続されているため、ヒューズ60がヒューズホルダ50の導体51a,51b,52aによって筒状保持部11bとリード線70との間に電気的に直列接続されていることになる。
【0029】
ヒューズホルダ50は容器51及び蓋体52を有する。
容器51は、ヒューズ60が収納される収納空間を内側に有するとともに、その収納空間に通じる開口部を頂部に有する。容器51はその底部から絶縁筒40の他端42の開口に嵌め込まれ、容器51の頂部に形成された前記開口部が絶縁筒40の他端42の開口から絶縁筒40の外側に露出する。そのため、ヒューズ60を容器51の開口部から容器51の収納空間に挿入することができる。また、絶縁筒40の他端42の開口が容器51によって弾性的に拡径し、これにより絶縁筒40がその弾性力によって容器51を締め付けて固定する。補助的に止め輪が絶縁筒40の外側から絶縁筒40を容器51に締め付けてもよい。
【0030】
ヒューズ60が容器51に収納されると、ヒューズ60の一端の口金が容器51に設けられた第1導体51aに接触する。この第1導体51aは連結プラグ30に接続されている。
【0031】
蓋体52は、ヒューズ60が差し込まれる空洞を内側に有するとともに、その空洞に通じる開口部を底部に有する。蓋体52の外周に雄ねじが形成され、容器51の内周に雌ねじが形成されている。蓋体52の底部の開口部が容器51の頂部の開口部に向けられた状態で蓋体52の雄ねじと容器51の雌ねじとが互いに嵌まり合い、蓋体52が容器51に対して着脱可能とされている。
【0032】
ヒューズ60が蓋体52に差し込まれると、ヒューズ60の他端の口金が蓋体52に設けられた第2導体52aに接触する。蓋体52が容器51に装着されると、蓋体52の第2導体52aが容器51に設けられた第3導体51bに接触する。この第3導体51bはリード線70に接続されている。そのため、順にリード線70、第3導体51b、第2導体52a、ヒューズ60、第1導体51a、連結プラグ30及びクリップ本体10が直列接続されている。
【0033】
[リード線]
リード線70は、可撓性を有するビニル絶縁電線であって、金属線を絶縁シースで被覆したものである。リード線70は絶縁筒40の一端41から絶縁筒40内に挿入されて、ヒューズホルダ50の容器51の第3導体51bに接続されている。リード線70は絶縁筒40の一端41から絶縁筒40の外へ延び出て、他の機器(例えば計測器)まで配線される。リード線70が絶縁筒40の一端41から延び出る方向は、クリップ本体10の先端に向かう向きである。
【0034】
[使用方法]
ヒューズホルダ50の蓋体52を容器51から取り外す。そして、ヒューズ60を容器51に収納し、蓋体52を容器51に装着する。
次に、クリップ本体10によって計器用変圧器等の電気機器の端子を挟み込み、リード線70を計測器に接続する。そして、電気機器の電圧又は電流を計測器によって計測する。
【0035】
短絡又は地絡等により過大電流が発生すると、ヒューズ60のヒューズ線が切断される。そのため、電気機器及び計測器を保護することができる。
【0036】
なお、電気接続クリップの用途は2体の物(例えば電気機器、端子、配線等)の電気的な接続に用いるのであれば、計器用変圧器と計測器との電気的な接続に限るものでない。
【0037】
[有利な効果]
(1) ヒューズホルダ50がクリップ本体10の近くに設けられているため、ヒューズ60からクリップ本体10の挟持部までの電流経路の長さが短く、電気的に保護されない区間を最小限に抑えることができる。また、電気機器の端子から計測器までの電流経路を短くすることができる。
【0038】
(2) 第1クリップ片11の基部が連結プラグ30を介して容器51の第1導体51aに接続され、リード線70が容器51の第3導体51bに接続されているため、蓋体52を容器51から取り外す際に、リード線70が蓋体52の取り外し操作の邪魔にならない。
【0039】
(3) 蓋体52が容器51から取り外されても、リード線70がクリップ本体10側に残るため、リード線70の紛失を防止できる。また、電気機器の端子をクリップ本体10により挟み込んだ状態で蓋体52を容器51から取り外しても、リード線70の置き場に困らない。
【0040】
(4) リード線70は、蓋体52に接続されるのではなく、容器51の第3導体51bに接続されている。そして、そのリード線70が絶縁筒40の内側から外側にクリップ本体10の先端の方へ延び出ているため、リード線70をクリップ本体10に巻き付けてクリップ本体10に片付ける際に、リード線70の絶縁筒40から出る部分を大きく曲げる必要がなく、リード線70の断線を抑えられる。
【0041】
(5) 連結プラグ30を用いたため、容器51の第1導体51aとクリップ本体10との電気的な接続を容易に取れる。
【0042】
(6) 連結プラグ30が絶縁筒40の内側に隠れるため、連結プラグ30を通じた短絡等を防止できる。また、連結プラグ30が絶縁筒40によって保護される。リード線70と容器51の第3導体51bとの接続部も絶縁筒40によって保護される。
【符号の説明】
【0043】
10…クリップ本体
40…絶縁筒
50…ヒューズホルダ
51…容器
52…蓋体
51a,51b,52a…導体
60…ヒューズ
70…リード線