(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241203BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20241203BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G03G21/00 370
B65H5/06 F
B65H5/02 M
(21)【出願番号】P 2021086051
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 裕貴
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-098677(JP,A)
【文献】特開2009-080399(JP,A)
【文献】特開平06-035262(JP,A)
【文献】特開2005-091651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B65H 5/06
B65H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送方向に沿って並設され、該記録媒体に画像を形成する複数の画像形成ユニットと、
前記記録媒体を搬送するベルト体と、前記複数の画像形成ユニットそれぞれに対し転写ニップ箇所を形成する転写体とを含む転写部と、
前記記録媒体の前記搬送方向に沿った長さが所定の限界用紙長以上である場合、先に搬送される前記記録媒体である先行記録媒体の搬送方向末尾から次に搬送される前記記録媒体である後続記録媒体の搬送方向先頭までの媒体間距離が、前記複数の画像形成ユニットにおける媒体搬送方向に関し最上流側に位置する前記転写ニップ箇所である最上流転写ニップ箇所から最下流側に位置する前記転写ニップ箇所である最下流転写ニップ箇所までの距離である転写ニップ間距離以上となるように、前記記録媒体の搬送を制御する制御部と
を具えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記先行記録媒体の前記搬送方向末尾が前記最下流転写ニップ箇所より離れてから、前記後続記録媒体が前記最上流転写ニップ箇所に到達するように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ベルト体よりも上流側に配設され、前記記録媒体を搬送する搬送部と、
前記ベルト体と前記搬送部との間に設定された検知箇所において前記記録媒体を検知するセンサと
をさらに具え、
前記搬送部は、前記記録媒体を前記媒体間距離だけ搬送するのに所定の搬送時間を要し、
前記制御部は、前記記録媒体の長さが前記限界用紙長以上であって、前記センサにより前記検知箇所において前記先行記録媒体の通過を検知した後、前記搬送時間が経過する前に前記後続記録媒体が前記検知箇所に到達した場合、前記搬送部による前記搬送を中断させ、前記搬送時間が経過してから、前記搬送部による前記後続記録媒体の搬送を再開させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ベルト体よりも上流側に配設され、前記記録媒体を搬送する搬送部と、
をさらに具え、
前記制御部は、前記記録媒体の長さが前記限界用紙長未満であるとき、前記媒体間距離を前記転写ニップ間距離よりも短くするように前記搬送部を制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ベルト体よりも下流側に配設され、前記記録媒体を搬送すると共に該記録媒体に前記画像を定着させる定着部と、
前記ベルト体及び前記定着部の間に配設され、前記記録媒体にたるみを形成させるたるみ形成部と
をさらに具え、
前記定着部における前記記録媒体の搬送速度は、前記転写部における前記記録媒体の搬送速度よりも大きい
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記たるみ形成部によって前記記録媒体がたるむ場合の搬送距離であるたるみ時搬送距離と、たるまずに搬送される場合の最短搬送距離との差を差分搬送距離dLとし、
前記記録媒体がたるむときの、前記最下流転写ニップ箇所から前記定着部までの搬送距離をLとし、
前記ベルト体の搬送速度をVとし、
前記定着部及び前記転写部の搬送速度の差分をdVとしたとき、
前記限界用紙長は、(dL÷dV×V+L)以上となるように設定される
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記記録媒体が所定の第1の厚さである場合に、第1の限界用紙長を前記限界用紙長として使用し、前記記録媒体が前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さである場合に、前記第1の限界用紙長よりも小さい第2の限界用紙長を前記限界用紙長として使用する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
記録媒体の搬送方向に沿って並設され、該記録媒体に画像を形成する複数の画像形成ユニットと、
前記記録媒体を搬送するベルト体と、前記搬送方向に関して前記画像形成ユニットの上流側及び下流側にそれぞれ配設され、前記ベルト体を張架すると共に前記記録媒体を搬送する張架体とを有する転写部と、
前記記録媒体の前記搬送方向に沿った長さが所定の限界用紙長以上である場合、先に搬送される前記記録媒体である先行記録媒体の搬送方向末尾から次に搬送される前記記録媒体である後続記録媒体の搬送方向先頭までの媒体間距離が、上流側の前記張架体から下流側の前記張架体までの距離以上となるように、前記記録媒体の搬送を制御する制御部と
を具えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、例えば電子写真式のプリンタに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置として、例えば画像形成部によりトナーを用いて画像データに基づくトナー画像を生成し、転写部により用紙を搬送しながらトナー画像を用紙(媒体とも呼ぶ)に転写し、定着部によりこの用紙に熱や圧力を加えて定着させることにより、画像を印刷するものがある。この画像形成装置では、用紙の搬送経路に沿って転写部、画像形成部や定着部等の各部分が配置されており、搬送方向に沿って搬送される用紙に対し、トナー画像の転写処理や定着処理等の各種処理を順次行うようになっている。
【0003】
このような画像形成装置では、単位時間(例えば1分間)あたりの印刷可能枚数をできるだけ大きくすることが求められるものの、大きさやコスト等の制約により、用紙を搬送するモータの駆動力が制限される場合が多い。そこで画像形成装置の中には、例えば複数枚の用紙に画像を連続して印刷する場合に、用紙間の間隔を狭めるように制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上述した画像形成装置では、各部分における用紙の搬送速度が完全には一致せず、互いに相違する場合がある。例えば画像形成装置では、用紙の搬送経路における下流側の定着部において、上流側の転写部よりも用紙の搬送速度が大きい(速い)場合がある。
【0006】
この場合、画像形成装置では、下流側の定着部において用紙を比較的高速に搬送しようとするため、用紙の搬送方向に沿った長さによっては、当該用紙の一部が転写部に残った状態となり、該転写部を構成するベルトやローラ等用紙との摩擦により、該転写部における用紙の搬送速度を変動させる恐れがある。
【0007】
そうすると画像形成装置では、例えば当該転写部において後続の用紙に対してトナー画像を転写していた場合に、該後続の用紙に対するトナー画像の転写位置がずれ、或いは当該転写部における用紙の搬送速度が変化することによりトナー画像が搬送方向に伸縮する等、用紙に印刷される画像の品質を低下させる恐れがある、という問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、複数の媒体に連続して画像を形成する場合の品質低下を防止し得る画像形成装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の画像形成装置においては、記録媒体の搬送方向に沿って並設され、該記録媒体に画像を形成する複数の画像形成ユニットと、記録媒体を搬送するベルト体と、複数の画像形成ユニットそれぞれに対し転写ニップ箇所を形成する転写体とを含む転写部と、記録媒体の搬送方向に沿った長さが所定の限界用紙長以上である場合、先に搬送される記録媒体である先行記録媒体の搬送方向末尾から次に搬送される記録媒体である後続記録媒体の搬送方向先頭までの媒体間距離が、複数の画像形成ユニットにおける媒体搬送方向に関し最上流側に位置する転写ニップ箇所である最上流転写ニップ箇所から最下流側に位置する転写ニップ箇所である最下流転写ニップ箇所までの距離である転写ニップ間距離以上となるように、記録媒体の搬送を制御する制御部とを設けるようにした。
【0010】
