(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】熱交換器及びウエハ保持部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241203BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20241203BHJP
F28D 17/02 20060101ALI20241203BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20241203BHJP
F28F 21/04 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/66 B
F28D17/02
F28F21/08 A
F28F21/08 E
F28F21/04
(21)【出願番号】P 2021075439
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】先田 成伸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮成
(72)【発明者】
【氏名】北林 桂児
(72)【発明者】
【氏名】木村 功一
(72)【発明者】
【氏名】板倉 克裕
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-355072(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189197(WO,A1)
【文献】特開平02-043937(JP,A)
【文献】特開平08-165571(JP,A)
【文献】国際公開第2020/217800(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/66
F28D 17/02
F28F 21/08
F28F 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が載置される筐体と、複数の熱伝導部材とを備え、
前記筐体は、
前記複数の熱伝導部材が充填された内部空間と、
前記内部空間につながる冷媒の入口と、
前記内部空間につながる前記冷媒の出口とを備え、
さらに、
前記内部空間を構成する前記筐体の内面と前記複数の熱伝導部材の少なくとも一部との間に設けられた第一の伝熱経路と、
隣り合う熱伝導部材同士の接触点で構成された第二の伝熱経路と、
前記内部空間内で前記冷媒の流路となる隙間とを備
え、
前記入口及び前記出口は、前記複数の熱伝導部材が通過しない開口サイズのメッシュ材を備える、
熱交換器。
【請求項2】
対象物が載置される筐体と、複数の熱伝導部材とを備え、
前記筐体は、
前記対象物が載置される蓋部と、
底部と、
前記蓋部及び前記底部をつなぐ側部と、
前記複数の熱伝導部材が充填された内部空間と、
前記内部空間につながる冷媒の入口と、
前記内部空間につながる前記冷媒の出口とを備え、
さらに、
前記内部空間を構成する前記筐体の内面と前記複数の熱伝導部材の少なくとも一部との間に設けられた第一の伝熱経路と、
隣り合う熱伝導部材同士の接触点で構成された第二の伝熱経路と、
前記内部空間内で前記冷媒の流路となる隙間とを備
え、
前記蓋部と前記複数の熱伝導部材との間及び前記底部と前記複数の熱伝導部材との間の少なくとも一方に配置されるクッション材を備える、
熱交換器。
【請求項3】
対象物が載置される筐体と、複数の熱伝導部材とを備え、
前記筐体は、
前記複数の熱伝導部材が充填された内部空間と、
前記内部空間につながる冷媒の入口と、
前記内部空間につながる前記冷媒の出口とを備え、
さらに、
前記内部空間を構成する前記筐体の内面と前記複数の熱伝導部材の少なくとも一部との間に設けられた第一の伝熱経路と、
隣り合う熱伝導部材同士の接触点で構成された第二の伝熱経路と、
前記内部空間内で前記冷媒の流路となる隙間とを備
え、
前記複数の熱伝導部材の各々は球体であり、
前記複数の熱伝導部材は、相対的に直径が大きい第一の球体と、相対的に直径が小さい第二の球体とを含み、
前記第二の球体は、前記第一の球体同士が接することで構成される前記隙間に充填されている、
熱交換器。
【請求項4】
前記入口及び前記出口は、前記複数の熱伝導部材が通過しない開口サイズのメッシュ材を備える請求項2又は請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記複数の熱伝導部材の各々は球体であり、
前記複数の熱伝導部材は、相対的に直径が大きい第一の球体と、相対的に直径が小さい第二の球体とを含み、
前記第二の球体は、前記第一の球体同士が接することで構成される前記隙間に充填されている請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第二の伝熱経路は、前記複数の熱伝導部材の少なくとも一部が互いに接合して構成されている請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記第一の伝熱経路は、前記複数の熱伝導部材の少なくとも一部と前記筐体の内面とが接合されて構成されている請求項1
から請求項6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記内部空間は前記入口と前記出口とをつなぐ管状の空間である請求項1から
請求項7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記筐体は、
前記対象物が載置される蓋部と、
底部と、
前記蓋部及び前記底部をつなぐ側部とを有し、
前記内部空間は、前記蓋部、前記底部及び前記側部に囲まれる単一の空間であり、
前記内部空間の断面積は前記入口及び前記出口の断面積よりも大きい請求項1から
請求項8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記蓋部と前記底部との間に設けられた複数の支持体を備える
請求項2又は請求項9に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記複数の熱伝導部材の熱伝導率は、100W/m・K以上である請求項1から
請求項10のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記複数の熱伝導部材の材質は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、炭化ケイ素、及び窒化アルミニウムのいずれかである請求項1から
請求項11のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の熱交換器を備える、
ウエハ保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器及びウエハ保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板載置台を備えるプローバを開示する。プローバは、回路が形成された半導体のウエハを個々のチップに切断する前に、基板載置台に載置されたウエハを所定の温度に制御して、各チップの電気性能を測定する検査装置である。この電気性能の測定により、不良品のチップを検出する。検査時、ウエハはチップの実装環境を再現するためにヒータで加熱されたり、熱交換器を用いて冷却されたりする。加熱後のウエハは熱交換器を用いて速やかに冷却される。
【0003】
特許文献1に開示される基板載置台は、円板形状の基材上に筒状の支持部で支持されたチャックトップを備える。チャックトップの外周には、冷媒の入口と出口が設けられている。チャックトップの内部には、入口につながる冷媒の往路と、出口につながる冷媒の復路とが設けられている。往路は、チャックトップの外周から内周に向かって延びる渦巻き状の流路である。復路は、チャックトップの内周から外周に向かって延びる渦巻き状の流路である。このようなチャックトップは熱交換器として機能する。即ち、流路に冷媒を循環させることで、チャックトップに載置されたウエハは冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より効率的な熱交換が可能な熱交換器が望まれている。
