(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20241203BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20241203BHJP
B60R 1/06 20060101ALI20241203BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20241203BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W30/09
B60R1/06 D
B60R99/00 340
B60R99/00 360
(21)【出願番号】P 2021072650
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 航太
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143247(JP,A)
【文献】特開2011-235676(JP,A)
【文献】国際公開第2021/048586(WO,A1)
【文献】実開平07-018987(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第108859974(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/06
B60W 30/09
B60R 1/06
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが車両の運転を開始する場合にオフ状態からオン状態へと変更され、前記ユーザが前記車両の運転を終了する場合に前記オン状態から前記オフ状態へと変更されるスイッチと、
前記スイッチが前記オフ状態から前記オン状態へ変更されたときに、前記車両のサイドミラーを閉状態から開状態へと自動的に遷移させる自動展開処理を実行する第1制御装置と、
前記サイドミラーを前記開状態から前記閉状態へと遷移させる所定操作が前記ユーザにより行われたか否かを示す操作情報を記憶する記憶部と、
携帯装置からの開始要求に応じて、現時点における前記車両の位置から、前記車両の出庫が完了したときの前記車両の位置である目標位置へ前記車両を移動させることが可能な経路を移動経路として演算し、
前記移動経路に従って前記車両が移動するように駐車支援制御を実行する第2制御装置と、
を備え、
前記第2制御装置は、前記駐車支援制御を開始する時点にて、
前記操作情報が、前記所定操作が行われたことを示している場合、
前記第1制御装置が前記自動展開処理を実行することを禁止する
ように構成された、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記第2制御装置は、前記駐車支援制御を開始する時点にて、
前記操作情報が、前記所定操作が行われたことを示している場合、
前記車両が前進又は後進のみをするように前記移動経路を演算する
ように構成された、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記第2制御装置は、前記駐車支援制御を開始する時点にて、
前記操作情報が、前記所定操作が行われたことを示している場合、
前記駐車支援制御の実行中の前記車両の舵角の大きさが所定の舵角閾値以下となるように前記移動経路を演算する
ように構成された、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記第2制御装置は、前記駐車支援制御を終了した後に、前記第1制御装置に前記自動展開処理を実行させるように構成された、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援制御を実行する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の周辺状況に応じて設定された目標領域に車両が移動するように駐車支援制御を実行する車両制御装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
更に、運転者が車両から降りた状態で駐車支援制御を実行する車両制御システム(以下、「従来システム」と称呼する。)も提案されている。このような制御は「リモート駐車支援制御」とも称呼される。リモート駐車支援制御は、複数のモードを含み、例えば、駐車モード及び出庫モードを含む。駐車モードは、車両を駐車するためのモードである。出庫モードは、駐車された車両を出庫する(走行路へと移動させる)ためのモードである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
