(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】熱転写受像シート、印画物の製造方法及び印画物
(51)【国際特許分類】
B41M 5/50 20060101AFI20241203BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B41M5/50 410
B41M5/52 400
(21)【出願番号】P 2021058644
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】畠山 亮太
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-337463(JP,A)
【文献】特開2010-082913(JP,A)
【文献】特開平09-193561(JP,A)
【文献】特開2020-040409(JP,A)
【文献】特開平08-244362(JP,A)
【文献】特開2020-055289(JP,A)
【文献】特開2008-239841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/50
B41M 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面層と、裏面プライマー層と、基材と、受容層とをこの順に備える熱転写受像シートであって、
前記裏面プライマー層が、顔料と、ウレタン樹脂成分を含む樹脂材料とを含有し、
前記裏面プライマー層における前記顔料の含有量と前記樹脂材料の含有量との質量比(顔料の含有量/樹脂材料の含有量)が、1.00以上3.00以下であり、
前記裏面プライマー層の厚さが、0.20μm以上0.90μm以下である、
熱転写受像シート。
【請求項2】
前記裏面層の厚さが、0.05μm以上2.00μm以下である、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂成分が、ウレタン樹脂、及び前記ウレタン樹脂のイソシアネート系架橋剤による架橋物から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂が、80℃以上100℃以下の軟化点を有する、請求項3に記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
前記ウレタン樹脂が、-28℃以上5℃以下のガラス転移温度を有する、請求項3又は4に記載の熱転写受像シート。
【請求項6】
(1)請求項1~5のいずれか一項に記載の熱転写受像シートを準備する工程と、
(2)前記熱転写受像シートが備える前記受容層に、画像を形成する工程と
を含む、印画物の製造方法。
【請求項7】
(3)前記画像が形成された受容層上に、保護層を形成する工程
をさらに含む、請求項6に記載の印画物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱転写受像シートと、
前記熱転写受像シートが備える前記受容層に形成された画像と
を備える印画物。
【請求項9】
前記画像が形成された受容層上に、保護層をさらに備える、請求項8に記載の印画物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱転写受像シート、印画物の製造方法及び印画物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の画像形成方法が知られている。その中でも昇華型熱転写方式は、濃度階調を自由に調整でき、中間色及び階調の再現性に優れ、銀塩写真に匹敵する高品質の画像形成が可能である。
【0003】
昇華型熱転写方式では、通常、昇華性染料を含有する昇華転写型色材層を備える熱転写シートと、受容層を備える熱転写受像シートとが用いられている。例えば、熱転写シートと熱転写受像シートとを重ね合わせ、次いで、プリンタが備えるサーマルヘッド等の発熱部材により熱転写シートを加熱することで、昇華転写型色材層中の昇華性染料を受容層に移行させて画像を形成することにより、印画物が得られる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
従来の熱転写受像シートでは、例えばグリップローラー方式のプリンタ等を用いた印画時の搬送性が充分高くはなかった。そこで、搬送性を向上させるために、裏面にグリップ層を設けた熱転写受像シートが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-39043号公報
【文献】特開平11-115328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱転写受像シートの印画時の搬送性等を向上できれば、高度な画像品質を実現できる。しかしながら、従来の熱転写受像シートは、使用するプリンタによっては、上記搬送性が充分ではなく例えば重送が発生し、また、印画物裏面に搬送ローラーによる搬送キズがつき、印画物の品質が低下することがある。
【0007】
本開示の解決しようとする課題は、印画時の搬送性に優れ、また裏面側の搬送キズの発生が抑制された熱転写受像シートを提供することにあり、また、該熱転写受像シートを用いた印画物の製造方法、及び印画物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の熱転写受像シートは、裏面層と、裏面プライマー層と、基材と、受容層とをこの順に備え、裏面プライマー層が、顔料と、ウレタン樹脂成分を含む樹脂材料とを含有し、裏面プライマー層における顔料の含有量と樹脂材料の含有量との質量比(顔料の含有量/樹脂材料の含有量)が、1.00以上3.00以下であり、裏面プライマー層の厚さが、0.20μm以上0.90μm以下である、熱転写受像シートである。
【0009】
本開示の印画物の製造方法は、(1)上記熱転写受像シートを準備する工程と、(2)上記熱転写受像シートが備える受容層に、画像を形成する工程とを含む。
【0010】
本開示の印画物は、上記熱転写受像シートと、上記熱転写受像シートが備える受容層に形成された画像とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、印画時の搬送性に優れ、また裏面側の搬送キズの発生が抑制された熱転写受像シートを提供でき、また、該熱転写受像シートを用いた印画物の製造方法、及び印画物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の熱転写受像シートの一実施形態を表す断面概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の熱転写受像シートの一実施形態を表す断面概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の印画物の一実施形態を表す断面概略図である。
