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特許7596874車載装置、車載通信システムおよびデータ送信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】車載装置、車載通信システムおよびデータ送信方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20241203BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20241203BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20241203BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G06F8/65
B60W30/10
B60W40/04
B60R16/02 660U
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021045322
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144358
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅大
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-191742(JP,A)
【文献】特開2013-106203(JP,A)
【文献】特開2005-077187(JP,A)
【文献】特開2020-087217(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051676(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/002010(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65
B60W 30/10
B60W 40/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定する推定部と、
前記推定部による推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御する制御部とを備え
前記イベントメッセージは、前記車載ネットワークにおける複数の他の車載装置が、それぞれ、前記車両の周囲の互いに異なる領域における物体と前記車両との距離を算出し、算出した前記距離に基づいて生成し、送信するメッセージであり、
前記推定部は、前記車両の現在位置および地図情報に基づいて、前記複数の他の車載装置の中から、前記イベントメッセージの送信頻度が所定値未満となる前記他の車載装置を推定し、
前記制御部は、前記推定部によって推定された前記他の車載装置への更新データの送信を開始させる、車載装置。
【請求項2】
前記推定部は、渋滞情報にさらに基づいて前記他の車載装置を推定する、請求項に記載の車載装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記車載装置が搭載される車両の走行速度の変化量に基づいて前記他の車載装置を推定する、請求項1または請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記車載装置が搭載される車両の走行速度、および前記車両と他の車両との相対速度に基づいて前記他の車載装置を推定する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記イベントメッセージは、SOME/IP(Scalable service-Oriented MiddlewarE over IP)に従ったメッセージである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項6】
車両に搭載される車載通信システムであって、
推定部と、
制御部とを備え、
前記推定部は、車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果を前記制御部へ通知し、
前記制御部は、前記推定部から通知された前記推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御し、
前記イベントメッセージは、前記車載ネットワークにおける複数の車載装置が、それぞれ、前記車両の周囲の互いに異なる領域における物体と前記車両との距離を算出し、算出した前記距離に基づいて生成し、送信するメッセージであり、
前記推定部は、前記車両の現在位置および地図情報に基づいて、前記複数の車載装置の中から、前記イベントメッセージの送信頻度が所定値未満となる前記車載装置を推定し、
前記制御部は、前記推定部によって推定された前記車載装置への更新データの送信を開始させる、車載通信システム。
【請求項7】
車両に搭載され、推定部と、制御部とを備える車載通信システムにおけるデータ送信方法であって、
前記推定部が、車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果を前記制御部へ通知するステップと、
前記制御部が、前記推定部から通知された前記推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御するステップとを含み、
前記イベントメッセージは、前記車載ネットワークにおける複数の車載装置が、それぞれ、前記車両の周囲の互いに異なる領域における物体と前記車両との距離を算出し、算出した前記距離に基づいて生成し、送信するメッセージであり、
前記発生頻度を推定するステップにおいては、前記推定部が、前記車両の現在位置および地図情報に基づいて、前記複数の車載装置の中から、前記イベントメッセージの送信頻度が所定値未満となる前記車載装置を推定し、
