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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20241203BHJP
   H01Q 13/22 20060101ALI20241203BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20241203BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q13/22
H01Q21/08
H01Q1/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021023685
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125863
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2023-10-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/(研究開発課題名)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】李 政彦
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-303612(JP,A)
【文献】特開2017-005663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0267152(US,A1)
【文献】特開平08-154008(JP,A)
【文献】特開平11-195924(JP,A)
【文献】特開2015-204495(JP,A)
【文献】特開平06-334434(JP,A)
【文献】特開平08-186410(JP,A)
【文献】特開2020-048029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 13/22
H01Q 21/08
H01Q 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体を含む基材(21)と、前記基材に配置された導体(22)と、を有する基板(20)と、
前記導体の一部として前記基材に配置され、上壁部(31)と、前記基材の板厚方向において前記上壁部と対向する下壁部(32)と、前記上壁部と前記下壁部とに連なる側壁部(33)と、を有する導波管(30)と、
前記導体の一部として前記基材に配置され、前記板厚方向において前記上壁部に対向するように、アレイ状に配置された複数のパッチ部(41)と、前記パッチ部から前記板厚方向に延設され、前記パッチ部に対して個別に設けられた複数の給電線(42)と、前記パッチ部に対して個別に設けられ、前記パッチ部と前記上壁部とを電気的に接続する複数の短絡部(43)と、を有するアンテナ(40)と、
前記導体の一部として前記基材に配置され、前記導波管のインピーダンスと前記アンテナのインピーダンスとを整合させるために、前記パッチ部に対して個別に設けられた整合部(50)と、を備え、
前記上壁部は、前記給電線に対して個別に形成された複数の開口部(34)を有し、
前記給電線のそれぞれは、対応する前記開口部を通じて前記導波管の内部まで延設されており、
前記整合部は、前記下壁部と対向するように、前記パッチ部から離れた位置で前記給電線に接続された内層パターン(51、52、53)を含み、
前記内層パターンは、前記板厚方向において、前記上壁部と前記下壁部との間に配置された第1内層パターン(51)を含み、
前記整合部は、前記第1内層パターンと、前記導波管内に配置され、前記内層パターンに接続された第2ビア導体(55)と、を含み、前記下壁部の内面に接続されて前記内面から所定の高さを有している、アンテナ装置。
【請求項2】
誘電体を含む基材(21)と、前記基材に配置された導体(22)と、を有する基板(20)と、
前記導体の一部として前記基材に配置され、上壁部(31)と、前記基材の板厚方向において前記上壁部と対向する下壁部(32)と、前記上壁部と前記下壁部とに連なる側壁部(33)と、を有する導波管(30)と、
前記導体の一部として前記基材に配置され、前記板厚方向において前記上壁部に対向するように、アレイ状に配置された複数のパッチ部(41)と、前記パッチ部から前記板厚方向に延設され、前記パッチ部に対して個別に設けられた複数の給電線(42)と、前記パッチ部に対して個別に設けられ、前記パッチ部と前記上壁部とを電気的に接続する複数の短絡部(43)と、を有するアンテナ(40)と、
前記導体の一部として前記基材に配置され、前記導波管のインピーダンスと前記アンテナのインピーダンスとを整合させるために、前記パッチ部に対して個別に設けられた整合部(50)と、を備え、
前記上壁部は、前記給電線に対して個別に形成された複数の開口部(34)を有し、
前記給電線のそれぞれは、対応する前記開口部を通じて前記導波管の内部まで延設されており、
前記整合部は、前記下壁部と対向するように、前記パッチ部から離れた位置で前記給電線に接続された内層パターン(51、52、53)を含み、
前記内層パターンは、前記開口部に配置された第2内層パターン(52)を含む、アンテナ装置。
【請求項3】
前記内層パターンは、前記板厚方向において、前記パッチ部と前記上壁部との間に配置された第3内層パターン(53)を含む、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
誘電体を含む基材(21)と、前記基材に配置された導体(22)と、を有する基板(20)と、
