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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/56 20060101AFI20241203BHJP
   H05K 3/22 20060101ALI20241203BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20241203BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20241203BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20241203BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C25D5/56 C
H05K3/22 D
H05K3/46 N
H05K3/46 G
H05K3/00 N
C25D5/02 D
C25D17/00 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021025668
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127486
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 春樹
(72)【発明者】
【氏名】森 連太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒田 圭児
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】村井 盾哉
(72)【発明者】
【氏名】柳本 博
(72)【発明者】
【氏名】中村 賢治
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 朋也
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2014/065207(JP,A1)
【文献】特開2017-133085(JP,A)
【文献】特開2016-125087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0090660(US,A1)
【文献】特開2019-062195(JP,A)
【文献】特開2017-112223(JP,A)
【文献】特開2002-321079(JP,A)
【文献】特開2014-121734(JP,A)
【文献】国際公開第2006/033315(WO,A1)
【文献】特開平02-011773(JP,A)
【文献】特開2005-202412(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098870(WO,A1)
【文献】Kock-Yee LAW,“Definitions for Hydrophilicity, Hydrophobicity, and Superhydrophobicity: Getting the Basics Right”,The Journal of Physical Chemistry Letters,2014年02月20日,Vol. 5, No. 4,p.686-688,DOI: 10.1021/jz402762h
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/56
H05K 3/22
H05K 3/46
H05K 3/00
C25D 5/02
C25D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基材と、前記絶縁性基材上に設けられた所定の配線パターンを有する配線層と、を備える配線基板の製造方法であって、
(a)パターン付き基材を準備するステップであって、
ここで、前記パターン付き基材が、
前記絶縁性基材と、
前記絶縁性基材上に設けられた、前記配線パターンに応じた所定パターンを有する第1の部分及び第1の部分以外の部分である第2の部分からなる、80nm以上の厚さを有する導電性のシード層と、
前記シード層の第2の部分上に設けられた、12.5μm未満の厚さを有する絶縁層と、を備え、
前記絶縁層が、前記シード層の第2の部分上に設けられた主絶縁層、及び前記主絶縁層上に設けられた撥水層を備え、前記撥水層の表面の水の接触角が90度超であり、
前記ステップ(a)が、
前記シード層の第1の部分及び第2の部分上に、前記絶縁層を形成することと、
第1の部分上の前記絶縁層に、355nm以下の波長及び7ps以下のパルス幅を有するレーザービームを照射して、第1の部分上の前記絶縁層を除去することと、
を含む、ステップと、
(b)前記シード層の第1の部分上に金属層を形成するステップであって、前記金属層の上面が前記絶縁層の上面より高く、
ここで、前記パターン付き基材と陽極との間に、金属イオンを含む固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜と前記シード層とを圧接させながら、前記陽極と前記シード層との間に電圧を印加する、ステップと、
(c)前記絶縁層、及び前記シード層の第2の部分を除去するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記レーザービームが、1ps以下のパルス幅を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板の製造方法として、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、及びフルアディティブ法が知られている。一般に、高密度な配線基板の製造には、セミアディティブ法が用いられる。
