(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】負荷監視装置及び負荷監視方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/02 20160101AFI20241203BHJP
H02P 29/60 20160101ALI20241203BHJP
【FI】
H02P29/02
H02P29/60
(21)【出願番号】P 2021041879
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 尊
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
(72)【発明者】
【氏名】福原 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 隆志
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-27611(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174867(WO,A1)
【文献】特開2003-82409(JP,A)
【文献】特開2002-345147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/02
H02P 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータの動作制御を行うドライバとの負荷を監視する負荷監視装置であって、
前記モータに供給される電流値を取得する電流値取得部と、
前記電流値と前記モータの発熱量との関係を示す第1の熱モデルによって前記モータの温度を第1の温度として推定する第1の温度推定部と、
前記電流値と前記ドライバの発熱量との関係を示す第2の熱モデルによって前記ドライバの温度を第2の温度として推定する第2の温度推定部と、
前記第1の温度と前記モータ用の第1の閾値とを比較して該モータの過負荷状態の有無を判定するように構成され、該モータに関して所定の前記電流値に対する印加可能時間を示す第1負荷特性を有する第1制御構造と、前記第2の温度と前記ドライバ用の第2の閾値とを比較して該ドライバの過負荷状態の有無を判定するように構成され、該ドライバに関して所定の前記電流値に対する印加可能時間を示す第2負荷特性を有する第2制御構造とを有する負荷判定部と、
前記負荷判定部が、前記モータ又は前記ドライバの少なくとも一方が過負荷状態にあると判定した場合、過負荷状態に関する異常情報を出力する出力部と、
前記モータの周囲温度である第1の周囲温度と、前記ドライバの周囲の温度である第2の周囲の温度とに基づいて、前記第1制御構造における前記第1負荷特性及び前記第2制御構造における前記第2負荷特性を補正する補正部と、
を備える、負荷監視装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記モータの定格電流を維持したまま前記第1の周囲温度が低くなるほど前記第1負荷特性における前記印加可能時間が長くなるように該第1負荷特性を補正し、前記ドライバの定格電流を維持したまま前記第2の周囲温度が低くなるほど前記第2負荷特性における前記印加可能時間が長くなるように該第2負荷特性を補正する、
請求項1に記載の負荷監視装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記第1の周囲温度が低くなるほど、前記モータの定格電流を増加させるとともに前記第1負荷特性における前記印加可能時間が長くなるように該第1負荷特性を補正し、前記第2の周囲温度が低くなるほど、前記ドライバの定格電流を増加させるとともに前記第2負荷特性における前記印加可能時間が長くなるように該第2負荷特性を補正する、
請求項1に記載の負荷監視装置。
【請求項4】
前記負荷判定部は、前記補正部によって補正された前記第1負荷特性及び前記第2負荷特性から、前記モータ及び前記ドライバの許容電流値としての第1の電流値と、当該第1の電流値に対応する第1の印加可能時間とを算出し、前記第1の印加可能時間と、前記モータと前記ドライバとを接続する動力ケーブルの構成に関する情報とから、当該動力ケーブルの許容電流値としての第2の電流値を算出し、前記第2の電流値と前記第1の電流値とを比較して、前記第2の電流値が前記第1の電流値以下であるときに前記動力ケーブルの過負荷状態を示す情報を出力する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の負荷監視装置。
【請求項5】
前記動力ケーブルの構成に関する情報の入力を受け付ける受付部、
を更に備えた、
請求項4に記載の負荷監視装置。
【請求項6】
モータと、前記モータの動作制御を行うドライバとの負荷を監視する負荷監視方法であって、
前記モータに供給される電流値を取得し、
前記電流値と前記モータの発熱量との関係を示す第1の熱モデルによって前記モータの温度を第1の温度として推定し、
前記電流値と前記ドライバの発熱量との関係を示す第2の熱モデルによって前記ドライバの温度を第2の温度として推定し、
前記モータに関して所定の前記電流値に対する印加可能時間を示す第1負荷特性を生成し、
前記第1の温度から前記モータ用の第1の閾値を補正し、
前記モータ用の補正した第1の閾値と現在の出力電流値を比較して該モータの過負荷状態の有無を判定し、
前記ドライバに関して所定の前記電流値に対する印加可能時間を示す第2負荷特性を生成し、
前記第2の温度から前記ドライバ用の第2の閾値を補正し、
前記ドライバ用の補正した第2の閾値と現在の出力電流値を比較して該ドライバの過負荷状態の有無を判定し、
前記モータ又は前記ドライバの少なくとも一方が過負荷状態にあると判定した場合、過負荷状態に関する異常情報を出力し、
前記モータの周囲温度である第1の周囲温度と、前記ドライバの周囲の温度である第2の周囲の温度とに基づいて、前記第1制御構造における前記第1負荷特性及び前記第2制御構造における前記第2負荷特性を補正する、
負荷監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータと、モータの動作制御を行うドライバの負荷を監視する負荷監視装置及び負荷監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作機械等で使用されるモータと、モータの動作制御を行うドライバに対する過熱保護のため、種々の方法が考えられてきた。例えば、特許文献1には、制御指示情報と温度センサが検出したモータの使用環境温度とを用いて制御テーブルを参照し、対応する制御量(モータトルク)を読み出してモータを制御する方法が記載されている。また、特許文献2には、モータに流した電流とモータからの放熱分とに基づいてモータの温度上昇分を求め、温度上昇分に基づいてモータの制御パラメータ(モータのトルク定数や抵抗値など)を補正する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-163182号公報