前記導体の一部として前記基材に配置され、上壁部(31)と、前記基材の板厚方向において前記上壁部と対向する下壁部(32)と、前記上壁部と前記下壁部とに連なる側壁部(33)と、を有する導波管(30)と、
前記導体の一部として前記基材に配置され、前記板厚方向において前記上壁部に対向するように、アレイ状に配置された複数のパッチ部(41)と、前記パッチ部から前記板厚方向に延設され、前記パッチ部に対して個別に設けられた複数の給電線(42)と、前記パッチ部に対して個別に設けられ、前記パッチ部と前記上壁部とを電気的に接続する複数の短絡部(43)と、を有するアンテナ(40)と、
前記導体の一部として前記基材に配置され、前記導波管のインピーダンスと前記アンテナのインピーダンスとを整合させるために、前記パッチ部に対して個別に設けられた整合部(50)と、を備え、
前記上壁部は、前記給電線に対して個別に形成された複数の開口部(34)を有し、
前記給電線のそれぞれは、対応する前記開口部を通じて前記導波管の内部まで延設されており、
前記整合部は、前記下壁部と対向するように、前記パッチ部から離れた位置で前記給電線に接続された内層パターン(51、52、53)を含み、
前記内層パターンは、前記板厚方向において、前記パッチ部と前記上壁部との間に配置された第3内層パターン(53)を含む、アンテナ装置。
【請求項5】
前記内層パターンは、前記板厚方向において、前記上壁部と前記下壁部との間に配置された第1内層パターン(51)を含む、請求項2~4いずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記整合部は、前記第1内層パターンと、前記導波管内に配置され、前記内層パターンに接続された第2ビア導体(55)と、を含み、前記下壁部の内面に接続されて前記内面から所定の高さを有している、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記給電線のそれぞれは、第1ビア導体(420)を含む、請求項1~6いずれか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アレイアンテナと導波管が、同一の基板に形成されたアンテナ装置を開示している。アレイアンテナへの給電は、ストリップラインを用いている。ライン先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-5164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミリ波帯など帯域が高くなると、ストリップラインからの放射量が増えることで放射損が増加する。また、ストリップラインの電波伝搬のために基板の板厚方向に形成される電界の、基板内に広がる量が増えるため、誘電損失が増加する。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、アンテナ装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、利得を向上しつつ、損失を低減できるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたアンテナ装置は、
誘電体を含む基材(21)と、基材に配置された導体(22)と、を有する基板(20)と、
導体の一部として基材に配置され、上壁部(31)と、基材の板厚方向において上壁部と対向する下壁部(32)と、上壁部と下壁部とに連なる側壁部(33)と、を有する導波管(30)と、
導体の一部として基材に配置され、板厚方向において上壁部に対向するように、アレイ状に配置された複数のパッチ部(41)と、パッチ部から板厚方向に延設され、パッチ部に対して個別に設けられた複数の給電線(42)と、パッチ部に対して個別に設けられ、パッチ部と上壁部とを電気的に接続する複数の短絡部(43)と、を有するアンテナ(40)と、
導体の一部として基材に配置され、導波管のインピーダンスとアンテナのインピーダンスとを整合させるために、パッチ部に対して個別に設けられた整合部(50)と、を備え、
上壁部は、給電線に対して個別に形成された複数の開口部(34)を有し、
給電線のそれぞれは、対応する開口部を通じて導波管の内部まで延設されており、
整合部は、下壁部と対向するように、パッチ部から離れた位置で給電線に接続された内層パターン(51、52、53)を含む。
開示のひとつにおいて、内層パターンは、板厚方向において、上壁部と下壁部との間に配置された第1内層パターン(51)を含み、
整合部は、第1内層パターンと、導波管内に配置され、内層パターンに接続された第2ビア導体(55)と、を含み、下壁部の内面に接続されて内面から所定の高さを有している。
開示の他のひとつにおいて、内層パターンは、開口部に配置された第2内層パターン(52)を含む。
開示の他のひとつにおいて、内層パターンは、板厚方向において、パッチ部と上壁部との間に配置された第3内層パターン(53)を含む。
【0007】
開示されたアンテナ装置によれば、基板に、導波管、アンテナ、および整合部が形成されている。アンテナは、アレイ状に配置された複数のパッチ部を有しており、利得を向上することができる。また、給電線は、パッチ部から開口部を通じて導波管の内部まで延設されている。給電線は、ストリップラインのように板厚方向に対して直交する方向に延びるのではなく、パッチ部から板厚方向に延設されている。よって、ミリ波帯などの高周波帯域でも、給電線からの放射を抑制、つまり放射損失を抑制することができる。また、マイクロストリップラインのように電波伝搬のための板厚方向の電界形成による給電ではないので、基板内に広がる電界量が少なく、給電線による誘電損失を抑制することができる。この結果、損失を低減できるアンテナ装置を提供することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るアンテナ装置の一例を示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3の領域IVを拡大した図である。