また本発明の画像形成装置においては、記録媒体の搬送方向に沿って並設され、該記録媒体に画像を形成する複数の画像形成ユニットと、記録媒体を搬送するベルト体と、搬送方向に関して画像形成ユニットの上流側及び下流側にそれぞれ配設され、ベルト体を張架すると共に記録媒体を搬送する張架体とを有する転写部と、記録媒体の搬送方向に沿った長さが所定の閾値以上である場合、先に搬送される記録媒体である先行記録媒体の搬送方向末尾から次に搬送される記録媒体である後続記録媒体の搬送方向先頭までの媒体間距離が、上流側の張架体から下流側の張架体までの距離以上となるように、記録媒体の搬送を制御する制御部とを設けるようにした。
【0012】
本発明は、記録媒体の搬送方向に沿った長さが限界用紙長以上であれば、媒体間距離が転写ニップ間距離以上となるように当該記録媒体の搬送を制御する。このため本発明は、先行する記録媒体の影響によりベルト体の走行速度が一時的に変動したとしても、先行する当該記録媒体がベルト体から離れて本来の走行速度に戻った後に、後続の記録媒体を当該ベルト体に到達させることができるので、画像形成ユニットから該記録媒体に転写される画像の劣化を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の媒体に連続して画像を形成する場合の品質低下を防止し得る画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】画像形成装置の全体構成を示す略線図である。
【
図2】転写部、画像形成部、渡り部及び定着部の構成を示す略線図である。
【
図3】画像形成装置の回路構成を示すブロック図である。
【
図4】1枚の薄く短い用紙を搬送する様子を示す略線図である。
【
図5】1枚の薄く短い用紙を搬送する様子を示す略線図である。
【
図6】1枚の薄く長い用紙を搬送する様子を示す略線図である。
【
図7】複数枚の薄く短い用紙を連続して搬送する様子を示す略線図である。
【
図8】複数枚の薄く長い用紙を連続して搬送する様子を示す略線図である。
【
図9】複数枚の薄く長い用紙を連続して搬送する様子を示す略線図である。
【
図10】複数枚の厚い用紙を連続して搬送する様子を示す略線図である。
【
図11】用紙条件テーブルの構成を示す略線図である。
【
図12】用紙間隔設定処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】用紙間隔を伸張距離とした場合に複数枚の薄く長い用紙を連続して搬送する様子を示す略線図である。
【
図14】他の実施の形態による転写ニップ箇所の構成を示す略線図である。
【
図15】他の実施の形態による用紙と転写ベルトとの当接を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0016】
[1.画像形成装置の構成]
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真式のプリンタであり、媒体としての用紙Pにカラーの画像を形成する(すなわち印刷する)ことができる。因みに画像形成装置1は、原稿を読み取るイメージスキャナ機能や電話回線を使用した通信機能等を有しておらず、プリンタ機能のみを有する単機能のSFP(Single Function Printer)となっている。
【0017】
画像形成装置1は、略箱型に形成された筐体2の内部に種々の部品が配置されている。因みに以下では、
図1における右端部分を画像形成装置1の正面とし、この正面と対峙して見た場合の上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義した上で説明する。
【0018】
画像形成装置1は、制御部3により全体を統括制御するようになっている(詳しくは後述する)。この制御部3は、図示しないコンピュータ装置等の上位装置と接続されており、この上位装置から印刷指示や印刷データを受信すると、用紙Pの表面に印刷画像を形成する画像形成処理(印刷処理とも呼ぶ)を実行する。
【0019】
筐体2の上面前寄りには、種々の情報を表示すると共に操作入力を受け付けるオペレーションパネル4が設けられている。このオペレーションパネル4は、例えば液晶パネルのような表示パネルとタッチセンサとが組み合わされたタッチパネルや、LED(Light Emitting Diode)等を有しており、制御部3の制御に基づき種々の情報を表示する他、使用者からの操作入力を受け付ける。
【0020】
筐体2内の最下部には、用紙Pを収容する用紙カセット5が設けられている。用紙カセット5の前上方には、給紙搬送部6が設けられている。給紙搬送部6は、所定の間隔を隔てて対向する搬送ガイド7により、用紙Pを搬送する際の経路である給紙搬送路W1を形成している。また給紙搬送部6は、この給紙搬送路W1に沿ってホッピングローラ8、ホッピングセンサ9、搬送ローラ対10、用紙センサ11、搬送ローラ対12及び書込センサ13等が順次配置されている。
【0021】
このうちホッピングローラ8並びに搬送ローラ対10及び12を構成する各ローラは、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、それぞれ回転可能に支持されている。また一部のローラには、図示しない給紙モータから駆動力が伝達されている。
【0022】
ホッピングセンサ9は、例えば光学センサであり、所定の検知光を発光する発光部と、当該検知光を受光する受光部とを有しており、且つ該検知光の光路を給紙搬送路W1と交差させている。以下では、この検知光の光路と給紙搬送路W1とが交差する箇所を検知箇所とも呼ぶ。ホッピングセンサ9は、受光部において受光した検知光の光量を表す検知信号を生成し、これを制御部3に通知する。換言すれば、ホッピングセンサ9は、受光した検知光の光量を基に、検知箇所における用紙Pの有無を検知することができる。以下では、用紙Pにより検知光が遮られた状態、すなわち当該用紙Pの存在を検知している状態をオン状態と呼び、該用紙Pにより検知光が遮られていない状態、すなわち当該用紙Pの存在を検知していない状態をオフ状態と呼ぶ。また用紙センサ11及び書込センサ13は、何れもホッピングセンサ9と同様に構成されており、それぞれの検知箇所において用紙Pの有無を検知することができる。
【0023】
制御部3は、ホッピングセンサ9等から得られる検知信号を基に、検知箇所における用紙Pの有無を判定し得る他、例えば当該用紙Pが当該検知箇所を通過するのに要した通過時間の計測や、この通過時間と当該用紙Pの搬送速度とを用いて当該用紙Pの搬送方向に沿った長さの算出等も行い得る。
【0024】
給紙搬送部6は、制御部3の制御に基づいて各ローラを適宜回転させることにより、用紙カセット5に集積された状態で収容されている用紙Pを1枚ずつ分離しながらピックアップし、搬送ガイド7により案内しながら、搬送ローラ対10及び12により給紙搬送路W1に沿って進行させ、さらに後方へ送り出す。
【0025】
給紙搬送部6における搬送ローラ対12の後側には、下側に転写部15が配置されると共に、その上側に画像形成部22が配置されており、両者の間に後方へ向かう直線状の転写搬送路W2が形成されている。
【0026】
図1の一部を拡大した
図2(A)に示すように、転写部15は、後側に配置されたドライブローラ16及び前側に配置されたテンションローラ17の周囲に転写ベルト18が張架された構成となっている。張架体としてのドライブローラ16及びテンションローラ17は、それぞれの中心軸16X及び17Xを左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、回転可能に支持されている。ベルト体としての転写ベルト18は、可撓性を有する樹脂等により、いわゆる無端ベルトとして構成されている。また転写ベルト18は、表面が比較的滑らかに形成されると共に、用紙Pとの間に十分な摩擦力を作用させ得るようになっている。
【0027】
転写ベルト18のうち上側の部分、すなわちドライブローラ16の上端であるドライブローラ上端16Tとテンションローラ17の上端であるテンションローラ上端17Tとの間に張架された部分(以下これを転写ベルト上張架部18Uと呼ぶ)は、転写搬送路W2に当接している。ドライブローラ上端16Tは、例えばドライブローラ16の回転中心から、転写搬送路W2と直交する方向に仮想的な直線を設けた場合における、当該直線と転写ベルト18との交点に相当する。テンションローラ上端17Tについても同様である。
【0028】
転写部15におけるドライブローラ16及びテンションローラ17の間には、前後方向に離れた4箇所に、転写ローラ19(19K、19Y、19M及び19C)が設けられている。転写体としての転写ローラ19は、例えば導電性のゴム等により構成されており、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成され、回転可能に支持されている。
【0029】
この転写部15は、図示しないベルト駆動モータからドライブローラ16に駆動力が伝達されると、該ドライブローラ16を矢印R2方向へ回転させ、これに伴って転写ベルト上張架部18Uを後方向へ進行させるようにして転写ベルト18を走行させる。転写部15は、給紙搬送部6から用紙Pが引き渡されると、該転写ベルト18の上側に用紙Pを載置した状態で、該転写ベルト18の走行に伴って該用紙Pを後方向へ、すなわち転写搬送路W2に沿った方向(以下これを搬送方向又は媒体搬送方向とも呼ぶ)へ進行させる。
【0030】
