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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04664 20160101AFI20241203BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20241203BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20241203BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20241203BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20241203BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20241203BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20241203BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/043
H01M8/04955
H01M8/04537
H01M8/04302
H01M8/0432
H01M8/12 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021021027
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123613
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 光国
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】守谷 憲造
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186055(JP,A)
【文献】特開2015-128000(JP,A)
【文献】特開2007-48559(JP,A)
【文献】特開平11-195423(JP,A)
【文献】特開2017-152339(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103462(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの供給を受けて発電する燃料電池と、前記燃料電池を通過したガスを燃焼させる燃焼器とを含む燃料電池システムにおいて、運転時間が所定時間に到達する毎にシステムの停止と起動とを行なう燃料電池システムであって、
前記燃料電池の出力電流を検出する電流センサと、
前記燃料電池の出力電圧を検出する電圧センサと、
前記燃料電池の温度に相関する温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出される燃料電池の温度に相関する温度が所定温度以上に至るまで該燃料電池を介して前記燃焼器に前記燃料ガスおよび前記酸化剤ガスを供給して前記システムを起動した後、前記燃料電池の発電開始に伴って該燃料電池への前記燃料ガスおよび前記酸化剤ガスの供給量を増量している最中に前記電流センサおよび前記電圧センサにより検出される出力電流および出力電圧を所定時間毎に複数ずつ取得し、該取得した出力電流および出力電圧の複数の組に基づいて前記出力電流と前記出力電圧との関係の傾きにより前記燃料電池の内部抵抗を取得する内部抵抗取得部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
記内部抵抗取得部は、前記出力電流および前記出力電圧の取得を開始してから終了するまでに前記温度センサにより検出される温度の変化量が所定変化量以上である場合には、前記内部抵抗を取得しない、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記内部抵抗取得部は、前記取得した出力電流および出力電圧の複数の組に基づいて得られる前記出力電流と前記出力電圧との間の相関係数の絶対値が所未満である場合には、前記内部抵抗を取得しない、
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
過去に取得された内部抵抗と対応する前記システムの運転時間との関係を求め、該求めた関係に基づいて閾値を設定し、今回に取得された内部抵抗が前記閾値を超えているか否かに基づいて前記燃料電池の劣化診断を行なう劣化診断部を備える、
燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前回に取得された内部抵抗に所定値を加算して閾値を設定し、今回に取得された内部抵抗が前記閾値を超えているか否かに基づいて前記燃料電池の劣化診断を行なう劣化診断部を備える、
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池システムとしては、セルスタックの劣化診断を行なうものが知られている。例えば、特許文献1には、温度検出手段を用いてセルスタックの所定部位における温度の安定状態を検出し、その安定状態の間に原燃料ガスと改質水と酸化剤ガスとの供給量を一定に制御しつつ、インバータを制御してセルスタックの出力電流を変化させ、このときの出力電圧値を用いて劣化状態を診断するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-27580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した燃料電池システムでは、劣化診断のバラツキを小さくするために、原燃料ガスや酸化剤ガスの供給量を意図的に一定にして、そのときの出力電流と出力電圧との関係から劣化状態を判定するため、原燃料ガスおよび酸化剤ガスの要求量が変化する負荷追従運転に利用することができなかったり、負荷追従運転に利用しても診断の精度が悪化したりするおそれがある。
【0005】
本発明の燃料電池システムは、負荷追従運転を実行可能なシステムにおいて、燃料電池の劣化状態を良好な精度で判定することが可能な燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料電池システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の燃料電池システムは、
燃料電池を含む燃料電池システムにおいて、運転時間が所定時間に到達する毎にシステムの停止と起動とを行なう燃料電池システムであって、
前記燃料電池の出力電流を検出する電流センサと、
前記燃料電池の出力電圧を検出する電圧センサと、
前記システムを起動した後、前記燃料電池の発電を開始するタイミングで前記電流センサおよび前記電圧センサにより検出される出力電流および出力電圧を取得し、該取得した出力電流および出力電圧の組に基づいて前記燃料電池の内部抵抗を取得する内部抵抗取得部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の燃料電池システムは、運転時間が所定時間に到達する毎にシステムの停止と起動とを行なうものである。このシステムは、電圧センサと電流センサと内部抵抗取得部とを備え、当該内部抵抗取得部は、システムを起動した後、燃料電池の発電を開始するタイミングで電流センサおよび電圧センサにより検出される燃料電池の出力電流および出力電圧を取得し、取得した出力電流および出力電圧に基づいて内部抵抗を算出する。これにより、内部抵抗の取得に必要な出力電流および出力電圧を、常に同一条件で取得することができるため、内部抵抗の取得のバラツキを抑制することができる。この結果、燃料電池の内部抵抗に基づいて燃料電池の状態をより正確に診断することが可能となる。なお、燃料電池システムは、ガスマイコンメータを介して供給される原燃料ガスを燃料ガスに改質する改質器を備え、ガスマイコンメータの仕様として、原燃料ガスの流量変化量が一定量以下の状態が一定時間以上継続したときに原燃料ガスの供給を遮断するものであり、一定時間が経過する前に燃料電池システムの停止と起動とを行なうものに適用することができる。
【0009】
こうした本発明の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池の温度に相関する温度を検出する温度センサを備え、前記電流センサおよび前記電圧センサにより検出される出力電流および出力電圧の取得を所定時間毎に複数回繰り返し、該取得した出力電流および出力電圧の複数の組に基づいて前記内部抵抗を取得するものであり、前記出力電流および前記出力電圧の取得を開始してから終了するまでに前記温度センサにより検出される温度の変化量が所定変化量以上である場合には、前記内部抵抗を取得しないものとしてもよい。こうすれば、内部抵抗の取得のバラツキをより抑制することができる。
【0010】