【0003】
特許文献1には、セミアディティブ法を用いた配線基板の製造方法が開示されている。具体的には、ベース層、誘電体層、シード層、及び第1めっき層をこの順に積層し、フォトリソグラフィー法により、第1めっき層上にパターン付きレジストを形成し、第1めっき層の、パターン付きレジストから露出した部分上に、第2めっき層を形成し、次いで、パターン付きレジストを除去し、第2めっき層をマスクとして第1めっき層及びシード層を除去して、配線基板を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-225524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるようなめっき法を用いたセミアディティブ法では、形成する第2めっき層の厚み以上の厚みを有するパターン付きレジストを形成する必要がある。しかし、厚みの大きいパターン付きレジストの形成は、多くの工程を要する。また、このようなパターン付きレジストの除去は、多くの工程を要するだけでなく、多量の廃液を発生させる。
【0006】
そこで、レジスト(絶縁層)の厚みを低減することができる配線基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に従えば、
絶縁性基材と、前記絶縁性基材上に設けられた所定の配線パターンを有する配線層と、を備える配線基板の製造方法であって、
(a)パターン付き基材を準備するステップであって、
ここで、前記パターン付き基材が、
前記絶縁性基材と、
前記絶縁性基材上に設けられた、前記配線パターンに応じた所定パターンを有する第1の部分及び第1の部分以外の部分である第2の部分からなる、導電性のシード層と、
前記シード層の第2の部分上に設けられた絶縁層と、を備える、ステップと、
(b)前記シード層の第1の部分上に、前記絶縁層よりも大きい厚みを有する金属層を形成するステップであって、
ここで、前記パターン付き基材と陽極との間に、金属イオンを含む溶液を含有する樹脂膜を配置し、前記樹脂膜と前記シード層とを圧接させながら、前記陽極と前記シード層との間に電圧を印加する、ステップと、
(c)前記絶縁層、及び前記シード層の第2の部分を除去するステップと、
を含む、方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の配線基板の製造方法により、絶縁層の厚みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
図2図2は、実施形態に係る配線基板の製造方法の、パターン付き基材を準備するステップを示すフローチャートである。
図3図3は、シード層を形成するステップを表す概念図である。
図4図4は、絶縁層を形成するステップを表す概念図である。
図5図5は、絶縁層にレーザービームを照射するステップを表す概念図である。
図6図6は、金属層を形成するステップを表す概念図である。
図7図7は、絶縁層及びシード層の第2の部分を除去するステップを表す概念図である。
図8図8は、絶縁層及びシード層の第2の部分を除去するステップを表す概念図である。
図9図9は、金属層を形成するステップで用いる成膜装置を示す概略断面図である。
図10図10は、ハウジングを所定高さまで下降させた、図9に示す成膜装置を示す概略断面図である。
図11図11は、第1変形形態に係る配線基板の製造方法の、パターン付き基材を準備するステップを示すフローチャートである。
図12図12は、第3変形形態に係る配線基板の製造方法におけるパターン付き基材の概念図である。
図13図13は、実施例10の配線基板の断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
以下、適宜図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図面において、同一の部材又は同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率が説明の都合上実際の比率とは異なったり、部材の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。
【0011】
実施形態の配線基板の製造方法は、図1に示すように、パターン付き基材を準備するステップ(S1)と、金属層を形成するステップ(S2)と、絶縁層及びシード層の第2の部分を除去するステップ(S3)と、を含む。パターン付き基材を準備するステップ(S1)は、図2に示すように、シード層を形成するステップ(S11)と、絶縁層を形成するステップ(S12)と、絶縁層にレーザービーム(レーザー光)を照射するステップ(S13)と、を含んでよい。以下、各ステップを説明する。
【0012】
(1)パターン付き基材を準備するステップ(S1)
a)シード層の形成(S11)
まず、図3に示すように、絶縁性基材11上にシード層13を形成する。
【0013】
絶縁性基材11としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂基材等の樹脂及びガラスを含む基材、樹脂製の基材、ガラス製の基材等を用いることができる。絶縁性基材11に用いられる樹脂の例として、PET樹脂、PI樹脂、LCP(液晶ポリマー)、エポキシ樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、PS樹脂、EVA樹脂、PMMA樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂、PA樹脂、POM樹脂、PC樹脂、PP樹脂、PE樹脂、エラストマーとPPを含むポリマーアロイ樹脂、変性PPO樹脂、PTFE樹脂、ETFE樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート、シリコーン樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂にシアネート樹脂を加えた樹脂等が挙げられる。
