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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】画像処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20241203BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20241203BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20241203BHJP
【FI】
A61B6/46 506Z
A61B6/00 550D
A61B6/50 500E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021017378
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120469
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 知晃
(72)【発明者】
【氏名】和田 恒
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/110058(WO,A1)
【文献】特開2010-240096(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080082(WO,A1)
【文献】特開2015-231438(JP,A)
【文献】特開2018-169801(JP,A)
【文献】特開2007-087271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0274585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/00 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンモグラフィー画像から乳房形状に関する特徴量を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記乳房形状に関する特徴量に基づいて、予め定められた複数種類のシェーマ画像の中から前記マンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を選択する選択手段と、を備え
前記算出手段は、前記マンモグラフィー画像が、内外斜位方向のMLO画像の場合、前記マンモグラフィー画像に含まれる乳房のボリュームに関する特徴量及び乳頭の位置に関する特徴量を算出し、前記マンモグラフィー画像が、頭尾方向のCC画像の場合、前記マンモグラフィー画像に含まれる乳房のボリュームに関する特徴量を算出する画像処理装置。
【請求項2】
前記乳房のボリュームに関する特徴量は、前記マンモグラフィー画像における乳房基底ラインの長さに対する乳頭から前記乳房基底ラインに下ろした垂線の長さの比率である請求項に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記乳頭の位置に関する特徴量は、前記マンモグラフィー画像における乳房基底ラインの長さに対する、乳頭から前記乳房基底ラインに下ろした垂線と前記乳房基底ラインとの交点と前記乳房基底ラインの下端との長さの比率である請求項又はに記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記選択手段により選択されたシェーマ画像を出力する出力手段を備える請求項1~のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
コンピューターを、
マンモグラフィー画像から乳房形状に関する特徴量を算出する算出手段、
前記算出手段により算出された前記乳房形状に関する特徴量に基づいて、予め定められた複数種類のシェーマ画像の中から前記マンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を選択する選択手段、
として機能させ
前記算出手段は、前記マンモグラフィー画像が、内外斜位方向のMLO画像の場合、前記マンモグラフィー画像に含まれる乳房のボリュームに関する特徴量及び乳頭の位置に関する特徴量を算出し、前記マンモグラフィー画像が、頭尾方向のCC画像の場合、前記マンモグラフィー画像に含まれる乳房のボリュームに関する特徴量を算出するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、乳房X線撮影によりMLO(Medio-Lateral Oblique(内外斜位方向))及びCC(Cranio-Caudal(頭尾方向))のマンモグラフィー画像を取得して専門医により読影することが行われている。読影により検出された病変の位置は、読影者がマンモグラフィー画像と標準的な乳房形状のシェーマ画像(乳房模式図)を比較しながらシェーマ画像上にマーキングして、読影レポートに添付している。
【0003】