また、本発明の燃料電池システムにおいて、前記内部抵抗取得部は、前記電流センサおよび前記電圧センサにより検出される出力電流および出力電圧の取得を所定時間毎に複数回繰り返し、該取得した出力電流および出力電圧の複数の組に基づいて相関度合いを算出し、該算出した相関度合いが前記所定程度未満である場合には、前記内部抵抗を取得しないものとしてもよい。こうすれば、内部抵抗のバラツキを更に抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明の燃料電池システムにおいて、過去に取得された内部抵抗と対応する前記システムの運転時間との関係を求め、該求めた関係に基づいて閾値を設定し、今回に取得された内部抵抗が前記閾値を超えているか否かに基づいて前記燃料電池の劣化診断を行なう劣化診断部を備えるものとしてもよい。こうすれば、燃料電池の異常を早期発見して、異常に対処することができる。
【0012】
また、本発明の燃料電池システムにおいて、前回に取得された内部抵抗に所定値を加算して閾値を設定し、今回に取得された内部抵抗が前記閾値を超えているか否かに基づいて前記燃料電池の劣化診断を行なう劣化診断部を備えるものとしてもよい。こうすれば、燃料電池の異常を早期発見して、異常に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の燃料電池システムの概略構成図である。
図2】内部抵抗算出処理の一例を示すフローチャートである。
図3】スタック電流とスタック電圧との関係を示す説明図である。
図4】内部抵抗の累積発電時間ごとの推移を示す説明図である。
図5】劣化診断処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の燃料電池システムの概略構成図である。本実施形態の燃料電池システム10は、図示するように、アノードガス(燃料ガス)中の水素とカソードガス(酸化剤ガス)中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池スタック21を含む発電モジュール20と、発電モジュール20にアノードガスの原料となる原燃料ガス(例えば天然ガスやLPガス)を供給する原燃料ガス供給装置30と、発電モジュール20に原燃料ガスからアノードガスへの改質(水蒸気改質)に必要な改質水を供給する改質水供給装置40と、発電モジュール20(燃料電池スタック21)にカソードガスとしてのエアを供給するエア供給装置50と、発電モジュール20において発生した燃焼排ガスの熱(排熱)を回収する排熱回収装置60と、を備える。
【0016】
発電モジュール20は、燃料電池スタック21や、気化器22、2つの改質器23を含み、これらは、断熱性を有するモジュールケース29に収容されている。本実施形態では、発電モジュール20は、2つの燃料電池スタック21を有し、2つの燃料電池スタック21は、間隔をおいて互いに対向するようにモジュールケース29内に配置されたマニホールド24上に設置される。
【0017】
各燃料電池スタック21は、酸化ジルコニウム等の電解質と当該電解質を挟持するアノード電極およびカソード電極とをそれぞれ有すると共に図2中、左右方向(水平方向)に配列された複数の固体酸化物形の単セルを有する。各単セルのアノード電極内には、図示しないアノードガス通路が単セルの配列方向と直交する方向すなわち上下方向に延在するように形成されている。また、各単セルのカソード電極の周囲には、カソードガスを流通させる図示しないカソードガス通路が単セルの配列方向に直交する方向すなわち上下方向に延在するように形成されている。各単セルのアノードガス通路は、マニホールド24に接続され、各単セルのカソードガス通路は、モジュールケース29内のエア通路に接続される。更に、2つの燃料電池スタック21の間(近傍)には、両者との距離が同一となるように温度センサ92が設置されている。温度センサ92は、各燃料電池スタック21の温度に相関する温度(スタック相関温度)T4を検出する。
【0018】
発電モジュール20の気化器22および改質器23は、モジュールケース29内の2つの燃料電池スタック21の上方に両者と間隔をおいて配設される。本実施形態では、一方の燃料電池スタック21の上方に気化器22および一方の改質器23が配置され、他方の燃料電池スタック21の上方に他方の改質器23が配置される。更に、一方の燃料電池スタック21と気化器22および一方の改質器23との間、並びに他方の燃料電池スタック21と他方の改質器23との間には、燃料電池スタック21の作動や、気化器22および改質器23での反応に必要な熱を発生させる燃焼部25が画成されている。各燃焼部25には、着火ヒータ26が設置されている。
【0019】
気化器22は、燃焼部25からの熱により原燃料ガス供給装置30からの原燃料ガスと改質水供給装置40からの改質水とを加熱し、原燃料ガスを予熱すると共に改質水を蒸発させて水蒸気を生成する。気化器22により予熱された原燃料ガスは、水蒸気と混合され、その混合ガスは、当該気化器22から改質器23に流入する。また、改質器23には、当該改質器23に流入する混合ガスの温度(気化器温度)T1を検出する温度センサ91が設置されている。
