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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】立体物印刷装置および立体物印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241203BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20241203BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20241203BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20241203BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241203BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/165 101
B41J2/01 303
B41J2/165 211
B41J2/165 303
B41J2/175 503
B41J2/14 611
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021037082
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137548
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】中村 真一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 優太
(72)【発明者】
【氏名】松浦 佑一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕樹
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-172379(JP,A)
【文献】特開2007-136257(JP,A)
【文献】特開2006-272297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0063096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165
B41J 2/175
B41J 2/14
B05D 1/26
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルが設けられたノズル面を有するヘッドと、
基部と、前記ヘッドを支持する腕部とを有し、前記基部から前記腕部にかけて複数の回
動部が設けられ、前記回動部の回動により前記基部に対する前記ヘッドの位置を変化させ
るロボットと、
前記ノズル面を被覆するキャップ部と、
を有し、
前記ノズル面が前記キャップ部に被覆される位置に、前記ロボットが前記ヘッドを位置
させるキャップ動作と、
前記ロボットがワークに対する前記ヘッドの位置を前記キャップ動作の実行中とは異な
る位置で変化させつつ、前記ヘッドが前記ワークに対して液体を吐出する印刷動作と、を
実行し、
前記キャップ動作の実行中での前記ヘッドのヨー角と前記印刷動作の実行中での前記ヘ
ッドのヨー角とが互いに異なる、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
前記印刷動作の実行中に前記ヘッドが通過する2つの位置を第1位置および第2位置と
するとき、
前記ヘッドの前記第1位置でのピッチ角と前記第2位置でのピッチ角とが互いに異なる

ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項3】
前記印刷動作は、前記ヘッドのヨー角およびロール角を一定に維持しつつ前記ワークに
対する前記ヘッドの位置を変化させる動作を含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
前記基部の平面視で、
前記複数のノズルの配列方向をノズル列方向とし、
前記印刷動作の実行中での前記ヘッドと前記基部とを結ぶ仮想的な線分を第1線分とし

前記印刷動作の実行中での前記第1線分と前記ノズル列方向とのなす角度をθ1とし、
前記キャップ動作の実行中での前記ヘッドと前記基部とを結ぶ仮想的な線分を第2線分
とし、
前記キャップ動作の実行中での前記第2線分と前記ノズル列方向とのなす角度をθ2と
し、
前記第1線分と前記第2線分とのなす角度をθ3としたとき、
|θ1-θ2|<θ3
の関係を満たす、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
前記キャップ動作の実行終了から前記印刷動作の実行開始までの間の期間内に前記ロボ
ットが前記ヘッドを移動させる第1移動動作をさらに実行し、
前記複数の回動部のうち、
前記基部に最も近い回動部を第1回動部とし、
前記基部から最も遠い回動部を第2回動部とするとき、
前記第1移動動作の実行期間にわたる前記第2回動部の回動量は、前記第1移動動作の
実行期間にわたる前記第1回動部の回動量よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項6】
前記印刷動作の実行終了から前記キャップ動作の実行開始までの間の期間内に前記ロボ
ットが前記ヘッドを移動させる第2移動動作をさらに実行し、
前記第2移動動作の実行期間にわたる前記第2回動部の回動量は、前記第2移動動作の
実行期間にわたる前記第1回動部の回動量よりも小さい、
ことを特徴とする請求項5に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記第1移動動作または前記第2移動動作の実行期間にわたる前記ヘッドのヨー角の変
化は、45°以上である、
ことを特徴とする請求項6に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
前記第1移動動作または前記第2移動動作の実行期間にわたる前記ヘッドのヨー角の変
化は、90°以上である、
ことを特徴とする請求項7に記載の立体物印刷装置。
【請求項9】
前記キャップ動作の実行終了時には、前記ヘッドが前記ノズル面の法線方向に沿って前
記キャップ部から離間する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項10】
前記キャップ動作の実行開始時には、前記ヘッドが前記ノズル面の法線方向に沿って前
記キャップ部に接近する、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項11】
前記キャップ動作の実行中での前記ノズル面は、水平である、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項12】
前記キャップ動作の実行中に前記キャップ部を前記ノズル面に向けて付勢する付勢機構
をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項13】
前記キャップ動作の実行中に前記キャップ部と前記ノズル面との間に形成される空間を
減圧する吸引機構をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項14】
前記キャップ部に隣り合う位置に配置され、前記ノズル面を拭うワイパー部をさらに有
する、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項15】
前記ヘッドに液体を供給する供給管をさらに有し、
前記供給管は、前記腕部の外部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項16】
前記ヘッドを駆動する電気信号を前記ヘッドに供給する駆動配線をさらに有し、
前記駆動配線は、前記腕部の外部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項17】
液体を吐出する複数のノズルが設けられたノズル面を有するヘッドと、
基部と、前記ヘッドを支持する腕部とを有し、前記基部から前記腕部にかけて複数の回
動部が設けられ、前記回動部の回動により前記基部に対する前記ヘッドの位置を変化させ
るロボットと、
前記ノズル面を被覆するキャップ部と、