【0014】
シード層13の材料は、導電性であり且つ後述するステップ(S3)においてシード層13をエッチングすることが可能であれば、特に限定されない。例えば、シード層13の材料は、Pt、Pd、Rh、Cu、Ag、Au、Ti、Al、Cr、Si、若しくはそれらの合金、FeSi、CoSi、MoSi、WSi、VSi、ReSi1.75、CrSi、NbSi、TaSi、TiSi、ZrSi等のシリサイド、特に遷移金属ケイ化物、TiO、SnO、GeO、ITO(酸化インジウムスズ)等の導電性金属酸化物、又は導電性樹脂であってよい。後述するレーザービームを照射するステップ(S13)において、十分な厚さを有するシード層13が残存するように、シード層13は、80nm以上、好ましくは100nm以上の厚みを有してよい。また、製造コストの観点から、シード層13は、1000nm以下、好ましくは500nm以下の厚みを有してよい。
【0015】
シード層13は、絶縁性基材11の主面11aの全体に形成されてよい。シード層13は任意の方法で形成してよい。例えば、スパッタリング法等のPVD(物理気相蒸着)法、CVD(化学気相蒸着)法、無電解めっき法によりシード層13を形成することができる。あるいは、導電性粒子の分散液を絶縁性基材11の主面11aに塗布し、該分散液を固化することにより、シード層13を形成することもできる。分散液の分散媒として、加熱により揮発する液体、例えばデカノールを用いることができる。分散液は、添加剤を含んでもよい。添加剤の例として、炭素数が10~17個の直鎖脂肪酸塩が挙げられる。分散液の塗布方法は特に限定されない。例えば、ダイコート法、ディップコート法、スピンコート法が挙げられる。分散液を固化する方法は、特に限定されない。例えば、加熱により分散媒を揮発させるとともに導電性粒子を焼結することにより、分散液を固化することができる。
【0016】
シード層13は、図3に示すように、第1の部分R1、及び第1の部分R1以外の部分である第2の部分R2からなる。第1の部分R1は、実施形態の製造方法により製造される配線基板の配線パターンに応じた所定パターンを有する。
【0017】
シード層13と絶縁性基材11の間の密着性を向上させるために、シード層13を形成する前に、絶縁性基材11の主面11aを表面処理してもよい。例えば、絶縁性基材11の主面11a上にプライマ等の層を形成してもよい。プライマとしては、ポリイミドやポリアミドイミド等を用いることができる。また、絶縁性基材11の主面11aを粗面化してもよい。粗面化は、レーザー照射、エッチング、デスミア処理、機械加工(研磨、研削)等により行うことができる。
【0018】
b)絶縁層の形成(S12)
図4に示すように、シード層13上に絶縁層16を形成する。すなわち、シード層13の第1の部分R1及び第2の部分R2上に絶縁層16を形成する。
【0019】
絶縁層16の材料は、絶縁性であり且つレーザービームの照射により除去可能な材料であれば特に限定されない。絶縁層16の材料の例として、EP(エポキシ)樹脂、レゾール型PF(フェノール)樹脂、UF(ユリア)樹脂、MF(メラミン)樹脂、UP(不飽和ポリエステル)樹脂、PUR(ポリウレタン)樹脂、DAP(ジアリルフタレート)樹脂、SI(シリコーン)樹脂、ALK(アルキド)樹脂、熱硬化性PI(ポリイミド)樹脂、PPO(ポリフェニレンオキシド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂等の熱硬化性樹脂、及びPE(ポリエチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン共重合体)樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)樹脂、アクリル樹脂(例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂)、ノボラック型PF樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0020】
絶縁層16は、ダイコート法、ディップコート法、スピンコート法等の任意の方法により形成することができる。また、絶縁層16は、ドライフィルムレジストなどの絶縁性フィルムをシード層13に重ねることによって形成することもできる。
【0021】
絶縁層16は、後述する金属層を形成するステップ(S2)で形成される金属層14よりも小さい厚みを有する。また、絶縁層16は、12.5μm未満、10μm以下、又は7μm以下の厚みを有してよい。それにより、後続のレーザービームを照射するステップ(S13)において、シード層13の第1の部分R1上の絶縁層16を除去し、シード層13の第1の部分R1を露出させることができる。また、絶縁層16は、十分な絶縁性を確保する観点から、0.5μm以上、特に1μm以上の厚みを有してよい。
【0022】
c)絶縁層へのレーザービームの照射(S13)
シード層13の第1の部分R1上の絶縁層16にレーザービームを照射して、レーザーアブレーションによりシード層13の第1の部分R1上の絶縁層16を除去する。それにより、図5に示すように、シード層13の第1の部分R1が露出する。一方で、シード層13の第2の部分R2上の絶縁層16は残留する。絶縁層16へのレーザービームの照射は、絶縁層16をレーザービームで走査することにより行ってよい。
【0023】