【0020】
改質器23は、その内部に充填された例えばRu系またはNi系の改質触媒を有し、燃焼部25からの熱の存在下で、改質触媒による気化器22からの混合ガスの反応(水蒸気改質反応)によって水素ガスと一酸化炭素とを生成する。更に、改質器23は、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気との反応(一酸化炭素シフト反応)によって水素ガスと二酸化炭素とを生成する。これにより、改質器23によって、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の原燃料ガス等を含むアノードガスが生成されることになる。改質器23により生成されたアノードガスは、配管やマニホールド24を介して各単セルのアノードガス通路へ流入し、アノード電極に供給される。
【0021】
また、燃料電池スタック21の各単セルのカソード電極には、モジュールケース29内に形成されたエア通路を介してカソードガスとしてのエアが供給される。各単セルのカソード電極では、酸化物イオン(O2-)が生成され、当該酸化物イオンが電解質を透過してアノード電極で水素や一酸化炭素と反応することにより電気エネルギが得られる。各単セルにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかったアノードガス(以下、「アノードオフガス」という)およびカソードガス(以下、「カソードオフガス」という)は、各単セルのアノードガス通路やカソードガス通路から上方の燃焼部25へと流出する。
【0022】
各単セルから燃焼部25に流入したアノードオフガスは、水素や一酸化炭素等の燃料成分を含む可燃性ガスであり、各単セルから燃焼部25に流入した酸素を含むカソードオフガスと混合される。以下、アノードオフガスとカソードオフガスとの混合ガスを「オフガス」という。そして、着火ヒータ26により点火させられて燃焼部25でオフガスが着火すると、当該オフガスの燃焼により、燃料電池スタック21の作動や、気化器22での原燃料ガスの予熱や水蒸気の生成、改質器23での水蒸気改質反応等に必要な熱が発生することになる。また、燃焼部25では、未燃燃料や水蒸気を含む燃焼排ガスが生成され、当該燃焼排ガスは、燃焼触媒27を介して熱交換器62へ供給される。燃焼触媒27は、燃焼排ガス中の未燃燃料を再燃焼させるための酸化触媒である。
【0023】
原燃料ガス供給装置30は、原燃料ガスを供給する原燃料供給源1と気化器22とを接続する原燃料ガス供給管31と、当該原燃料ガス供給管31に設置された開閉弁(2連弁)32,33、オリフィス34、ガスポンプ35および脱硫器36とを有する。原燃料ガスは、ガスポンプ35を作動させることで、原燃料供給源1から脱硫器36を介して気化器22へと圧送(供給)される。脱硫器36は、例えば常温脱硫式の脱硫器として構成される。また、原燃料ガス供給管31の開閉弁33とオリフィス34との間には、原燃料ガス供給管31内の圧力を検出する圧力センサ37や、原燃料ガス供給管31を流れる原燃料ガスの単位時間当りの流量(ガス流量Qg)を検出する流量センサ38が設置されている。
【0024】
原料ガス供給管31には、原燃料供給源1からの原燃料ガスがガスマイコンメータ(以下、ガスメータという)1aを介して導入される。ガスメータ1aは、ガスの流量変化量が一定量以下の状態が一定時間以上継続したときに、ガスの流れを遮断する遮断機能を有している。
【0025】
改質水供給装置40は、改質水を貯留する改質水タンク42と、改質水タンク42と気化器22とを接続する改質水供給管41と、改質水供給管41に設置された改質水ポンプ43とを有する。改質水タンク42内の改質水は、改質水ポンプ43を作動させることで、当該改質水ポンプ43により気化器22へと圧送(供給)される。
【0026】
エア供給装置50は、モジュールケース29内に形成されたエア通路に接続されるエア供給管51と、エア供給管51の入口に設けられたエアフィルタ52と、エア供給管51に設置されたエアポンプ53とを有する。エアポンプ53を作動させることで、カソードガスとしてのエアは、エアフィルタ52を介してエア供給管51に吸引され、モジュールケース29内のエア通路を経て各燃料電池スタック21(カソード電極)へと圧送(供給)される。
【0027】
排熱回収装置60は、湯水を貯留する貯湯タンク61と、発電モジュール20の燃焼部25で生成された燃焼排ガスと湯水とを熱交換する熱交換器62と、貯湯タンク61と熱交換器62とを接続する循環配管63と、循環配管63に組み込まれた循環ポンプ64と、を有する。貯湯タンク61内に貯留されている湯水は、循環ポンプ64を作動させることで、熱交換器62へと導入され、熱交換器62で燃焼排ガスとの熱交換によって昇温させられた後、貯湯タンク61へと返送される。
