(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】放射線撮像装置
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20241203BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20241203BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20241203BHJP
【FI】
G01T7/00 A
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 L
A61B6/42 500S
(21)【出願番号】P 2021094849
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 浩
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-071726(JP,A)
【文献】特開2001-077611(JP,A)
【文献】特開2005-045646(JP,A)
【文献】特開2019-184402(JP,A)
【文献】特開2008-300708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0064501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
1/167-7/12
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子が二次元状に分布するように配列された撮像面を有するセンサーパネルと、
アンテナを有し、他の装置との間で無線通信を行う通信部と、
前記撮像面に沿って広がり、前記アンテナが発した電磁波を反射する導体層と、を備え、
前記電磁波の波長λと、前記アンテナから前記導体層を含む平面までの距離dとが、0<d<Nλ+λ/8、Nλ+3λ/8<d<Nλ+5λ/8、又はNλ+7λ/8<d<Nλ+9λ/8(ただし、Nは0以上の任意の整数)の関係を満たしている放射線撮像装置。
【請求項2】
前記センサーパネルは、シンチレーターと、前記シンチレーターを被覆して当該シンチレーターへの湿気の到達を防ぐ防湿層と、を有しており、
前記防湿層は、前記導体層を兼ねている請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記センサーパネルは、可撓性を有している請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記防湿層は、アルミ箔である請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記通信部は、2.4GHz帯の前記電磁波を用いて無線通信を行う請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記通信部は、5GHz帯の前記電磁波を用いて無線通信を行う請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記アルミ箔の厚さは、10um以上である請求項4に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記通信部は、2.4GHz帯の前記電磁波を用いた無線LANに接続可能である請求項5に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記通信部は、5GHz帯の前記電磁波を用いた無線LANに接続可能である請求項6に記載の放射線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬型の放射線撮像装置(例えば、Flat Panel Detector:FPD)は、生成した放射線画像の画像データを他の装置へ転送する無線通信機能を有している、すなわち、通信のための電磁波を発するアンテナを備えていることが多い。こうした放射線撮像装置を用いて、より遠くにある装置へ画像データを転送するためには、アンテナが発する電磁波の出力を大きくする必要がある。
一方、こうした放射線撮像装置は、被検者と接触した状態で用いられることが多い。このため、被検者は、アンテナが電磁波を発する際にアンテナの近傍で生じる電磁波を吸収し易い状況に置かれることになる。強い電磁波は人体に悪影響を及ぼすため、無線通信機能を有する放射線撮像装置は、人体が電磁波を吸収する尺度である比吸収率(Specific Absorption Rate:以下SAR)が、定められた規制値を超えないように構成されている必要がある。
従来、こうした電磁波の出力増大とSARの低減とを両立するための手段として、例えば特許文献1に記載されているような積層軟磁性部材を放射線撮像装置に組み込むことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来のSARの低減技術で用いられる積層軟磁性部材は、アンテナの近傍に生じる電界を低減するための専用の部品である。
こうした専用の部品を放射線撮像装置に新たに組み込むと、放射線撮像装置の重量が従来に比べて増加してしまうという問題が生じる。
また、専用の部品を新たに組み込むと、放射線撮像装置内のスペースの減少(装置の大型化、設計の自由度低下)、製造コストの増加といった問題も生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、放射線撮像装置が備えるアンテナの近傍で生じる電界を、新たな部品を追加することなく低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る放射線撮像装置は、