前記更新データの送信を制御するステップにおいては、前記制御部が、前記推定部によって推定された前記車載装置への更新データの送信を開始させる、データ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、車載通信システムおよびデータ送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の機能に与える制限を抑制しながら電子制御装置用ソフトウェアを更新する機会を増やす技術が開発されている。たとえば、特許文献1(特開2018-65410号公報)には、以下のような技術が開示されている。すなわち、ソフトウェア更新制御装置は、車両の電子制御装置用ソフトウェアの更新を制御するソフトウェア更新制御装置であって、前記電子制御装置用ソフトウェアの更新すべき内容を示す更新情報を取得する取得部と、該取得された更新情報に係る、更新の難易度をレベルで示す更新ランクを、前記内容、前記電子制御装置の状態及び前記車両の状態のうち少なくとも一つに基づいて判定する更新ランク判定部と、前記判定された更新ランクを更新する更新ランク更新部と、前記更新情報による更新の実施の容易度をレベルで示す実施可能ランクを判定する実施可能ランク判定部と、前記更新された更新ランクと前記判定された実施可能ランクとを比較して、前記電子制御装置用ソフトウェアの更新を実施するか否かを判定する更新可否判定部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-65410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術を超えて、車載ネットワークにおける装置の更新機会をより増やすことが可能な技術が望まれる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載ネットワークにおける装置の更新機会をより増やすことが可能な車載装置、車載通信システムおよびデータ送信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載装置は、車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定する推定部と、前記推定部による推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御する制御部とを備える。
【0007】
本開示の車載通信システムは、推定部と、制御部とを備え、前記推定部は、車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果を前記制御部へ通知し、前記制御部は、前記推定部から通知された前記推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御する。
【0008】
本開示のデータ送信方法は、推定部と、制御部とを備える車載通信システムにおけるデータ送信方法であって、前記推定部が、車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果を前記制御部へ通知するステップと、前記制御部が、前記推定部から通知された前記推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御するステップとを含む。
【0009】
本開示は、このような特徴的な処理部を備える車載装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとするデータ送信方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得たり、車載装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、車載ネットワークにおける装置の更新機会をより増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る更新システムの構成を示す図である。
図2図2は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
図3図3は、本開示の実施の形態に係る統合ECUの構成を示す図である。
図4図4は、本開示の実施の形態に係る車両の走行状態の一例を示す平面図である。
図5図5は、本開示の実施の形態に係る車両の走行状態の他の例を示す平面図である。
図6図6は、本開示の実施の形態に係る統合ECUが更新データを送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図7図7は、本開示の実施の形態に係る統合ECUが更新データを送信する際の動作手順の他の例を定めたフローチャートである。
図8図8は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるデータ送信のシーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0013】
(1)本開示の実施の形態に係る車載装置は、車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定する推定部と、前記推定部による推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御する制御部とを備える。
【0014】
このように、車載ネットワークにおけるイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果に基づいて更新データの送信を制御する構成により、たとえばイベントメッセージの発生頻度が低下するタイミングにおいて更新データを送信することができるので、車載ネットワークにおける限られた通信帯域を用いて効率的に更新データを更新対象の装置へ送信することができる。したがって、車載ネットワークにおける装置の更新機会をより増やすことができる。
【0015】
(2)好ましくは、前記推定部は、前記車載装置が搭載される車両の現在位置および地図情報に基づいて前記発生頻度を推定する。
【0016】
イベントメッセージの発生頻度は車両の走行エリアに応じて変化する場合があるところ、このような構成により、車両が特定のエリアを走行していることでイベントメッセージの発生頻度が低下すると推定される、より多くのタイミングにおいて更新データを送信することができる。
【0017】
(3)より好ましくは、前記推定部は、渋滞情報にさらに基づいて前記発生頻度を推定する。
【0018】
このような構成により、車両が渋滞中のエリアを走行することでイベントメッセージの発生頻度が低下するタイミングにおいて更新データを送信することができる。
【0019】