また、非特許文献1には、標準的なシェーマ画像ではなく、マンモグラフィー画像から乳房形状を画像認識して個々の乳房形状を表したシェーマ画像を作成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】富士フィルムメディカル株式会社,“高精細デジタルマンモグラフィ画像を高速表示 画像表示からレポート作成までの一連のワークフローを1台でサポート マンモグラフィ専用画像診断ワークステーション「AMULET Bellus(アミュレット べラス)」新発売”,[online],[令和3年1月18日検索],インターネット <URL:http://fms.fujifilm.co.jp/news/articlenr_130307.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乳房形状は個人差が大きいため、標準的なシェーマ画像を用いると、マンモグラフィー画像における乳房形状と標準的なシェーマ画像の乳房形状とが大きく異なってしまう場合がある。この場合、マンモグラフィー画像上の病変位置がシェーマ画像のどこに対応しているのかを把握するのに手間がかかる。
一方、非特許文献1の技術は、個々のマンモグラフィー画像の乳房形状を表したシェーマ画像を得ることができるが、マンモグラフィー画像は乳房を圧迫して撮影するため、同じ被検者の乳房であっても撮影ごとにマンモグラフィー画像上の乳房形状が異なる。そのため、同じ被検者の乳房であっても撮影ごと(マンモグラフィー画像ごと)にシェーマ画像が異なるものとなってしまい、例えば、今回撮影されたマンモグラフィー画像に基づいて生成されたシェーマ画像上で過去に検出された病変位置の対応が取りづらい等の不都合が生じる場合があり、好ましくない。
【0006】
本発明の課題は、同じ被検者に関してマンモグラフィー画像の撮影ごとに異なるシェーマ画像が提供されることなく、マンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の画像処理装置は、
マンモグラフィー画像から乳房形状に関する特徴量を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記乳房形状に関する特徴量に基づいて、予め定められた複数種類のシェーマ画像の中から前記マンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を選択する選択手段と、
を備え
前記算出手段は、前記マンモグラフィー画像が、内外斜位方向のMLO画像の場合、前記マンモグラフィー画像に含まれる乳房のボリュームに関する特徴量及び乳頭の位置に関する特徴量を算出し、前記マンモグラフィー画像が、頭尾方向のCC画像の場合、前記マンモグラフィー画像に含まれる乳房のボリュームに関する特徴量を算出する
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、
前記乳房のボリュームに関する特徴量は、前記マンモグラフィー画像における乳房基底ラインの長さに対する乳頭から前記乳房基底ラインに下ろした垂線の長さの比率である。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項又はに記載の発明において、
前記乳頭の位置に関する特徴量は、前記マンモグラフィー画像における乳房基底ラインの長さに対する、乳頭から前記乳房基底ラインに下ろした垂線と前記乳房基底ラインとの交点と前記乳房基底ラインの下端との長さの比率である。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載の発明において、
前記選択手段により選択されたシェーマ画像を出力する出力手段を備える。
【0012】
請求項に記載の発明のプログラムは、
コンピューターを、
マンモグラフィー画像から乳房形状に関する特徴量を算出する算出手段、
前記算出手段により算出された前記乳房形状に関する特徴量に基づいて、予め定められた複数種類のシェーマ画像の中から前記マンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を選択する選択手段、
として機能させ
前記算出手段は、前記マンモグラフィー画像が、内外斜位方向のMLO画像の場合、前記マンモグラフィー画像に含まれる乳房のボリュームに関する特徴量及び乳頭の位置に関する特徴量を算出し、前記マンモグラフィー画像が、頭尾方向のCC画像の場合、前記マンモグラフィー画像に含まれる乳房のボリュームに関する特徴量を算出する
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同じ被検者に関してマンモグラフィー画像の撮影ごとに異なるシェーマ画像が提供されることなく、マンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態における医用画像システムの全体構成例を示す図である。
図2図1の画像処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3図2の制御部により実行されるシェーマ画像選択処理を示すフローチャートである。