【文献】特開2004-318709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、制御テーブルによって必要以上のモータトルクを発生させないようにしており、モータの本来の性能を発揮できていない。また、特許文献2の方法では、制御パラメータの補正によって正確なモータのトルクを出力するようにしており、モータの本来の性能を発揮できていない。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータやドライバの本来の性能を可能な限り引き出すことができる負荷監視装置及び負荷監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、上記課題を解決するために、モータと、モータの動作制御を行うドライバとの負荷を監視する負荷監視装置が、以下の構成を採用する。すなわち、負荷監視装置は、モータに供給される電流値を取得する電流値取得部と、電流値と前記モータの発熱量との関係を示す第1の熱モデルによってモータの温度を第1の温度として推定する第1の温度推定部と、電流値とドライバの発熱量との関係を示す第2の熱モデルによってドライバの温度を第2の温度として推定する第2の温度推定部と、第1の温度とモータ用の第1の閾値とを比較して該モータの過負荷状態の有無を判定するように構成され、該モータに関して所定の電流値に対する印加可能時間を示す第1負荷特性を有する第1制御構造と、第2の温度とドライバ用の第2の閾値とを比較して該ドライバの過負荷状態の有無を判定するように構成され、該ドライバに関して所定の電流値に対する印加可能時間を示す第2負荷特性を有する第2制御構造とを有する負荷判定部と、負荷判定部が、モータ又は前記ドライバの少なくとも一方が過負荷状態にあると判定した場合、過負荷状態に関する異常情報を出力する出力部と、モータの周囲温度である第1の周囲温度と、ドライバの周囲の温度である第2の周囲の温度とに基づいて、第1制御構造における第1負荷特性及び第2制御構造における第2負荷特性を補正する補正部と、を備えている。
【0007】
本発明は、上記の負荷監視装置と同様の特徴を有する、負荷監視方法、負荷監視用のプ
ログラム、そのようなプログラムを記録した記録媒体なども含む。
【0008】
上記の構成によれば、モータの周囲温度及びドライバの周囲温度の夫々に基づいて、第1負荷特性及び第2負荷特性の夫々を補正する。これにより、補正後の負荷特性に対応する閾値に基づいて、モータ及びドライバに対して定格電流よりも大きい電流が印加可能時間を超過して印加されたかを判定するようになる。このようにして、モータ及びドライバに印加可能な時間を調整する、すなわちモータ及びドライバに掛かる負荷を調整することで、モータの周囲温度及びドライバの周囲温度に応じて、モータ及びドライバの本来の性能を可能な限り引き出すことができる。
【0009】
上記の負荷監視装置では、補正部は、モータの定格電流を維持したまま第1の周囲温度が低くなるほど第1負荷特性における印加可能時間が長くなるように該第1負荷特性を補正し、ドライバの定格電流を維持したまま第2の周囲温度が低くなるほど第2負荷特性における印加可能時間が長くなるように該第2負荷特性を補正してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、第1負荷特性及び第2負荷特性の補正により、モータ及びドライバの夫々の定格電流を維持したまま、第1の周囲温度及び第2の周囲温度の夫々が低くなるほど第1負荷特性及び第2負荷特性の夫々における印加可能時間を長くすることができる。
【0011】
上記の負荷監視装置では、補正部は、第1の周囲温度が低くなるほど、モータの定格電流を増加させるとともに第1負荷特性における印加可能時間が長くなるように該第1負荷特性を補正し、第2の周囲温度が低くなるほど、ドライバの定格電流を増加させるとともに第2負荷特性における印加可能時間が長くなるように該第2負荷特性を補正してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、第1負荷特性及び第2負荷特性の補正により、第1の周囲温度及び第2の周囲温度の夫々が低くなるほど、モータ及びドライバの夫々の定格電流を増加させるとともに、第1負荷特性及び第2負荷特性の夫々における印加可能時間を長くすることができる。
【0013】
上記の負荷監視装置では、負荷判定部は、補正部によって補正された第1負荷特性及び第2負荷特性から、モータ及びドライバの許容電流値としての第1の電流値と、当該第1の電流値に対応する第1の印加可能時間とを算出し、第1の印加可能時間と、モータとドライバとを接続する動力ケーブルの構成に関する情報とから、当該動力ケーブルの許容電流値としての第2の電流値を算出し、第2の電流値と第1の電流値とを比較して、第2の電流値が第1の電流値以下であるときに動力ケーブルの過負荷状態を示す情報を出力してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、第1負荷特性及び第2負荷特性グラフを補正した後に、負荷判定部によって、補正後の第1負荷特性及び第2負荷特性に基づいて、動力ケーブルの許容電流値(第2の電流値)がモータ及びドライバの許容電流値(第1の電流値)以下であるかを判定し、第2の電流値が第1の電流値以下であるときには過負荷状態を示す情報を出力する。これにより、第2の電流値が第1の電流値を下回ることで、動力ケーブルの温度が過度に上昇して、焼損する可能性を回避することができる。このため、モータ及びドライバだけでなく動力ケーブルも保護しながら、モータ及びドライバの本来の性能を可能な限り引き出すことができる。
【0015】
上記の負荷監視装置では、動力ケーブルの構成に関する情報の入力を受け付ける受付部、を更に備えてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、動力ケーブルの構成に関する情報を入力することができるようにすることで、動力ケーブルの種類や敷設条件に応じた好適な動力ケーブルの保護を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、モータやドライバの本来の性能を可能な限り引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、モータ制御システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、モータが組み込まれて構成される制御システムの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態のドライバで形成される制御構造を示す図である。
【
図4】
図4は、モータ用の算出モデルの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、ドライバ用の算出モデルの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、電子サーマル部の第1の処理例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7Aは、モータ及びドライバの夫々の過負荷特性グラフの説明図であり、
図7Bは、系全体の過負荷特性グラフの説明図である。
【
図8】
図8は、設定部の処理例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1の補正方法で補正した場合の系全体の過負荷特性グラフである。
【
図10】
図10は、第2の補正方法で補正した場合の系全体の過負荷特性グラフである。
【
図11】
図11は、電子サーマル部の第2の処理例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、電子サーマル部の第3の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本願の実施形態に係る負荷監視装置について説明する。実施形態の構成は例示であり、実施形態の構成に限定されない。