【0006】
特許文献1に記載の熱交換器では、渦巻き状の流路に冷媒を流通させることで冷媒とチャックトップとの接触面積を確保し、ウエハを冷却することができる。しかし、検査時間の短縮などを考慮すると、より一層効率的な熱交換が望まれる。一方で、冷媒と流路の内面との接触面積を増やすべく、流路の長大化や流路形状の複雑化を実現するには、微細で高精度の加工が必要になる。そのため、加工や組み立てが容易な熱交換器が望まれる。
【0007】
本開示の目的の一つは、より効率的に熱交換が可能な熱交換器を提供することにある。また、本開示の他の目的は、上記熱交換器を備えるウエハ保持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の熱交換器は、対象物が載置される筐体と、複数の熱伝導部材とを備え、前記筐体は、前記複数の熱伝導部材が充填された内部空間と、前記内部空間につながる冷媒の入口と、前記内部空間につながる前記冷媒の出口とを備え、さらに、前記内部空間を構成する前記筐体の内面と前記複数の熱伝導部材の少なくとも一部との間に設けられた第一の伝熱経路と、隣り合う熱伝導部材同士の接触点で構成された第二の伝熱経路と、前記内部空間内で前記冷媒の流路となる隙間とを備える。
【0009】
本開示のウエハ保持部材は、上記熱交換器を備える。
【発明の効果】
【0010】
上記熱交換器によれば、より効率的な熱交換が可能になる。上記ウエハ保持部材は、上記熱交換器を備えることで、より効率的にウエハを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は実施形態1に係るウエハ保持部材の模式縦断面図である。
【
図2】
図2は実施形態1に係る熱交換器の内部構造を示す模式構成図である。
【
図3】
図3は実施形態2に係る熱交換器の内部構造を示す模式構成図である。
【
図4】
図4は実施形態2に係る熱交換器の内部構造を示す模式縦断面図である。
【
図5】
図5は実施形態2に係る熱交換器の組立時の向きを示す説明図である。
【
図6】
図6は変形例2-1に係る熱交換器の内部構造を示す模式構成図である。
【
図7】
図7は実施形態3に係る熱交換器における熱伝導部材の配置を示す模式説明図である。
【
図8】
図8は実施形態3に係る熱交換器の内部構造を示す模式縦断面図である。
【
図9】
図9は実施形態4に係る熱交換器における熱伝導部材の配置を示す模式説明図である。
【
図10】
図10は実施形態5に係るウエハ保持部材の模式縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
以下、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
(1)本開示の一実施形態に係る熱交換器は、対象物が載置される筐体と、複数の熱伝導部材とを備え、前記筐体は、前記複数の熱伝導部材が充填された内部空間と、前記内部空間につながる冷媒の入口と、前記内部空間につながる前記冷媒の出口とを備え、さらに、前記内部空間を構成する前記筐体の内面と前記複数の熱伝導部材の少なくとも一部との間に設けられた第一の伝熱経路と、隣り合う熱伝導部材同士の接触点で構成された第二の伝熱経路と、前記内部空間内で前記冷媒の流路となる隙間とを備える。
【0014】
上記形態の熱交換器は、第一の伝熱経路を備えていることで、この伝熱経路を介して対象物からの熱を筐体を介して複数の熱伝導部材の少なくとも一部に効率的に伝達できる。また、複数の熱伝導部材同士が第二の伝熱経路を有することにより、熱伝導部材間の伝熱経路が途切れることがない。よって、筐体の内面から伝熱された特定の熱伝導部材は、隣り合う熱伝導部材に効果的に伝熱できる。つまり、対象物からの熱を筐体を介して確実に複数の熱伝導部材に伝達することができる。また、内部空間内に隙間を有することで、その隙間を冷媒の流路として利用できる。よって、内部空間内に上記熱伝導部材がない比較形態に比べて、内部空間内で冷媒と熱交換器の構成部材との接触面積を広くすることができる。このように、筐体と熱伝導部材との伝熱の確保、熱伝導部材同士の伝熱の確保、及び熱伝導部材と冷媒との接触面積の増大を実現することで、上記比較形態に比べて効率的な熱交換が可能になる。
【0015】
また、上記形態の熱交換器は、内部空間に複数の熱伝導部材を充填するという簡易な作業にて上記熱交換器を容易に構成することができる。よって、筐体の内部に長大な流路や、加工が困難な幅の狭い流路や、形状が複雑な流路を設ける必要がない。
【0016】
(2)上記熱交換器の一形態として、前記第二の伝熱経路は、前記複数の熱伝導部材の少なくとも一部が互いに接合して構成されていることが挙げられる。
【0017】
第二の伝熱経路を構成する複数の熱伝導部材は、互いに接合されているため移動することがない。よって、熱伝導部材の移動により、熱伝導部材間の伝熱経路が分断されることが抑制される。その結果、熱伝導部材同士の接合箇所を介して熱交換の対象物からの熱を隣り合う熱伝導部材に伝達し、さらにその熱を冷媒に放熱させることができる。
【0018】
(3)上記熱交換器の一形態として、前記第一の伝熱経路は、前記複数の熱伝導部材の少なくとも一部と前記筐体の内面とが接合されて構成されていることが挙げられる。
【0019】
筐体の内面に接合されている熱伝導部材は、筐体に対して移動することがない。よって、熱交換の対象物からの熱を、筐体、上記筐体の内面と熱伝導部材との接合箇所、熱伝導部材の順に確実に伝達し、さらにその熱を冷媒に放熱させることができる。
【0020】
(4)上記熱交換器の一形態として、前記内部空間は前記入口と前記出口とをつなぐ管状の空間であることが挙げられる。
【0021】
上記形態の熱交換器において、管状の内部空間は容易に形成できる。例えば、2枚の板状部材を用意する。一方の板状部材の一面に渦巻き状などの適宜な形状の溝を設ける。これら2枚の板状部材を接合することで、管状の内部空間を容易に形成できる。特に、特許文献1に示されるような管状の流路に上記熱伝導部材を充填することで、効率的に熱交換できる熱交換器を容易に得ることができる。
【0022】
(5)上記熱交換器の一形態として、前記筐体は、前記対象物が載置される蓋部と、底部と、前記蓋部及び前記底部をつなぐ側部とを有し、前記内部空間は、前記蓋部、前記底部及び前記側部に囲まれる単一の空間であり、前記内部空間の断面積は前記入口及び前記出口の断面積よりも大きいことが挙げられる。
【0023】
上記形態の熱交換器は、断面積が入口や出口の断面積よりも大きい断面積を有する容器状の内部空間を有している。この構成により、複数の熱伝導部材を内部空間に充填し易い。また、内部空間の断面積が入口や出口の断面積よりも大きいことで、入口や出口の断面積と同じ断面積の内部空間を有する筐体に比べて多数の熱伝導部材を充填することができる。入口及び出口の断面積とは、入口及び出口の各々軸方向と直交する断面のうち最も小さい面積である。内部空間の断面積は、内部空間を入口又は出口の軸方向と直交する切断面で切断した断面の面積のうち最も小さい面積である。
【0024】
(6)上記熱交換器の一形態として、前記筐体は、前記対象物が載置される蓋部と、底部と、前記蓋部及び前記底部をつなぐ側部とを有し、前記蓋部と前記複数の熱伝導部材との間及び前記底部と前記複数の熱伝導部材との間の少なくとも一方に配置されるクッション材を備えることが挙げられる。
【0025】
上記形態の熱交換器は、クッション材を有することで、内部空間内で熱伝導部材を押さえることができる。熱伝導部材がクッション材で押さえれられることにより、熱伝導部材の移動が抑制される。また、クッション材により、筐体の内面と熱伝導部材との伝熱経路も容易に構成できる。よって、複数の熱伝導部材同士の接触を維持して効率的な熱交換が可能となる。
【0026】