【
図4】
図4は、本開示の印画物の一実施形態を表す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を、図面等を参照しながら説明する。なお、本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0014】
図面は、説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、角度、形状等について模式的に表される場合がある。しかしながら、図面は、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。説明の便宜上、上又は下等という語句を用いて説明するが、上下方向が逆転してもよい。左右方向についても同様である。
【0015】
[熱転写受像シート]
本開示の熱転写受像シートは、裏面層と、裏面プライマー層と、基材と、受容層とを厚さ方向にこの順に備える。
図1に示す一実施形態の熱転写受像シート1は、裏面層14と、裏面プライマー層12と、基材10と、受容層20とを厚さ方向にこの順に備える。
図2に示す一実施形態の熱転写受像シート1は、裏面層14と、裏面プライマー層12と、基材10と、断熱層16と、プライマー層18と、受容層20とを厚さ方向にこの順に備える。基材10と断熱層16との間には、図示せぬ接着層が設けられていてもよい。
以下、本開示の熱転写受像シートが備える各層について詳細に説明する。
【0016】
<基材>
基材としては、例えば、フィルム及び紙基材が挙げられる。
【0017】
フィルムとしては、例えば、樹脂材料により構成されるフィルム(以下「樹脂フィルム」ともいう)が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂;ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン等のスチレン樹脂;ポリカーボネート;並びにアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0018】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との両方を包含する。また、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を包含する。
【0019】
紙基材としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙、上質紙、アート紙、コート紙、ノンコート紙、キャストコート紙、壁紙、セルロース繊維紙、合成樹脂内添紙、裏打用紙及び含浸紙が挙げられる。含浸紙としては、例えば、合成樹脂含浸紙、エマルション含浸紙及び合成ゴムラテックス含浸紙が挙げられる。
【0020】
基材が樹脂フィルムである場合、該樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。機械的強度という観点から、基材として、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0021】
基材としては、樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルにより構成されるフィルム(ポリエステルフィルム)及びポリオレフィンにより構成されるフィルム(ポリオレフィンフィルム)がより好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリプロピレンフィルムがさらに好ましい。樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよい。
【0022】
上述した樹脂フィルム及び紙基材の積層体(積層基材)を基材として用いてもよい。積層体は、例えば、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法及びエクストリュージョン法を利用することにより作製できる。例えば、ポリエステルフィルム又はポリオレフィンフィルムと、紙基材との積層体が好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリプロピレンフィルムと、紙基材との積層体がより好ましい。樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよい。
【0023】
基材の厚さは、機械的強度という観点から、好ましくは20μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上400μm以下、さらに好ましくは100μm以上300μm以下である。
【0024】
<裏面層>
本開示の熱転写受像シートは、基材の受容層とは反対側の面上に、裏面層を備える。
裏面層を設けることにより、例えば、熱転写受像シートの印画時における搬送性、具体的にはグリップローラー方式のプリンタ等を用いた印画時の搬送性を向上できる。裏面層を設けることにより、例えば、熱転写受像シートの裏面側の筆記性を向上できる。
【0025】
裏面層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びポリビニルアルコール樹脂等のビニル樹脂;ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、並びにセルロース樹脂が挙げられる。裏面層は、樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0026】
上記樹脂材料は、水酸基等の官能基を有する樹脂の、当該官能基と反応可能な架橋剤による架橋物であってもよい。上記架橋剤としては、例えば、チタンキレート化合物及びジルコニウムキレート化合物等の金属キレート系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤及びメラミン系架橋剤が挙げられる。架橋剤は、1種又は2種以上用いることができる。これらの中でも、金属キレート系架橋剤が好ましい。例えば、ポリビニルアセタール樹脂又はポリビニルアルコール樹脂の、金属キレート系架橋剤による架橋物が好ましい。
【0027】
架橋剤の使用量は、水酸基等の官能基を有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上5質量部以下である。
【0028】
裏面層は、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、可塑剤、着色抑制剤、界面活性剤、蛍光増白剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、摩擦低減剤、スリップ剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、充填剤、並びに顔料及び染料等の着色剤が挙げられる。裏面層は、添加剤を1種又は2種以上含有できる。