ところで、駐車された車両(自車両)と、当該自車両の周辺に存在する物体(他車両及び壁等)との間の間隔が小さい場合がある。従来システムが、出庫モードによるリモート駐車支援制御を実行すると仮定する。従来システムは、まず、エンジンスタートスイッチ(イグニッションスイッチ)をオン状態に変更し、これにより、車両の駆動源(内燃機関)を起動する。エンジンスタートスイッチがオン状態に変更されると、車両のサイドミラーが自動的に閉状態から開状態になる。この状態で車両が走行路へ移動しようとすると、サイドミラーが物体と接触する虞がある。更に、リモート駐車支援制御においては、運転者が車両から降車しているので、運転者が所定のスイッチを操作して、サイドミラーを閉状態に戻すこともできない。
【0006】
本発明の目的の一つは、出庫モードによるリモート駐車支援制御を実行する際に、サイドミラーが物体と接触する可能性を低減できる技術を提供することである。
【0007】
1つ以上の実施形態における車両制御装置は、
ユーザが車両(VA)の運転を開始する場合にオフ状態からオン状態へと変更され、前記ユーザが前記車両の運転を終了する場合に前記オン状態から前記オフ状態へと変更されるスイッチ(24)と、
前記スイッチが前記オフ状態から前記オン状態へ変更されたときに、前記車両のサイドミラー(61L、61R)を閉状態から開状態へと自動的に遷移させる自動展開処理を実行する第1制御装置(60)と、
前記サイドミラーを前記開状態から前記閉状態へと遷移させる所定操作(62)が前記ユーザにより行われたか否かを示す操作情報(Xa)を記憶する記憶部(10e)と、
携帯装置(110)からの開始要求に応じて、現時点における前記車両の位置から、前記車両の出庫が完了したときの前記車両の位置である目標位置へ前記車両を移動させることが可能な経路を移動経路(MP)として演算し、
前記移動経路に従って前記車両が移動するように駐車支援制御を実行する第2制御装置(10)と、
を備える。
前記第2制御装置は、前記駐車支援制御を開始する時点にて、
前記操作情報が、前記所定操作が行われたことを示している場合、
前記第1制御装置が前記自動展開処理を実行することを禁止する
ように構成されている。
【0008】
上記の構成によれば、以下の効果を奏する。ユーザが、車両が駐車された時点にて所定操作を行って、サイドミラーを開状態から閉状態へと遷移させたと仮定する。運転者が携帯装置を操作して開始要求を第2制御装置に送信する。この場合、第2制御装置は、第1制御装置が自動展開処理を実行することを禁止する。従って、サイドミラーが閉状態のままで車両が移動経路に沿って移動する。これにより、サイドミラーが物体(他車両及び壁等)と接触する可能性を低減できる。
【0009】
1つ以上の実施形態において、前記第2制御装置は、前記駐車支援制御を開始する時点にて、
前記操作情報が、前記所定操作が行われたことを示している場合、
前記車両が前進又は後進のみをするように前記移動経路を演算する
ように構成されている。
【0010】
上記の構成によれば、駐車支援制御の実行中において車両が旋回しない。従って、サイドミラーが物体(他車両及び壁等)と接触する可能性を更に低減できる。
【0011】
1つ以上の実施形態において、前記第2制御装置は、前記駐車支援制御を開始する時点にて、
前記操作情報が、前記所定操作が行われたことを示している場合、
前記駐車支援制御の実行中の前記車両の舵角の大きさが所定の舵角閾値以下となるように前記移動経路を演算する
ように構成されている。
【0012】
上記の構成によれば、駐車支援制御の実行中において車両の旋回度合が小さくなる。従って、サイドミラーが物体(他車両及び壁等)と接触する可能性を更に低減できる。
【0013】
1つ以上の実施形態において、前記第2制御装置は、前記駐車支援制御を終了した後に、前記第1制御装置に前記自動展開処理を実行させるように構成されている。
【0014】
上記の構成によれば、車両の出庫が完了した後に自動展開処理が実行されるので、サイドミラーが物体(他車両及び壁等)と接触することがない。更に、運転者が、車両に乗車して車両の運転を開始する際に、サイドミラーの状態を閉状態から開状態に遷移させる必要がない。運転者の手間がかからないので、利便性を向上させることができる。
【0015】
一以上の実施形態において、上記の第1制御装置及び第2制御装置は、それぞれ、本明細書に記述される1以上の機能を実行するためにプログラムされたマイクロプロセッサにより実施されてもよい。一以上の実施形態において、上記の第1制御装置及び第2制御装置は、それぞれ、1以上のアプリケーションに特化された集積回路、即ち、ASIC等により構成されたハードウェアによって、全体的に或いは部分的に実施されてもよい。上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両制御システムの概略構成図である。
【
図2】出庫モードによる駐車支援制御が実行される状況の一例である。
【
図3】出庫モードによる駐車支援制御が実行される状況の一例である。
【
図4】駐車支援ECUが実行する「出庫モード実行ルーチン」を示したフローチャートである。
【
図5】出庫モードによる駐車支援制御が実行される状況の一例である。