図5】4素子の例を示す斜視図である。
図6図5に示したアンテナ装置の分解斜視図である。
図7】4素子の放射特性を示す図である。
図8】2素子の放射特性を示す図である。
図9】変形例を示す断面図である。
図10】第2実施形態に係るアンテナ装置を示す断面図である。
図11】第3実施形態に係るアンテナ装置を示す断面図である。
図12】第4実施形態に係るアンテナ装置を示す断面図である。
図13】第5実施形態に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
図14】放射特性を示す図である。
図15】第6実施形態に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
図16】放射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0011】
(第1実施形態)
アンテナ装置は、所定の動作周波数の電波を送信および/または受信するように構成されている。アンテナ装置は、たとえば、80GHz帯の高速無線伝送システムに用いられる。
【0012】
<アンテナ装置>
先ず、図1図4に基づき、アンテナ装置について説明する。図1は、アンテナ装置の一例の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。図4は、整合部の構成を示すために、図3に一点鎖線で示す領域IVを拡大した図である。つまり、図1図3では、整合部50を簡素化して図示している。図1および図2に示す白抜き矢印は、給電方向を示している。なお、他の図においても、給電方向を白抜き矢印で示す。
【0013】
図1図4に示すように、アンテナ装置10は、基板20と、導波管30と、アンテナ40と、整合部50を備えている。以下においては、基板20の板厚方向をZ方向とし、Z方向に直交する一方向をX方向とする。Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とする。特に断りのない限り、Z方向から平面視した形状、すなわちX方向およびY方向により規定されるXY平面に沿う形状を、平面形状と示す。Z方向からの平面視を、単に平面視と示すことがある。
【0014】
基板20は、基材21と、導体22を有している。基板20は、プリント基板、配線基板と称されることがある。基板20は、一面20aと、一面20aとはZ方向において反対の面である裏面20bを有している。基材21は、樹脂などの誘電体を含む。基材21により、誘電体による波長短縮効果が期待できる。基材21としては、たとえば樹脂のみからなるもの、樹脂とガラス布、不織布などとを組み合わせたもの、セラミックを含むものなどを採用することができる。基材21は、絶縁基材と称されることがある。基材21は、たとえば、誘電体を含む絶縁層を多層に積層して構成される。
【0015】
導体22は、基材21に配置されている。導体22は、プリント基板において、一般的な配線技術を用いて形成されている。導体22は、導体パターンと、ビア導体を含む。導体パターンは、導体層と称されることがある。導体パターンは、基材21に多層に配置されている。つまり、基板20は、多層基板である。導体パターンは、銅箔などの金属箔をパターニングして形成されている。ビア導体は、基材21を構成する絶縁層に形成された貫通孔(ビア)に、めっきなどの導体が配置されてなる。
【0016】
アンテナ装置10において、基板20以外の要素は、導体22の一部として基材21に配置されている。導波管30、アンテナ40、および整合部50は、導体22を用いて構成されている。つまり、導波管30、アンテナ40、および整合部50は、基板20に形成されている。基板20は、導体22として、導波管30、アンテナ40、および整合部50の構成要素のみを含んでもよいし、上記した構成要素とは別の回路要素を含んでもよい。
【0017】
導波管30は、アンテナ40に給電するための伝送経路である。導波管30内を、電波が伝搬する。導波管30は、上記したように、導体22の一部として基材21に配置されている。導波管30は、上壁部31と、下壁部32と、側壁部33を有している。上壁部31、下壁部32、および側壁部33は、基材21に配置された導体22の一部である。上壁部31と下壁部32とは、Z方向に所定の間隔を有して対向配置されている。
【0018】
本実施形態では、下壁部32が、基板20の裏面20b側の表層パターンによって構成されている。表層パターンとは、基材21の表層(表面)に配置された導体パターンである。一方、後述する内層パターンとは、基材21の内部に配置された導体パターンである。上壁部31は、Z方向において、下壁部32と後述するパッチ部41との間に位置している。つまり、上壁部31は、下壁部32よりもパッチ部41に近い位置に配置されている。側壁部33は、上壁部31と下壁部32とに連なっている。このように、導波管30は、周囲を上壁部31、下壁部32、および側壁部33により囲んだトンネル構造の伝送経路である。導波管30はX方向に延びており、X方向の一端側から導波管30に給電される。
【0019】
導波管30は、略矩形の環状をなしている。このような導波管30は、矩形導波管と称されることがある。導波管30の内部には、基材21が配置されている。導波管30において、Y方向の開口長さである幅は、Z方向の開口長さである高さよりも長い。導波管30の幅は、動作周波数の電波の波長λεに対して、0.5×λε以上、1×λε以下の範囲内、つまり1/2波長以上、1波長以下の範囲内で設定されている。波長λεは、誘電体(比誘電率)を考慮した波長である。波長λεは、(300[mm/s]/動作周波数[GHz])/基材21の誘電率の平方根、により求まる。導波管30の高さについては、1/2波長程度、たとえば0.4×λε~0.6×λεの範囲内で設定されている。このような長さの設定により、導波管30内を電波が伝播する。