レーザービームは、パルスレーザービームであってよい。また、レーザービームは、580nm以下の波長及び15ps以下のパルス幅を有してよい。後述する実施例で示すように、このようなレーザービームを用いることにより、絶縁層16を選択的に除去することができる。特に、レーザービームの波長は400nm以下であってもよい。また、レーザービームのパルス幅は1ps以下であってもよい。後述する実施例で示すように、このようなレーザービームを用いることにより、デブリの発生を低減することができる。また、400nm以下の波長を有するUVレーザーを用いることにより、絶縁層16の微細加工が容易となり、例えば、線幅と間隔(L/S)が5μm以下である配線パターンの形成が容易になる。レーザービームの波長は、10nm以上、好ましくは250nm以上であってよい。レーザービームのパルス幅は、0.1ps以上であってよい。なお、ここで、パルス幅とは、パルス持続時間と同義であり、単一のパルスにおける時間強度分布の半値全幅(FWHM)を意味する。
【0024】
周波数、強度、スポット径、空間強度分布、走査速度等のその他の各種のレーザービームの照射条件は、絶縁層16の材料及び厚み、シード層13の材料及び厚み、製造する配線基板の配線パターンのL/S等に応じて適宜設定してよい。例えば、レーザービームはトップハット型の空間強度分布を有してよい。それにより、絶縁層16の一部が溶融してアブレーションされずに残存することを抑制できる。
【0025】
こうして、絶縁性基材11と、絶縁性基材11上に設けられた導電性のシード層13と、シード層13上に設けられた絶縁層16と、を含む、パターン付き基材10が得られる。シード層13は、絶縁層16に被覆されずに露出している第1の部分R1と、第1の部分R1以外の部分である第2の部分R2からなり、第2の部分R2の上には絶縁層16が設けられている。すなわち、シード層13の第2の部分R2は絶縁層16により被覆されている。
【0026】
(2)金属層を形成するステップ(S2)
図6に示すように、シード層13の第1の部分R1上に金属層14を形成する。金属層14の材料としては、Cu、Ni、Ag、Au等が挙げられ、好ましくはCuであってよい。金属層14は、絶縁層16よりも大きい厚みを有する。また、金属層14は、例えば1~100μmの厚みを有してよい。
【0027】
金属層14の形成に用いる成膜装置50の一例を図9及び図10に示す。成膜装置50は、シード層13に対向するように配置される金属製の陽極51と、陽極51とパターン付き基材10との間に配置される樹脂膜52と、陽極51とシード層13との間に電圧を印加する電源部54と、を備える。
【0028】
成膜装置50は、さらに、ハウジング53を備える。ハウジング53には、陽極51と、金属層14の材料である金属のイオンを含む溶液(以下、金属溶液という)Lと、が収容される。ハウジング53は、図9に示すように、陽極51と樹脂膜52との間に、金属溶液Lが収容される空間を画成してよい。この場合、陽極51は、金属層14の材料と同じで且つ金属溶液Lに可溶な材料(例えばCu)から形成された板状部材、又は金属溶液Lに不溶な材料(例えばTi)から形成された板状部材であり得る。陽極51と樹脂膜52との間に金属溶液Lが収容される成膜装置50では、樹脂膜52とパターン付き基材10とを均一な圧力で圧接させることができるため、パターン付き基材10の全体にわたり、シード層13の第1の部分R1上に均一に金属層14を形成することが可能である。そのため、このような成膜装置50は、微細な配線パターンの形成に好適である。
【0029】
なお、図には示していないが、陽極51と樹脂膜52とが接触していてもよい。この場合、陽極51は、金属溶液Lを透過することができる多孔質体から形成されてよく、陽極51の樹脂膜52と接触する面の反対の面が、金属溶液Lが収容される空間と接触していてよい。
【0030】
樹脂膜52として、固体電解質膜又は多孔膜を用いることができる。
【0031】
固体電解質膜としては、例えば、デュポン社製のナフィオン(登録商標)等のフッ素系樹脂、炭化水素系樹脂、ポリアミック酸樹脂、旭硝子社製のセレミオン(CMV、CMD、CMFシリーズ)等の陽イオン交換機能を有する樹脂の膜が挙げられる。
【0032】
多孔膜としては、例えば、ポリオレフィン鎖から構成される膜が挙げられる。ここで、ポリオレフィンとは、オレフィンの重合体(ポリマー)のすべてを指し、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物を包含する。ポリオレフィン鎖は、架橋又は非架橋であってよく、飽和又は不飽和であってよく、直鎖状でも分枝していてもよい。ポリオレフィン鎖は、置換又は非置換であってよい。ポリオレフィン鎖の好ましい実施形態として、側鎖を有さない、架橋又は非架橋のポリエチレン鎖が例示できる。多孔膜は、イオン交換性官能基を有さなくてよい。
【0033】
多孔膜は、20~2000nm、又は27~1000nmの空孔径を有してよい。空孔径が上記範囲内であることにより、高い電流効率での金属層14の形成が可能になる。ここで、空孔径は、空孔径分布の体積平均を意味する。空孔径分布は、JIS R 1655:2003に準じる水銀圧入法により求めることができる。水銀圧入法とは、圧力をかけて水銀を開気孔に浸入させ、開気孔に浸入した水銀の体積とその時加えた圧力値の関係を求め、その結果に基づき、開気孔を円柱状と仮定してWashburnの式から開気孔の径を算出する方法である。多孔膜は、5~500s/100cm又は10~260s/100cmの透気度を有してよい。透気度が上記範囲内であることにより、高い電流効率での金属層14の形成が可能になる。透気度は、JIS L 1096-6-27-1A、又は、ASTM D737に準じて測定される。多孔膜は、35~90%、又は45~80%の空孔率(気孔率)を有してよい。空孔率が上記範囲内であることにより、高い電流効率での金属層14の形成が可能になる。空孔率は、単位体積中に含まれる空孔の割合である。多孔膜のみかけの密度(かさ密度)をρ、多孔膜の真密度(多孔膜を構成するポリマーの密度)をρとすると、空孔率pは、p=1-ρ/ρと表される。