【
図6】出庫モードによる駐車支援制御が実行される状況の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<構成>
図1に示したように、本実施形態に係る車両制御システムは、車両VAに搭載(適用)された車両制御装置100と、携帯装置110とを含む。
【0018】
車両制御装置100は、駐車支援ECU10、エンジンECU20、ブレーキECU30、SBW(Shift-by-Wire)・ECU40、電動パワーステアリングECU(以下、「EPS・ECU」と称呼する。)50、及び、ボデーECU60を備えている。これらのECUは、CAN(Controller Area Network)90を介して互いにデータを送受信可能となるように接続されている。
【0019】
ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM、インターフェース及び不揮発性メモリ等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。CPUはROMに格納されたインストラクション(ルーチン、プログラム)を実行することにより各種機能を実現する。例えば、駐車支援ECU10は、CPU10a、ROM10b、RAM10c、インターフェース(I/F)10d及び不揮発性メモリ10e等を含むマイクロコンピュータを備える。
【0020】
エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21に接続されている。エンジンアクチュエータ21は、内燃機関22のスロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含む。エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を駆動することによって、内燃機関22が発生するトルクを変更することができる。内燃機関22が発生するトルクは、トランスミッション23及び駆動力伝達機構を介して駆動輪に伝達される。従って、エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を制御することによって、車両VAの駆動力を制御することができる。
【0021】
なお、内燃機関22の状態は、エンジンスタートスイッチ24に対する操作に応じて変更される。エンジンスタートスイッチ24は、「イグニッションスイッチ(IGスイッチ)」又は「車両起動スイッチ」等と称呼される場合がある。以降において、エンジンスタートスイッチ24は、単に「スタートスイッチ24」と称呼される。
【0022】
スタートスイッチ24は、運転者(ユーザ)が車両VAの運転を開始又は終了する場合に運転者によって操作されるスイッチである。スタートスイッチ24が押下される度に、スタートスイッチ24の状態がオン状態とオフ状態との間で交互に入れ替わる。スタートスイッチ24の状態に従って、車両VAの駆動源(この例では、内燃機関22)の状態が変更される。運転者は、車両VAの運転を開始する際にスタートスイッチ24を押下して、スタートスイッチ24の状態をオフ状態からオン状態に変更する。これにより、内燃機関22が始動する。運転者は、車両VAの運転を終了する際にスタートスイッチ24を押下して、スタートスイッチ24の状態をオン状態からオフ状態に変更する。これにより、内燃機関22が停止する。
【0023】
なお、車両VAが、ハイブリッド車両である場合、エンジンECU20は、駆動源としての「内燃機関及び電動機」の何れか一方又は両方によって発生する駆動力を制御することができる。更に、車両VAが電気自動車である場合、エンジンECU20は、駆動源としての電動機によって発生する駆動力を制御することができる。
【0024】
車両VAが、ハイブリッド車両又は電気自動車である場合、スタートスイッチ24の状態がオン状態になると、車両に搭載されたバッテリと電動機とを接続する配線が遮断状態から接続状態に変更される。これにより、駆動源としての電動機が始動する。一方、スタートスイッチ24の状態がオフ状態になると、上記配線が接続状態から遮断状態に変更される。これにより、電動機が停止する。
【0025】
ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31に接続されている。ブレーキアクチュエータ31は、公知の油圧回路を含む。油圧回路は、リザーバ、オイルポンプ及び種々の弁装置等を含む。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキECU30からの指示に応じてホイールシリンダ32に供給する油圧(即ち、制動圧)を調整する。制動圧に応じて車輪に発生する摩擦制動力が変化する。従って、ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31を制御することによって、車両VAの制動力を制御することができる。
