(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】コイル装置及び冷却機構
(51)【国際特許分類】
H01F 27/10 20060101AFI20241203BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20241203BHJP
F25D 7/00 20060101ALN20241203BHJP
H02J 50/12 20160101ALN20241203BHJP
【FI】
H01F27/10
H01F38/14
F25D7/00 Z
H02J50/12
(21)【出願番号】P 2021082471
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】大村 直輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 智也
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/178090(WO,A1)
【文献】特開2019-160679(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163208(WO,A1)
【文献】実開昭62-187280(JP,U)
【文献】実開昭61-091771(JP,U)
【文献】特開昭52-027375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0063101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/10
H01F 38/14
F25D 7/00
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
コイルを収容する筐体と、
前記コイルを冷却するための冷却機構と、を備え、
前記冷却機構は、
複数の細孔を含む多孔質構造によって構成され、前記筐体の外面と熱的に接触する吸水部材と、
前記吸水部材に水を供給するように構成された給水機構と、を有
し、
前記給水機構は、
前記筐体の周囲に配置され、前記水を貯水するための貯水空間を有する貯水部と、
前記貯水空間に貯留される前記水を前記吸水部材に受け渡すように構成された受渡部と、を含み、
前記受渡部は、
複数の細孔を含む多孔質構造によって構成された別の吸水部材と、
前記別の吸水部材に取り付けられた変形部材と、を含み、
前記変形部材は、前記別の吸水部材を前記貯水空間及び前記吸水部材の双方に接触させる第1形態から、前記別の吸水部材を前記貯水空間及び前記吸水部材の少なくとも一方から離間させる第2形態へ変形可能に構成されている、コイル装置。
【請求項2】
前記吸水部材は、前記筐体の外面に対して取り外し可能に取り付けられている、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記筐体は、ベースと、前記コイルを介して前記ベースに対向し、前記ベースとの間に前記コイルを収容するための内部空間を規定するカバーと、を有し、
前記吸水部材は、前記カバーの外面であって、前記ベースと前記カバーとの対向方向において前記コイルと重なる部分に配置されている、請求項1又は2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記変形部材は、前記コイルからの熱伝達、或いは前記コイルが発生する磁場に起因する誘導加熱による温度上昇に応じて変形可能な変形可能な感熱変形部材であり、前記変形部材の温度が第1温度範囲にある場合に前記第2形態となり、前記変形部材の温度が前記第1温度範囲よりも高温の第2温度範囲にある場合に前記第1形態となるように変形する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記別の吸水部材は、前記筐体の外面と熱的に接触している、
請求項1~4のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記給水機構は、前記水を収容する収容空間を有するタンクを含み、
前記タンクには、前記収容空間と前記貯水空間とを接続し、前記水が流れる流路と、前記流路に設けられたバルブと、が設けられており、
前記バルブは、前記貯水空間における前記水の水位が基準水位以下である場合に、前記流路を開くように構成されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項7】
コイル装置に用いられるコイルを冷却するための冷却機構であって、
複数の細孔を含む多孔質構造によって構成され、前記コイルを収容する筐体の外面と熱的に接触可能な吸水部材と、
前記吸水部材に水を供給するように構成された給水機構と、を備
え、
前記給水機構は、
前記筐体の周囲に配置され、前記水を貯水するための貯水空間を有する貯水部と、
前記貯水空間に貯留される前記水を前記吸水部材に受け渡すように構成された受渡部と、を含み、
前記受渡部は、
複数の細孔を含む多孔質構造によって構成された別の吸水部材と、
前記別の吸水部材に取り付けられた変形部材と、を含み、
前記変形部材は、前記別の吸水部材を前記貯水空間及び前記吸水部材の双方に接触させる第1形態から、前記別の吸水部材を前記貯水空間及び前記吸水部材の少なくとも一方から離間させる第2形態へ変形可能に構成されている、冷却機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル装置及び冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コイル装置の冷却に関する技術を開示する。特許文献1に記載された非接触給電装置は、液体式の冷却機構を有する。この非接触給電装置は、具体的には、コイルと、コイルを収容する筐体と、筐体の天板部の内部に形成された流路と、筐体の流路に液体を循環させるためのポンプと、を備える。コイルが発する熱は、筐体の流路を流れる液体に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような冷却機構を設けるためには、筐体に流路を設ける必要があり、更に、流路で液体を循環させるためのポンプといった付帯装置が必要となるため、装置構成が大型化及び複雑化する。その結果、装置の点検及び保守の負荷が増大し、コストが増大するといった問題が生じ得る。
【0005】
本開示は、簡易な構成でコイルを冷却可能なコイル装置及び冷却機構を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコイル装置は、コイルと、コイルを収容する筐体と、コイルを冷却するための冷却機構と、を備え、冷却機構は、複数の細孔を含む多孔質構造によって構成され、筐体の外面と熱的に接触する吸水部材と、吸水部材に水を供給するように構成された給水機構と、を有する。
【0007】
このコイル装置では、多孔質構造によって構成される吸水部材は、給水機構から供給された水を吸収する。そして、この吸水部材は筐体の外面と熱的に接触しているため、筐体に収容されたコイルが生じた熱は、吸水部材に伝わる。このとき、吸水部材が吸収した水が気化して周囲から熱を奪うことによって筐体及び筐体の内部のコイルを冷却する。この構成によれば、冷却液を循環させるためのポンプといった付帯装置を要することなく、吸水部材に水を供給する簡易な構成によってコイルを冷却することが可能となる。
【0008】
いくつかの態様において、吸水部材は、筐体の外面に対して取り外し可能に取り付けられていてもよい。この場合、吸水部材の交換等の保守作業を容易に行うことができるので、保守性を向上できる。
【0009】
いくつかの態様において、筐体は、ベースと、コイルを介してベースに対向し、ベースとの間にコイルを収容するための内部空間を規定するカバーと、を有し、吸水部材は、カバーの外面であって、ベースとカバーとの対向方向においてコイルと重なる部分に配置されていてもよい。この場合、特に高温になりやすい部分に吸水部材が配置されるので、筐体及び筐体の内部のコイルを効果的に冷却することが可能となる。
【0010】
いくつかの態様において、給水機構は、筐体の周囲に配置され、水を貯水するための貯水空間を有する貯水部と、貯水空間に貯留される水を吸水部材に受け渡すように構成された受渡部と、を含んでもよい。この場合、吸水部材に水を供給する給水機構を簡易に実現できる。