を用いた立体物印刷方法であって、
前記ノズル面が前記キャップ部に被覆される位置に、前記ロボットが前記ヘッドを位置
させるキャップ動作と、
前記ロボットがワークに対する前記ヘッドの位置を前記キャップ動作の実行中とは異な
る位置で変化させつつ、前記ヘッドが前記ワークに対して液体を吐出する印刷動作と、を
実行し、
前記キャップ動作の実行中での前記ヘッドのヨー角と前記印刷動作の実行中での前記ヘ
ッドのヨー角とが互いに異なる、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物印刷装置および立体物印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体的なワークの表面にインクジェット方式により印刷を行う立体物印刷装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の装置は、ロボットアームと、ロボットアームの先端に固定されるプリントヘッドと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-050832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の印刷装置では、プリントヘッドのノズル付近のインクが外光の影響または外気による乾燥により増粘または固化することにより、ノズルが詰まってしまい、その結果、吐出不良が生じるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る立体物印刷装置の一態様は、液体を吐出する複数のノズルが設けられたノズル面を有するヘッドと、基部と、前記ヘッドを支持する腕部とを有し、前記基部から前記腕部にかけて複数の回動部が設けられ、前記回動部の回動により前記基部に対する前記ヘッドの位置を変化させるロボットと、前記ノズル面を被覆するキャップ部と、を有し、前記ノズル面が前記キャップ部に被覆される位置に、前記ロボットが前記ヘッドを位置させるキャップ動作と、前記ロボットが前記ワークに対する前記ヘッドの位置を前記キャップ動作の実行中とは異なる位置で変化させつつ、前記ヘッドが前記ワークに対して液体を吐出する印刷動作と、を実行し、前記キャップ動作の実行中での前記ヘッドのヨー角と前記印刷動作の実行中での前記ヘッドのヨー角とが互いに異なる。
【0006】
本発明に係る立体物印刷方法の一態様は、液体を吐出する複数のノズルが設けられたノズル面を有するヘッドと、基部と、前記ヘッドを支持する腕部とを有し、前記基部から前記腕部にかけて複数の回動部が設けられ、前記回動部の回動により前記基部に対する前記ヘッドの位置を変化させるロボットと、前記ノズル面を被覆するキャップ部と、を用いた立体物印刷方法であって、前記ノズル面が前記キャップ部に被覆される位置に、前記ロボットが前記ヘッドを位置させるキャップ動作と、前記ロボットが前記ワークに対する前記ヘッドの位置を前記キャップ動作の実行中とは異なる位置で変化させつつ、前記ヘッドが前記ワークに対して液体を吐出する印刷動作と、を実行し、前記キャップ動作の実行中での前記ヘッドのヨー角と前記印刷動作の実行中での前記ヘッドのヨー角とが互いに異なる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る立体物印刷装置の概略を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図3】ヘッドを含むヘッドユニットの概略構成を示す斜視図である。
図4】キャップ部を含むメンテナンスユニットの概略構成を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る立体物印刷装置の動作を示すフローチャートである。
図6】印刷動作の実行中のロボットの側面図である。
図7】印刷動作の実行中の立体物印刷装置の平面図である。
図8】キャプ動作の実行中の立体物印刷装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0009】
以下の説明は、便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下の説明では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0010】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のロボット2が設置される空間に設定されるワールド座標系の座標軸に相当する。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。当該ワールド座標系には、ロボット2の基部を基準とするベース座標系がキャリブレーションにより対応付けられる。以下では、便宜上、ワールド座標系をロボット座標系として用いてロボット2の動作を制御する場合が例示される。
【0011】
なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.立体物印刷装置の概略
図1は、実施形態に係る立体物印刷装置1の概略を示す斜視図である。立体物印刷装置1は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0013】
ワークWは、印刷対象となる面WFを有する。図1に示す例では、ワークWが長球状をなすラグビーボールであり、面WFが曲面である。印刷時のワークWは、必要に応じて、例えば、所定の設置台、ロボットハンドまたはコンベアー等の構造体により支持される。なお、ワークWまたは面WFの形状または大きさ等の態様は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、ワークWまたは面WFの印刷時での位置または姿勢は、印刷可能であればよく、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0014】
図1に示すように、立体物印刷装置1は、ロボット2と、ヘッドユニット3と、メンテナンスユニット4と、コントローラー5と、配管部10と、配線部11と、を有する。以下、まず、これらを順に簡単に説明する。
【0015】
ロボット2は、ワールド座標系でのヘッドユニット3の位置および姿勢を変化させるロボットである。図1に示す例では、ロボット2は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。
【0016】
図1に示すように、ロボット2は、基部210と、腕部220と、を有する。
【0017】
基部210は、腕部220を支持する台である。図1に示す例では、基部210は、Z1方向を向く床面等や基台等の設置面にネジ止め等により固定される。なお、基部210が固定される設置面は、いかなる方向を向く面でもよく、図1に示す例に限定されず、例えば、壁、天井、移動可能な台車等が有する面でもよい。また、以下では、基部210の設置面に対して垂直な方向にみること、すなわち、本実施形態ではZ1方向またはZ2方向にみることを「基部210の平面視」または単に「平面視」という場合がある。
【0018】
腕部220は、基部210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、腕部220は、アーム221、222、223、224、225および226を有し、これらがこの順に連結される。
【0019】
アーム221は、基部210に対して回動軸O1まわりに回動可能に関節部230_1を介して連結される。アーム222は、アーム221に対して回動軸O2まわりに回動可能に関節部230_2を介して連結される。アーム223は、アーム222に対して回動軸O3まわりに回動可能に関節部230_3を介して連結される。アーム224は、アーム223に対して回動軸O4まわりに回動可能に関節部230_4を介して連結される。アーム225は、アーム224に対して回動軸O5まわりに回動可能に関節部230_5を介して連結される。アーム226は、アーム225に対して回動軸O6まわりに回動可能に関節部230_6を介して連結される。
【0020】
関節部230_1~230_6のそれぞれは、「回動部」の一例であり、基部210およびアーム221~226のうち互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動可能に連結する機構である。ここで、関節部230_1~230_6のうち最も基部210に近い関節部230_1は、「第1回動部」の一例である。また、関節部230_1~230_6のうち最も基部210から遠い関節部230_6は、「第2回動部」の一例である。なお、以下では、関節部230_1~230_6のそれぞれを「関節部230」という場合がある。