【0020】
導波管30は、開口部34を有している。開口部34は、上壁部31に形成されている。開口部34は、上壁部31をZ方向に貫通している。開口部34は、後述する給電線42を導波管30の内部まで延設可能とすべく、形成されている。開口部34は、給電線42に対して個別に形成されている。開口部34は、平面視において、対応するパッチ部41の一部と重なるように形成されている。開口部34は、給電線42に接触せず、かつ、導波管30から電波が漏れ出ない大きさで形成されている。
【0021】
開口部34は、平面略円形状をなしている。開口部34の直径Dは、下記(1)式より算出することができる。dは給電線42の直径、εは基材21の比誘電率、Zoは整合部50にて変換されたインピーダンスである。
【数1】
【0022】
アンテナ40は、パッチ部41と、給電線42と、短絡部43を有している。アンテナ40は、上壁部31(導波管30)を、アンテナ40の地板として用いる。上壁部31は、アンテナ40の地板として機能する。地板は、図示しない給電回路に接続されて、アンテナ装置10におけるグランド電位(接地電位)を提供する。上壁部31は、導波管30の下壁部32に開口が設けられ、たとえば標準導波管、同軸ケーブルの外部導体などが電気的に接続されることで、グランド電位を提供する。地板の板面に垂直な方向も、Z方向に略平行である。平面視において、地板の面積は、パッチ部41の面積よりも大きい。地板は、パッチ部41を内包する大きさを有している。地板は、アンテナ40を安定して動作させるための必要な大きさを備えていることが好ましい。
【0023】
パッチ部41は、放射素子として機能するように、導体22の一部として基材21に配置されている。パッチ部41は、上記した導体パターンを含む。パッチ部41を構成する導体パターンのZ方向の配置は、特に限定されない。表層パターンでもよいし、内層パターンでもよい。パッチ部41は、Z方向において地板、つまり上壁部31との間に所定の間隔を有するように、上壁部31に対向配置されている。パッチ部41は、放射素子、アンテナ素子と称されることがある。平面視において、パッチ部41の全体が上壁部31と重なっている。すなわち、パッチ部41の板面(下面)全体が、Z方向において上壁部31に対向している。パッチ部41は、上壁部31に対して略平行に配置されている。略平行とは、完全に平行に限らない。
【0024】
本実施形態のパッチ部41は、基板20の一面20aに配置されている。パッチ部41は、基板20の一面20a側の表層パターンである。パッチ部41の基本形状は、平面略正方形である。基本形状は、平面視においてパッチ部41の外形輪郭である。パッチ部41は、平面視において外形輪郭を規定する4つの辺を有している。パッチ部41は、4つの辺の少なくともひとつに、スリットを有してもよい。
【0025】
パッチ部41は、地板である上壁部31に対向配置されることで、パッチ部41の面積や地板との間隔に応じたキャパシタを形成する。パッチ部41は、短絡部43が備えるインダクタと対象周波数において並列共振するキャパシタを形成する大きさに形成されている。パッチ部41の面積は、所望のキャパシタを提供するように、ひいては動作周波数で動作するように、適宜設計される。
【0026】
本実施形態では、一例としてパッチ部41の基本形状(外形輪郭)を正方形状とするが、その他の構成として、パッチ部41の平面形状は、円形や、正八角形、正六角形などでもよい。パッチ部41の基本形状は、互いに直交する2つの直線のそれぞれを対称の軸として線対称な形状、すなわち2方向線対称形状であることが好ましい。2方向線対称形状とは、ある直線を対称の軸として線対称であって、かつ、その直線と直交する他の直線についても線対称な図形を指す。2方向線対称形状とは、たとえば楕円形、長方形、円形(真円)、正方形、正六角形、正八角形、ひし形などが該当する。また、パッチ部41は、円形、正方形、長方形、平行四辺形など、点対称な図形であることがより好ましい。
【0027】
給電線42は、パッチ部41に給電するために、導体22の一部として基材21に配置されている。給電線42は、パッチ部41に電気的に接続されている。給電線42は、上記したビア導体を含む。給電方式は、直結給電方式に限定されない。給電線42とパッチ部41とを電磁結合させる給電方式を採用してもよい。給電線42の端部のひとつは、パッチ部41と電気的に接続されている。パッチ部41と給電線42との電気的な接続部分が給電点である。給電線42は、Z方向に延びている。給電線42の端部の他のひとつは、導波管30の内部に配置されている。給電線42は、パッチ部41(給電点)から、上壁部31に形成された開口部34を通じて、導波管30の内部まで延設されている。導波管30から給電線42に入力された電流は、パッチ部41に伝搬し、パッチ部41を励振させる。本実施形態の給電線42は、Z方向に並んで配置された複数のビア導体によって構成されている。
【0028】
短絡部43は、地板である上壁部31とパッチ部41とを電気的に接続、すなわち短絡するために、導体22の一部として基材21に配置されている。短絡部43は、上記したビア導体を含む。短絡部43の端部のひとつは上壁部31に接続され、端部の他のひとつはパッチ部41に接続されている。短絡部43は、たとえば平面略円形をなしている。短絡部43の径や長さを調整することによって、短絡部43が備えるインダクタの値(インダクタンス)を調整することができる。短絡部43は、平面視においてパッチ部41の略中心に接続されている。パッチ部41の中心は、パッチ部41の重心に相当する。
【0029】