【0020】
<実施形態>
図1は、本実施形態の負荷監視装置としても作動するドライバ4を含む制御システムの概略構成図である。当該制御システムは、ネットワーク1と、モータ2と、負荷装置3と、ドライバ4と、PLC(Programmable Logic Controller)5と、動力ケーブル8と、端
末9とを備える。
【0021】
当該制御システムは、モータ2とともに負荷装置3を駆動制御するためのシステムである。そして、モータ2及び負荷装置3が、当該制御システムによって制御される制御対象6とされる。ここで、負荷装置3としては、各種の機械装置(例えば、産業用ロボットのアームや搬送装置)が例示できる。また、モータ2はその負荷装置3を駆動するアクチュエータとして負荷装置3内に組み込まれている。例えば、モータ2は、巻線が巻かれた固定子(ステータ)と回転子を有するACサーボモータである。モータ2は、その固定子に巻線が巻かれるとともに回転子を有する構成であればよく、その具体的な構成はACサーボモータに限定されない。
【0022】
なお、モータ2には図示しないエンコーダが取り付けられており、当該エンコーダによりモータ2の動作に関するパラメータ信号がドライバ4にフィードバック送信されている。このフィードバック送信されるパラメータ信号(以下、フィードバック信号という)は、たとえばモータ2の回転軸の回転位置(角度)についての位置情報、その回転軸の回転速度の情報等を含む。
【0023】
ドライバ4は、ネットワーク1を介してPLC5からモータ2の動作(モーション)に関する動作指令信号を受けるとともに、モータ2に接続されているエンコーダから出力されたフィードバック信号を受ける。ドライバ4は、PLC5からの動作指令信号およびエンコーダからのフィードバック信号に基づいて、モータ2の駆動に関するサーボ制御、すなわち、モータ2の動作に関する指令値を算出するとともに、モータ2の動作がその指令値に追従するように、モータ2に動力ケーブル8を介してu,v,wの3相の駆動電流を供給する。なお、モータ2に供給される駆動電流は、交流電源7からドライバ4に対して送られる交流電力が利用される。
【0024】
本実施形態では、ドライバ4は三相交流を受けるタイプのものであるが、単相交流を受けるタイプのものでもよい。なお、ドライバ4によるサーボ制御については、ドライバ4が有する位置制御器41、速度制御器42、電流制御器43を利用したフィードバック制御である。
【0025】
ここで、
図1に示すように、ドライバ4は、位置制御器41、速度制御器42、電流制御器43を備え、これらの処理により上記サーボ制御が実行される。また、ドライバ4は、モータ2及びドライバ4を過熱による損傷から保護するために電子サーマル部150(
図2を参照)を有している。
【0026】
電子サーマル部150は、モータ2の巻線温度及びドライバ4の温度の夫々の温度を推定し、その推定温度に基づいてモータ2の過熱状態を判断する。
【0027】
そこで、
図2に示す、ドライバ4に形成される制御構造に基づいて、ドライバ4による上記サーボ制御及び電子サーマル部150によるモータ2の保護制御の説明を行う。当該制御構造は、所定の演算装置及びメモリ等を有するドライバ4において所定の制御プログラムが実行されることで形成される。
【0028】
位置制御器41は、例えば、比例制御(P制御)を行う。具体的には、PLC5から通知された位置指令と検出位置との偏差である位置偏差に、位置比例ゲインKppを乗ずることにより速度指令を算出する。なお、位置制御器41は、予め制御パラメータとして、位置比例ゲインKppを有している。次に、速度制御器42は、例えば、比例積分制御(PI制御)を行う。具体的には、位置制御器41により算出された速度指令と検出速度との偏差である速度偏差の積分量に速度積分ゲインKviを乗じ、その算出結果と当該速度偏差の和に速度比例ゲインKvpを乗ずることにより、トルク指令を算出する。なお、速度制御器42は、予め制御パラメータとして、速度積分ゲインKviと速度比例ゲインKvpを有している。また、速度制御器42はPI制御に代えてP制御を行ってもよい。この場合には、速度制御器42は、予め制御パラメータとして、速度比例ゲインKvpを有することになる。次に、電流制御器43は、速度制御器42により算出されたトルク指令に基づいてアンプ44を駆動するための指令電圧を生成する。生成された指令電圧に応じてアンプ44がモータ2を駆動するための駆動電流を出力し、それによりモータ2が駆動制御される。電流制御器43は、トルク指令に関するフィルタ(1次のローパスフィルタ)や一又は複数のノッチフィルタを含み、制御パラメータとして、これらのフィルタの性能に関するカットオフ周波数等を有している。また、電流制御器43は、アンプ44からモータ2に供給される電流指令を検出する電流検出器を含み、電流検出器によって検出された電流指令が減算器にフィードバックされる。
【0029】
そして、ドライバ4の制御構造は、速度制御器42、電流制御器43、制御対象6を前向き要素とする速度フィードバック系を含み、更に、当該速度フィードバック系と位置制御器41を前向き要素とする位置フィードバック系を含んでいる。このように構成される
制御構造によって、ドライバ4はPLC5から供給される位置指令に追従するようにモータ2をサーボ制御することが可能となる。
【0030】
このようにモータ2がサーボ制御される際に、モータ2に対して過大な負荷(例えば、モータ2の定格負荷を超える負荷)が比較的長時間掛けられると、モータ2の巻線に対して過大な電流が長時間流れることになる。これによって、巻線温度が過度に上昇し、その焼損を招く虞がある。また、ドライバ4からモータ2へ定格以上の電流が長時間供給されることで、ドライバ4又は動力ケーブル8の温度が過度に上昇し、焼損する虞もある。このような、モータ2、ドライバ4、及び動力ケーブル8の焼損などの損傷からこれらを保護するために、ドライバ4は電子サーマル部150を有している。
【0031】
具体的には、電子サーマル部150は、算出モデル100と、過負荷判定部110とを有している。
図3に示すように、算出モデル100は、モータ2用の算出モデル100aと、ドライバ4用の算出モデル100bとを含む。また、過負荷判定部110は、算出モデル100aに対応する、モータ2用の過負荷判定部110aと、算出モデル100bに対応する、ドライバ4用の過負荷判定部110bとを備える。
【0032】
図4は、モータ2の算出モデル100aの概略構造を示している。算出モデル100aは、電子サーマル部150においてモータ2の巻線温度を算出するプログラムであり、その入力としてモータ2における熱流が与えられると、モータ2の巻線温度を出力する。なお、当該熱流は、モータ2の巻線コイルの電気抵抗に起因して生じる、いわゆる銅損とみなすことができ、巻線コイルを流れる電流の二乗に比例する。算出モデル100aは、モータ2に供給される電流値とモータ2の発熱量との関係を示す熱モデルであり、熱流は、例えば、算出モデル100が電力制御部43の指令電圧によりモータ2に供給される電流(電流指令)を検出することでその電流値を取得し、この電流値から単位時間当たりの熱量を求めることによって算出される。算出モデル100は、モータ2に供給される電流値を取得する電流値取得部として動作する。
【0033】
図4に示すように、算出モデル100aは、算出モデル100a自身を構成するサブのモデルとして、巻線温度特性モデル101と固定子温度特性モデル102とを含む。巻線温度特性モデル101は、モータ2において仮想的に固定子の熱的影響を除いたときの、巻線の温度特性を算出するためのモデルである。