(4)好ましくは、前記推定部は、前記車載装置が搭載される車両の走行速度の変化量に基づいて前記発生頻度を推定する。
【0020】
イベントメッセージの発生頻度は車両の周囲における外部環境の変化に応じて変化する場合があるところ、このような構成により、車両の走行速度が変化することによる外部環境の変化に起因してイベントメッセージの発生頻度が低下すると推定される、より多くのタイミングにおいて更新データを送信することができる。
【0021】
(5)好ましくは、前記推定部は、前記車載装置が搭載される車両の走行速度、および前記車両と他の車両との相対速度に基づいて前記発生頻度を推定する
【0022】
イベントメッセージの発生頻度は車両の周囲における外部環境の変化に応じて変化する場合があるところ、このような構成により、車両の走行速度および他の車両との相対速度に基づく外部環境の変化に起因してイベントメッセージの発生頻度が低下すると推定される、より多くのタイミングにおいて更新データを送信することができる。
【0023】
(6)好ましくは、前記イベントメッセージは、SOME/IP(Scalable service-Oriented MiddlewarE over IP)に従ったメッセージである。
【0024】
このような構成により、たとえば、SOME/IPに従うイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果に基づいて更新データの送信を制御することができる
【0025】
(7)本開示の実施の形態に係る車載通信システムは、推定部と、制御部とを備え、前記推定部は、車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果を前記制御部へ通知し、前記制御部は、前記推定部から通知された前記推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御する。
【0026】
このように、車載ネットワークにおけるイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果に基づいて更新データの送信を制御する構成により、たとえばイベントメッセージの発生頻度が低下するタイミングにおいて更新データを送信することができるので、車載ネットワークにおける限られた通信帯域を用いて効率的に更新データを更新対象の装置へ送信することができる。したがって、車載ネットワークにおける装置の更新機会をより増やすことができる。
【0027】
(8)本開示の実施の形態に係るデータ伝送方法は、推定部と、制御部とを備える車載通信システムにおけるデータ送信方法であって、前記推定部が、車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果を前記制御部へ通知するステップと、前記制御部が、前記推定部から通知された前記推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御するステップとを含む。
【0028】
このように、車載ネットワークにおけるイベントメッセージの発生頻度を推定し、推定結果に基づいて更新データの送信を制御する方法により、たとえばイベントメッセージの発生頻度が低下するタイミングにおいて更新データを送信することができるので、車載ネットワークにおける限られた通信帯域を用いて効率的に更新データを更新対象の装置へ送信することができる。したがって、車載ネットワークにおける装置の更新機会をより増やすことができる。
【0029】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0030】
[構成および基本動作]
図1は、本開示の実施の形態に係る更新システムの構成を示す図である。図1を参照して、更新システム401は、更新サーバ181と、交通情報サーバ182と、複数の車載通信システム301とを備える。車載通信システム301は、車両1に搭載される。更新サーバ181は、たとえばOTA(Over The Air)センタに設けられる。更新サーバ181は、定期的または不定期に、車載通信システム301における装置のソフトウェアを更新するための更新データを車載通信システム301へ送信する。交通情報サーバ182は、定期的または不定期に、渋滞情報を車載通信システム301へ送信する。
【0031】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。図2を参照して、車載通信システム301は、統合ECU101と、個別ECU111A,111B,111C,111Dと、個別ECU121と、TCU131とを備える。統合ECU101は、車載装置の一例である。以下、個別ECU111A,111B,111C,111Dの各々を個別ECU111とも称する。
【0032】
個別ECU111、個別ECU121およびTCU131は、ケーブル2を介して統合ECU101に接続される。ケーブル2は、たとえばイーサネット(登録商標)ケーブルである。統合ECU101、個別ECU111、個別ECU121およびTCU131は、車載ネットワークを構成する。
【0033】
図1および図2を参照して、TCU131は、たとえば、IPパケットを用いて無線基地局装置161経由で更新サーバ181および交通情報サーバ182と通信することが可能である。
【0034】
より詳細には、TCU131は、たとえば、LTE(Long Term Evolution)または3G等の通信規格に従って、無線基地局装置161と無線通信を行うことが可能である。
【0035】
無線基地局装置161は、更新データを含むIPパケットP1を外部ネットワーク171経由で更新サーバ181から受信すると、受信したIPパケットP1を無線信号に含めてTCU131へ送信する。また、無線基地局装置161は、渋滞情報を含むIPパケットP2を外部ネットワーク171経由で交通情報サーバ182から受信すると、受信したIPパケットP2を無線信号に含めてTCU131へ送信する。
【0036】
TCU131は、たとえば、更新サーバ181からのIPパケットP1を含む無線信号を無線基地局装置161から受信すると、受信した無線信号からIPパケットP1を取得し、取得したIPパケットP1をイーサネットフレームに格納して統合ECU101へ送信する。また、TCU131は、たとえば、交通情報サーバ182からのIPパケットP2を含む無線信号を無線基地局装置161から受信すると、受信した無線信号からIPパケットP2を取得し、取得したIPパケットP2をイーサネットフレームに格納して統合ECU101へ送信する。
