(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/16 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H02K1/16 Z
(21)【出願番号】P 2021101619
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 祐史
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】立石 祐介
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-205683(JP,A)
【文献】特開2019-193462(JP,A)
【文献】特開2004-112988(JP,A)
【文献】特開2004-135380(JP,A)
【文献】特開2005-237136(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235071(WO,A1)
【文献】特開2012-095492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネット(18)を有し、回転可能に支持された回転体(12)と、
導電性の巻線(30)が環状に巻回されることによってそれぞれ形成され、前記巻線の一部が周方向に並んで配置され前記マグネットの軸方向の中心と径方向に対向して配置される対向部(36)と、該対向部に対して軸方向一方側及び他方側の部分をそれぞれ形成するコイルエンド部(38)と、を有し、周方向に環状に配列された複数のコイル(16)と、
環状に形成されていると共に、複数の前記コイルの前記対向部が内周面又は外周面に沿って配置され、複数の前記コイルの軸方向一方側の前記コイルエンド部及び軸方向他方側の前記コイルエンド部の少なくとも一方の前記コイルエンド部が軸方向の端面に沿って配置され、前記対向部とは反対側の部位に肉抜き部(26B、26C)が形成されたコア(26)と、を備え、
前記肉抜き部において前記対向部と最も近い位置における前記コア内部の最大磁束密度が、前記コアを形成する材料の飽和磁束密度未満となるように、前記肉抜き部の形状、寸法、数及び配置が設定されて
おり、
前記コアは、前記肉抜き部を形成する肉抜き部形成部(92A)を有する板状のコア形成部材(92)が軸方向に積層されることによって形成され、
前記コアを軸方向から見て、前記対向部とは反対側において前記肉抜き部が外接又は内接する仮想円を設定し、
前記コアにおいて前記仮想円よりも前記対向部とは反対側の部分において前記コア形成部材に機械加工が施された状態で、前記コア形成部材が軸方向に積層された状態で一体化されているモータ(10、54、56、64、66、68、84、86、90、94)。
【請求項2】
前記コアには、複数の前記肉抜き部が周方向に間隔をあけて形成され、
前記肉抜き部の数が、前記マグネットの磁極数の素因数ではない素数の整数倍に設定されている請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記コアには、複数の前記肉抜き部が周方向に間隔をあけて形成され、
前記マグネットの磁極数が、前記肉抜き部の数の素因数ではない素数の整数倍に設定されている請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
周方向に隣り合う前記肉抜き部の間隔が、前記コアの全周にわたって等間隔に設定されている請求項2又は請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
周方向に隣り合う前記肉抜き部の間隔が、前記コアの少なくとも一部分において不等間隔に設定されている請求項2又は請求項3に記載のモータ。
【請求項6】
複数の前記肉抜き部の容積が、前記コアの少なくとも一部分において不均等に設定されている請求項2又は請求項3に記載のモータ。
【請求項7】
前記コアよりも軽量な材料の充填材(96)が、前記肉抜き部の内部に配置されている請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記コアには、該コアと前記コイルとを隔てるインシュレータ(28)が取り付けられ、
前記インシュレータには、前記肉抜き部に係合することで該インシュレータの前記コアに対する周方向への変位が規制されるコア係合部(28J)が設けられている請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項9】
マグネット(18)を有し、回転可能に支持された回転体(12)と、
導電性の巻線(30)が環状に巻回されることによってそれぞれ形成され、前記巻線の一部が周方向に並んで配置され前記マグネットの軸方向の中心と径方向に対向して配置される対向部(36)と、該対向部に対して軸方向一方側及び他方側の部分をそれぞれ形成するコイルエンド部(38)と、を有し、周方向に環状に配列された複数のコイル(16)と、
環状に形成されていると共に、複数の前記コイルの前記対向部が内周面又は外周面に沿って配置され、複数の前記コイルの軸方向一方側の前記コイルエンド部及び軸方向他方側の前記コイルエンド部の少なくとも一方の前記コイルエンド部が軸方向の端面に沿って配置され、前記対向部とは反対側の部位に肉抜き部(26B、26C)が形成されたコア(26)と、を備え、
前記肉抜き部において前記対向部と最も近い位置における前記コア内部の最大磁束密度が、前記コアを形成する材料の飽和磁束密度未満となるように、前記肉抜き部の形状、寸法、数及び配置が設定されており、
前記コアには、該コアと前記コイルとを隔てるインシュレータ(28)が取り付けられ、
前記インシュレータには、前記肉抜き部に係合することで該インシュレータの前記コアに対する周方向への変位が規制されるコア係合部(28J)が設けられており、
前記インシュレータには、前記コイルの周方向への位置決めを行う周方向位置決め部(28D、28E、28F)が設けられてい
るモータ。
【請求項10】
マグネット(18)を有し、回転可能に支持された回転体(12)と、
導電性の巻線(30)が環状に巻回されることによってそれぞれ形成され、前記巻線の一部が周方向に並んで配置され前記マグネットの軸方向の中心と径方向に対向して配置される対向部(36)と、該対向部に対して軸方向一方側及び他方側の部分をそれぞれ形成するコイルエンド部(38)と、を有し、周方向に環状に配列された複数のコイル(16)と、
環状に形成されていると共に、複数の前記コイルの前記対向部が内周面又は外周面に沿って配置され、複数の前記コイルの軸方向一方側の前記コイルエンド部及び軸方向他方側の前記コイルエンド部の少なくとも一方の前記コイルエンド部が軸方向の端面に沿って配置され、前記対向部とは反対側の部位に肉抜き部(26B、26C)が形成されたコア(26)と、を備え、
前記肉抜き部において前記対向部と最も近い位置における前記コア内部の最大磁束密度が、前記コアを形成する材料の飽和磁束密度未満となるように、前記肉抜き部の形状、寸法、数及び配置が設定されており、
前記コアには、該コアと前記コイルとを隔てるインシュレータ(28)が取り付けられ、
前記インシュレータには、前記肉抜き部に係合することで該インシュレータの前記コアに対する周方向への変位が規制されるコア係合部(28J)が設けられており、
前記インシュレータには、前記コイルの軸方向への位置決めを行う軸方向位置決め部(28G、28H)が設けられてい
るモータ。
【請求項11】
前記コア係合部は凸状に形成され、
前記コア係合部の形状が、突出方向の先端側へ向かうにつれて窄まる形状に形成されている請求項
8~請求項
10のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項12】
マグネット(18)を有し、回転可能に支持された回転体(12)と、
導電性の巻線(30)が環状に巻回されることによってそれぞれ形成され、前記巻線の一部が周方向に並んで配置され前記マグネットの軸方向の中心と径方向に対向して配置される対向部(36)と、該対向部に対して軸方向一方側及び他方側の部分をそれぞれ形成するコイルエンド部(38)と、を有し、周方向に環状に配列された複数のコイル(16)と、
環状に形成されていると共に、複数の前記コイルの前記対向部が内周面又は外周面に沿って配置され、複数の前記コイルの軸方向一方側の前記コイルエンド部及び軸方向他方側の前記コイルエンド部の少なくとも一方の前記コイルエンド部が軸方向の端面に沿って配置され、前記対向部とは反対側の部位に肉抜き部(26B、26C)が形成されたコア(26)と、を備え、
前記肉抜き部において前記対向部と最も近い位置における前記コア内部の最大磁束密度が、前記コアを形成する材料の飽和磁束密度未満となるように、前記肉抜き部の形状、寸法、数及び配置が設定されており、
前記コアには、該コアと前記コイルとを隔てるインシュレータ(28)が取り付けられ、
前記インシュレータには、前記肉抜き部に係合することで該インシュレータの前記コアに対する周方向への変位が規制されるコア係合部(28J)が設けられており、
前記コアが保持されるコア支持部材(74)をさらに備え、
前記インシュレータは、前記コアにおける前記回転体とは反対側の面に対して該回転体とは反対側に向けて突出する軸方向基準部(28K)を備え、
前記軸方向基準部がコア支持部材に当接することで、前記コアの前記コア支持部材に対する軸方向への位置決めがなされてい
るモータ。
【請求項13】
前記インシュレータは、周方向基準部(28L)を備え、
前記周方向基準部がコア支持部材に係合することで、前記コアの前記コア支持部材に対する周方向への位置決めがなされている請求項
12に記載のモータ。
【請求項14】
前記コアを軸方向から見て、前記対向部とは反対側において前記肉抜き部が外接又は内接する仮想円を設定し、