複数の半導体素子が二次元状に分布するように配列された撮像面を有するセンサーパネルと、
アンテナを有し、他の装置との間で無線通信を行う通信部と、
前記撮像面に沿って広がり、前記アンテナが発した電磁波を反射する導体層と、を備え、
前記電磁波の波長λと、前記アンテナから前記導体層を含む平面までの距離dとが、0<d<Nλ+λ/8、Nλ+3λ/8<d<Nλ+5λ/8、又はNλ+7λ/8<d<Nλ+9λ/8(ただし、Nは0以上の任意の整数)の関係を満たしている。
【発明の効果】
【0007】
導体層は、多くの場合、放射線撮像装置が従来備えている。
このため、本発明によれば、放射線撮像装置が備えるアンテナの近傍で生じる電界を、新たな部品を追加することなく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一~第四実施形態に係る放射線撮像装置の分解斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係る放射線撮像装置の断面図である。
【
図3】電磁波を低減する仕組みを説明するグラフである。
【
図4】第一実施形態の変形例に係る放射線撮像装置の断面図である。
【
図5】第二実施形態に係る放射線撮像装置の断面図である。
【
図6】第三実施形態に係る放射線撮像装置の断面図である。
【
図7】第四実施形態に係る放射線撮像装置が備えるセンサーパネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。しかし、本発明は、図面に図示されたものに限定されるものではない。
【0010】
<1.第一実施形態>
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
【0011】
始めに、本実施形態に係る放射線撮像装置(以下、撮像装置100)の概略構成について説明する。
図1は撮像装置100の分解斜視図、
図2は撮像装置の断面図(撮像装置100の厚さ方向に沿って切断した場合)、
図3は電磁波を低減する仕組みを説明するグラフである。
【0012】
撮像装置100は、受けた放射線の線量分布に応じた放射線画像を生成するためのものである。
撮像装置100は、例えば
図1に示すように、筐体110と、内部モジュール120と、を備えている。
本実施形態に係る撮像装置100は、各種スイッチ(電源スイッチ、操作スイッチ等)、インジケーター等を備えている。
【0013】
[1-1.筐体]
筐体110は、内部モジュール120を収納するためのものである。
本実施形態に係る筐体110は、矩形のパネル状をしている。すなわち、本実施形態に係る撮像装置100は、可搬型のものとなっている。
また、筐体110は、箱体1と、蓋体2と、を備えている。
【0014】
〔1-1-1.箱体〕
箱体1は、前面部11を有している。
また、本実施形態に係る箱体1は、側面部12を更に有している。
本実施形態に係る前面部11及び側面部12は一体に形成されている。
なお、前面部11と側面部12とは別部材であってもよい。
【0015】
(前面部)
前面部11は、矩形の平板状に形成されている。
また、前面部11の外側表面が撮像装置100(筐体110)の放射線入射面11a(前面)となる。
本実施形態に係る前面部11は、矩形板状に形成されている。
【0016】
前面部11は、放射線の透過を邪魔しない材料で形成されている。
放射線の透過を邪魔しない材料の具体例としては、炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)、ガラス繊維強化樹脂(Glass Fiber Reinforced Plastic:GFRP)、AlやMg等の軽金属等が挙げられる
【0017】
(側面部)
側面部12は、前面部11の周縁部から、放射線入射面11aと直交する方向であって前面部11から離れる方向に延設されている。
また、側面部12の外側表面が撮像装置100(筐体110)の側面となる。
【0018】
〔1-1-2.蓋体〕
蓋体2は、背面部21を有している。
本実施形態に係る蓋体2は、全体が背面部21となっている。
本実施形態に係る背面部21は、前面部11と略等しい矩形に形成されている。
背面部21を形成する材質の具体例としては、炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂、AlやMg等の軽金属等が含まれる。
なお、背面部21は、箱体1と同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
【0019】
背面部21は、内部モジュール120を挟んで箱体1の前面部11と対向するとともに当該前面部11と平行に広がるように配置されている。
このため、背面部21の外側表面が撮像装置100(筐体110)の背面となる。
また、背面部21は、箱体1の側面部12に当接するとともに側面部12に取り付けられている。
本実施形態に係る蓋体2は、箱体1の側面部12にネジ止めされている。
【0020】
〔1-1-3.筐体その他〕
なお、
図1には、側面部12が前面部11と一体形成された筐体110(箱体1)を例示したが、筐体110は、側面部12が背面部21と一体になったものであってもよいし、前面部11、側面部12及び背面部21がそれぞれ別々の部材となっているものであってもよい。
また、前面部11と背面部21の両方が側面部を備えたものであってもよい。
また、
図1には、箱体1と蓋体2とを備える筐体110を例示したが、前面部11と、背面部21と、前面部11の両端と背面部21の両端とをそれぞれつなぐ一対の側面部12と、を有し筒状に形成された筒体と、筒体の開口部を閉塞する蓋体と、を備えたものであってもよい。
【0021】