【0037】
個別ECU121は、所定周期または統合ECU101からの要求に応じて、車両1に搭載される車速センサにより計測された車両1の走行速度を取得し、取得した走行速度を示す速度情報を生成する。そして、個別ECU121は、生成した速度情報をイーサネットフレームに格納して統合ECU101へ送信する。
【0038】
また、個別ECU121は、所定周期または統合ECU101からの要求に応じて、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波に基づいて自己の車両1の現在位置を取得し、取得した現在位置を示す位置情報を生成する。そして、個別ECU121は、生成した位置情報をイーサネットフレームに格納して統合ECU101へ送信する。
【0039】
また、個別ECU121は、所定周期または統合ECU101からの要求に応じて、車両1に搭載されたミリ波センサから車両1の周囲における物体の検知結果を取得し、取得した検知結果に基づいて、車両1と他の車両たとえば対向車両との相対速度を示す相対速度情報を生成する。そして、個別ECU121は、生成した相対速度情報をイーサネットフレームに格納して統合ECU101へ送信する。
【0040】
個別ECU111は、車両1に搭載されたレーダから、車両1の周囲における物体の検知結果を取得する。一例として、個別ECU111Aは、車両1における左前方部分に搭載されたレーダR1から車両1の左前方の領域における物体の検知結果を取得し、個別ECU111Bは、車両1における左後方部分に搭載されたレーダR2から車両1の左後方の領域における物体の検知結果を取得し、個別ECU111Cは、車両1における右前方部分に搭載されたレーダR3から車両1の右前方の領域における物体の検知結果を取得し、個別ECU111Dは、車両1における右後方部分に搭載されたレーダR4から車両1の右後方の領域における物体の検知結果を取得する。
【0041】
個別ECU111は、車両1の周囲における外部環境の変化を検知した場合、イベントメッセージを統合ECU101へ送信する。
【0042】
より詳細には、個別ECU111は、たとえば所定の算出周期CDに従う算出タイミングTDにおいて、対応のレーダから取得した検知結果に基づいて、車両1の周囲における物体と車両1との間の距離Dを算出して記憶部に保存する。たとえば、個別ECU111は、算出タイミングTDにおいて距離Dを算出すると、当該距離Dおよび記憶部における過去に算出した距離Dに基づいて距離Dの時間変化を算出し、算出した時間変化が所定値以上である場合、直近で算出した距離Dを示す距離情報を含むイベントメッセージを生成して統合ECU101へ送信する。一方、個別ECU111は、算出した時間変化が所定値未満である場合、イベントメッセージの送信を行うことなく、算出した距離Dを記憶部に保存して新たな算出タイミングTDを待ち受ける。
【0043】
たとえば、当該イベントメッセージは、イーサネットプロトコル群のアプリケーション層のプロトコルであるSOME/IP(Scalable service-Oriented MiddlewarE over IP)に従ったメッセージである。より詳細には、個別ECU111は、SOME/IP(Scalable service-Oriented MiddlewarE over IP)に従って、距離情報を含むイベントメッセージを生成し、生成したイベントメッセージを1または複数のイーサネットフレームに格納して統合ECU101へ送信する。
【0044】
統合ECU101は、個別ECU111からイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームに含まれるイベントメッセージから距離情報を取得し、取得した距離情報を処理する。たとえば、統合ECU101は、取得した距離情報に基づいて、たとえば運転者への車線逸脱警告等の運転支援を行う。また、たとえば、統合ECU101は、取得した距離情報を図示しない自動運転ECUへ転送する処理を行う。当該自動運転ECUは、統合ECU101から受信した距離情報に基づいて自動運転制御を行う。
【0045】
図3は、本開示の実施の形態に係る統合ECUの構成を示す図である。図3を参照して、統合ECU101は、受信部11と、処理部21と、送信部31と、推定部41と、制御部51と、記憶部61とを備える。受信部11、処理部21、送信部31、推定部41および制御部51は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサにより実現される。記憶部61は、たとえば不揮発性メモリである。
【0046】
記憶部61は、地図情報を記憶している。たとえば、地図情報は、車両1の出荷時に車両1の製造者により記憶部61に保存される。たとえば、記憶部61における地図情報は、定期的または不定期に、車両1のユーザにより更新される。
【0047】
受信部11は、個別ECU111からイベントメッセージを含むイーサネットフレームを受信すると、当該イベントメッセージから距離情報を取得して記憶部61に保存する。
【0048】
また、受信部11は、TCU131からイーサネットフレームを受信し、受信したイーサネットフレームから渋滞情報を取得して記憶部61に保存する。また、受信部11は、TCU131からイーサネットフレームを受信し、受信したイーサネットフレームから更新データを取得して記憶部61に保存する。一例として、受信部11は、TCU131から受信したイーサネットフレームから、個別ECU111のソフトウェアを更新するための更新データを取得して記憶部61に保存する。
【0049】
また、受信部11は、個別ECU121からイーサネットフレームを受信し、受信したイーサネットフレームから位置情報、速度情報または相対速度情報を取得して記憶部61に保存する。
【0050】
たとえば、処理部21は、受信部11により記憶部61に保存された距離情報に基づいて、運転者への車線逸脱警告等の運転支援を行う。具体的には、処理部21は、距離情報に基づいて、車線逸脱警告を図示しない表示装置に表示する処理を行う。また、たとえば、処理部21は、定期的または不定期に、記憶部61から距離情報を取得し、取得した距離情報を送信部31へ出力する。