多孔膜のかさ密度ρは多孔膜の重量及び外寸体積から求めることができる。多孔膜の真密度はヘリウムガス置換法により測定される。多孔膜は、750~3000kgf/cm、又は1000~2400kgf/cmでの引張強度を有してよい。引張強度が上記範囲内であることにより、より平坦な金属層14の形成が可能になる。引張強度は、JIS K 7127:1999に準じて測定される。多孔膜は、5~85%、又は15~80%の引張伸び度を有してよい。引張伸び度が上記範囲内であることにより、より平坦な金属層14の形成が可能になる。引張伸び度は、JIS C 2151、若しくは、ASTM D882に準じて測定される。多孔膜として、市販の電池用セパレータを用いることができる。市販のセパレータは固体電解質膜と比べて低コストであるとともに、さらなる低廉化が期待される。
【0034】
樹脂膜52を金属溶液Lに接触させると、金属溶液Lが樹脂膜52に浸透する。その結果、樹脂膜52は、金属溶液Lを内部に含有する。樹脂膜52は、例えば、約5μm~約200μmの厚みを有してよい。
【0035】
金属溶液Lは、金属層14の材料である金属(例えばCu、Ni、Ag、Au等)をイオンの状態で含有する。金属溶液Lは、硝酸イオン、リン酸イオン、コハク酸イオン、硫酸イオン、ピロリン酸イオンを含んでよい。金属溶液Lは、金属の塩、例えば、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、ピロリン酸塩等の水溶液であってよい。
【0036】
さらに、成膜装置50は、ハウジング53の上部に、ハウジング53を昇降させる昇降装置55を備える。昇降装置55は、例えば、油圧式又は空圧式のシリンダ、電動式のアクチュエータ、リニアガイド、モータ等を含んでよい。
【0037】
ハウジング53は、供給口53aと排出口53bとを有する。供給口53a及び排出口53bは、配管64を介してタンク61に接続される。配管64に接続されたポンプ62によってタンク61から送り出された金属溶液Lは、供給口53aからハウジング53内に流入し、排出口53bを介してハウジング53から排出されてタンク61に戻る。配管64には、排出口53bの下流において、圧力調整弁63が設けられる。圧力調整弁63及びポンプ62によりハウジング53内の金属溶液Lの圧力を調整することができる。
【0038】
成膜装置50は、さらに、パターン付き基材10を載置する金属台座56と、パターン付き基材10のシード層13と金属台座56とを電気的に接続するための導電部材57と、を備える。導電部材57は、パターン付き基材10の縁部の一部を覆うとともに、部分的に折り曲げられて金属台座56に接触する金属板であってよい。これにより、金属台座56が導電部材57を介してシード層13に電気的に接続される。なお、導電部材57は、パターン付き基材10に脱着可能であってよい。
【0039】
電源部54の負極は、金属台座56を介してシード層13に電気的に接続され、電源部54の正極は、陽極51に電気的に接続される。
【0040】
以下のようにして、成膜装置50を用いて金属層14を形成することができる。
【0041】
図9に示すように、金属台座56上の所定位置にパターン付き基材10及び導電部材57を載置する。次いで、図10に示すように、昇降装置55によりハウジング53を所定高さまで下降させる。
【0042】
次いで、ポンプ62により金属溶液Lを加圧する。すると、圧力調整弁63によりハウジング53内の金属溶液Lが、所定の圧力に保たれる。また、樹脂膜52が、パターン付き基材10の表面、すなわち、シード層13の第1の部分R1及び絶縁層16の表面に倣うように変形し、シード層13の第1の部分R1及び絶縁層16の表面に接触する。それにより、樹脂膜52に含有される金属溶液Lが、シード層13の第1の部分R1及び絶縁層16の表面に接触する。樹脂膜52は、ハウジング53内の金属溶液Lの圧力で、シード層13の第1の部分R1及び絶縁層16の表面に均一に押圧される。
【0043】
電源部54により、陽極51とシード層13との間に電圧を印加する。すると、シード層13の第1の部分R1に接触した金属溶液Lに含まれる金属イオンがシード層13の第1の部分R1の表面で還元され、シード層13の第1の部分R1の表面に金属が析出する。一方、絶縁層16の表面では金属イオンの還元反応は起こらないため、金属は析出しない。それにより、シード層13の第1の部分R1上に選択的に金属層14が形成される。なお、陽極51とシード層13との間に印加する電圧は、適宜設定してよい。より高い電圧を印加することにより、金属の析出速度を高めることができる。また、金属溶液Lを加熱してもよい。それにより、金属の析出速度を高めることができる。
【0044】
絶縁層16の厚みを超える所定厚みを有する金属層14が形成されるまで、陽極51とシード層13の間の電圧の印加を継続する。金属層14の厚みが絶縁層16の厚みを超えた後も、金属層14の水平方向(すなわち、金属層14の厚み方向に垂直な方向)の寸法の増加を抑制しながら、金属層14の厚みを増加させることができる(図6参照)。すなわち、金属層14は、シード層13の第1の部分R1のパターンのL/Sに対応するL/Sを有することができる。その後、陽極51とシード層13の間の電圧の印加を停止し、ポンプ62による金属溶液Lの加圧を停止する。そして、ハウジング53を所定高さまで上昇させ(図9参照)、樹脂膜52と金属層14を離間させる。金属層14が形成されたパターン付き基材10を金属台座56から取り外す。
【0045】
(3)絶縁層及びシード層の第2の部分を除去するステップ(S3)
図7に示すように、絶縁層16を除去し、次いで、図8に示すように、シード層13の第2の部分R2を除去する。それにより、絶縁性基材11の主面11a上に、シード層13の第1の部分R1及び金属層14を含む、所定の配線パターンを有する配線層2が形成される。