[1-2.内部モジュール]
内部モジュール120は、筐体110に収納されている。
内部モジュール120は、筐体110の前面部11、背面部21及び側面部12のうちの少なくともいずれかの内側表面に固定されている。
内部モジュール120の筐体110への固定方法には、接着剤を用いた接着、粘着テープを用いた粘着、内側表面に形成された凹部又は凸部への嵌合、内側表面に形成された係合部への係合等が含まれる。
【0022】
内部モジュール120は、
図2に示すように、センサーパネル3と、第一シールド層4と、基台5と、電子部品6と、導体層Lと、を備えている。
また、本実施形態に係る内部モジュール120は、放射線減弱層7と、第二シールド層8と、を更に備えている。
各部3~8,Lは、図示しないスペーサーや、粘着材等によって、筐体110内に固定されている。
【0023】
〔1-2-1.センサーパネル〕
本実施形態に係るセンサーパネル3は、波長変換部31と、光電変換部32と、防湿層33と、を備えている。
【0024】
(波長変換部)
波長変換部31は、放射線を可視光等に変換するためのものである。
本実施形態に係る波長変換部31は、シンチレーター311を有している。
シンチレーター311は、蒸着用基板と、蛍光体層と、を有している。
【0025】
蒸着用基板は、蛍光体層を支持するためのものである。
本実施形態に係る蒸着用基板は、筐体110の放射線入射面11aよりも一回り小さい矩形板状に形成されている。
【0026】
蛍光体層は、蛍光体で、蒸着用基板における、筐体110の前面部11が存在する側と反対側の面全体に膜状に形成されている。
蛍光体は、α線、γ線、X線等の電離放射線が照射されたときに原子が励起されることにより発光する物質のことである。すなわち、蛍光体は、放射線を紫外線や可視光に変換するものである。
蛍光体には、例えばヨウ化セシウム(CsI)の柱状結晶等が含まれる。
なお、蛍光体層は、後述する光電変換部32の表面に形成されていてもよい。その場合、蒸着用基板は不要である。
【0027】
(防湿層)
防湿層33は、前記シンチレーター311を被覆して当該シンチレーター311への湿気の到達を防ぐものである。
防湿層33は、シンチレーター311の前面を被覆する部分と、側面を被覆する部分を有している。
防湿層33の前面を被覆する部分は、撮像面321aに沿って広がっている。
本実施形態に係る防湿層33は、アルミ箔である。
アルミニウムは、周囲から到達した(アンテナ65bが発した)電磁波を反射する。
このため、本実施形態に係る防湿層33は、導体層Lを兼ねていることになる。
【0028】
また、本実施形態に係る防湿層33(アルミ箔)の厚さは、9um以上である。
厚さ9um以上のアルミ箔は、1.0g/m2・day以下の透湿度を有する。このため、こうすることで、シンチレーター311を十分に防湿することができる。
なお、防湿層33の厚さは、10um以上であってもよい。アルミニウムは、電気抵抗率が低いため、こうすることで、電磁波を99%以上反射することができる。
すなわち、本実施形態に係る防湿層33は、導体層Lひいては撮像装置100を軽量化しつつ、電磁波の確実な反射と、シンチレーターの防湿を両立することができる。
【0029】
このように構成された波長変換部31は、蒸着用基板を筐体110の前面部11が存在する方へ向けるとともに、筐体110の放射線入射面11aと平行に広がるように配置されている。
このように構成された波長変換部31は、放射線を受けた領域が、受けた放射線の線量に応じた強度で発光する。
なお、波長変換部31は、蒸着用基板を含めた全体が可撓性を有していてもよい。
【0030】
(光電変換部)
光電変換部32は、光を電気信号に変換するためのものである。
光電変換部32は、波長変換部31の、基台5が存在する側に配置されている。
【0031】
光電変換部32は、基板321と、複数の半導体素子322(
図1参照)と、を有している。
また、本実施形態に係る光電変換部32は、図示しない複数の走査線と、複数の信号線と、複数のスイッチ素子と、複数のバイアス線と、有している。
【0032】
本実施形態に係る基板321は、波長変換部31の輪郭よりも一回り大きい矩形板状に形成されている。
そして、基板321は、波長変換部31と平行に広がるように配置されている。
【0033】
本実施形態に係る複数の走査線は、基板321の表面に、等間隔且つ互いに平行に延びるように形成されている。
本実施形態に係る複数の信号線は、基板321における走査線が設けられた面に、等間隔且つ走査線と直交するように形成されている。
すなわち、本実施形態に係る基板321の表面は、複数の走査線及び複数の信号線によって囲まれる複数の矩形領域を有する。
【0034】
複数の半導体素子322は、それぞれ受けた光の強度に応じた量の電荷を発生させる。
また、複数の半導体素子322は、
図1に示したように、基板321における走査線及び信号線が設けられた面に二次元状に分布するように配列されている。
具体的には、本実施形態に係る複数の半導体素子322は、複数の走査線及び複数の信号線によって囲まれる複数の矩形領域内にそれぞれ配置されている。
このため、本実施形態に係る複数の半導体素子322は、マトリクス(行列)状に配列される。
【0035】
また、各矩形領域内には、スイッチ素子がそれぞれ設けられている。
本実施形態に係るスイッチ素子は、例えばTFT(Thin Film Transistor)で構成されている。
各スイッチ素子は、ゲートが走査線に、ソースが信号線に、ドレインが半導体素子に、それぞれ接続されている。
以下、基板321における、複数の半導体素子322が形成された面を撮像面321aと称する。
【0036】
このように構成された光電変換部32は、撮像面321aを波長変換部31が存在する方へ向けるとともに、