【0051】
送信部31は、処理部21から受けた距離情報をイーサネットフレームに格納して図示しない自動運転ECUへ送信する。
【0052】
また、送信部31は、記憶部61から更新データを取得し、取得した更新データをイーサネットフレームに格納して更新対象の装置である個別ECU111へ送信する。より詳細には、送信部31は、制御部51から後述する制御情報を受けて、受けた制御情報に基づく送信タイミングに従って更新データを個別ECU111へ送信する。
【0053】
推定部41は、車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定する推定処理を行う。たとえば、推定部41は、記憶部61に更新データが保存されるのを待ち受け、受信部11により記憶部61に更新データが保存されると、推定処理を開始する。推定部41は、推定処理により得られた推定結果を制御部51へ通知する。
【0054】
制御部51は、推定部41による推定結果に基づいて、個別ECU111への更新データの送信を制御する。より詳細には、制御部51は、推定部41から通知された推定結果に基づいて制御情報を生成し、生成した制御情報を送信部31へ出力することにより、送信部31による個別ECU111への更新データの送信を制御する。
【0055】
推定部41は、送信部31による個別ECU111への更新データの送信が完了するまで推定処理を繰り返し、送信部31による個別ECU111への更新データの送信が完了すると、推定処理を終了し、新たな更新データが記憶部61に保存されるのを待ち受ける。
【0056】
(更新データの送信例1)
推定部41は、車両1の現在位置および地図情報に基づいて推定処理を行う。より詳細には、推定部41は、車両1の外部から取得した情報である、車両1の現在位置および地図情報に基づいて、個別ECU111によるイベントメッセージの送信頻度が所定値未満となる期間を予測する。そして、制御部51は、推定部41による予測結果に基づいて、更新データの送信を制御する。
【0057】
図4は、本開示の実施の形態に係る車両の走行状態の一例を示す平面図である。図4を参照して、車両1がトンネル内を走行する期間において、車両1の進行方向に向かって左側にはトンネルの一部である壁Wが存在する。
【0058】
この場合、個別ECU111AにおいてレーダR1から取得した検知結果に基づいて算出される距離D、および個別ECU111BにおいてレーダR2から取得した検知結果に基づいて算出される距離Dは、車両1と壁Wとの間の距離を示す。そして、個別ECU111A,111Bにより算出される距離Dの時間変化は、車両1がトンネル内における同じ車線を走行し続ける場合、比較的小さい。したがって、個別ECU111A,111Bが距離情報を含むイベントメッセージを生成して統合ECU101へ送信する頻度は、車両1がトンネル内を走行する期間においては比較的低い。
【0059】
一方、個別ECU111CにおいてレーダR3から取得した検知結果に基づいて算出される距離D、および個別ECU111DにおいてレーダR4から取得した検知結果に基づいて算出される距離Dは、車両1と対向車両との間の距離を示す。そして、個別ECU111C,111Dにより算出される距離Dの時間変化は、対向車両が一定数以上存在する場合、個別ECU111A,111Bにより算出される距離Dの時間変化よりも大きい。したがって、個別ECU111C,111Dが距離情報を含むイベントメッセージを生成して統合ECU101へ送信する頻度は、比較的高い。
【0060】
推定部41は、記憶部61から地図情報および位置情報を取得し、取得した地図情報および位置情報に基づいて、車両1がトンネル内を走行する期間であるトンネル走行期間を予測する。そして、推定部41は、予測したトンネル走行期間において個別ECU111A,111Bによるイベントメッセージの送信頻度が所定値未満となる旨の推定結果を制御部51へ通知する。
【0061】
たとえば、制御部51は、当該推定結果を受けて、推定結果が示すトンネル走行期間において個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を行うべき旨を示す制御情報を送信部31へ出力する。
【0062】
送信部31は、制御部51から当該制御情報を受けて、受けた制御情報に基づいて、記憶部61から更新データを取得し、取得した更新データをイーサネットフレームに格納して個別ECU111A,111Bへ送信する。より詳細には、送信部31は、トンネル走行期間が開始すると、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を開始し、トンネル走行期間が終了すると、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を停止する。
【0063】
なお、推定部41は、地図情報および位置情報に基づいてトンネル走行期間を予測し、予測したトンネル走行期間において個別ECU111A,111Bによるイベントメッセージの送信頻度が所定値未満となる旨の推定結果を制御部51へ通知する構成であるとしたが、これに限定するものではない。推定部41は、地図情報および位置情報に基づいて車両1の現在位置がトンネル内であると判断した場合、現在の個別ECU111A,111Bによるイベントメッセージの送信頻度は所定値未満であると推定し、推定結果を制御部51へ通知する構成であってもよい。
【0064】
(更新データの送信例2)
推定部41は、車両1の現在位置および地図情報に加えて、渋滞情報にさらに基づいて推定処理を行う。より詳細には、推定部41は、車両1の外部から取得した情報である、車両1の現在位置、地図情報および渋滞情報に基づいて、個別ECU111によるイベントメッセージの送信頻度が所定値未満となる期間を予測する。そして、制御部51は、推定部41による予測結果に基づいて、更新データの送信を制御する。
【0065】
図5は、本開示の実施の形態に係る車両の走行状態の他の例を示す平面図である。図5を参照して、車両1が走行している車線および対向車線が渋滞しており、車両1は低速たとえば時速5km以下で走行している。
【0066】