(7)上記蓋部、底部及び側部を有する熱交換器の一形態として、前記蓋部と前記底部との間に設けられた複数の支持体を備えることが挙げられる。
【0027】
上記形態の熱交換器は、蓋部と底部との間に複数の支持体を設けることで、筐体の剛性を確保できる。
【0028】
(8)上記熱交換器の一形態として、前記入口及び前記出口は、前記複数の熱伝導部材が通過しない開口サイズのメッシュ材を備えることが挙げられる。
【0029】
上記形態の熱交換器は、筐体の入口と出口にメッシュ材を備えることで、冷媒が内部空間内に流通されたとき、熱伝導部材が内部空間から流出することを抑制できる。よって、複数の熱伝導部材の減少を防ぐことができ、効率的な熱交換を経時的に維持することができる。
【0030】
(9)上記熱交換器の一形態として、前記複数の熱伝導部材の熱伝導率は、100W/m・K以上であることが挙げられる。
【0031】
上記形態の熱交換器は、熱伝導部材の熱伝導率が高いため、効率的な熱交換が可能である。
【0032】
(10)上記熱交換器の一形態として、前記複数の熱伝導部材の材質は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、炭化ケイ素、及び窒化アルミニウムのいずれかであることが挙げられる。
【0033】
上記に列記される熱伝導部材の材質は、いずれも高熱伝導材料である。そのため、上記形態の熱交換器は効率的な熱交換が可能になる。
【0034】
(11)上記熱交換器の一形態として、前記複数の熱伝導部材の各々は球体であることが挙げられる。
【0035】
複数の熱伝導部材の各々が球体であれば、上記内部空間に容易に充填できる。また、内部空間内に充填された熱伝導部材は、互いに第二の伝熱経路となる接触点と隙間を容易に形成することができる。よって、内部空間内で、球体同士の接触により熱交換の対象物からの熱を十分に球体に伝導させることができ、かつ冷媒と球体との接触面積を十分に確保することができる。この球体同士の熱伝導と冷媒との接触面積の確保により、効率的な熱交換が可能になる。
【0036】
(12)上記熱伝導部材の各々が球体である熱交換器の一形態として、前記複数の熱伝導部材は、相対的に直径が大きい第一の球体と、相対的に直径が小さい第二の球体とを含み、前記第二の球体は、前記第一の球体同士が接することで構成される前記隙間に充填されていることが挙げられる。
【0037】
上記第一の球体だけでなく、第一の球体同士の隙間に充填されるサイズの第二の球体とを用いることで、第一の球体のみの場合に比べて内部空間内に多数の球体を充填することができる。よって、冷媒と複数の球体との接触面積も第一の球体のみの場合に比べて大きくでき、より効率的な熱交換が可能になる。
【0038】
(13)本開示の一形態に係るウエハ保持部材は、上記項目(1)から項目(12)のいずれか1項に記載の熱交換器を備える。
【0039】
上記ウエハ保持部材によれば、上記熱交換器を備えることで、筐体上に載置されたウエハを効率的に冷却することができる。
【0040】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る熱交換器及びウエハ保持部材を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法関係等を表すものではない。以下の説明は、実施形態に係るウエハ保持部材を備えるプローバを例として行う。まず、プローバの概要を説明し、その後に熱交換器を含むウエハ保持部材を説明する。
【0041】
[実施形態1]
<プローバの概要>
プローバは、回路が形成されたウエハをチャックトップ上に載置し、そのウエハ上にプローブカードを押し付けることにより回路の導通テストを行う検査装置である。ウエハは、検査における冷却の対象物である。このウエハは、複数のチップを有し、各チップに上記回路が形成されている。プローバは、ステージ、ローダ、プローブカード、及びテストヘッドを備える。
【0042】
ステージは、ウエハ保持部材1と移動機構とを備える。ウエハ保持部材1は、
図1に示すように、熱交換器10の一部を構成するチャックトップの他、温度調整ユニット20、支持部材30、反り防止板40、及びベース板50を備える。チャックトップはウエハの載置面11sを有する。温度調整ユニット20は、チャックトップ上に載置されたウエハを所定の温度に加熱又は冷却する。支持部材30は、ベース板50に対して熱交換器10及び温度調整ユニット20を支持する。反り防止板40は、必要に応じて熱交換器10を下方から支持する。ベース板50は、熱交換器10、温度調整ユニット20、支持部材30の台座を構成する。これらウエハ保持部材1の構成部材の各々の詳細は後述する。
【0043】
移動機構は、ベース板50を支持して、X方向、Y方向、及びZ方向の直交する3方向にウエハ保持部材1を移動させる機構である。例えば、X方向、Y方向、及びZ方向の各々にベース板を移動させるXステージ、Yステージ、及びZステージを備える。このステージの駆動により、ウエハの所定位置にプローブカードのプローブ針が接触するように、ウエハ保持部材1が移動される。
【0044】
ローダは、搬送容器に収容されているウエハを取り出して、ステージのチャックトップ上に載置する。また、ローダは、半導体デバイスの電気的特性の検査が終了したウエハを、ステージから取り出して搬送容器へ収容する。
【0045】
プローブカードは、後述するテストヘッドと検査対象であるウエハ上に形成されたチップとを電気的に接続するためのデバイスである。プローブカードの下面には、ウエハに形成されたチップの電極パッドや半田バンプに対応して、多数のプローブ針が配置されている。ステージは、プローブカード及びウエハの相対位置を調整してチップの電極パッド等を各プローブ針に接触させる。
【0046】
テストヘッドは、チップをテストするための電気信号をチップに出力し、チップからの出力応答を受けて良否判定を行うデバイスである。テストヘッドはプローブカードと電気的に接続される。テストヘッドは、記憶部及び判定部を有する。記憶部は、プローブカードから伝送されるチップの電気的特性を示す電気信号を測定データとして記憶する。判定部は、測定データに基づいてウエハに形成された各チップの電気的な欠陥の有無を判定する。
【0047】
<ウエハ保持部材>
上述したように、ウエハ保持部材1は、チャックトップを含む熱交換器10、温度調整ユニット20、支持部材30、反り防止板40、及びベース板50を備える。温度調整ユニット20、支持部材30、反り防止板40、及びベース板50はチャックトップを含む熱交換器10の支持構造である。本実施形態の熱交換器10の特徴の一つは、冷媒の入口11i、冷媒の出口11o、及び内部空間11aを備える筐体11と、この内部空間11aに充填された複数の熱伝導部材12とを有することにある。まず、熱交換器10について説明し、その後で温度調整ユニット20、支持部材30、及びベース板50について説明する。
【0048】
≪熱交換器≫
(筐体)
筐体11は、
図1及び
図2に示すように、ウエハを冷却するための冷媒が内部に流通される部材である。本例の筐体11は、載置されたウエハを吸着するチャックトップの機能を有する。筐体11の全体形状は、ウエハの形状に合わせた形状であり、通常、円板状に構成されている。筐体11のサイズは、ウエハを載せた際に周囲に若干の余裕ができる程度のサイズである。ウエハのサイズとしては、直径200mm、直径300mm、直径450mmなどが挙げられる。
【0049】
筐体11の材質としては、熱伝導性に優れる金属、非金属、又は金属と非金属との複合体が利用できる。金属としては、銅、銅合金、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。非金属としては、シリコンやセラミックスが挙げられる。セラミックスとしては、窒化アルミニウムや炭化ケイ素が挙げられる。複合体としては、シリコンと炭化ケイ素の複合体、アルミニウムと炭化ケイ素の複合体、アルミニウムとシリコンと炭化ケイ素の複合体などが挙げられる。本例の筐体11の材質は銅である。
【0050】