【0034】
固定子温度特性モデル102は、基準モデル102’と、モータ2の回転子の回転速度(rpm)を引数とする鉄損係数Krとを含む。基準モデル102’は、モータ2において仮想的に巻線の熱的影響を除いたときの、固定子の温度特性を算出するためのモデルである。鉄損係数Krは、回転子の回転速度に応じてその数値が変動し得る。
【0035】
固定子温度特性モデル102では、入力の熱流に(1+Kr)が乗じられたものが基準モデル102’に入力されて、固定子温度特性モデル102の出力が算出されることになる。算出モデル100aがこのような固定子温度特性モデル102を有することで、固定子の温度特性に回転子の回転に起因する鉄損を反映させることができ、過負荷保護のためのモータ2の巻線温度の推定をより好適に実現することができる。
【0036】
このように、算出モデル100aが巻線温度特性モデル101と固定子温度特性モデル102とを含み、
図4に示すように、各モデルの出力の和がモータ2の巻線温度として算出される。これによって、固定子と巻線との相関が考慮された上でモータの巻線温度が算出される。
【0037】
ここで、巻線温度特性モデル101について説明する。巻線温度特性モデル101は、
巻線の温度特性に関連するパラメータ(巻線関連パラメータ)である巻線に関する熱抵抗Raや熱時定数Taを含んで、下記の式1で表される。なお、熱抵抗Raは、熱の伝えにくさを表す値で、単位時間で発生する熱量あたりの温度上昇量を意味するパラメータである。本実施形態では、モータ2の巻線を熱的に均質な物体として捉えたときの熱抵抗が採用される。また、熱時定数Taは、巻線の温度変化に対する応答性の度合いを表すパラメータであり、巻線が初期の熱平衡状態から別の熱平衡状態に遷移する際に、その温度差の63.2%変化するのに要する時間として定義される。
巻線温度特性モデル = Ra/(Ta・s+1) ・・・(式1)
【0038】
次に、固定子温度特性モデル102について説明する。固定子温度特性モデル102の基準モデル102’は、固定子の温度特性に関連するパラメータ(固定子関連パラメータ)である固定子に関する熱抵抗Rbや熱時定数Tbを含んで、下記の式2で表される。なお、熱抵抗Rbの定義は上記の熱抵抗Raの定義と同じであり、本実施形態では、モータの固定子を熱的に均質な物体として捉えたときの熱抵抗が採用される。また、熱時定数Tbは、固定子の温度変化に対する応答性の度合いを表すパラメータであり、上記の熱時定数Taの定義と同じである。
固定子温度特性モデル = Rb/(Tb・s+1) ・・・(式2)
【0039】
そして、算出モデル100aにおいては、入力(モータ2における熱流)が、巻線温度特性モデル101及び固定子温度特性モデル102に引き渡される。そして、各モデルの出力が加算されて、算出モデルの出力、すなわちモータ巻線の推定温度とされる。なお、各モデル101、102の出力の加算の際に、各モデル101、102の出力に対して所定のゲインを乗じた値を加算するようにしてもよい。このように算出モデル100aが構成されることで、モータの巻線温度が固定子と巻線との相関を考慮して推定される。
【0040】
図5は、ドライバ用の算出モデル100bの構成例を示す。算出モデル100bは、電子サーマル部150においてドライバ4の所定位置の温度特性を算出するためのモデルである。所定位置は、モータ2への電流の供給に応じて発熱する位置であればどこでもよく、例えば、ドライバ4が備えるIGBTや電流検出器などの所定の回路が実装された位置である。
【0041】
図5に示すように、算出モデル100bは、算出モデル100b自身を構成するサブのモデルとして、検出抵抗部温度特性モデル103と基板部温度特性モデル104とを含む。検出抵抗部温度特性モデル103は、ドライバ4において仮想的にドライバ4の基板全体の熱的影響を除いたときの、電流検出器(電流検出抵抗)の温度特性を算出するためのモデルである。また、基板部温度特性モデル104は、ドライバ4において仮想的に電流検出抵抗の熱的影響を除いたときの、電流検出抵抗の周辺基板を含むドライバ4の基板全体の温度特性を算出するためのモデルである。
【0042】
ここで、検出抵抗部温度特性モデル103について説明する。検出抵抗部温度特性モデル103は、検出抵抗部の温度特性に関連するパラメータ(検出抵抗部関連パラメータ)である電流検出抵抗に関する熱抵抗Rcや熱時定数Tcを含んで、下記の式3で表される。なお、熱抵抗Rcの定義は上記の熱抵抗Raの定義と同じであり、本実施形態では、電流検出抵抗を熱的に均質な物体として捉えたときの熱抵抗が採用される。また、熱時定数Tcは、電流検出抵抗の温度変化に対する応答性の度合いを表すパラメータであり、上記の熱時定数Taの定義と同じである。
検出抵抗部温度特性モデル = Rc/(Tc・s+1) ・・・(式3)
【0043】
次に、基板部温度特性モデル104について説明する。基板部温度特性モデル104は、基板部の温度特性に関連するパラメータ(基板部関連パラメータ)であるドライバ4の
基板に関する熱抵抗Rdや熱時定数Tdを含んで、下記の式4で表される。なお、熱抵抗Rdの定義は上記の熱抵抗Raの定義と同じであり、本実施形態では、ドライバ4の基板全体を熱的に均質な物体として捉えたときの熱抵抗が採用される。また、熱時定数Tdは、ドライバ4の基板の温度変化に対する応答性の度合いを表すパラメータであり、上記の熱時定数Taの定義と同じである。
基板部温度特性モデル = Rd/(Td・s+1) ・・・(式4)
【0044】
そして、算出モデル100bは、モータ2に供給される電流の値とドライバ4の発熱量との関係を示す熱モデルであり、アンプ44の出力として検出された電流(検出電流)に依存する熱流が入力として検出抵抗部温度特性モデル103及び基板部温度特性モデル104に引き渡される。そして、各モデルの出力が加算されて、算出モデルの出力、すなわちドライバ4の温度(「ドライバ温度」と称する)とされる。なお、各モデル103、104の出力の加算の際に、各モデル103、104の出力に対して所定のゲインを乗じた値を加算するようにしてもよい。このように算出モデル100bが構成されることで、ドライバ温度が電流検出抵抗と基板との相関を考慮して推定される。
【0045】
上記の通り、算出モデル100a及び100bの夫々は、モータ2の温度及びドライバ温度の夫々を出力する。過負荷判定部110の過負荷判定部110aは、算出モデル100aの出力であるモータ2の温度(「モータ温度」と称する)に基づいて、モータ2が過負荷状態に至る可能性があるか、換言するとモータ2の巻線が過度に昇温するおそれがあるかについて判定を行う。
【0046】
過負荷判定部110の過負荷判定部110bは、算出モデル100bの出力であるドライバ温度に基づいて、ドライバ4が過負荷状態に至る可能性があるか、換言するとドライバ4が全体的に又は局所的に過度に昇温するおそれがあるかについて判定を行う。
【0047】
過負荷判定部110a及び110bによって、モータ2及びドライバ4のいずれか一つが過負荷状態に置かれていると判定された場合には、ドライバ4は、モータ2及びドライバ4を含む系を保護するためにその駆動を停止することができる。なお、算出モデル100は発熱量推定部に相当し、過負荷判定部110は負荷判定部及び出力部に相当する。
【0048】