図4】MLO画像における乳房形状に関する特徴量の算出手法を説明するための図である。
図5】CC画像における乳房形状に関する特徴量の算出手法を説明するための図である。
図6】分類1~6のそれぞれに対応するMLO画像、CC画像のシェーマ画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されている。そのため、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
(医用画像システム100の構成)
まず、本発明の画像処理装置の一実施形態である画像処理装置2を含む医用画像システム100の構成を説明する。
図1に、本実施形態における医用画像システム100のシステム構成を示す。
図1に示すように、医用画像システム100は、マンモグラフィー装置1、画像処理装置2、サーバー装置3、画像表示装置4を備えて構成されている。これら各装置1~4は、LAN(Local Area Network)等の医療施設内で構築された通信ネットワークNを介して相互にデータを送受信可能に接続されている。なお、各装置の台数は、特に限定されない。
【0017】
マンモグラフィー装置1は、乳房をX線撮影してデジタルのマンモグラフィー画像(マンモグラフィー画像データ)を生成し、画像処理装置2及びサーバー装置3に送信するX線撮影装置である。
なお、マンモグラフィー装置1は、生成した各マンモグラフィー画像に付帯させる各種情報、例えば、患者情報や検査情報を外部から入力可能であるとともに、自動生成することもできる。患者情報には、患者(被検者)を識別するための患者識別情報(例えば、患者ID)、患者の名前、性別、生年月日等の情報が含まれる。検査情報は、検査を識別するための検査識別情報(例えば、検査ID)、検査日時、検査条件(検査部位、側性(左、右)、方向(例えば、頭尾方向(CC)、内外斜位方向(MLO))、モダリティ種等の情報が含まれる。なお、本実施形態において、検査IDは、同一患者のマンモグラフィー検査で取得される一連の画像(左右2枚のMLO画像、CC画像)は同じ検査IDが付与されて管理されるものとする。マンモグラフィー装置1は、生成されたマンモグラフィー画像に上記患者情報や検査情報、画像を識別するためのUID(Unique ID)等を付帯情報として付加して通信ネットワークNを介して画像処理装置2及びサーバー装置3へ送信する。
【0018】
画像処理装置2は、予め用意された複数種類のシェーマ画像の中からマンモグラフィー装置1で生成されたマンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を選択し、選択されたシェーマ画像をマンモグラフィー画像のUIDに対応付けてサーバー装置3に送信するコンピューターである。
【0019】
図2に、画像処理装置2の機能構成例を示す。図2に示すように、画像処理装置2は、制御部21、操作部22、表示部23、記憶部24、通信部25、を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0020】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部21のCPUは、記憶部24に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。例えば、制御部21は、後述するシェーマ画像選択処理を実行することで、算出手段、選択手段として機能する。
【0021】
操作部22は、文字入力キー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部21に出力する。
【0022】
表示部23は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
【0023】
記憶部24は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリ等で構成されている。記憶部24には、前述のように各種プログラムが記憶されている。
また、記憶部24には、乳房形状の異なる複数種類のシェーマ画像(シェーマ画像の識別情報及び画像データ)、及び各シェーマ画像に対応する乳房形状の分類の情報(本実施形態では分類1~6)が記憶されている。
【0024】
通信部25は、LANカード等により構成され、スイッチングハブを介して通信ネットワークNに接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0025】