【0021】
図1では図示しないが、関節部230_1~230_6のそれぞれには、対応する当該互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、関節部230_1~230_6の当該駆動機構の集合体は、後述の図2に示すアーム駆動機構2aに相当する。
【0022】
回動軸O1は、基部210が固定される図示しない設置面に対して垂直な軸である。回動軸O2は、回動軸O1に対して垂直な軸である。回動軸O3は、回動軸O2に対して平行な軸である。回動軸O4は、回動軸O3に対して垂直な軸である。回動軸O5は、回動軸O4に対して垂直な軸である。回動軸O6は、回動軸O5に対して垂直な軸である。
【0023】
なお、これらの回動軸について、「垂直」とは、2つの回動軸のなす角度が厳密に90°である場合のほか、2つの回動軸のなす角度が90°から±5°程度の範囲内でずれる場合も含む。同様に、「平行」とは、2つの回動軸が厳密に平行である場合のほかに、2つの回動軸の一方が他方に対して±5°程度の範囲内で傾斜する場合も含む。
【0024】
以上のロボット2の腕部220の最も先端に位置するアーム226には、エンドエフェクターとして、ヘッドユニット3がネジ止め等により固定された状態で装着される。
【0025】
ヘッドユニット3は、「液体」の一例であるインクをワークWに向けて吐出するヘッド3aを有するアセンブリーである。本実施形態では、ヘッドユニット3は、ヘッド3aのほか、圧力調整弁3bと硬化用光源3cと距離センサー3dとを有する。なお、ヘッドユニット3の詳細については、後述の図3に基づいて説明する。
【0026】
当該インクとしては、特に限定されず、例えば、水系溶媒に染料または顔料等の色材を溶解させた水系インク、紫外線硬化型等の硬化性樹脂を用いた硬化性インク、および、有機溶剤に染料または顔料等の色材を溶解させた溶剤系インク等が挙げられる。中でも、硬化性インクが好適に用いられる。硬化性インクは、特に限定されず、例えば、熱硬化型、光硬化型、放射線硬化型および電子線硬化型等のいずれでもよいが、紫外線硬化型等の光硬化型が好適である。なお、当該インクは、溶液に限定されず、分散媒に色材等を分散質として分散させたインクでもよい。また、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、例えば、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよいし、クリアインクでもよいし、ワークWの表面処理のための処理液でもよい。
【0027】
ヘッドユニット3には、配管部10および配線部11のそれぞれが接続される。配管部10は、図示しないインクタンクからのインクをヘッドユニット3に供給する供給管10aを含む配管または配管群である。供給管10aは、例えば、ゴム材料またはエラストマー材料等で構成される可撓性の管体である。配線部11は、ヘッド3aを駆動する電気信号を供給する駆動配線11aを含む配線または配線群である。駆動配線11aは、例えば、可撓性の各種電気配線で構成される。なお、配管部10には、供給管10aのほか、例えば、ヘッドユニット3から排出されるインクを移送するための配管等の他の配管が含まれてもよい。また、配線部11には、駆動配線11aのほか、例えば、ヘッド3aの駆動に必要な後述の制御信号SI等の他の電子信号を伝送するための各種配線が適宜に含まれる。
【0028】
このような配管部10および配線部11のそれぞれは、ヘッドユニット3との接続により固定位置FX1でヘッドユニット3に対して固定される。固定位置FX1は、エンドエフェクター内の位置であり、具体的には、配管部10および配線部11とヘッドユニット3との接続のための図示しないコネクタの位置である。また、配管部10および配線部11のそれぞれは、固定位置FX2、FX3、FX4で前述のロボット2の腕部220に対して結束バンド等により固定される。固定位置FX2は、前述のアーム224上の位置である。固定位置FX3は、前述のアーム223上の位置である。固定位置FX4は、前述のアーム222上の位置である。このように腕部220の複数位置に部分的に配管部10および配線部11を固定することにより、腕部220の動作を十分に許容しつつ腕部220と配管部10および配線部11との位置関係を所定範囲内に維持することができる。なお、図1では、配管部10および配線部11の引き回される経路が互いに同一である構成が例示されるが、配管部10および配線部11の引き回される経路が互いに異なる部分を有してもよい
【0029】
メンテナンスユニット4は、ヘッドユニット3のヘッド3aのメンテナンスを行うための機構である。図1に示す例では、メンテナンスユニット4は、ケース4aとキャップ部4bと支持台4cと吸引機構4dとワイパー部4eとを有する。ケース4aは、ロボット2の基部210と同様に、Z1方向を向く床面等や基台等の設置面にネジ止め等により固定される。なお、メンテナンスユニット4の詳細については、後述の図3に基づいて説明する。また、メンテナンスとは、ヘッド3aのノズル面Fをキャップ部4bによって被覆することや、吸引機構4dによって吸引を行うこと、ワイパー部4eによってワイピングすることなどを含む概念である。
【0030】
コントローラー5は、ロボット2の駆動を制御するロボットコントローラーである。以下、図2に基づいて、立体物印刷装置1の電気的な構成について、コントローラー5の詳細な説明を含めて説明する。
【0031】
1-2.立体物印刷装置の電気的な構成
図2は、実施形態に係る立体物印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図である。図2では、立体物印刷装置1の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。図2に示すように、立体物印刷装置1は、前述の図1に示す構成要素のほか、コントローラー5に通信可能に接続される制御モジュール6と、コントローラー5および制御モジュール6に通信可能に接続されるコンピューター7と、を有する。以下、コントローラー5の詳細に説明に先立ち、まず、制御モジュール6およびコンピューター7を順に説明する。
【0032】
なお、図2に示す電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、コントローラー5または制御モジュール6の機能の一部または全部は、コンピューター7により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー5に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0033】
コントローラー5は、ロボット2の駆動を制御する機能と、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作をロボット2の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。なお、本実施形態のコントローラー5は、メンテナンスユニット4の駆動を制御する機能をも有するが、当該機能は、コンピューター7等の他の機器のより実現されてもよい。
【0034】
コントローラー5は、記憶回路5aと処理回路5bとを有する。
【0035】
記憶回路5aは、処理回路5bが実行する各種プログラムと、処理回路5bが処理する各種データと、を記憶する。記憶回路5aは、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路5aの一部または全部は、処理回路5bに含まれてもよい。
【0036】
記憶回路5aには、経路情報Daが記憶される。経路情報Daは、ヘッドユニット3の移動すべき経路と当該経路におけるヘッドユニット3の姿勢とを示す情報である。ここで、経路情報Daは、当該経路および当該姿勢を示す情報として、ワークWに対して印刷を行う際のヘッドユニット3の移動経路および姿勢を示す情報と、ヘッドユニット3の当該印刷時の位置とメンテナンスユニット4によるメンテナンス時の位置との間の移動経路および姿勢を示す情報と、を含む。経路情報Daは、例えば、ワークWの形状等に基づいて決められ、ベース座標系またはワールド座標系の座標値を用いて表される。ワークWの形状は、例えば、ワークWの3次元形状を示すCAD(computer-aided design)データにより求められる。以上の経路情報Daは、コンピューター7から記憶回路5aに入力される。