【0011】
いくつかの態様において、受渡部は、複数の細孔を含む多孔質構造によって構成された別の吸水部材を含み、別の吸水部材は、貯水空間と吸水部材とに接触していてもよい。この場合、貯水空間に貯留される水は、貯水空間から別の吸水部材に吸収され、別の吸水部材から吸水部材に受け渡される。この構成によれば、貯水空間に貯留される水を吸水部材に受け渡す構成を簡易に実現できる。
【0012】
いくつかの態様において、受渡部は、複数の細孔を含む多孔質構造によって構成された別の吸水部材と、別の吸水部材に取り付けられた変形部材と、を含み、変形部材は、別の吸水部材を貯水空間及び吸水部材の双方に接触させる第1形態から、別の吸水部材を貯水空間及び吸水部材の少なくとも一方から離間させる第2形態へ変形可能に構成されていてもよい。変形部材が第1形態である場合、別の吸水部材が貯水空間及び吸水部材の双方に接触するため、貯水空間内の水は別の吸水部材を介して吸水部材に受け渡される。一方、変形部材が第2形態である場合、別の吸水部材が貯水空間及び吸水部材の少なくとも一方から離間するため、貯水空間内の水は、吸水部材に受け渡されない。従って、上記の構成では、吸水部材への給水が必要な場合のみに吸水部材へ給水でき、吸水部材への給水が不要な場合には、吸水部材への給水を停止できる。このように、吸水部材への給水が不要な場合に吸水部材への給水を停止することによって、水が必要以上に消費される事態を抑制できる。
【0013】
いくつかの態様において、変形部材は、コイルからの熱伝達、或いはコイルが発生する磁場に起因する誘導加熱による温度上昇に応じて変形可能な感熱変形部材であり、変形部材の温度が第1温度範囲にある場合に第2形態となり、変形部材の温度が第1温度範囲よりも高温の第2温度範囲にある場合に第1形態となるように変形してもよい。この場合、コイルの温度に応じて第1形態と第2形態との切り替えを自動的に行うことができるので、吸水部材への給水が不要な場合(例えば、コイルが非接触給電動作を行っていない場合)に吸水部材への給水を停止する構成を簡易に実現できる。
【0014】
いくつかの態様において、別の吸水部材は、筐体の外面と熱的に接触していてもよい。この場合、筐体に収容されたコイルが生じた熱は、別の吸水部材にも伝わり、別の吸水部材が吸収した水が気化して周囲から熱を奪うことによって筐体及び筐体の内部のコイルを冷却する。つまり、この構成によれば、吸水部材に吸収された水のみならず、別の吸水部材に吸収された水も、筐体及び筐体の内部のコイルの冷却のために利用できる。これにより、コイルを効果的に冷却することが可能となる。
【0015】
いくつかの態様において、給水機構は、水を収容する収容空間を有するタンクを含み、タンクには、収容空間と貯水空間とを接続し、水が流れる流路と、流路に設けられたバルブと、が設けられており、バルブは、貯水空間の水位が基準水位以下である場合に、流路を開くように構成されていてもよい。この場合、貯水空間の水位が不足しているときに、タンクの収容空間から貯水空間へ自動的に給水することができる。これにより、貯水空間の水位が不足する事態を抑制でき、貯水空間から吸水部材への給水をより確実に行うことが可能となる。
【0016】
本開示の冷却機構は、コイル装置に用いられるコイルを冷却するための冷却機構であって、複数の細孔を含む多孔質構造によって構成され、コイルを収容する筐体の外面と熱的に接触可能な吸水部材と、吸水部材に水を供給するように構成された給水機構と、を備える。
【0017】
この冷却機構では、多孔質構造によって構成される吸水部材は、給水機構から供給された水を吸収する。そして、この吸水部材は筐体の外面と熱的に接触するように配置されることによって、筐体に収容されたコイルが生じた熱が吸水部材に伝わる。このとき、吸水部材が吸収した水が気化して周囲から熱を奪うことによって、筐体及び筐体の内部のコイルを冷却する。この構成によれば、冷却液を循環させるためのポンプといった付帯装置を要することなく、吸水部材に水を供給する簡易な構成によってコイルを冷却することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本開示のいくつかの態様によれば、簡易な構成でコイルを冷却可能なコイル装置及び冷却機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るコイル装置を備える非接触給電システムを示す概略構成図である。
【
図7】
図7は、第1変形例に係るコイル装置を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第2変形例に係るコイル装置を示す斜視図である。
【
図11】
図11(a)は、第3変形例に係るコイル装置の受渡部の第2形態を示す断面図である。
図11(b)は、
図11(a)に示す受渡部の第1形態を示す断面図である。
【
図12】
図12(a)は、第4変形例に係るコイル装置の受渡部の第2形態を示す断面図である。
図12(b)は、
図12(a)に示す受渡部の第1形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示のコイル装置を、非接触給電システムにおいて電力を送る送電コイル装置に適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0021】
図1に示すように、非接触給電システム100は、送電コイル装置1(コイル装置)と、受電コイル装置2とを備えている。非接触給電システム100は、例えば、車両又はドローンなどの移動体Vに搭載されたバッテリを充電する。送電コイル装置1は、例えば、屋外の路面G上に設置される。送電コイル装置1は、路面G下に設置(埋設)されてもよい。送電コイル装置1は、回路から供給された交流電力によって磁場を発生させる。受電コイル装置2は、例えば、移動体Vに設置されている。
【0022】
送電コイル装置1は、電力供給位置(すなわち、送電コイル装置1と受電コイル装置2とが対向する位置)に到着した移動体Vの受電コイル装置2に対し、例えば、磁界共鳴方式又は電磁誘導方式等のコイル間の磁気結合を利用して、非接触で送電する。これにより、受電コイル装置2は、電力を受ける。なお、非接触給電方式は、磁気結合を利用したものに限られず、例えば、電界共鳴方式であってもよい。
【0023】
図2及び
図3に示すように、送電コイル装置1は、送電コイル10(コイル)と、筐体30と、冷却機構50と、を備えている。筐体30は、例えば、扁平な箱状の部材である。筐体30は、少なくとも送電コイル10を収容している。
図4に示すように、筐体30は、ベース31とカバー32とを有している。ベース31は、路面G上に載置された矩形の板状部材である。ベース31には、送電コイル10が設置されている。ベース31は、送電コイル装置1の全体としての剛性を確保する。ベース31は、例えば、非磁性材料であって導電性を有する材料により形成されている。ベース31は、例えば、透磁率の低い金属材料であるアルミニウムによって形成されてもよい。このようなベース31の材料の選択によれば、ベース31は、漏えい磁界の外部流出を遮蔽することができる。
【0024】
カバー32は、例えば、その下端が開放された矩形の箱状を呈している。カバー32は、送電コイル10を介してベース31と対向するように配置され、送電コイル10を覆うようにベース31に気密に取り付けられている。ベース31とカバー32との間は、例えばシール材によって封止されている。カバー32は、ベース31に対して取り外し可能に取り付けられてもよいし、取り外し不能に固定されてもよい。ベース31とカバー32とによって閉じられた(規定された)空間は、送電コイル10を収容するための内部空間R1となっている。カバー32は、内部空間R1内に収容された送電コイル10等を保護する。カバー32は、例えば、非磁性且つ非導電性の材料により形成されている。カバー32は、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastic:繊維強化プラスチック)などの樹脂材料によって形成されてもよい。
【0025】
図4に示すように、カバー32は、送電コイル10を介してベース31と対向する天壁33と、天壁33の周縁部からベース31まで延在する側壁34と、を有する。天壁33は、ベース31よりも一回り小さい矩形の板状を呈している。天壁33は、筐体30の内側を向く内面33aと、筐体30の外側を向く外面33bと、を含む。内面33a及び外面33bは、例えば、互いに平行に延在する平面である。内面33a及び外面33bの法線方向は、例えば、ベース31とカバー32との対向方向D1と一致する。なお、以下では、対向方向D1のうちベース31側を「下」、対向方向D1のうちカバー32側を「上」と称して説明することがある。