図6は、電子サーマル部150の第1の処理例を示すフローチャートである。ステップS101では、電子サーマル部150の算出モデル100a及び100bは、モータ温度及びドライバ温度を算出する。すなわち、算出モデル100aは、モータ2の熱負荷演算として熱流に応じたモータ温度(推定値)を演算する。算出モデル100bは、ドライバ4の熱負荷演算として熱流に応じたドライバ温度(推定値)を演算する。各温度の演算の順序は任意であり、並列に実行されてもよい。
【0049】
ステップS102では、過負荷判定部110が、モータ温度及びドライバ温度のどちらかが閾値を超過するかを判定する。すなわち、過負荷判定部110aが、モータ温度がモータ2用の閾値を超過するかを判定し、過負荷判定部110bが、ドライバ温度がドライバ4用の閾値を超過するかを判定する。これらの判定の順序は任意であり、これらの判定は並列に実行されてもよい。どちらかの閾値の超過が判定された時点で、残りの判定が中止または停止されてもよい。モータ温度及びドライバ温度のどちらかが閾値を超過すると判定される場合、処理がステップS103に進み、そうでない場合には、処理がステップS101に進む。ここで、モータ2用の閾値とは、例えば、モータ2の絶縁階級から規定される許容最高温度である。例えば、モータ2の絶縁階級がF種である場合には、許容最高温度は155℃である。また、ドライバ4用の閾値とは、例えば、ドライバ4内のIGBTの保護のために設定される許容最高温度である。
【0050】
ステップS103では、電子サーマル部150は、モータ2及びドライバ4の異常な温度上昇が検出されたものとして、モータ2及びドライバ4の過熱状態(異常や警告)を示す情報を出力する。情報は、LEDの発光または点滅、警告音の出力、ディスプレイへの情報の表示などによって出力される。出力を行う構成はドライバ4に設けられていてもよく、端末9が備えるディスプレイやスピーカを用いて情報が報知(表示等)されてもよい。また、電子サーマル部150は、異常・警告を示す情報の出力とともに、ドライバ4の動作を自動的に停止させる構成を有していてもよい。もっとも、ドライバ4の動作停止は、情報を受けたユーザがマニュアルで行ってもよい。
【0051】
端末9は、ドライバ4が備える設定部120を通じて、ユーザが電子サーマル部150に各種の設定を行うために使用される。また、端末9は、上述した異常・警告を示す情報などの表示等によって、様々な情報をユーザに報知するために使用される。設定部120は、電子サーマル部150と同様に、ドライバ4が備えるプロセッサ(CPU)のプログラム実行によって実現されても、ドライバ4に実装された専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0052】
端末9は、プロセッサ、メモリ、入力装置、ディスプレイ、通信インタフェースなどを有している。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムの実行によって、メモリに対する情報の読み書き、ユーザが入力装置を用いて入力した情報の受け付け、或いはディスプレイへの表示、通信インタフェースの制御による設定部120との情報の送受信などを行う。
【0053】
例えば、ユーザは、モータ2及びドライバ4の夫々に関する熱負荷演算のオンオフを操作することができる。すなわち、ユーザは、算出モデル100a及び100bの夫々のオン又はオフを示す情報を入力装置から端末9に入力することができる。
【0054】
オン又はオフを示す情報は、ネットワーク1を介して設定部120に送られる。設定部120は、オン又はオフを示す情報に基づいて、対応する算出モデル100a及び100bのオンオフを行う。これによって、モータ2及びドライバ4の夫々に関する熱負荷演算のオンオフ(有効/無効の設定)を行うことができる。熱負荷演算のオフにより、プロセッサ(CPU)の演算負荷を下げることができる。
【0055】
また、ドライバ4が有するメモリ(端末9が有するメモリでもよい)には、モータ2及びドライバ4の算出モデル100a及び100bに設定するパラメータ(熱抵抗Ra~Rd、時定数Ta~Tdなど)のセットが1又は2以上記憶されている。ユーザは、端末9で、モータ2及びドライバ4の夫々に関する熱負荷演算をオンにして、モータ2及びドライバ4の夫々の種別を入力することで、設定部120は、モータ2及びドライバ4の夫々の種別に対応するパラメータを算出モデル100a及び100bに設定し、モータ2及びドライバ4の夫々の種別に対応する閾値を過負荷判定部110a及び100bに設定する。
【0056】
また、設定部120は、モータ2の稼働時間(通電時間)、或いはモータ2及びドライバ4の周囲温度に応じて、熱負荷演算のパラメータ(熱時定数など)及び閾値を自動的に変化させることができる。ドライバ4は、モータ2の稼働時間(通電時間)を計測しており、その計測値をパラメータ及び閾値の変化に使用することができる。また、周囲温度は、モータ2のエンコーダ内の温度センサの値やドライバ4内の放熱器の温度センサの値から予測してもよく、或いは、外気温を計測する温度センサの値を周囲温度として使用してもよい。
【0057】
パラメータの変化の例として、稼働時間が所定時間を超える場合、設定部120は、熱
時定数の値を基準値よりも小さくする。また、周囲温度が基準温度又は基準温度の範囲より高い場合には、設定部120は閾値を低下させる。逆に、周囲温度が基準温度の範囲より低い場合には、設定部120は閾値を上げる。このようにして、モータ2の使用状況に応じて、モータ2及びドライバ4を保護しつつモータ2を好適に使用することができる。
【0058】
また、設定部120は、「制御部」として動作し、モータ2及びドライバ4用の熱負荷演算のパラメータ及び閾値を用いて、モータ2及びドライバ4の夫々に係るサーマル曲線(過負荷特性グラフ)を示す情報を生成及び出力することができる。更に、設定部120は、モータ2の過負荷特性グラフを示す情報とドライバ4の過負荷特性グラフを示す情報とを合成した情報を生成及び出力することができる。過負荷特性グラフは、定格電流より大きい電流が通電された場合における、過熱状態が検出されるまでの時間(検出時間)の変化を示すグラフである。過負荷特性は、通常、横軸に定格以上の電流をとり、縦軸に過負荷(過熱状態)が検出されるまでの時間(検出時間)をとったグラフで表される。なお、過負荷が検出されるまでの時間(検出時間)とは、定格電流より大きい所定の電流をモータ2及びドライバ4に継続して印加することが許可される時間(印加可能時間)であると言える。このことから、以下の過負荷特性グラフでは縦軸に検出時間の代わりに印加可能時間をとっている。
【0059】
図7Aは、モータ2の過負荷特性を示すグラフMと、ドライバ4の過負荷特性を示すグラフDとを示す。過負荷特性グラフは、電流が大きくなる程、印加可能時間が短くなる。グラフM及びDの元になる数値は、ドライバ4において生成されてもよく、端末9において生成されてもよい。端末9のプロセッサは、グラフM及びDを端末9のディスプレイに表示する。これによって、ユーザは、モータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性を把握することができる。また、
図7Bは、モータ2の過負荷特性を示すグラフMとドライバ4の過負荷特性を示すグラフDとを合成したグラフSを示す。端末9のプロセッサは、グラフSを端末9のディスプレイに表示する。これによって、ユーザは、モータ2及びドライバ4の両方の過負荷特性を満たす、モータ2及びドライバ4を含む系全体の過負荷特性を把握することができる。
【0060】