この場合、個別ECU111AにおいてレーダR1から取得した検知結果に基づいて算出される距離Dは、車両1と車両1の前方を走行している車両との間の距離を示す。また、個別ECU111BにおいてレーダR2から取得した検知結果に基づいて算出される距離Dは、車両1と車両1の後方を走行している車両との間の距離を示す。また、個別ECU111CにおいてレーダR3から取得した検知結果に基づいて算出される距離Dは、車両1と車両1の前方を走行している車両との間の距離、または車両1と対向車両との間の距離を示す。また、個別ECU111DにおいてレーダR4から取得した検知結果に基づいて算出される距離Dは、車両1と車両1の後方を走行している車両との間の距離、または車両1と対向車両との間の距離を示す。
【0067】
そして、個別ECU111A,111B,111C,111Dにより算出される距離Dの時間変化は、車両1が走行している車線および対向車線が渋滞している場合、比較的小さい。したがって、個別ECU111A,111B,111C,111Dが距離情報を含むイベントメッセージを生成して統合ECU101へ送信する頻度は、車両1が渋滞中のエリアを走行している期間においては比較的低い。
【0068】
推定部41は、記憶部61から地図情報、位置情報および渋滞情報を取得し、取得した地図情報、位置情報および渋滞情報に基づいて、車両1が渋滞中のエリアを走行する期間である渋滞走行期間を予測する。そして、推定部41は、予測した渋滞走行期間において個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度が所定値未満となる旨の推定結果を制御部51へ通知する。
【0069】
たとえば、制御部51は、当該推定結果を受けて、推定結果が示す渋滞走行期間において個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を行うべき旨を示す制御情報を送信部31へ出力する。
【0070】
送信部31は、制御部51から当該制御情報を受けて、受けた制御情報に基づいて、記憶部61から更新データを取得し、取得した更新データをイーサネットフレームに格納して個別ECU111A,111B,111C,111Dへ送信する。より詳細には、送信部31は、渋滞走行期間が開始すると、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を開始し、渋滞走行期間が終了すると、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を停止する。
【0071】
なお、推定部41は、地図情報、位置情報および渋滞情報に基づいて渋滞走行期間を予測し、予測した渋滞走行期間において個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度が所定値未満となる旨の推定結果を制御部51へ通知する構成であるとしたが、これに限定するものではない。推定部41は、地図情報、位置情報および渋滞情報に基づいて車両1の現在位置が渋滞中のエリアであると判断した場合、現在の個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度は所定値未満であると推定し、推定結果を制御部51へ通知する構成であってもよい。
【0072】
(更新データの送信例3)
推定部41は、車両1の走行速度の変化量に基づいて推定処理を行う。より詳細には、推定部41は、車両1における測定結果である走行速度の変化量に基づいて、現在の個別ECU111によるイベントメッセージの送信頻度を予測する。そして、制御部51は、推定部41による予測結果に基づいて、更新データの送信を制御する。
【0073】
より詳細には、たとえば、運転者の操作に従って車両1が減速することにより、車両1の周囲の物体たとえば静止物体と、車両1との間の距離Dの時間変化は小さくなる。また、たとえば、車両1が渋滞中のエリアに入ることに伴って運転者の操作に従って車両1が減速することにより、前後の車両および対向車両と、車両1との間の距離Dの時間変化は小さくなる。
【0074】
したがって、個別ECU111A,111B,111C,111Dが距離情報を含むイベントメッセージを生成して統合ECU101へ送信する頻度は、車両1が減速した場合、低下する。
【0075】
推定部41は、たとえば所定の算出周期CVに従う算出タイミングTVにおいて、記憶部61における速度情報に基づいて、車両1の走行速度の変化量を算出する。推定部41は、単位時間あたりの車両1の走行速度の低下量が所定値以上である場合、現在の個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度は所定値未満であると推定し、推定結果を制御部51へ通知する。
【0076】
たとえば、制御部51は、当該推定結果を受けて、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を開始すべき旨を示す制御情報を送信部31へ出力する。
【0077】
送信部31は、制御部51から当該制御情報を受けて、受けた制御情報に基づいて、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を開始する。
【0078】
その後、たとえば、推定部41は、ある算出タイミングTVにおいて算出した単位時間あたりの車両1の走行速度の増加量が所定値以上である場合、現在の個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度は所定値以上であると推定し、推定結果を制御部51へ通知する。
【0079】
たとえば、制御部51は、当該推定結果を受けて、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を停止すべき旨を示す制御情報を送信部31へ出力する。
【0080】
送信部31は、制御部51から当該制御情報を受けて、受けた制御情報に基づいて、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を停止する。
【0081】
(更新データの送信例4)
推定部41は、車両1の走行速度、および車両1と他の車両との相対速度に基づいて推定処理を行う。より詳細には、推定部41は、車両1における測定結果である走行速度および相対速度に基づいて、現在の個別ECU111によるイベントメッセージの送信頻度を予測する。そして、制御部51は、推定部41による予測結果に基づいて、更新データの送信を制御する。
【0082】