転写部15の上側には、4個の画像形成ユニット23(23K、23C、23M及び23Y)が前後方向に沿って整列するように配置されている。各画像形成ユニット23は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色にそれぞれ対応しているものの、色のみが相違しており、何れも同様に構成されている。以下においては、4個の画像形成ユニット23をまとめて画像形成部22とも呼称する。
【0031】
画像形成ユニット23は、現像剤としてのトナーを収容するトナー収容部や、複数のローラ、及び感光体ドラム24(24K、24Y、24M及び24C)やLEDヘッド(図示せず)等を有している。このうち各ローラ及び感光体ドラム24は、何れも中心軸を左右方向に沿わせた円柱状若しくは円筒状に構成されており、回転可能に構成されている。また感光体ドラム24は、イメージドラム(ID:Image Drum)とも呼ばれており、その周側面に帯電可能な材料でなる帯電層が形成されている。
【0032】
また画像形成ユニット23は、各転写ローラ19の真上に各感光体ドラム24をそれぞれ位置させており、且つ該画像形成ユニット23の自重等により、各感光体ドラム24を各転写ローラ19に向けて付勢させている。このため各感光体ドラム24及び各転写ローラ19は、転写ベルト上張架部18Uを上下から挟む転写ニップ箇所N15(N15K、N15Y、N15M及びN15C)をそれぞれ形成している。各転写ニップ箇所N15は、前後方向の長さが極めて短くなっており、
図2においてそれぞれを点として表している。説明の都合上、以下では用紙Pの搬送方向に関して最も上流側に位置する転写ニップ箇所N15Kを最上流転写ニップ箇所N15K又は最上流ニップ箇所とも呼び、最も下流側に位置する転写ニップ箇所N15Cを最下流転写ニップ箇所N15C又は最下流ニップ箇所とも呼ぶ。
【0033】
このため転写部15は、用紙Pの少なくとも一部がいずれかの転写ニップ箇所N15により挟持されている場合、すなわち当該用紙Pの少なくとも一部が最上流転写ニップ箇所N15K及び最下流転写ニップ箇所N15Cの間に位置している場合に、転写ベルト18に対し該用紙Pを殆ど滑らせることが無い。このとき転写部15は、用紙P及び転写ベルト18を、ほぼ同一の速度で転写搬送路W2に沿って進行させることができる。説明の都合上、以下では最上流転写ニップ箇所N15K及び最下流転写ニップ箇所N15Cの間を転写ニップ区間とも呼ぶ。
【0034】
この画像形成ユニット23は、各ローラに所定の高電圧を印加すると共に、後述するIDモータから所定のギア等を介して駆動力が供給されることにより、各ローラを適宜回転させると共に、感光体ドラム24を矢印R1方向(図中の時計回り)に回転させる。またLEDヘッドには、制御部3から画像データが供給される。
【0035】
画像形成ユニット23は、感光体ドラム24を帯電させてから、画像データに応じたパターンでLEDヘッドを発光させることにより該感光体ドラム24を露光し、さらにトナーを付着させることにより、該感光体ドラム24にトナー画像を現像する。説明の都合上、以下ではトナーを現像剤とも呼び、トナー像を現像剤像とも呼ぶ。
【0036】
転写部15は、ドライブローラ16を矢印R2方向へ回転させることにより、転写ベルト18を走行させて転写ベルト上張架部18Uを後方向へ進行させる。また転写部15は、各転写ローラ19に所定の高電圧を印加すると共に、矢印R2方向に回転させる。
【0037】
ここで転写部15は、転写搬送路W2に沿って用紙Pを搬送している場合、感光体ドラム24及び転写ローラ19の間(すなわち転写ニップ箇所N15)に、転写ベルト18及び用紙Pを挟んだ状態となり、トナー画像を該感光体ドラム24から用紙Pに転写させる。また転写部15は、各色の転写ニップ箇所N15において、感光体ドラム24から各色のトナー画像を用紙Pに順次重ねるように転写させることができる。
【0038】
転写部15における転写ベルト18の下側部分のさらに下側には、クリーニングブレード20及びトナーボックス21が設けられている。クリーニングブレード20は、画像形成処理において用紙Pの搬送不良等が生じた場合等に、転写ベルト18の表面に付着しているトナーを掻き落として清掃する。これにより転写部15では、次に搬送される用紙Pの裏面、すなわち搬送路Wにおいて下方を向いている面でありトナー画像が転写されない面にトナーが付着して汚損させてしまう、いわゆる裏写りを防止できる。トナーボックス21は、クリーニングブレード20により掻き落とされたトナーを収容する。
【0039】
転写部15の後側には、渡り部25が配置されている。渡り部25には、転写搬送路W2を後方へ延長した場合に描かれる仮想的な直線よりも下側となる位置に、湾曲搬送ガイド26が設けられている。湾曲搬送ガイド26は、左右方向から見て下方向に突出した円弧状に湾曲しており、上面が滑らかな曲面として形成されている。
【0040】
渡り部25は、転写部15から用紙Pが搬送されてくると、当該用紙Pの下方向への移動範囲を湾曲搬送ガイド26により規制しながら、当該用紙Pを概ね後方向へ進行させるように案内する。ここで渡り部25は、例えば用紙Pが比較的薄く剛性が比較的低い場合、当該用紙Pを湾曲搬送ガイド26の上面に沿って湾曲させながら、すなわちたるみを形成しながら、曲線状の湾曲渡り搬送路W3Cに沿って進行させる。また渡り部25は、例えば用紙Pが比較的厚く剛性が比較的高い場合、当該用紙Pをほとんど湾曲させること無く、転写搬送路W2をそのまま後方へ延長したような直線状の直線状渡り搬送路W3Lに沿って進行させる。以下では、渡り部25をたるみ形成部とも呼ぶ。
【0041】
このように渡り部25では、用紙Pの厚さや剛性、或いは該用紙Pに印加される張力等に応じて、当該用紙Pが通過する経路を湾曲渡り搬送路W3Cや直線状渡り搬送路W3L、或いは両者の間となるような形状の搬送路(以下、これらをまとめて渡り搬送路W3と呼ぶ)が様々に変化することになる(詳しくは後述する)。
【0042】
渡り部25の後側には、定着部27が配置されている。定着部27には、加熱ベルト28及びバックアップローラ29が設けられている。加熱ベルト28は、図示しないヒータやローラ等の周囲を囲む無端ベルトであり、図示しない定着モータから駆動力が供給されると、円周状に走行し得るようになっている。バックアップローラ29は、加熱ベルト28の下側における後寄りに位置しており、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に構成され、且つ回転可能に支持されている。このバックアップローラ29は、加熱ベルト28に向けて付勢されており、該加熱ベルト28と当接する箇所に定着ニップ箇所N27を形成する。
【0043】
定着部27は、制御部3の制御に基づいて動作する場合、内部のヒータ(図示せず)を加熱させると共に、加熱ベルト28を周回させ、これに伴ってバックアップローラ29を回転させる。定着部27は、このように動作している状態で前方の渡り部25から用紙Pが搬送されてくると、定着ニップ箇所N27において当該用紙Pを挟持することにより熱及び圧力を加え、トナー画像を当該用紙Pに定着させる。また定着部27は、加熱ベルト28が周回するため、用紙Pを後斜め上方向へ搬送することができる。
【0044】
定着部27(
図1)の後上側には、排紙搬送部30が配置されている。排紙搬送部30は、給紙搬送部6の一部と類似した構成となっており、所定の間隔を隔てて対向する搬送ガイド31により、用紙Pを搬送する際の経路である排紙搬送路W4を形成している。また排紙搬送部30は、この排紙搬送路W4に沿って排出センサ32、搬送ローラ対33及び排出口34等が順次配置されている。
【0045】
排紙搬送部30は、制御部3の制御に従って搬送ローラ対33を回転させることにより、定着部27から受け取った用紙Pを排紙搬送路W4に沿って搬送し、排出口34から排出することにより、筐体2の上面に形成された排出トレイ35上に載置させる。
【0046】
このように画像形成装置1は、給紙搬送路W1、転写搬送路W2、渡り搬送路W3及び排紙搬送路W4に沿って用紙Pを順次搬送しながら、画像形成部22により形成したトナー画像を該用紙Pに転写し、定着部27により定着させることにより、画像を形成する(すなわち印刷する)ようになっている。以下では、給紙搬送路W1、転写搬送路W2、渡り搬送路W3及び排紙搬送路W4をまとめて搬送路Wとも呼ぶ。
【0047】
次に、画像形成装置1の回路構成について、
図3を参照しながら説明する。画像形成装置1の回路は、制御部3を中心に構成されている。この制御部3は、主制御部41、給紙モータ制御部42、ベルトモータ制御部43、イメージドラム(ID)モータ制御部44及び定着モータ制御部45等により構成されている。
【0048】
主制御部41は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)51、各種情報やプログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)52、各種情報を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)53、及び時間を計測するタイマーカウンタ54等を有している。このうちROM52は、例えばフラッシュメモリであり、種々の情報を記憶でき、電源が切断された場合であっても記憶内容を保持できる。この主制御部41は、CPU51によりROM52から各種プログラムを読み出し、RAM53をワークエリアとして使用しながら実行することにより、各部を制御しながら種々の処理を行うことができる。