また、設定部120は、モータ2の周囲温度としてエンコーダ内の温度センサの値と、ドライバ4の周囲温度としてドライバ4の放熱器の温度センサの値とを用いて、モータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフを補正することができる。
【0061】
図8は、設定部120の処理例を示すフローチャートである。この処理例では、初期状態として、
図7に示すようなモータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフM及びD、及び系全体の過負荷特性グラフSが生成されているものとする。ステップS201では、設定部120は、エンコーダ内の温度センサ及び放熱器の温度センサからモータ2の周囲温度及びドライバ4の周囲温度を取得する。
【0062】
ステップS202では、設定部120は、ステップS201で取得したモータ2の周囲温度及びドライバ4の周囲温度の夫々に基づいて、モータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフを補正する。そして、ステップS203では、設定部120は、ステップS203で補正したモータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフに対応するパラメータを算出モデル100a及び100bの夫々に設定し、閾値を過負荷判定部110a及び100bの夫々に設定する。
【0063】
ここで、ステップS202で行う過負荷特性グラフの補正について説明する。
【0064】
まず、過負荷特性グラフの生成方法について説明する。ここでは、モータ2の過負荷特性グラフMの生成方法を例にして説明する。まず、設定部120は、過負荷特性グラフM
を生成するための第1の電圧印加を行うための指令を電流制御器43に出力する。第1の電圧印加では、モータ2の定格電流の200%の電流をモータ2に供給する電圧印加を行う。そして、設定部120は、第1の電圧印加(通電)を行ってから3秒後、10秒後及び20秒後の夫々のモータ2の周囲温度を算出する。通電後のモータ2の周囲温度は、下記の式5で表される銅の抵抗温度係数を用いた抵抗法によって算出される。
t2 = (R2/R1-1)(234.5+t1)±Δt ・・・(式5)
式5において、R1は通電開始時のモータ2の巻線抵抗値であり、R2は通電後のモータ2の巻線抵抗値である。これらの巻線抵抗値は、電流検出器で検出された電流値から算出される。また、t1は通電開始時のモータ2の周囲温度であり、t2は通電後のモータ2の周囲温度である。ここでは、t1には、エンコーダ内の温度センサの値が使用される。そして、Δtは、通電開始時と通電後のモータ2の周囲温度の変化分である。Δtには、エンコーダ内の温度センサの値が使用される。通電後に周囲温度が上がったときにはΔtだけ減算され、周囲温度が下がったときにはΔtだけ加算される。
【0065】
次に、設定部120は、通電してから3秒後、10秒後及び20秒後の3点のモータ2の周囲温度t2の結果から、この3点を通る第1の電圧印加時の過負荷率の曲線を生成する。そして、設定部120は、この過負荷率の曲線から、モータ2の巻線に関する熱時定数Taと、固定子に関する熱時定数Tbと、熱時定数Taと熱時定数Tbとの比である熱抵抗比時定数とを算出する。
【0066】
次に、設定部120は、第2の電圧印加を行うための指令を電流制御器43に出力する。第2の電圧印加では、モータ2の定格電流の300%の電流をモータ2に供給する電圧印加を行う。そして、設定部120は、第2の電圧印加(通電)を行ってから3秒後のモータ2の周囲温度t2を算出する。通電後のモータ2の周囲温度t2は、前述した式5で表される抵抗法によって算出される。
【0067】
次に、設定部120は、第1の電圧印加の結果から算出した熱時定数Ta、熱時定数Tb及び熱抵抗比時定数Trから、第2の電圧印加時の過負荷率の曲線を生成する。なお、設定部120は、第2の電圧印加から3秒後のモータ2の周囲温度t2とモータ2用の閾値とに基づいて、生成した第2の電圧印加時の過負荷率の曲線が適正であるかどうかを確認してもよい。
【0068】
そして、設定部120は、第1の電圧印加時の過負荷率の曲線と第2の電圧印加時の過負荷率の曲線とを合成して、モータ2の過負荷特性グラフMを得る。
【0069】
また、ドライバ4の過負荷特性グラフDの生成は、モータ2の過負荷特性グラフMの生成と同様に式5を用いて行う。但し、式5において、R1は通電開始時のドライバ4の電流検出抵抗値であり、R2は通電後のドライバ4の電流検出抵抗値である。これらの電流検出抵抗値は、電流検出器で検出された電流値から算出される。t1は通電開始時のドライバ4の周囲温度であり、t2は通電後のドライバ4の周囲温度である。ここでは、t1には、ドライバ4内の放熱器の温度センサの値が使用される。そして、Δtは、通電開始時と通電後とのドライバ4の周囲温度の変化分である。Δtには、放熱器の温度センサの値が使用される。また、設定部120は、第1の電圧印加時の過負荷率の曲線から、ドライバ4の検出抵抗部に関する熱時定数Tcと、基板部に関する熱時定数Tdと、熱時定数Tcと熱時定数Tdとの比である熱抵抗比時定数とを算出する。なお、設定部120は、設定部120は、第2の電圧印加から3秒後のモータ2の周囲温度t2とドライバ4用の閾値とに基づいて、生成した第2の電圧印加時の過負荷率の曲線が適正であるかどうかを確認してもよい。
【0070】
続いて、過負荷特性グラフの補正方法について説明する。第1の補正方法では、設定部
120は、ステップS201で取得したモータ2の周囲温度及びドライバ4の周囲温度を用いて、モータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフを再生成する。この再生成では、設定部120は、モータ2の定格電流を維持したままモータ2の周囲温度が低くなるほどモータ2の過負荷特性グラフにおける印加可能時間が長くなるように、モータ2の過負荷特性グラフを補正する。また、設定部120は、ドライバ4の定格電流を維持したままドライバ4の周囲温度が低くなるほどドライバ4の過負荷特性グラフにおける印加可能時間が長くなるように、ドライバ4の過負荷特性グラフを補正する。そして、設定部120は、再生成したモータ2の過負荷特性グラフとドライバ4の過負荷特性グラフとを合成して、系全体の過負荷特性グラフを再生成する。
【0071】
図9は、第1の補正方法で補正した場合の系全体の過負荷特性グラフを示す。
図9では、補正後の系全体の過負荷特性グラフに加えて、補正前の系全体の過負荷特性グラフ、例えば、
図8Bに示す過負荷特性グラフSを併せて示す。
図9に示すように、補正後の系全体の過負荷特性グラフS1は、補正前の系全体の過負荷特性グラフSと比べると、定格電流より大きい所定の電流値(R1)で比較したときに印加可能時間(補正前ではD1、補正後ではD2)が長くなっている。例えば、定格電流の250%の電流が通電された場合には、補正前の系全体の過負荷特性グラフSでは印加可能時間が約0・9秒であるのに対し、補正後の系全体の過負荷特性グラフS1では印加可能時間が約10秒となる。また、定格電流の350%の電流が通電された場合には、補正前の系全体の過負荷特性グラフSでは印加可能時間が約0.2秒であるのに対し、補正後の系全体の過負荷特性グラフS1では印加可能時間が約2秒となる。
【0072】