【0026】
SBW・ECU40は、SBWアクチュエータ41に接続されている。SBW・ECU40は、図示しないシフトレバー位置に基づいてSBWアクチュエータ41を制御するようになっている。SBWアクチュエータ41は、SBW・ECU40からの指示に応じてシフト切替機構42を制御して、トランスミッション23のシフト位置を、複数のシフト位置のうちの一つへと切り替える。
【0027】
本例において、シフト位置は、駆動輪に駆動力が伝達されず且つ車両VAが機械的に停止位置にロックされる位置である駐車位置、駆動輪に駆動力が伝達されず且つ車両VAが機械的に停止位置にロックされないニュートラル位置、駆動輪に車両VAを前進させる駆動力が伝達される位置である前進位置、及び、駆動輪に車両VAを後進させる駆動力が伝達される位置である後進位置を少なくとも含む。
【0028】
EPS・ECU50は、アシストモータ(M)51に接続されている。アシストモータ51は、ステアリング機構52に組み込まれている。ステアリング機構52は、操舵ハンドルSWの回転操作により操舵輪を転舵するための機構である。ステアリング機構52は、操舵ハンドルSW、操舵ハンドルSWに連結されたステアリングシャフトUS、及び、図示しない操舵用ギア機構等を含む。EPS・ECU50は、ステアリングシャフトUSに設けられた図示しない操舵トルクセンサによって、運転者が操舵ハンドルSWに入力した操舵トルクを検出し、この操舵トルクに基づいてアシストモータ51を駆動する。EPS・ECU50は、このアシストモータ51の駆動によってステアリング機構52に操舵トルク(操舵アシストトルク)を付与し、これにより、運転者の操舵操作をアシストすることができる。
【0029】
加えて、EPS・ECU50は、以降で説明する駐車支援制御の実行中に駐車支援ECU10から操舵指令を受信した場合には、操舵指令で特定される操舵トルクに基づいてアシストモータ51を駆動する。この操舵トルクは、上述した操舵アシストトルクとは異なり、運転者の操舵操作を必要とせずに、駐車支援ECU10からの操舵指令によってステアリング機構52に付与されるトルクを表す。このトルクにより、車両VAの操舵輪の舵角(即ち、操舵角)が変更される。
【0030】
ボデーECU60は、車両VAの左右のサイドミラー61L及び61R、並びに、サイドミラースイッチ62に接続されている。サイドミラースイッチ62は、運転席の近傍(例えば、運転席のドアの内側)に設けられている。サイドミラースイッチ62は、サイドミラー61L及び61Rの状態を開状態と閉状態との間で遷移させる(切替える)ためのスイッチである。「開状態」は、サイドミラーの鏡面が車体の側面に対して起立し且つ車両VAの後方に向く状態であり、「展開状態」と称呼される場合もある。サイドミラー61L及び61Rの状態が開状態である場合、運転者は、サイドミラー61L及び61Rによって車両VAの後方の状況を確認することができる。「閉状態」は、サイドミラーの鏡面が車体の側面に対して略平行になり且つ車両VAの車体側に向いた状態であり、「格納状態」と称呼される場合もある。サイドミラー61L及び61Rの状態が閉状態である場合、サイドミラー61L及び61Rが車体の側面に対して起立していないので、サイドミラー61L及び61Rが、物体(他車両及び壁等)と接触する可能性を低減することができる。
【0031】
サイドミラー61L及び61Rの状態が開状態である状況において、運転者がサイドミラースイッチ62を押下すると、サイドミラー61L及び61Rの状態が開状態から閉状態へ遷移する。一方、サイドミラー61L及び61Rの状態が閉状態である状況において、運転者がサイドミラースイッチ62を押下すると、サイドミラー61L及び61Rの状態が閉状態から開状態へ遷移する。
【0032】
なお、スタートスイッチ24の状態がオフ状態からオン状態へと変更された(即ち、内燃機関22が始動する)ときに、ボデーECU60は、サイドミラー61L及び61Rの状態を閉状態からと開状態へと自動的に遷移させるようになっている。このような処理は、以降において、「サイドミラーの自動展開処理」と称呼される。
【0033】
駐車支援ECU10は、周囲センサ70に接続されている。周囲センサ70は、車両周辺情報を取得するようになっている。車両周辺情報は、車両VAの周囲に存在する物体についての情報、及び、車両VAの周囲の路面上の区画線についての情報を含む。物体は、例えば、自動車、歩行者及び自転車などの移動物、並びに、ガードレール及びフェンスなどの固定物を含む。例えば、周囲センサ70は、複数の超音波センサ71及び複数のカメラ72を含む。
【0034】
超音波センサ71は、超音波をパルス状に車両VAの周囲の所定の範囲に送信し、物体によって反射された反射波を受信する。超音波センサ71は、超音波の送信から受信までの時間に基づいて、「送信した超音波が反射された物体上の点である反射点」及び「超音波センサと物体との間の距離」等を検出することができる。
【0035】