【0026】
側壁34は、筐体30の内側を向く内面34aと、筐体30の外側を向く外面34bと、を含む。内面34a及び外面34bは、例えば、互いに平行に延在する平面であり、内面33a及び外面33bと交差する方向に延在している。側壁34の外面34b及び天壁33の外面33bは、筐体30の外面を構成する。また、側壁34は、天壁33から下方に向かうにつれて外側に広がるように傾斜する傾斜部P1と、傾斜部P1の下端から下方に延在する立設部P2と、を含む。傾斜部P1は、天壁33と、筐体30の周囲に設けられた水堀53の貯水空間R2と、を繋ぐように傾斜している。このため、傾斜部P1の外面34bに滴下された雨水等は、外面34bを流下して貯水空間R2に導かれる。立設部P2は、傾斜部P1の下端から対向方向D1に沿って直線状に延在し、カバー32に対して垂直に立設している。立設部P2は、例えば、水堀53の環状壁部53bに接触する位置に配置されている。
【0027】
送電コイル10は、回路から供給された交流電力によって磁場を発生させる。送電コイル10は、例えば、同一平面内で渦巻状に巻回された導線によって形成される。送電コイル10は、例えばサーキュラー型のコイルである。サーキュラー型のコイルにおいて、導線は、巻軸(コイル軸)の周りを囲むように巻線方向に巻かれている。巻軸は、例えば、天壁33の内面33a及び外面33bの法線方向と一致する。送電コイル10は、導線が渦巻状に巻回された態様であればよく、一層であっても多層であってもよい。巻軸方向から見た送電コイル10の形状は、例えば矩形、円形、又は楕円形などの種々の形状を採り得る。導線としては、例えば、互いに絶縁された複数の導体素線が撚り合わされたリッツ線が用いられてもよく、表皮効果による高周波抵抗を抑えたリッツ線が用いられてもよい。導線は、例えば、銅又はアルミニウムの単線であってもよい。
【0028】
図4に示すように、送電コイル10は、例えば、平板状の部材であるボビン11の溝にはめ込まれている。ボビン11は、非磁性且つ非導電性の材料によって形成されている。ボビン11の材料として、例えばシリコーン又はポリフェニレンサルファイド樹脂などを採用してもよい。そして、ボビン11がベース31に固定されることにより、筐体30の内部における送電コイル10の位置が定まる。ボビン11とベース31との間には、フェライト板12が設けられている。フェライト板12は、例えば矩形平板状のフェライトコアである。フェライト板12は、磁性体であって、送電コイル10から発生した磁力線の方向付け及び集約を行う。フェライト板12は、コイル保持部材13に保持されている。コイル保持部材13は、例えば中空部材であり、コイル保持部材13の中空箇所にフェライト板12が配置されている。
【0029】
図2に示す冷却機構50は、送電コイル10を冷却するために設けられている。冷却機構50は、水Wを吸収可能な給水スペーサ51と、給水スペーサ51に水Wを供給するように構成された給水機構52と、を有している。給水スペーサ51は、複数の細孔を有する多孔質構造によって構成された吸水部材である。複数の細孔は、給水スペーサ51の内部に形成され、給水スペーサ51の表面において開口している。給水スペーサ51は、このような複数の細孔を有することにより、水Wを吸収可能な吸水性を有する。ここでの「水」は、添加物及び/又は不純物等の物質を含む水であってもよいし、当該物質を含まない純粋な水であってもよい。「水」の例としては、水道水、雨水、河川水、地下水、又は蒸留水等が挙げられる。給水スペーサ51は、吸水した水分を保持する保水性を有してもよい。例えば、給水スペーサ51は、シリコーン又はセルロース等を原材料とするスポンジであってもよい。また、給水スペーサ51の多孔質構造は、複数の繊維が重なり合うことによって構成されてもよい。例えば、給水スペーサ51は、レーヨン繊維等によって構成される不織布であってもよい。本実施形態では、給水スペーサ51としてシリコーン系のスポンジを用いた場合を例示する。
【0030】
図2に示すように、給水スペーサ51は、例えば、矩形板状(直方体)を呈しており、筐体30上に重なるように配置されている。具体的には、
図3及び
図4に示すように、給水スペーサ51は、カバー32の外面33bを覆うように配置されている。より具体的には、給水スペーサ51は、外面33bのうち、送電コイル10と対向方向D1に重なる部分を覆うように配置されている。本実施形態では、給水スペーサ51は、外面33bの全面を覆っているが、必ずしも外面33bの全面を覆っている必要は無い。例えば、給水スペーサ51は、外面33bのうち、送電コイル10と対向方向D1に重なる部分を含む一部のみを覆っていてもよい。対向方向D1から見た給水スペーサ51の面積は、外面33bの面積と同一であってもよいし、外面33bの面積よりも小さくてもよい。或いは、対向方向D1から見た給水スペーサ51の面積は、外面33bの面積よりも大きくてもよい。給水スペーサ51の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下としてよい。
【0031】
給水スペーサ51の下面51aは、カバー32の外面33bと熱的に接触している。ここで「熱的に接触する」とは、2つの部材が直接的に又は他の部材を介して間接的に接触しており、当該2つの部材の間において熱の伝導が可能な状態にあることをいう。本実施形態では、給水スペーサ51の下面51aは、カバー32の外面33bと直接的に接触しており、外面33bと密着している。しかし、給水スペーサ51の下面51aは、例えば、外面33bに付着し得る熱伝導性の異物(例えば金属異物)を介してカバー32の外面33bと間接的に接触していてもよい。つまり、下面51aと外面33bとの間に当該異物が介在していてもよい。また、本実施形態では、給水スペーサ51の下面51aは、カバー32の外面33bに対して接合されていないため、筐体30から容易に取り外し可能となっている。しかし、給水スペーサ51の下面51aは、外面33bに対して接着剤等によって接合されていてもよく、筐体30から取り外し不能となっていてもよい。
【0032】
給水スペーサ51は、給水機構52から供給される水Wを吸収することにより、カバー32の外面33b上に水Wが存在する状態を維持する。ここで、給水スペーサ51は、多孔質構造によって構成されるため、給水スペーサ51の内部において毛細管現象により水Wを拡散させる機能を有する。その結果、給水スペーサ51は、カバー32の外面33bの広い範囲に水Wを存在させることができる。そして、給水スペーサ51は、カバー32の外面33bと熱的に接触しているため、筐体30に収容された送電コイル10が生じた熱は、カバー32を介して給水スペーサ51に吸収された水Wに伝わる。このとき、給水スペーサ51の水Wが気化して周囲から熱を奪うことによって、筐体30及び筐体30の内部の送電コイル10が冷却される。具体的には、筐体30の熱を奪われることによって筐体30が直接的に冷却され、これに応じて送電コイル10の熱が筐体30に移動し、これにより、送電コイル10が間接的に冷却される。従って、カバー32の外面33b上の給水スペーサ51に水Wを供給すれば、送電コイル10を冷却する効果が得られる。なお、ジョイント部54と外面34bとの間に異物が介在する場合には、当該異物を冷却する効果も得られる。
【0033】
給水スペーサ51による送電コイル10の冷却効果を効率的に得る観点からは、給水スペーサ51が耐熱性を有することが適している。ここでの耐熱性とは、筐体30の温度が上昇したときに給水スペーサ51が塑性変形し難い性質を有することを意味する。給水スペーサ51が耐熱性を有することにより、給水スペーサ51がカバー32の外面33bに対して広い範囲で熱的に接触した状態を維持できるため、筐体30及び筐体30の内部の送電コイル10を効率的に冷却することが可能となる。また、送電コイル装置1と受電コイル装置2との間の電磁気的結合は、カバー32及びカバー32上の給水スペーサ51を透過して行われるので、非接触給電が高効率で行われるよう、給水スペーサ51は、電磁気的結合に影響しない非磁性且つ非導電性の材料により構成されることが適している。
【0034】