また、第2の補正方法では、設定部120は、補正前のモータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフの形状を基本的に変えずに、ステップS201で取得したモータ2の周囲温度及びドライバ4の周囲温度を用いて、過負荷特性グラフの漸近線を移動させる。この移動では、設定部120は、モータ2の定格電流を増加させるとともに、モータ2の周囲温度が低くなるほどモータ2の過負荷特性グラフにおける印加可能時間が長くなるように、漸近線を移動させる。また、設定部120は、ドライバ4の定格電流を増加させるとともに、ドライバ4の周囲温度が低くなるほどドライバ4の過負荷特性グラフにおける印加可能時間が長くなるように、漸近線を移動させる。そして、設定部120は、漸近線を移動させたモータ2の過負荷特性グラフとドライバ4の過負荷特性グラフとを合成して、系全体の過負荷特性グラフを再生成する。
【0073】
図10は、第2の補正方法で補正した場合の系全体の過負荷特性グラフを示す。
図10では、補正後の系全体の過負荷特性グラフに加えて、補正前の系全体の過負荷特性グラフ、例えば、
図8Bに示す過負荷特性グラフSを併せて示す。
図10に示すように、補正後の系全体の過負荷特性グラフS2は、補正前の系全体の過負荷特性グラフSと比べると、所定の印加可能時間(D1)で比較したときに電流値(補正前ではR1、補正後ではR2)が大きくなっている。例えば、印加可能時間が100秒となる電流値は、補正前の系全体の過負荷特性グラフSでは定格電流の約130%の電流値であるのに対し、補正後の系全体の過負荷特性グラフS2では定格電流の約170%の電流値となる。また、印加可能時間が10秒となる電流値は、補正前の系全体の過負荷特性グラフSでは定格電流の約160%の電流値であるのに対し、補正後の系全体の過負荷特性グラフS2では定格電流の約230%の電流値となる。
【0074】
第2の補正方法において、設定部120は、モータ2の周囲温度及びドライバ4の周囲温度に基づいて漸近線の移動量(増加量)を決定する。例えば、補正前の系全体の過負荷特性グラフSの漸近線Aは、検出時間を示す軸と平行な直線のうちの定格電流の115%の電流値を通る直線である。例えば、モータ2の絶縁階級がF種である場合には、モータ2の周囲温度が40℃(モータ2の仕様から規定される使用環境温度の範囲の上限値)で
あるときにモータ2に定格電流の115%の電流を通電し続けても、モータ2の温度は、F種の許容最高温度である155℃以内に収まるように設定されている。漸近線Aの電流値である定格電流の115%の電流値とは、このような電流値である。従って、モータ2の絶縁階級がF種以外の種別(例えば、B種やH種など)である場合には、漸近線の電流値は定格電流の115%以外の電流値となる。ここで、モータ2の絶縁階級がF種である場合に、モータ2の周囲温度が0℃(モータ2の仕様から規定される使用環境温度の範囲の下限値)であるときには、モータ2には40℃の温度の余裕があることになる。40℃の温度の余裕とは、漸近線Aの場合には1℃の温度が定格電流の0.74%の電流値に相当するので、定格電流の29.68%の電流値の余裕に相当することになる。つまり、設定部120は、漸近線Aを、最大で定格電流の29.68%の電流値の分だけ、電流が増える方向(
図10では、右方向)に移動させて、漸近線A2とすることができる。この漸近線Aの移動に伴い、設定部120は、補正前の系全体の過負荷特性グラフSを、電流が増える方向に移動させて、補正後の系全体の過負荷特性グラフS2とすることができる。但し、モータ2の仕様から、モータ2の瞬時許容電流値が規定されている。このため、設定部120は、補正前の系全体の過負荷特性グラフSを、電流が増える方向に移動させたとしても、過負荷特性グラフの最大電流値がモータ2の瞬時許容電流値を超過しないように、補正後の系全体の過負荷特性グラフS2における電流を示す軸方向の長さを調整(短く)する。
【0075】
図11は、電子サーマル部150の第2の処理例を示すフローチャートである。ステップS301では、過負荷判定部110a及び100bは、設定部120から補正後のモータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフに対応する閾値(定格電流よりも大きい所定の電流値に対する印加可能時間)を取得する。ステップS302では、過負荷判定部110a及び100bは、モータ2及びドライバ4の夫々に対して定格電流よりも大きい電流が印加可能時間を超過して印加されたかを判定する。すなわち、過負荷判定部110aが、定格電流よりも大きい電流がモータ2用の印加可能時間を超過してモータ2に印加されたかを判定し、過負荷判定部110bが、定格電流よりも大きい電流がドライバ4用の印加可能時間を超過してドライバ4に印加されたかを判定する。モータ2及びドライバ4の少なくとも一方に、定格電流よりも大きい電流が印加可能時間を超過して印加されたと判定される場合、処理がステップS303に進み、そうではない場合には、処理がステップS301に進む。ステップ303では、過負荷判定部110は、モータ2及びドライバ4に過負荷が発生したものとして、過負荷(異常や警告)を示す情報を出力する。情報は、LEDの発光または点滅、警告音の出力、ディスプレイへの情報の表示などによって出力される。
【0076】
本実施形態によれば、設定部120によって、モータ2の周囲温度及びドライバ4の周囲温度の夫々に基づいて、モータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフを補正する。これにより、過負荷判定部110は、補正後の過負荷特性グラフに対応する閾値に基づいて、モータ2及びドライバ4に対して定格電流よりも大きい電流が印加可能時間を超過して印加されたかを判定するようになる。このようにして、モータ2及びドライバ4に印加可能な時間を調整する、すなわちモータ2及びドライバ4に掛かる負荷を調整することで、モータ2の周囲温度及びドライバ4の周囲温度に応じて、モータ2及びドライバ4のIGBTの本来の性能を可能な限り引き出すことができる。このため、モータ2及びドライバ4を保護しながら、モータ2及びドライバ4を効率良く使用することができる。
【0077】
<変形例>
次に、変形例について説明する。本変形例は実施形態と同様の構成を有するため、主として相違点について説明する。
【0078】
前述した実施形態では、モータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフを補正する
ことで、モータ2及びドライバ4の夫々に対して、定格電流よりも大きい電流を、モータ2の周囲温度及びドライバ4の周囲温度に応じた印加可能時間まで印加することができる。しかし、定格電流よりも大きい電流を印加可能時間まで印加することで、モータ2の瞬時許容電流値が動力ケーブル8の瞬時許容電流値よりも上回ってしまう可能性がある。
【0079】
ここで、動力ケーブル8の瞬時許容電流値Iは、下記の式6で表される。
【数1】
・・・(式6)
式6において、Kはケーブル被覆材種に応じた定数であり、Acは導体断面積(mm
2)であり、Tsは短絡電流持続時間(s)である。例えば、動力ケーブル8がビニルケーブル(K=96)であり、導体断面積が0.5mm
2であるときに、補正前のモータ2及びドライバ4の過負荷特性グラフにおいて許容電流(例えば、定格電流の300%の電流)の印加可能時間の閾値が0.3秒である場合には、動力ケーブル8の瞬時許容電流値Iは70.11Aとなり、モータ2の瞬時許容電流値(例えば、41.0A)よりも上回っているものとする。この場合には、仮に動力ケーブル8にモータ2の瞬時許容電流を通電させたとしても、動力ケーブル8には問題は生じない。しかし、モータ2及びドライバ4の過負荷特性グラフの補正により、許容電流の印加可能時間の閾値が1秒と長くなった場合には、動力ケーブル8の瞬時許容電流値Iは38.4Aとなり、モータ2の瞬時許容電流値を下回ってしまう。この場合には、動力ケーブル8にモータ2の瞬時許容電流を通電させたときには、動力ケーブル8の温度が過度に上昇して、焼損する虞がある。