サーバー装置3は、クライアントである画像表示装置4とともにPACS(Picture Archiving and Communication System)を構成している。サーバー装置3は、制御部、操作部、表示部、通信部、画像DB351を有する記憶部等を備えて構成される。サーバー装置3は、マンモグラフィー装置1で生成されたマンモグラフィー画像を付帯情報(UID、患者情報や検査情報)、及び当該マンモグラフィー画像に対応するシェーマ画像と対応付けて画像DB351に記憶し、管理する。また、サーバー装置3は、画像表示装置4からの指示に応じて、読影対象の検査をユーザーが選択するための検査リスト画面、選択された検査のマンモグラフィー画像を画像DB351から読み出して表示するためのビューアー画面、表示されたマンモグラフィー画像に対応するシェーマ画像を表示して読影レポートの入力を受け付けるレポート画面等を画像表示装置4に表示させる。そして、画像表示装置4から入力された読影レポートを検査情報に対応付けて画像DB351に記憶させる。
【0026】
画像表示装置4は、サーバー装置3から送信された検査リスト画面、ビューアー画面、レポート画面等を表示するとともに、これらの画面から入力される情報を表示したりサーバー装置3に送信したりする。画像表示装置4は、後述するシェーマ画像選択処理により選択されたシェーマ画像を出力する出力手段として機能する。
【0027】
(医用画像システム100の動作)
次に、医用画像システム100の動作について説明する。
上述のように、乳房形状は個人差が大きく、従来のように、マンモグラフィー画像における病変の記録に標準的なシェーマ画像を用いると、マンモグラフィー画像における乳房形状と標準的なシェーマ画像の乳房形状とが大きく異なってしまう場合がある。この場合、ユーザーがマンモグラフィー画像上の病変位置がシェーマ画像のどこに対応しているのかを把握するのに手間がかかる。
一方、個々のマンモグラフィー画像の乳房形状を認識してシェーマ画像を作成することも行われているが、マンモグラフィー画像は乳房を圧迫して撮影するため、同じ被検者の乳房であっても撮影ごとにマンモグラフィー画像上の乳房形状が異なり、同じ被検者の乳房であっても撮影ごと(マンモグラフィー画像ごと)にシェーマ画像が異なるものとなってしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、医用画像システム100に画像処理装置2を備え、画像処理装置2において、マンモグラフィー装置1において生成されたマンモグラフィー画像の乳房形状をその特徴に基づき予め定められた複数の類型のいずれに分類されるかを判定し、乳房形状の異なる複数種類のシェーマ画像の中から判定結果に応じたシェーマ画像を当該マンモグラフィー画像に対応するシェーマ画像として選択する。
【0029】
図3は、画像処理装置2の制御部21により実行されるシェーマ画像選択処理の流れを示すフローチャートである。シェーマ画像選択処理は、通信部25によりマンモグラフィー装置1からのマンモグラフィー画像が受信された際に、受信されたマンモグラフィー画像を処理対象として、制御部21のCPUと記憶部24に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0030】
まず、制御部21は、受信したマンモグラフィー画像から乳房領域を抽出する(ステップS1)。
マンモグラフィー画像からの乳房領域の抽出は、公知のいずれの手法を用いてもよい。例えば、マンモグラフィー画像のヒストグラム解析を行い、乳房領域と非乳房領域との境界であるスキンラインの輝度値を求め、胸壁側から乳頭側に当該輝度値を有する画素を探索して得られたスキンラインに基づき乳房領域を抽出する方法を用いることができる。または、例えば、Sobelフィルタによってマンモグラフィー画像から輝度値(X線強度)が変化する領域を取り出し、2値化によって輝度値の変化度合いが閾値以上である領域のみを抽出して輪郭抽出を行って乳房領域を抽出してもよい。
【0031】
次いで、制御部21は、マンモグラフィー画像から乳頭位置、乳房基底ライン、乳頭基準線を検出する(ステップS2)。
図4は、MLO方向のマンモグラフィー画像(MLO画像と呼ぶ)の乳頭位置amlo、乳房基底ラインL1mlo、乳頭基準線L2mloを示す図である。図5は、CC方向のマンモグラフィー画像(CC画像と呼ぶ)の乳頭位置acc、乳房基底ラインL1cc、乳頭基準線L2ccを示す図である。なお、MLO画像におけるパラメーターには下付きのmloの符号を、CC画像におけるパラメーターには下付きのccの符号を付している。
【0032】
乳頭位置amlo(acc)は、例えば、特開2015-104464号公報、特開2015-104465号公報等に記載された公知の方法を用いて検出することができる。
乳房基底ラインL1mlo(L1cc)は、マンモグラフィー画像における乳房の基底部分における外縁を示すラインであり、乳房上端cmlo(ccc)と乳房下端dmlo(dcc)を結ぶ線を乳房基底ラインL1mlo(L1cc)として検出する。なお、MLO画像においては、図4に示すようにマンモグラフィー画像の乳房領域の胸壁側の上端を乳房上端cmloとすることができる。乳房上端cmlo(ccc)又は乳房下端dmlo(dcc)が検出できない場合は、胸壁ラインを検出して乳房基底ラインL1mlo(L1cc)としてもよいし、マンモグラフィー画像の乳房領域における胸壁側の画像端を乳房基底ラインL1mlo(L1cc)としてもよい。
乳頭基準線L2mlo(L2cc)は、乳頭位置amlo(acc)から乳房基底ラインL1mlo(L1cc)に垂線を引くことにより検出することができる。