前記コアにおいて前記仮想円よりも前記対向部とは反対側の部分の体積が、前記肉抜き部の容積よりも大きく設定されている請求項1~請求項
13のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、環状に形成された固定リングに沿って複数のコイルが配列されることによって構成されたモータが開示されている。この文献に記載されたモータは、巻線が矩形状に巻回されると共に軸方向の両端部が径方向に屈曲されることによって形成されたA相のコイル及びB相のコイルとが固定リングの周方向に沿って交互に配列されることによって構成されている。また、A相のコイル及びB相のコイルの軸方向の両端部であるコイルエンド部は、固定リングの軸方向の両端面に沿って配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された構成のようにコイルのコイルエンド部が固定リングの軸方向の端面に沿って配置される構成では、固定リングの径方向への寸法をコイルエンド部の径方向への寸法と対応する寸法に設定する必要がある。すなわち、固定リングの径方向の寸法を小さくすることに制約がある。その結果、モータの軽量化が妨げられる。
【0005】
本開示は上記事実を考慮し、軽量化を図ることができるモータを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するモータ(10、54、56、64、66、68、84、86、90、94)は、マグネット(18)を有し、回転可能に支持された回転体(12)と、導電性の巻線(30)が環状に巻回されることによってそれぞれ形成され、前記巻線の一部が周方向に並んで配置され前記マグネットの軸方向の中心と径方向に対向して配置される対向部(36)と、該対向部に対して軸方向一方側及び他方側の部分をそれぞれ形成するコイルエンド部(38)と、を有し、周方向に環状に配列された複数のコイル(16)と、環状に形成されていると共に、複数の前記コイルの前記対向部が内周面又は外周面に沿って配置され、複数の前記コイルの軸方向一方側の前記コイルエンド部及び軸方向他方側の前記コイルエンド部の少なくとも一方の前記コイルエンド部が軸方向の端面に沿って配置され、前記対向部とは反対側の部位に肉抜き部(26B、26C)が形成されたコア(26)と、を備え、前記肉抜き部において前記対向部と最も近い位置における前記コア内部の最大磁束密度が、前記コアを形成する材料の飽和磁束密度未満となるように、前記肉抜き部の形状、寸法、数及び配置が設定されている。
【0007】
この様に構成することで、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態のモータのロータ及びステータを示す部分断面斜視図である。
【
図2】モータを軸方向に沿って切断した断面を示す側断面図である。
【
図8】対向部とコイルエンド部との境目を拡大して示す拡大平面図である。
【
図9】対向部とコイルエンド部との境目を拡大して示す拡大側断面図である。
【
図10】U相、V相及びW相の結線を説明するための模式図である。
【
図11】U相、V相及びW相の結線及び配列を説明するための模式図である。
【
図12】ステータの一部を軸方向に沿って切断した断面を示す側断面図である。
【
図13】インシュレータ及びインシュレータを介してロータコアに支持されたコイルを示す斜視図である。
【
図14】インシュレータ及びインシュレータを介してロータコアに支持されたコイルを示す斜視図であり、
図13とは異なるインシュレータが適用された例を示している。
【
図15】インシュレータ及びインシュレータを介してロータコアに支持されたU相のコイル、V相のコイル、W相のコイルを示す斜視図である。
【
図16】第2実施形態のモータのステータ及びロータを示す断面図である。
【
図17】第3実施形態のモータのステータコアを模式的に示す斜視図である。
【
図18】第4実施形態のモータのステータ及びロータを示す断面図である。
【
図19】第5実施形態のモータのステータコアを示す斜視図である。
【
図20】第5実施形態のモータのステータを示す側断面図である。
【
図21】第6実施形態のモータのステータコアを示す平面図である。
【
図22】第7実施形態のモータのステータコアを示す平面図である。
【
図23】第8実施形態のモータのステータコアを示す斜視図である。
【
図24】第8実施形態のモータのステータコアの組織を模式的に示す模式図である。
【
図25】第9実施形態のモータのステータコアを示す斜視図である。
【
図26】第10実施形態のモータのステータコアを示す斜視図である。
【
図27】第11実施形態のモータのステータコアを示す斜視図である。
【
図28】第12実施形態のモータのステータコアの一部を示す断面図である。
【
図29】第13実施形態のモータのステータコアの一部を示す断面図である。
【
図30】第14実施形態のモータのステータコアの一部を示す断面図である。
【
図31】第15実施形態のモータのステータコアの一部を示す断面図である。
【
図32】第16実施形態のモータのステータコアの一部を示す断面図である。
【
図33】第17実施形態のモータのステータコアの一部を示す断面図である。
【
図34】第18実施形態のモータのステータコアの一部を示す断面図である。
【
図35】第19実施形態のモータのステータを示す側断面図である。
【
図36】第20実施形態のモータのインシュレータを示す斜視図である。
【
図37】第20実施形態のモータのインシュレータ及びインシュレータを介してロータコアに支持されたU相のコイル、V相のコイル、W相のコイルを示す斜視図である。
【
図38】第21実施形態のモータの一部を拡大して示す拡大平面図である。
【
図39】第22実施形態のモータの一部を拡大して示す拡大平面図である。
【
図40A】第23実施形態のモータの一部を拡大して示す拡大平面図である。
【
図40B】第24実施形態のモータの一部を拡大して示す拡大平面図である。
【
図41】第25実施形態のモータの一部を拡大して示す拡大平面図である。
【
図42】第26実施形態のモータのロータ及びステータを示す模式図である。
【
図43】第27実施形態のモータのロータ及びステータを示す模式図である。
【
図44】コイルエンド部の屈曲のバリエーションを説明するための側断面図である。
【
図45】コイルエンド部の屈曲のバリエーションを説明するための側断面図である。
【
図46】コイルエンド部の屈曲のバリエーションを説明するための側断面図である。
【
図47】コイルエンド部の屈曲のバリエーションを説明するための側断面図である。
【
図48】コイルエンド部とマグネットとの位置関係を説明するための図である。
【
図49】コイルを形成する巻線の端末部のバリエーションを説明するための拡大斜視図である。
【
図50】コイルを形成する巻線の端末部のバリエーションを説明するための拡大斜視図である。
【
図51】コイルを形成する巻線の端末部のバリエーションを説明するための拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1~
図15を用いて本開示の第1実施形態に係るモータ10について説明する。先ず、モータの全体の構成について説明し、次に、本実施形態の要部の構成について説明する。なお、図中に適宜示す矢印Z方向、矢印R方向及び矢印C方向は、後述するロータ12の回転軸方向一方側、回転径方向外側及び回転周方向一方側をそれぞれ示すものとする。また以下、単に軸方向、径方向、周方向を示す場合は、特に断りのない限り、ロータ12の回転軸方向、回転径方向、回転周方向を示すものとする。
【0010】
図1~
図3に示されるように、本実施形態のモータ10は、回転体としてのロータ12がステータ14の径方向内側に配置されたインナロータ型のブラシレスモータである。なお、
図1~
図5に示された図は、一例として示したモータ10等の図であり、後の説明とコイル16の数やマグネット18の数が互いに一致していない箇所がある。
【0011】
ロータ12は、一対のベアリング20を介して回転可能に支持された回転軸22と、遊底円筒状に形成されていると共に回転軸22に固定されたロータコア24と、ロータコア24の径方向外側の面に固定された複数のマグネット18と、を含んで構成されている。
【0012】
ロータコア24は、回転軸22が圧入等により固定される円筒状に形成された第1円筒部24Aと、第1円筒部24Aの径方向外側に配置されていると共に円筒状に形成された第2円筒部24Bと、第1円筒部24Aの軸方向一方側の端部と第2円筒部24Bの軸方向一方側の端部とを径方向につなぐ円板状の接続板部24Cと、を備えている。第2円筒部24Bの径方向外側の面である外周面は、周方向に沿って円筒面状に形成されている。この第2円筒部24Bの外周面には、後述するマグネット18が固定されている。
【0013】
複数のマグネット18は、固有保磁力Hcが400[kA/m]以上かつ残留磁束密度Brが1.0[T]以上の磁性化合物を用いて形成されている。一例として、本実施形態のマグネット18は、NdFe11TiN、Nd2Fe14B、Sm2Fe17N3、FeNi等の磁性化合物を用いて形成されている。また、複数のマグネット18が、ロータコア24の第2円筒部24Bの外周面に固定されている。また、径方向外側の面がN極とされたマグネット18と径方向外側の面がS極とされたマグネット18とは、周方向に交互に配列されている。なお、マグネット18の数は、モータ10に要求される出力等を考慮して適宜設定すればよい。
【0014】
図5に示されるように、ステータ14は、環状に形成されたコアとしてのステータコア26と、ステータコア26に接着や嵌合等により取付けられたインシュレータ28と、ステータコア26にインシュレータ28を介して取付けられた複数のコイル16と、を備えている。本実施形態のステータ14は、コイル16の内部にステータコア26の一部が配置されないティースレス構造となっている。