より詳細には、たとえば、車両1が走行している車線が渋滞している一方で、対向車線は渋滞しておらず車両が高速で走行している場合、前後の車両と車両1との間の距離Dの時間変化は小さい一方で、対向車両と車両1との間の距離Dの時間変化は大きい。
【0083】
したがって、個別ECU111A,111Bが距離情報を含むイベントメッセージを生成して統合ECU101へ送信する頻度は、車両1の走行速度が低速であり対向車両の走行速度が高速である場合、比較的低い。一方、個別ECU111C,111Dが距離情報を含むイベントメッセージを生成して統合ECU101へ送信する頻度は、車両1の走行速度が低速であり対向車両の走行速度が高速である場合、比較的高い。
【0084】
推定部41は、記憶部61から速度情報および相対速度情報を取得し、取得した速度情報が示す車両1の走行速度が所定値よりも低く、かつ取得した相対速度情報が示す相対速度が所定値以上である場合、現在の個別ECU111A,111Bによるイベントメッセージの送信頻度は所定値未満である一方で、現在の個別ECU111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度は所定値以上であると推定し、推定結果を制御部51へ通知する。
【0085】
たとえば、制御部51は、当該推定結果を受けて、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を開始すべき旨を示す制御情報を送信部31へ出力する。
【0086】
送信部31は、制御部51から当該制御情報を受けて、受けた制御情報に基づいて、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を開始する。
【0087】
その後、たとえば、推定部41は、記憶部61から取得した速度情報が示す車両1の走行速度が所定値以上となった場合、現在の個別ECU111A,111Bによるイベントメッセージの送信頻度は所定値以上であると推定し、推定結果を制御部51へ通知する。
【0088】
たとえば、制御部51は、当該推定結果を受けて、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を停止すべき旨を示す制御情報を送信部31へ出力する。
【0089】
送信部31は、制御部51から当該制御情報を受けて、受けた制御情報に基づいて、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を停止する。
【0090】
上述の更新データの送信例1~4は一例である。統合ECU101は、更新データの送信例1~4のうちの少なくともいずれか1つを行わない構成であってもよい。また、統合ECU101では、推定部41は、地図情報、位置情報、渋滞情報、速度情報および相対速度情報の一部もしくは全部の代わりに、またはこれら5つに加えて、たとえば時刻情報に基づいて推定処理を行う構成であってもよい。
【0091】
[動作の流れ]
本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0092】
図6は、本開示の実施の形態に係る統合ECUが更新データを送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図6は、上述した、更新データの送信例1に対応するフローチャートを示している。
【0093】
図6を参照して、まず、統合ECU101は、更新サーバ181からの更新データを待ち受け(ステップS102でNO)、更新サーバ181からの更新データをTCU131経由で受信すると(ステップS102でYES)、推定処理を行う。一例として、統合ECU101は、地図情報および位置情報に基づいてトンネル走行期間を予測し、予測したトンネル走行期間において個別ECU111A,111Bによるイベントメッセージの送信頻度が所定値未満となると推定する(ステップS104)。
【0094】
次に、統合ECU101は、予測したトンネル走行期間の開始時間を待ち受け(ステップS106でNO)、予測したトンネル走行期間の開始時間が到来すると(ステップS106でYES)、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を開始する(ステップS108)。
【0095】
次に、統合ECU101は、予測したトンネル走行期間の終了時間が到来するまで個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を継続し(ステップS110でNO)、予測したトンネル走行期間の終了時間が到来すると(ステップS110でYES)、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信を停止する(ステップS112)。
【0096】
次に、統合ECU101は、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信が未完了である場合(ステップS114でNO)、再び推定処理を行う(ステップS104)。
【0097】
一方、統合ECU101は、個別ECU111A,111Bへの更新データの送信が完了した場合(ステップS114でYES)、更新サーバ181からの新たな更新データを待ち受ける(ステップS102でNO)。
【0098】
図7は、本開示の実施の形態に係る統合ECUが更新データを送信する際の動作手順の他の例を定めたフローチャートである。図7は、上述した、更新データの送信例3に対応するフローチャートを示している。
【0099】
図7を参照して、まず、統合ECU101は、更新サーバ181からの更新データを待ち受け(ステップS202でNO)、更新サーバ181からの更新データをTCU131経由で更新サーバ181から受信すると(ステップS202でYES)、推定処理を開始する。一例として、統合ECU101は、現在の個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度を推定する(ステップS204)。
【0100】
次に、統合ECU101は、現在の個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度が所定値未満となるのを待ち受け(ステップS206でNO)、現在の個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度が所定値未満であると推定すると、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を開始する(ステップS208)。