【0037】
処理回路5bは、経路情報Daに基づいてロボット2のアーム駆動機構2aの動作を制御するとともに、信号D3を生成する。処理回路5bは、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路5bは、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0038】
ここで、アーム駆動機構2aは、前述の関節部230_1~230_6の駆動機構の集合体であり、関節部ごとに、ロボット2の関節部を駆動するためのモーターと、ロボット2の関節部の回転角度を検出するエンコーダーと、を有する。
【0039】
処理回路5bは、経路情報Daをロボット2の各関節の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路5bは、当該各関節の実際の回転角度および回転速度等の動作量が経路情報Daに基づく前述の演算結果となるように、アーム駆動機構2aの各エンコーダーからの出力D1に基づいて、制御信号Sk1を出力する。制御信号Sk1は、アーム駆動機構2aのモーターの駆動を制御する。ここで、制御信号Sk1は、必要に応じて、距離センサー3dからの出力に基づいて処理回路5bにより補正される。
【0040】
また、処理回路5bは、アーム駆動機構2aの複数のエンコーダーのうちの少なくとも1つからの出力D1に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路5bは、当該複数のエンコーダーのうちの1つからの出力D1が所定値となるタイミングのパルスを含むトリガー信号を信号D3として生成する。
【0041】
制御モジュール6は、コントローラー5から出力される信号D3とコンピューター7からの印刷データとに基づいて、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作を制御する回路である。制御モジュール6は、タイミング信号生成回路6aと電源回路6bと制御回路6cと駆動信号生成回路6dとを有する。
【0042】
タイミング信号生成回路6aは、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路6aは、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。
【0043】
電源回路6bは、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、制御モジュール6およびヘッドユニット3の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路6bは、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、ヘッドユニット3に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路6dに供給される。
【0044】
制御回路6cは、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路6dに入力され、それ以外の信号は、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eに入力される。
【0045】
制御信号SIは、ヘッドユニット3のヘッド3aが有する駆動素子の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、制御信号SIは、当該駆動素子に対して後述の駆動信号Comを供給するか否かを指定する。この指定により、例えば、当該駆動素子に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、当該駆動素子の駆動タイミングを規定することにより、当該ノズルからのインクの吐出タイミングを規定する。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。
【0046】
以上の制御回路6cは、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、制御回路6cは、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0047】
駆動信号生成回路6dは、ヘッドユニット3のヘッド3aの有する各駆動素子を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路6dは、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路6dでは、当該DA変換回路が制御回路6cからの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路6bからの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、当該駆動素子に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eを介して、駆動信号生成回路6dから当該駆動素子に供給される。
【0048】
ここで、スイッチ回路3eは、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える回路である。
【0049】
コンピューター7は、コントローラー5に経路情報Da等の情報を供給する機能と、制御モジュール6に印刷データ等の情報を供給する機能と、を有する。コンピューター7は、例えば、これらの機能を実現するプログラムをインストールしたデスクトップ型またはノート型等のコンピューターである。
【0050】
1-3.ヘッドユニットの構成
図3は、ヘッド3aを含むヘッドユニット3の概略構成を示す斜視図である。以下の説明は、便宜上、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、以下の説明では、a軸に沿う一方向がa1方向であり、a1方向と反対の方向がa2方向である。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向がb1方向およびb2方向である。また、c軸に沿って互いに反対の方向がc1方向およびc2方向である。
【0051】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、ヘッドユニット3に設定されるツール座標系の座標軸に相当し、前述のロボット2の動作により前述のワールド座標系またはロボット座標系との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。図3に示す例では、c軸が前述の回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。なお、ツール座標系とベース座標系またはロボット座標系とは、キャリブレーションにより対応付けされる。また、ツール座標系は、例えば、後述のノズル面Fの中心が基準(ツールセンターポイント)となるように設定される。
【0052】
ヘッドユニット3は、前述のように、ヘッド3aと圧力調整弁3bと硬化用光源3cと距離センサー3dとを有する。これらは、図3中の二点鎖線で示される支持体3fに支持される。なお、図3に示す例では、ヘッドユニット3が有するヘッド3aおよび圧力調整弁3bのそれぞれの数が1個であるが、当該数は、図3に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、圧力調整弁3bの設置位置は、アーム226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基部210に対して固定の位置でもよい。
【0053】
支持体3fは、例えば、金属材料等で構成されており、実質的な剛体である。なお、図3では、支持体3fが扁平な箱状をなすが、支持体3fの形状は、特に限定されず、任意である。
【0054】