図2に示すように、給水機構52は、水堀53と、ジョイント部54と、タンク55と、センサ56と、を含む。水堀53は、給水スペーサ51に供給するための水Wを貯留するために設けられた貯水部である。水堀53に貯留される水Wとしては、例えば、タンク55から供給される水の他、降雨による雨水が挙げられる。水堀53は、例えば、筐体30を収容可能なトレイ状の部材である。水堀53は、電磁気的結合に影響しない非磁性且つ非導電性の材料(例えば、FRP)によって構成されてもよい。
図4に示すように、水堀53は、矩形板状の底部53aと、底部53aの周縁部から立設すると共に、底部53aの中央部を囲むように環状に延在する環状壁部53bと、を含む。
【0035】
底部53aは、対向方向D1から見て、筐体30よりも一回り大きい面積を有している。底部53aの中央部には、筐体30のベース31が載置される。環状壁部53bは、底部53aに載置される筐体30を囲むように配置されている。環状壁部53bは、対向方向D1から見て、矩形環状を呈している。環状壁部53bは、例えば、底部53aに対して垂直に設けられており、対向方向D1に沿っている。底部53aと環状壁部53bとによって囲まれた空間は、水Wを貯留するための貯水空間R2となっている。貯水空間R2は、例えば、カバー32の外面33b上の給水スペーサ51よりも低い位置にある。すなわち、貯水空間R2は、対向方向D1において給水スペーサ51に対して底部53a側に位置している。貯水空間R2は、上方(すなわち、対向方向D1における給水スペーサ51側)が開放された直方体状の空間である。環状壁部53bの間隔、すなわち、環状壁部53bを構成する2つの壁部の間の距離は、例えば22mmに設定されてもよい。
【0036】
ジョイント部54は、貯水空間R2に貯留された水Wを給水スペーサ51に受け渡す受渡部として設けられている。ジョイント部54は、複数の細孔を有する多孔質構造によって構成された吸水部材(別の吸水部材)であり、給水スペーサ51と同様、水Wを吸水可能な吸水性を有する。ジョイント部54は、給水スペーサ51と同様、吸水性に加えて保水性及び耐熱性を有してもよいし、非磁性且つ非導電性であってもよい。ジョイント部54は、給水スペーサ51と同一の材料によって構成されてもよいし、給水スペーサ51とは異なる材料によって構成されてもよい。本実施形態では、ジョイント部54がレーヨン繊維の不織布によって構成される場合を例示する。なお、ジョイント部54は、給水スペーサ51と同一のシリコーン系のスポンジによって構成されてもよい。
【0037】
ジョイント部54は、例えば、長方形状を有するシート状を呈している。
図4及び
図5に示すように、ジョイント部54は、筐体30の外部において貯水空間R2から給水スペーサ51まで上方に延在しており、貯水空間R2と給水スペーサ51とを接続している。ジョイント部54の下端54b(すなわち、対向方向D1における貯水空間R2側の一端)は、貯水空間R2に接触する位置にある。ジョイント部54の下端54bが貯水空間R2に接触するとは、ジョイント部54の下端54bが貯水空間R2の内部に配置された状態を意味する。ジョイント部54の下端54bは、具体的には、貯水空間R2に貯留される水Wに接触可能な位置、すなわち、水堀53に貯留される水Wの最低水位(基準水位)よりも低い位置にある。本実施形態では、ジョイント部54の下端54bは、水堀53の底部53aに接触する位置にあるが、必ずしも底部53aに接触する位置にある必要は無い。例えば、ジョイント部54の下端54bは、貯水空間R2内の水Wに接触可能な範囲内において、水堀53の底部53aから対向方向D1に離間していてもよい。
【0038】
ジョイント部54の上端54a(すなわち、対向方向D1における給水スペーサ51側の他端)は、例えば、給水スペーサ51の側面51bに接触する位置にある。ジョイント部54の上端54aは、給水スペーサ51の上面51cに接触位置にあってもよい。なお、給水スペーサ51の上面51cは、下面51aとは反対側に位置する面であって、対向方向D1において送電コイル10とは反対側を向く面である。給水スペーサ51の側面51bは、下面51a及び上面51cを対向方向D1に接続する面である。ジョイント部54は、例えば、貯水空間R2と給水スペーサ51との間のカバー32の側壁34の傾斜部P1と熱的に接触している。具体的には、ジョイント部54は、傾斜部P1の外面34bと直接的に接触しており、外面34bと密着している。ジョイント部54は、例えば、外面34bに付着し得る熱伝導性の異物を介して外面34bと間接的に接触していてもよい。つまり、ジョイント部54と外面34bとの間に当該異物が介在していてもよい。ジョイント部54の下端54b及び上端54aは、水堀53の底部53a及び給水スペーサ51の側面51bにそれぞれ接合されてもよい。
【0039】
このように、ジョイント部54の下端54bが貯水空間R2内の水Wに接触可能な位置にあるため、ジョイント部54の下端54bは、貯水空間R2内の水Wに浸漬された状態となっている。このため、貯水空間R2内の水は、ジョイント部54に吸収され、毛細管現象によりジョイント部54の上端54aに移動する。そして、ジョイント部54の上端54aに移動した水Wは、上端54aに接触する給水スペーサ51に受け渡される。給水スペーサ51に受け渡された水Wは、送電コイル10の冷却に利用される。送電コイル10の冷却の際、給水スペーサ51の水Wが気化すると、ジョイント部54を介して貯水空間R2から給水スペーサ51へ更に給水され、給水スペーサ51が水Wを含んだ状態が維持される。つまり、送電コイル10の冷却効果が維持される。
【0040】
ジョイント部54は、カバー32の外面34bと熱的に接触しているため、ジョイント部54に吸収される水Wについても、給水スペーサ51に吸収された水Wと同様に、送電コイル10の冷却に利用することができる。従って、本実施形態では、ジョイント部54は、貯水空間R2内の水Wを給水スペーサ51に受け渡す機能と、送電コイル10を冷却する機能との両方を有する。本実施形態では、
図2に示すように、一つのジョイント部54が、カバー32の外面34b上に配置されているが、複数のジョイント部54がカバー32の外面34b上に配置されてもよい。
【0041】
本実施形態のように、ジョイント部54の多孔質構造が、複数の繊維が重なり合うことによって構成される場合、繊維の方向は、ジョイント部54の下端54bから上端54aに向かう方向としてよい。この場合、貯水空間R2内の水Wを下端54bから上端54aへと移動させやすくすることができるので、ジョイント部54は、貯水空間R2内の水Wを給水スペーサ51に受け渡す機能をより効果的に発揮することが可能となる。
【0042】
ジョイント部54の長手方向の長さ(すなわち、上端54aから下端54bまでの長さ)は、少なくとも貯水空間R2と給水スペーサ51の側面51bとを結ぶ線の距離以上の長さに設定される。ジョイント部54の短手方向の幅は、例えば、天壁33の外面33bの同方向の幅(すなわち、外面33bの一辺の長さ)よりもよりも小さく設定される。一例として、ジョイント部54の短手方向の幅は、天壁33の外面33bの幅の0.05倍である。ジョイント部54の厚みは、例えば、環状壁部53bの間隔、すなわち、環状壁部53bを構成する2つの壁部の間の距離よりも小さく設定される。
【0043】
図4に示すように、タンク55は、貯水空間R2に供給する水Wを収容するための収容空間R3を有する給水タンクである。タンク55の収容空間R3は、例えば、貯水空間R2よりも高い位置に設けられている。収容空間R3と貯水空間R2とは、配管57(流路)によって接続されている。配管57の途中には、圧力調整弁58(バルブ)が設けられている。圧力調整弁58は、配管57の流体圧を定圧に保持すべく、配管57の流路を開閉する。配管57の流体圧が基準圧よりも小さい場合には、圧力調整弁58が配管57の流路を閉じる閉弁状態に維持される。一方、貯水空間R2の水位が低下することで配管57の流体圧が基準圧以上になった場合には、圧力調整弁58は、配管57の流路を開く開弁状態となる。収容空間R3の水量は、貯水空間R2の水量よりも大きくなるように設定されている。
【0044】