【0015】
図1及び
図5に示されるように、ステータコア26は、鋼材等の磁性材料を用いて環状に形成されている。また、ステータコア26を軸方向及び径方向に沿って切断した断面は、軸方向を長手方向とする矩形状断面となっている。このステータコア26は、ロータ12と同軸上に配置されており、ステータコア26の軸方向の中心位置とロータコア24に固定された複数のマグネット18の軸方向の中心位置とは軸方向に一致している。また、
図2に示されるように、ステータコア26は、モータ10の外殻を構成するコア支持部材としてのハウジング74に支持される。ここで、ステータコア26は、有底円筒状に形成されたハウジング74の内側に配置される。そして、ステータコア26がハウジング74に圧入されること等により、ステータコア26がハウジング74に支持されるようになっている。これにより、ステータ14がハウジング74に支持されるようになっている。なお、ハウジング74においてステータコア26が圧入される部位の軸方向一方側には、後述するインシュレータ28の一部が当接する段差部74Aが形成されている。
【0016】
図1及び
図5に示されるように、インシュレータ28は、樹脂材料等の絶縁性の高い材料を用いて形成されている。このインシュレータ28は、当該インシュレータ28がステータコア26に取付けられた状態においてステータコア26の径方向内側の面及び軸方向の両端面を覆っている。なお、インシュレータ28の具体的な構成については、後に詳述する。
【0017】
図5~
図7に示されるように、複数のコイル16は、導電性の巻線(導線)が環状に巻き回されることによって形成されている。ここで、
図6及び
図7に示されるように、本実施形態のコイル16を形成する巻線30は、その長手方向に沿って切断した断面視で、該巻線30の第1の方向(矢印A1方向)への寸法L1が当該第1の方向と直交する第2の方向(矢印A2)への寸法L2に対して大きな寸法に設定された矩形状断面となっている。また、巻線30は、導電性の素線が束ねられることで形成された素線集合体としてもよい。また、束ねられた素線間の抵抗値は、素線そのものの抵抗値よりも大きくなっている。なお、巻線30の断面形状は、長円状であってもよいし、楕円状であってもよい。また、巻線30は一般的にエナメル線が好適に用いられ、導電部材としては銅やアルミなどがある。
【0018】
図5~
図7に示されるように、本実施形態のステータ14は、軸方向への寸法が異なる2種類のコイル16を含んで構成されている。ここで、
図6に示されたコイル16を短コイル32と呼ぶ。また、
図7に示されたコイル16を長コイル34と呼ぶ。なお、コイル16の数は、モータ10に要求される出力等を考慮して適宜設定すればよい。
【0019】
図6に示されるように、短コイル32は、巻線30が第2の方向(矢印A2方向)へ積層されるように矩形状に巻回された後に、軸方向の両端部が径方向外側へ向けて屈曲されることにより形成されている。これにより、短コイル32は、巻線30の一部が周方向に並んで配置されると共に周方向に間隔をあけて配置される一対の対向部36と、一対の対向部36の軸方向一方側の端部を周方向につなぐ一方のコイルエンド部38と、一対の対向部36の軸方向他方側の端部を周方向につなぐ他方のコイルエンド部38と、を有する構成となっている。また、短コイル32を形成する巻線30の一方側の端末部40は、周方向一方側の対向部36の周方向一方側から軸方向一方側へ延在されている。また、短コイル32を形成する巻線30の他方側の端末部40は、周方向他方側の対向部36の周方向一方側から軸方向一方側へ延在されている。このような端末部40の取り回しとされることで、本実施形態の短コイル32では、軸方向一方側のコイルエンド部38における巻線30の積層数が、軸方向他方側のコイルエンド部38における巻線30の積層数よりも少ない積層数となっている。詳述すると、軸方向一方側のコイルエンド部38における巻線30の積層数が6層となっていると共に、軸方向他方側のコイルエンド部38における巻線30の積層数が7層となっている。なお、一対の対向部36における巻線30の積層数は7層となっている。
【0020】
ここで、短コイル32の製造工程について簡単に説明する。短コイル32の製造工程では、先ず、巻線30が第2の方向(矢印A2方向)へ積層されるように、当該巻線30を矩形状に巻回する。次に、短コイル32において一対の端末部40を除く矩形状に巻回された部分を図示しない結合部材を用いて結合する。これにより、短コイル32において一対の対向部36、軸方向一方側のコイルエンド部38及び軸方向他方側のコイルエンド部38を形成する部分(積層された巻線30)が、第2の方向へ分離不能に結合される。次に、
図8及び
図9に示されるように、短コイル32において軸方向一方側のコイルエンド部38及び軸方向他方側のコイルエンド部38を形成する部分を径方向外側へ向けて略直角に屈曲させる。すなわち、一対のコイルエンド部38と一対の対向部36との境目を第1の方向へ略直角に屈曲させる。これにより、一対の対向部36がステータコア26の径方向内側の面に沿って配置されると共に軸方向一方側及び他方側の両コイルエンド部38がステータコア26の軸方向の両端面に沿ってそれぞれ配置される構成の短コイル32が形成される。以上の工程を経ることにより、短コイル32が製造される。
【0021】
図6及び
図7に示されるように、長コイル34は、当該長コイル34の軸方向への寸法H2が短コイル32の軸方向への寸法H1よりも大きな寸法となっていることを除いては、短コイル32と同一の構成となっている。ここで、長コイル34において短コイル32と対応する部分には、短コイル32と同じ符号を付して当該部分の説明を省略する。また、長コイル34は短コイル32と同様の工程を経て製造される。ところで、長コイル34を形成する巻線30の長さは、短コイル32を形成する巻線30の長さよりも長くなっている。これにより、長コイル34の電気抵抗が短コイル32の電気抵抗よりも高くなっている。
【0022】
図10に示されるように、複数のコイル16は、一例としてスター結線で結線されている。この例のU相42U、V相42V及びW相42Wは、2つの短コイル32及び2つの長コイル34を含んでそれぞれ構成されている。U相42Uでは、中性点44側から長コイル34、短コイル32、長コイル34、短コイル32の順でこれら4つのコイル16が直列で結線されている。また、V相42Vでは、中性点44側から長コイル34、短コイル32、長コイル34、短コイル32の順でこれら4つのコイル16が直列で結線されている。さらに、W相42Wでは、中性点44側から短コイル32、長コイル34、短コイル32、長コイル34の順でこれら4つのコイル16が直列で結線されている。なお、各々のコイル16間は、バスバー等の結線部材を用いて結線されている。
【0023】
ここで、U相42Uにおいて中性点44から最も遠い短コイル32から中性点44までの範囲をU相のコイル接続体46Uと呼ぶ。また、V相42Vにおいて中性点44から最も遠い短コイル32から中性点44までの範囲をV相のコイル接続体46Vと呼ぶ。さらに、W相42Wにおいて中性点44から最も遠い長コイル34から中性点44までの範囲をW相のコイル接続体46Wと呼ぶ。そして、本実施形態では、各々の相のコイル接続体46U、46V、46Wの長コイル34の数及び短コイル32の数が同じ数に設定されていることにより、各々の相のコイル接続体46U、46V、46Wの合成抵抗が互いに同じ合成抵抗となっている。ここで、各々の相のコイル接続体46U、46V、46Wの合成抵抗が互いに同じ合成抵抗となっているとは、一の相のコイル接続体46Uの合成抵抗と他の相のコイル接続体46V、46Wの合成抵抗との差異がプラスマイナス5%以内に収まっていることをいうものとする。
【0024】
図11には、U相42Uの各々のコイル16、V相42Vの各々のコイル16及びW相42Wの各々のコイル16の配置関係が示されている。
図11及び
図12に示されるように、U相42Uにおいて中性点44から最も遠い短コイル32とV相42Vにおいて中性点44から最も遠い短コイル32とは、ステータコア26に沿って周方向に隣り合って配置される。また、W相42Wにおいて中性点44から最も遠い長コイル34は、U相42Uにおいて中性点44から最も遠い短コイル32及びV相42Vにおいて中性点44から最も遠い短コイル32を跨ぐように配置される。
【0025】
また、V相42Vにおいて中性点44から最も遠い短コイル32とW相42Wにおいて中性点44とは反対側の短コイル32とは、ステータコア26に沿って周方向に隣り合って配置される。さらに、U相42Uにおいて中性点44とは反対側の長コイル34は、V相42Vにおいて中性点44から最も遠い短コイル32及びW相42Wにおいて中性点44とは反対側の短コイル32を跨ぐように配置される。
【0026】
また、W相42Wにおいて中性点44とは反対側の短コイル32とU相42Uにおいて中性点44側の短コイル32とは、ステータコア26に沿って周方向に隣り合って配置される。さらに、V相42Vにおいて中性点44とは反対側の長コイル34は、W相42Wにおいて中性点44とは反対側の短コイル32及びU相42Uにおいて中性点44側の短コイル32を跨ぐように配置される。
【0027】
また、U相42Uにおいて中性点44側の短コイル32とV相42Vにおいて中性点44側の短コイル32とは、ステータコア26に沿って周方向に隣り合って配置される。さらに、W相42Wにおいて中性点44側の長コイル34は、U相42Uにおいて中性点44側の短コイル32及びV相42Vにおいて中性点44側の短コイル32を跨ぐように配置される。
【0028】
