IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-水洗大便器 図1
  • 特許-水洗大便器 図2
  • 特許-水洗大便器 図3
  • 特許-水洗大便器 図4
  • 特許-水洗大便器 図5
  • 特許-水洗大便器 図6
  • 特許-水洗大便器 図7
  • 特許-水洗大便器 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/13 20060101AFI20241203BHJP
   E03D 11/17 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
E03D11/13
E03D11/17
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021030502
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131522
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 知里
(72)【発明者】
【氏名】坪根 雄一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聖
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080487(JP,A)
【文献】実開平06-049578(JP,U)
【文献】特開2003-268855(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1243671(KR,B1)
【文献】中国実用新案第210684900(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111387866(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受けるボウル部と、前記ボウル部の底部から延びる排水トラップ管路と、前記ボウル部および前記排水トラップ管路を覆う便器外側部と、前記便器外側部に形成され、給水源からの洗浄水が流れる給水ホースが挿通される挿通孔とを有する便器本体と、
前記便器本体の上面に配置され、前記挿通孔に挿通された前記給水ホースが接続され、前記給水ホースから洗浄水が供給される衛生洗浄装置と
を備え、
前記便器外側部は、その外面に形成された凹部を有し、
前記挿通孔は、前記凹部に配置され
前記便器外側部は、前記ボウル部および前記排水トラップ管路の前方および左右側方を覆うように設けられ、前記挿通孔は、前記便器外側部の左右いずれかの側面に形成されること
を特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記便器外側部の前記外面は、側面視において、前記挿通孔の前方側斜め上方領域で一段高くなっていること
を特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
汚物を受けるボウル部と、前記ボウル部の底部から延びる排水トラップ管路と、前記ボウル部および前記排水トラップ管路を覆う便器外側部と、前記便器外側部に形成され、給水源からの洗浄水が流れる給水ホースが挿通される挿通孔とを有する便器本体と、
前記便器本体の上面に配置され、前記挿通孔に挿通された前記給水ホースが接続され、前記給水ホースから洗浄水が供給される衛生洗浄装置と
を備え、
前記便器外側部は、その外面に形成された凹部を有し、
前記挿通孔は、前記凹部に配置され、
前記凹部は、側面視において、前記挿通孔の上方領域から該挿通孔の前方領域にかけて円弧状となる周縁部を有し、
前記挿通孔は、前記周縁部から所定距離あけて配置されるとともに、側面視において、前記挿通孔から見て鉛直上向きの方向から、前記挿通孔から見て水平前向きの方向までの間の領域において前記周縁部から略同等の距離となる位置に配置されること
を特徴とする水洗大便器。
【請求項4】
前記凹部の前記周縁部は、側面視において、前記便器本体の後端縁から下端縁にかけて縦長楕円の長軸および短軸で区画された1/4円弧状であること
を特徴とする請求項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記挿通孔は、前記ボウル部よりも後方に配置されること