筐体11の熱伝導率は、100W/m・K以上であることが好ましい。この熱伝導率は、さらに200W/m・K以上、300W/m・K以上、特に400W以上であることが好ましい。アルミニウムの熱伝導率は約230W/m・K、銅の熱伝導率は約400W/m・K、銀の熱伝導率は約420/m・Kである。炭化ケイ素の熱伝導率は約200W/m・K、窒化アルミニウムの熱伝導率は約150W/m・Kである。
【0051】
筐体11は、蓋部11T、底部11B、及び側部11Sを備える。これら蓋部11T、底部11B、及び側部11Sで囲まれる空間が筐体11の内部空間11aを構成する。蓋部11Tは、チャックトップを構成する部位である。即ち、蓋部11Tの一面はウエハの載置面11sを構成し、一面の反対面は内部空間11aの内面を構成する。底部11Bは蓋部11Tと向き合う部位である。底部11Bの形状は、蓋部11Tの形状に対応した形状である。側部11Sは蓋部11Tと底部11Bとをつなぐ部位である。
【0052】
蓋部11Tと側部11Sとが一体に構成された部材を用いることが好適である。本例では、蓋部11Tと側部11Sとが一体に構成された円板状の第一部材10Aと底部11Bを構成する円板状の第二部材10Bの2つの部材を接合することで筐体11が構成されている。第一部材10Aには、第二部材10Bと接合される面に後述する渦巻き状の溝を設けることで、内部空間11aが構成されている。図示を省略するが、蓋部11T、底部11B、及び側部11Sは、各々別部材として構成し、互いに組み合わせることで筐体11を構成してもよい。
【0053】
さらに、後述の実施形態2で述べるように、蓋部11Tと円筒状の側部11Sとが一体に構成された容器状の部材を用いることも好適である。この容器状の部材と底部11Bとを組み合わせることで、熱伝導部材12を内部空間11aに充填した熱交換器10を組み立て易い。熱交換器10の組立手順については後述する。
【0054】
冷媒の入口11i及び冷媒の出口11oは、側部11Sに設けられることが好適である。入口11i及び出口11oは、内部空間11aと筐体11の外部とを連通する管路である。本例では、側部11Sの互いに対向する位置に入口11iと出口11oとが設けられている。
【0055】
蓋部11Tには、ウエハの吸引機構が設けられている。吸引機構の具体例としては、ウエハの載置面11sに設けられた溝部と、溝部から排気する排気路11cとを備える構成が挙げられる。溝部の具体例としては、
図1に示すように、ウエハの載置面11sに設けられた複数の環状溝11rが挙げられる。これら環状溝11rは、同心状に設けられている。各環状溝11rの底面には、排気口11eが形成されている。この排気口11eは蓋部11Tの厚み方向に延び、排気路11cに連通されている。排気路11cは、例えば蓋部11Tの内部において、径方向に沿って延びる直線状の流路である。排気路11cの一端は閉鎖端であり、他端は蓋部11Tの側面に開口されている。この開口には図示しない排気管が接続され、さらに排気管は図示しない排気ポンプに接続されている。排気ポンプの駆動により、環状溝11rから排気路11c、排気管を介して排気を行い、ウエハを載置面11sに吸着させることができる。なお、ウエハを載置面11s上に保持する機構としては、上述のバキュームチャックに限られるものではなく、静電チャックやメカニカルクランプであってもよい。
【0056】
内部空間11aの形状は、入口11iと出口11oにつながるものであれば特に限定されない。この形状の具体例としては、細長い管状の立体空間や円柱状の立体空間が挙げられる。本例は、管状の内部空間11aを備えている。この内部空間11aの断面形状は矩形である。管状の内部空間11aは、載置面11sのほぼ全面を均一的に冷却できるよう、チャックトップの全体に満遍なく設けられることが好ましい。例えば、蛇行形状や渦巻き形状の管状の内部空間11aが挙げられる。本例は、
図2に示すように、渦巻き状の内部空間11aを備えている。より具体的には、渦巻き状の内部空間11aは、入口11iから蓋部11Tの中心付近まで径方向に延びる直線部を有する。直線部の入口11iと反対側の端部は、蓋部11Tの中心と同心状の第一C字状部につながる。第一C字状部の先端は、U字状の折り返し部を介して外周側の第二C字状部につながる。さらに順次同様に第二C字状部から第nC字状部まで折り返し部を介して内部空間11aが形成される。nは2以上の整数である。最内周に位置する第一C字状部の曲げ径が最も小さく、最外周に位置する第nC字状部の曲げ径が最も大きい。そして、第nC字状部の先端は出口11oにつながる。管状の内部空間11aは、入口11iに近い側で分岐され、出口11oに近い側で連結されるような形状であってもよい。管状の内部空間11aは、例えば蓋部11Tの裏面、即ち載置面11sと反対側の面に切削で溝加工を施すことなどで容易に形成できる。円柱状の内部空間11aを備える熱交換器10については、実施形態2で説明する。
【0057】
この内部空間11aには冷媒が導入される。冷媒は、筐体11や熱伝導部材12と実質的に反応しない材質であれば、特に限定されない。例えば窒素、又は乾燥空気等の気体や、水、オイル、エチレングリコール水溶液、又はフッ素系液体等の液体を冷媒に用いることができる。
【0058】
(熱伝導部材)
熱伝導部材12は、蓋部11Tを通して伝わった熱を効率的に冷媒に伝達するための部材である。熱伝導部材12は互いに独立した複数の単位部材から構成される。これら複数の単位部材は、互いが第二の伝熱経路と隙間12gとを有するように上記内部空間11a内に充填される。本例における第二の伝熱経路は複数の単位部材同士の接触点12cにより構成される。但し、複数の単位部材の接触点12cの少なくとも一部は、互いに接合されていてもよい。つまり、熱伝導部材12を構成する単位部材は、当初から一体に多数の孔を有するように成形された多孔体とは異なり、後述する接合処理を経ない限りは、互いに独立してばらばらになる部材である。
【0059】
上記単位部材の形状は、内部空間11aに充填した際に互いが接触点12cを有し、かつ互いの間に隙間12gが形成できるようなものであれば、特に限定されない。単位部材の形状としては、粒状、繊維状などが挙げられる。粒状の単位部材には、多面体、球体、楕円球体など種々の形状が選択できる。繊維状の単位部材には、長繊維及び短繊維の他、長繊維及び短繊維の少なくとも一方を組み合わせて構成されるメッシュ材や織物が挙げられる。単位部材の形状の種類は、単一であってもよいし、複数種を組み合わせてもよい。特に球体は、流動させることで内部空間11aに容易に充填できる。本例の単位部材の形状は球体である。
【0060】
単位部材のサイズは、内部空間11aに充填できるものであれば、特に限定されない。但し、単位部材の数が多いと冷媒に対する接触面積を広げることができ、より効率的な熱交換ができる。球体の単位部材であれば、直径が0.5mm以上、3.0mm以下程度のサイズが好適に利用できる。特に、直径が1.0mm以上、2.0mm以下の球体が好適に利用できる。繊維状の単位部材であれば、長繊維よりも短繊維の方が接触点と隙間を形成し易い。
【0061】
単位部材の数は、内部空間11aに充填できる数であれば、特に限定されない。単位部材の数が多い方と冷媒との接触面積を増やすことができ、効率的な熱交換ができる。但し、単位部材の数が多すぎると、隙間12gを十分に確保することが難しくなる。隙間12gは冷媒の流路となるため、隙間12gが小さすぎると冷媒の圧損が大きくなる。
【0062】
単位部材のサイズと数は、Sa+Sp≧1.5Saとなる程度に選択することが好ましい。Saは内部空間11aの内面の合計面積である。Spは複数の熱伝導部材12の合計表面積である。Spは個々の単位部材の表面積と単位部材の個数との積で求められる。上記の式を満たせば、筐体11内に熱伝導部材12が充填されていない比較形態に比べて、冷媒との接触面積を1.5倍以上とすることができ、より効率的な熱交換が可能になる。特に、Sa+Sp≧2.0Saを満たすことがより好ましい。
【0063】