また、V相42Vにおいて中性点44側の短コイル32とW相42Wにおいて中性点44側の短コイル32とは、ステータコア26に沿って周方向に隣り合って配置される。さらに、U相42Uにおいて中性点44側の長コイル34は、V相42Vにおいて中性点44側の短コイル32及びW相42Wにおいて中性点44側の短コイル32を跨ぐように配置される。
【0029】
また、W相42Wにおいて中性点44側の短コイル32とU相42Uにおいて中性点44から最も遠い短コイル32とは、ステータコア26に沿って周方向に隣り合って配置される。さらに、V相42Vにおいて中性点44側の長コイル34は、W相42Wにおいて中性点44側の短コイル32及びU相42Uにおいて中性点44から最も遠い短コイル32を跨ぐように配置される。
【0030】
ここで、
図12及び
図13に示されるように、各々のコイル16が取り付けられるインシュレータ28は、ステータコア26の径方向内側の面を覆う内面被覆部28Aと、ステータコア26の軸方向の両端面を覆う一対の軸端面被覆部28Bと、一対の軸端面被覆部28Bにおける径方向外側の端部から軸方向へ延びる一対の外周側フランジ部28Cと、を備えている。なお、本実施形態のインシュレータ28は、内面被覆部28Aの軸方向の中央部で軸方向に分割可能な分割構造となっている。また、インシュレータ28は、短コイル32の周方向への位置決めを行う複数の周方向位置決め部28Dを備えている。複数の周方向位置決め部28Dは、外周側フランジ部28Cから径方向内側へ向けて凸状に形成されており、周方向に沿って等間隔に配置されている。そして、短コイル32のコイルエンド部38が、周方向に隣り合う一対の周方向位置決め部28Dの間に配置されることで、当該短コイル32の周方向への位置決めがなされるようになっている。なお、複数の周方向位置決め部28Dは、片側の外周側フランジ部28Cに設けられていればよいが、両方の外周側フランジ部28Cに設けられた構成としてもよい。また、
図14に示されるように、内面被覆部28Aと対応する部分をシート状のペーパーインシュレータとし、その他の部分を
図13に示されたインシュレータ28と同様の構成のインシュレータ29としてもよい。なお、
図14に示されたインシュレータ29において
図13に示されたインシュレータ28と対応する部分には、インシュレータ28と対応する部分と同じ符号を付している。
【0031】
また、
図2及び
図4に示されるように、インシュレータ28は、軸方向一方側の軸端面被覆部28Bからステータコア26側に向けて突出する凸状のコア係合部28J及び軸方向他方側の軸端面被覆部28Bからステータコア26側に向けて凸状の突出するコア係合部28Jを備えている。このコア係合部28Jが、後述する肉抜き孔26Bに係合することで、インシュレータ28のステータコア26に対する周方向への変位が規制されるようになっている。
【0032】
また、
図2及び
図5に示されるように、インシュレータ28は、軸方向一方側の外周側フランジ部28Cの径方向外側の面から径方向外側へ向けて突出する軸方向基準部としての径方向外側フランジ部28Kを備えている。この径方向外側フランジ部28Kは、軸方向から見て環状に形成されている。また、インシュレータ28は、径方向外側フランジ部28Kを切り欠くと共に、軸方向一方側の外周側フランジ部28C側へ窪んだ周方向基準部としての複数の切欠部28Lを備えている。複数の切欠部28Lは、周方向に沿って等間隔に配置されている。また、軸方向他方側の外周側フランジ部28Cにも、当該軸方向他方側の外周側フランジ部28C側へ窪んだ周方向基準部としての複数の切欠部28Lが形成されている。そして、ステータコア26がハウジング74に圧入される際に、インシュレータ28の径方向外側フランジ部28Kがハウジング74の段差部74Aに当接することで、ステータコア26のハウジング74に対する軸方向への位置決めがなされるようになっている。また、ステータコア26がハウジング74に圧入される際に、インシュレータ28の切欠部28Lがハウジング74の一部に係合することで、ステータコア26のハウジング74に対する周方向への位置決めがなされるようになっている。
【0033】
図11、
図12及び
図15に示されるように、短コイル32の対向部36及び長コイル34の対向部36は、インシュレータ28の内面被覆部28Aを介してステータコア26の径方向内側の面に沿って配置されると共に径方向の同じ位置に配置される。詳述すると、
図15に示された状態では、周方向に隣り合うU相の短コイル32の周方向一方側の対向部36とV相の短コイル32の周方向他方側の対向部36とが、周方向に隣接して配置されると共に、周方向に隣り合うU相の短コイル32の周方向一方側の対向部36及びV相の短コイル32の周方向他方側の対向部36が、W相の長コイル34の一対の対向部36の間に配置されている。
図11及び
図15に示されるように、他の短コイル32の対向部36及び他の長コイル34の対向部36についても同様の関係でステータコア26の径方向内側の面に沿って配置される。また、短コイル32の対向部36の軸方向の中心位置及び長コイル34の対向部36の軸方向の中心位置と前述のマグネット18の軸方向の中心位置とが互いに軸方向に一致する位置に配置された状態で、短コイル32の対向部36及び長コイル34の対向部36とマグネット18とが、径方向に対向して配置される。また、短コイル32の対向部36及び長コイル34の対向部36を構成する巻線30の第1の方向は、マグネット18側へ向けられている。
【0034】
図11、
図12及び
図15に示されるように、短コイル32の一対のコイルエンド部38は、インシュレータ28の一対の軸端面被覆部28Bを介してステータコア26の軸方向の両端面に沿ってそれぞれ配置される。また、長コイル34の一対のコイルエンド部38は、周方向に隣り合う2つの短コイル32のコイルエンド部38及びインシュレータ28の一対の軸端面被覆部28Bを介してステータコア26の軸方向の両端面に沿ってそれぞれ配置される。すなわち、長コイル34の一対のコイルエンド部38は、周方向に隣り合う2つの短コイル32の一対のコイルエンド部38と軸方向に重ねて配置される。詳述すると、
図15に示された状態では、W相の長コイル34の一対のコイルエンド部38が、周方向に隣り合うU相の短コイル32の一対のコイルエンド部38における周方向一方側の部分とV相の短コイル32の一対のコイルエンド部38における周方向他方側の部分と軸方向に重ねて配置される。
図11及び
図15に示されるように、他の短コイル32のコイルエンド部38及び他の長コイル34のコイルエンド部38についても同様の関係でステータコア26の軸方向の両端面に沿って配置される。
【0035】
次に、本実施形態の要部の構成について説明する。
【0036】
図4には、ステータ14を径方向に沿って切断した断面が示されている。ステータ14の一部を構成するステータコア26の径方向への厚み寸法は、コイル16のコイルエンド部38の径方向への寸法よりも大きな寸法に設定されている。また、ステータコア26においてコイル16の対向部36が配置される側とは反対側の部位には、肉抜き部としての複数の肉抜き孔26Bが形成されている。すなわち、ステータコア26の外周部には、複数の肉抜き孔26Bが形成されている。肉抜き孔26Bは、ステータコア26の外周部を軸方向に貫通するように形成されている。この肉抜き孔26Bを軸方向から見た形状は、円形形状となっている。また、複数の肉抜き孔26Bは、周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0037】
ここで、本実施形態では、肉抜き孔26Bの数が、ロータ12のマグネット18の磁極数の素因数ではない素数の整数倍に設定されている。詳述すると、本実施形態のロータ12の構成では、マグネット18の磁極数とマグネット18の数とが一致している。そのため、肉抜き孔26Bの数が、ロータ12のマグネット18の数の素因数ではない素数の整数倍に設定されている。
【0038】
一例として、本実施形態のモータ10の磁極数が8極となっている構成、すなわち、8個のマグネット18を有する構成について検討する。この場合、モータ10の磁極数である8の素因数は2である。従って、素因数ではない素数は、3、5、7、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、3、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15・・・である。そして、肉抜き孔26Bの数をこの素因数ではない素数の整数倍に設定する。
【0039】
次に、本実施形態のモータ10の磁極数が10極となっている構成、すなわち、10個のマグネット18を有する構成について検討する。この場合、モータ10の磁極数である10の素因数は2、5である。従って、素因数ではない素数は、3、7、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、3、6、7、9、11、12、13、14、15・・・である。そして、肉抜き孔26Bの数をこの素因数ではない素数の整数倍に設定する。
【0040】
次に、本実施形態のモータ10の磁極数が12極となっている構成、すなわち、12個のマグネット18を有する構成について検討する。この場合、モータ10の磁極数である12の素因数は2、3である。従って、素因数ではない素数は、5、7、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、5、7、10、11、14、15、17、19・・・である。そして、肉抜き孔26Bの数をこの素因数ではない素数の整数倍に設定する。
【0041】