【0028】
また、排熱回収装置60は、循環配管63に組み込まれたラジエータ66と、ラジエータ66に送風するラジエータファンと、発電モジュール20で発電した電力を用いて循環配管63内の湯水を加熱するヒータ65と、を有する。ラジエータ66は、循環ポンプ64と熱交換器62との間に位置するように循環配管63に設置され、ヒータ65は、ラジエータ66と循環ポンプ64との間に位置するように循環配管63に設置されている。
【0029】
また、排熱回収装置60の熱交換器62は、配管67を介して改質水タンク42と接続されており、燃焼排ガス中の水蒸気が貯湯タンク61からの湯水との熱交換により凝縮することにより得られた凝縮水は、当該配管67を介して改質水タンク42内へと導入される。更に、熱交換器62の燃焼排ガスの通路は、燃焼排ガス排出管68に接続されている。これにより、熱交換器62で燃焼排ガスから水分が除去された排ガスは、燃焼排ガス排出管68を介して大気中に排出される。
【0030】
燃料電池スタック21の出力端子には、パワーコンディショナ71の入力端子が接続され、当該パワーコンディショナ71の出力端子には、図示しないリレーを介して電力系統2から負荷4への電力ライン3に接続される。パワーコンディショナ71は、燃料電池スタック21から出力された直流電圧を所定電圧(例えば、DC250V~300V)に変換するDC/DCコンバータや、変換された直流電圧を電力系統2と連系可能な交流電圧(例えば、AC200V)に変換するインバータを有する。燃料電池スタック21の出力端子には、当該燃料電池スタック21から出力される電流(スタック電流I)を検出する電流センサ73が設置され、燃料電池スタック21の出力端子間には、燃料電池スタック21の端子間電圧(スタック電圧V)を検出する電圧センサ74が設置されている。
【0031】
パワーコンディショナ71から分岐した電力ラインには電源基板72が接続されている。電源基板72は、燃料電池スタック21からの直流電圧や電力系統2からの交流電圧を補機類の作動に適した直流電圧に変換して当該補機類に供給するものである。実施形態では、補機類としては、換気ファン14や開閉弁32,33、ガスポンプ35、改質水ポンプ43、エアポンプ53、循環ポンプ64、ヒータ65などを挙げることができる。
【0032】
制御装置80は、CPU81を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU81の他に処理プログラムを記憶するROM82と、データを一時的に記憶するRAM83と、不揮発性メモリ84と、計時を行なうタイマ85と、図示しない入出力ポートと、を備える。制御装置80には、圧力センサ37や流量センサ38、温度センサ91,92、電流センサ73、電圧センサ74などからの各種検出信号が入力ポートを介して入力されている。また、制御装置80からは、換気ファン14のファンモータや開閉弁32,33のソレノイド、ガスポンプ35のポンプモータ、改質水ポンプ43のポンプモータ、エアポンプ53のポンプモータ、循環ポンプ64のポンプモータ、ヒータ65のヒータスイッチ、パワーコンディショナ71のDC/DCコンバータやインバータ、電源基板72、着火ヒータ26などへの各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。また、制御装置80には、無線式または有線式の通信回線を介して図示しないリモコンが接続される。制御装置80は、燃料電池システム10のユーザにより操作された当該リモコンからの信号に基づいて各種制御を実行する。さらに、制御装置80は、発電モジュール20の発電中にタイマ85により計測した累積時間を積算することにより累積発電時間を計測している。
【0033】
次に、こうして構成された本実施形態の燃料電池システム10の動作について説明する。制御装置80のCPU81は、システムの起動が要求されると、燃料成分の吸着が飽和状態に達するまで脱硫器36に原燃料ガスを供給する燃料吸着処理、燃焼部25内をエアの供給によってパージするパージ処理を順に実行した後、燃焼部25に原燃料ガスとエアとを供給して燃焼部25においてその混合ガスに着火して発電モジュール20を暖機する暖機モードへ遷移する。そして、温度センサ92により検出されるスタック相関温度T4が予め定められた発電許可温度以上に至ると、システムの起動が完了し、原燃料ガスとエアの増量を開始して発電モードへ遷移する。
【0034】