カメラ72は、例えば、CCD(charge coupled device)或いはCIS(CMOS image sensor)の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。カメラ72は、車両VAの周辺状況(物体の位置及び形状、並びに、区画線の位置及び形状を含む。)の画像データを取得し、当該画像データを駐車支援ECU10に出力するようになっている。
【0036】
駐車支援ECU10は、所定時間dTが経過するたびに、周囲センサ70から車両周辺情報を受信する。駐車支援ECU10は、車両周辺情報に基づいて、車両VAの周囲の領域であって、「物体が存在しない領域」を検出する。駐車支援ECU10は、物体が存在しない領域が、車両VAが余裕をもって出庫(或いは駐車)することが可能な大きさ及び形状を有する領域である場合、その領域を「出庫可能領域(或いは駐車可能領域)」として決定する。
【0037】
更に、駐車支援ECU10は、通信ユニット80に接続されている。通信ユニット80は、図示しない「アンテナ部及び通信処理部」を備える。通信ユニット80は、無線通信を通して携帯装置110と相互に情報を送信及び受信可能に構成されている。携帯装置110は、運転者によって操作される携帯端末であり、例えば、スマートフォンである。携帯装置110は、運転者によって携帯される限り、他の装置(例えば、タブレット端末)であってもよい。携帯装置110は、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含む。
【0038】
携帯装置110には、駐車支援制御用のアプリケーション(以下、「駐車アプリケーション」と称呼する。)がインストールされている。駐車支援制御は、車両VAの周辺状況に応じて設定された目標領域に車両VAを自動的に移動させる周知の制御である。運転者が駐車アプリケーション上において所定の操作を行うと、携帯装置110は、駐車支援制御の開始を指示する信号(以下、「開始要求」と称呼する。)を通信ユニット80に送信する。なお、開始要求は、支援モードに関する情報を含む。支援モードは、駐車モード及び出庫モードを含む。駐車モードは、車両VAを駐車するためのモードである。出庫モードは、駐車された車両VAを出庫する(走行路へと移動させる)ためのモードである。なお、駐車モードは、本実施形態に係る車両制御装置とは直接関係しないため、以降において駐車モードについての記載は省略される。駐車支援ECU10は、携帯装置110から通信ユニット80を介して開始要求を受け取ると、開始要求に含まれる支援モード(本例では、出庫モード)に従って、駐車支援制御を開始する。
【0039】
<出庫モードによる駐車支援制御の内容>
駐車支援ECU10は、開始要求を受け取ると、スタートスイッチ24の状態をオフ状態からオン状態へと変更する。これにより、内燃機関22が始動する。
【0040】
次に、駐車支援ECU10は、車両VAが出庫可能領域に移動したと仮定した場合に車両VAの車体が占有する領域を「目標領域」として決定する。更に、駐車支援ECU10は、車両VAの目標領域への移動が完了した(即ち、車両VAの出庫が完了した)ときの車両VAの位置を、目標位置として設定する。ここでの目標位置とは、車両VAの平面視における中心位置が到達すべき位置である。
【0041】
駐車支援ECU10は、車両VAを現在位置から目標位置にまで移動させる移動経路MPを演算する。移動経路MPは、車両VAの車体が物体(他車両、縁石及びガードレール等)に対して所定の間隔以上をあけながら車両VAが現在位置から目標位置まで移動することができる経路である。なお、駐車支援ECU10は、様々な既知の演算方法の一つ(例えば、特開2015-3565号公報に提案されている方法)に従って、移動経路MPを演算する。
【0042】
次に、駐車支援ECU10は、移動経路MPに沿って車両VAを移動させるための移動支援情報を決定する。移動支援情報は、車両VAの移動方向(具体的には、トランスミッション23のシフト位置)、舵角パターン、及び、速度パターンを含む。
【0043】
駐車支援ECU10は、決定されたシフト位置に応じて、CAN90を介してSBW・ECU40に対してシフト制御指令を送信する。SBW・ECU40は、駐車支援ECU10からシフト制御指令を受信した場合には、SBWアクチュエータ41を駆動して、トランスミッション23のシフト位置をシフト制御指令で特定される位置に変更する(即ち、シフト制御を実行する。)。
【0044】
舵角パターンは、移動経路MP上の車両VAの位置と操舵輪の舵角とを関連付けたデータであり、車両VAが移動経路MPを走行する際の舵角の変化を表す。駐車支援ECU10は、舵角パターンに従って、CAN90を介してEPS・ECU50に対して操舵指令(目標舵角を含む)を送信する。EPS・ECU50は、駐車支援ECU10から操舵指令を受信した場合には、操舵指令で特定される操舵トルクに基づいてアシストモータ51を駆動して実際の舵角を目標舵角に一致させる(即ち、舵角制御を実行する。)。