次に、本実施形態のモータ10の磁極数が16極となっている構成、すなわち、16個のマグネット18を有する構成について検討する。この場合、モータ10の磁極数である16の素因数は2である。従って、素因数ではない素数は、3、5、7、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、3、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15・・・である。そして、肉抜き孔26Bの数をこの素因数ではない素数の整数倍に設定する。
【0042】
次に、本実施形態のモータ10の磁極数が20極となっている構成、すなわち、20個のマグネット18を有する構成について検討する。この場合、モータ10の磁極数である20の素因数は2、5である。従って、素因数ではない素数は、3、7、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、3、6、7、9、11、12、13、14、15、17、17、18、19、21・・・である。そして、肉抜き孔26Bの数をこの素因数ではない素数の整数倍に設定する。
【0043】
また、
図4に示されるように、本実施形態のステータコア26では、複数の肉抜き孔26Bにおいてコイル16の対向部36と最も近い位置におけるステータコア26内部の最大磁束密度が、ステータコア26を形成する材料の飽和磁束密度未満となるように、複数の肉抜き孔26Bの形状、寸法、数及び配置が設定されている。詳述すると、先ず、ステータコア26を軸方向から見て、複数の肉抜き孔26Bが外接する仮想円Kを設定する。次に、この仮想円Kと対応する位置においてステータコア26を軸方向に沿って切断した円筒状の断面内における最大磁束密度について検討する。そして、この最大磁束密度がステータコア26を形成する材料の飽和磁束密度未満となるように、複数の肉抜き孔26Bの形状、寸法、数及び配置が設定されている。本実施形態では、マグネット18側を含めたステータコア26の全体が磁気飽和させないために、上記の最大磁束密度が飽和磁束密度の80%以下となるようにしている。具体的には、上記の最大磁束密度が1.44T以下となっている。なお、コイル16がステータコア26の外周部に配置されるアウタロータ型のモータの構成では、ステータコア26を軸方向から見て、複数の肉抜き孔26Bが内接する仮想円Kを設定し、この仮想円Kと対応する位置においてステータコア26を軸方向に沿って切断した円筒状の断面内における最大磁束密度について検討すればよい。
【0044】
また、本実施形態では、ステータコア26において仮想円Kよりも外周側の部分の体積が、複数の肉抜き孔26Bの容積よりも大きくなるように、複数の肉抜き孔26Bの形状、寸法、数及び配置が設定されている。
【0045】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0046】
図3、
図6、
図7、
図10及び
図11に示されるように、本実施形態のモータ10では、ステータ14の一部を構成するU相のコイル接続体46U、V相のコイル接続体46V、W相のコイル接続体46Wへの通電が切り替えられることで、ステータ14の内周に回転磁界が生じる。これにより、ロータ12が回転する。
【0047】
ここで、本実施形態のモータ10では、各々の相のコイル接続体46U、46V、46Wの長コイル34の数及び短コイル32の数が同じ数に設定されていることにより、各々の相のコイル接続体46U、46V、46Wの合成抵抗が互いに同じ合成抵抗となっている。これにより、各々の相のコイル接続体46U、46V、46Wの電気的なアンバランスが生じにくくなる。その結果、モータ10のトルクリップルが悪化することを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態のモータ10では、長コイル34のコイルエンド部38及び短コイル32のコイルエンド部38が、対向部36に対して径方向外側に直角に屈曲された構成となっていると共に、長コイル34のコイルエンド部38と短コイル32のコイルエンド部38とが軸方向に重ねられた構成となっている。これにより、ステータ14の軸方向への体格の大型化を抑止することができる。その結果、モータ10の軸方向への体格の大型化を抑止することができる。
【0049】
さらに、本実施形態のモータ10では、コイル16を形成する巻線30の断面形状が、第1の方向(矢印A1方向)を長手方向とする矩形状となっている。これに加えて、短コイル32の対向部36及び長コイル34の対向部36を構成している部分の巻線30の第1の方向がマグネット18側へ向けられている。これにより、巻線30の断面積を確保しつつ、巻線30のマグネット18と対向する部分の面積を小さくすることができる。これにより、巻線30の電気抵抗が増加することを抑制しつつ、対向部36に生じる渦電流による交流銅損が増加することを抑制することができる。また、本実施形態のモータ10では、対向部36がステータコア26の径方向内側の面に沿って1層の構造となっている。これにより、
図8に示されるように、対向部36を軸方向から見た形状をステータコア26の径方向内側の面に対応する湾曲形状に形成し易くすることができる。これにより、占積率を向上させることができる。
【0050】
また、
図6、
図7、
図8及び
図9に示されるように、本実施形態のモータ10では、コイル16の製造工程で、コイル16において一対の対向部36、軸方向一方側のコイルエンド部38及び軸方向他方側のコイルエンド部38を形成する部分(積層された巻線30)が、第2の方向へ分離不能に結合される。これにより、コイル16において軸方向一方側のコイルエンド部38及び軸方向他方側のコイルエンド部38を形成する部分を径方向外側へ向けて略直角に屈曲させる際の作業性を良好にすることができる。
【0051】
さらに、本実施形態のモータ10では、コイル16の軸方向一方側のコイルエンド部38における巻線30の積層数が、軸方向他方側のコイルエンド部38における巻線30の積層数よりも少ない積層数となっている状態で、一対の端末部40が軸方向一方側に配置されている。このように構成することで、コイル16において巻線30が巻回されている部分の長さを短くすることができる。これにより、コイル16の電気抵抗が増加することを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態のモータ10では、インシュレータ28の外周側フランジ部28Cに複数の周方向位置決め部28Dが設けられている。これにより、短コイル32をインシュレータ28を介してステータコア26に取り付ける際の作業性を良好にすることができる。また、各々の短コイル32の周方向の位置を安定させることができ、各々の短コイル32を周方向により均等に配置することができる。なお、一の相の短コイル32の周方向への位置決めを行う周方向位置決め部28Dのみが設けられた構成としてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態のモータ10では、
図2及び
図4に示されるように、インシュレータ28のコア係合部28Jが、ステータコア26の肉抜き孔26Bに係合するようになっている。これにより、インシュレータ28のステータコア26に対する周方向への変位を規制することができる。なお、コア係合部28Jは、周方向の1箇所に設けられていてもよいし、周方向の複数個所に設けられていてもよい。
【0054】
また、本実施形態のモータ10では、ステータコア26の外周部に複数の肉抜き孔26Bが形成されている。これにより、ステータコア26の軽量化を図ることができる。その結果、モータ10の軽量化を図ることができる。
【0055】
さらに、本実施形態のモータ10では、ステータコア26に形成された肉抜き孔26Bの数が、ロータ12のマグネット18の磁極数の素因数ではない素数の整数倍に設定されている。これにより、モータ10のコギングトルクの次数を高くすることができる。その結果、モータ10のコギングトルクの振幅を小さくすることができ、モータ10の低ノイズ化及び低振動化を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態のモータ10のステータコア26では、複数の肉抜き孔26Bにおいてコイル16の対向部36と最も近い位置におけるステータコア26内部の最大磁束密度が、ステータコア26を形成する材料の飽和磁束密度未満となるように、複数の肉抜き孔26Bの形状、寸法、数及び配置が設定されている。これにより、マグネット18側を含めたステータコア26の全体が磁気飽和され難くなり、モータ10のトルクの低下を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、ステータコア26において仮想円Kよりも外周側の部分の体積が、複数の肉抜き孔26Bの容積よりも大きくなるように、複数の肉抜き孔26Bの形状、寸法、数及び配置が設定されている。これにより、ステータコア24側からハウジング74(
図2参照)側への放熱経路が狭まることを抑制することができる。すなわち、ステータコア24側からハウジング74側への伝熱抵抗が増加することを抑制することができる。
【0058】
ここで、ステータコア26に形成された肉抜き孔26Bの数が決定されている構成では、マグネット18の磁極数を肉抜き孔26Bの数の素因数ではない素数の整数倍に設定する。これにより、前述のようにステータコア26に形成された肉抜き孔26Bの数をロータ12のマグネット18の磁極数の素因数ではない素数の整数倍に設定した場合と同様の効果を得ることができる。
【0059】
例えば、肉抜き孔26Bの数が8個に決定されている構成について検討する。この場合、肉抜き孔26Bの数である8の素因数は2である。従って、素因数ではない素数は、3、5、7、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、3、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15・・・である。そして、マグネット18の数をこの素因数ではない素数の整数倍に設定する。ここで、マグネット18の数は偶数となるように設定する。そのため、マグネット18の数を上記の素因数ではない素数の整数倍かつ偶数である6、10、12、14・・・に設定する。