本実施形態のパッチ部41は平面略正方形をなしているため、中心とは、パッチ部41の2つの対角線の交点に相当する。短絡部43を構成するビア導体の数は特に限定されない。本実施形態では、ひとつのビア導体が短絡部43を構成している。上壁部31とパッチ部41との間に並列配置された複数のビア導体により、短絡部43を構成してもよい。
【0030】
アンテナ40は、上記した構成のパッチ部41、給電線42、および短絡部43を、それぞれ複数有している。複数のパッチ部41は、共通(単一)の上壁部31に対向配置されている。複数のパッチ部41は、平面視においてアレイ状に配置されている。図1図4に示す例では、複数のパッチ部41が、X方向に沿って配列されている。具体的には、3つのパッチ部41が一列に並んでいる。一列に配置されたパッチ部41の中心の間隔は、0.25×λε以上、1×λε以下の範囲内、つまり1/4波長以上、1波長以下の範囲内で設定されている。
【0031】
以下では、パッチ部41の数で素子数を示すことがある。図1図4では、3素子の例を示している。複数の給電線42は、パッチ部41に対して個別に設けられている。給電線42は、複数のパッチ部41に個別に給電可能に構成されている。複数の短絡部43も、パッチ部41に対して個別に設けられている。つまり、パッチ部41ごとに、給電線42および短絡部43が設けられている。
【0032】
整合部50は、導波管30のインピーダンスとアンテナ40のインピーダンスとを整合させる。整合部50は、導波管30とアンテナ40との間でインピーダンスを変換するため、変換部と称されることがある。たとえば、導波管30のインピーダンスは100Ω以上、アンテナ40のインピーダンスは50~75Ωである。整合部50は、たとえば導波管30とアンテナ40の中間のインピーダンスに変換する。整合部50は、導波管30のインピーダンスをアンテナ40のインピーダンスとほぼ等しい値まで変換してもよい。
【0033】
整合部50も、導体22の一部として基材21に配置されている。整合部50は、パッチ部41、つまり放射素子に対して、個別に設けられている。本実施形態の整合部50は、導波管30の内部に配置されている。図4に示すように、整合部50は、内層パターン51と、ビア導体55を含む。内層パターン51が第1内層パターンに相当し、ビア導体55が第2ビア導体に相当する。
【0034】
内層パターン51は、下壁部32と対向するように、パッチ部41から離れた位置で、給電線42に接続されている。内層パターン51は、導波管30の内部に配置されている。内層パターン51は、Z方向において、上壁部31と下壁部32との間に位置している。ビア導体55の端部のひとつは下壁部32を構成する導体パターンに接続され、端部の他のひとつは内層パターン51に接続されている。このように、整合部50は、下壁部32の内面32aに接続され、内面32aから所定の高さを有している。内層パターン51と下壁部32との間に介在するビア導体55の個数は特に限定されない。ひとつのみが配置されてもよいし、複数が配置されてもよい。本実施形態では、ひとつの内層パターン51に対して、3つ以上のビア導体55が配置されている。
【0035】
整合部50は、給電線42の先端に接続されている。整合部50を構成する導体22は、給電線42を構成する導体22に電気的に接続されている。給電線42、および/または、整合部50を含む給電線42は、導波管30の高さの中心よりも下方まで延設されている。つまり、導波管30の内部に配置された給電線42、および/または、整合部50を含む給電線42は、1/4波長以上の長さを有している。
【0036】
図5および図6は、アンテナ装置10のより具体的な構成例を示している。図5は、アンテナ装置10の斜視図である。図5では、整合部50を簡素化して図示している。図6は、分解斜視図である。図5および図6では、4素子の例を示している。4つのパッチ部41は、X方向に一列で配置されている。基材21は、3つの絶縁層210、211、212が積層されてなる。導体パターンは、表層パターンであるパッチ部41および下壁部32と、内層パターンである上壁部31および内層パターン51を有している。つまり、基材21に4層の導体パターンが配置されている。
【0037】
導波管30の側壁部33は、複数のビア導体330により構成されている。複数のビア導体330は、電波が漏れ出ない間隔で配置されている。複数のビア導体330は、X方向の一端側が給電可能に開口し、他端側が閉じるように配置されている。複数のビア導体330は、平面略コの字状(U字状)に配置されている。ビア導体330は、ポストと称されることがある。複数のビア導体330により構成された側壁部33は、ポスト壁と称されることがある。ビア導体330よりなる側壁部33を備えた導波管30は、ポスト壁導波管と称されることがある。
【0038】
給電線42は、ビア導体420により構成されている。ビア導体420が、第1ビア導体に相当する。複数のビア導体420が、開口部34を通じて相互に接続され、給電線42をなしている。短絡部43は、ビア導体430により構成されている。ビア導体430の端部のひとつはパッチ部41に接続され、端部の他のひとつは、上壁部31に接続されている。整合部50は、上記したように、内層パターン51およびビア導体55により構成されている。下壁部32とひとつの内層パターン51との間には、4つのビア導体55が介在している。
【0039】
<アンテナの動作>
次に、アンテナ40の動作について説明する。上記したように、アンテナ40は、互いに対向する地板(上壁部31)およびパッチ部41が、短絡部43によって接続された構造を有している。この構造は、いわゆるマッシュルーム構造であり、メタマテリアルの基本構造と同じである。アンテナ40は、メタマテリアル技術を応用したアンテナであるため、メタマテリアルアンテナと称されることがある。
【0040】