図2に示したように、波長変換部31と平行に広がるように配置されている。
本実施形態に係る光電変換部32は、撮像面321aが波長変換部31に貼り付けられている。
【0037】
〔1-2-2.放射線減弱層〕
放射線減弱層7は、放射線の後方散乱線を吸収するとともに、前方からの放射線が電子部品6へ到達するのを抑制するためのものである。
本実施形態に係る放射線減弱層7は、鉛で、センサーパネル3の輪郭と略等しい矩形のシート状に形成されている。
なお、放射線減弱層7は、鉛以外の材料、すなわち、タングステン、モリブデン等で形成されていてもよい。
本実施形態に係る放射線減弱層7の厚さ(放射線入射面11aと直交する方向の幅)は、70~90μmの範囲内であり、80μmとなっているのが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る放射線減弱層7は、センサーパネル3(光電変換部32)と基台5との間に、センサーパネル3と平行に広がるように配置されている。
また、本実施形態に係る放射線減弱層7は、センサーパネル3における基台5が存在する方向を向く面、及び基台5におけるセンサーパネル3が存在する方向を向く面のうちの少なくとも一方の面に貼り付けられている。
なお、放射線減弱層7は、隣接する部材の表面に蒸着された膜状のものとなっていてもよい。
【0039】
〔1-2-3.第一シールド層〕
第一シールド層4は、電子部品6が発生させた磁気が前記センサーパネルへ到達するのを抑制するためのものである。
第一シールド層4は、放射線減弱層7よりも導電率が高い導電性材料で形成されている。
本実施形態に係る第一シールド層4は、アルミニウムで、センサーパネル3の輪郭と略等しい矩形のシート状に形成されている。
なお、第一シールド層4は、アルミニウム以外の材料、すなわち、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、
チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、カーボン・ナノ・チューブ、フラーレン、ダイヤモンド等で形成されていてもよい。
【0040】
また、本実施形態に係る第一シールド層4は、放射線減弱層7よりも薄くなっている。
すなわち、放射線減弱層7の厚さは70~90μmの範囲内であったのに対し、本実施形態に係る第一シールド層4の厚さは40~60μmの範囲内であり、50μmとなっているのが好ましい。
【0041】
第一シールド層4は、センサーパネル3と基台5との間に配置されている。
本実施形態に係る第一シールド層4は、放射線減弱層7と基台5との間に配置されている。
また、本実施形態に係る第一シールド層4は、放射線減弱層7における基台5が存在する方向を向く面、及び基台5における放射線減弱層7が存在する方向を向く面のうちの少なくとも一方の面に貼り付けられている。
この第一シールド層4の位置は、筐体110の厚さ(放射線入射面11aから筐体110の背面までの距離)を15mm程度とした場合、電子部品6から概ね2.70~2.90mm離れたところとなる。
【0042】
なお、第一シールド層4は、センサーパネル3と放射線減弱層7との間に設けられていてもよい。
また、電子部品6を基台5へ取り付ける邪魔にならないようであれば、第一シールド層4は、基台5と電子部品6との間に設けられていてもよい。
【0043】
また、第一シールド層4は、隣接する部材の表面に蒸着された膜状のものとなっていてもよい。
また、第一シールド層4は、複数枚設けられていてもよい。
その場合、複数の第一シールド層4は、互いに積層されていてもよいし、異なる部材の間にそれぞれ配置されていてもよい。
また、その場合、複数の第一シールド層4は、全て同じ材料で形成されていてもよいし、少なくとも一部が異なる材料で形成されていてもよい。
【0044】
〔1-2-4.第二シールド層〕
第二シールド層8は、電子部品が発生させ撮像面321a側へ回り込んできた磁気がセンサーパネルへ到達するのを抑制するためのものである。
第二シールド層8は、導電性材料で形成されている。
本実施形態に係る第二シールド層8は、アルミニウムで、第一シールド層4と同様の矩形のシート状に形成されている。
なお、第二シールド層8を形成する導電性材料は、第一シールド層4を形成する導電性材料として挙げたアルミニウム以外のものであってもよい。
【0045】
第二シールド層8は、センサーパネル3の撮像面321a側に配置されている。
すなわち、第二シールド層8は、箱体1の前面部11とセンサーパネル3との間に設けられている。
本実施形態に係る第二シールド層8は、撮像面321a及び前面部11の内側表面の少なくとも一方の面に貼り付けられている。
【0046】
なお、第二シールド層8は、隣接する部材の表面に蒸着された膜状のものとなっていてもよい。
また、第二シールド層8は、複数枚設けられていてもよい。
その場合、複数の第二シールド層8は、全て同じ材料で形成されていてもよいし、少な
くとも一部が異なる材料で形成されていてもよい。
【0047】
〔1-2-5.基台〕
基台5は、センサーパネル3を撮像面321aが存在する側の反対側から支持するものである。
基台5は、筐体110の背面部21とセンサーパネル3との間に配置されている。
【0048】
〔1-2-6.電子部品〕
電子部品6は、基台5の、センサーパネル3が存在する側とは反対側に配置され、図示しない基板間束線を介して光電変換部32とを接続されている。
電子部品6は、走査部61、読み出し部62、制御部63、電源部64の他、通信部65を含んでいる。
走査部61は、各スイッチ素子を制御する回路を有している。
読み出し部62は、電荷を信号値として読み出す回路を有している。
制御部63は、各回路を制御して画像データを生成する回路を有している。