【0045】
速度パターンは、移動経路MP上の車両VAの位置と車両VAの目標速度とを関連付けたデータであり、車両VAが移動経路MPを走行する際の車両VAの速度の変化を表す。駐車支援ECU10は、速度パターンに従って、CAN90を介してエンジンECU20に対して駆動力制御指令を送信する。エンジンECU20は、駐車支援ECU10から駆動力制御指令を受信した場合には、駆動力制御指令に応じてエンジンアクチュエータ21を制御する(即ち、駆動力制御を実行する)。更に、駐車支援ECU10は、速度パターンに従って、CAN90を介してブレーキECU30に対して制動力制御指令を送信する。ブレーキECU30は、駐車支援ECU10から制動力制御指令を受信した場合には、制動力制御指令に応じてブレーキアクチュエータ31を制御する(即ち、制動力制御を実行する)。
【0046】
以上のように、駐車支援ECU10は、運転者が車両VAから降りた状態で、車両VAを現在位置から目標位置にまで移動させる駐車支援制御(リモート駐車支援制御)を実行できるようになっている。
【0047】
<作動の概要>
駐車された車両VAと、車両VAの周辺に存在する物体(他車両及び壁等)との間の間隔が小さい場合がある。この状況において、多くの場合、運転者は、車両VAを駐車した時点にて、サイドミラースイッチ62を操作してサイドミラー61L及び61Rを開状態から閉状態へと遷移させる。その後、運転者が携帯装置110を操作して、車両制御装置100に出庫モードによる駐車支援制御を実行させると仮定する。スタートスイッチ24がオン状態に変更されると、サイドミラーの自動展開処理が実行される。サイドミラー61L及び61Rが開状態のままで車両VAが走行路へ移動しようとすると、サイドミラー61L及び61Rが物体(他車両及び壁等)と接触する虞がある。
【0048】
そこで、本実施形態における駐車支援ECU10は、サイドミラースイッチ62に関する操作情報(本例では、操作フラグXa)を不揮発性メモリ10eに記憶する。操作フラグXaは、サイドミラー61L及び61Rを開状態から閉状態へと遷移させる操作(サイドミラースイッチ62に対する操作)が運転者により行われたか否かを示すフラグである。操作フラグXaの値が「1」であるとき、これは、サイドミラー61L及び61Rが閉状態であることを示し、より具体的には、サイドミラー61L及び61Rを開状態から閉状態へと遷移させる操作(サイドミラースイッチ62に対する操作)が運転者により行われたことを示す。操作フラグXaの値が「0」であるとき、これは、サイドミラー61L及び61Rが開状態であることを示す。
【0049】
ボデーECU60は、サイドミラースイッチ62に対する操作を検出すると、その情報をCAN90を介して駐車支援ECU10に送信する。駐車支援ECU10は、サイドミラースイッチ62に対する操作に応じて、不揮発性メモリ10eにおける操作フラグXaの値を変更する。
【0050】
サイドミラー61L及び61Rを開状態から閉状態へと遷移させる操作が運転者により行われると、駐車支援ECU10は、操作フラグXaを「1」に設定する。
【0051】
一方、サイドミラー61L及び61Rを閉状態から開状態へと遷移させる操作が運転者により行われると、駐車支援ECU10は、操作フラグXaを「0」に設定する。なお、サイドミラーの自動展開処理が実行された場合においても、駐車支援ECU10は、操作フラグXaを「0」に設定する。
【0052】
駐車支援ECU10は、出庫モードによる駐車支援制御を開始する時点にて、不揮発性メモリ10eにおける操作フラグXaの値を参照する。操作フラグXaの値が「1」である場合、これは、車両VAが駐車された時点にてサイドミラー61L及び61Rを開状態から閉状態へと遷移させる操作が運転者により行われたことを示している。運転者が意図的にサイドミラー61L及び61Rを開状態から閉状態へと遷移させているので、駐車された車両VAと、車両VAの周辺に存在する物体との間の間隔が小さい可能性が高い。従って、出庫モードによる駐車支援制御を開始する時点にて操作フラグXaの値が「1」である場合、駐車支援ECU10は、ボデーECU60がサイドミラーの自動展開処理を実行するのを禁止する。
【0053】
図2の例において、車両VAが第1他車両OV1及び第2他車両OV2の間に駐車されている。車両VAと第1他車両OV1との間の間隔、及び、車両VAと第2他車両OV2との間の間隔が小さい。運転者は、車両VAが駐車された時点にてサイドミラースイッチ62を操作して、サイドミラー61L及び61Rを開状態から閉状態へと遷移させる。従って、駐車支援ECU10は、操作フラグXaを「1」に設定する。その後、運転者が携帯装置110を操作して、車両制御装置100に出庫モードによる駐車支援制御を実行させる。この場合、操作フラグXaの値が「1」であるので、駐車支援ECU10は、ボデーECU60がサイドミラーの自動展開処理を実行するのを禁止する。駐車支援ECU10は、サイドミラー61L及び61Rが閉状態のままで移動経路MPに沿って車両VAを移動させる。この構成によれば、サイドミラー61L及び61Rが他車両OV1及びOV2と接触する可能性を低減できる。