【0046】
絶縁層16及びシード層13の第2の部分R2は、エッチングにより除去することができる。絶縁層16及びシード層13の第2の部分R2のエッチング法は、乾式及び湿式のいずれであってもよい。乾式エッチングの例として、反応性ガスエッチング法、スパッタエッチング法、プラズマエッチング法、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)法、反応性イオンビームエッチング法、ラジカルエッチング法、光励起エッチング法、レーザーアシストエッチング法、レーザーアブレーションエッチング法が挙げられる。反応性イオンエッチング法には、容量結合型プラズマ(CCP)、誘導結合型プラズマ(ICP)、又はマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマを用いることができる。乾式エッチングに用いるエッチングガスは、絶縁層16及びシード層13の第2の部分R2の各材質に応じて、適宜選択してよい。エッチングガスの例として、CF、SF、ホウ素、塩素、HBr、BClが挙げられる。湿式エッチングでは、酸又はアルカリの溶液をエッチング液として用いることができる。エッチング液は絶縁層16及びシード層13の第2の部分R2の各材質に応じて、適宜選択してよい。
【0047】
以上のようにして、絶縁性基材11と、絶縁性基材11上に設けられた所定の配線パターンを有する配線層2と、を備える配線基板1が製造される。
【0048】
本実施形態では、図9及び図10に示されるような樹脂膜52を用いた成膜装置を用いて金属層14を形成するため、絶縁層16よりも大きい厚みを有する金属層14を形成することができる。したがって、絶縁層16の厚みを低減することができる。
【0049】
[変形形態]
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができる。例えば、以下の変形が可能である。
【0050】
第1変形形態
本変形形態において、パターン付き基材10を準備するステップ(S1)は、図11に示すように、シード層13を形成するステップ(S11)と、絶縁層16を形成するステップ(S14)と、絶縁層16にレーザービーム(レーザー光)を照射するステップ(S15)と、シード層13の第1の部分R1上の絶縁層16を除去するステップ(S16)を含む。上述した実施形態では、絶縁層16にレーザービームを照射するステップ(S13)において、レーザーアブレーションによりシード層13の第1の部分R1上の絶縁層16を除去したが、本変形形態では、レーザービームを用いたフォトリソグラフィー(レーザーフォトリソグラフィー)により、シード層13の第1の部分R1上の絶縁層16を除去する。
【0051】
シード層13を形成するステップ(S11)は、上記実施形態のステップ(S11)と同様であるため、説明を省略する。なお、本変形形態では、シード層13の厚みは、金属層14を形成するステップ(S2)において金属層14がパターン付き基材10の全体にわたって均一に形成されるように、及び配線基板1の製造コストが抑制されるように、適宜設定してよい。
【0052】
絶縁層16を形成するステップ(S14)では、絶縁層16として、ポジ型又はネガ型レジストの層を形成する。ポジ型又はネガ型のレジストとしては、一般的なフォトリソグラフィープロセスにおいて使用される任意のレジスト材料を使用してよい。絶縁層16の形成方法は、上記実施形態のステップ(S12)で説明した方法と同様であるため説明を省略する。なお、本変形形態では、絶縁層16の厚みは、絶縁層16が、十分な絶縁性を有するとともに、後続のステップ(S15)及びステップ(S16)でパターニング可能であるように、適宜設定してよい。
【0053】
絶縁層16にレーザービームを照射するステップ(S15)では、シード層13の第1の部分R1上又は第2の部分R2上のいずれかの絶縁層16にレーザービームを照射する。絶縁層16がポジ型レジスト層の場合は、シード層13の第1の部分R1上の絶縁層16にレーザービームを照射し、絶縁層16がネガ型レジスト層の場合は、シード層13の第2の部分R2上の絶縁層16にレーザービームを照射する。
【0054】
絶縁層16へのレーザービームの照射は、絶縁層16をレーザービームで走査することにより行ってよい。レーザービームは、パルス波であってもよいし、連続波(CW)であってもよい。レーザービームの波長、強度、スポット径、空間強度分布、走査速度、パルス幅、周波数等の各種照射条件は、絶縁層16の材料及び厚み、製造する配線基板の配線パターンのL/S等に応じて適宜設定してよい。例えば、レーザービームの波長は、10~580nmの範囲内であってよいが、これに限定されるものではない。
【0055】
次いで、シード層13の第1の部分R1上の絶縁層16を、現像液で溶解して除去する(ステップ(S16))。それにより、図5に示されるようなパターン付き基材10が得られる。現像液は、絶縁層16の材料に応じて適宜選択される。
【0056】
第2変形形態
本変形形態では、上述したレーザーアブレーション及びレーザーフォトリソグラフィーの代わりに、その他のパターニング法(例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷等の印刷法、フォトリソグラフィー)が、絶縁層16のパターニング法として適用される。
【0057】
第3変形形態
本変形形態では、パターン付き基材を準備するステップ(S1)において、図12に示すようなパターン付き基材10を準備する。図12において、絶縁層16は、シード層13の第2の部分R2上に形成された主絶縁層16aと、主絶縁層16a上に形成された撥水層16bとを備える。撥水層16bの表面の水の接触角は、90度超、特に120度以上であってよい。それにより、金属層を形成するステップ(S2)において、絶縁層16上に金属が析出する可能性を低減することができる。