【0029】
裏面層の厚さは、好ましくは0.05μm以上2.00μm以下、より好ましくは0.13μm以上1.30μm以下である。裏面層の塗布量は、乾燥状態で好ましくは0.10g/m2以上5.0g/m2以下、より好ましくは0.10g/m2以上3.0g/m2以下、さらに好ましくは0.20g/m2以上2.0g/m2以下である。このような態様により、例えば、熱転写受像シートの印画時における搬送性及び耐擦過性をより向上できる。
【0030】
裏面層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、公知の塗工手段により、裏面プライマー層上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成できる。塗工手段としては、例えば、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法が挙げられる。
【0031】
<裏面プライマー層>
本開示の熱転写受像シートは、基材と裏面層との間に、以下に記載の特定の裏面プライマー層を備える。裏面プライマー層は、例えば、基材と裏面層との密着性の向上、及び下地の隠蔽性等の付与を目的として設けられる。
【0032】
従来の熱転写受像シートを用いた場合は、熱転写プリンタの種類(例えばグリップローラー方式のプリンタ)によっては、印画時に重送が発生することがある。本開示では、基材と裏面層との間に特定の裏面プライマー層を設けているので、印画時における重送の発生が抑制され、搬送性に優れる、
【0033】
また、従来の熱転写受像シートを用いた場合は、熱転写プリンタの種類によっては、印画物裏面に搬送ローラーによる搬送キズがつき、印画物の品質が低下することがある。これは、熱転写受像シートの裏面層が剥がれ、キズがつきやすいためであると考えられる。本開示では、基材と裏面層との間に特定の裏面プライマー層を設けているので、裏面層の剥がれ、よって搬送キズの発生も抑制されている。したがって、本開示によれば、高品質な印画物を実現できる。
【0034】
裏面プライマー層は、ウレタン樹脂成分を含む樹脂材料を含有する。
ウレタン樹脂成分は、例えば、ウレタン樹脂、及び当該ウレタン樹脂のウレタン樹脂用架橋剤による架橋物から選択される少なくとも1種である。
【0035】
ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとの重合体であり、例えば、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリラクトン系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネート系ウレタン樹脂、ひまし油系ウレタン樹脂、ポリオレフィン系ウレタン樹脂、ポリブタジエン系ウレタン樹脂、ポリイソプレン系ウレタン樹脂及びポリ(メタ)アクリル系ウレタン樹脂が挙げられる。
【0036】
上記ポリオールは、水酸基を2個以上有する化合物である。ポリオールの水酸基数は、好ましくは2以上3以下である。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール及びポリ(メタ)アクリルポリオールが挙げられる。ポリオールは、1種又は2種以上用いることができる。
【0037】
上記ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネートのイソシアネート基数は、好ましくは2以上9以下である。ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及びジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;ブチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;並びにこれら化合物のポリオール付加物、これら化合物のビュウレット体、及びこれら化合物のイソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。ポリイソシアネートは、1種又は2種以上用いることができる。
【0038】
上記ポリオール付加物としては、例えば、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物等のトリメチロールプロパンアダクト体が挙げられる。上記3量体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が挙げられる。
【0039】
上記ウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上200,000以下、より好ましくは10,000以上100,000以下である。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリスチレン換算値である。
【0040】
上記ウレタン樹脂の軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上140℃以下、さらに好ましくは60℃以上120℃以下、特に好ましくは80℃以上100℃以下である。軟化点は、JIS K7196に準拠して測定される。
【0041】
上記ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-50℃以上10℃以下、より好ましくは-40℃以上5℃以下、さらに好ましくは-28℃以上5℃以下、特に好ましくは-20℃以上5℃以下である。である。Tgは、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)に準拠して測定される。
【0042】
ウレタン樹脂用架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ウレタン樹脂の原料として説明した上記ポリイソシアネートが挙げられる。イソシアネート系架橋剤は、1種又は2種以上用いることができる。このようにウレタン樹脂と架橋剤とを組み合わせて用いることで、例えば、基材/裏面層間の接着性をより向上できる。
【0043】
ウレタン樹脂用架橋剤の使用量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上25質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上20質量部以下である。ウレタン樹脂とイソシアネート系架橋剤とは、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基数とウレタン樹脂の水酸基数との比(NCO/OH)が0.3以上3.5以下となる量で用いることが好ましい。これにより、例えば、基材/裏面層間の接着性がより向上する傾向にある。