発電モードでは、要求される発電出力に応じた目標電流Itagが燃料電池スタック21から出力されるよう原燃料ガス、改質水およびエア(空気)の供給量を制御して発電を行なう。原燃料ガスの供給量の制御は、目標電流Itagに基づいて所定の燃料利用率Ufとなるように目標ガス流量Qgtagを設定し、流量センサ38により検出されるガス流量Qgが設定した目標ガス流量Qgtagに一致するようガスポンプ35を制御することにより行なわれる。改質水の供給量の制御は、改質器23におけるスチームカーボン比SC(原燃料ガス中の炭化水素に含まれる炭素と水蒸気改質のために添加される水蒸気とのモル比)が予め定められた目標比SCtagに一致するように目標ガス流量Qgtagに基づいて目標改質水流量Qwtagを設定し、設定した目標改質水流量Qwtagの改質水が供給されるよう改質水ポンプ43を制御することにより行なわれる。エアの供給量の制御は、温度センサ92により検出されるスタック相関温度T4が予め定められた目標温度T4tagに一致するようにフィードバック制御により目標エア流量Qatagを設定し、設定した目標エア流量Qatagのエアが供給されるようエアポンプ53を制御することにより行なわれる。
【0035】
発電モード中にシステムの停止が要求されると、温度センサ92により検出されるスタック相関温度T4が予め定められた停止許可温度以下になるまで、高温雰囲気下で燃料電池スタック21(電極)が酸化劣化しない程度の流量(一定流量)を目標ガス流量Qgtagに設定してガスポンプ35を制御すると共に燃料電池スタック21を冷却するのに必要な流量(一定流量)を目標エア流量Qatagに設定してエアポンプ53を制御する。そして、スタック相関温度T4が停止許可温度以下になると、ガスポンプ35やエアポンプ53を停止して、システムを停止させる。
【0036】
本実施形態の燃料電池システム10は、上述したように、ガスメータ1aを介して原燃料供給源1から原燃料ガスの供給を受けており、ガスメータ1aの遮断機能が作動しないように、連続運転時間が遮断機能の作動時間よりも若干短い所定時間(例えば1ヶ月)に到達する毎に、システムを停止し、その後にシステムを起動する動作を繰り返す。
【0037】
また、本実施形態の燃料電池システム10は、燃料電池スタック21の内部抵抗(スタック抵抗)Rを算出し、算出した内部抵抗Rに基づいて燃料電池スタック21の状態(劣化)を診断する。図2は、制御装置80のCPU81により実行される内部抵抗算出処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、燃料電池システム10が起動を開始したときに実行される。上述したように、燃料電池システム10は連続運転時間が所定時間に到達する毎にシステムの停止と起動とが繰り返されるため、内部抵抗算出処理は、定期的に繰り返し実行されることとなる。
【0038】
内部抵抗算出処理では、制御装置80のCPU81は、まず、運転モードが暖機モードに遷移するのを待つ(ステップS100)。暖機モードに遷移したと判定すると、温度センサ92からのスタック相関温度T4を取得し(ステップS110)、取得したスタック相関温度T4が閾値T4ref未満であるか否かを判定する(ステップS120)。ここで、閾値T4refは、燃料電池スタック21の状態が内部抵抗Rの算出に適した状態であるか否かを判定するための閾値である。本実施形態においては、定期的なシステム起動が行なわれる場合には、通常、暖機モードに遷移した際にスタック相関温度T4が閾値T4ref未満となり、メンテナンス等のために作業者の操作により任意のタイミングでシステムの停止と起動とが行なわれると、スタック相関温度T4が閾値T4ref以上となる場合が生じる。ステップS120は、システムの起動が定期的に行なわれる通常の起動であるか否かを判定するものである。取得したスタック相関温度T4が閾値T4ref未満でなく閾値T4ref以上であると判定すると、燃料電池スタック21の状態は内部抵抗Rの算出するのに適さないと判断し、内部抵抗算出処理を終了する。一方、取得したスタック相関温度T4が閾値T4ref未満であると判定すると、運転モードが発電モードに遷移するのを待つ(ステップS130)。
【0039】