を特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記挿通孔には、前記衛生洗浄装置に電力を供給するための給電ホースが挿通されること
を特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、床置き式の水洗大便器では、給水ホースや給電ホースなどの給水給電関連の部材が、使用者から見えないように、便器本体の便器外側部(袴ともいう)に形成された孔などに挿通され、便器本体に取り付けられた、使用者の人体局部を洗浄するための衛生洗浄装置に接続される。
【0003】
このような水洗大便器には、たとえば、便器本体の後端縁部に半円形状の切り欠きが形成され、この切り欠きから給水ホースなどを挿通させるものがある(たとえば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-2579号公報
【文献】中国特許出願公開第10700370号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の水洗大便器では、使用者が便器本体を前方から見た場合に切り欠きおよびこの切り欠きへの給水ホースなどの挿通状態が使用者から見えてしまうことで、見栄えが悪くなり、意匠性が低下していた。
【0006】
実施形態の一態様は、挿通孔およびこの挿通孔への給水ホースの挿通状態が使用者から見えず、意匠性を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、汚物を受けるボウル部と、前記ボウル部の底部から延びる排水トラップ管路と、前記ボウル部および前記排水トラップ管路を覆う便器外側部と、前記便器外側部に形成され、給水源からの洗浄水が流れる給水ホースが挿通される挿通孔とを有する便器本体と、前記便器本体の上面に配置され、前記挿通孔に挿通された前記給水ホースが接続され、前記給水ホースから洗浄水が供給される衛生洗浄装置とを備え、前記便器外側部は、その外面に形成された凹部を有し、前記挿通孔は、前記凹部に配置されることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、使用者が便器本体を前方から見た場合には、給水ホースが挿通される挿通孔が便器外側部の外面の凹部に配置されることで挿通孔の前方が高くなっているため、挿通孔およびこの挿通孔への給水ホースの挿通状態が隠れて使用者からはこれらが見えない。このように、使用者から挿通孔およびこの挿通孔への給水ホースの挿通状態を見えなくすることで、意匠性を向上させることができる。
【0009】
また、水洗大便器においては、施工時や清掃時を除いて、使用者が便器本体を側方から見ることが少ないという使用方法上の特性があるが、使用者が便器本体を前方から見た場合において挿通孔およびこの挿通孔への給水ホースの挿通状態が隠れるため、たとえば、挿通孔を閉塞するためのカバーなどを設けなくても、便器外側部の形状のみで意匠性を向上させることができる。
【0010】
また、上記した水洗大便器では、前記便器外側部の前記外面は、側面視において、前記挿通孔の前方側斜め上方領域で一段高くなっていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、使用者が便器本体を前方や前方側斜め上方から見た場合には、挿通孔が一段高くなっている外面によって隠れるため、たとえば、トイレ室のドアを開けて水洗大便器に腰掛けるまでの動作で使用者からは挿通孔およびこの挿通孔への給水ホースの挿通状態が見えなくなる。
【0012】
また、上記した水洗大便器では、側面視において、前記挿通孔の前方側斜め上方方向における該挿通孔から前記凹部の周縁部までの距離が、前記挿通孔の前方側斜め上方方向における前記凹部の前記周縁部から前記便器外側部の上端縁部までの距離よりも短いことを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、挿通孔が凹部と凹部以外の外面との使用者が前方側斜め上方から見えないギャップに入りやすくなるため、たとえば、トイレ室のドアを開けて水洗大便器に腰掛けるまでの動作で使用者からは挿通孔およびこの挿通孔への給水ホースの挿通状態が見えなくなる。
【0014】