熱伝導部材12の内部空間11aへの充填状態は、個々の単位部材が接触し、内部空間11a内で実質的に移動しない程度とすることが好ましい。単位部材が実質的に移動しないとは、熱交換器10の通常の使用状況下で作用する振動や熱交換器10の移動に伴って単位部材同士が動かないことをいう。理想的には、熱伝導部材12は内部空間11a内に最密充填の状態とされることが好ましい。この最密充填の状態は、空間的に六方最密充填とした状態が挙げられる。但し、面心立方格子状又は体心立方格子状に充填されていてもよい。その他、平面的に複数の熱伝導部材12が互いに接する状態で並列されていてもよい。本例では、管状の内部空間11aの長手方向や幅方向に複数の熱伝導部材12が並び、かつ内部空間11aの高さ方向にも熱伝導部材12が積層されるように内部空間11aに充填されている。管状の内部空間11aの長手方向とは、入口11iから出口11oに向かって、内部空間11aに沿った方向である。管状の内部空間11aの幅方向は、載置面11sに直交する方向から見て、長手方向に直交する方向である。管状の内部空間11aの高さ方向は、長手方向及び幅方向の双方に直交する方向である。この高さ方向は、
図1の上下方向及び
図2の紙面直交方向に相当する。
【0064】
上記充填状態は、内部空間11aを構成する筐体11の内面と複数の単位部材の少なくとも一部との間に第一の伝熱経路17が構成されるようにする。例えば、筐体11の内面と複数の単位部材の少なくとも一部との間に、固体同士の接触によりつながれた第一の伝熱経路17を有するようにする。この第一の伝熱経路17は、上記筐体11の内面と単位部材とが直接接して構成されていてもよいし、他の固体部材を介して上記筐体11の内面と単位部材とが間接的に接して構成されていてもよい。他の固体部材には、後述するクッション材14やロウ材15が挙げられる。この第一の伝熱経路17を有することで、筐体11に載置された対象物の熱は、上記筐体の内面を介して効率的に単位部材の少なくとも一部に伝達される。
【0065】
第一の伝熱経路17を構成する上記筐体11の内面は、複数の内面のうち、熱源となる対象物から遠位に位置する面以外の面の少なくとも一面が含まれていればよい。例えば、筐体11の内面が上面、側面、底面を有し、上面側に対象物が載置される場合、底面が対象物から遠位に位置する面である。よって、上面及び側面の少なくとも一方に伝熱経路が構成されるように熱伝導部材12が充填されていればよい。特に、対象物に最も近い上面に第一の伝熱経路17が構成されていることが好ましい。対象物から遠位に位置する面に第一の伝熱経路17が構成されていてもよい。本例では、筐体11の内面のうち、上面及び側面と熱伝導部材12との間に固体同士の接触による第一の伝熱経路17が設けられている。この第一の伝熱経路17には、上面及び側面と熱伝導部材12が直接接触している箇所と、後述するロウ材15を介して間接的に接触している箇所とがある。
【0066】
さらに上記充填状態は、単位部材同士が第二の伝熱経路を有し、かつ内部空間11aに冷媒の流路となる隙間12gが形成されるようにする。第二の伝熱経路は、例えば単位部材同士の接触点12cにより構成される。接触点12cは、単位部材同士が互いに接する箇所のことである。隙間12gは、単位部材同士の間に設けられる空間、及び筐体11の内面と単位部材との間に設けられる空間を含む。複数の熱伝導部材12が内部空間11aに充填されることで、隙間12gは三次元網目状の空間として形成される。
【0067】
内部空間11aに充填された熱伝導部材12の少なくとも一部は、互いに接合されていてもよい。つまり、上記接触点12cの少なくとも一部は、互いに熱伝導部材同士が離れない接合点12jであってもよい。接合点12jを有する熱伝導部材12同士は、互いの移動が抑制される。例えば、内部空間11aに熱伝導部材12を充填した筐体11を加熱することで、熱伝導部材12同士の間に拡散を生じさせ、接合することができる。この加熱温度は熱伝導部材12の構成材料の融点近傍であることが好適である。加熱温度に保持する時間は、長い方が拡散を生じさせ易く、接合点12jを形成し易い。熱伝導部材12同士の拡散を利用した接合では、全ての熱伝導部材12を接合することが可能である。その場合、熱伝導部材12同士の接触点12cは全て接合点12jとなる。
【0068】
その他、内部空間11a内で熱伝導部材12の少なくとも一部の移動を抑制するには、内部空間11aを構成する筐体11の内面に熱伝導部材12を接合することが挙げられる。この接合には、例えばロウ材15が利用できる。内部空間11aを構成する筐体11の内面にロウ材15を配置し、ロウ材15の融点以上に加熱することでロウ材15を溶融すれば、筐体11の内面に接する熱伝導部材12を上記内面に接合することができる。ロウ材15は、シート状又は箔状のロウ材15を筐体11の内面に配置してもよいし、予め筐体11の内面に塗布しておいてもよい。ロウ材15の量が多ければ、溶融されたロウ材15が熱伝導部材12間の隙間12gに毛細管現象で浸透し、熱伝導部材12同士を接合することもできる。但し、熱伝導部材12間の隙間12gにロウ材15が入ることは、冷媒の流路となる隙間12gを狭めることになる。そのため、筐体11の内面に接する熱伝導部材12だけを筐体11の内面に接合することが好適である。勿論、冷媒の流路が十分に確保されるなら、筐体11の内面に接する熱伝導部材12よりも内部に位置する熱伝導部材12がロウ材15で接合されていてもよい。上述した熱伝導部材12同士を拡散で接合する加熱温度がロウ材15の融点以上である場合、拡散による熱伝導部材12同士の接合と、ロウ材15による筐体11の内面と熱伝導部材12との接合とを一度の熱処理で行うこともできる。
【0069】
熱伝導部材12の材質としては、熱伝導性に優れる金属、又はセラミックスが利用できる。金属としては、銅、銅合金、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。セラミックスとしては、窒化アルミニウムや炭化ケイ素が挙げられる。本例では、銅の熱伝導部材12を用いている。
【0070】
熱伝導部材12の熱伝導率は、100W/m・K以上であることが好ましい。この熱伝導率は、さらに200W/m・K以上、300W/m・K以上、特に400W以上であることが好ましい。
【0071】
(メッシュ材)
筐体11に設けられた入口11iと出口11oには、メッシュ材13が配置される。メッシュ材13は、冷媒の入口11i及び冷媒の出口11oから熱伝導部材12が流出することを阻止するための部材である。メッシュ材13のメッシュサイズは、個々の熱伝導部材12のサイズよりも細かいものとする。この熱伝導部材12のサイズとは、個々の熱伝導部材12の投影像を横切る直線のうち最も短い直線の長さのことである。メッシュ材13の形態としては、金属線を網目状に構成した部材が好適に利用できる。その他、メッシュ材13は公知の多孔体であってもよい。メッシュ材13の配置箇所は、少なくとも入口11i及び出口11oの内部とする。入口11i及び出口11oは、内部空間11aと筐体11の外部とを連通する管路であって、筐体11の側部11Sの厚みに相当する範囲に設けられている。メッシュ材13は、上記管路を塞ぐように設けられていれば管路の全長にわたって設けられていなくても良い。本例では、
図2に示すように、入口11i及び出口11oに金属線を網目状にしたメッシュ材13を配置している。入口11iに配置されるメッシュ材13は、後述する実施形態2で
図3、
図4に示すように、内部空間11a内にまで延びていてもよい。
【0072】
(クッション材)
さらに、必要に応じて、熱伝導部材12と筐体11の内面との間にクッション材14を配置してもよい。クッション材14は、熱伝導部材12と筐体11との間の隙間を埋めるための部材である。内部空間11aに熱伝導部材12を充填した際、通常、筐体11と熱伝導部材12との間には、わずかな隙間ができる。この隙間は、熱伝導部材12同士の動きを許容することになる。熱伝導部材12の動きは、互いの接触状態を変化させることになるため、熱交換器10の性能に影響を及ぼす。そのため、クッション材14を用いることで、熱伝導部材12の動きを抑制することができる。
【0073】