【0033】
次いで、制御部21は、マンモグラフィー画像から乳房形状に関する特徴量を算出し、算出した特徴量に基づいてマンモグラフィー画像に含まれる乳房の乳房形状を複数の類型のいずれかに分類する(ステップS3)。
乳房形状は個人差が大きいが、例えば、乳房形状の特徴によって複数の類型に分類することができる。乳房形状の分類方法は、特に問わない。本実施形態では、乳房のボリューム(膨らみ)と乳頭の位置から、以下の6つの類型に分類する例について説明する。
・分類1:ボリュームが少なく扁平。
・分類2:分類1よりはボリュームがあるがやや小さい。
・分類3:乳房が斜め下の方に垂れ下がっている。
・分類4:分類2よりボリュームがあり、ふっくらと盛り上がっている。
・分類5:乳頭の上部に高さがなく、乳頭位置が下がり気味である。
・分類6:分類4よりさらにボリュームが大きく、上に突き出ている。
【0034】
まず、MLO画像の乳房形状を、例えば、MLO画像に含まれる乳房のボリュームに関する特徴量であるpmloと、乳頭位置に関する特徴量であるqmloを用いて分類する例について説明する。
pmloは、MLO画像における乳房基底ラインL1mloの長さに対する乳頭位置amloから乳房基底ラインL1mloに下ろした垂線(乳頭基準線L2mlo)の長さの比率であり、図4に示す例の場合、下記の式(1)により算出することができる。pmloは、乳房のボリュームが大きいと値が大きくなり、ボリュームが小さいと値が小さくなる。
【数1】
qmloは、MLO画像における乳房基底ラインL1mloの長さに対する、乳頭位置amloから乳房基底ラインL1mloに下ろした垂線(乳頭基準線L2mlo)と乳房基底ラインL1mloとの交点bmloと乳房基底ラインL1mloの下端dmloとの長さの比率であり、図4に示す例の場合、下記の式(2)により算出することができる。qmloは、乳頭位置amloが上端よりであれば大きい値となり、下端よりであれば小さい値となる。
【数2】
ここで、Disab_mloは、線分amlobmloの長さ(amloから乳房基底ラインL1mloへの垂直線(乳頭基準線L2)の線分長)である。Disbc_mloは、線分bmlocmloの長さである。Disbd_mloは、線分bmlodmloの長さである。
【0035】
制御部21は、MLO画像から上記pmloとqmloの値を算出して、pmloとqmloの値を以下の表Iに示すように予め定められた閾値と比較することにより、MLO画像の乳房形状を分類1~分類6のいずれかに分類する。
【表1】
なお、表Iに示した各分類1~6のpmlo、qmloの範囲は一例であり、(表1)に示すものに限定されるものではない。
【0036】
次いで、CC画像の乳房形状を分類する例について説明する。
乳房形状が分類1~6のように異なる場合であっても、CC画像の乳房形状は、撮影時の圧迫のため、半円形で類似したものになる。そのため、CC画像の乳房形状を分類1~6に分類することは難しく、本例では、特徴量pccをもとに、分類1とその他の分類2~6のいずれかに2分別する方法について説明する。
【0037】
pccは、CC画像における乳房基底ラインL1ccの長さに対する乳頭位置accから乳房基底ラインL1ccに下ろした垂線(乳頭基準線L2cc)の長さの比率であり、図5に示す例の場合、下記の式(3)により算出することができる。pccは、乳房のボリュームが大きいと値が大きくなり、ボリュームが小さいと値が小さくなる。
【数3】
ここで、Disab_ccは、線分accbccの長さ(accから乳房基底ラインL1ccへの垂直線(乳頭基準線L2cc)の線分長)である。Disbc_ccは、線分bcccccの長さである。Disbd_ccは、線分bccdccの長さである。
制御部21は、CC画像からpccを算出し、この値を以下の表IIに示すように予め定められた閾値と比較することにより、CC画像の乳房形状が分類1と分類2~6のいずれに分類されるかを判定する。
【表2】
【0038】
次いで、制御部21は、乳房形状の分類結果に基づいて、複数種類のシェーマ画像の中からマンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を選択し(ステップS4)、シェーマ画像選択処理を終了する。
【0039】
図6は、分類1~6のそれぞれに対応するMLO画像、CC画像のシェーマ画像の例を示す図である。なお、MLO画像において、分類2、分類4、分類5の乳房形状は類似したものとなるため、本実施形態では、同じシェーマ画像が選択されるが、各分類ごとに異なるシェーマ画像を用意しておき、各分類ごとに異なるシェーマ画像を選択することとしてもよい。また、本実施形態では、CC画像の分類2~6は同じシェーマ画像が選択されるが、各分類ごとに異なるシェーマ画像を用意しておき、各分類ごとに異なるシェーマ画像を選択することとしてもよい。
このように、マンモグラフィー画像の乳房形状の特徴量を算出し、算出した特徴量に基づいて、複数種類のシェーマ画像の中からマンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を選択するので、同じ被検者に関してマンモグラフィー画像の撮影ごとに異なるシェーマ画像が提供されることなく、マンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像を提供することが可能となる。