【0044】
裏面プライマー層は、ウレタン樹脂成分を1種又は2種以上含有できる。
【0045】
裏面プライマー層は、ウレタン樹脂成分以外の樹脂材料をさらに含有してもよい。このような樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート及びセルロース樹脂が挙げられる。
【0046】
裏面プライマー層において、樹脂材料中のウレタン樹脂成分の含有割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0047】
裏面プライマー層は、顔料を含有する。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム及び微粉末シリカ等の金属酸化物;アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、ブロンズ粉、亜鉛粉、ステンレス粉及びニッケル粉等の金属顔料;雲母チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、タルク及びカオリン;パール顔料などの無機顔料;;並びに有彩色顔料等の有機顔料が挙げられる。裏面プライマー層は、顔料を1種又は2種以上含有できる。
【0048】
裏面プライマー層は、一実施形態において、上記顔料として、白色顔料を1種又は2種以上含有する。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、微粉末シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト及びカオリンが挙げられる。このような態様により、下地の隠蔽性をより向上できる。
【0049】
裏面プライマー層は、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、可塑剤、着色抑制剤、界面活性剤、蛍光増白剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、摩擦低減剤、スリップ剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤及び染料が挙げられる。裏面プライマー層は、添加剤を1種又は2種以上含有できる。
【0050】
裏面プライマー層は、一実施形態において、蛍光増白剤を1種又は2種以上含有する。蛍光増白剤としては、例えば、2,5-ビス(5-t-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン及び2,5-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン等のチオフェン系蛍光増白剤、クマリン系蛍光増白剤、スチルベン系蛍光増白剤、ナフタレン系蛍光増白剤、並びにベンズイミダゾール系蛍光増白剤が挙げられる。
【0051】
裏面プライマー層における顔料の含有量と樹脂材料の含有量との質量比(顔料の含有量/樹脂材料の含有量、以下「PV比」ともいう)は、1.00以上3.00以下であり、好ましくは1.30以上2.50以下である。PV比が3.00を超えると、印画の際の搬送時に熱転写受像シートの裏面が傷つきやすく、また裏面の筆記性が低下する傾向にあり、また熱転写受像シートの重送が発生する傾向にある。PV比が1.00未満であると、裏面プライマー層が二酸化チタン等の白色顔料を含有する場合は、隠蔽性が低下する傾向にある。PV比が上記範囲にあれば、印画時の搬送性、搬送キズ抑制、裏面筆記性及び隠蔽性に優れる熱転写受像シートが得られる。
【0052】
裏面プライマー層の厚さは、0.20μm以上0.90μm以下であり、好ましくは0.30μm以上0.80μm以下である。厚さが0.90μmを超えると、印画の際の搬送時に熱転写受像シートの重送が発生する傾向にある。厚さが0.20μm未満であると、印画の際の搬送時に熱転写受像シートの裏面が傷つきやすく、また裏面の筆記性が低下する傾向にあり、また、裏面プライマー層が二酸化チタン等の白色顔料を含有する場合は、隠蔽性が低下する傾向にある。厚さが上記範囲にあれば、印画時の搬送性、搬送キズ抑制、裏面筆記性及び隠蔽性に優れる熱転写受像シートが得られる。
【0053】
裏面プライマー層の厚さは、熱転写受像シートにおける厚さ方向の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した写真や、SEMのエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により観察した写真により測定できる。他の層の厚さについても同様である。
【0054】
裏面プライマー層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、上述した公知の塗工手段により、基材上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成できる。
【0055】
<断熱層>
本開示の熱転写受像シートは、一実施形態において、断熱層を備える。断熱層は、例えば、基材と受容層との間に設けられている。断熱層は、熱転写による画像形成時に加えられた熱が、基材等への伝熱によって失われることを抑制する断熱性を有する。
【0056】
断熱層としては、例えば、中空粒子を含有する中空粒子含有層、及び内部に微細空隙を有する多孔質フィルムが挙げられる。断熱層は、中空粒子含有層を2層以上備えていてもよく、多孔質フィルムを2層以上備えていてもよく、中空粒子含有層と多孔質フィルムとを備えていてもよい。
【0057】
中空粒子含有層は、中空粒子を含有する。中空粒子含有層は、中空粒子を含有することにより、熱転写による画像形成時に加えられた熱が、基材等への伝熱によって失われることを抑制する断熱性を有するとともに、クッション性も有する。
【0058】
中空粒子は、有機系中空粒子であってもよく、無機系中空粒子であってもよく、有機無機複合中空粒子であってもよいが、樹脂材料中での分散性という観点から、有機系中空粒子及び有機無機複合中空粒子が好ましい。
【0059】
中空粒子は、発泡性粒子であってもよく、非発泡性粒子であってもよい。中空粒子は、シェルと、シェルによって内包された気体とからなる粒子であってもよく、シェルと、シェルによって内包された液状炭化水素等の液体とからなる粒子であってもよい。
【0060】
有機系中空粒子は、樹脂材料により構成されるシェルを有する。樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル系コポリマー等の(メタ)アクリロニトリル樹脂、ポリスチレン及び架橋スチレン-(メタ)アクリル樹脂等のスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン等のビニル樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、イミド樹脂及びポリカーボネートが挙げられる。