電源部64は、半導体素子に電圧を印加したり、上記回路へ電力を供給したりするための回路を有している。
【0049】
通信部65は、他の装置との間で通信を行うためのものである。
通信部65は、通信回路65aと、アンテナ65bと、を有している。
本実施形態に係る通信部65は、有線通信を行うためのコネクター65c(
図1参照)も有している。
また、本実施形態に係る通信部65は、2.4GHz帯又は5GHz帯の電磁波を用いて無線通信を行う。
具体的には、通信部65は、2.4GHz帯又は5GHz帯の電磁波を用いた無線LANやBluetooth(登録商標)等に接続可能である。
2.4GHz帯の電磁波は、Wi-Fi(登録商標)及びBluetoothで用いられるものであり、5GHz帯の電磁波は、Wi-Fi専用で用いられるものである。
【0050】
[1-3.アンテナ、導体層及び筐体の位置関係]
アンテナ65bは、
図2に示したように、筐体110に取り付けられている。
図2には、アンテナ65bを筐体110の側面部12に配置した場合を例示したが、アンテナ65bは蓋体2(背面部21)に配置されていてもよい。
また、アンテナ65bは、電磁波の波長λと、アンテナ65bから第二シールド層8(導体層L)を含む平面Pまでの距離dとが、0<d<Nλ+λ/8、Nλ+3λ/8<d<Nλ+5λ/8、又はNλ+7λ/8<d<Nλ+9λ/8(ただし、Nは0以上の任意の整数)の関係を満たすような位置に配置されている。
なお、平面Pは、導体層Lの表面の場合もあれば、導体層Lの表面の延長線上にある場合もある。
また、筐体110の前面部11は、導体層Lからの距離が、0~λ/8,3λ/8~5λ/8,又は7λ/8~9λ/8・・の範囲内となる箇所に位置している。
アンテナ65b、導体層L及び筐体110の前面部11が上記のような位置関係にあるとき、アンテナ65bが電磁波を発すると、アンテナ65bから導体層Lへ向かう電磁波(進行波E
1)と、導体層Lで反射した電磁波(反射波E
2)とが干渉して、例えば
図3に示すような定常波Eとなる。
そして、この定常波の節N及びその近傍(導体層Lからλ/8,3λ/8~5λ/8,7λ/8~9λ/8・・の範囲内)では、電磁波が低減し、筐体110の前面部11は、この電磁波が低減した領域に位置することになる。
【0051】
なお、通信部61が2.4GHz帯の電磁波を用いる場合、λ/8は15.6mm程度になる。
撮像装置100の筐体110の厚さは、ISO4090/JISZ4905に基づき、一般に15mm程度であることが多いため、2.4GHz帯の電磁波を用いる場合、距離dと波長λが上記関係を満たすためには、多くの場合、筐体110の背面(背面部21)にアンテナ65bを取り付けることになる。
一方、通信部61が5GHz帯の電磁波を用いる場合、λ/8は7.5mm程度になる。
上述したように、撮像装置100の筐体110の厚さは、一般に15mm程度であることが多いため、5GHz帯の電磁波を用いる場合、距離dと波長λが上記関係を満たすためには、多くの場合、筐体110の側面(側面部12)にアンテナ65B取り付けることになる。
【0052】
[1-4.第一実施形態その他]
ここまで、防湿層33と第二シールド層8とが積層された撮像装置100について説明してきたが、防湿層33がアルミ箔である(導体層Lを兼ねている)場合、撮像装置100は、例えば
図4に示すように、第一,第二シールド層4,8のうち、少なくとも第二シールド層8を備えていなくてもよい(
図4には、第二シールド層8のみが無い場合を例示した)。
【0053】
<2.第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
なお、ここでは、上記第一実施形態と同様の構成には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る放射線撮像装置(以下、撮像装置100A)は、筐体110A及び内部モジュール120Aの構成が、上記第一実施形態と異なっている。
【0055】
[2-1.内部モジュール]
本実施形態に係る内部モジュール120Aは、例えば
図5に示すように、第一,第二シールド層4,8のうち、少なくとも一方を備えていない(
図5には、第一,第二シールド層4,8が両方無い場合を例示した)。
【0056】
[2-2.筐体]
本実施形態に係る筐体110Aは、前面部11A及び背面部21Aのうち少なくとも一方が金属で形成されている。
そして、前面部11A及び背面部21Aのうち、金属で形成された部材は、導体層Lを兼ねている。すなわち、電磁波の波長λと、アンテナ65bから前面部11又は背面部21までの距離dが0<d<Nλ+λ/8、Nλ+3λ/8<d<Nλ+5λ/8、又はNλ+7λ/8<d<Nλ+9λ/8(ただし、Nは0以上の任意の整数)の関係を満たしている。
なお、前面部11Aが金属で形成されている場合、側面部12Aも金属で形成されていてもよい。
【0057】
[2-3.第二実施形態その他]
本実施形態のように筐体110Aの前面部11A又は背面部21Aが導体層Lを兼ねている場合、内部モジュール120Aのセンサーパネル3Aの波長変換部31Aは、防湿層33を備えていなくてもよい。
この場合、波長変換部31Aは、蒸着用基板の反対側から蛍光体層を覆うカバーと、蒸着用基板の周縁部とカバーの周縁部との間に蛍光体層を囲む封止材と、によってシンチレーター311を防湿するようになっていてもよい。
【0058】
<3.第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
なお、ここでは、上記第一実施形態と同様の構成には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
[3-1.内部モジュール]
本実施形態に係る放射線撮像装置(以下、撮像装置100B)の内部モジュール120Bは、例えば