また、上記した水洗大便器では、前記凹部は、側面視において、前記挿通孔の上方領域から該挿通孔の前方領域にかけて円弧状となる周縁部を有し、前記挿通孔は、前記周縁部から所定距離あけて配置されるとともに、前記上方領域から前記前方領域までの間で前記周縁部から略同等の距離となる位置に配置されることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、使用者が便器本体を上方から前方までのどの位置から見た場合でも挿通孔が同じように隠れるため、たとえば、使用者の身長や、使用時の動作(小便時や洗浄操作時)で変化する使用者の視点に関係なく、使用者から挿通孔が見えなくなる。また、凹部の周縁部が挿通孔の上方領域から前方領域にかけて円弧状であるため、たとえば、汚水が上方から垂れてきても周縁部に沿って流れるため、汚水の凹部内への浸入を抑制することができ、汚水の挿通孔への浸入を抑制することができる。
【0016】
また、上記した水洗大便器では、前記凹部の前記周縁部は、側面視において、前記便器本体の後端縁から下端縁にかけて縦長楕円の長軸および短軸で区画された1/4円弧状であることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、凹部の周縁部が、側面視において、挿通孔の上方領域において緩やかな曲線となり、挿通孔の前方領域において急な曲線となるため、たとえば、汚水が上方から垂れてきても、挿通孔の上方領域において汚水が前方に向けて流れやすくなり、前方へと流れた汚水が挿通孔の前方領域において下方に向けて流れやすくなる。これにより、汚水の凹部内への浸入をさらに抑制することができ、汚水の挿通孔への浸入をさらに抑制することができる。
【0018】
また、上記した水洗大便器では、前記挿通孔は、前記ボウル部よりも後方に配置されることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、挿通孔がボウル部よりも後方にあることで、上方から汚水が垂れてきたとしても挿通孔よりも前方となるため、汚水の挿通孔への浸入を抑えることができる。
【0020】
また、上記した水洗大便器では、前記挿通孔には、前記衛生洗浄装置に電力を供給するための給電ホースが挿通されることを特徴とする。
【0021】
衛生洗浄装置を外部電力で動作させる場合、給電ホースを用いて衛生洗浄装置に電力を供給することが一般的である。給電ホースの多くがトイレ室内の壁面または床面から延びているため、挿通孔から便器本体内に挿入する場合には意匠性について給水ホースと同様の問題が発生するが、このような構成によれば、挿通孔への給電ホースの挿通状態が隠れて使用者からはこれが見えなくなるため、意匠性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
実施形態の一態様によれば、挿通孔およびこの挿通孔への給水ホースの挿通状態が使用者から見えず、意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態に係る水洗大便器を示す斜視図である。
図2図2は、便器本体を示す斜視図である。
図3図3は、便器本体を示す概略側面図である。
図4図4は、挿通孔の配置説明図(その1)である。
図5図5は、挿通孔の配置説明図(その2)である。
図6図6は、挿通孔の配置説明図(その3)である。
図7図7は、便器外側部に汚水が流れてきた場合のその汚水の流れの態様の説明図である。
図8図8は、(a)実施形態に係る水洗大便器を前方から見た図であり、(b)実施形態に係る水洗大便器を前方側上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
まず、図1を参照して実施形態に係る水洗大便器1の概要について説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器1を示す斜視図である。
【0026】
なお、図1を含む各図には、説明の便宜上、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している場合がある。この場合、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方、Z軸の正方向を上方、Z軸の負方向を下方と規定し、また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0027】
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、衛生洗浄装置(便座装置ともいう)3とを備える。便器本体2は、トイレ室TRの床面TFに設置される、いわゆる床置き式である。便器本体2は、陶器製である。なお、便器本体2は、陶器製に限定されず、たとえば、樹脂製のものや、陶器と樹脂とを組み合わせたものであってもよい。