【0049】
制御部3の主制御部41には、上述したオペレーションパネル4、ホッピングセンサ9、用紙センサ11、書込センサ13及び排出センサ32に加えて、インタフェース部55が接続されている。
【0050】
インタフェース部55は、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3(IEEE802.3u/ab/an/ae)等の規格に準拠した有線LAN(Local Area Network)や、IEEE802.11(IEEE802.11g/n/ac/ax)等の規格に準拠した無線LANのインタフェースである。このインタフェース部55は、所定のネットワークを介して図示しない上位装置と接続されており、該上位装置から印刷データ等を受信することができる。
【0051】
また制御部3の給紙モータ制御部42、ベルトモータ制御部43、イメージドラムモータ制御部44及び定着モータ制御部45は、給紙モータ46、ベルトモータ47、イメージドラム(ID)モータ48及び定着モータ49とそれぞれ接続されており、それぞれの回転を制御する。このうち給紙モータ46は、給紙搬送部6の搬送ローラ対10及び12(
図1)等に駆動力を供給する。またベルトモータ47は、転写部15のドライブローラ16(
図1及び
図2)等に駆動力を供給する。
【0052】
ところで画像形成装置1では、用紙カセット5に収納されている用紙Pに関する情報を、ユーザに設定させることができる。画像形成装置1は、例えばユーザによりオペレーションパネル4に対して所定の設定操作が行われ、用紙Pの大きさや厚さに関する値が指定されると、その値をROM52に記憶させる。また画像形成装置1は、例えば上位装置(図示せず)から用紙Pの大きさや厚さに関する値が供給されると、その値をROM52に記憶させる。
【0053】
[2.用紙の搬送及び間隔]
ここでは、画像形成装置1内の転写部15から渡り部25を介して定着部27に渡る部分における、用紙Pの搬送や当該用紙P同士の間隔について、仮想的な状態も交えながら説明する。
【0054】
まず、
図2を参照しながら、転写部15及び画像形成部22等における各部の長さや間隔を定義する。ここでは、テンションローラ上端17T及び転写ニップ箇所N15Kの間隔を長さLbkとし、転写ニップ箇所N15K及びN15Yの間隔を長さLkyとし、転写ニップ箇所N15Y及びN15Mの間隔を長さLymとし、転写ニップ箇所N15M及びN15Cの間隔を長さLmcとする。また、転写ニップ箇所N15C及びドライブローラ上端16Tの間隔を長さLcbとする。
【0055】
そうすると、転写ニップ区間の長さ、すなわち最上流転写ニップ箇所N15Kと最下流転写ニップ箇所N15Cとの距離である転写ニップ間距離Lkcは、次の(1)式のように表すことができる。
【0056】
Lkc=Lky+Lym+Lmc ……(1)
【0057】
また、ドライブローラ上端16T及びテンションローラ上端17Tの間隔であるローラ距離Lrは、中心軸16X及び17Xの間隔に相当し、また次の(2)式のように表すことができる。
【0058】
Lr=Lbk+Lky+Lym+Lmc+Lcb ……(2)
【0059】
さらに画像形成装置1では、制御部3の制御により、複数の用紙Pを連続して搬送する場合における該用紙P同士の間隔を調整し得るようになっている。ここでは、n枚目の用紙Pを用紙P(n)と表し、また用紙P(n)及び用紙P(n+1)の間隔を用紙間距離D(n)と表すものとする。説明の都合上、以下では用紙間距離D(n)を媒体間距離とも呼ぶ。また以下では、先行する用紙P(n)を先行記録媒体とも呼び、後続する用紙P(n+1)を後続記録媒体とも呼ぶ。さらに以下では、転写搬送路W2に沿った方向(すなわち後方向又は搬送方向)に関して、用紙Pの先頭部分を搬送方向先頭とも呼び、該用紙Pの末尾部分を搬送方向末尾とも呼ぶ。
【0060】
画像形成装置1では、用紙P同士の間隔を比較的短く設定する場合、
図2(B)に示すように、用紙間距離D(n)を所定の短縮距離Lexとすることができる。この短縮距離Lexは、転写ニップ間距離Lkcと比較して十分に短い距離となっている。
【0061】
ただし画像形成装置1では、定着部27において、1枚の用紙Pが通過する度に熱が奪われて温度が低下するため、ヒータ(図示せず)により加熱して所定の温度まで高める必要が生じる。そうすると画像形成装置1では、仮に短縮距離Lexを過剰に短い値とした場合、単位時間あたりに用紙Pにより奪われる熱の量が多くなるため、ヒータによる加熱量を増加させる必要があるものの、筐体2内の温度が過剰に上昇する恐れや、定着部27の温度が所定の温度に到達できずに定着不良を引き起こす恐れ等がある。そこで画像形成装置1では、短縮距離Lexを過剰に短くせず、ある程度の長さに設定している。
【0062】
また画像形成装置1では、用紙P同士の間隔を比較的長く設定する場合、
図2(C)に示すように、用紙間距離D(n)を所定の伸張距離Lstとすることができる。この伸張距離Lstは、転写ニップ間距離Lkcよりも大きく(長く)なっており、例えば定数αを用いた数式(Lst=Lkc+α)により表した場合に、この定数αが1[mm]となっている。
【0063】
画像形成装置で1は、用紙間距離D(n)を短縮距離Lexとした場合、用紙間距離D(n)を伸張距離Lstとした場合よりも、単位時間あたりにおける用紙Pの搬送枚数を増加させることができ、単位時間あたりの印刷枚数(いわゆるスループット)を増加させることができる。このため画像形成装置1では、基本的に、用紙間距離D(n)を短縮距離Lexとするようになっている。
【0064】
ところで画像形成装置1では、仮に定着部27における用紙Pの速度である定着搬送速度V27と、転写部15における用紙Pの速度である転写搬送速度V15とを一致させた場合、各部の誤差やバックアップローラ29の熱膨張等により、定着搬送速度V27が変動する可能性があり、調整や制御が極めて困難となる。また画像形成装置1では、仮に定着搬送速度V27を転写搬送速度V15よりも小さく(遅く)した場合、転写部15及び定着部27の間において、1枚の用紙Pの搬送中にたるみの量が増加して様々な形状に湾曲していき、やがて該用紙Pの上面を周囲の部材に付着させて定着前のトナー画像を散乱させてしまう恐れがある。
【0065】
そこで画像形成装置1では、転写部15及び定着部27の間に渡り部25を設け、下側にのみ湾曲搬送ガイド26を配置すると共に、敢えて定着搬送速度V27が転写搬送速度V15よりも大きく(速く)なるように設定されている。以下では、画像形成装置1の転写部15、渡り部25及び定着部27において、用紙Pを搬送しながらトナー画像の転写処理や定着処理を行う様子について、用紙Pの種類(厚さ及び長さ)や枚数ごとに分けて説明する。
【0066】
[2-1.1枚の薄く短い用紙に印刷する場合]
まず、比較的薄く、且つ搬送方向に沿った長さが比較的短い1枚の用紙P(以下これを短薄用紙とも呼ぶ)に画像を印刷する場合について説明する。この場合、画像形成装置1は、転写部15により用紙Pを搬送路Wに沿って搬送しながら、各転写ニップ箇所N15において、各感光体ドラム24からトナー画像を順次転写する。
【0067】
この場合、用紙Pの先頭部分は、転写部15及び画像形成部22の各転写ニップ箇所N15を順次通過し、渡り部25を通って定着部27の定着ニップ箇所N27に到達する。このとき用紙Pは、剛性が比較的小さいために、重力の作用によってたるみを生じ、
図4に示すように、渡り部25において湾曲渡り搬送路W3Cに沿って湾曲しながら進行し、やがて定着ニップ箇所N27において挟持される。
【0068】
その後、画像形成装置1は、定着部27において定着搬送速度V27で用紙Pの先頭側を搬送する一方、転写部15において該定着搬送速度V27よりも小さい(遅い)転写搬送速度V15で当該用紙Pの末尾側を搬送する。換言すれば、画像形成装置1では、定着搬送速度V27と転写搬送速度V15との間に意図的な速度差が設けられている。このため画像形成装置1では、渡り部25において用紙Pに形成されているたるみの度合いが徐々に減少していき、該渡り部25における該用紙Pの搬送路が、湾曲渡り搬送路W3Cから直線状渡り搬送路W3Lに近づいていく。
【0069】
やがて画像形成装置1では、用紙Pが比較的短いため、
図4と対応する
図5に示すように、渡り部25に用紙Pのたるみが残っている状態で、当該用紙Pの末尾側が最下流転写ニップ箇所N15Cを通過する。このため画像形成装置1では、転写部15において、定着部27から定着搬送速度V27の影響を受けること無く、転写搬送速度V15を維持したまま、各画像形成ユニット23の感光体ドラム24からトナー画像を安定的に転写させることができる。
【0070】
[2-2.1枚の薄く長い用紙に印刷する場合]
次に、比較的薄く、且つ搬送方向に沿った長さが比較的長い1枚の用紙P(以下これを長薄用紙とも呼ぶ)に画像を印刷する場合について説明する。この場合、画像形成装置1は、短薄用紙の場合と同様に、転写部15により用紙Pを搬送路Wに沿って搬送しながら、各転写ニップ箇所N15において、各感光体ドラム24からトナー画像を順次転写する。
【0071】
またこの場合、用紙Pの先頭部分は、短薄用紙の場合と同様に、転写部15及び画像形成部22の各転写ニップ箇所N15を順次通過し、渡り部25を通って定着部27の定着ニップ箇所N27に到達する。このとき用紙Pは、