【0061】
一実施形態において、有機系中空粒子は、樹脂粒子中にブタンガス等の発泡剤を封入し、加熱発泡することにより作製できる。一実施形態において、有機系中空粒子は、エマルション重合を利用することにより作製できる。市販されている有機系中空粒子を使用してもよい。
【0062】
有機無機複合中空粒子としては、例えば、有機系中空粒子のシェル表面が、無機粉体等の無機材料により修飾された中空粒子が挙げられる。有機系中空粒子としては、例えば、上記例示の有機系中空粒子が挙げられる。無機材料としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、チタニア及びアルミナが挙げられる。一実施形態において、有機無機複合中空粒子は、アクリロニトリル系コポリマー等のポリアクリロニトリル系中空粒子の表面がタルクにより修飾された中空粒子である。市販されている有機無機複合中空粒子を使用してもよい。
【0063】
無機系中空粒子としては、例えば、中空シリカ粒子、中空ガラス粒子及び中空セラミック粒子が挙げられる。
【0064】
中空粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上30μm以下、より好ましくは0.5μm以上30μm以下、さらに好ましくは1μm以上25μm以下である。中空粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡法により測定する。具体的には、中空粒子含有層の断面について走査型電子顕微鏡法により断面画像を取得し、該断面画像の各粒子における長軸径と短軸径との平均値として粒子径を得て、粒子100個の粒子径の算術平均を平均粒子径とする。
中空粒子含有層は、中空粒子を1種又は2種以上含有できる。
【0065】
中空粒子含有層における中空粒子の含有割合は、好ましくは5質量%以上70質量%以下、より好ましくは15質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上55質量%以下である。
【0066】
中空粒子含有層は、樹脂材料を含有する。
樹脂材料としては、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン変性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン、ゼラチン及びその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、寒天、κ-カラギーナン、λ-カラギーナン、ι-カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸並びにアラビアゴムが挙げられる。
中空粒子含有層は、樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0067】
中空粒子含有層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは30質量%以上95質量%以下、より好ましくは40質量%以上85質量%以下、さらに好ましくは45質量%以上70質量%以下である。
【0068】
中空粒子含有層は、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、可塑剤、着色抑制剤、界面活性剤、蛍光増白剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、帯電抑制剤、摩擦低減剤、スリップ剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、充填剤、並びに顔料及び染料等の着色剤が挙げられる。中空粒子含有層は、添加剤を1種又は2種以上含有できる。
【0069】
中空粒子含有層の厚さは、好ましくは5μm以上100μm以下、より好ましくは12μm以上80μm以下、さらに好ましくは18μm以上60μm以下、特に好ましくは20μm以上50μm以下である。
【0070】
中空粒子含有層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、上述した公知の塗工手段により、基材等に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成できる。
【0071】
多孔質フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;スチレン樹脂;並びにポリアミドが挙げられる。多孔質フィルムは、樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0072】
多孔質フィルムは、上記添加剤を1種又は2種以上含有できる。
【0073】
多孔質フィルムの厚さは、好ましくは20μm以上150μm以下、より好ましくは30μm以上130μm以下である。
【0074】
多孔質フィルムは、公知の方法により作製できる。多孔質フィルムは、例えば、上記した樹脂材料に対し、非相溶な有機粒子又は無機粒子を混練した混合物をフィルム化し、必要に応じて延伸することにより作製できる。多孔質フィルムは、例えば、ポリプロピレンにポリプロピレンより高い融点を有するポリエステル又は(メタ)アクリル樹脂を添加して成る混合物をフィルム化し、必要に応じて延伸することにより作製できる。ポリエステル又は(メタ)アクリル樹脂は、微細空隙を形成する核剤の役割をする。多孔質フィルムは、上記方法により作製される多孔質フィルムに限定されるものではなく、市販されている多孔質フィルムを使用してもよい。
【0075】
多孔質フィルムは、例えば、接着層を介して基材上に積層できる。また、複数の多孔質フィルムを、接着層を介して積層してもよい。
【0076】
<受容層>
本開示の熱転写受像シートは、受容層を備える。受容層は、例えば、熱転写シートが備える昇華転写型色材層(染料層)から移行してくる昇華性染料を受容し、形成された画像を維持する層である。
【0077】
受容層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、染料が染着し易い樹脂であれば限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂;ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂;スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、並びにアイオノマー樹脂が挙げられる。受容層は、樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0078】