【0060】
次に、肉抜き孔26Bの数が9個に決定されている構成について検討する。この場合、肉抜き孔26Bの数である9の素因数は3である。従って、素因数ではない素数は、2、5、7、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、2、4、5、6、7、8、10、11、12、13、14、15、16・・・である。そして、マグネット18の数をこの素因数ではない素数の整数倍かつ偶数である2、4、6、8、10、12、14、16・・・に設定する。
【0061】
次に、肉抜き孔26Bの数が10個に決定されている構成について検討する。この場合、肉抜き孔26Bの数である10の素因数は2、5である。従って、素因数ではない素数は、3、7、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、3、6、7、9、11、12、12、13、14、15・・・である。そして、マグネット18の数をこの素因数ではない素数の整数倍かつ偶数である6、12、14、・・・に設定する。
【0062】
次に、肉抜き孔26Bの数が12個に決定されている構成について検討する。この場合、肉抜き孔26Bの数である12の素因数は2、3である。従って、素因数ではない素数は、5、7、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、5、7、10、11、14、15、17、19、20、21、22・・・である。そして、マグネット18の数をこの素因数ではない素数の整数倍かつ偶数である10、14、20、22・・・に設定する。
【0063】
次に、肉抜き孔26Bの数が21個に決定されている構成について検討する。この場合、肉抜き孔26Bの数である21の素因数は3、7である。従って、素因数ではない素数は、2、5、11、13、17、19・・・である。また、この素因数ではない素数の整数倍は、2、4、5、6、8、10、11、12、13、14、15、16・・・である。そして、マグネット18の数をこの素因数ではない素数の整数倍かつ偶数である2、4、6、8、10、12、14、16・・・に設定する。
【0064】
(第2実施形態~第19実施形態のモータ)
次に、
図16~
図35を用いて、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる第2実施形態~第19実施形態のモータの構成について説明する。なお、第2実施形態~第19実施形態のモータにおいて既に説明した実施形態のモータと対応する部材及び部分には、既に説明した実施形態のモータと対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0065】
(第2実施形態のモータ)
図16に示されるように、第2実施形態のモータ90では、肉抜き部としての複数の肉抜き溝26Cがステータコア26の外周部に形成されている。肉抜き溝26Cは、径方向外側が開放されていると共に軸方向に沿って形成された溝状に形成されている。また、肉抜き溝26Cは、ステータコア26の外周部における軸方向の一方側の端から他方側の端にかけて途切れなく形成されている。この肉抜き溝26Cを軸方向から見た縁部形状は、U字形状となっている。また、複数の肉抜き溝26Cは、周方向に沿って等間隔に配置されている。また、肉抜き溝26Cの数は、ロータ12のマグネット18の磁極数の素因数ではない素数の整数倍に設定されている。この第2実施形態のモータ90においても、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる。
【0066】
(第3実施形態のモータ)
図17に示されるように、第3実施形態のモータの一部を構成するステータコア26は、軸方向に沿って螺旋状に形成されたコア形成部材92が軸方向に積層されることによって形成されている。このコア形成部材92の外周部には、径方向外側が開放された複数の肉抜き部形成部92Aが形成されている。そして、コア形成部材92が軸方向に積層された状態では、一の層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置と他の層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置とが、同じ位置に配置されるようになっている。これにより、コア形成部材92が軸方向に積層された状態では、複数の肉抜き部形成部92Aによって肉抜き溝26Cが形成されるようになっている。この第3実施形態のモータにおいても、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる。なお、複数の肉抜き溝26Cが形成されるように肉抜き部形成部92Aの数や位置を設定するとよい。
【0067】
(第4実施形態のモータ)
図18に示されるように、第4実施形態のモータ94では、ステータコア26に形成された複数の肉抜き孔26Bの内部に充填材96が配置されている。この充填材96は、ステータコア26よりも軽量な材料を用いて形成されている。一例として、充填材96は、樹脂材料、樹脂材料にガラス繊維等が混ぜられた材料、アルミニウム等を用いて形成されている。なお、充填材96は、溶かした状態で肉抜き孔26B内に流し込んでもよい。また、充填材96は、棒状に形成されたものを肉抜き孔26B内に圧入してもよい。なお、本実施形態では、インシュレータ28のコア係合部28Jが係合する肉抜き孔26Bには、充填材96が配置されない構成となっている。この第4実施形態のモータ94においても、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる。また、充填材96をステータコア26よりも熱伝導率が高い材料を用いて形成することで、モータ94の放熱性を高めることができる。
【0068】
(第5実施形態のモータ)
図19及び
図20に示されるように、第5実施形態のモータのステータコア26では、複数の肉抜き溝26Cがステータコア26の外周部における軸方向の両側部分に形成されている。すなわち、第5実施形態のモータのステータコア26では、複数の肉抜き溝26Cがステータコア26の外周部における軸方向の中央部分には形成されていない。この第5実施形態のモータにおいても、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる。
【0069】
(第6実施形態のモータ)
図21に示されるように、第6実施形態のモータのステータコア26では、周方向に隣り合う肉抜き溝26Cの間隔が、ステータコア26の一部分において不等間隔に設定されている。詳述すると、第6実施形態のモータのステータコア26では、当該ステータコア26の外周部の大部分において、周方向に隣り合う肉抜き溝26Cの間隔がθに設定されている。そして、
図21に示されたステータコア26の一部分において、周方向に隣り合う肉抜き溝26Cの間隔がθ+αやθ-αに設定されている。この第6実施形態のモータにおいても、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる。また、周方向に隣り合う肉抜き溝26Cの間隔をステータコア26の一部分において不等間隔に設定することで、モータのコギングトルクの特性を調節することができる。なお、ステータコア26の複数箇所において、周方向に隣り合う肉抜き溝26Cの間隔を不等間隔に設定してもよい。
【0070】
(第7実施形態のモータ)
図22に示されるように、第7実施形態のモータのステータコア26では、肉抜き溝26Cの周方向幅が、ステータコア26の一部分において不均等に設定されている。すなわち、第7実施形態のモータのステータコア26では、肉抜き溝26C内の容積が、ステータコア26の一部分において不均等に設定されている。詳述すると、第7実施形態のモータのステータコア26では、当該ステータコア26の外周部の大部分において、肉抜き溝26Cの周方向幅がWに設定されている。そして、
図22に示されたステータコア26の一部分において、肉抜き溝26Cの周方向幅がW+αやW-αに設定されている。この第7実施形態のモータにおいても、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる。また、肉抜き溝26Cの周方向幅をステータコア26の一部分において不均等に設定することで、モータのコギングトルクの特性を調節することができる。なお、ステータコア26の複数箇所において、肉抜き溝26Cの周方向幅を不均等に設定してもよい。
【0071】
(第8実施形態のモータ)
図23に示されるように、第8実施形態のモータのステータコア26は、周方向に2分割構造となっている。なお、第8実施形態のモータのステータコア26は、板状に形成されたコア形成部材が軸方向に積層されることによって形成されている。コア形成部材が軸方向に積層される構成については、後述の実施形態において詳述する。
【0072】
図24には、第8実施形態のモータのステータコア26の一部の拡大図が示されている。この図に示されるように、このステータコア26は、表面に絶縁被膜98Aを有する磁性粒子98を圧縮することによって形成された圧粉磁心となっている。この第8実施形態のモータにおいても、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる。
【0073】
(第9実施形態~第11実施形態のモータ)
図25、
図26及び
図27に示されるように、第9実施形態~第11実施形態のモータのステータコア26は、環状に形成されたコア形成部材92が軸方向に積層されることによって形成されている。なお、