図6に示すように、第一シールド層4又は第二シールド層8が導体層Lを兼ねている。すなわち、電磁波の波長λと、アンテナ65bから第一シールド層4又は第二シールド層8までの距離dが0<d<Nλ+λ/8、Nλ+3λ/8<d<Nλ+5λ/8、又はNλ+7λ/8<d<Nλ+9λ/8(ただし、Nは0以上の任意の整数)の関係を満たしている。
【0060】
[3-2.第三実施形態その他]
本実施形態のように第一シールド層4又は第二シールド層8が導体層Lを兼ねている場合、内部モジュール120Bのセンサーパネル3Bの波長変換部31Bは、上記センサーパネル3Aのものと同様に構成されていてもよい。
【0061】
<4.第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
なお、ここでは、上記第一実施形態と同様の構成には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
本実施形態に係る放射線撮像装置(以下、撮像装置100C)の内部モジュール120Cは、センサーパネル3Cが可撓性を有している点が上記第一実施形態と異なっている。
本実施形態に係るセンサーパネル3Cは、例えば
図7に示すように、波長変換部31Cと、光電変換部32Aと、防湿層33と、第二防湿層34Aと、第三防湿層35Aと、第四防湿層36Aと、を備えている。
【0063】
[4-1.光電変換部]
本実施形態に係る光電変換部32Aは、第一実施形態と同様の走査線、信号線、スイッチ素子、半導体素子322(
図1参照)の他、基板321Aと、素子保護層323と、を有している。
【0064】
〔4-1-1.基板〕
基板321Aは、可撓性を有する材料で、上記第一実施形態に係る基板321と同様の矩形板状に形成されている。
「可撓性を有する材料」の具体例としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はこれらの複合材料が挙げられる。
【0065】
〔4-1-2.素子保護層〕
素子保護層323は、撮像面321aの中央部(半導体素子322が設けられている領域)を覆っている。
素子保護層323は、半導体素子322を保護することが可能であり、且つ波長変換部31Cから届く光を遮らない材料でシート状に形成されている。
本実施形態に係る素子保護層323は、有機材料及び無機材料のうちの少なくともいずれかの材料で形成されている。
有機材料の具体例としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリパラキシレン等が挙げられる。
無機材料の具体例としては、SiN等の窒化膜、酸化ケイ素、酸化アルミ、ITO(Indium Tin Oxide)等が挙げられる。
なお、素子保護層323は、基板321A側からシンチレーター311Aへ湿気が到達するのを防ぐ防湿層を兼ねていてもよい。
【0066】
[4-2.波長変換部]
本実施形態に係る波長変換部31Cは、シンチレーター311Aと、光学接着層312と、防湿層接着層313と、を有している。
【0067】
〔4-2-1.シンチレーター〕
シンチレーター311Aは、蒸着用基板311aと、蛍光体層311bと、を有している。
【0068】
蒸着用基板311aは、蛍光体層311bを支持するためのものである。
本実施形態に係る蒸着用基板311aは、可撓性を有する材料で、上記第一実施形態に係る蒸着用基板と同様の矩形板状に形成されている。
蒸着用基板311aの形成に用いることのできる材料は、上記光電変換部32Aの基板321Aの材料として挙げたものと同様である。
なお、蒸着用基板311aは、基板321Aと同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
【0069】
蛍光体層311bは、上記第一実施形態に係る蛍光体層と同様である。
【0070】
〔4-2-2.光学接着層〕
光学接着層312は、光電変換部32Aの素子保護層323と蛍光体層311bとを貼り合わせている。
光学接着層312は、光学接着剤からなる。
光学接着剤の具体例としては、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)、ホットメルト樹脂等が挙げられる。
OCAの具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくともいずれかの樹脂を主成分とするものが挙げられる。
ホットメルト樹脂の具体例としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂のうちの少なくともいずれかの樹脂を主成分とするものが挙げられる。
なお、素子保護層323と蛍光体層311bとを貼り合わせる必要が無い場合(例えば、後述する防湿層33によってシンチレーター311Aを光電変換部32Aへ押さえつける場合)、光学接着層312は不要である。
【0071】
〔4-2-3.防湿層接着層〕
防湿層接着層313は、蒸着用基板311a及び蛍光体層311bのうちの少なくとも一方の部材と防湿層33とを貼り合わせている。
また、防湿層接着層313の周縁部は、素子保護層323の周縁部及び第三防湿層35Aのうちの少なくとも一方の部材と防湿層33とを貼り合わせている。
防湿層接着層313は、有機材料からなる接着剤で形成されている。
有機材料の具体例としては、アクリル、ウレタン、ポリエステル、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、天然ゴム、ブチルゴム、エポキシ等が挙げられる。
【0072】
〔4-2-4.波長変換部その他〕
なお、波長変換部31Cは、反射層を備えていてもよい。
反射層は、蛍光体層311bが発生させた光を反射させるためのものである。