受容層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは70質量%以上99質量%以下、より好ましくは80質量%以上98質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上97質量%以下である。
【0079】
受容層は、一実施形態において、離型剤を含有する。これにより、例えば、熱転写受像シートと熱転写シートとの離型性を向上できる。離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類;フッ素系又はリン酸エステル系界面活性剤;シリコーンオイル、及びシリコーン樹脂が挙げられる。
【0080】
シリコーンオイルとしては、反応性シリコーンオイル及び硬化型シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、エポキシ-アラルキル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン及びウレタン変性シリコーンが好ましく、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン及びエポキシ-アラルキル変性シリコーンが挙げられる。
受容層は、離型剤を1種又は2種以上含有できる。
【0081】
受容層における離型剤の含有割合は、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。これにより、例えば、受容層の透明性を維持しつつ、熱転写受像シートと熱転写シートとの離型性を向上できる。
【0082】
受容層は、上記添加剤を1種又は2種以上含有できる。例えば、受容層の白色度を向上させて熱転写画像の鮮明度をさらに高めるという観点から、受容層は、白色顔料を含有してもよい。
【0083】
受容層の厚さは、好ましくは0.5μm以上20μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下である。これにより、例えば、受容層に形成される画像の濃度をより向上できる。
【0084】
受容層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、上述した公知の塗工手段により、任意の層上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成できる。
【0085】
<接着層>
本開示の熱転写受像シートは、一実施形態において、任意の層間(例えば、基材と断熱層との間や、積層基材における各層間、多層構造を有する断熱層を構成する各層間)に、接着層を備える。これにより、層間の密着性を向上できる。
【0086】
接着層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、ポリオール樹脂、並びにウレタン樹脂が挙げられる。接着層は、樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0087】
接着層は、上記添加剤を1種又は2種以上含有できる。
接着層の厚さは、例えば、0.5μm以上10μm以下である。
【0088】
接着層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、上述した公知の塗工手段により、任意の層上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成できる。一実施形態において、接着層は、上記材料を含有する樹脂組成物を溶融押出することにより形成できる。
【0089】
接着層は、また、従来公知の接着剤を用いて形成できる。接着剤は、1液硬化型若しくは2液硬化型、又は非硬化型のいずれの接着剤であってもよい。接着剤は、無溶剤型の接着剤であってもよく、溶剤型の接着剤であってもよい。接着層は、例えば、ノンソルベントラミネート法により形成してもよく、ドライラミネート法により形成してもよい。
【0090】
接着剤としては、例えば、2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステル系ポリウレタン接着剤、ポリエーテル系ポリウレタン接着剤、(メタ)アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、酸変性ポリオレフィン系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤及びポリ塩化ビニル系接着剤が挙げられる。
【0091】
<プライマー層>
本開示の熱転写受像シートは、一実施形態において、基材又は断熱層と受容層との間に、プライマー層を備える。これにより、これらの層間の密着性を向上できる。
【0092】
プライマー層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ウレタン樹脂、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂(例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリビニルアルコール)、ポリビニルアセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルアセトアセタール樹脂)、並びにセルロース樹脂が挙げられる。プライマー層は、樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0093】
上記樹脂材料の中でも、活性水酸基を有する樹脂材料については、当該樹脂材料のイソシアネート硬化物をバインダーとすることもできる。この際に用いることのできるイソシアネート化合物としては、ウレタン樹脂の原料として説明した上記ポリイソシアネートが挙げられる。
【0094】
プライマー層は、上記添加剤を1種又は2種以上含有できる。
プライマー層の厚さは、例えば、0.1μm以上3μm以下である。
【0095】
プライマー層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、上述した公知の塗工手段により、基材又は断熱層等に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成することができる。
【0096】
[印画物]
本開示の印画物は、上記熱転写受像シートを用いて作製されたものであり、裏面層と、裏面プライマー層と、基材と、画像が形成された受容層とを備える。各層の詳細は上述したとおりである。
【0097】
受容層に形成された画像は、文字、模様、記号及びこれらの組合せ等、特に限定されない。画像は、例えば、従来公知の昇華型熱転写記録方式や溶融型熱転写記録方式の熱転写シートを用いることにより、受容層に形成できる。
【0098】
<保護層>
本開示の印画物は、一実施形態において、画像が形成された受容層上に、保護層を備える。
図3に示す一実施形態の印画物2は、裏面層14と、裏面プライマー層12と、基材10と、図示せぬ画像が形成された受容層20と、保護層22とを厚さ方向にこの順に備える。