【0028】
便器本体2は、後述するボウル部21(図2参照)および排水トラップ管路23の前方および左右側方を覆うように設けられた便器外側部24を有する。便器外側部24は、後述する凹部241および挿通孔25を有する。なお、便器本体2や便器外側部24の詳細については、図2および図3を用いて後述する。
【0029】
衛生洗浄装置3は、便器本体2の上面に設置される。衛生洗浄装置3は、本体部31と、便座部(図示せず)と、蓋部32とを備える。本体部31は、便器本体2の上面後部に配置され、便座部および蓋部32を上下方向に回動可能に支持している。本体部31は、便座部に着座した使用者の局部を洗浄する衛生洗浄部として機能する衛生洗浄系機能部を有する。
【0030】
衛生洗浄系機能部には、ボウル部21の上方の使用者の局部に向けて洗浄水を噴射するノズル装置(図示せず)を含む局部洗浄装置(図示せず)が設けられる。また、衛生洗浄系機能部には、局部洗浄装置に供給される洗浄水を貯水する貯水部(図示せず)、貯水部内の洗浄水を適温に温めて温水にする加熱器(図示せず)、換気ファン(図示せず)、脱臭ファン(図示せず)、温風ファン(図示せず)、これら各部を制御する制御部(図示せず)などが設けられる。
【0031】
便座部は、本体部31の前方に配置され、使用者が水洗大便器1を使用する場合に着座するものである。便座部は、本体部31側を支点として回動することで、開閉可能である。蓋部32は、便座部と同様、本体部31の前方に配置され、便器本体2のボウル部21を含む上面を上方から覆うものである。蓋部32は、便座部と同様、本体部31側を支点として回動することで、開閉可能である。なお、蓋部32は、閉じた状態では、便器本体2の上面を上方から覆うとともに、便座部を上方から覆う。
【0032】
なお、水洗大便器1は、便器洗浄の形態としては、たとえば、ポンプの補圧を利用して、貯水タンク内に貯留された洗浄水をボウル部21へと供給する形態であってもよいし、貯水タンクに貯留された洗浄水を、重力を利用してボウル部21へと供給する、いわゆる重力給水式の形態であってもよいし、水道水の給水圧を直接利用した水道直圧式の形態やフラッシュバルブ式の形態であってもよい。
【0033】
ここで、トイレ室TRの壁面TWには、水道などの給水源に接続される給水部(たとえば、止水栓)51が設けられる。給水部51には、給水ホース52が接続される。給水ホース52は、衛生洗浄装置3に接続され、便座部に着座した使用者の人体局部を洗浄するための洗浄水を衛生洗浄装置3へと供給する。また、この「衛生洗浄装置」とは、ボウル部21に給水する貯水タンク(図示せず)も含まれる。
【0034】
また、トイレ室TRの壁面TWには、電源部である、いわゆる電源コンセント(図示せず)が設けられる。電源部には、電源プラグ61を介して給電ホース(電源コードともいう)62が接続される。給電ホース62は、衛生洗浄装置3に電力を供給する。
【0035】
給水ホース52および給電ホース62は、便器外側部24に形成された後述する挿通孔25に挿通され、便器外側部24の内側において衛生洗浄装置3(本体部31)に接続される。
【0036】
次に、図2および図3を参照して便器本体2について説明する。図2は、便器本体2を示す斜視図である。図3は、便器本体2を示す概略側面図である。図2および図3に示すように、便器本体2は、ボウル部21と、リム部22と、排水トラップ管路23と、便器外側部24とを備える。
【0037】
ボウル部21は、汚物を受ける部位であり、凹状に形成される。リム部22は、ボウル部21の上縁部に形成される。リム部22は、洗浄水を吐水するリム吐水口221を有する。リム部22は、リム吐水口221から吐水された洗浄水がボウル部21の上縁部(リム部22)に沿って流れ、ボウル部21内に旋回流を形成する。なお、リム吐水口221には、上流側に形成された導水路(図示せず)が接続されており、たとえば、給水源(水道など)からの洗浄水が導水路を介して供給される。
【0038】
排水トラップ管路23は、ボウル部21の底部に接続され、ボウル部21の底部から後方へと延びており、ボウル部21内の汚物を便器本体2外の配管へと排出する管路である。なお、水洗大便器1が、たとえば、ハイブリッド式の場合は、ボウル部21の底部には、加圧ポンプによって加圧された洗浄水を排水トラップ管路23の入口部231に向けて吐出するジェット吐水口が形成される。