クッション材14には、網目部材、編組部材、多孔体などが利用できる。多孔体には、金属多孔体が好適に利用できる。金属多孔体の一例としては、セルメットが挙げられる。セルメットは住友電気工業株式会社の登録商標である。本例では、金属線からなる網目部材をクッション材14として用いている。クッション材14の材質としては、熱伝導性の高い材料が好適である。例えば、筐体11又は熱伝導部材12と同等の熱伝導率を有する材料が挙げられる。
【0074】
クッション材14の形状としては、シート状であることが好適である。クッション材14は、弾性を有する。クッション材14は弾性を有することで、複数の熱伝導部材12の凹凸に沿うように配置できると共に、これら熱伝導部材12を適度に押し付けることができる。クッション材14に押し付けられた熱伝導部材12は、動きが抑制されると共に、クッション材14を介して筐体11との伝熱経路を維持することができる。
【0075】
クッション材14の配置箇所は、内部空間11aを構成する筐体11の内面と熱伝導部材12との間とする。特に、蓋部11Tと熱伝導部材12との間、及び底部11Bと熱伝導部材12との間の少なくとも一方にクッション材14を配置することが好ましい。本例では、底部11Bと熱伝導部材12との間にのみクッション材14を配置している。
【0076】
≪熱交換器の製造方法≫
次に、上記熱交換器10の製造方法を説明する。熱交換器10は、次の手順により製造される。
・蓋部11T及び側部11Sの一体物である第一部材10Aと、底部11Bである第二部材10Bとを用意する。第一部材10Aの蓋部11Tの裏面には、
図2に示す管状の内部空間11aを構成する溝が形成されている。
・蓋部11Tの表面、つまりウエハの載置面11sを下に、蓋部11Tの裏面を上に向けて、溝内にロウ材15を配置する。例えば、シート状のロウ材15を蓋部11Tの裏面に配置する。必要に応じて、後述するクッション材14と底部11Bとの間にもロウ材15を配置してもよい。
・入口11i、出口11oには、メッシュ材13を配置する。
・内部空間11aに熱伝導部材12を充填する。このとき、極力、内部空間11aの全体が熱伝導部材12で埋められるようにする。
・必要に応じて、内部空間11a内にクッション材14を配置する。本例では、充填された熱伝導部材12の上にもクッション材14を配置する。
・底部11Bで第一部材10Aの開口を閉じ、第一部材10Aに底部11Bを固定する。このとき、底部11Bと熱伝導部材12との間でクッション材14は圧縮される。この圧縮により、クッション材14は熱伝導部材12を押さえる。
・組み立てられた筐体11を熱処理に供する。この熱処理により、ロウ材15は溶融される。溶融されたロウ材15は重力により下方に流れ、蓋部11Tの裏面に接するように位置する。筐体11を冷却することで、ロウ材15は凝固し、蓋部11Tの裏面と、当該裏面に接する熱伝導部材12とを接合する。
・得られた筐体11の上下を逆転すれば、蓋部11Tが上に、底部11Bが下になる。そして、蓋部11Tの裏面には、熱伝導部材12がロウ材15で接合された熱交換器10が得られる。
【0077】
その他、底部11Bと側部11Sの一体物を、底部11Bが下、開口が上になるように向けて、ロウ材15及び熱伝導部材12、必要に応じてクッション材14を配置してもよい。
【0078】
≪支持構造≫
上述の熱交換器10は、支持構造により支持されてウエハ保持部材1を構成する。支持構造は、ベース板50、支持部材30、温度調整ユニット20を備え、必要に応じて反り防止板40を備える。
【0079】
(ベース板)
ベース板50は、熱交換器10、支持部材30、温度調整ユニット20、及び反り防止板40を支持する台座となる部材である。このベース板50の材質には、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、シリコンと炭化ケイ素の複合体、アルミニウムと炭化ケイ素の複合体、アルミニウムとシリコンと炭化ケイ素の複合体などのいずれかが利用できる。
【0080】
(支持部材)
支持部材30は、ベース板50の上に熱交換器10の筐体11を支持する部材である。反り防止板40がある場合は、支持部材30はベース板50の上に反り防止板40を支持する。支持部材30の形状は、柱状、筒状などが挙げられる。柱状又は筒状の支持部材30は、温度調整ユニット20に設けられた孔部を貫通して反り防止板40又は筐体11を支持する。柱状又は筒状の支持部材30の外径は、蓋部11Tや底部11Bの外径に比べて十分に小さい。柱状又は筒状の支持部材30を用いることで、支持部材30と反り防止板40との接触面積又は支持部材30と熱交換器10の筐体11との接触面積を少なくできる。それにより、支持部材30を介したベース板50への熱伝導を抑制してチャックトップの均熱性を保持できる。さらに、柱状又は筒状の支持部材30を用いることで、次述する温度調整ユニット20とベース板50との間に空間を形成できる。この空間は、ベース板50と熱交換器10との断熱に寄与する。本例の支持部材30は筒状体である。他の構成の支持部材30については、後述の実施形態4にて説明する。支持部材30の数は、熱交換器10の筐体11又は反り防止板40をバランス良く支持できるように複数設けられることが好ましい。支持部材30の材質には、アルミナ、ムライトアルミナ、ムライト、コージライト、ステアタイト、窒化ケイ素のいずれかが挙げられる。
【0081】
(温度調整ユニット)
温度調整ユニット20はウエハを所定の温度に加熱又は冷却するためのユニットである。本例では、反り防止板40の下面に温度調整ユニット20が設けられている。温度調整ユニット20は、冷却部21と加熱部22とを備える。冷却部21内には、冷媒の流路が構成されている。この冷媒も、筐体11の内部空間11aに流通される冷媒と同様の冷媒が利用される。加熱部22には、抵抗発熱体などのヒータが配置されている。本例では、反り防止板40の下面に冷却部21が配置され、冷却部21の下面に加熱部22が配置されている。逆に、反り防止板40の下面に加熱部22が配置され、加熱部22の下面に冷却部21が配置されていてもよい。チャックトップの熱交換器10は、主に加熱されたウエハを効率的に冷却することに利用する。これに対し、冷却部21は、加熱部22と共に動作させてウエハの温度を所定の温度に調整したり、加熱部22を動作することなくウエハの温度を氷点下に制御したりすることに利用される。
【0082】
(反り防止板)
反り防止板40は、ウエハの検査時の熱により熱交換器10に反りが生じることを抑制するための部材である。反り防止板40は必要に応じて設ければよく、必須の部材ではない。反り防止板40がない場合、支持部材30が熱交換器10の筐体11を支持する。反り防止板40の材質としては、アルミナ、ムライトアルミナ、ムライト、コージライト、ステアタイト、窒化ケイ素、炭化ケイ素又はそれらセラミックスと金属との複合材のいずれかが挙げられる。
【0083】
<本実施形態の効果>
上記の熱交換器10は次の効果を奏する。
・比較形態に比べてより効率的な熱交換ができる。比較形態は、筐体11の内部空間11aに熱伝導部材12がなく、冷媒のみが循環される熱交換器10である。筐体11の内部空間11aを構成する内面と少なくとも一部の熱伝導部材12の間には、第一の伝熱経路17が構成されている。この第一の伝熱経路17を通じて、筐体11に載せられたウエハからの熱を筐体11内の複数の熱伝導部材12に効果的に伝達できる。内部空間11aを構成する筐体11の内面から熱を受けた熱伝導部材12は、隣り合う熱伝導部材12に接触点12cを介して熱を伝達できる。また、冷媒の流路となる隙間12gを有するように複数の熱伝導部材12が内部空間11aに充填されていることで、熱交換器10を構成する固体と冷媒との接触面積を比較形態に比べて増大できる。このように、ウエハから筐体11を介して複数の熱伝導部材12へ十分な熱伝導が行えるため、効率的な熱交換が期待できる。
・上記の熱交換器10は、容易に組み立てることができる。筐体11の内部空間11aに複数の熱伝導部材12を充填するという簡易な作業にて、熱交換器10を組み立てることができるからである。