反射層は、反射層は、金属(例えば銀、アルミニウム、ニッケル、銅等)で形成された膜であってもよいし、酸化チタン、酸化アルミニウム等の粒子が混錬された樹脂によってシート状に形成されたものであってもよい。
反射層は、シンチレーター311Aにおける筐体110の前面部11が存在する側に配置される。
これにより、蛍光体層311bで発生し、光電変換部32Aから遠のく方向(反射層が存在する方向)へ向かう光が、反射層で反射して光電変換部32Aが存在する方向へ向かうようになる。その結果、蛍光体層311bで発生した光がより多く半導体素子322に到達するようになり、撮像装置100Cの感度が向上する。
【0073】
[4-3.防湿層]
防湿層33は、シンチレーター311Aの蛍光体層311bが湿気を吸収してしまうのを防ぐためのものである。
防湿層33は、湿気を通過させない性質を有する材料でシート状に形成されている。
本実施形態に係る防湿層33は、金属、無機材料及び有機材料のうちの少なくともいずれかの材料で形成されている。
金属の具体例としては、例えば例えば、アルミニウム、銀、クロム、銅、ニッケル、チタン、マグネシウム、ロジウム、鉛、白金、金等が挙げられる。
無機材料の具体例としては、例えば、上記金属の酸化物、Al2O3、SiO2、ITO
(Indium Tin Oxide)、SiN等が挙げられる。
有機材料の具体例としては、例えば、フッ素樹脂、PVA、PVDC、PMMA、ポリアクリロニトリル(PAN)、PLA樹脂(ポリ乳酸)、ポリパラキシレン等が挙げられる。
【0074】
防湿層33の中央部は、シンチレーター311Aを覆っている。
本実施形態に係る防湿層33の中央部は、防湿層接着層313によってシンチレーター311Aに貼り付けられている。
また、防湿層33の周縁部は、防湿層接着層313によって光電変換部32Aの素子保護層323及び第三防湿層35Aのうちの少なくとも一方の部材の表面に貼り付けられている。
なお、筐体110が防湿構造を備えている場合には、防湿層33及び波長変換部31Cの防湿層接着層313は不要である。
【0075】
[4-4.第二防湿層]
第二防湿層34Aは、基板321Aにおける波長変換部31Cが存在する側とは反対側の面を覆っている。
第二防湿層34Aの形成に用いることのできる材料は、上記防湿層33の材料として挙げたものと同様である。
なお、第二防湿層34Aの材料は、防湿層33と同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
【0076】
[4-5.第三防湿層]
第三防湿層35Aは、撮像面321aの周縁部(半導体素子322が設けられていない領域)を覆っている。
第三防湿層35Aは、湿気を通過させない性質を有する材料でシート状に形成されている。
本実施形態に係る第三防湿層35Aは、金属、複合材料、樹脂材料のうちの少なくともいずれかの材料で形成されている。
金属の具体例としては、アルミニウム、銅、ニッケル、鉛等が挙げられる。
複合材料の具体例としては、ガラス、カーボン、CFRP等が挙げられる。
樹脂材料の具体例としては、PET、PC、PMMA、ABS等が挙げられる。
なお、センサーパネル3Cは、この第三防湿層35Aを備えていなくてもよい。
【0077】
[4-6.第四防湿層]
第四防湿層36Aは、シンチレーター311Aの蛍光体層311bが湿気を吸収してしまうのを防ぐためのものである。
第四防湿層36Aは、防湿層接着層313の内側で、少なくともシンチレーター311Aにおける撮像面321aに沿う面を覆っている。
本実施形態に係る第四防湿層36Aは、シンチレーター311Aの側面も更に覆っている。また、第四防湿層36Aは、シンチレーター311Aの底面を覆っていてもよい。
第四防湿層36Aは、湿気を通過させない性質を有する材料でシート状に形成されている。
本実施形態に係る第四防湿層36Aは、防湿層33と同様に、金属、無機材料及び有機材料のうちの少なくともいずれかの材料で形成されている。
金属の具体例としては、例えば例えば、アルミニウム、銀、クロム、銅、ニッケル、チタン、マグネシウム、ロジウム、鉛、白金、金等が挙げられる。
無機材料の具体例としては、例えば、上記金属の酸化物、Al2O3、SiO2、ITO(Indium Tin Oxide)、SiN等が挙げられる。
有機材料の具体例としては、例えば、フッ素樹脂、PVA、PVDC、PMMA、ポリアクリロニトリル(PAN)、PLA樹脂(ポリ乳酸)、ポリパラキシレン等が挙げられる。
防湿層33で選択した無機または有機材料以外のものを組み合わせて使用することで、腐食等の弊害を防ぎ、相補的な効果を得ることができる。例えば、防湿層33が無機材料からの選択なら、第四防湿層36Aは有機材料から選択し、防湿層33が有機材料からの選択なら、第四防湿層36Aは無機材料から選択するとよい。
【0078】
以上説明してきた第四防湿層36Aを設けることで、シンチレーター311Aの取り扱いにおける耐湿性能が向上し、最終製品としても耐湿性能が向上する。
なお、ここでは、防湿層33及び第四防湿層36Aによる二重の防湿構造について説明したが、防湿層33が設けられている場合、第四防湿層36Aを必ずしも設ける必要はない。
【0079】
[4-7.第四実施形態その他]
なお、波長変換部は、反射層を備えていてもよい。
反射層は、蛍光体層311bが発生させた光を反射させるためのものである。
反射層は、反射層は、金属(例えば銀、アルミニウム、ニッケル、銅等)で形成された膜であってもよいし、酸化チタン、酸化アルミニウム等の粒子が混錬された樹脂によってシート状に形成されたものであってもよい。
反射層は、シンチレーター311Aにおける筐体110の前面部11が存在する側に配置されている。