ここで、配管57の流体圧は、収容空間R3の水位と、貯水空間R2の水位との関係に応じて決定される。収容空間R3の水位は、例えば、常に一定に保持される。そこで、上記の基準圧は、貯水空間R2の水位が基準水位であるときの配管57の流体圧としてよい。基準水位は、貯水空間R2に貯留される水Wの基準水位としてよい。基準水位は、例えば、水堀53の底部53aの高さを基準として、環状壁部53bの上端の高さの半分(すなわち、0.5倍)の高さとしてよい。この場合、貯水空間R2の水位が基準水位よりも高い場合には、配管57の流体圧が基準圧よりも小さいため、圧力調整弁58が閉弁状態となる。一方、貯水空間R2の水位が基準水位以下である場合には、配管57の流体圧が基準圧以上となるため、圧力調整弁58が開弁状態となる。この場合、貯水空間R2の水位が基準水位よりも高くなるように、収容空間R3から貯水空間R2へと水Wが供給される。なお、水堀53の底部53aの高さを基準として、環状壁部53bの上端の高さの0.8倍の高さに達するまで貯水空間R2に水Wが供給されたときに、圧力調整弁58が閉弁状態となるように、すなわち、収容空間R3から貯水空間R2への給水が停止されるように、設定されてもよい。
【0045】
図2に示すセンサ56は、貯水空間R2の水位を検知する水位センサである。具体的には、センサ56は、貯水空間R2に水Wが貯留されているか否かを検知する。センサ56は、貯水空間R2に水Wが貯留されていない場合(すなわち、貯水空間R2が空の場合)、貯水空間R2に水Wが貯留されていないことを知らせる警告信号を出力する。例えば、タンク55の収容空間R3に水Wが収容されていない場合(すなわち、収容空間R3が空の場合)、貯水空間R2に水Wが貯留されない状態となる。この警告信号が出力されたとき、タンク55の収容空間R3への給水が必要である旨を知らせる通知がユーザに通知されてもよいし、送電コイル装置1及び受電コイル装置2の非接触給電動作の停止がなされてもよい。
【0046】
図6に示すように、カバー32の側壁34の傾斜部P1には、排水管60が設けられている。排水管60は、傾斜部P1の外面34bに滴下された雨水等を水堀53の貯水空間R2に導くように構成されている。排水管60は、具体的には、傾斜部P1の外面34b上から、水堀53の貯水空間R2まで延在している。外面34b上を流れる雨水等は、排水管60内を通って貯水空間R2へと導かれる。
【0047】
以上に説明した送電コイル装置1及び冷却機構50によって得られる作用・効果を説明する。送電コイル装置1では、上述したように、給水スペーサ51は筐体30の外面と熱的に接触しているため、筐体30に収容された送電コイル10が生じた熱は、給水スペーサ51に伝わる。このとき、給水スペーサ51が吸収した水Wが気化して周囲から熱を奪うことによって筐体30及び筐体30の内部の送電コイル10を冷却する。従って、送電コイル装置1によれば、冷却液を循環させるためのポンプといった付帯装置を要することなく、給水スペーサ51に水Wを供給する簡易な構成によって送電コイル10を冷却することが可能となる。これにより、冷却機構50を設けるために装置構成が大型化及び複雑化するといった事態の発生を抑制できる。その結果、装置の点検及び保守の負担が増大する事態を抑制でき、コストが増大する事態を抑制できる。
【0048】
本実施形態のように、給水スペーサ51は、カバー32の外面33bに対して取り外し可能に取り付けられていてもよい。この場合、給水スペーサ51の交換等の保守作業を容易に行うことができるので、保守性を向上できる。
【0049】
本実施形態のように、給水スペーサ51は、カバー32の外面33bであって、ベース31とカバー32との対向方向D1において送電コイル10と重なる部分に配置されていてもよい。この場合、特に高温になりやすい部分に給水スペーサ51が配置されるので、筐体30及び筐体30の内部の送電コイル10を効果的に冷却することが可能となる。
【0050】
本実施形態のように、給水機構52は、水Wを貯水するための貯水空間R2を有する水堀53と、貯水空間R2に貯留される水Wを給水スペーサ51に受け渡すように構成されたジョイント部54と、を含んでもよい。この場合、給水スペーサ51に水Wを供給する給水機構52を簡易に実現できる。
【0051】
本実施形態のように、ジョイント部54は、貯水空間R2と給水スペーサ51とに接触していてもよい。この場合、貯水空間R2に貯留される水Wは、貯水空間R2からジョイント部54に吸収され、ジョイント部54から給水スペーサ51に受け渡される。この構成によれば、貯水空間R2に貯留される水Wを給水スペーサ51に受け渡す構成を簡易に実現できる。
【0052】
本実施形態のように、ジョイント部54は、カバー32の外面33bと熱的に接触していてもよい。この場合、筐体30に収容された送電コイル10が生じた熱は、ジョイント部54にも伝わり、ジョイント部54が吸収した水Wが気化して周囲から熱を奪うことによって筐体30及び筐体30の内部の送電コイル10を冷却する。つまり、この構成によれば、給水スペーサ51に吸収された水Wのみならず、ジョイント部54に吸収された水Wも、筐体30及び筐体30の内部の送電コイル10の冷却のために利用できる。これにより、送電コイル10を効果的に冷却することが可能となる。
【0053】
本実施形態のように、圧力調整弁58は、貯水空間R2の水位が基準水位以下である場合に、配管57の流路を開くように構成されていてもよい。この場合、貯水空間R2の水位が不足しているときに、タンク55の収容空間R3から貯水空間R2へ自動的に給水することができる。これにより、貯水空間R2の水位が不足する事態を抑制でき、貯水空間R2から給水スペーサ51への給水をより確実に行うことが可能となる。
【0054】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0055】
<第1変形例>
図7及び
図8は、第1変形例に係る送電コイル装置1Aを示している。本変形例に係る送電コイル装置1Aと上記実施形態に係る送電コイル装置1との相違点は、給水スペーサの形状である。本変形例に係る送電コイル装置1Aの冷却機構50Aは、上記実施形態に係る給水スペーサ51に代えて、給水スペーサ51Aを有している。給水スペーサ51Aは、給水スペーサ51とは異なり、対向方向D1から見て円環状を呈している。
図8に示すように、給水スペーサ51Aは、送電コイル10の直上を覆うように配置されている。すなわち、給水スペーサ51Aは、カバー32の外面33bのうち、送電コイル10と対向方向D1(
図4参照)に対向する部分を覆うように配置されている。
【0056】
外面33bのうち送電コイル10と対向方向D1に対向する部分(すなわち、送電コイル10の直上)は、発熱源である送電コイル10との距離が小さいため、送電コイル10の熱が伝わりやすく特に高温になりやすい。そこで、本変形例のように給水スペーサ51Aが円環状を有することにより、特に高温になりやすい送電コイル10の直上を主に覆うように配置することができるので、筐体30及び送電コイル10を効果的に冷却することが可能となる。更に、このような構成によれば、吸水部材がカバー32の外面33bの全面を覆う形状である場合と比べて、給水スペーサ51Aの材料使用量を削減でき、製造コストを低く抑えることができる。
【0057】
送電コイル装置1Aの冷却機構50Aは、水堀53の水Wを給水スペーサ51Aに受け渡す受渡部として、複数(本変形例では2つ)のジョイント部54Aを有する。各ジョイント部54Aは、例えば、上記実施形態に係るジョイント部54と同一の構成を有する。
図7及び
図8に示すように、各ジョイント部54Aは、例えば、送電コイル10の中心に関して点対称に配置されている。各ジョイント部54Aは、上記実施形態に係るジョイント部54と同様、水堀53の貯水空間R2と給水スペーサ51Aとに接触するように配置され、貯水空間R2内の水Wを給水スペーサ51Aに受け渡す。このように、水堀53の水Wを給水スペーサ51Aに受け渡す受渡部として複数のジョイント部54Aが設けられることにより、水堀53の水Wを給水スペーサ51Aに受け渡す経路(流路)をより多く確保することができるので、より多くの水Wを給水スペーサ51Aに供給することができる。これにより、筐体30及び送電コイル10をより効果的に冷却することが可能となる。
【0058】
本変形例では、給水スペーサ51Aがスポンジによって構成される場合を示しているが、給水スペーサ51Aは、ジョイント部54Aと同様の不織布によって構成されてもよい。このように、給水スペーサ51Aの多孔質構造が、複数の繊維が重なり合うことによって構成される場合、繊維の方向は、円環状の給水スペーサ51Aの径方向に沿った方向としてよい。この場合、ジョイント部54Aが吸収した水を、給水スペーサ51Aの外側から中心側へと移動させやすくすることができる。つまり、給水スペーサ51Aは、その内部において水Wを拡散させる機能をより効果的に発揮できる。