図4に示した場合と同様に、重力の作用によってたるみを生じ、渡り部25において湾曲渡り搬送路W3Cに沿って湾曲しながら進行し、やがて定着ニップ箇所N27において挟持される。
【0072】
その後、画像形成装置1は、定着部27の定着搬送速度V27と転写部15の転写搬送速度V15との速度差により、渡り部25において用紙Pに形成されているたるみの度合いが徐々に減少していき、該渡り部25における該用紙Pの搬送路が、湾曲渡り搬送路W3Cから直線状渡り搬送路W3Lに近づいていく。
【0073】
やがて画像形成装置1では、用紙Pが比較的長いため、
図6に示すように、渡り部25において用紙Pのたるみが解消した後も、当該用紙Pの末尾側が最下流転写ニップ箇所N15Cにより挟持された状態となる。すなわち渡り部25では、最下流転写ニップ箇所N15C及び定着ニップ箇所N27の間に用紙Pが張架された状態となる。この場合、用紙Pの速度は、転写部15、渡り部25及び定着部27において同一となる。
【0074】
ここで、用紙Pの搬送速度VPは、定着部27が定着ニップ箇所N27において定着搬送速度V27で該用紙Pを搬送しようとする力、転写部15が各転写ニップ箇所N15において転写搬送速度V15で該用紙Pを搬送しようとする力、及び転写ベルト18と当該用紙Pとの間に作用する摩擦力等のバランスに応じて定まることになる。
【0075】
このため画像形成装置1では、転写部15において用紙Pを挟持している転写ニップ箇所N15の数が多く、転写ベルト18及び用紙Pの接触面積が大きい間は、定着部27よりも該転写部15の方が、用紙Pに与える影響が大きくなり、該用紙Pの搬送速度VPが転写搬送速度V15に近い値となる。
【0076】
その後、画像形成装置1では、転写部15において用紙Pを挟持している転写ニップ箇所N15の数が減少していき、また転写ベルト18及び用紙Pの接触面積も減少していくに連れて、転写部15から用紙Pに与える影響の割合が徐々に減少していき、定着部27による影響が増加していく。これにより画像形成装置1では、用紙Pの搬送速度VPが徐々に増加し、定着搬送速度V27に近付いていく。やがて画像形成装置1では、用紙Pの末端側が最下流転写ニップ箇所N15Cを通過する頃には、該用紙Pの搬送速度VPがほぼ定着搬送速度V27となる。
【0077】
このとき転写部15では、用紙Pの搬送速度が緩やかに変化するため、当該用紙Pに対するトナー画像の転写位置がずれること、いわゆる色ずれを発生させることが殆ど無く、印刷される画質の低下を殆ど生じることが無い。
【0078】
[2-3.複数枚の薄く短い用紙に連続して印刷する場合]
次に、複数枚の短薄用紙に連続して画像を印刷する場合について説明する。画像形成装置1(
図1)は、用紙カセット5に複数枚の用紙Pが重ねて収納された状態であるとする。
【0079】
まず画像形成装置1(
図1)は、制御部3の主制御部41(
図3)の制御により、ホッピングローラ8等を回転させ、用紙カセット5から1枚目の用紙P(1)を分離して送り出し、給紙搬送部6により当該用紙P(1)を給紙搬送路W1に沿って搬送させる。ここでホッピングセンサ9(
図1及び
図3)は、用紙P(1)の末端が通過すると、オフ状態を検知したこと、すなわち検知光を受光するようになったことを表す検知信号を生成し、これを制御部3の主制御部41に送信する。
【0080】
これに応じて制御部3は、主制御部41により、ホッピングセンサ9から受信した検知信号を基に、該ホッピングセンサ9がオフ状態となり、用紙P(1)の末端が検知箇所を通過したことを検知すると、該オフ状態に切り替わった時点(以下これをホッピング通過時点と呼ぶ)から、タイマーカウンタ54(
図3)による計時を開始する。
【0081】
続いて制御部3は、主制御部41により、ホッピング通過時点から用紙間距離D(1)に相当する時間が経過する前にホッピングローラ8等を回転させ、用紙カセット5から次の用紙P(2)を分離して送り出し、給紙搬送部6により当該用紙P(2)を給紙搬送路W1に沿って搬送させる。これにより給紙搬送路W1上では、用紙P(1)と用紙P(2)との間隔が、本来の用紙間距離D(1)よりも短くなっている。
【0082】
やがて用紙P(1)は、給紙搬送部6(
図1)において、搬送ローラ対10により挟持されて搬送され、用紙センサ11の検知箇所を通過し、さらに搬送ローラ対12により挟持されて搬送され、書込センサ13の検知箇所を末尾が通過する。これにより書込センサ13がオン状態からオフ状態に切り替わる。以下、この時点を先行用紙通過時点と呼ぶ。
【0083】
その後、制御部3は、主制御部41により、用紙センサ11からの検知信号を基に、該用紙センサ11の検知箇所に用紙P(2)の先頭が到達したことを検知すると、搬送ローラ対10及び12の回転を停止させて該用紙P(2)の搬送を停止させる。このとき用紙P(2)の先頭は、搬送ローラ対12により挟持される箇所から所定の先頭突出距離だけ後方へ突出した状態となる。続いて制御部3は、主制御部41により、書込センサ13がオフ状態となり用紙P(1)の末端を検知した時点(すなわち先行用紙通過時点と呼ぶ)から、タイマーカウンタ54(
図3)による計時を開始する。
【0084】
やがて制御部3は、主制御部41により、先行用紙通過時点から用紙間距離D(1)に相当する時間(以下これを搬送時間とも呼ぶ)が経過する時点で搬送ローラ対10及び12の回転を再開させ、用紙P(2)を送り出させる。これにより画像形成装置1では、
図7に示すように、搬送路W上における搬送ローラ対12よりも下流側の転写搬送路W2等において、用紙P(1)及び用紙P(2)の間隔を、用紙間距離D(1)に合わせることができる。
【0085】
ここで搬送時間は、搬送ローラ対12から書込センサ13までの距離(以下これを書込距離と呼ぶ)、先頭突出距離、用紙間距離D(1)、及び転写ベルト18の走行速度(すなわち転写搬送速度V15)を用いると、(用紙間距離D(1)-(書込距離-先頭突出距離))/(転写搬送速度V15)といった演算式により算出できる。
【0086】
一例として、書込距離が11[mm]、先頭突出距離が4[mm]、用紙間距離D(1)が170[mm]、転写搬送速度V15が160[mm/s]である場合を想定する。この場合、搬送時間は、上述した演算式により、(170-(11-4))/160=1019[ms]となる。
【0087】
[2-4.複数枚の薄く長い用紙に連続して印刷する場合]
次に、仮想的な事例として、複数枚の長薄用紙に連続して画像を印刷する際に、用紙間距離D(1)を比較的短い短縮距離Lexとした場合について説明する。この短縮距離Lexは、
図2(B)に示したように、転写ニップ間距離Lkcと比較して十分に短い距離となっている。
【0088】
この場合、画像形成装置1は、複数枚の長薄用紙に連続して印刷する場合と同様に、給紙搬送部6(
図1)により用紙P(1)及び用紙P(2)の間隔を用紙間距離D(1)に合わせながら、各用紙Pを順次搬送する。
【0089】
画像形成装置1は、まず用紙P(1)に関し、1枚の長薄用紙に画像を印刷する場合(
図6)と同様に、転写部15、渡り部25及び定着部27により搬送しながら、トナー画像を順次転写すると共に定着させていく。このとき画像形成装置1では、
図8に示すように、渡り部25において用紙P(1)のたるみが解消されると、用紙P(1)の搬送速度VPが、転写搬送速度V15から徐々に増加して定着搬送速度V27に近付いていく。
【0090】
これにより転写部15では、用紙P(1)を搬送している転写ベルト18の走行速度も搬送速度VPとなり、転写搬送速度V15から定着搬送速度V27に徐々に近づいていく。また画像形成装置1では、転写部15の転写搬送路W2上において、用紙P(1)の末尾から短縮距離Lexだけ離れた箇所に、用紙P(2)の先頭が位置している。このため用紙P(2)の搬送速度VPも、転写搬送速度V15から徐々に増加して定着搬送速度V27に近付いていく。
【0091】
やがて画像形成装置1では、
図9に示すように、用紙P(1)の末尾が最下流転写ニップ箇所N15Cを通過すると、該用紙P(1)から転写部15に対する搬送速度の影響が無くなり、該転写部15における搬送速度が、定着搬送速度V27付近から転写搬送速度V15に直ちに戻る。そうすると画像形成装置1では、用紙P(2)の搬送速度が急激に変動することになり、各転写ニップ箇所N15において該用紙P(2)に対するトナー画像の転写位置が本来の位置からずれてしまう現象(いわゆる色ずれ)が発生し、画質が大幅に劣化してしまう。
【0092】
そこで実際の画像形成装置1では、用紙Pの搬送方向に関する長さが比較的大きい(長い)場合に、用紙間距離D(n)を調整するようになっている(詳しくは後述する)。
【0093】
[2-5.複数枚の厚い用紙に連続して印刷する場合]
次に、仮想的な事例として、複数枚の比較的厚い、すなわち剛性が比較的高い用紙Pに連続して画像を印刷する際に、用紙間距離D(1)を比較的短い短縮距離Lexとした場合について説明する。
【0094】
この場合、画像形成装置1では、1枚目の用紙P(1)の先頭部分が転写部15から渡り部25を通って定着部27に搬送される際、
図10に示すように、渡り部25において、重力により撓むことが殆ど無く、ほぼ直線状に、すなわち直線状渡り搬送路W3L又はこれに近い搬送路に沿って進行する。