本実施形態のアンテナ40は、所望の動作周波数において、0次の共振モードで動作するように設計されているため、0次共振アンテナと称されることがある。メタマテリアルの分散特性のうち、位相定数βがゼロ(0)となる周波数で共振する現象が0次共振である。位相定数βは、伝送線路を伝搬する波の伝搬係数γの虚部である。アンテナ40は、0次共振が発生する周波数を含む所定帯域の電波を良好に送信および/または受信することができる。
【0041】
アンテナ40は、概略的には、地板とパッチ部41との間に形成されるキャパシタと、短絡部43が備えるインダクタとの、LC並列共振によって動作する。パッチ部41は、その中央領域に設けられた短絡部43で地板に短絡されている。また、パッチ部41の面積は、短絡部43が備えるインダクタと所望の周波数(動作周波数)において並列共振するキャパシタを形成する面積となっている。なお、インダクタの値(インダクタンス)は、短絡部43の各部寸法、たとえば径およびZ方向長さに応じて定まる。
【0042】
このため、動作周波数の電力が給電されると、インダクタとキャパシタとの間のエネルギー交換によって並列共振が生じ、地板とパッチ部41との間には、地板に対して垂直な電界が発生する。すなわち、Z方向の電界が発生する。この垂直電界は、短絡部43からパッチ部41の縁部に向かって伝搬していき、パッチ部41の縁部において垂直偏波となって空間を伝搬していく。なお、ここでの垂直偏波とは、電界の振動方向が地板やパッチ部41に対して垂直な電波を指す。また、アンテナ装置10は、LC並列共振により、アンテナ装置10の外部から到来する垂直偏波を受信する。
【0043】
なお、0次共振は、共振周波数がアンテナサイズによらない。よって、パッチ部41の一辺の長さを0次共振周波数の1/2波長よりも短くすることができる。たとえば、一辺を1/4波長相当の長さにしても、0次共振を生じさせることができる。一辺を1/4波長より短くすることも可能であるが、たとえばゲイン(アンテナ利得)が低下する。
【0044】
<指向性およびアンテナ利得>
図7および図8は、上記した構成のアンテナ装置10について、電磁界シミュレーションを行った結果を示している。図7は、2素子の例を示している。図8は、図5および図6同様、4素子の例を示している。なお、素子数が異なる点を除けば、その他の条件は、図7および図8とで同じにした。たとえば、動作周波数を82.3GHz、誘電率を3.6とした。
【0045】
図7に示すように、2素子の場合、最大利得は、5.9dBiであった。図8に示すように、4素子の場合、最大利得は8.6dBiであった。このように、素子数を増やすことで、アンテナ40の最大利得が向上した。また、2素子、4素子いずれについても、素子(パッチ部41)の並び方向であるX方向に、指向性を示した。
【0046】
<第1実施形態のまとめ>
メタマテリアルアンテナは、単体の利得が低い。このため、利得を向上するには、アレイ化が必要である。メタマテリアルアンテナは、誘電体を含む基板上において、インダクタを構成する短絡部(ビア導体)と、キャパシタを構成する地板およびパッチ部を有して構成される。このような構造のメタマテリアルアンテナをアレイ化するには、ストリップラインを使うことが一般的である。しかし、ストリップラインは、パッチ部との給電点からパッチ部と同一面で延設されており、基板の板厚方向において地板と対向している。このため、ミリ波帯など周波数帯域が高くなると、ストリップラインからの放射量が増えることで放射損が増加する。また、ストリップラインの電波伝搬のために基板の板厚方向に形成される電界の、基板内に広がる量が増えるため、誘電損失が増加する。このように、損失が大きくなる傾向がある。
【0047】
本実施形態では、基板20に、導波管30、アンテナ40、および整合部50が形成されている。アンテナ40は、アレイ状に配置された複数のパッチ部41を有している。アレイ化により、利得を向上することができる。また、給電線42は、パッチ部41から、上壁部31に形成された開口部34を通じて導波管30の内部まで延びている。給電線42は、ストリップラインのようにZ方向に対して直交する方向に延びるのではなく、パッチ部41からZ方向に延びている。よって、ミリ波帯などの高周波帯域でも、給電線42からの放射を抑制、つまり放射損失を抑制することができる。また、マイクロストリップラインのように電波伝搬のためのZ方向の電界形成による給電ではないので、基板20内に広がる電界量が少なく、給電線42による誘電損失を抑制することができる。この結果、損失を低減できるアンテナ装置10を提供することができる。
【0048】
また、本実施形態では、給電線42のそれぞれが、ビア導体420を含む。これにより、基板20において、Z方向に延びる給電線42が実現できる。また、給電線42の構成を、簡素化することができる。
【0049】
また、本実施形態では、整合部50が、導波管30の内部に配置された内層パターン51およびビア導体55を含む。内層パターン51は、下壁部32と対向するように、パッチ部41から離れた位置で給電線42に接続されている。ビア導体55は、内層パターン51に接続されている。そして、整合部50は、下壁部32の内面32aに接続されて内面32aから所定の高さを有している。
【0050】
このように、下壁部32の内面32aから所定高さを有する整合部50を設けることで、導波管30の開口面積は、整合部50の配置部位において非配置部位よりも狭くなる。したがって、導波管30のインピーダンスを、アンテナ40のインピーダンスに近い値、または、アンテナ40のインピーダンスに等しい値に変換することができる。たとえば、導波管30のインピーダンスを100Ω、アンテナ40のインピーダンスを50Ωとすると、整合部50のインピーダンスを、75Ωや50Ωとすることができる。整合部50を、基板20の導体22の一部によって構成できるため、構成を簡素化することができる。整合部50を、給電線42にそれぞれに設けているため、素子のそれぞれと導波管30との間でインピーダンスを整合させることができる。