【0080】
そこで、本変形例に係る負荷監視装置では、モータ2及びドライバ4の夫々の過負荷の監視に加えて、更に動力ケーブル8の過負荷も監視する。
【0081】
本変形例では、ユーザは、端末9に、動力ケーブルの種別と、動力ケーブルの敷設条件を入力することで、動力ケーブル8の保護レベルを設定することができる。例えば、下記要件を幾つか入力すると、端末9のプロセッサ、又はドライバ4の設定部120が、入力された情報に対応する動力ケーブル8の保護レベルを算出する。
・ケーブル被覆材種, 被覆材の熱抵抗, 或いはケーブル最高使用温度
・ケーブル電線の外径と線長
・ケーブル電線の導体材質,或いは電気抵抗率(抵抗率、比抵抗)[Ω・m]
・ケーブル電線の導体径 (AWG, sq.)或いは断面積
・ケーブル敷設時の周囲温度
・多条布設の場合は多条敷設条件
・配線ダクトに配線する場合は配線ダクトの材質、或いは配線ダクト材の最高使用温度
【0082】
例えば、端末9はディスプレイに上記のメニューを表示して、ユーザが選択肢の選択又は数値の入力をすることを可能に構成する。
・ケーブル被覆材種 (選択肢:CVケーブル、OFケーブル、ソリッドケーブル、ビニルケーブル)
或いはケーブル最高使用温度 (選択肢:80℃, 85℃, 105℃)
・ケーブル電線の導体径 (値を入力:AWG/SQ)
・ケーブル敷設時の周囲温度 (選択肢:0℃ 25℃ 40℃ 55℃ 70℃ 85℃)
・多条敷設 (あり なし)
・多条敷設ありの場合の配線ダクト材の最高使用温度 (選択肢:65℃, 80℃, 85℃, 105
℃)
【0083】
ドライバ4が有するメモリ(端末9が有するメモリでもよい)には、保護レベルに対応するモータ2及びドライバ4の算出モデル100a及び100bの夫々に設定するパラメータ(熱抵抗Ra~Rd、時定数Ta~Tdなど)のセットが1又は2以上記憶されており、設定部120は、自身による算出によって取得、又は「受付部」として動作して端末9から取得した保護レベルに対応するパラメータを算出モデル100a及び100bの夫々に設定する。例えば、熱抵抗Ra~Rdの値は、ケーブル電線の導体径が太くなるほど小さくなるように設定される。また、例えば、時定数Ta~Tdの値は、多条数が増えるにつれて小さくなるように設定される。パラメータのセットは入力された情報に基づいて、パラメータ算出用のアルゴリズムを用いて計算されてもよい。また、予めメモリに記憶された、保護レベルに対応する閾値を設定部120は取得し、過負荷判定部110a及び110bの夫々に設定する。これによって、動力ケーブル8を考慮したモータ2及びドライバ4の熱負荷演算及び過負荷判定が可能となり、モータ2及びドライバ4に加えて動力ケーブル8を保護しながら、モータ2及びドライバ4を効率良く使用することができる。
【0084】
図12は、電子サーマル部150の第3の処理例を示すフローチャートである。ステップS401では、過負荷判定部100a及び100bは、設定部120から補正後のモータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフを取得する。ステップS402では、過負荷判定部100a及び100bは、補正後のモータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフから、モータ2及びドライバ4の許容電流値と、当該許容電流値に対応する印加可能時間とを算出する。ステップS403では、過負荷判定部100a及び100bは、設定部120から動力ケーブル8の構成に関する情報としてケーブルの被覆材種及び導体径を取得する。ステップ404では、過負荷判定部100a及び100bは、式6を用いて、算出した印加可能時間と、取得した動力ケーブル8の構成に関する情報とから、動力ケーブル8の許容電流値を算出する。ステップS405では、過負荷判定部100a及び100bは、動力ケーブル8の許容電流値がモータ2及びドライバ4の許容電流値以下であるかを判定する。動力ケーブル8の許容電流値がモータ2及びドライバ4の許容電流値以下である場合、処理はステップS406に進み、そうではない場合には、処理がステップS401に進む。ステップS406では、過負荷判定部100a及び100bは、動力ケーブル8に過負荷が発生するものとして、過負荷(異常や警告)を示す情報を出力する。情報は、LEDの発光または点滅、警告音の出力、ディスプレイへの情報の表示などによって出力される。
【0085】
本変形例によれば、モータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフを補正した後に、過負荷判定部110によって、補正後のモータ2及びドライバ4の夫々の過負荷特性グラフに基づいて、動力ケーブル8の許容電流値がモータ2及びドライバ4の許容電流値以下であるかを判定し、動力ケーブル8の許容電流値がモータ2及びドライバ4の許容電流値以下であると判定した場合には過負荷を示す情報を出力する。これにより、動力ケーブル8の許容電流値がモータ2及びドライバ4の許容電流値を下回ることで、動力ケーブル8の温度が過度に上昇して、焼損する可能性を回避することができる。このため、モータ2及びドライバ4だけでなく動力ケーブル8も保護しながら、モータ2及びドライバ4を効率良く使用することができる。
【0086】
<付記>
モータ(2)と、前記モータ(2)の動作制御を行うドライバ(4)との負荷を監視する負荷監視装置(4)であって、
前記モータ(2)に供給される電流値を取得する電流値取得部(150)と、
前記電流値と前記モータ(2)の発熱量との関係を示す第1の熱モデル(100a)によって前記モータ(2)の温度を第1の温度として推定する第1の温度推定部(100)
と、
前記電流値と前記ドライバ(4)の発熱量との関係を示す第2の熱モデル(100b)によって前記ドライバ(4)の温度を第2の温度として推定する第2の温度推定部(100)と、
前記第1の温度と前記モータ(2)用の第1の閾値とを比較して該モータ(2)の過負荷状態の有無を判定するように構成され、該モータ(2)に関して所定の前記電流値に対する印加可能時間を示す第1負荷特性(M)を有する第1制御構造と、前記第2の温度と前記ドライバ(4)用の第2の閾値とを比較して該ドライバ(4)の過負荷状態の有無を判定するように構成され、該ドライバ(4)に関して所定の前記電流値に対する印加可能時間を示す第2負荷特性(D)を有する第2制御構造とを有する負荷判定部(110)と、
前記負荷判定部が、前記モータ(2)又は前記ドライバ(4)の少なくとも一方が過負荷状態にあると判定した場合、過負荷状態に関する異常情報を出力する出力部(100)と、
前記モータ(2)の周囲温度である第1の周囲温度と、前記ドライバ(4)の周囲の温度である第2の周囲の温度とに基づいて、前記第1制御構造における前記第1負荷特性(M)及び前記第2制御構造における前記第2負荷特性(D)を補正する補正部(120)と、
を備える、負荷監視装置(4)。
【符号の説明】
【0087】
1・・・ネットワーク
2・・・モータ
3・・・負荷装置
4・・・ドライバ
5・・・PLC
6・・・制御対象
7・・・交流電源
8・・・動力ケーブル
9・・・端末
41・・・位置制御器
42・・・速度制御器
43・・・電流制御器
44・・・アンプ
100・・・算出モデル
110・・・過負荷判定部
120・・・設定部
150・・・電子サーマル部