図4に示す一実施形態の印画物2は、裏面層14と、裏面プライマー層12と、基材10と、断熱層16と、プライマー層18と、図示せぬ画像が形成された受容層20と、保護層22とを厚さ方向にこの順に備える。
【0099】
保護層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料は、透明性を有している限り、特に限定されない。樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物及び活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物が挙げられる。保護層は、樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0100】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂及びアミノアルキッド樹脂が挙げられる。
【0101】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線の照射を受けて硬化する樹脂である。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線(UV)、X線及びγ線等の電磁波;電子線(EB)、α線及びイオン線等の荷電粒子線が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、多官能(メタ)アクリレートモノマー及び多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0102】
保護層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50質量%以上95質量%以下である。これにより、例えば、受容層に形成された画像の耐擦過性及び保存安定性を向上できる。
保護層は、上記添加剤を1種又は2種以上含有できる。
【0103】
保護層の厚さは、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.5μm以上5μm以下である。これにより、例えば、受容層に形成された画像の耐擦過性及び保存安定性を向上できる。
【0104】
[印画物の製造方法]
本開示の印画物の製造方法は、(1)本開示の熱転写受像シートを準備する工程と、(2)上記熱転写受像シートが備える受容層に、画像を形成する工程(画像形成工程)とを含む。本開示の印画物の製造方法は、一実施形態において、(3)画像が形成された受容層上に、保護層を形成する工程(保護層形成工程)を含む。
熱転写受像シートの構成については上述したため、ここでは記載を省略する。
【0105】
画像の形成方法としては、例えば、従来公知の昇華型熱転写記録方式や溶融型熱転写記録方式の熱転写シートを用いる方法が挙げられる。昇華型熱転写記録方式では、昇華性染料を含有する昇華転写型色材層を備える熱転写シートを用いて、昇華性染料を受容層に転写することにより、画像が形成される。溶融型熱転写記録方式では、溶融転写型色材層を備える熱転写シートを用いて、溶融転写型色材層を受容層上に転写することにより、画像が形成される。また、これらを組み合わせて画像を形成してもよい。
【0106】
保護層は、従来公知の方法により形成でき、例えば、保護層を備える保護層転写シートから保護層を画像が形成された受容層上に転写することにより形成できる。保護層は、保護層形成用のフィルムを受容層上に接着層等を介して積層して形成してもよい。保護層の詳細は、上述したとおりである。保護層転写シートは、上記色材層と面順次に保護層を備える熱転写シートであってもよい。
【0107】
上記画像は、具体的には、上記熱転写シートと本開示の熱転写受像シートとを重ね合わせ、サーマルヘッド等の発熱部材により上記熱転写シートの背面側から熱を印加して、昇華転写型色材層に含まれる昇華性染料を受容層に転写することにより、又は溶融転写型色材層を受容層上に転写することにより、形成される。
【0108】
上記保護層は、具体的には、受容層に画像が形成された熱転写受像シートと、上記保護層転写シートとを重ね合わせ、サーマルヘッド等の発熱部材により上記保護層転写シートの背面側から熱を印加して、受容層上に保護層を転写することにより、形成される。
【0109】
本開示は、例えば以下の[1]~[9]に関する。
[1]裏面層と、裏面プライマー層と、基材と、受容層とをこの順に備える熱転写受像シートであって、裏面プライマー層が、顔料と、ウレタン樹脂成分を含む樹脂材料とを含有し、裏面プライマー層における顔料の含有量と樹脂材料の含有量との質量比(顔料の含有量/樹脂材料の含有量)が、1.00以上3.00以下であり、裏面プライマー層の厚さが、0.20μm以上0.90μm以下である、熱転写受像シート。
[2]裏面層の厚さが、0.05μm以上2.00μm以下である、上記[1]に記載の熱転写受像シート。
[3]ウレタン樹脂成分が、ウレタン樹脂、及びウレタン樹脂のイソシアネート系架橋剤による架橋物から選択される少なくとも1種である、上記[1]又は[2]に記載の熱転写受像シート。
[4]ウレタン樹脂が、80℃以上100℃以下の軟化点を有する、上記[3]に記載の熱転写受像シート。
[5]ウレタン樹脂が、-28℃以上5℃以下のガラス転移温度を有する、上記[3]又は[4]に記載の熱転写受像シート。
[6](1)上記[1]~[5]のいずれかに記載の熱転写受像シートを準備する工程と、(2)熱転写受像シートが備える受容層に、画像を形成する工程とを含む、印画物の製造方法。
[7](3)画像が形成された受容層上に、保護層を形成する工程をさらに含む、上記[6]に記載の印画物の製造方法。
[8]上記[1]~[5]のいずれかに記載の熱転写受像シートと、熱転写受像シートが備える受容層に形成された画像とを備える印画物。
[9]画像が形成された受容層上に、保護層をさらに備える、上記[8]に記載の印画物。
【実施例】
【0110】
以下、実施例に基づき、本開示の熱転写受像シート等をさらに詳細に説明するが、本開示の熱転写受像シート等は、これら実施例に限定されるものではない。以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0111】
[裏面プライマー層用塗工液の調製>
下記組成を有する裏面プライマー層用塗工液(1)を調製した。
・ウレタン樹脂 10.7部(固形分3.20部)
(ニッポラン(登録商標)5253、固形分率30質量%、東ソー(株))
・二酸化チタン 6.40部
(TCA-888、トーケムプロダクツ(株))
・蛍光増白剤 0.06部
(2,5-ビス(5’-t-ブチルベンゾオキサゾリル-2’)チオフェン、Doubletex OB、DOUBLE BOND CHEMICAL IND. CO., LTD.)
・ポリイソシアネート化合物 0.48部