【0058】
主絶縁層16aは、上記実施形態の絶縁層を形成するステップ(S12)又は上記第1変形形態の絶縁層を形成するステップ(S14)における絶縁層16の形成方法と同様にして形成することができる。
【0059】
主絶縁層16aの形成に続いて、主絶縁層16a上に撥水層16bを形成する。撥水層16bは、例えば、式SiR-X4-n(式中、nは1、2、3、又は4を表し、Rは、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、アルキルシリル基、又はフルオロシリル基を表し、Xは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、酸素、又は窒素を表す)で表される有機シラン、式SiR-(NR-SiR-R(式中、mは1以上の整数を表し、Rは、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、アルキルシリル基、又はフルオロシリル基を表す。)で表される有機シラザン等を用いて形成することができる。有機シランの例として、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシランが挙げられる。有機シラザンの例として、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
【0060】
撥水層16bは、ディップコート法、ミストコート法、スプレーコート法、CVD法、LB(Langmuir Blogetto)法等の任意の方法により形成することができる。なお、ミストコート法とは、超音波振動子を用いて金属元素を含む原料溶液を霧化してミストを形成し、ミストを所定の表面に供給し、この表面上で熱エネルギー等によりミストを分解及び/又は反応させることにより、この表面上に金属元素を含む薄膜を形成する方法である。
【0061】
主絶縁層16a及び撥水層16bを備える絶縁層16は、上記実施形態及び変形形態に記載したようなレーザーアブレーション法、レーザーフォトリソグラフィー、又はその他のパターニングにより、パターニングすることができる。
【0062】
パターニングされた主絶縁層16aを任意の方法で形成した後、主絶縁層16a上に選択的に撥水層16bを形成してもよい。
【実施例
【0063】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1
絶縁性基材としてガラスエポキシ基材(ガラス繊維強化エポキシ積層材)を用意した。絶縁性基材の主面に、シード層として、500nmの厚みを有する銅膜をスパッタ法により形成した。シード層上に、絶縁層として、1.5~3μmの厚みを有する熱可塑性のノボラック樹脂の層をスピンコート法により形成した。絶縁層の所定の領域を、スポット状のレーザービーム(波長355nm、パルス幅7ps)で1回走査して、L/Sが5μmであるパターン付き基材を得た。
【0065】
パターン付き基材の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、レーザービームで走査した領域において、絶縁層が除去されてシード層が露出したこと、及び当該領域のシード層が連続膜の状態で残存したことを確認した。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができたことが確認された(この結果は、表1中「〇」で示される)。
【0066】
上記の条件にてパターン付き基材を再度作製し、露出したシード層の表面に、金属層として5μmの厚みを有するCu層を形成した。具体的には、図9、10に示す成膜装置50を用いて、以下の条件にてCu層を形成した。
【0067】
陰極:シード層
陽極:無酸素銅線
樹脂膜:ナフィオン(登録商標)(厚み約8μm)
金属溶液:1.0mol/Lの硫酸銅水溶液
樹脂膜をシード層に押し当てる圧力:1.0MPa
電流密度:0.23mA/cm
【0068】
次いで、CFガスを用いた容量結合型プラズマエッチングにより、絶縁層を除去し、さらに、金属層をマスクとしてシード層をエッチングした。それにより、シード層及び金属層からなる所定の配線パターンの配線層が、絶縁性基材上に形成された。こうして、絶縁性基材と配線層とを備える配線基板が得られた。
【0069】
実施例2
7μmの厚みを有する熱可塑性のドライフィルムをシード層に貼り付けることにより絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にして配線基板を作製した。
【0070】
なお、パターン付き基材の断面を、SEMで観察したところ、レーザービームで走査した領域において、絶縁層が除去されてシード層が露出したこと、及び当該領域のシード層が連続膜の状態で残存したことが確認された。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができたことが確認された。
【0071】
比較例1
12.5μmの厚みを有する熱硬化性のポリイミドフィルムをシード層に貼り付けることにより絶縁層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、パターン付き基材を作製した。パターン付き基材の断面を、SEMで観察した。レーザービームで走査した領域において、絶縁層が残存し、シード層が十分に露出していないことが確認された。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができなかった(この結果は、表1中「×」で示される)。
【0072】
実施例3、4
シード層の厚みを表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を作製した。