これにより、蛍光体層311bで発生し、光電変換部32Aから遠のく方向(反射層が存在する方向)へ向かう光が、反射層で反射して光電変換部32Aが存在する方向へ向かうようになる。その結果、蛍光体層311bで発生した光がより多く半導体素子322に到達するようになり、撮像装置100Cの感度が向上する。
【0080】
また、筐体110の前面部11とセンサーパネル3Cの第三防湿層35Aとの間(第三防湿層35Aの表面)には、必要に応じて、第二シールド層8が配置される。
なお、第三防湿層35Aと第二シールド層8とは、同一の材質によって一体形成されていてもよい(共通化されていてもよい)。
また、第四防湿層36Aが十分な防湿効果を有しており、かつ導体層Lを兼ねる部材が防湿層33とは別に設けられている場合、防湿層33を必ずしも設ける必要はない。
【0081】
<5.作用・効果>
以上説明してきた撮像装置100,100A,100B,100Cは、複数の半導体素子322が二次元状に分布するように配列された撮像面321aを有するセンサーパネル3,3Aと、アンテナ65bを有し、他の装置との間で無線通信を行う通信部65と、撮像面321aに沿って広がり、アンテナ65bが発した電磁波を反射する導体層L(第一,第二シールド層4,8、防湿層33,36A、前面部11、背面部21)と、を備え、電磁波の波長λと、アンテナ65bから導体層Lを含む平面Pまでの距離dとが、0<d<Nλ+λ/8、Nλ+3λ/8<d<Nλ+5λ/8、又はNλ+7λ/8<d<Nλ+9λ/8(ただし、Nは0以上の任意の整数)の関係を満たしている。
【0082】
アンテナ65b及び導体層Lが上記のような位置関係にあるとき、アンテナ65bが電磁波を発すると、アンテナ65bから導体層Lへ向かう電磁波(進行波E1)と、導体層Lで反射した電磁波(反射波E2)とが干渉して定常波となる。
そして、この定常波の節N及びその近傍(導体層Lからλ/8,3λ/8~5λ/8,7λ/8~9λ/8・・の範囲内)では、電磁波が低減する。
この相殺効果は、反射波E2の強度が高いほど大きくなるが、本実施形態に係る導体層Lは、電磁波を十分に反射できる厚さ(9μm以上)を有しているため、より多くの電磁波を相殺することができる。
また、導体層Lは、防湿層33,36A、前面部11、背面部21、第一シールド層4、又は第二シールド層8であり、放射線撮像装置が従来備えている部材である。
このため、撮像装置100,100A,100B,100Cによれば、アンテナ65bの近傍で生じる電界を、新たな部品を追加することなく低減することができる。
その結果、撮像装置100,100A,100B,100Cに接触する人体への悪影響を小さくしつつ、画像データ等を遠くまで送信することができる。
【0083】
また、第一,第四実施形態に係る撮像装置100,100Cは、シンチレーター311の防湿層33が導体層Lを兼ねている。
このため、撮像装置100,100Cによれば、新たな部品を追加することなく、アンテナ65bの近傍で生じる電界を低減する、及びシンチレーターが湿気を吸収してしまうのを防ぐ、という全く異なる二つの課題を、同時に解決することができる。
【0084】
また、第四実施形態に係る撮像装置100Cは、センサーパネル3Cが可撓性を有している。
このため、撮像装置100Cによれば、センサーパネルの基板をガラスで構成した場合に比べて、センサーパネルを軽量化することができるとともに、衝撃によって破損しにくくすることができる。
また、第一,第四実施形態に係る撮像装置100,100Cは、防湿層33がアルミ箔で構成されている。
アルミニウムは、電気伝導率が低く、且つ軽量である。このため、撮像装置100,100Cによれば、アンテナ65bの近傍で生じる電界をより確実に低減しつつ、導体層Lひいては撮像装置100を軽量化することができる。
また、アルミニウムは、展延性が高い。このため、撮像装置100,100Cによれば、防湿層33を柔軟性が高いものとすることができ、可撓性のセンサーパネルが撓んでもシンチレーターを防湿し続けることができる。
【0085】
<6.本発明その他>
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0086】
例えば、第一実施形態に係る波長変換部31は、第二実施形態で説明した光学接着層312、第三防湿層35A及び防湿層接着層313のうちの少なくともいずれかの部材を備えていてもよい。
また、第一実施形態に係る光電変換部32Aは、第二実施形態で説明した素子保護層323、防湿層33及び第二防湿層34Aのうちの少なくともいずれかの部材を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
100,100A,100B,100C 放射線撮像装置
110,110A 筐体
1,1A 箱体
11 前面部
11A 前面部(導体層)
11a 放射線入射面
12 側面部
12A 側面部(導体層)
2 蓋体
21,21A 背面部
120,120A,120B,120C 内部モジュール
3,3A,3B,3C センサーパネル
31,31A,31B,31C 波長変換部
311,311A シンチレーター
311a 蒸着用基板
311b 蛍光体層
312 光学接着層
313 防湿層接着層
32,32A 光電変換部
321,321A 基板
321a 撮像面
322 半導体素子
323 素子保護層
33 防湿層
34A 第二防湿層
35A 第三防湿層
36A 第四防湿層
4 第一シールド層
5 基台
6 電子部品
61 走査部
61 通信部
62 読み出し部
63 制御部
64 電源部
65 通信部
65a 通信回路
65b アンテナ
65c コネクター
7 放射線減弱層
8 第二シールド層
E 定常波
E1 進行波
E2 反射波
L 導体層
N 節
P 導体層Lを含む平面
d アンテナから導体層を含む平面までの距離
λ 電磁波の波長