・熱伝導部材12の少なくとも一部が互いに接合されていることで、接合された熱伝導部材12同士の移動を抑制できる。この移動の抑制により、熱交換の効率が変化し難く、安定した熱交換を実現できる。
・内部空間11a内にクッション材14を備えることで、筐体11の内面と熱伝導部材12との隙間を埋めることができる。また、クッション材14は熱伝導部材12を押し付けることができ、内部空間11a内での熱伝導部材12の移動を抑制できる。
・上記のウエハ保持部材1は、上記の熱交換器10を有することで、効率的に熱交換を行うことができる。
【0084】
[実施形態2]
<構成>
実施形態1では、細長い管状の内部空間11aを有する熱交換器10を説明したが、実施形態2では、
図3から
図5に基づいて、円柱状の内部空間11aを有する熱交換器10を説明する。以下の説明は、主に実施形態1との相違点について行い、共通点については説明を省略する。
【0085】
実施形態2では、
図3、
図4に示すように、容器状の筐体11を用いている。より具体的には、円板状の蓋部11Tと底部11Bとを円筒状の側部11Sでつないだ筐体11である。蓋部11T、底部11B及び側部11Sで囲まれる空間は円柱状の内部空間11aである。本例の熱交換器10では、蓋部11Tと側部11Sとが一体化された第一部材10Aと、底部11Bとなる第二部材10Bとを備える。第一部材10Aと第二部材10Bとは別体である。
【0086】
さらに、本例に用いる筐体11は、蓋部11Tと底部11Bとをつなぐ支持体16を備える。支持体16は、蓋部11Tと底部11Bとの間に介在されるものであれば、特に限定されない。本例の支持体16は第一部材10Aに一体化されている。支持体16の形状は、柱状体、筒状体、壁材などが挙げられる。本例では、柱状体の支持体16を用いている。支持体16を有することで、検査時、プローブカードでチャックトップ上のウエハが押圧されても、熱交換器10の筐体11は高い剛性を備えることができる。
図4及び
図5は、本例の熱交換器10を仮想的な切断面で切断した縦断面図である。この切断面は、
図3における入口11iから径方向に延び、途中で蓋部11T及び底部11Bの中心側に配置された2本の支持体16を通って、再度径方向に沿って出口11oに延びる経路に沿った切断面である。支持体16の数は、複数であることが好ましい。複数の支持体16を有することで、個々の支持体16を小さくでき、支持体16が存在することにより熱伝導部材12が充填されない領域を小さくすることができる。支持体16の配置は、バランスよく底部11Bに対して蓋部11Tを支持することができるよう、概ね蓋部11T及び底部11Bに対して均等な位置に分散して配置することが好ましい。なお、支持体16は、求められる筐体11の剛性に応じて設ければよく、蓋部11Tの材質や厚みによっては支持体16がなくてもよい。
【0087】
上述した円柱状の内部空間11a内に複数の熱伝導部材12が充填されている。つまり、蓋部11T、底部11B及び側部11Sで囲まれる空間のうち、支持体16が配置された箇所を除いた領域に複数の熱伝導部材12が充填されている。つまり、この内部空間11aは、蓋部11T、底部11B及び側部11Sに囲まれる単一の空間であり、内部空間11aの断面積は入口11i及び出口11oの断面積よりも大きい。熱伝導部材12の材質やサイズなどは実施形態1と共通である。円柱状の内部空間11aとすることで、実施形態1の管状の内部空間11aに比べて熱伝導部材12を充填できる容積を広くすることができる。そのため、実施形態1よりも多くの熱伝導部材12を内部空間11aに充填できる。
【0088】
さらに、実施形態2では、メッシュ材13の構成が実施形態1と異なる。実施形態1では、冷媒の入口11i及び冷媒の出口11oにのみメッシュ材13を設けたが、本例では、内部空間11a内にまでメッシュ材13が延びて設けられている。具体的には、先端が閉じられた筒状のメッシュ材13が入口11iだけでなく、内部空間11a内にまで配置されている。本例では、入口11iから筐体11の径方向に沿って直線状に延び、蓋部11T及び底部11Bの中心を超えた位置にまでメッシュ材13が延びている。この構成によれば、入口11iから内部空間内に延びたメッシュ材13の内側の容積分、熱伝導部材12の充填数は減少するが、入口11iから離れた箇所にまで冷媒を速やかに導入できる。上記筒状のメッシュ材13の先端には、ストッパ13sが設けられている。ストッパ13sは、メッシュ材13の先端において、編目の開口を塞ぐ部材である。ストッパ13sを備えることで、メッシュ材13の先端において冷媒の流れを堰き止め、筒状のメッシュ材13の側面から冷媒を流出させられる。この側面からの冷媒の流出により、筒状のメッシュ材13の軸方向と交差する方向に冷媒を拡散させることができる。さらに、図示していないが、十字状、T字状、Y字状などの分岐接続部を介して複数の筒状のメッシュ材を接続すれば、異なる複数の方向に延びる筒状のメッシュ材13を内部空間11a内に配置できる。
【0089】
その他、本例の熱交換器10では、クッション材14を省略している。但し、蓋部11Tと熱伝導部材12の間及び底部11Bと熱伝導部材12の間の少なくとも一方にクッション材14を配置してもよい。クッション材14は、支持体16に対応する箇所に予め貫通孔を設けておけばよい。本例においても、筐体11の内面のうち、上面及び側面と熱伝導部材12との間に固体同士の接触による第一の伝熱経路17が設けられている。この第一の伝熱経路17には、上面及び側面と熱伝導部材12が直接接触している箇所と、ロウ材15を介して間接的に接触している箇所とがある
【0090】
<熱交換器の製造方法>
上記の熱交換器10も実施形態1と同様に製造することができる。本例の熱交換器10も、
図5に示すように、蓋部11Tと側部11Sの一体物である第一部材10Aを蓋部11Tを下に向けて配置しておき、上方の開口から熱伝導部材12を充填することで得られる。内部空間11aの開口が実施形態1よりも広いため、熱伝導部材12の充填が容易である。内部空間11aに熱伝導部材12を充填した後、底部11Bである第二部材10Bを第一部材10Aに接合すれば、熱交換器10が得られる。
【0091】
<本実施形態の効果>
上記の熱交換器10は、次の効果を奏することができる。
蓋部11Tと側部11Sとで円柱状の内部空間11aを有することで、実施形態1よりも多数の熱伝導部材12を充填できる。そのため、熱伝導部材12と冷媒との合計接触面積も実施形態1よりも広くすることができる。その結果、より効率的な熱交換が可能になる。
【0092】
内部空間11a内にまで延びるメッシュ材13を用いることで、入口11iから離れた箇所にまで冷媒を速やかに導入することができる。メッシュ材13の先端にストッパ13sを有することで、円柱状の内部空間11a内の広範囲に冷媒を拡散させやすくできる。
【0093】
蓋部11Tと底部11Bとの間に支持体16を有することで、支持体16がない場合に比べて高い剛性の熱交換器10を構成できる。
【0094】
[変形例2-1]
<構成>
変形例2-1は、
図6に示すように、実施形態2におけるメッシュ材13が、内部空間11a内にまで延びておらず、冷媒の入口11iと冷媒の出口11oのみに設けられた熱交換器10である。メッシュ材13の以外の変形例2-1の構成は、実施形態2の構成と同様である。
【0095】
<本実施形態の効果>
メッシュ材13の配置領域が実施形態1に比べて短いため、実施形態1で内部空間11a内に配置されていたメッシュ材13で囲まれる容積分だけ多くの熱伝導部材12を内部空間11a内に充填できる。そのため、実施形態2と同等又はより優れた効率で熱交換できることが期待される。
【0096】
[実施形態3]
<構成>
実施形態3は、
図7及び
図8に示すように、管状の内部空間11aに熱伝導部材12を一段のみ配列した熱交換器10である。管状の内部空間11aの全体の形状は、
図1の円弧状の内部空間11aと同様と考えればよい。但し、
図7及び