(コロネート(登録商標)HX、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、東ソー(株))
・メチルエチルケトン 20.2部
【0112】
各成分の固形分比を表1に記載したとおりに変更したこと以外は裏面プライマー層用塗工液(1)と同様にして、裏面プライマー層用塗工液(2)~(5)を調製した。
【0113】
【0114】
[実施例1]
コート紙(製品名:NeostarGloss180、Moorim P&P Co.,Ltd.)の一方の面に、内部に空隙(ミクロボイド)を有するポリプロピレンフィルム(製品名:#35 SP-U、三井化学東セロ(株))を、下記組成の接着層用塗工液(塗工量:2.5g/m2(乾燥後))を用いて貼合し、ポリプロピレンフィルム/接着層/コート紙を得た。
【0115】
次いで、上記コート紙の他方の面に、厚さ25μmのPETフィルム(製品名:ルミラー(登録商標)T-60、東レ(株))を、下記組成の接着層用塗工液(塗工量:2.5g/m2(乾燥後))を用いて貼合し、ポリプロピレンフィルム/接着層/コート紙/接着層/PETフィルムを得た。
【0116】
次いで、ポリプロピレンフィルムの面に、下記組成のプライマー層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ1.5μmのプライマー層を形成した。プライマー層上に、下記組成の受容層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ4μmの受容層を形成した。PETフィルムの面に、上記裏面プライマー層用塗工液(1)を塗布し、100℃で1分乾燥して、厚さ0.40μmの裏面プライマー層を形成した。裏面プライマー層上に、下記組成の裏面層用塗工液を塗布し、100℃で1分乾燥して、厚さ0.19μmの裏面層を形成した。
【0117】
このようにして、熱転写受像シートを得た。熱転写受像シートは、受容層/プライマー層/ポリプロピレンフィルム/接着層/コート紙/接着層/PETフィルム/裏面プライマー層/裏面層という層構成を有する。
【0118】
<接着層用塗工液>
・ウレタン樹脂 30部
(タケラック(登録商標)A-969V、三井化学(株))
・イソシアネート 10部
(タケネート(登録商標)A-5、三井化学(株))
・酢酸エチル 60部
【0119】
<プライマー層用塗工液>
・ポリエステル 4.2部
(ニチゴーポリエスター(登録商標)WR-905、三菱ケミカル(株))
・二酸化チタン 8.4部
(TCA-888、トーケムプロダクツ(株))
・蛍光増白剤 0.07部
(ユビテックス(登録商標)BAC、BASFジャパン)
・イソプロピルアルコール 7.2部
・水 21部
【0120】
<受容層用塗工液>
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 12部
(ソルバイン(登録商標)C、日信化学工業(株))
・エポキシ変性シリコーン 0.8部
(X-22-3000T、信越化学工業(株))
・アミノ変性シリコーン 0.24部
(X-22-1660B-3、信越化学工業(株))
・トルエン 30部
・メチルエチルケトン 30部
【0121】
<裏面層用塗工液>
・ポリビニルブチラール 10部
(エスレック(登録商標)BL-7、積水化学(株))
・二酸化ケイ素 0.75部
(サイリシア380、富士シリシア化学(株))
・チタンキレート化合物 0.117部
(ATキレート剤、デンカポリマー(株))
・トルエン 40部
・メチルエチルケトン 40部
【0122】
[実施例2~8、比較例1~5]
積層基材を構成する樹脂フィルムの種類、裏面プライマー層用塗工液の種類、裏面プライマー層の厚さ及びPV比、並びに裏面層の厚さの少なくとも1つを表2に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、熱転写受像シートを作製した。
【0123】
表2に記載の基材(樹脂フィルム)は、以下のとおりである。
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム
(ルミラー(登録商標)T-60、厚さ25μm、東レ(株))
OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム
(PA30、厚さ30μm、サン・トックス(株))
【0124】
[熱転写受像シートの評価]
実施例及び比較例で作製した熱転写受像シートについて、下記評価を行った。
<耐擦過性>
JIS L0849の乾燥試験を参考に、「摩擦試験機FR-II」(スガ試験機(株)、JIS L0849規定の学振型摩擦堅ろう度試験機)を用いて、以下の測定条件により、熱転写受像シートの裏面層の耐擦過性を試験し、試験後のサンプルのキズの有無を目視で確認した。
(測定条件)
・サンプル大きさ:220mm×30mm
・荷重:200g
・摩擦子往復速度:毎分30往復
・摩擦子往復回数:20往復又は100往復
(判定基準)
・A:100往復でキズが確認されなかった。
・B:20往復ではキズが確認されなかったが、100往復でキズが確認された。
・C:20往復でキズが確認され、実使用上、問題があった。
【0125】
<重送及び裏面搬送キズ>
昇華型熱転写プリンタ(Xiaomi Inc.製、型式:Xiaomi MIJIA Photo Printer)を用いて、熱転写受像シートに黒ベタ画像を20枚印画し、印画物を得た。
【0126】
印画中の重送を下記判定基準で評価した。
(判定基準)
・〇:熱転写受像シート(印画物)が重なって搬送されることなく、良好に排出できた。
・×:熱転写受像シート(印画物)が重なって排出された。
【0127】
上記印画物の裏面層の搬送キズの有無を目視で確認した。
・〇:搬送キズが確認されなかった。
・×:搬送キズが確認された。
【0128】
<裏面筆記性>
熱転写受像シートの裏面層に水性ボールペンでの筆記を行い、1分後にベンコットンで裏面層を擦って、筆記した文字がかすれるか否かを目視で確認した。
・〇:ベンコットンで擦ったときに文字がかすれなかった。
・×:ベンコットンで擦ったときに文字がかすれた。
【0129】
<隠蔽性>
コート紙及び裏面側基材の欠点に関して、熱転写受像シートの裏面側から目視にて確認を行った。ここで上記欠点とは、コート紙及び裏面側基材の製造時に発生したと考えられる異物やフィッシュアイ等を指す。欠点が確認されない場合、裏面プライマー層による隠蔽性が高いといえる。
(判定基準)
・A:欠点は確認されなかった。
・B:欠点は確認されたが、軽度であり、実使用上問題はなかった。
・C:欠点が確認され、実使用上問題があった。
【0130】
上記の各評価の結果を表2に示す。
【0131】
【符号の説明】
【0132】
1 :熱転写受像シート
10:基材
12:裏面プライマー層
14:裏面層
16:断熱層
18:プライマー層
20:受容層
2 :印画物
22:保護層