【0039】
便器外側部24は、上記したように、ボウル部21の前方および左右側方と、排水トラップ管路23の前方および左右側方とを覆うように設けられる。便器外側部24には、給水ホース52および給電ホース62が挿通される挿通孔25が形成される。挿通孔25は、たとえば、便器外側部24の右左いずれかの側面に形成される。
【0040】
また、便器外側部24の外面には、凹部241が形成される。凹部241は、便器本体2の側面視において、挿通孔25の上方領域から前方領域にかけて円弧状となる周縁部241aを有する。凹部241は、周縁部241aによって便器外側部24における他の部位から区画され、便器外側部24における他の部位よりも一段低くなっている。
【0041】
挿通孔25は、凹部241に形成される。挿通孔25は、凹部241内における所定の位置に配置される。また、挿通孔25は、ボウル部21よりも後方に配置される。
【0042】
次に、図4図7を参照して挿通孔25の配置について説明する。図4図6は、挿通孔の配置説明図である。図7は、便器外側部24に汚水Wが流れてきた場合のその汚水Wの流れの態様の説明図である。
【0043】
図4に示すように、挿通孔25は、便器本体2の側面視において、少なくとも挿通孔25の上方領域から前方領域にかけて(図中、斜線で示す領域)凹部241の周縁部241aに囲まれている。すなわち、便器外側部24の外面は、便器本体2の側面視において、挿通孔25の前方側斜め上方領域で一段高くなっている。このため、図示のように、使用者が便器本体2を前方側斜め上方から見た場合には、一段高くなっている便器外側部24の外面によって挿通孔25が隠れる。
【0044】
また、挿通孔25は、凹部241の周縁部241aから所定距離あけて、凹部241内に配置される。図5に示すように、挿通孔25は、便器本体2の側面視において、挿通孔25の前方側斜め上方方向におけるこの挿通孔25から凹部241の周縁部241aまでの距離D1が、挿通孔25の前方側斜め上方方向における凹部241の周縁部241aから便器外側部24の上端縁部242までの距離D2よりも短くなる(D1<D2となる)位置に配置される。
【0045】
また、上記したように、挿通孔25は、凹部241の周縁部241aから所定距離あけて配置される。図6に示すように、挿通孔25は、挿通孔25の上方領域から前方領域までの間で周縁部241aから略同等の距離D3となる位置に配置されることが好ましい。このため、図示のように、使用者が便器本体2を前方側斜め上方のいずれから見た場合でも、便器外側部24の外面によって挿通孔25が隠れる。
【0046】
また、図6に示すように、凹部241の周縁部241aは、便器本体2の側面視において、便器本体2の後端縁から下端縁にかけて延びている。凹部241の周縁部241aは、縦長楕円Oの長軸L1および短軸L2で区画された1/4円弧状であることが好ましい。
【0047】
このように、凹部241の周縁部241aを縦長楕円Oの1/4円弧状とすることで、便器本体2の側面視において、挿通孔25の上方領域において緩やかな曲線となり、挿通孔25の前方領域において急な曲線となる。このため、図7に示すように、挿通孔25の上方領域から使用者の尿などの汚水W1が垂れてきた場合、挿通孔25の上方領域において汚水W1が前方に向けて流れやすくなり、前方へと流れた汚水W1が挿通孔25の前方領域において下方に向けて流れやすくなる。
【0048】
図8(a)は、実施形態に係る水洗大便器1を前方から見た図である。図8(b)は、実施形態に係る水洗大便器1を前方側上方から見た図である。図8(a)に示すように、水洗大便器1を前方から見た場合、挿通孔25が便器外側部24に隠れて使用者から見えなくなる。また、給水ホース52および給電ホース62のそれぞれの一部も、便器外側部24に隠れて使用者から見えなくなる。
【0049】
また、図8(b)に示すように、水洗大便器1を使用者(たとえば、立ち小便をする使用者)の目線となる前方側上方から見た場合、挿通孔25が便器外側部24に隠れて使用者から見えなくなる。また、給水ホース52および給電ホース62のそれぞれの一部も、便器外側部24に隠れて使用者から見えなくなる。
【0050】