【0059】
<第2変形例>
図9及び
図10は、第2変形例に係る送電コイル装置1Bを示している。本変形例に係る送電コイル装置1Bと上記実施形態に係る送電コイル装置1との相違点は、筐体の形状である。本変形例に係る送電コイル装置1Bは、上記実施形態に係る筐体30に代えて、筐体30Bを備えている。
図10に示すように、筐体30Bの側壁34Bは、天壁33に対して垂直に形成されており、対向方向D1に沿って直線状に延在している。つまり、側壁34Bは、上記実施形態に係る傾斜部P1に相当する部分を有していない。側壁34Bは、例えば、環状壁部53bに対して所定の距離を空けて離間している。また、本変形例に係る送電コイル装置1Bの冷却機構50Bは、水堀53の水Wを給水スペーサ51に受け渡す受渡部として、複数(本変形例では2つ)のジョイント部54Bを有する。各ジョイント部54Bは、例えば、上記実施形態に係るジョイント部54と同一の構成を有する。
図9に示すように、各ジョイント部54Bは、例えば、送電コイル10(
図3参照)の中心に関して点対称に配置されている。
【0060】
図10に示すように、ジョイント部54Bは、上記実施形態に係るジョイント部54とは異なり、カバー32の側壁34Bの外面34bに接触していない。つまり、ジョイント部54Bは、側壁34Bの外面34bから離間している。ジョイント部54Bの下端54bは、水堀53の貯水空間R2(具体的には、底部53a)に接触しており、貯水空間R2内の水Wに浸漬された状態となっている。ジョイント部54Bの上端54aは、貯水空間R2から上方に延在し、給水スペーサ51の側面51bに接触している。従って、貯水空間R2内の水は、下端54bからジョイント部54Bに吸収され、毛細管現象によりジョイント部54Bの上端54aに移動する。そして、上端54aに移動した水は、上端54aに接触する給水スペーサ51に受け渡される。このような形態であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0061】
<第3変形例>
図11(a)及び
図11(b)は、第3変形例に係る送電コイル装置1Cを示している。本変形例に係る送電コイル装置1Cと上記実施形態に係る送電コイル装置1との相違点は、水堀53の水Wを給水スペーサ51に受け渡す受渡部の構成である。本変形例に係る送電コイル装置1Cは、水堀53の水Wを給水スペーサ51に受け渡す受渡部として、上記実施形態に係るジョイント部54に代えて、ジョイント部54Cと、ジョイント部54Cに取り付けられた変形部材65と、を有する。また、本変形例に係る送電コイル装置1Cでは、給水スペーサ51の側面51bは、対向方向D1から見たときに、天壁33よりも外側に僅かに突出した位置にある。
【0062】
変形部材65は、例えば、送電コイル10からの熱伝達、或いはコイルが発生する磁場に起因する誘導加熱による温度上昇に応じて変形可能な感熱変形部材である。本変形例では、変形部材65が送電コイル10からの熱伝達に応じて変形する場合について説明する。変形部材65は、ばね61と、ばね61に取り付けられた支持部62,63と、を含む。ばね61は、形状記憶合金により構成される。形状記憶合金としては、例えば、Ti(チタン)-Ni(ニッケル)系合金が挙げられる。ばね61は、例えば、支持部62,63を介してカバー32の側壁34の傾斜部P1の外面34bに取り付けられている。支持部62,63は、例えば、板状の部材であり、傾斜部P1の外面34bから立設している。支持部62,63は、外面34b上において対向方向D1に沿って互いに対面するように配置されている。
【0063】
支持部62は、支持部63よりも下側(すなわち、支持部63に対して対向方向D1のベース31側)に配置されている。ばね61は、支持部62,63の間に挟まれるように配置されており、対向方向D1に沿って延在している。ばね61の下端は、支持部62の上面に固定され、ばね61の上端は、支持部63の下面に固定されている。支持部62の側面は、傾斜部P1の外面34bに固定されている。一方、支持部63の側面は、傾斜部P1の外面34bに対して摺動可能となっている。従って、ばね61の下端の位置が固定される一方、ばね61の上端の位置は移動可能となっている。支持部62,63は、熱伝導性を有しており、送電コイル10からカバー32に伝達された熱をばね61に伝える。
【0064】
ジョイント部54Cは、上記実施形態と同様、長方形状を有するシート状を呈している。ジョイント部54Cの下端54bは、水堀53の貯水空間R2内の水Wに接触している。具体的には、ジョイント部54Cの下端54bは、水堀53の底部53aに接触している。ジョイント部54Cは、貯水空間R2から上方に延在し、ばね61を横切って支持部63の上面まで延在している。ジョイント部54Cの上端54aは、支持部63の上面上に位置し、対向方向D1において給水スペーサ51の下面51aに対向している。ジョイント部54Cの上端54aは、例えば、支持部63の上面に接合されている。ジョイント部54Cの下端54bから上端54aまでの経路において、ジョイント部54Cは、支持部62,63の側面に接触しており、ばね61には接触していない。ジョイント部54Cは、支持部62,63の側面に接合されてもよい。カバー32の熱は、支持部62,63を介してばね61に伝達される。
【0065】
ばね61の温度は、送電コイル10からの熱伝達の影響により、送電コイル10の温度に応じて変化する。ばね61は、送電コイル10の温度に応じて変形し、互いに異なる2つの形態を有する。送電コイル10の温度が高温でない通常温度である場合、ばね61の温度も、送電コイル10の温度に応じた通常温度となる。この場合、
図11(a)に示すように、ばね61は、縮んだ状態となり、対向方向D1において給水スペーサ51の下面51aから大きく離間した非給水形態(第2形態)をとる。非給水形態では、ばね61の上方の支持部63は、対向方向D1において給水スペーサ51の下面51aから所定距離離間しており、当該所定距離は、ジョイント部54Cの厚みよりも小さい。そのため、支持部63上のジョイント部54Cは、給水スペーサ51の下面51aに接触せず、下面51aから離間した状態となっている。つまり、非給水形態では、ジョイント部54Cは、貯水空間R2内の水Wに接触する一方、給水スペーサ51に接触しない(すなわち、給水スペーサ51から離間した)状態となっている。この場合、貯水空間R2からジョイント部54Cに吸収された水Wは、給水スペーサ51へ受け渡されないため、給水スペーサ51への給水が行われない。
【0066】
一方、送電コイル10の温度が高温である場合、送電コイル10の熱がばね61に伝わり、ばね61の温度も高温となる。この場合、
図11(b)に示すように、ばね61は、伸びた状態となり、非給水形態から、給水スペーサ51の下面51aに近接した給水形態(第1形態)に変形する。給水形態では、支持部63上のジョイント部54Cが給水スペーサ51の下面51aに接触した状態となっている。つまり、給水形態では、ジョイント部54Cは、貯水空間R2内の水W及び給水スペーサ51の双方に接触した状態となっている。この場合、貯水空間R2からジョイント部54Cに吸収された水Wが、給水スペーサ51へ受け渡されるため、給水スペーサ51への給水が行われる。
【0067】
言い換えれば、ばね61の温度が第1温度範囲にある場合、
図11(a)に示すように、ばね61は、ジョイント部54Cが給水スペーサ51に接触しない非給水形態となるため、給水スペーサ51への給水が行われない。一方、ばね61の温度が第2温度範囲にある場合、
図11(b)に示すように、ばね61は、非給水形態から、ジョイント部54Cが貯水空間R2及び給水スペーサ51の双方に接触する給水形態に変形するため、給水スペーサ51への給水が行われる。第1温度範囲は、冷却を必要としない送電コイル10の温度範囲に対応するばね61の温度範囲である。ばね61の温度は、送電コイル10が非接触給電動作を行っていない場合、或いは、送電コイル10が非接触給電動作を行っていても冷却を要するほど高温でない場合、第1温度範囲となる。第1温度範囲は、例えば、50℃未満である。第2温度範囲は、高温状態となる送電コイル10の温度範囲に対応するばね61の温度範囲であり、第1温度範囲よりも高温である。ばね61の温度は、非接触給電動作により冷却を要するほど送電コイル10が高温になった場合に、第2温度範囲となる。第2温度範囲は、例えば、50℃以上である。なお、ばね61は、送電コイル10の温度が第2温度範囲から第1温度範囲に下がった場合には、給水形態から非給水形態に変形する。