【0051】
整合部50の構成は、上記した例に限定されない。図9に示す変形例では、整合部50が、図4同様、導波管30の内部に配置されている。整合部50は、多段に配置された内層パターン51およびビア導体55によって構成されている。具体的には、図4に示した整合部50に対して、ビア導体55および内層パターン51を1段分追加した、2段構造となっている。これによれば、整合部50の高さをより高くし、導波管30の開口面積をより小さくすることができる。
【0052】
図9では、パッチ部41に近い上段の内層パターン51の面積が、下段の内層パターン51の面積よりも小さい。これによれば、帯域を広くすることができる。なお、面積とは、平面視した時の面積、つまり下壁部32との対向面積である。上段と下段との大きさの関係は、上記例に限定されない。たとえば、上段を下段と同一の構成としてもよい。また、整合部50の段数は、2段に限定されない。3段以上としてもよい。
【0053】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、上壁部と下壁部の間に位置する内層パターンおよびビア導体により、整合部を構成した。これに代えて、開口部に位置する内層パターンにより、整合部を構成してもよい。
【0054】
図10は、本実施形態に係るアンテナ装置10を示す断面図である。図10は、図2に対応している。図10に示すように、整合部50は、開口部34に配置された内層パターン52を含む。内層パターン52も、下壁部32と対向するように、パッチ部41から離れた位置で給電線42に接続されている。内層パターン52は、給電線42の先端ではなく、途中に接続されている。内層パターン52は、基板20において、上壁部31と同一面に配置されている。内層パターン52が、第2内層パターンに相当する。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0055】
<第2実施形態のまとめ>
上記したように、本実施形態の整合部50は、内層パターン52を含む。内層パターン52を設けることで、導波管30のインピーダンスに対して、キャパシタが並列、インダクタが直列に接続される。これにより、整合部50にてインピーダンスを導波管30よりも小さくし、導波管30のインピーダンスとアンテナ40のインピーダンスを整合させることができる。
【0056】
また、内層パターン52は、上壁部31と同一面に配置されているため、上壁部31と共通の工程で形成することができる。つまり、製造工程を簡素化することができる。
【0057】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、導波管内に位置する内層パターンにより、整合部を構成した。これに代えて、導波管外に位置する内層パターンにより、整合部を構成してもよい。
【0058】
図11は、本実施形態に係るアンテナ装置10を示す断面図である。図11は、図2に対応している。図11に示すように、整合部50は、Z方向においてパッチ部41と上壁部31との間に配置された内層パターン53を含む。内層パターン53も、下壁部32と対向するように、パッチ部41から離れた位置で給電線42に接続されている。内層パターン53は、給電線42の先端ではなく、途中に接続されている。内層パターン53は、平面視において、開口部34よりも小さくてもよいし、開口部34と一致する大きさを有してもよい。さらには、開口部34よりも大きくてもよい。内層パターン53が、第3内層パターンに相当する。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0059】
<第3実施形態のまとめ>
上記したように、本実施形態の整合部50は、内層パターン53を含む。下壁部32から離れた位置に整合部50を設けることで、第2実施形態の構成同様、導波管30のインピーダンスに対して、キャパシタが並列、インダクタが直列に接続される。これにより、整合部50にてインピーダンスを導波管30よりも小さくし、導波管30のインピーダンスとアンテナ40のインピーダンスを整合させることができる。
【0060】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。整合部は、先行実施形態に示した種々の組み合わせが可能である。
【0061】
図12は、本実施形態に係るアンテナ装置10を示す断面図である。図12は、図2に対応している。図12に示すように、整合部50は、図4に示した構成と図11に示した構成の組み合わせとなっている。つまり、整合部50は、導波管30の内部に配置された内層パターン51およびビア導体55と、導波管30の外に配置された内層パターン53を含む。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0062】
<第4実施形態のまとめ>
図12に示す構成によれば、整合部50のうちの内層パターン51およびビア導体55により、導波管30の開口面積が小さくなる。また、整合部50のうちの内層パターン53により、導波管30のインピーダンスにキャパシタおよびインダクタが接続される。この2つの作用により、整合部50にてインピーダンスを導波管30よりも小さくし、導波管30のインピーダンスとアンテナ40のインピーダンスを整合させることができる。
【0063】
なお、整合部50は、図12に示す例以外にも、種々の組み合わせが可能である。たとえば、整合部50として、図4に示した構成と図10示した構成の組み合わせを採用してもよい。図10図11との組み合わせにおいて、図4に示した構成に代えて、図9に示した構成を採用してもよいのは言うまでもない。