【0095】
このため画像形成装置1では、用紙P(1)の先端が定着ニップ箇所N27に到達して挟持された直後から該用紙P(1)に張力が作用し、該用紙P(1)の搬送速度が転写搬送速度V15から徐々に増加して定着搬送速度V27に近付いていく。すなわち画像形成装置1では、長薄用紙を搬送している際に渡り部25において用紙Pのたるみが解消された場合(
図7)と同様に、転写部15において、用紙P(1)を搬送している転写ベルト18の走行速度が、転写搬送速度V15から徐々に増加して定着搬送速度V27に近付いていく。また画像形成装置1では、転写部15の転写搬送路W2上において、用紙P(1)の末尾から短縮距離Lexだけ離れた箇所に、用紙P(2)の先頭が位置している。このため用紙P(2)の搬送速度も、転写搬送速度V15から徐々に増加して定着搬送速度V27に近付いていく。
【0096】
その後、画像形成装置1では、複数の長薄用紙に連続して印刷する場合(
図9等)と同様の現象が発生することになる。すなわち画像形成装置1では、用紙P(1)の末尾が転写部15の最下流転写ニップ箇所N15Cを通過すると、該用紙P(1)から転写部15に対する搬送速度の影響が無くなり、該転写部15における搬送速度が、定着搬送速度V27から転写搬送速度V15に直ちに戻る。そうすると画像形成装置1では、用紙P(2)の搬送速度が急激に変動することになり、各転写ニップ箇所N15において該用紙P(2)に対するトナー画像の転写位置が本来の位置からずれてしまう現象(いわゆる色ずれ)が発生し、画質が大幅に劣化してしまう。
【0097】
そこで実際の画像形成装置1では、用紙Pの厚さが比較的大きい(厚い)場合に、用紙間距離D(n)を調整するようになっている(詳しくは後述する)。
【0098】
[3.用紙間距離の調整]
次に、画像形成装置1が複数の用紙Pに連続して画像を印刷する場合における、用紙間距離D(n)の調整について説明する。上述したように、画像形成装置1では、転写部15の転写搬送速度V15よりも定着部27の定着搬送速度V27の方が大きいため、用紙Pが比較的長い場合、及び比較的厚い場合に、渡り部25における用紙Pのたるみが不十分となり、転写部15における用紙Pの搬送速度が変動し、色ずれを発生させる可能性がある。
【0099】
このうち用紙Pが比較的長い場合に関して、画像形成装置1では、渡り部25において当該用紙Pが湾曲渡り搬送路W3Cに沿って進行しており、たるみの量が十分であったとしても、該用紙Pが十分に長い場合、該用紙Pの末尾が最下流転写ニップ箇所N15Cに到達する前にたるみが解消されてしまう恐れがある。
【0100】
また一般に、用紙Pは、剛性が高いほどたるみにくく、剛性が低いほどたるみやすい傾向がある。さらに用紙Pにおける剛性の高さは、概ね厚さに応じた値となる。すなわち画像形成装置1では、用紙Pが比較的厚い場合、該用紙Pの先頭が定着ニップ箇所N27に到達した際に、渡り部25において形成される該用紙Pのたるみの度合いが、該用紙Pの剛性に応じた量、すなわち概ね該用紙Pの厚さに応じた量となる。
【0101】
このため画像形成装置1では、用紙Pの厚さが比較的小さく(薄く)、渡り部25における用紙Pのたるみの量が比較的大きい場合には、転写搬送速度V15及び定着搬送速度V27の速度差によってたるみが解消されるまでに、比較的長い時間を要する。すなわち画像形成装置1では、比較的薄い用紙Pに関して、比較的長い場合であっても、渡り部25において用紙Pのたるみを形成した状態を維持でき、色ずれを発生させずに済む。
【0102】
一方、画像形成装置1では、用紙Pの厚さが比較的大きく(厚く)、渡り部25における用紙Pのたるみの量が比較的小さい場合には、比較的短い時間でたるみが解消されてしまう。すなわち画像形成装置1では、比較的厚い用紙Pに関して、比較的短い場合であっても、渡り部25において用紙Pのたるみが解消され、色ずれを発生させる恐れがある。
【0103】
このような関係を踏まえ、画像形成装置1では、
図11に示す用紙条件テーブルT1を設定し、これを予めROM52(
図3)に記憶させるようにした。この用紙条件テーブルT1では、用紙Pの厚さ(以下これを用紙厚区分TDと呼ぶ)を複数の段階に区分し、この用紙厚区分TDごとに、渡り部25において該用紙Pのたるみを維持できなくなる恐れがある限界の長さ(以下これをたるみ限界用紙長LD又は限界用紙長と呼ぶ)をそれぞれ規定している。
【0104】
ここで、用紙条件テーブルT1における用紙厚区分TDごとのたるみ限界用紙長LDは、渡り部25において用紙Pに形成されるたるみ部分の長さと、当該たるみ部分が解消されるまでに要する時間と、この時間に転写部15により搬送可能な用紙Pの長さ等を基に算出することができる。ここでは、最下流転写ニップ箇所N15Cから定着ニップ箇所N27までの間を拡張渡り区間と呼び、この拡張渡り区間における用紙Pの搬送距離について検討する。
【0105】
例えば、渡り部25において用紙Pがたるみを形成しない場合、すなわち直線状渡り搬送路W3Lに沿って進行する場合における拡張渡り区間の搬送距離、具体的には該直線状渡り搬送路W3Lの長さと長さLcb(
図2(A))との加算値を、最短搬送距離L1と定義する。
【0106】
また、渡り部25において用紙Pがたるみを形成した場合における拡張渡り区間の搬送距離、例えば湾曲渡り搬送路W3Cの長さと長さLcbとの加算値を、たるみ時搬送距離L2と定義する。さらに、たるみ時搬送距離L2及び最短搬送距離L1の差分を差分搬送距離dLとし、定着部27の定着搬送速度V27及び転写部15の転写搬送速度V15の差分を差分速度dVとする。
【0107】
そうすると、渡り部25において用紙Pの先頭がたるみを形成しながら定着ニップ箇所N27に到達してから、当該たるみを解消せずに維持し得る限界となる時間(以下これをたるみ限界時間と呼ぶ)は、数式(dL/dV)により算出される。このたるみ限界時間の間に転写部15により搬送可能な用紙Pの長さ(以下これをたるみ限界距離と呼ぶ)は、数式(dL/dV×V15)により算出される。さらに、たるみ限界距離とたるみ時搬送距離L2との加算値、すなわち数式(dL/dV×V15+L2)により算出される長さを、算出限界用紙長とする。
【0108】
因みに、たるみ時搬送距離L2は、渡り部25において用紙Pが湾曲渡り搬送路W3Cに沿って進行し、最も大きくたるみを形成している場合に、その値が最も大きくなる。また、このときのたるみ時搬送距離L2を用いた場合、差分搬送距離dL、たるみ限界時間、たるみ限界距離及び算出限界用紙長も、それぞれ最も大きい値となる。
【0109】
このように画像形成装置1では、用紙Pの長さ(すなわち用紙長)が算出限界用紙長よりも小さい(短い)場合、当該用紙Pの末尾が最下流転写ニップ箇所N15Cを通過するまで、渡り部25のたるみを維持できることになる。このことは、転写部15における用紙Pの搬送速度を転写搬送速度V15に維持できるため、用紙間距離D(n)を比較的短い短縮距離Lexとしても問題が無いことを表している。
【0110】
一方、画像形成装置1では、用紙Pの長さ(すなわち用紙長)が算出限界用紙長よりも大きい(長い)場合、当該用紙Pの末尾が最下流転写ニップ箇所N15Cを通過する前に、渡り部25のたるみが解消されてしまうことになる。このことは、転写部15における用紙Pの搬送速度を転写搬送速度V15に維持できないため、用紙間距離D(n)を比較的長い伸張距離Lstとすべきことを意味している。
【0111】
そこで画像形成装置1では、用紙厚区分TDごとのたるみ限界用紙長LDとして、算出限界用紙長に所定のマージン等を加算した値、すなわち算出限界用紙長以上の値が設定されており、それぞれの値が用紙条件テーブルT1(
図11)に格納されている。この用紙条件テーブルT1では、用紙厚区分TDの値が大きくなるに連れて、たるみ限界用紙長LDが小さくなる、といった関係が表れている。
【0112】
すなわち画像形成装置1では、用紙Pの厚さが用紙厚区分TDに属する場合に、その搬送方向に沿った長さが、用紙条件テーブルT1において対応付けられたたるみ限界用紙長LD未満であれば、用紙間距離D(n)を短縮距離Lex(
図2(B))としても、色ずれを発生させる恐れが無い。一方、画像形成装置1では、用紙Pの搬送方向に沿った長さが該たるみ限界用紙長LD以上であれば、用紙間距離D(n)を短縮距離Lexとした場合、色ずれを発生させる可能性がある。
【0113】
そこで画像形成装置1では、複数枚の用紙Pに連続して画像を印刷する場合、用紙条件テーブルT1を参照し、用紙Pの厚さが用紙厚区分TDに属する場合に、その搬送方向に沿った長さがたるみ限界用紙長LD以上であれば、用紙間距離D(n)を短縮距離Lexよりも十分に長い伸張距離Lst(
図2(C))に切り替えるようにした。
【0114】
具体的に画像形成装置1における制御部3の主制御部41(
図3)は、上位装置(図示せず)から用紙Pに印刷すべき画像データ等を受信すると、上述した印刷処理を開始する。このとき主制御部41は、当該画像データが複数枚の用紙Pに連続して印刷すべき内容であった場合、CPU51によりROM52から所定の用紙間隔設定プログラムを読み出して実行することにより、
図12に示す用紙間隔設定処理手順RT1を開始し、最初のステップSP1に移る。
【0115】