【0073】
なお、パターン付き基材の断面を、SEMで観察したところ、レーザービームで走査した領域において、絶縁層が除去されてシード層が露出したこと、及び当該領域のシード層が連続膜の状態で残存したことが確認された。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができたことが確認された。
【0074】
比較例2、3
シード層の厚みを表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、パターン付き基材を作製した。パターン付き基材の断面を、SEMで観察した。レーザービームで走査した領域において、絶縁層だけでなくシード層も除去され、十分な厚さを有するシード層は残存しなかった。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができなかった。
【0075】
実施例5
絶縁層に照射するレーザービームの波長及びパルス幅を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を作製した。
【0076】
なお、パターン付き基材の断面を、SEMで観察したところ、レーザービームで走査した領域において、絶縁層が除去されてシード層が露出したこと、及び当該領域のシード層が連続膜の状態で残存したことが確認された。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができたことが確認された。
【0077】
実施例6
絶縁層に照射するレーザービームの波長及びパルス幅を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を作製した。
【0078】
なお、パターン付き基材の断面を、SEMで観察したところ、レーザービームで走査した領域において、絶縁層が除去されてシード層が露出したこと、及び当該領域のシード層が連続膜の状態で残存したことが確認された。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができたことが確認された。ただし、パターン付基材には、絶縁層の溶融固化物であるデブリが見られた(この結果は、表1中「△」で示される)。
【0079】
比較例4
絶縁層に照射するレーザービームの波長及びパルス幅を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例2と同様にして、パターン付き基材を作製した。パターン付き基材の断面を、SEMで観察した。レーザービームで走査した領域において、絶縁層が残存し、シード層が十分に露出していないことが確認された。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができなかった。
【0080】
実施例7
絶縁層として、1.5~3μmの厚みを有する熱硬化性のエポキシ樹脂の層をスピンコート法により形成したこと、及び絶縁層に照射するレーザービームのパルス幅を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして配線基板を作製した。
【0081】
なお、パターン付き基材の断面を、SEMで観察したところ、レーザービームで走査した領域において、絶縁層が除去されてシード層が露出したこと、及び当該領域のシード層が連続膜の状態で残存したことが確認された。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができたことが確認された。
【0082】
実施例8
絶縁層として、1.5~3μmの厚みを有する熱硬化性のポリイミド樹脂の層をスピンコート法により形成したこと以外は実施例7と同様にして配線基板を作製した。
【0083】
なお、パターン付き基材の断面を、SEMで観察したところ、レーザービームで走査した領域において、絶縁層が除去されてシード層が露出したこと、及び当該領域のシード層が連続膜の状態で残存したことが確認された。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができたことが確認された。
【0084】
実施例9
絶縁層に照射するレーザービームの波長を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を作製した。
【0085】
なお、パターン付き基材の断面を、SEMで観察したところ、レーザービームで走査した領域において、絶縁層が除去されてシード層が露出したこと、及び当該領域のシード層が連続膜の状態で残存したことが確認された。すなわち、絶縁層を選択的に除去することができたことが確認された。
【0086】
実施例10
レーザーフォトリソグラフィーにより所定の領域の絶縁層を消失させたこと以外は、実施例1と同様にして、配線基板を作製した。なお、レーザーフォトリソグラフィーは、具体的には、絶縁層の所定の領域をスポット状の連続波レーザービーム(波長436nm)で1回走査して露光し、次いで、現像液で所定の領域の絶縁層を溶解させて除去することにより行った。また、Cu層を形成した後、絶縁層を除去する前に、断面SEM観察を行った。断面SEM写真を図13に示す。絶縁層の厚みを超える厚みを有するCu層が形成されたことが確認された。Cu層は、いずれの高さ(厚み方向の位置)においても略一定の幅(水平方向の寸法)を有していた。
【0087】
【表1】
【符号の説明】
【0088】
1:配線基板、2:配線層、10:パターン付き基材、11:絶縁性基材、R1:第1の部分、R2:第2の部分、13:シード層、14:金属層、16:絶縁層、50:成膜装置、51:陽極、52:樹脂膜、L:金属イオンを含む溶液(金属溶液)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13