【0064】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、パッチ部を一列に配置していた。これに代えて、パッチ部を複数列に配置してもよい。
【0065】
図13は、本実施形態に係るアンテナ装置10を示す斜視図である。図13は、図5に対応している。図13に示すように、アンテナ40は、複数の素子列44を含む。素子列は、アレイ列と称されることがある。具体的には、4つの素子列44を含む。素子列44のそれぞれは、6つのパッチ部41を有している。ひとつの素子列44を構成する6つのパッチ部41は、上記した所定の間隔を有して、X方向に並んで配置されている。X方向において隣り合う間隔は、各素子列44において互いに等しくされている。4つの素子列44は、Y方向に並んで配置されている。複数のパッチ部41は、格子状に配置されている。
【0066】
導波管30は、素子列44に対応して、基板20に複数設けられている。具体的には、側壁部33を構成するビア導体330によって、4つの導波管30が区画形成されている。導波管30のそれぞれは、X方向に延設されている。4つの導波管30は、Y方向に並んで配置されている。4つの導波管30の直上に、素子列44がそれぞれ配置されている。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0067】
<第5実施形態のまとめ>
図14は、図13に示したアンテナ装置10について、電磁界シミュレーションを行った結果を示している。シミュレーションの条件は、素子数が異なる点を除けば、図7および図8と同じにした。ここでも、動作周波数を82.3GHz、誘電率を3.6とした。
【0068】
図14に示すように、最大利得は、13.3dBiであった。このように、X方向だけでなく、Y方向にも素子数を増やすことで、アンテナ40の最大利得がさらに向上した。また、アンテナ40は、X方向に指向性を示した。
【0069】
ひとつの素子列44を構成するパッチ部41の数は6つに限定されない。また、素子列44の数も4に限定されない。
【0070】
(第6実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0071】
図15は、本実施形態に係るアンテナ装置10を示す斜視図である。図15は、図13に対応している。図15に示すように、アンテナ装置10は、位相器60を備えている。位相器60は、導波管30に対して個別に設けられている。位相器60は、アンテナ40の素子列44に流す電流の位相を調整する。位相器60を備えたアンテナ40は、フェーズドアレイアンテナと称されることがある。
【0072】
導波管30は、ビア導体330によって、X方向の両端が閉じた構成となっている。それぞれの導波管30において、下壁部32には、開口部35が形成されている。開口部35は,X方向において、導波管30の一端側に形成されている。開口部35は、下壁部32をZ方向に貫通している。位相器60は、開口部35を通じて導波管30に接続されている。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0073】
<第6実施形態のまとめ>
図16は、図15に示したアンテナ装置10について、電磁界シミュレーションを行った結果を示している。図16は、XY面に沿う放射指向性を示している。シミュレーションの条件は、図13と同じにした。図16には、4つの素子列44の位相を同位相とした場合、それぞれの位相を15度ずつずらした場合、それぞれの位相を-15度ずつずらした場合の結果を示している。
【0074】
図16に示すように、同位相の場合、メインビームの放射方向は、X方向である。位相をずらすと、同位相の放射方向を基準として、メインビームの放射方向を左右にずらすことができる。このように、アンテナ40の各素子列44に流す電流の位相を調整することにより、ビームを任意方向に向けることができる。
【0075】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0076】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0077】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0078】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0079】
上壁部31と下壁部32との間に配置される整合部50として、内層パターン51およびビア導体55を含む例を示したが、これに限定されない。内層パターン51のみを含む構成としてもよい。つまり、整合部50が、上壁部31と下壁部32との間に配置され、かつ、下壁部32に接続されない構成としてもよい。
【0080】
整合部50を含む給電線42が下壁部32に接続される例を示したが、これに限定されない。上記したように、給電線42、および/または、整合部50を含む給電線42は、導波管30からの給電のために、導波管30の高さの中心よりも下方まで延設されていればよい。たとえば、図10に示した構成において、給電線42が下壁部32に接続されない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…アンテナ装置、20…基板、20a…一面、20b…裏面、21…基材、210、211、212…絶縁層、22…導体、30…導波管、31…上壁部、32…下壁部、32a…内面、33…側壁部、330…ビア導体、34…開口部、40…アンテナ、41…パッチ部、42…給電線、420…ビア導体、43…短絡部、430…ビア導体、44…素子列、50…整合部、51、52、53…内層パターン、55…ビア導体、60…位相器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16