発電モードに遷移したと判定すると、温度センサ92からの温度(スタック相関温度)T4を取得し(ステップS140)、取得したスタック相関温度T4を取得開始時温度Tsに設定する(ステップS150)。次に、発電モードの開始に伴う原燃料ガスおよびエアの増量中に電流センサ73からのスタック電流Iと電圧センサ74からのスタック電圧Vとを所定のサンプリング周期(数百msec)で取得し(ステップS160)、これらの取得数が所定数(例えば、30や40など)に達したか否かを判定する(ステップS170)。取得数が所定数に達していないと判定すると、ステップS160に戻って、サンプリング周期毎のスタック電流Iとスタック電圧Vとの取得を繰り返す。一方、取得数が所定数に達したと判定すると、温度センサ92からのスタック相関温度T4を取得し(ステップS180)、取得したスタック相関温度T4を取得終了時温度Teに設定する(ステップS190)。取得開始時温度Tsと取得終了時温度Teとを設定すると、取得開始時温度Tsから取得終了時温度Teを減じて絶対値をとることにより温度変化量ΔTを算出し(ステップS200)、算出した温度変化量ΔTが閾値Tref未満であるか否かを判定する(ステップS210)。ここで、閾値ΔTrefは、スタック電流Iとスタック電圧Vとを取得している間に、スタック相関温度T4が、内部抵抗Rの算出に影響を与える程度に変化したか否かを判断するための閾値である。温度変化量ΔTが閾値ΔTref未満でなく閾値ΔTref以上であると判定すると、取得したデータは内部抵抗Rの算出に適さないと判断し、内部抵抗算出処理を終了する。
【0040】
一方、温度変化量ΔTが閾値ΔTref未満であると判定すると、取得したスタック電流Iおよびスタック電圧Vの複数の組に基づいて相関係数rを算出する(ステップS220)。なお、相関係数rは、スタック電流Iとスタック電圧Vの共分散を、スタック電流Iの標準偏差とスタック電圧Vの標準偏差との積で割ることにより求めることができる。そして、算出した相関係数rの絶対値|r|が所定値rref(例えば、0.8や0.9など)以上であるか否かを判定する(ステップS230)。相関係数rの絶対値|r|が所定値rref以上でないと判定すると、取得したスタック電流Iとスタック電圧Vとの間の相関が弱く、取得したデータでは内部抵抗Rの算出に適さないと判断して、内部抵抗算出処理を終了する。一方、相関係数rの絶対値|r|が所定値rref以上であると判定すると、取得したスタック電流Iおよびスタック電圧Vの複数の組に基づいて内部抵抗Rを算出すると共に(ステップS240)、算出した内部抵抗Rを累積発電時間とを対応付けて不揮発性メモリ84に記憶して(ステップS250)、内部抵抗算出処理を終了する。
【0041】
図3は、スタック電流とスタック電圧との関係を示す説明図であり、図4は、内部抵抗の累積発電時間ごとの推移を示す説明図である。内部抵抗Rは、例えば、取得したスタック電流Iとスタック電圧Vとの複数の組から最小二乗法により近似直線を求め、この近似直線の傾きを求めることにより算出することができる。図示するように、累積発電時間が長くなるほど、近似直線の傾きが大きくなり、内部抵抗Rは増大する。
【0042】
本実施形態では、内部抵抗算出処理は、定期的なシステム起動が行なわれる毎に実行されるため、内部抵抗Rは、基本的には、システム起動が行なわれる毎に算出される。これにより、常に同一条件で内部抵抗Rを算出することができるため、内部抵抗Rの精度をより向上させることができる。一方、システム起動時であっても、燃料電池スタック21の温度状態が内部抵抗Rの算出に適した状態でない場合や、取得したスタック電圧Vとスタック電流Iとの間で相関が弱ければ、その回の内部抵抗Rの算出をスキップするため、各回において内部抵抗Rの算出にバラツキが生じるのを抑制することができる。
【0043】
次に、算出した内部抵抗Rに基づいて燃料電池スタック21の状態(劣化)を診断する動作について説明する。図5は、劣化診断処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、内部抵抗算出処理により内部抵抗Rが算出される毎に実行される。
【0044】
劣化診断処理が実行されると、制御装置80のCPU81は、まず、過去に算出した複数の内部抵抗から今回に算出される内部抵抗Rの予測値Rpreを算出する(ステップS300)。予測値Rpreは、例えば、過去に算出した内部抵抗と対応する累積運転時間との複数の組から最小二乗法により得られる近似直線に基づいて予想することができる。続いて、算出した予測値Rpreに所定値ΔRを加えた値を閾値Rrefに設定し(ステップS310)、今回に算出した内部抵抗Rが閾値Rrefよりも大きいか否かを判定する(ステップS320)。今回に算出した内部抵抗Rが閾値Rref以下であると判定すると、燃料電池スタック21に想定を超える劣化は生じていないと判断して、劣化診断処理を終了する。一方、今回に算出した内部抵抗Rが閾値Rrefよりも大きいと判定すると、燃料電池スタック21に想定を超える劣化が生じていると判断し、システムを停止すると共に(ステップS330)、リモコンに所定の警告表示が行なわれるよう制御信号を出力して(ステップS340)、劣化診断処理を終了する。
【0045】