【0054】
図3の例において、車両VAが第3他車両OV3に隣接して駐車されている。車両VAと第3他車両OV3との間の間隔が比較的大きく、従って、運転者は、車両VAが駐車された時点にてサイドミラースイッチ62を操作しない。サイドミラー61L及び61Rが開状態のままである。従って、操作フラグXaは「0」である。運転者が携帯装置110を操作して、車両制御装置100に出庫モードによる駐車支援制御を実行させる。この場合、駐車支援ECU10は、サイドミラー61L及び61Rが開状態のままで移動経路MPに沿って車両VAを移動させる。
【0055】
<作動>
次に、駐車支援ECU10のCPU10a(単に「CPU」と称呼する。)の作動について説明する。CPUは、所定時間dTが経過する毎に、
図4にフローチャートにより示した「出庫モード実行ルーチン」を実行するようになっている。
【0056】
なお、CPUは、図示しないルーチンを所定時間dTが経過する毎に実行することにより、周囲センサ70から車両周辺情報を取得している。
【0057】
所定のタイミングになると、CPUは、
図4のステップ400から処理を開始してステップ401に進み、実行フラグXbの値が「0」であるか否かを判定する。実行フラグXbの値が「0」であるとき、これは、出庫モードによる駐車支援制御が実行されていないことを示す。実行フラグXbの値が「1」であるとき、これは、出庫モードによる駐車支援制御が実行されていることを示す。なお、実行フラグXbの値は、車両VAが駐車された後にスタートスイッチ24の状態がオン状態からオフ状態へと変更された時点にて、「0」に設定されている。
【0058】
いま、車両VAが駐車されており、実行フラグXbの値が「0」であると仮定する。CPUはステップ401にて「Yes」と判定してステップ402に進み、携帯装置110から開始要求を受信したか否かを判定する。開始要求が受信されていない場合、CPUはステップ402にて「No」と判定してステップ495に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0059】
いま、開始要求が受信されたと仮定すると、CPUはステップ402にて「Yes」と判定してステップ403に進み、所定の実行条件が成立するか否かを判定する。実行条件は、以下の条件A1及び条件A2の両方が成立したときに成立する。以下の条件A1及び条件A2は一例であり、実行条件は、他の条件を更に含んでもよい。
(条件A1)シフトレバーの位置が駐車位置(P)である。
(条件A2)CPUは、車両周辺情報に基づいて、車両VAが移動することができる出庫可能領域を検出している。
【0060】
実行条件が成立しない場合、CPUは、ステップ403にて「No」と判定してステップ495に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、CPUは、携帯装置110に対して表示指令を送信してもよい。携帯装置110は、表示指令を受信すると、出庫モードによる駐車支援制御が実行できない旨を駐車アプリケーション上にて表示する。
【0061】
これに対し、実行条件が成立している場合、CPUはステップ403にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ404及びステップ405の処理を順に行う。その後、CPUはステップ406に進む。
【0062】
ステップ404:CPUは、スタートスイッチ24の状態をオン状態に変更する。これにより、内燃機関22が始動する。
ステップ405:CPUは、実行フラグXbの値を「1」に設定する。
【0063】
次に、CPUは、ステップ406にて、操作フラグXaの値が「1」であるか否かを判定する。操作フラグXaの値が「1」である場合、CPUは、以下に述べるステップ407乃至ステップ410の処理を順に行う。その後、CPUはステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0064】
ステップ407:CPUは、ボデーECU60がサイドミラーの自動展開処理を実行するのを禁止する。
ステップ408:CPUは、出庫可能領域に対して車両VAを移動させた場合に車両VAの車体が占有する領域を目標領域として決定する。CPUは、目標領域内に目標位置を設定する。そして、CPUは、車両VAを現在位置から目標位置まで移動させる移動経路MPを演算する。
ステップ409:CPUは、移動経路MPに沿って車両VAを移動させるための移動支援情報(具体的には、トランスミッション23のシフト位置、舵角パターン及び速度パターン)を決定する。