ステップSP1において主制御部41は、ROM52から用紙Pの厚さに関する設定値(以下これを設定用紙厚と呼ぶ)を読み出し、次のステップSP2に移る。ステップSP2において主制御部41は、ROM52から用紙Pの搬送方向に関する長さの値(以下これを設定用紙長と呼ぶ)を読み出し、次のステップSP3に移る。
【0116】
ステップSP3において主制御部41は、ROM52に記憶されている用紙条件テーブルT1(
図11)を参照しながら、設定用紙厚が属する用紙厚区分TDを特定し、当該用紙厚区分TDと対応付けられたたるみ限界用紙長LDを読み出して、次のステップSP4に移る。
【0117】
ステップSP4において主制御部41は、設定用紙長がたるみ限界用紙長LD未満であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは用紙Pの厚さに対して搬送方向に沿った長さが比較的小さく(短く)、転写部15において当該用紙Pの末尾が最下流転写ニップ箇所N15Cを通過した際に、渡り部25において該用紙Pにたるみを形成した状態を維持でき、該転写部15における搬送速度を転写搬送速度V15に維持できることを表している。換言すれば、このことは、用紙間距離D(n)を短縮距離Lexに設定したとしても、転写部15における搬送速度を転写搬送速度V15に維持できるため、色ずれが発生する恐れが無いことを表している。このとき主制御部41は、次のステップSP5に移り、用紙間距離D(n)を短縮距離Lex(
図2(B))に設定し、その次のステップSP7に移る。
【0118】
一方、ステップSP4において否定結果が得られると、このことは、用紙Pの厚さに対して搬送方向に沿った長さが比較的大きい(長い)ことを表している。またこのことは、転写部15において当該用紙Pの末尾が最下流転写ニップ箇所N15Cを通過した際に、渡り部25において該用紙Pのたるみを解消してしまい、該転写部15における搬送速度を転写搬送速度V15に維持できないことを表している。換言すれば、このことは、仮に用紙間距離D(n)を短縮距離Lexに設定した場合、転写部15における搬送速度が転写搬送速度V15から変動してしまうため、色ずれが発生する恐れがあることを表している。このとき主制御部41は、次のステップSP6に移り、用紙間距離D(n)を伸張距離Lst(
図2(C))に設定し、その次のステップSP7に移る。
【0119】
ステップSP7において主制御部41は、用紙間隔設定処理手順RT1を終了する。その後、画像形成装置1は、各用紙Pの間隔を当該用紙間距離D(n)に調整しながら印刷処理を行い、画像を順次印刷していく。
【0120】
[4.効果等]
以上の構成において、本実施の形態による画像形成装置1は、用紙厚区分TDとたるみ限界用紙長LDとの関係を表した用紙条件テーブルT1(
図11)を予め作成してROM52に記憶させるようにした。また画像形成装置1では、用紙間距離D(n)に関し、比較的短い短縮距離Lexと、比較的長い伸張距離Lstとの何れかに設定し得るようにした(
図2)。
【0121】
画像形成装置1は、複数枚の用紙Pに連続して画像を印刷する場合、
図7に示したように、原則として用紙間距離D(n)を短縮距離Lexとする。これにより画像形成装置1は、単位時間あたりに搬送路Wにより搬送可能な用紙Pの枚数を増加でき、単位時間あたりの印刷枚数であるスループットを高めることができる。
【0122】
その一方で画像形成装置1は、用紙間隔設定処理手順RT1(
図12)を実行し、用紙条件テーブルT1(
図11)において用紙Pの設定用紙厚が属する用紙厚区分TDと対応付けられたたるみ限界用紙長LDよりも、用紙Pの設定用紙長の方が長い場合に、用紙間距離D(n)を伸張距離Lstとする。これにより画像形成装置1は、
図13に示すように、渡り部25(
図1)において用紙Pのたるみが解消された場合であっても、後続の用紙Pにおいて色ずれが発生する可能性を排除できる。
【0123】
これを換言すれば、画像形成装置1は、渡り部25で用紙Pのたるみが解消し後続の用紙Pにおいて色ずれが発生する恐れがある場合に限り、用紙間距離D(n)を通常よりも拡大する。これにより画像形成装置1は、敢えてスループットを低下させながらも、先行する用紙P(n)の末尾が最下流転写ニップ箇所N15Cを通過した後に、後続の用紙P(n+1)の先頭を最上流転写ニップ箇所N15Kに到達させることができ、色ずれの発生による画質の低下を回避できる。
【0124】
ところで画像形成装置では、複数枚の用紙Pに連続して画像を印刷する場合に、色ずれの発生を防止するための方策として、用紙間距離D(n)を短縮距離Lexとしたまま、定着部27における定着搬送速度V27を調整することにより転写搬送速度V15と同等に揃え、これにより色ずれの発生を防止することも考えられる。
【0125】
しかし、仮に画像形成装置がこの方策を採った場合、定着部27において熱により各ローラが膨張して外周の長さが変化するため、定着搬送速度V27を転写搬送速度V15と同等に揃えるように制御することが極めて困難となる。またこの方策を採った画像形成装置では、用紙Pが比較的厚く剛性が高い場合、
図10に示した場合と同様、渡り部25においてたるみが殆ど形成されないため、後続の用紙Pにおいて色ずれが発生する可能性がある。
【0126】
そこで本実施の形態による画像形成装置1では、定着部27における定着搬送速度V27を厳密に制御せず、該定着搬送速度V27を転写搬送速度V15よりもやや大きい速度に設定した上で、渡り部25において用紙Pにできるだけたるみを形成させるようにした。
【0127】
これにより画像形成装置1では、定着部27において定着搬送速度V27を高精度に制御する必要が無く、転写部15における搬送速度の変動をある程度の範囲で適切に抑制できる。その上で画像形成装置1は、用紙間隔設定処理手順RT1(
図12)により、用紙Pの設定用紙厚が属する用紙厚区分TDにおいて、用紙Pの設定用紙長がたるみ限界用紙長LDよりも長い場合に用紙間距離D(n)を伸張距離Lstに拡大するため、転写部15の搬送速度が変動した場合であっても、色ずれの発生を阻止できる。
【0128】
さらに画像形成装置1では、伸張距離Lst(
図2(C))を、転写ニップ間距離Lkcよりも1[mm]大きい(長い)値とした。これにより画像形成装置1では、用紙間距離D(n)を伸張距離Lstとした場合に、先行する用紙P(n)の末尾が転写ベルト18から離れ、本来の転写搬送速度V15で走行している状態で、後続の用紙P(n+1)を該転写ベルト18に当接させ、色ずれの発生を確実に防止することができる。
【0129】
また画像形成装置1では、用紙間隔設定処理手順RT1(
図12)において、用紙Pの長さ及び厚さとして、ユーザにより設定された設定用紙厚及び設定用紙長を利用するようにした。このため画像形成装置1は、用紙Pの厚さや長さを計測するためのセンサ等を設ける必要が無く、またこれらを計測する処理を行うことも無く、該用紙Pに適した用紙間距離D(n)を設定することができる。
【0130】
以上の構成によれば、画像形成装置1は、複数枚の用紙Pに連続して画像を印刷する際に、用紙Pの設定用紙厚に基づいたたるみ限界用紙長LDよりも、該用紙Pの設定用紙長の方が長い場合に、用紙間距離D(n)を伸張距離Lstとし、他の場合に短縮距離Lexとする。これにより画像形成装置1は、用紙Pの長さや厚さに起因して、渡り部25において該用紙Pのたるみが解消された場合であっても、後続の用紙Pにおいて色ずれが発生する可能性を適切に排除しながら、可能な場合に用紙間距離D(n)をできるだけ狭めてスループットを高めることができる。
【0131】
[5.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、伸張距離Lst(
図2(C))を転写ニップ間距離Lkcよりも1[mm]大きく(長く)する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば転写ニップ間距離Lkcよりも5[mm]大きい値等、他の種々の値としても良い。例えば、転写部15(
図2)において用紙P及び転写ベルト18の間で比較的高い摩擦力が作用する場合、用紙Pの少なくとも一部が転写ベルト18と当接している間、該転写ベルト18に対し該用紙Pを殆ど滑らせること無く、両者がほぼ同一の速度で転写搬送路W2に沿って進行すると見なすことができる。この場合、ドライブローラ上端16T及びテンションローラ上端17Tの間隔であるローラ距離Lrに定数αを加算した値、又は該ローラ距離Lrから定数αを減算した値を、伸張距離Lstとしても良い。
【0132】
また上述した実施の形態においては、最短搬送距離L1及びたるみ時搬送距離L2を、最下流転写ニップ箇所N15Cから定着ニップ箇所N27までの間における用紙Pの搬送距離として、これらを基にたるみ限界時間やたるみ限界距離等を算出する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば最短搬送距離L1及びたるみ時搬送距離L2を、ドライブローラ上端16Tから定着ニップ箇所N27までの間における用紙Pの搬送距離として、これらを基にたるみ限界時間やたるみ限界距離等を算出しても良い。具体的には、実施の形態における最短搬送距離L1及びたるみ時搬送距離L2から、長さLcbをそれぞれ減算すれば良い。ただし、両者の差分である差分搬送距離dLにおいては、減算した長さLcbが相殺されるため、実施の形態と同一の値となる。
【0133】
さらに上述した実施の形態においては、転写部15(