図8には、円弧状の内部空間11aの一部のみ示している。管状の内部空間11aは、その横断面が矩形である。この内部空間11aの高さ方向に熱伝導部材12が一つだけとなるように配置する。つまり、個々の熱伝導部材12の外径と管状の内部空間11aの高さとが概ね対応している。内部空間11aの幅方向と長手方向には、複数の熱伝導部材12が並べられる。熱交換器10の他の構成は、概ね実施形態1と同様である。
図7の例は正方格子状に並べているが、三角格子状に並んでいても良い。
【0097】
このような熱交換器10は、次のようにして得られる。蓋部11Tと側部11Sの一体物を、蓋部11Tが下、開口が上となるように配置する。蓋部11Tの裏面には、断面が矩形の溝が形成されている。蓋部11Tの裏面にロウ材15とクッション材14を配置する。ロウ材15とクッション材14の積層順は、どちらが上でも構わない。蓋部11Tの裏面に形成された溝内に熱伝導部材12を一段に配列する。熱伝導部材12の上にもクッション材14を配置する。一体物の開口を底部11Bで閉じて、筐体11を加熱する。ロウ材15を溶融して熱伝導部材12をクッション材14及び蓋部11Tに接合する。冷却後に熱交換器10の上下を反転する。
【0098】
本例では、蓋部11Tと熱伝導部材12の間及び底部11Bと熱伝導部材12の間の双方にクッション材14を配置している。なお、
図8では、底部11Bのクッション材14の上面に接するように熱伝導部材12が記載され、蓋部11Tのクッション材14の下面に接するように熱伝導部材12が記載されているが、実際は、クッション材14のうち熱伝導部材12に接する箇所は、クッション材14が圧縮されており、他の箇所に比べて薄くなっている。つまり、実際の熱伝導部材12は、図示されるよりも蓋部11T及び底部11Bに接近した状態である。
【0099】
本例の熱交換器10も、内部空間11aを構成する筐体11の内面と熱伝導部材12との間に伝熱経路が構成されている。
図8に示すように、内部空間11aを構成する筐体11の内面のうち、蓋部11Tの内面と熱伝導部材12との間は、クッション材14及びロウ材15を介して第一の伝熱経路17が構成されている。さらに、上記筐体11の内面のうち、側部11Sの内面と熱伝導部材12とが直接接することでも第一の伝熱経路17が構成されている。
【0100】
<本実施形態の効果>
本例の熱交換器10は、熱伝導部材12が管状の内部空間11a内に一段に配列されていることで、熱伝導部材12の充填が行い易い。特に、内部空間11aの高さ方向に熱伝導部材12を積層する場合に比べて、熱伝導部材12の充填量が作業者のスキルに依存することがない。特に、内部空間11aに熱伝導部材12が充填されていない比較形態の熱交換器に対して一段に熱伝導部材12を充填するだけで、より熱交換効率に優れた熱交換器10を得ることができる。
【0101】
[変形例3-1]
実施形態3の変形例として、変形例3-1の熱交換器10を説明する。この熱交換器10は、蓋部11Tと熱伝導部材12の間にのみクッション材14があり、底部11Bと熱伝導部材12との間にはクッション材14はない。その他の構成は実施形態3と同様である。
【0102】
熱交換器10の具体的な仕様の一例は次の通りである。
筐体11の材質:銅
管状の内部空間11a:幅6.0mm、高さ2.3mm
熱伝導部材12:銅球
熱伝導部材12の直径:2.0mm
クッション材14:厚さ0.3mmの銅メッシュ(#100)
ロウ材15:田中貴金属工業株式会社製 BAg-8、融点780℃
【0103】
[実施形態4]
実施形態4は、熱伝導部材12にサイズの異なる熱伝導部材12を含む熱交換器10を
図9に基づいて説明する。
図9は、熱伝導部材12の配列のみを示し、他の構成は省略している。熱伝導部材12以外の構成は、上述した他の実施形態と同様である。この熱伝導部材12は、既述した実施形態1から実施形態3、変形例2-1、変形例3-1、及び後述する実施形態5のいずれの熱交換器10でも利用することができる。
【0104】
<構成>
本例の熱伝導部材12は、相対的にサイズの大きい第一の球体12fと、相対的にサイズの小さい第二の球体12sとを含む。第二の球体12sの直径は、第一の球体12f同士の間に設けられる隙間12gに充填される。
図9では、第一の球体12f同士で構成される一つの隙間に3つの第二の球体12sが充填されているが、第二の球体12sの数は3つに限定されない。この第二の球体12sの数は、1つや2つでも良いし、4つ以上でもよい。
【0105】
<本実施形態の効果>
上記の熱交換器10によれば、熱伝導部材12の個々の外径が一様な場合に比べて、より多くの球体を内部空間11aに充填できる。そのため、単一の球体サイズの場合に比べて熱伝導部材12の合計表面積を広げられ、より効率的な熱交換が可能となる。
【0106】
[実施形態5]
<構成>
次に、
図1で示した支持構造とは異なる支持構造を有するウエハ保持部材1を
図10に基づいて説明する。このウエハ保持部材1では、既述した実施形態1から実施形態4、変形例2-1、及び変形例3-1のいずれの熱交換器10も利用することができる。
【0107】
この支持構造は、支持部材30としてリング状の支持部材30を用いている。また、本例の温度調整ユニット20は、冷却部21と加熱部22とが分離されている。冷却部21は底部11Bの下面に設けられている。この冷却部21の下面には反り防止板40が設けられている。さらに、反り防止板40の下面に加熱部22が設けられている。本例のウエハ保持部材1における支持部材30及び温度調整ユニット20の構成と配置以外の構成は、概ね
図2に示したウエハ保持部材1と同様の構成である。この支持部材30の外径は、ほぼ冷却部21及び反り防止板40の外径に対応している。つまり、支持部材30の外径は、冷却部21及び反り防止板40の外径よりも若干小さい。
【0108】
支持部材30の材質は断熱材である。断熱材としては、熱伝導率の低いセラミックスが好適に利用できる。支持部材30の厚さは、加熱部22の厚さよりも十分に厚い。また、温度調整ユニット20は、上方に位置する冷却部21よりも下方に位置する加熱部22の方が外径が小さい。管状の支持部材30は、ベース板50と反り防止板40との間に配置されている。加熱部22は支持部材30の内側に配置されている。この構成により、加熱部22とベース板50との間には空間が形成される。この空間も熱交換器10や温度調整ユニット20からの熱がベース板50に伝達されることを抑制できる。
【0109】
<本実施形態の効果>
上記のウエハ保持部材1は、リング状の支持部材30を用いることで、高い剛性をもって熱交換器10を支持できる。また、加熱部22とベース板50との間に空間を有することで、温度調整ユニット20とベース板50とを断熱できる。加熱部22を支持部材30の内部に配置でき、温度調整ユニット20に柱状や筒状の支持部材30を通すための孔を設ける必要がない。
【0110】
筐体11の底部11Bの下面に冷却部21を設けることで、筐体11を含む熱交換器10の冷却能力を冷却部21で補うことができる。筐体11の内部空間11aに熱伝導部材12を充填したことで、熱伝導部材12がない場合に比べて冷媒の流通抵抗が増大する。特に、低温下で冷媒の粘性が高くなった場合、熱交換器10の冷却能力が低下するおそれがある。そのような場合でも、筐体11の底部11Bの下面に冷却部21があれば、熱交換器10の冷却能力を補うことで維持することができる。
【0111】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
1 ウエハ保持部材
10 熱交換器
10A 第一部材
10B 第二部材
11 筐体
11T 蓋部
11s 載置面
11r 環状溝
11e 排気口
11c 排気路
11B 底部
11S 側部
11i 入口
11o 出口
11a 内部空間
12 熱伝導部材
12c 接触点(第二の伝熱経路)
12j 接合点(第二の伝熱経路)
12g 隙間
12f 第一の球体
12s 第二の球体
13 メッシュ材
13s ストッパ
14 クッション材
15 ロウ材
16 支持体
17 第一の伝熱経路
20 温度調整ユニット
21 冷却部
22 加熱部
30 支持部材
40 反り防止板
50 ベース板