以上説明したように、上記した実施形態に係る水洗大便器1によれば、使用者が便器本体2を前方から見た場合には、給水ホース52が挿通される挿通孔25が便器外側部24の外面の凹部241に配置されることで挿通孔25の前方が高くなっているため、挿通孔25、およびこの挿通孔25への給水ホース52および給電ホース62の挿通状態が隠れて使用者からはこれらが見えない。このように、使用者から挿通孔25、およびこの挿通孔25への給水ホース52および給電ホース62の挿通状態を見えなくすることで、意匠性を向上させることができる。
【0051】
また、使用者が便器本体2を前方から見た場合において挿通孔25、およびこの挿通孔25への給水ホース52および給電ホース62の挿通状態が隠れるため、たとえば、挿通孔25を閉塞するためのカバーなどを設けなくても、便器外側部24の形状のみで意匠性を向上させることができる。
【0052】
また、使用者が便器本体2を前方や前方側斜め上方から見た場合には、挿通孔25が便器外側部24の一段高くなっている外面によって隠れるため、たとえば、トイレ室TRのドアを開けて水洗大便器1に腰掛けるまでの動作で使用者からは挿通孔25、およびこの挿通孔25への給水ホース52および給電ホース62の挿通状態が見えなくなる。
【0053】
また、挿通孔25が、挿通孔25の前方側斜め上方方向におけるこの挿通孔25から凹部241の周縁部241aまでの距離D1が挿通孔25の前方側斜め上方方向における凹部241の周縁部241aから便器外側部24の上端縁部242までの距離D2よりも短くなる位置に配置されることで、挿通孔25が凹部241と凹部241以外の外面との使用者が前方側斜め上方から見えないギャップに入りやすくなる。これにより、たとえば、トイレ室TRのドアを開けて水洗大便器1に腰掛けるまでの動作で使用者からは挿通孔25、およびこの挿通孔25への給水ホース52および給電ホース62の挿通状態が見えなくなる。
【0054】
また、挿通孔25が、挿通孔25の上方領域から前方領域までの間で周縁部241aから略同等の距離D3となる位置に配置されることで、使用者が便器本体2を上方から前方までのどの位置から見た場合でも挿通孔25が同じように隠れる。このため、たとえば、使用者の身長や、使用時の動作(小便時や洗浄操作時)で変化する使用者の視点に関係なく、使用者から挿通孔25が見えなくなる。
【0055】
また、凹部241の周縁部24aが挿通孔25の上方領域から前方領域にかけて円弧状であるため、たとえば、汚水W1が上方から垂れてきても周縁部241aに沿って流れるため、汚水W1の凹部241内への浸入を抑制することができ、汚水W1の挿通孔25への浸入を抑制することができる。
【0056】
また、凹部241の周縁部241aを縦長楕円Oの1/4円弧状とすることで、便器本体2の側面視において、挿通孔25の上方領域において緩やかな曲線となり、挿通孔25の前方領域において急な曲線となるため、たとえば、汚水W1が上方から垂れてきても、挿通孔25の上方領域において汚水W1が前方に向けて流れやすくなり、前方へと流れた汚水W1が挿通孔25の前方領域において下方に向けて流れやすくなる。これにより、汚水W1の凹部241内への浸入をさらに抑制することができ、汚水W1の挿通孔25への浸入をさらに抑制することができる。
【0057】
また、挿通孔25がボウル部21よりも後方に配置されることで、上方から汚水W1が垂れてきたとしても挿通孔25よりも前方となるため、汚水W1の挿通孔25への浸入を抑えることができる。
【0058】
なお、上記した実施形態では、凹部241の周縁部241aを縦長楕円Oの1/4円弧状が好ましいとしているが、凹部241の周縁部241aを、たとえば、縦長楕円Oの3/4円弧状のように、1/4円弧以外の円弧状としてもよい。また、凹部241の周縁部241aを、たとえば、円(真円)の1/4円弧状としてもよい。また、凹部241の周縁部241aを、たとえば、円(真円)の1/4円弧以外の円弧状としてもよい。
【0059】
また、凹部241の周縁部241aを、たとえば、縦長楕円形状としてもよい。すなわち、便器外側部24の外面に形成される凹部241を、縦長楕円形状としてもよい。
【0060】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 水洗大便器
2 便器本体
3 衛生洗浄装置
21 ボウル部
23 排水トラップ管路
24 便器外側部
25 挿通孔
52 給水ホース
62 給電ホース
241 凹部
241a 周縁部
242 上端縁部
D1 距離
D2 距離
D3 距離
L1 長軸
L2 短軸
O 縦長楕円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8