図25、
図26及び
図27においては、コア形成部材92をステータコア26の一部分において図示している。このコア形成部材92の外周部には、径方向外側が開放された複数の肉抜き部形成部92Aが形成されている。この複数の肉抜き部形成部92Aは、周方向に沿って等間隔に配置されている。そして、コア形成部材92が軸方向に積層された状態では、一の層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置と他の層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置とが、同じ位置に配置されるようになっている。これにより、コア形成部材92が軸方向に積層された状態では、複数の肉抜き部形成部92Aによって複数の肉抜き溝26Cが形成されるようになっている。
【0074】
また、
図25に示されるように、第9実施形態のモータのステータコア26では、積層されたコア形成部材92において肉抜き部形成部92Aが形成されていない部位をかしめ部分100でかしめることにより、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されるようになっている。
図26に示されるように、第10実施形態のモータのステータコア26では、積層されたコア形成部材92において肉抜き部形成部92Aが形成されていない部位を軸方向に沿ってレーザ溶接することにより、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されるようになっている。なお、レーザ溶接された部分を符号102で指し示している。
図27に示されるように、第11実施形態のモータのステータコア26では、積層されたコア形成部材92において肉抜き部形成部92Aと対応する部位を軸方向に沿ってレーザ溶接することや接着剤を塗付することにより、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されるようになっている。なお、レーザ溶接や接着剤が塗布された部分を符号104で指し示している。また、積層されたコア形成部材92におけるそれぞれの層の間に設けられた接着剤によって積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されるようになっていてもよい。
【0075】
以上説明した第9実施形態~第11実施形態のモータにおいても、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる。ここで、
図25及び
図26に示されたステータコア26では、仮想円Kよりも外周側において機械加工を施すことにより、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されている。この構成では、機械加工に伴う磁気特性劣化による影響を小さくすることができ、モータ10のトルクの低下やコギングトルクの増大を抑制することができる。
【0076】
(第12実施形態~第18実施形態のモータ)
図28~34に示されるように、第12実施形態~第18実施形態のモータのステータコア26は、コア形成部材92が軸方向に積層されることによって形成されている。このコア形成部材92の外周部には、肉抜き部形成部92Aが形成されている。なお、
図28~34では前記肉抜き孔26Bの中心を通り、回転軸と同心となる円筒面で切断した断面の一部分を示している。また、この構成は肉抜き溝26Cにも適用することができる。
【0077】
図28に示されるように、第12実施形態のモータのステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの寸法が同じ寸法に設定されている。また、このステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置が同じ位置に配置された状態で、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されている。
【0078】
図29に示されるように、第13実施形態のモータのステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの寸法が同じ寸法に設定されている。また、このステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置が周方向に不等ピッチでずらした状態で、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されている。
【0079】
図30に示されるように、第14実施形態のモータのステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの寸法が互いに異なる寸法に設定されている。また、このステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置が周方向に不等ピッチでずらした状態で、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されている。
【0080】
図31に示されるように、第15実施形態のモータのステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの寸法が同じ寸法に設定されている。また、このステータコア26では、肉抜き孔26Bが軸方向一方側から他方側へ向かうにつれて周方向一方側へ傾斜するように、各層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置が周方向にずらした状態で、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されている。
【0081】
図32に示されるように、第16実施形態のモータのステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの寸法が同じ寸法に設定されている。また、このステータコア26では、肉抜き孔26Bが軸方向一方側から他方側へ階段状になるように、各層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置が周方向にずらした状態で、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されている。
【0082】
図33に示されるように、第17実施形態のモータのステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの寸法が同じ寸法に設定されている。また、このステータコア26では、肉抜き孔26Bが軸方向に途切れるように、各層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置が周方向にずらした状態で、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されている。
【0083】
図34に示されるように、第18実施形態のモータのステータコア26では、各層の肉抜き部形成部92Aの寸法が同じ寸法に設定されている。また、このステータコア26では、肉抜き孔26Bが各層毎に軸方向に途切れるように、各層の肉抜き部形成部92Aの周方向の位置が周方向にずらした状態で、積層されたコア形成部材92が軸方向に一体化されている。
【0084】
以上説明した第12実施形態~第18実施形態のモータにおいても、第1実施形態のモータ10と同様に軽量化を図ることができる。また、各層の肉抜き部形成部92Aの周方向位置や周方向幅の設定を適宜変更することで、モータのコギングトルクの特性を調節することができる。
【0085】
(第19実施形態のモータ)
図35に示されるように、第19実施形態のモータのインシュレータ28では、コア係合部28Jの形状が、突出方向の先端側へ向かうにつれて窄まる形状に形成されている。これにより、第19実施形態のモータでは、インシュレータ28のコア係合部28Jをステータコア26の肉抜き溝26Cに係合させる際の作業性を良好にすることができる。
【0086】
(第20実施形態のモータ)
図36及び
図37に示されるように、第20実施形態のモータのインシュレータ28は、短コイル32の周方向への位置決めを行う周方向位置決め部としての複数の第1周方向位置決め部28Eと、中コイル48の周方向への位置決めを行う周方向位置決め部としての複数の第2周方向位置決め部28Fと、を備えている。ここで、中コイル48とは、軸方向の寸法が短コイル32の軸方向への寸法よりも大きくかつ長コイル34の軸方向への寸法よりも小さな寸法に設定されたコイル16のことである。なお、第1周方向位置決め部28E及び第2周方向位置決め部28Fの構成は、前述の周方向位置決め部28D(
図13参照)と同様の構成である。複数の第1周方向位置決め部28Eは軸端面被覆部28Bに沿って周方向に等間隔に配置されている。また、複数の第2周方向位置決め部28Fは、複数の第1周方向位置決め部28Eに対して軸方向一方側にオフセットした位置において周方向に等間隔に配置されている。また、軸方向一方側から見て、複数の第2周方向位置決め部28Fは、それぞれ周方向に隣り合う一対の第1周方向位置決め部28Eの間に配置されている。
【0087】