以上の支持体3fは、前述のアーム226に装着される。したがって、ヘッド3a、圧力調整弁3b、硬化用光源3cおよび距離センサー3dが支持体3fにより一括してアーム226に支持される。このため、アーム226に対するヘッド3a、圧力調整弁3b、硬化用光源3cおよび距離センサー3dのそれぞれの相対的な位置が固定される。図3に示す例では、ヘッド3aに対してc1方向の位置には、圧力調整弁3bが配置される。ヘッド3aに対してa2方向の位置には、硬化用光源3cが配置される。ヘッド3aに対してa1方向の位置には、距離センサー3dが配置される。
【0055】
ヘッド3aは、ノズル面Fと、ノズル面Fに開口する複数のノズルNと、を有する。図3に示す例では、ノズル面Fの法線方向がc2方向であり、当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶノズル列Laとノズル列Lbとに区分される。ノズル列Laおよびノズル列Lbのそれぞれは、b軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、ヘッド3aにおけるノズル列Laの各ノズルNに関連する要素とノズル列Lbの各ノズルNに関連する要素とがa軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。また、後述するノズル列方向DNはb軸に平行である。
【0056】
なお、本実施形態におけるノズル面Fとは、ノズルプレートによって形成される面と、固定板やカバーヘッドによって形成される面との両方を含む概念である。ノズルプレートとは、シリコン(Si)や金属などを材料とした板状部材にノズルNが開口した部材であり、固定板およびカバーヘッドとは、当該ノズルプレートの固定や保護などの目的でノズルプレートの周囲に設けられた部材である。固定板およびカバーヘッドはヘッドの構成によっては設けらない場合もあり、図3に示すノズル面Fはノズルプレートのみによって形成されたものである。
【0057】
ただし、ノズル列Laにおける複数のノズルNとノズル列Lbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致してもよいし異なってもよい。また、ノズル列Laおよびノズル列Lbのうちの一方の各ノズルNに関連する要素が省略されてもよい。以下では、ノズル列Laにおける複数のノズルNとノズル列Lbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0058】
図示しないが、ヘッド3aは、ノズルNごとに、駆動素子である圧電素子と、インクを収容するキャビティと、有する。ここで、当該圧電素子は、当該圧電素子に対応するキャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。このようなヘッド3aは、例えば、エッチング等により適宜に加工したシリコン基板等の複数の基板を接着剤等により貼り合わせることにより得られる。なお、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0059】
以上のヘッド3aには、前述のように、供給管10aを介して図示しないインクタンクからインクが供給される。ここで、供給管10aとヘッド3aとの間には、圧力調整弁3bが介在する。
【0060】
圧力調整弁3bは、ヘッド3a内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、ヘッド3aと前述の図示しないインクタンクとの位置関係が変化しても、ヘッド3a内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。このため、ヘッド3aのノズルNに形成されるインクのメニスカスの安定化が図られる。この結果、ノズルN内に気泡が入り込んだり、ノズルNからインクが溢れ出したりすることが防止される。また、圧力調整弁3bからのインクは、図示しない分岐流路を介してヘッド3aの複数箇所に適宜に分配される。ここで、図示しないインクタンクからのインクは、ポンプ等により所定の圧力で供給管10a内に移送される。
【0061】
硬化用光源3cは、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放射線等のエネルギーを出射する。例えば、インクが紫外線硬化性を有する場合、硬化用光源3cは、紫外線を出射するLED(light emitting diode)等の発光素子等で構成される。また、硬化用光源3cは、エネルギーの出射方向または出射範囲等を調整するためのレンズ等の光学部品等を適宜に有してもよい。
【0062】
なお、硬化用光源3cは、ワークW上のインクを完全硬化または完全固化させなくてもよい。この場合、例えば、ロボット2の基部210の設置面上に別途に設置される硬化用の光源からのエネルギーにより、硬化用光源3cからのエネルギー照射後のインクを完全硬化または完全固化させればよい。また、硬化用光源3cは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0063】
距離センサー3dは、ヘッド3aとワークWとの間の距離を計測する光学式の変位センサーである。本実施形態の距離センサー3dは、c軸に沿う方向におけるヘッド3aとワークWとの間の距離に応じた信号を出力する。なお、距離センサー3dは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0064】
1-4.メンテナンスユニットの構成
図4は、キャップ部4bを含むメンテナンスユニット4の概略構成を示す斜視図である。図4に示すメンテナンスユニット4は、前述のように、ケース4aとキャップ部4bと支持台4cと吸引機構4dとワイパー部4eとを有する。
【0065】
ケース4aは、キャップ部4b、支持台4c、吸引機構4dおよびワイパー部4eを支持する箱状の構造体である。なお、ケース4aの形状等は、図4に示す例に限定されず、任意である。
【0066】
キャップ部4bは、ヘッド3aのノズル面Fを被覆するキャップ4b1と、ガイド部4b2と、付勢機構4b3と、を有する構造体である。図4に示す例では、キャップ部4bは、長手形状をなす。キャップ4b1は、ゴム材料またはエラストマー材料等で構成される弾性を有する蓋体であり、ヘッド3aのノズル面Fを被覆することにより、ヘッド3aのノズルN付近のインクの乾燥を防止する。キャップ4b1には、ヘッド3aのノズル面Fに当接する外枠部と、当該外枠部に対してZ2方向に凹んだ底面と、キャップ4b1を貫通する孔と、が設けられる。ヘッド3aのノズル面Fをキャップ部4bによって被覆する後述のキャップ動作において、当該外枠部は、水平状態のノズル面Fに設けられたノズルNを囲むように、ヘッド3aのノズル面Fに当接する。また、このとき、底面はノズル面Fに対向する。当該孔は、当該凹部の底面に開口する一端開口と、吸引機構4dに接続される他端開口と、を有する。
【0067】
付勢機構4b3は、キャップ4b1を支持し、かつ、Z1方向に付勢する機構であって、バネまたはゴム等の弾性体によって構成される。ガイド部はキャップ4b1のZ方向と異なる方向の動きを規制する部材である。ヘッド3aのノズル面Fと前述の外枠部とが当接する際には、付勢機構4b3の弾性体はZ方向に縮むように弾性変形する。なお、付勢機構4b3はガスステー等の機構であってもよい。
【0068】
以上のキャップ部4bは、支持台4cに支持される。支持台4cは、キャップ部4bが固定される天面部4c1と、天面部4c1を支持する複数の脚部4c2によって構成される。天面部4c1は、金属材料等で構成される板状の部材であり、天面部4c1には、キャップ部4bおよびワイパー部4eがネジ止め等により固定される。
【0069】
吸引機構4dは、キャップ部4bとノズル面Fとの間に形成される空間を減圧する機構である。当該減圧により、キャップ部4bにノズル面Fが覆われた状態のヘッド3aのノズルNからインクが吸引されることにより、ノズルN内のインクがリフレッシュされる。吸引機構4dは、図示しないが、減圧タンクと減圧ポンプ4d2とを有する。当該減圧タンクは、例えば、減圧される内部空間を有する金属製のチャンバーであり、前述のケース4a内に配置される。当該減圧タンクは、前述のキャップ部4bの孔に連通するとともに、当該減圧ポンプに連通する。当該減圧ポンプは、当該減圧タンク内から空気を排出することにより当該減圧タンク内を減圧する機構である。なお、当該減圧タンクとキャップ部4bとの間、および、当該減圧タンクと当該減圧ポンプとの間のそれぞれには、圧力調整または開閉のためのバルブ等が設けられる。