【0040】
シェーマ画像選択処理が終了すると、制御部21は、受信したマンモグラフィー画像のUIDと選択されたシェーマ画像とを対応付けて通信部25によりサーバー装置3に送信する。
【0041】
サーバー装置3においては、画像処理装置2から送信されたUID及びシェーマ画像を受信すると、受信したシェーマ画像をUIDに対応付けて画像DB351に記憶させる。
また、画像表示装置4に表示された検査リスト画面から検査が選択され、選択された検査のビューアー画面の表示が指示されると、サーバー装置3は、選択された検査のマンモグラフィー画像を画像DB351から読み出して画像表示装置4に送信し、マンモグラフィー画像が表示されたビューアー画面を画像表示装置4に表示させる。また、選択された検査のレポート画面の表示が指示されると、サーバー装置3は、選択された検査のマンモグラフィー画像に対応するシェーマ画像を画像DB351から読み出して画像表示装置4に送信し、シェーマ画像が表示されたレポート画面を画像表示装置4に表示させる。
【0042】
読影者は、画像表示装置4において、ビューアー画面に表示されたマンモグラフィー画像を読影し、病変が検出された場合には、レポート画面に表示されたシェーマ画像の病変位置にマーキングを行う。このとき、マンモグラフィー画像の乳房形状に応じたシェーマ画像が選択されているため、読影者は、マンモグラフィー画像における乳房形状とシェーマ画像の乳房形状とを対応付ける手間やマンモグラフィー画像上の病変位置がシェーマ画像のどこに対応しているのかを把握する手間を大幅に低減することが可能となる。また、同じ被検者に関してマンモグラフィー画像の撮影ごとに異なるシェーマ画像が提供されることがないため、過去に検出された病変位置と今回撮影されたマンモグラフィー画像から検出された病変位置をシェーマ画像上で容易に比較することが可能となる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、画像処理装置2をサーバー装置3と別体の装置として説明したが、画像処理装置2の機能をサーバー装置3が備える構成としてもよい。例えば、サーバー装置3においてマンモグラフィー装置1からのマンモグラフィー画像を受信した際に、受信したマンモグラフィー画像を対象としてサーバー装置3の制御部により図3に示すシェーマ画像選択処理を実行し、選択されたシェーマ画像をUIDに対応付けて画像DB351に記憶させておくこととしてもよい。あるいは、画像処理装置2の機能を画像表示装置4が備える構成としてもよい。例えば、画像表示装置4に表示された検査リスト画面から検査が選択された際、画像表示装置4の制御部は、選択された検査のマンモグラフィー画像を画像DB351から読み出し、読み出したマンモグラフィー画像を対象として図3に示すシェーマ画像選択処理を実行してもよい。そして選択されたシェーマ画像をレポート画面に表示(出力)させることとしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、シェーマ画像を選択後、制御部21は、受信したマンモグラフィー画像のUIDと選択されたシェーマ画像とを対応付けて通信部25によりサーバー装置3に送信することとしたが、サーバー装置3に複数種類のシェーマ画像をシェーマ画像の識別情報に対応付けて記憶しておき、シェーマ画像を選択後、制御部21は、受信したマンモグラフィー画像のUIDと選択されたシェーマ画像の識別情報とを対応付けて通信部25によりサーバー装置3に送信することとしてもよい。そして、サーバー装置3においては、受信したシェーマ画像の識別情報をUIDに対応付けて画像DB351に記憶させることとしてもよい。シェーマ画像の識別情報としては、そのシェーマ画像に対応するマンモグラフィー画像の分類名(分類1~6)を用いることとしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、マンモグラフィー画像の乳房形状に関する特徴量として、乳房のボリュームに関する特徴量であるpmlo、pcc乳頭位置に関する特徴量であるqmloを用いる場合を例にとり説明したが、これらに限定されるものではなく、他の特徴量を用いてもよい。
【0046】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリ等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0047】
その他、医用画像システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 医用画像システム
1 マンモグラフィー装置
2 画像処理装置
21 制御部
22 操作部
23 表示部
24 記憶部
25 通信部
3 サーバー装置
4 画像表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6