【0068】
本変形例に係る送電コイル装置1Cでは、送電コイル10の温度に応じてばね61が非給水形態から給水形態に変形するように構成されている。このため、給水スペーサ51への給水が必要な場合(すなわち、送電コイル10の冷却が必要な場合)のみに給水スペーサ51へ給水され、給水スペーサ51への給水が不要な場合(すなわち、送電コイル10の冷却が不要な場合)には、給水スペーサ51への給水が停止される。このように、送電コイル10の冷却が不要な場合に給水スペーサ51への給水を停止することによって、水Wが必要以上に消費される事態を抑制できる。また、本変形例に係る送電コイル装置1Cでは、送電コイル10の温度に応じて非給水形態と給水形態との切り替えを自動的に行うことができるので、送電コイル10の冷却が不要な場合に給水スペーサ51への給水を停止する構成を簡易に実現できる。なお、本変形例では、ばね61が非給水形態である場合に、ジョイント部54Cの下端54bが貯水空間R2内の水Wに常に接触している構成について説明したが、逆に、ジョイント部54Cの上端54aが給水スペーサ51に常に接触している構成であってもよい。
【0069】
上述したように、ばね61は、送電コイル10が発生する磁場に起因する誘導加熱による温度上昇に応じて熱変形することもある。送電コイル10が非接触給電動作を行う際(非接触給電時)、ばね61が送電コイル10の近傍に配置されているため、送電コイル10が発生する磁場によってばね61に渦電流が発生する。その渦電流のジュール熱により、ばね61が加熱されて温度上昇(発熱)する。この加熱原理を誘導加熱という。この誘導加熱によるばね61の温度上昇により、ばね61は、非給水形態から給水形態に変形し、給水スペーサ51へ給水を行う給水状態にすることが可能である。従って、高温となった送電コイル10からの熱伝達によってばね61が熱変形する場合と、誘導加熱による温度上昇によってばね61が熱変形する場合と、のいずれかの条件を満たす場合に、ばね61が非給水形態から給水形態に変形して給水状態とすることができる。
【0070】
ばね61が、送電コイル10からの熱伝達によって熱変形する場合、ばね61が熱変形により非給水形態から給水形態に切り替わるタイミングは、上述のように、送電コイル10の温度が冷却を要するほど高温になるタイミングとなる。この場合、送電コイル10の温度の変化に応じて、ばね61の非給水形態と給水形態との切り替えが行われる。一方、ばね61が、誘導加熱による温度上昇に応じて熱変形する場合、ばね61が熱変形により非給水形態から給水形態に切り替わるタイミングは、送電コイル10が非接触給電動作を開始するタイミングとなる。非接触給電開始時に送電コイル10が発生する磁場に起因する誘導加熱によって、ばね61の温度が第1温度範囲から第2温度範囲に上昇し、ばね61が非給水形態から給水形態に切り替わる。そして、送電コイル10が非接触給電を終了するタイミングで、ばね61の温度が第2温度範囲から第1温度範囲に下がり、ばね61が給水形態から非給水形態に切り替わる。従って、ばね61が送電コイル10からの熱伝達によって熱変形する場合、送電コイル10の非接触給電動作の開始及び終了のタイミングで、ばね61の非給水形態と給水形態との切り替えが行われる。この場合、送電コイル10の温度が冷却を要するほどに高温になっていなくても、送電コイル10が非接触給電を開始するタイミングで、ばね61の非給水形態から給水形態への切り替えが行われることがある。
【0071】
<第4変形例>
図12(a)及び
図12(b)は、第4変形例に係る送電コイル装置1Dを示している。本変形例に係る送電コイル装置1Dと上記実施形態に係る送電コイル装置1との相違点は、水堀53の水Wを給水スペーサ51に受け渡す受渡部の構成である。本変形例に係る送電コイル装置1Dは、水堀53の水Wを給水スペーサ51に受け渡す受渡部として、上記実施形態に係るジョイント部54に代えて、ジョイント部54Dと、ジョイント部54Dに取り付けられた変形部材75と、を有する。また、本変形例に係る送電コイル装置1Dでは、給水スペーサ51の側面51bは、対向方向D1から見たときに、天壁33よりも外側に僅かに突出した位置にある。
【0072】
変形部材75は、例えば、送電コイル10からの熱伝達、或いはコイルが発生する磁場に起因する誘導加熱による温度上昇に応じて変形可能な感熱変形部材である。本変形例では、変形部材75が送電コイル10からの熱伝達に応じて変形する場合について説明する。変形部材75は、熱膨張係数(熱膨張率)が互いに異なる2枚の金属板71,72が貼り合わされたバイメタルと、バイメタルを支持する支持部73と、を含む。支持部73は、例えば、環状壁部53bのカバー32側の壁部の直上であって、カバー32の外面34b上(具体的には、カバー32の側壁34の立設部P2の直上)に固定されている。金属板71,72は、支持部73から対向方向D1に沿って上方に延在している。金属板71,72の下端(すなわち、対向方向D1における支持部73側の一端)は、支持部73に固定されている。金属板71,72の上端(すなわち、対向方向D1における支持部73側の他端)は、部材に固定されていない自由端となっている。支持部73は、熱伝導性を有しており、送電コイル10からカバー32に伝達された熱を金属板71,72に伝える。
【0073】
金属板71,72は、対向方向D1と交差する交差方向D2に重ね合わされている。交差方向D2は、対向方向D1から見たときの送電コイル10の径方向に沿った方向である。金属板72は、交差方向D2において金属板71よりもカバー32側に位置している。金属板72の外面72aは、交差方向D2のカバー32側を向く面であり、金属板71の外面71aは、交差方向D2のカバー32とは反対側を向く面である。外面71a及び外面72aは、バイメタルの外面を構成する。金属板71は、第1熱膨張係数を有する。金属板72は、第1熱膨張係数よりも大きい第2熱膨張係数を有する。金属板71,72の材料(バイメタルの材料)としては、例えば、JIS C2530-1993「電気用バイメタル」に規定される材料を用いてもよい。なお、バイメタルは、3枚以上の金属板が貼り合わされた構成であってもよい。例えば、バイメタルは、金属板72の外面72aに張り合わされた別の金属板を更に有する構成であってもよい。この場合、当該別の金属板は、第2熱膨張係数よりも大きい第3熱膨張係数を有してもよい。
【0074】
ジョイント部54Dは、上記実施形態と同様、長方形状を有するシート状を呈している。ジョイント部54Dの下端54bは、水堀53の貯水空間R2内の水Wに接触している。具体的には、ジョイント部54Dの下端54bは、水堀53の底部53aに接触している。ジョイント部54Dは、貯水空間R2から上方に延在し、金属板71の外面71aから金属板71,72の上端を回り込んで金属板72の外面72aに達する位置まで延在している。ジョイント部54Dの上端54aは、金属板72の外面72a上に位置する。ジョイント部54Dの上端54aは、例えば、金属板72の外面72aに接合されている。ジョイント部54Dの下端54bから上端54aまでの経路において、ジョイント部54Dは、金属板71及び金属板72に接触している。
【0075】
金属板71,72の温度は、送電コイル10からの熱伝達の影響により、送電コイル10の温度に応じて変化する。金属板71,72は、送電コイル10の温度に応じて変形し、互いに異なる2つの形態を有する。送電コイル10の温度が高温でない通常温度である場合、金属板71,72も、送電コイル10の温度に応じた通常温度となる。この場合、
図12(a)に示すように、金属板71,72は、支持部73から上方に直線状に延在した非給水形態(第2形態)をとる。非給水形態では、金属板71,72の上端部は、交差方向D2において給水スペーサ51の側面51bから所定距離離間しており、当該所定距離は、ジョイント部54Dの厚みよりも小さい。そのため、金属板72の外面72a上のジョイント部54Dは、給水スペーサ51の側面51bに接触せず、側面51bから離間した状態となっている。つまり、非給水形態では、ジョイント部54Dは、貯水空間R2内の水Wに接触する一方、給水スペーサ51に接触しない(すなわち、給水スペーサ51から離間した)状態となっている。この場合、貯水空間R2からジョイント部54Dに吸収された水Wは、給水スペーサ51へ受け渡されないため、給水スペーサ51への給水が行われない。