【0070】
ワイパー部4eは、キャップ部4bに隣り合う位置に配置され、ノズル面Fを拭うワイパー4e1を有する構造体である。図4に示す例では、ワイパー部4eは、長手形状をなしており、キャップ部4bと平行となるように配置される。ワイパー4e1は、ゴム材料またはエラストマー材料等で構成される弾性を有するブレード状の部材であり、ヘッド3aのノズル面Fをワイピングすることにより、当該ノズル面Fを清掃する。ワイパー4e1は、支持体4e2を介して支持台4cの天面部4c1上にネジ止め等より固定される。
【0071】
1-5.立体物印刷装置1の動作
図5は、実施形態に係る立体物印刷装置1の動作を示すフローチャートである。立体物印刷装置1は、まず、図5に示すように、ステップS1において、印刷指示があるか否かを判断する。この判断は、例えば、コンピューター7から印刷の実行指示があったか否かを処理回路5bで判断することにより行われる。
【0072】
印刷指示があった場合、立体物印刷装置1は、ステップS2において、第1移動動作を行う。この第1移動動作は、ヘッド3aを後述の印刷動作の実行開始位置に移動させる動作であり、処理回路5bが経路情報Daに基づいてロボット2の駆動を制御することにより行われる。
【0073】
ステップS2の後、立体物印刷装置1は、ステップS3において、印刷動作を行う。この印刷動作は、ヘッド3aからのインクによりワークWに対して印刷を行う動作であり、処理回路5bが経路情報Daに基づいてロボット2の駆動を制御するとともに、制御モジュール6がヘッド3aの駆動を制御することにより行われる。
【0074】
ステップS3の後、または、印刷指示がない場合、立体物印刷装置1は、ステップS4において、キャップ指示があるか否かを判断する。この判断は、例えば、コンピューター7からキャップ指示があったか否かを処理回路5bで判断することにより行われる。なお、処理回路5bは、コンピューター7からの印刷指示およびキャップ指示が所定時間以上ない場合、キャップ指示があったものと判断してもよい。
【0075】
キャップ指示がない場合、立体物印刷装置1は、前述のステップS1に戻る。一方、キャップ指示がある場合、立体物印刷装置1は、ステップS5において、第2移動動作を行う。この第2移動動作は、ヘッド3aを後述のキャップ動作の実行開始位置に移動させる動作であり、処理回路5bが経路情報Daに基づいてロボット2の駆動を制御することにより行われる。
【0076】
ステップS5の後、立体物印刷装置1は、ステップS6において、キャップ動作を行う。このキャップ動作は、例えば、ヘッド3aのノズル面Fとキャップ部4bとが当接することで、ノズル面Fをキャップ部により覆う動作であり、処理回路5bが経路情報Daに基づいてロボット2の駆動を制御することにより行われる。なお、キャップ動作は、ノズル面Fとキャップ部4bとが厳密には当接しない動作も含むこと場合がある。例えば、ノズル面Fとキャップ部4bとが数ミリメートル離間する場合や、ノズル面Fとキャップ部4bとの間にインクなどが介在する場合がこれに該当する。
【0077】
ステップS6の後、立体物印刷装置1は、ステップS7において、終了指示があるか否かを判断する。この判断は、例えば、コンピューター7から終了指示があったか否かを処理回路5bで判断することにより行われる。
【0078】
立体物印刷装置1は、終了指示がない場合、前述のステップS1に戻り、一方、終了指示がある場合、動作を終了する。
【0079】
図6は、ステップS3の印刷動作の実行中のロボット2の側面図である。図6では、長球状をなすワークWの長軸AXがX軸に平行となるように配置されたワークWの面WFに対して印刷する場合が例示される。ここで、ワークWは、ロボット2よりもX2方向の位置に載置される。なお、図6に実線で示すヘッド3aの姿勢においては、a軸とX軸とが平行であり、b軸とY軸とが平行であり、c軸とZ軸とが平行である。
【0080】
印刷動作では、図6に示すように、ロボット2がヘッド3aを移動経路RUに沿って移動させる。移動経路RUは、位置PSから位置PEまでの面WFに沿う経路である。移動経路RUは、Z2方向にみてX軸に沿って延びる直線状をなす。
【0081】
印刷動作では、ロボット2は、6個の関節部230のうち3個の関節部230を動作させる。図6に示す例では、ロボット2は、印刷動作の実行中において、関節部230_2と関節部230_3と関節部230_5とのそれぞれの回動軸をY軸に平行な状態とし、これらの関節部を動作させる。このように、3個の関節部230の動作によりヘッド3aを移動経路RUに沿って安定的に移動させることができる。
【0082】
ここで、ロボット2は、面WFに対するヘッド3aからのインクの着弾方向が一定となるように、面WFの曲面に応じてヘッド3aの姿勢を制御することが好ましい。このため、移動経路RUでのヘッド3aのヨー角およびロール角は、一定であることが好ましい。一方、移動経路RUでのヘッド3aのピッチ角は、変化することが好ましい。すなわち、移動経路RUでの任意の2点である第1位置P1および第2位置P2でのヘッド3aのピッチ角が互いに異なることが好ましい。なお、本実施形態において、移動経路RUは、ヘッド3aが吐出するインク滴の吐出方向ベクトルが、常に鉛直下向きの成分を含むように設定される。換言すれば、c2方向のベクトルがZ2方向の成分を含む。こうした移動経路RUの設定によれば、ヘッド3aがインク滴を重力に抗う方向に吐出することがないため、インク滴の飛翔が安定する。
【0083】
以上の印刷動作によりワークWに対して印刷が行われる。
【0084】
ここで、ヘッドのヨー角、ロール角、ピッチ角について説明する。ヘッド3aのヨー角、ロール角、ピッチ角とは、任意に設定されるヘッド3aの基準姿勢に対するc軸、a軸、b軸まわりの回転量として表される。なお、ヘッド3aの基準姿勢においては、a軸、b軸、c軸とX軸、Y軸、Z軸との関係が一意に固定される。
【0085】
ヘッド3aの第1姿勢におけるヘッドのヨー角とは、基準姿勢から第1姿勢への姿勢変化に要するc軸まわりの回転量として表される。このc軸まわりの回転量とは、基準姿勢におけるa軸と、第1姿勢におけるa軸と、を基準姿勢におけるc軸に沿った方向にみたときのなす角の絶対値である。もしくは、c軸まわりの回転量とは、基準姿勢におけるb軸と、第1姿勢におけるb軸と、を基準姿勢におけるc軸に沿った方向にみたときのなす角の絶対値である。
【0086】
また同様に、ヘッド3aの第1姿勢におけるヘッドのロール角とは、基準姿勢から第1姿勢への姿勢変化に要するa軸まわりの回転量として表される。このa軸まわりの回転量とは、基準姿勢におけるb軸と、第1姿勢におけるb軸と、を基準姿勢におけるa軸に沿った方向にみたときのなす角の絶対値である。もしくは、a軸まわりの回転量とは、基準姿勢におけるc軸と、第1姿勢におけるc軸と、を基準姿勢におけるa軸に沿った方向にみたときのなす角の絶対値である。
【0087】
また同様に、ヘッド3aの第1姿勢におけるヘッドのピッチ角とは、基準姿勢から第1姿勢への姿勢変化に要するb軸まわりの回転量として表される。このb軸まわりの回転量とは、基準姿勢におけるa軸と、第1姿勢におけるa軸と、を基準姿勢におけるb軸に沿った方向にみたときのなす角の絶対値である。もしくは、b軸まわりの回転量とは、基準姿勢におけるc軸と、第1姿勢におけるc軸と、を基準姿勢におけるb軸に沿った方向にみたときのなす角の絶対値である。
【0088】
図6を用いてヘッド3aのヨー角、ロール角、ピッチ角についてさらに説明する。例えば、ヘッド3aの基準姿勢をa軸とX軸とが平行かつ、b軸とY軸とが平行かつ、c軸とZ軸とが平行である姿勢として設定する。このとき、図6に実線で示すヘッド3aのヨー角、ロール角、ピッチ角はいずれも0°となる。一方、図6に破線で示すヘッド3aのピッチ角は約45°となり、ヨー角、ロール角、は0°となる。つまり、図6に実線で示すヘッド3aと、破線で示すヘッド3aとはピッチ角が互いに異なる。
【0089】
図7は、印刷動作の実行中の立体物印刷装置1の平面図である。図7に実線で示すヘッド3aの姿勢においては、a軸とX軸とが平行であり、b軸とY軸とが平行であり、c軸とZ軸とが平行である。印刷動作の実行中では、図7示すように、基部210の平面視で、ヘッド3aの複数のノズルNの配列方向であるノズル列方向DNが前述の移動経路RUでのヘッド3aの走査方向DSに直交する。ここで、基部210の平面視で印刷動作の実行中でのヘッド3aと基部210とを結ぶ仮想的な線分を第1線分L1とするとき、ノズル列方向DNと第1線分L1とのなす角度θ1は、90°である。ただし、角度θ1は、90°に限定されず、例えば、70°以上110°以下の範囲内にあればよい。なお、第1線分L1は、基部210の平面視で印刷動作の実行中でのノズル面Fの中心点と回動軸O1とを結ぶ仮想的な線分として、より厳密に規定することもできる。