【0101】
次に、統合ECU101は、現在の個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度が所定値以上となるまで個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を継続し(ステップS210でNO)、現在の個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度が所定値以上であると推定すると(ステップS210でYES)、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信を停止する(ステップS212)。
【0102】
次に、統合ECU101は、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信が未完了である場合(ステップS214でNO)、現在の個別ECU111A,111B,111C,111Dによるイベントメッセージの送信頻度が再び所定値未満となるのを待ち受ける(ステップS206でNO)。
【0103】
一方、統合ECU101は、個別ECU111A,111B,111C,111Dへの更新データの送信が完了した場合(ステップS214でYES)、推定処理を終了し、更新サーバ181からの新たな更新データを待ち受ける(ステップS202でNO)。
【0104】
図8は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるデータ送信のシーケンスの一例を示す図である。
【0105】
図8を参照して、まず、推定部41は、推定処理を行う。たとえば、推定部41は、地図情報および位置情報に基づいて推定処理を行う。あるいは、推定部41は、地図情報、位置情報および渋滞情報に基づいて推定処理を行う。あるいは、推定部41は、速度情報に基づいて推定処理を行う。あるいは、推定部41は、速度情報および相対速度情報に基づいて推定処理を行う(ステップS302)。
【0106】
次に、推定部41は、推定結果を制御部51へ通知する(ステップS304)。
【0107】
次に、制御部51は、推定部41による推定結果に基づいて、個別ECU111への更新データの送信を制御する。より詳細には、制御部51は、推定部41から通知された推定結果に基づいて制御情報を生成し、生成した制御情報を送信部31へ出力する(ステップS306)。
【0108】
次に、送信部31は、制御部51から受けた制御情報に基づく送信タイミングに従って更新データを個別ECU111へ送信する(ステップS308)。
【0109】
なお、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、統合ECU101は、個別ECU111のソフトウェアを更新するための更新データをTCU131経由で更新サーバ181から受信し、受信した更新データを個別ECU111へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。統合ECU101は、車載ネットワークにおける個別ECU111以外の装置のソフトウェアを更新するための更新データを受信し、受信した更新データを当該装置へ送信する構成であってもよい。
【0110】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、個別ECU111は、SOME/IPに従ったイベントメッセージを統合ECU101へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。個別ECU111は、たとえばCAN(Controller Area Network)(登録商標)に従ったイベントメッセージを統合ECU101へ送信する構成であってもよい。この場合、個別ECU111は、ケーブル2の代わりにCANバスを介して統合ECU101に接続される。
【0111】
また、本開示の実施の形態に係る統合ECU101では、制御部51は、送信部31による個別ECU111への更新データの送信制御として、更新データの送信の開始および停止を制御する構成であるとしたが、これに限定するものではない。制御部51は、送信部31による個別ECU111への更新データの送信制御として、更新データの送信レートを制御する構成であってもよい。
【0112】
本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、推定部41および制御部51は統合ECU101に設けられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。推定部41および制御部51は、スイッチ装置等の統合ECU101以外の装置に設けられる構成であってもよい。また、推定部41および制御部51は、互いに異なる装置に設けられる構成であってもよい。
【0113】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0114】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車載ネットワークにおいて伝送されるイベントメッセージの発生頻度を推定する推定部と、
前記推定部による推定結果に基づいて、前記車載ネットワークにおける更新対象の装置への更新データの送信を制御する制御部とを備え、
前記推定部は、車両の現在位置および地図情報に基づいて、前記発生頻度が所定値未満となる期間を予測し、
前記制御部は、前記推定部による予測結果に基づいて、前記更新データの送信を制御する、車載装置。
【符号の説明】
【0115】
1 車両
2 ケーブル
11 受信部
21 処理部
31 送信部
41 推定部
51 制御部
61 記憶部
101 統合ECU
111,111A,111B,111C,111D 個別ECU
121 個別ECU
131 TCU
171 外部ネットワーク
161 無線基地局装置
181 更新サーバ
182 交通情報サーバ
301 車載通信システム
R1,R2,R3,R4 レーダ
W 壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8