ステップ410:CPUは、出庫モードによる駐車支援制御を実行する。具体的には、CPUは、決定されたシフト位置に従ってSBW・ECU40にシフト制御指令を送信することにより、シフト制御を実行する。CPUは、舵角パターンに従ってEPS・ECU50に操舵指令を送信することにより、舵角制御を実行する。CPUは、速度パターンに従ってエンジンECU20に対して駆動力制御指令を送信することにより、駆動力制御を実行する。更に、CPUは、速度パターンに従ってブレーキECU30に対して制動力制御指令を送信することにより、制動力制御を実行する。
従って、サイドミラー61L及び61Rが閉状態のままで車両VAが移動経路MPに沿って移動する。
【0065】
これに対し、ステップ406にて操作フラグXaの値が「1」でない場合、CPUは、そのステップ406にて「No」と判定して、上述したステップ408乃至ステップ410の処理を実行する。従って、サイドミラー61L及び61Rが開状態のままで車両VAが移動経路MPに沿って移動する。
【0066】
CPUが、出庫モードによる駐車支援制御を開始した後に、
図4のルーチンを再び開始する。CPUがステップ401に進むと、CPUは、「No」と判定してステップ411に進む。CPUは、所定の終了条件が成立したか否かを判定する。終了条件は、車両VAが目標位置に到達したときに成立する。終了条件が成立しない場合、CPUは、ステップ411にて「No」と判定して、ステップ410の処理を前述のように実行する。即ち、CPUは、駐車支援制御を継続する。その後、CPUは、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0067】
一方で、CPUがステップ411に進んだ時点にて終了条件が成立する場合、CPUは、ステップ411にて「Yes」と判定して以下に述べるステップ412及びステップ413の処理を順に行う。その後、CPUはステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0068】
ステップ412:CPUは、所定の終了処理を実行する。具体的には、CPUは、制動力制御により車両VAを目標位置に停止させる。更に、CPUは、携帯装置110に対して表示指令を送信する。携帯装置110は、表示指令を受信すると、出庫モードによる駐車支援制御が終了した旨を駐車アプリケーション上にて表示する。
ステップ413:CPUは、実行フラグXbの値を「0」に設定する。
【0069】
以上の構成は、以下の効果を奏する。運転者が、車両VAが駐車された時点にてサイドミラースイッチ62を操作して、サイドミラー61L及び61Rを開状態から閉状態へと遷移させたと仮定する。運転者が携帯装置110を操作して、車両制御装置100に出庫モードによる駐車支援制御を実行させる。この場合、サイドミラーの自動展開処理が禁止される。これにより、サイドミラー61L及び61Rが閉状態のままで車両VAが移動経路MPに沿って移動する。サイドミラー61L及び61Rが物体(他車両及び壁等)と接触する可能性を低減できる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0071】
(変形例1)
図5は、
図2と同じ状況を示す。操作フラグXaの値が「1」である場合、CPUは、ステップ408にて、以下のように移動経路MPを演算してもよい。CPUは、車両VAが前進又は後進のみをするように移動経路MPを演算してもよい。この構成によれば、駐車支援制御の実行中において車両VAが旋回しない。従って、サイドミラー61L及び61Rが他車両OV1及びOV2と接触する可能性を更に低減できる。
【0072】
(変形例2)
図6は、
図2と同じ状況を示す。操作フラグXaの値が「1」である場合、CPUは、ステップ408にて、以下のように移動経路MPを演算してもよい。CPUは、駐車支援制御の実行中の車両VAの舵角の大きさ(絶対値)が所定の舵角閾値θth以下となるように移動経路MPを演算してもよい。この構成によれば、駐車支援制御の実行中において車両VAの旋回度合が小さくなる。サイドミラー61L及び61Rが他車両OV1及びOV2と接触する可能性を更に低減できる。
【0073】
(変形例3)
CPUは、ステップ412にて、以下の処理を更に実行してもよい。CPUは、ボデーECU60にサイドミラーの自動展開処理を実行させる。この構成によれば、駐車支援制御が終了された(即ち、車両VAの出庫が完了した)後に、サイドミラーの自動展開処理が実行される。サイドミラー61L及び61Rが物体(他車両及び壁等)と接触することがない。更に、運転者が、車両VAに乗車して車両VAの運転を開始する際にサイドミラースイッチ62を操作する必要がない。運転者の手間がかからないので、利便性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0074】
10…駐車支援ECU、20…エンジンECU、30…ブレーキECU、40…SBW・ECU、50…EPS・ECU、60…ボデーECU、61L及び61R…サイドミラー、62…サイドミラースイッチ、70…周囲センサ、80…通信ユニット、100…車両制御装置、110…携帯装置。