以上説明した本実施形態の燃料電池システム10では、ガスメータ1aの遮断機能が作動しないように所定時間毎にシステム停止とシステム起動とを行なうものにおいて、システム起動した後、燃料電池スタック21が発電を開始するタイミングで電圧センサ74および電流センサ73により検出されるスタック電圧Vおよびスタック電流Iを取得し、取得したスタック電圧Vおよびスタック電流Iの組から内部抵抗Rを算出する。これにより、内部抵抗Rの算出に用いるスタック電圧Vおよびスタック電流Iを、同一条件(タイミング)で取得することができるため、内部抵抗Rを精度良く算出することができる。この結果、燃料電池スタック21の内部抵抗Rに基づいて燃料電池スタック21の状態をより正確に診断することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の燃料電池システム10では、暖機モード遷移時におけるスタック相関温度T4が閾値T4ref未満であったり、発電モードにおいてスタック電圧Vおよびスタック電流Iの組を所定のサンプリング周期で複数取得している間のスタック相関温度T4の温度変化量ΔTが閾値ΔTref以上であったり、取得したスタック電圧Vとスタック電流Iとの間の相関係数rの絶対値|r|が所定値rref未満であると、内部抵抗Rを算出しないため、内部抵抗Rの算出にバラツキが生じるのをより確実に抑制することができる。
【0047】
本実施形態では、燃料電池スタック21の劣化を診断するための閾値Rrefとして、過去に算出した内部抵抗Rと対応する累積発電時間との複数の組から最小二乗法により得られる近似直線に基づいて今回に算出される内部抵抗の予測値Rpreを求め、求めた予測値Rpreに所定値ΔRを加えた値を設定するものとした。しかし、閾値Rrefは、これに限定されるものではなく、前回に算出した内部抵抗に所定値を加えた値が設定されてもよい。また、予め定められた値が設定されてもよい。
【0048】
本実施形態では、内部抵抗Rが閾値Rrefよりも大きいときには、システムを停止すると共にリモコンに警告表示を行なうものとした。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、燃料電池スタック21の発電出力に制限を設けて当該制限を超えない範囲で発電を継続してもよいし、燃料電池スタック21の発電出力の上昇率に制限を設けて当該制限を超えない範囲内で出力を取り出してもよいし、燃料電池スタック21の出力電流に制限を設けて当該制限を超えない範囲で電流を取り出してもよい。さらに、燃料電池システム10がネットワークを介して管理サーバに接続されている場合には、燃料電池スタック21に劣化が生じた旨の情報を当該管理サーバに送信してもよい。
【0049】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、燃料電池スタック21が「燃料電池」に相当し、電流センサ73が「電流センサ」に相当し、電圧センサ74が「電圧センサ」に相当し、内部抵抗算出処理を実行する制御装置80のCPU81が「内部抵抗取得部」に相当する。また、温度センサ92が「温度センサ」に相当する。また、劣化診断処理を実行する制御装置80のCPU81が「劣化診断部」に相当する。
【0050】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0051】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、燃料電池システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 原燃料供給源、1a ガスマイコンメータ(ガスメータ)、2 電力系統、3 電力ライン、4 負荷、10 燃料電池システム、20 発電モジュール、21 燃料電池スタック、22 気化器、23 改質器、24 マニホールド、25 燃焼部、26 着火ヒータ、27 燃焼触媒、29 モジュールケース、30 原燃料ガス供給装置、31 原燃料ガス供給管、32,33 開閉弁、34 オリフィス、35 ガスポンプ、36 脱硫器、37 圧力センサ、38 流量センサ、40 改質水供給装置、41 改質水供給管、42 改質水タンク、43 改質水ポンプ、50 エア供給装置、51 エア供給管、52 エアフィルタ、53 エアポンプ、60 排熱回収装置、61 貯湯タンク、62 熱交換器、63 循環配管、64 循環ポンプ、65 ヒータ、66 ラジエータ、67 配管、68 燃焼排ガス排出管、71 パワーコンディショナ、72 電源基板、73 電流センサ、74 電圧センサ、80 制御装置、81 CPU、82 ROM、83 RAM、84 不揮発性メモリ、85 タイマ、91,92 温度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5