そして、短コイル32のコイルエンド部38が、周方向に隣り合う一対の第1周方向位置決め部28Eの間に配置されることで、当該短コイル32の周方向への位置決めがなされるようになっている。また、中コイル48のコイルエンド部38が、周方向に隣り合う一対の第2周方向位置決め部28Fの間に配置されることで、当該中コイル48の周方向への位置決めがなされるようになっている。ここで、中コイル48のコイルエンド部38が、周方向に隣り合う一対の第2周方向位置決め部28Fの間に配置された状態では、中コイル48のコイルエンド部38が第1周方向位置決め部28Eの軸方向の端面に当接している。これにより、中コイル48の軸方向への位置決めがなされるようになっている。すなわち、第1周方向位置決め部28Eは、中コイル48の軸方向への位置決めを行う軸方向位置決め部としての第1軸方向位置決め部28Gとなっている。また、長コイル34がインシュレータ28を介してステータコア26に沿って配置された状態では、長コイル34のコイルエンド部38が第2周方向位置決め部28Fの軸方向の端面に当接している。これにより、長コイル34の軸方向への位置決めがなされるようになっている。すなわち、第2周方向位置決め部28Fは、長コイル34の軸方向への位置決めを行う軸方向位置決め部としての第2軸方向位置決め部28Hとなっている。
【0088】
以上説明した本実施形態のモータでは、第1周方向位置決め部28E(第1軸方向位置決め部28G)及び第2周方向位置決め部28F(第2軸方向位置決め部28H)を設けることにより、各々のコイル16をインシュレータ28を介してステータコア26に取り付ける際の作業性を良好にすることができる。
【0089】
(第21実施形態のモータ)
図38に示されるように、第21実施形態のモータ54では、周方向に隣り合う一対の対向部36の間に配置される巻線間部分としての小突起26Aがステータコア26に設けられていることに特徴がある。ここで、小突起26Aの周方向の幅寸法をWt、小突起26Aの飽和磁束密度をBs、マグネット18の1磁極分の周方向の幅寸法をWm、マグネット18を形成する磁性化合物の残留磁束密度をBrとする。そして、小突起26Aが、Wt×Bs≦Wm×Brの関係となる磁性材料、若しくは非磁性材料を用いて形成されている構成とする。これにより、ステータ14の磁束密度を向上させることができると共に磁気飽和と磁束漏れを抑制することができ、モータ54のトルクを向上させることができる。
【0090】
(第22実施形態のモータ)
図39に示されるように、第22実施形態のモータ56では、ロータ12のマグネット18が、固有保磁力Hcが400[kA/m]以上かつ残留磁束密度Brが1.0[T]以上の磁性化合物を用いて形成されている。このマグネット18を軸方向から見て、マグネット18の磁極中心における磁化容易軸58の向きと径方向(d軸60)とのなす角度が、マグネット18の磁極間における磁化容易軸58の向きと径方向(q軸62)とのなす角度よりも小さな角度に設定されている。これにより、ステータ14とのエアギャップにおける磁束密度を高めることができる。その結果、モータ56の小型化及び高出力化、マグネット18の量の低減を図ることができる。
【0091】
(第23実施形態のモータ、第24実施形態のモータ)
図40Aに示されるように、第23実施形態のモータ64では、周方向に隣り合う一のマグネット18におけるコイル16側の部分と他のマグネット18におけるコイル16側の部分とが周方向に離間している。また、周方向に隣り合う一のマグネット18におけるコイル16とは反対側の部分と他のマグネット18におけるコイル16とは反対側の部分との間に磁性材料を用いて形成された介在部24Dが介在している。介在部24Dは、一例としてロータコア24と一体に形成されている。
【0092】
図40Bに示されるように、第24実施形態のモータ66では、周方向に隣り合う一のマグネット18におけるコイル16側の部分と他のマグネット18におけるコイル16側の部分とが周方向に離間している。また、周方向に隣り合う一のマグネット18におけるコイル16とは反対側の部分と他のマグネット18におけるコイル16とは反対側の部分とが周方向に当接するか微小に離間している。
【0093】
上記構成の第23実施形態のモータ64及び第24実施形態のモータ66では、周方向に隣り合うマグネット18間の磁気抵抗を低減することができると共に磁束密度を高めることができる。
【0094】
(第25実施形態のモータ)
図41に示されるように、第25実施形態のモータ68は、減速機70を有する減速機付きモータである。減速機70の大部分はロータコア24の内側に配置されている。この減速機70は、回転軸22に固定された内歯車72と、内歯車72の径方向外側に配置されていると共にステータ14を支持するハウジング74に固定された外歯車76と、を備えている。また、減速機70は、内歯車72と外歯車76との間に配置されていると共に内歯車72及び外歯車76と噛み合う遊星歯車78と、遊星歯車78を支持するキャリア80と、キャリア80に固定された出力軸82とを備えている。この構成もモータ68では、ロータ12の回転を減速機70で減速して出力軸82へ伝達することができる。
【0095】
(第26実施形態のモータ及び第27実施形態のモータ)
図42及び
図43に示されるように、第26実施形態のモータ84及び第27実施形態のモータ86は、互いに同じ構成の短コイル32及び長コイル34を用いて形成されている。この場合、ステータコア26の周長を調節すること等により、同じ構成の短コイル32及び長コイル34を用いて出力及び体格が異なる複数の種類のモータ84、86を製造することができる。
【0096】
なお、以上説明した各実施形態のモータ10等の構成は、互いに組み合わせることができる。この組み合わせは、モータに要求される出力や体格等を考慮して適宜設定すればよい。また、以上説明した各実施形態のモータ10等の構成は、インナロータ型のモータだけではなくアウタロータ型のモータにも適用することができる。
【0097】
また、以上説明した例では、コイル16の一対のコイルエンド部38をステータコア26の軸方向の端面側に略直角に折り曲げた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図44に示された例では、短コイル32の軸方向一方側のコイルエンド部38をステータコア26の軸方向の端面側に略直角に折り曲げ、軸方向他方側のコイルエンド部38をステータコア26とは反対側に略直角に折り曲げた構成としている。また、長コイル34の軸方向一方側のコイルエンド部38をステータコア26の軸方向の端面側に略直角に折り曲げた構成とし、軸方向他方側のコイルエンド部38をステータコア26とは反対側に略直角に折り曲げた構成としている。
図45に示された例では、短コイル32の軸方向一方側のコイルエンド部38をステータコア26の軸方向の端面側に略直角に折り曲げ、軸方向他方側のコイルエンド部38を折り曲げない構成としている。また、長コイル34の軸方向一方側のコイルエンド部38を折り曲げない構成とし、軸方向他方側のコイルエンド部38をステータコア26とは反対側に略直角に折り曲げた構成としている。なお、この例では、コイル16の端末部40が軸方向に対して傾斜している。また、
図46に示された例では、短コイル32の一対のコイルエンド部38をステータコア26の軸方向の端面側に略直角に折り曲げ、長コイル34の一対のコイルエンド部38を折り曲げない構成としている。さらに、
図47に示された例では、短コイル32の一対のコイルエンド部38をステータコア26の軸方向の端面側に軸方向に対して傾斜するように折り曲げ、長コイル34の一対のコイルエンド部38をステータコア26の軸方向の端面側に軸方向に対して傾斜するように折り曲げた構成としている。このように、コイル16の一対のコイルエンド部38を折り曲げるか否か、折り曲げる方向、折り曲げる角度は、モータに要求される体格等を考慮して適宜設定すればよい。また、
図48に示されるように、マグネット18の軸方向一方側の端部及び軸方向他方側の端部が、軸方向一方側のコイルエンド部38及び軸方向他方側のコイルエンド部38とそれぞれ径方向に対向して配置されるように構成するとよい。これにより、モータの高出力化と小型化を図ることができる。
【0098】
また、
図49に示されるように、コイル16を形成する巻線30が、第2の方向(矢印A2方向)に重ねられた2つの巻線構成体88によって構成されていてもよい。さらに、
図50に示されるように、コイル16を形成する巻線30が、第1の方向(矢印A1方向)に重ねられた2つの巻線構成体88によって構成されていてもよい。また、
図51に示されるように、コイル16を形成する巻線30が、第1の方向及び第2の方向に重ねられた4つの巻線構成体88によって構成されていてもよい。
【0099】
なお、以上説明した各実施形態では、マグネット18が設けられた側をロータ12(回転子)とし、コイル16が設けられた側をステータ14(固定子)とした構成について説明したが、本開示の構成は、コイル16が設けられた側をロータ12(回転子)とし、マグネット18が設けられた側をステータ14(固定子)とした構成にも適用することができる。また、本開示の構成は、ロータ(回転子)が外力によって回動される発電機にも適用できることは言うまでもない。
【0100】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0101】
10 モータ、12 ロータ(回転体)、16 コイル、18 マグネット、26 ステータコア(コア)、28 インシュレータ、28D 周方向位置決め部、28E 第1周方向位置決め部(周方向位置決め部)、28F 第2周方向位置決め部(周方向位置決め部)、28G 第1軸方向位置決め部(軸方向位置決め部)、28H 第2軸方向位置決め部(軸方向位置決め部)、28J コア係合部、28K 径方向外側フランジ部(軸方向基準部)、28L 切欠部(周方向基準部)、26B 肉抜き孔(肉抜き部)、26C 肉抜き溝(肉抜き部)、30 巻線、36 対向部、38 コイルエンド部、54 モータ、56 モータ、64 モータ、66 モータ、68 モータ、74 ハウジング(コア支持部材)、84 モータ、86 モータ、90 モータ、92 コア形成部材、92A 肉抜き部形成部、94 モータ、96 充填材、K 仮想円