図2)の各転写ニップ箇所N15を前後方向に極めて短いものと見なし、左右方向から見た
図2等において「点」として表す場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば
図14に示すように、各転写ニップ箇所N15が前後方向に関してある程度の距離LNを有するものと見なしても良い。この場合、転写ニップ間距離Lkcは、最上流転写ニップ箇所N15Kにおける最も上流側(前側)の最上流転写ニップ開始点N15KUから、最下流転写ニップ箇所N15Cにおける最も下流側(後側)の最下流転写ニップ終了点N15CLまでの距離となる。
【0134】
さらに上述した実施の形態においては、転写部15(
図2)において用紙Pが転写ベルト18と当接する範囲を、テンションローラ上端17Tからドライブローラ上端16Tまでの範囲と見なし、この範囲に相当する距離をローラ距離Lrとする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、
図15(A)に示すように、例えばドライブローラ上端16Tよりも下流側(後側)の下流側拡張端16Eまでの下流側拡張範囲16Aにおいて用紙Pが転写ベルト18に当接する場合に、テンションローラ上端17T(
図2)から該下流側拡張端16Eまでの範囲をローラ距離Lrとしても良い。或いは、
図15(B)に示すように、例えばテンションローラ上端17Tよりも上流側(前側)の上流側拡張端17Eまでの上流側拡張範囲17Aにおいて用紙Pが転写ベルト18に当接する場合に、該上流側拡張端17Eからドライブローラ上端16T(
図2)までの範囲をローラ距離Lrとしても良い。さらには、両者を組み合わせて、上流側拡張端17Eから下流側拡張端16Eまでの範囲に相当する距離をローラ距離Lrとしても良い。
【0135】
さらに上述した実施の形態においては、用紙条件テーブルT1(
図11)において各用紙厚区分TDに1個のたるみ限界用紙長LDを対応付け、用紙間隔設定処理手順RT1(
図12)において設定用紙長と該たるみ限界用紙長LDとの比較結果を基に用紙間距離D(n)を短縮距離Lex又は伸張距離Lstの2段階に切り替える場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば各用紙厚区分TDに2個以上のたるみ限界用紙長LDを対応付け、用紙間距離D(n)を3段階以上に切り替えるようにしても良い。
【0136】
さらに上述した実施の形態においては、用紙条件テーブルT1(
図11)において各用紙厚区分TD及びたるみ限界用紙長LDを対応付け、用紙間隔設定処理手順RT1(
図12)において設定用紙厚が属する用紙厚区分TDと対応付けられたたるみ限界用紙長LDを設定用紙長と比較する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば画像形成装置1に温度及び湿度を計測する温度センサ及び湿度センサを設け、温度及び湿度に応じた複数の用紙設定テーブルを予め作成しておいても良い。この場合、画像形成装置1は、用紙間隔設定処理において、温度センサ及び湿度センサにより得られた温度及び湿度の測定値と対応する用紙設定テーブルを選定した上で、当該用紙設定テーブルにおいて、設定用紙厚が属する用紙厚区分TDと対応付けられたたるみ限界用紙長LDを設定用紙長と比較すれば良い。或いは、例えば温度及び湿度の値に応じて、定数α(
図2)の値を変化させても良い。これらにより、温度や湿度に応じて用紙Pと転写ベルト18との摩擦力が変化する場合であっても、適切なたるみ限界用紙長LDを用いて設定用紙長と比較することができる。また、温度及び湿度の双方を用いる構成に限らず、温度又は湿度の何れか一方のみを用いても良い。
【0137】
さらに上述した実施の形態においては、用紙厚区分TDとたるみ限界用紙長LDとを対応付けた用紙条件テーブルT1(
図11)を予めROM52(
図3)に記憶させておき、用紙間隔設定処理手順RT1(
図12)において該用紙条件テーブルT1を参照してたるみ限界用紙長LDを読み出す場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、他の種々の手法により、用紙厚区分TDを基にたるみ限界用紙長LDを得るようにしても良い。具体的には、例えば用紙厚区分TDとたるみ限界用紙長LDとの関係を表す関数を予め作成しておき、用紙間隔設定処理手順RT1(
図12)において該関数を用いてたるみ限界用紙長LDを算出するようにしても良い。またこの場合、用紙厚区分TDに代えて設定用紙厚の値を用いるようにしても良い。
【0138】
さらに上述した実施の形態においては、用紙間隔設定処理手順RT1(
図12)において、ユーザにより設定された設定用紙厚及び設定用紙長を読み出して用いる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば用紙Pの厚さを計測する用紙厚センサを設け、該用紙厚センサにより計測した用紙厚の値を用いるようにしても良い。また、ホッピングセンサ9等のセンサにより用紙Pを検出した時間や該用紙Pの搬送速度等を基に用紙長を算出し、得られた値を用いるようにしても良い。
【0139】
さらに上述した実施の形態においては、給紙搬送部6(
図1)における搬送ローラ対12等の回転又は停止を制御部3の制御に基づいて適宜制御することにより、用紙間距離D(n)を調整する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば給紙搬送部6における搬送ローラ対12等の回転速度を適宜制御することにより、用紙間距離D(n)を調整しても良い。また、ホッピングローラ8による給紙タイミングや搬送ローラ対10の搬送速度等を制御することにより、用紙間距離D(n)を調整しても良い。
【0140】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成部22(
図1及び
図2)において、それぞれ1色のトナー画像を形成する画像形成ユニット23を4個設ける場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば3個以下又は5個以上の画像形成ユニット23を画像形成部22に設けても良い。或いは、例えば4色分のトナー画像を形成する1個の画像形成ユニットを画像形成部22に設けても良い。
【0141】
さらに上述した実施の形態においては、主制御部41により実行する各種プログラムを、ROM52(
図3)に予め記憶させておく場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばインタフェース部55を介して各種サーバ装置等(図示せず)と接続し、該サーバ装置等から各種プログラムを受信した上で、主制御部41により実行しても良い。
【0142】
さらに上述した実施の形態においては、本発明を単機能のプリンタである画像形成装置1に適用する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば複写機やファクシミリ装置の機能を有するMFP(Multi Function Peripheral)等、他の種々の機能を有する画像形成装置に適用しても良い。
【0143】
さらに本発明は、上述した実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0144】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成部としての画像形成ユニット23と、転写部としての転写部15と、制御部としての制御部3とによって画像形成装置を構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる画像形成部と、転写部と、制御部とによって画像形成装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、例えば電子写真方式により画像形成ユニットにおいて形成したトナー画像を、転写ベルトにより搬送される用紙に転写して定着させる場合に利用できる。
で利用できる。
【符号の説明】
【0146】
1……画像形成装置、3……制御部、6……給紙搬送部、9……ホッピングセンサ、11……用紙センサ、13……書込センサ、15……転写部、16……ドライブローラ、16T……ドライブローラ上端、17……テンションローラ、17T……テンションローラ上端、18……転写ベルト、19……転写ローラ、22……画像形成部、23……画像形成ユニット、24……感光体ドラム、25……渡り部、26……湾曲搬送ガイド、27……定着部、41……主制御部、51……CPU、52……ROM、53……RAM、54……タイマーカウンタ、D……用紙間距離、Lr……ローラ距離、Lkc……転写ニップ間距離、Lex……短縮距離、Lst……伸張距離、L1……最短搬送距離、L2……たるみ時搬送距離、dL……差分搬送距離、N15……転写ニップ箇所、N15C……最下流転写ニップ箇所、N15K……最上流転写ニップ箇所、N27……定着ニップ箇所、P……用紙、T1……用紙条件テーブル、TD……用紙厚区分、LD……限界用紙長、V15……転写搬送速度、V27……定着搬送速度、VP……搬送速度、dV……差分速度、W……搬送路、W2……転写搬送路、W3……渡り搬送路、W3C……湾曲渡り搬送路、W3L……直線状渡り搬送路。