【0090】
印刷動作の実行後、前述の第2移動動作により、図7中の二点鎖線で示すように、ヘッド3aがキャップ部4b上に移動する。図7に二点鎖線で示すヘッド3aの姿勢においては、c軸とZ軸とは平行であるが、a軸とX軸とのなす角は45°であり、b軸とY軸とのなす角は45°である。
【0091】
ここで、ヘッド3aの基準姿勢をa軸とX軸とが平行かつ、b軸とY軸とが平行かつ、c軸とZ軸とが平行である姿勢として設定する。このとき、図7に実線で示すヘッド3aのヨー角、ロール角、ピッチ角はいずれも0°となる。一方、図7に二点鎖線で示すヘッド3aのヨー角は45°となり、ロール角、ピッチ角は0°となる。つまり、図7に実線で示すヘッド3aと、二点鎖線で示すヘッド3aとはヨー角が互いに異なる。換言すれば、ワールド座標系における任意の座標からZ1方向にみたノズルNのノズル列方向DNが、印刷動作の実行中と、移動動作の実行後またはキャップ動作の実行中と、で互いに異なる。より具体的には、印刷動作の実行中におけるノズル列方向DNと、移動動作の実行後またはキャップ動作の実行中におけるノズル列方向DNと、のなす角が45°である。
【0092】
第2移動動作は、主に関節部230_1を動作させることに行われる。ここで、前述の印刷動作に用いる関節部230_2と関節部230_3と関節部230_5を動作させてもよいが、関節部230_4および関節部230_6を動作させないことが好ましい。この場合、再度印刷動作を行う場合、印刷動作でのロボット2の動作の再現性を高めることができる。
【0093】
図8は、キャプ動作の実行中の立体物印刷装置1の平面図である。図8示すように、基部210の平面視でキャップ動作の実行中でのヘッド3aと基部210とを結ぶ仮想的な線分を第2線分L2とするとき、ノズル列方向DNと第2線分L2とのなす角度θ2は、90°である。ただし、角度θ2は、90°に限定されず、例えば、70°以上110°以下の範囲内にあればよい。なお、第2線分L2は、基部210の平面視でキャップ動作の実行中でのノズル面Fの中心点と回動軸O1とを結ぶ仮想的な線分として、より厳密に規定することもできる。
【0094】
ここで、基部210の平面視で第1線分L1と第2線分L2とのなす角度をθ3とするとき、角度θ1、θ2、θ3は、|θ1-θ2|<θ3の関係を満たす。また、配管部10および配線部11の捻じれを低減する観点から、|θ1-θ2|は、できる限り小さいことが好ましい。
【0095】
キャップ動作の実行後、前述の第1移動動作により、図8中の二点鎖線で示すように、ヘッド3aが前述の印刷位置に移動する。第1移動動作は、第2移動動作と同様、主に関節部230_1を動作させることに行われる。
【0096】
以上の立体物印刷装置1は、前述のように、ヘッド3aとロボット2とキャップ部4bとを有する。ヘッド3aは、「液体」の一例であるインクを吐出する複数のノズルNが設けられたノズル面Fを有する。ロボット2は、基部210と、ヘッド3aを支持する腕部220とを有し、基部210から腕部220にかけて「複数の回動部」の一例である関節部230_2~230_6が設けられ、関節部230_2~230_6の回動により基部210に対するヘッド3aの位置を変化させる。キャップ部4bは、ノズル面Fを被覆する。
【0097】
そのうえで、立体物印刷装置1は、前述のように、ステップS6のキャップ動作とステップS3の印刷動作とを実行する。ステップS6のキャップ動作では、ノズル面Fがキャップ部4bに被覆される位置に、ロボット2がヘッド3aを位置させる。ステップS3の印刷動作では、ロボット2がワークWに対するヘッド3aの位置をステップS6のキャップ動作の実行中とは異なる位置で変化させつつ、ヘッド3aがワークWに対してインクを吐出する。ここで、ステップS6のキャップ動作の実行中でのヘッド3aのヨー角とステップS3の印刷動作の実行中でのヘッド3aのヨー角とが互いに異なる。
【0098】
以上の立体物印刷装置1では、ステップS6のキャップ動作の実行中にノズル面Fがキャップ部4bに被覆されるので、ステップS3の印刷動作が長期にわたり実行されなくても、ノズル面Fのインクの増粘または固化を低減することができる。この結果、各ノズルNのインクによる詰まりを低減することができる。また、ヘッド3aのヨー角をステップS6のキャップ動作の実行中とステップS3の印刷動作の実行中とで異ならせることにより、これらの動作の実行位置間でヘッド3aを移動させる際に、ロボット2の複数の関節部230のうちの最もヘッドに近い関節部230_6の回動量を低減することができる。この結果、ヘッド3aに関連する配線類の捻じれによる損傷を低減することができる。
【0099】
ここで、立体物印刷装置1は、ヘッド3aにインクを供給する供給管10aと、ヘッド3aを駆動する電気信号をヘッド3aに供給する駆動配線11aと、をさらに有する。供給管10aおよび駆動配線11aのそれぞれは、腕部220の外部に設けられる。このような供給管10aおよび駆動配線11aのそれぞれは、ヘッド3aのヨー角を一定に維持したままステップS3の印刷動作とステップS6のキャップ動作とを繰り返し実行すると、捻じれにより損傷する可能性がある。したがって、このような供給管10aまたは駆動配線11aを用いる場合、ヘッド3aのヨー角をステップS3の印刷動作とステップS6のキャップ動作とで異ならせることによる前述の効果が顕著となる。
【0100】
また、配線類の捻じれによる損傷を低減する観点から、前述のように、基部210の平面視で、ステップS3の印刷動作の実行中での第1線分L1とノズル列方向DNとのなす角度をθ1とし、ステップS6のキャップ動作の実行中での第2線分L2とノズル列方向DNとのなす角度をθ2とし、第1線分L1と第2線分L2とのなす角度をθ3としたとき、|θ1-θ2|<θ3の関係を満たすことが好ましい。ここで、ノズル列方向DNは、基部210の平面視で、複数のノズルNの配列方向である。第1線分L1は、基部210の平面視で、ステップS3の印刷動作の実行中でのヘッド3aと基部210とを結ぶ仮想的な線分である。第2線分L2は、基部210の平面視で、ステップS6のキャップ動作の実行中でのヘッド3aと基部210とを結ぶ仮想的な線分である。
【0101】
角度θ1、θ2およびθ3が前述の関係を満たす場合、ヘッド3aのヨー角がステップS6のキャップ動作の実行中とステップS3の印刷動作の実行中とで等しい場合に比べて、ステップS6のキャップ動作およびステップS3の印刷動作の実行位置間でヘッド3aを移動させる際に、関節部230_6の回動量を低減することができる。
【0102】
立体物印刷装置1では、ステップS3の印刷動作の実行中にヘッド3aが通過する2つの位置を第1位置P1および第2位置P2とするとき、ヘッド3aの第1位置P1でのピッチ角と第2位置P2でのピッチ角とが互いに異なることが好ましい。この場合、ワークWの印刷面が曲面等であっても、当該印刷面の対象部位に対するヘッド3aの姿勢を一定に保つことができる。したがって、ワークWの印刷面の形状によらず、画質を高めやすいという利点がある。
【0103】
ここで、ステップS3の印刷動作は、ヘッド3aのヨー角およびロール角を一定に維持しつつワークWに対するヘッド3aの位置を変化させる動作を含むことが好ましい。この場合、ステップS3の印刷動作の実行中にヘッド3aからワークWに吐出されるインクの粗密ムラを低減することができる。この結果、画質を高めやすいという利点がある。
【0104】
また、立体物印刷装置1は、前述のように、ステップS2の第1移動動作をさらに実行する。ステップS2の第1移動動作では、ステップS6のキャップ動作の実行終了からステップS3の印刷動作の実行開始までの間の期間内にロボット2がヘッド3aを移動させる。このため、ステップS2の第1移動動作によりステップS6のキャップ動作からステップS3の印刷動作への移行を行うことができる。
【0105】