【0076】
一方、送電コイル10の温度が高温である場合、送電コイル10の熱が金属板71,72に伝わり、金属板71,72の温度も高温となる。この場合、
図12(b)に示すように、金属板71,72は、非給水形態から、支持部73から給水スペーサ51の側面51b側に向かって湾曲した給水形態(第1形態)に変形する。具体的には、金属板72の熱膨張係数が金属板71の熱膨張係数よりも大きいので、送電コイル10の温度が高くなるにつれて、金属板71よりも金属板72が膨張する。その結果、金属板71,72が給水スペーサ51の側面51bに近づくように湾曲し、金属板72の外面72a上のジョイント部54Dが給水スペーサ51の側面51bに接触した状態となる。つまり、給水形態では、ジョイント部54Dは、貯水空間R2内の水W及び給水スペーサ51の双方に接触した状態となっている。この場合、貯水空間R2からジョイント部54Dに吸収された水Wが、給水スペーサ51へ受け渡されるため、給水スペーサ51への給水が行われる。
【0077】
言い換えれば、金属板71,72の温度が第1温度範囲にある場合、
図12(a)に示すように、金属板71,72は、ジョイント部54Dが給水スペーサ51に接触しない非給水形態となるため、給水スペーサ51への給水が行われない。一方、金属板71,72の温度が第2温度範囲にある場合、
図12(b)に示すように、金属板71,72は、非給水形態から、ジョイント部54Dが貯水空間R2及び給水スペーサ51の双方に接触する給水形態に変形するため、給水スペーサ51への給水が行われる。第1温度範囲は、冷却を必要としない送電コイル10の温度範囲に対応する金属板71,72の温度範囲である。金属板71,72の温度は、送電コイル10が非接触給電動作を行っていない場合、或いは、送電コイル10が非接触給電動作を行っていても冷却を要するほど高温でない場合、第1温度範囲となる。第1温度範囲は、例えば、50℃未満である。第2温度範囲は、高温状態となる送電コイル10の温度範囲に対応する金属板71,72の温度範囲であり、第1温度範囲よりも高温である。送電コイル10の温度は、非接触給電動作により冷却を要するほど送電コイル10が高温になった場合に、第2温度範囲となる。第2温度範囲は、例えば、50℃以上である。なお、金属板71,72は、送電コイル10の温度が第2温度範囲から第1温度範囲に下がった場合には、給水形態から非給水形態に変形する。
【0078】
本変形例に係る送電コイル装置1Dでは、送電コイル10の温度に応じて金属板71,72が非給水形態から給水形態に変形するように構成されている。このため、給水スペーサ51への給水が必要な場合(すなわち、送電コイル10の冷却が必要な場合)のみに給水スペーサ51へ給水される一方、給水スペーサ51への給水が不要な場合(すなわち、送電コイル10の冷却が不要な場合)には、給水スペーサ51への給水が停止される。このように、送電コイル10の冷却が不要な場合に給水スペーサ51への給水を停止することによって、水Wが必要以上に消費される事態を抑制できる。また、本変形例に係る送電コイル装置1Dでは、送電コイル10の温度に応じて非給水形態と給水形態との切り替えを自動的に行うことができるので、送電コイル10の冷却が不要な場合に給水スペーサ51への給水を停止する構成を簡易に実現できる。なお、本変形例では、金属板71,72が非給水形態である場合に、ジョイント部54Dの下端54bが貯水空間R2内の水Wに常に接触している構成について説明したが、逆に、ジョイント部54Dの上端54aが給水スペーサ51に常に接触している構成であってもよい。
【0079】
上述したように、金属板71,72は、送電コイル10が発生する磁場に起因する誘導加熱による温度上昇に応じて熱変形することもある。送電コイル10が非接触給電動作を行う際(非接触給電時)、金属板71,72が送電コイル10の近傍に配置されているため、送電コイル10が発生する磁場によって金属板71,72に渦電流が発生する。その渦電流のジュール熱により、金属板71,72が加熱されて温度上昇(発熱)する。この加熱原理を誘導加熱という。この誘導加熱による金属板71,72の温度上昇により、金属板71,72は、非給水形態から給水形態に変形し、給水スペーサ51へ給水を行う給水状態にすることが可能である。従って、高温となった送電コイル10からの熱伝達によって金属板71,72が熱変形する場合と、誘導加熱による温度上昇によって金属板71,72が熱変形する場合と、のいずれかの条件を満たす場合に、金属板71,72が非給水形態から給水形態に変形して給水状態とすることができる。
【0080】
金属板71,72が、送電コイル10からの熱伝達によって熱変形する場合、金属板71,72が熱変形により非給水形態から給水形態に切り替わるタイミングは、上述のように、送電コイル10の温度が冷却を要するほど高温になるタイミングとなる。この場合、送電コイル10の温度の変化に応じて、金属板71,72の非給水形態と給水形態との切り替えが行われる。一方、金属板71,72が、誘導加熱による温度上昇に応じて熱変形する場合、金属板71,72が熱変形により非給水形態から給水形態に切り替わるタイミングは、送電コイル10が非接触給電動作を開始するタイミングとなる。非接触給電開始時に送電コイル10が発生する磁場に起因する誘導加熱によって、金属板71,72の温度が第1温度範囲から第2温度範囲に上昇し、金属板71,72が非給水形態から給水形態に切り替わる。そして、送電コイル10が非接触給電を終了するタイミングで、金属板71,72の温度が第2温度範囲から第1温度範囲に下がり、金属板71,72が給水形態から非給水形態に切り替わる。従って、金属板71,72が誘導加熱による温度上昇に応じて熱変形する場合、送電コイル10の非接触給電動作の開始及び終了のタイミングで、金属板71,72の非給水形態と給水形態との切り替えが行われる。この場合、送電コイル10の温度が冷却を要するほどに高温になっていなくても、送電コイル10が非接触給電を開始するタイミングで、金属板71,72の非給水形態から給水形態への切り替えが行われることがある。
【0081】
<その他の変形例>
本開示のコイル装置は、ドローン等の無人航空機(UAV:Unmanned aerial vehicle)といった車両以外の移動体のバッテリを充電するための非接触給電システムに適用されてもよい。また、コイル装置は、移動体以外にも、家電製品等のバッテリを充電するための非接触給電システムに適用されてもよいし、誘導加熱システムや渦流探傷システムに適用されてもよい。本開示に係るコイル装置は、非接触給電システムにおいて電力を受ける受電コイル装置に適用されてもよい。また、上述された送電コイル装置は、路面Gに設置されることに限定されるものではなく、移動体に搭載されてもよい。この場合、受電コイル装置は、路面Gに設置され得る。更に、送電コイル装置及び受電コイル装置は、送電又は受電の一方のみを行うことに限定されるものではなく、送電及び受電の双方を行ってもよい。また、吸水部材(給水スペーサ)及び給水機構によって構成される冷却機構は、既存のコイル装置に適用されてもよい。
【0082】
本開示のコイルは、螺旋状(3次元的)にフェライトコアに巻かれたリッツ線によって構成されてもよい。つまり、本開示のコイルは、ソレノイド型コイルであってもよい。本開示の冷却機構において、吸水部材(給水スペーサ)と、受渡部としての別の吸水部材(ジョイント部)とは共に、不織布であってもよいし、スポンジであってもよい。また、吸水部材及び/又は別の吸水部材は、不織布とスポンジとが重ね合わされた2層構造を有してもよい。対向方向D1から見た吸水部材の形状は、上述した矩形状又は円環状に限られず、円形状又は楕円形状等の他の形状であってもよい。本開示の冷却機構において、貯水部(水堀)は、筐体とは別体に構成されている必要は無く、例えば、筐体の外周部に直接形成された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B,1C,1D 送電コイル装置(コイル装置)
10 送電コイル(コイル)
30,30B 筐体
31 ベース
32 カバー
33b,34b 外面
50,50A,50B 冷却機構
51,51A 給水スペーサ(吸水部材)
54,54A,54B,54C,54D ジョイント部(別の吸水部材)
52 給水機構
53 水堀(貯水部)
55 タンク
57 配管(流路)
58 圧力調整弁(バルブ)
65,75 変形部材
D1 対向方向
R1 内部空間
R2 貯水空間
R3 収容空間
W 水