そのうえで、ステップS2の第1移動動作の実行期間にわたる関節部230_6の回動量は、ステップS2の第1移動動作の実行期間にわたる関節部230_1の回動量よりも小さい。ここで、関節部230_1は、「第1関節部」の一例であり、複数の関節部230のうち、基部210から最も近い関節部230である。関節部230_6は、「第2関節部」の一例であり、複数の関節部230のうち、基部210から最も遠い関節部230である。関節部230_6が回動すると、関節部230_1が回動する場合に比べて、ヘッド3aに関連する前述の供給管10aおよび駆動配線11a等の配線類が捻じれやすい。したがって、ステップS2の第1移動動作の実行期間にわたる関節部230_6の回動量をステップS2の第1移動動作の実行期間にわたる関節部230_1よりも小さくすることにより、ステップS2の第1移動動作における当該配線類の捻じれを低減することができる。
【0106】
また、立体物印刷装置1は、前述のように、ステップS5の第2移動動作をさらに実行する。ステップS5の第2移動動作では、ステップS3の印刷動作の実行終了からステップS6のキャップ動作の実行開始までの間の期間内にロボット2がヘッド3aを移動させる。このため、ステップS5の第2移動動作によりステップS3の印刷動作からステップS6のキャップ動作への移行を行うことができる。
【0107】
そのうえで、ステップS5の第2移動動作の実行期間にわたる関節部230_6の回動量は、ステップS5の第2移動動作の実行期間にわたる関節部230_1の回動量よりも小さい。このため、前述のステップS2の第1移動動作と同様、ステップS5の第2移動動作における当該配線類の捻じれを低減することができる。
【0108】
このようなステップS2の第1移動動作またはステップS5の第2移動動作の実行期間にわたるヘッド3aのヨー角の変化は、45°以上であることが好ましく、90°以上であることがより好ましい。このようにヨー角の変化が大きいほど、ステップS6のキャップ動作の実行中におけるヘッドユニット3の位置と、ステップS3の印刷動作の実行中におけるワークWの位置とが離間する。このため、キャップ動作の実行中にワークWの設置または撤去や、ワークWの位置調整などの作業を行う際に、ヘッドユニット3が干渉することを抑制できる。
【0109】
また、前述のように、ステップS6のキャップ動作の実行終了時には、ヘッド3aがノズル面Fの法線方向に沿ってキャップ部4bから離間する。このため、ステップS6のキャップ動作の実行終了時に、ノズル面Fがキャップ部4bに接触した状態のまま移動することが低減されるので、キャップ部4bに付着したインクによるノズル面Fの汚れが防止される。
【0110】
同様の観点から、前述のように、ステップS6のキャップ動作の実行開始時には、ヘッド3aがノズル面Fの法線方向に沿ってキャップ部4bに接近する。このため、ステップS6のキャップ動作の実行開始時に、ノズル面Fがキャップ部4bに接触した状態のまま移動することが低減されるので、キャップ部4bに付着したインクによるノズル面Fの汚れが防止される。
【0111】
また、前述のように、ステップS6のキャップ動作の実行中でのノズル面Fは、水平であることが好ましい。この場合、ステップS6のキャップ動作の実行中に、各ノズルN内のインクのメニスカスが安定化するので、ノズル面Fが水平面に対して傾斜する場合に比べて、各ノズルN付近でのインクが増粘し難い。
【0112】
本実施形態の立体物印刷装置1は、前述のように、付勢機構4b3をさらに有する。付勢機構4b3は、ステップS6のキャップ動作の実行中にキャップ部4bをノズル面Fに向けて付勢する。このため、ステップS6のキャップ動作の実行中でのキャップ部4bとノズル面Fとを安定的に密着させることができる。
【0113】
また、本実施形態の立体物印刷装置1は、前述のように、吸引機構4dをさらに有する。吸引機構4dは、ステップS6のキャップ動作の実行中にキャップ部4bとノズル面Fとの間に形成される空間を減圧する。このため、ノズルN付近で増粘または固化したインクを吸引機構4dの作用により除去することができる。
【0114】
さらに、本実施形態の立体物印刷装置1は、前述のように、ワイパー部4eをさらに有する。ワイパー部4eは、キャップ部4bに隣り合う位置に配置され、ノズル面Fを拭う。このため、ノズル面Fに付着したインクをワイパー部4eの作用により除去することができる。特に、ワイパー部4eがキャップ部4bに隣り合う位置に配置されるので、キャップ部4bおよびワイパー部4eの両方を用いたメンテナンスを効率的に行うことができる。
【0115】
2.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0116】
2-1.変形例1
前述の形態では、ロボットとして6軸の垂直多軸ロボットを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。ロボットは、例えば、6軸以外の垂直多軸ロボットでもよいし、水平多軸ロボットでもよい。また、ロボットの腕部は、回動機構で構成される回動部に加えて、伸縮機構等を有してもよい。ただし、印刷動作での印刷品質と非印刷動作でのロボットの動作の自由度とのバランスの観点から、ロボットは、6軸以上の多軸ロボットであることが好ましい。
【0117】
2-2.変形例2
前述の形態では、ロボットに対するヘッドの固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ロボットのエンドエフェクターとして装着されるハンド等の把持機構によりヘッドを把持することにより、ロボットに対してヘッドを固定してもよい。
【0118】
2-3.変形例3
前述の形態では、1種類のインクを用いて印刷を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、2種以上のインクを用いて印刷を行う構成にも本発明を適用することができる。
【0119】
2-4.変形例4
本発明の立体物印刷装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する立体物印刷装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する立体物印刷装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、立体物印刷装置は、接着剤等の液体をワークに塗布するジェットディスペンサーとしても利用できる。
【符号の説明】
【0120】
1…立体物印刷装置、2…ロボット、2a…アーム駆動機構、3…ヘッドユニット、3a…ヘッド、3b…圧力調整弁、3c…硬化用光源、3d…距離センサー、3e…スイッチ回路、3f…支持体、4…メンテナンスユニット、4a…ケース、4b…キャップ部、4b1…キャップ、4b2…ガイド部、4b3…付勢機構、4c…支持台、4c1…天面部、4c2…脚、4d…吸引機構、4d2…減圧ポンプ、4e…ワイパー部、4e1…ワイパー、4e2…支持体、5…コントローラー、5a…記憶回路、5b…処理回路、6…制御モジュール、6a…タイミング信号生成回路、6b…電源回路、6c…制御回路、6d…駆動信号生成回路、7…コンピューター、10…配管部、10a…供給管、11…配線部、11a…駆動配線、210…基部、220…腕部、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、225…アーム、226…アーム、230…関節部(第1回動部、回動部)、230_1…関節部(回動部)、230_2…関節部(回動部)、230_3…関節部(回動部)、230_4…関節部(回動部)、230_5…関節部(回動部)、230_6…関節部(第2回動部、回動部)、AX…長軸、CLK…クロック信号、CNG…チェンジ信号、Com…駆動信号、D1…出力、D3…信号、DN…ノズル列方向、DS…走査方向、Da…経路情報、F…ノズル面、FX1…固定位置、FX2…固定位置、FX3…固定位置、FX4…固定位置、L1…第1線分、L2…第2線分、LAT…ラッチ信号、La…ノズル列、Lb…ノズル列、N…ノズル、O1…回動軸、O2…回動軸、O3…回動軸、O4…回動軸、O5…回動軸、O6…回動軸、P1…第1位置、P2…第2位置、PD…駆動パルス、PTS…タイミング信号、RU…移動経路、S1…ステップ、S2…ステップ、S3…ステップ、S4…ステップ、S5…ステップ、S6…ステップ、S7…ステップ、SI…制御信号、Sk1…制御信号、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、W…ワーク、WF…面、dCom…波形指定信号、θ1…角度、θ2…角度。
図1
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図8