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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】クラッチ操作反力発生装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20241203BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20241203BHJP
   B60K 23/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G05G1/30 E
G05G5/03 A
B60K23/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021113537
(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公開番号】P2023009890
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲 大輔
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203555(JP,A)
【文献】特開2011-060099(JP,A)
【文献】特開平08-161069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/30
G05G 5/03
B60K 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によるクラッチペダルの操作量に応じた操作反力を疑似的に発生させるクラッチ操作反力発生装置であって、
支持部材と、
カム面を有し、前記支持部材に移動自在に設けられたカムプレートと、
前記支持部材に移動自在に設けられ、前記カム面に接触する接触部を有するカムフォロアと、
前記カムフォロアと前記カムプレートの間に設けられ、前記カムプレートの移動方向において前記カムフォロアと前記カムプレートが離れる方向の付勢力を発生させる付勢部材とを備え、
前記カムプレートが移動することにより、前記接触部と前記カム面の接触位置が変更され、前記カムフォロアが前記カムプレートの移動方向に移動することを特徴とするクラッチ操作反力発生装置。
【請求項2】
前記カム面は、
前記カムフォロア側の前記カムプレートの移動方向の一端部から移動方向の他端部に向かい、前記カムプレートの移動方向に対して直交する方向に漸次突出する凸状カム面と、
前記凸状カム面の頂点から前記カムプレートの移動方向の他端部に向かい、前記カムプレートの移動方向に対して直交する方向に漸次窪む凹状カム面とを少なくとも含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ操作反力発生装置。
【請求項3】
前記支持部材に第1の摩擦部材と第2の摩擦部材が設けられており、
前記第1の摩擦部材は、前記支持部材と前記カムプレートとの間に設置されており、
前記第2の摩擦部材は、前記支持部材と前記カムフォロアとの間に設置されており、
前記第1の摩擦部材は、前記カムプレートが移動したときに前記カムプレートに摩擦接触し、
前記第2の摩擦部材は、前記カムフォロアが移動したときに前記カムフォロアに摩擦接触することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクラッチ操作反力発生装置。
【請求項4】
前記第2の摩擦部材は、その上端部が前記カムプレートの移動方向で前記カムプレートに向くように、前記カムプレートの移動方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項3に記載のクラッチ操作反力発生装置。
【請求項5】
前記第1の摩擦部材および前記第2の摩擦部材は、樹脂から構成されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のクラッチ操作反力発生装置。
【請求項6】
前記接触部は、前記カム面に回転自在に接触する回転体から構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のクラッチ操作反力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ操作反力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クラッチバイワイヤ方式を採用したMT(Manual Transmission)など、アクチュエータを用いてクラッチの断接を行う車両が知られている。
【0003】
アクチュエータを用いてクラッチを断接する場合には、運転者がクラッチペダルを操作したときに、クラッチペダルの操作量に応じた操作反力を体感できなくなるので、クラッチペダルの操作量に応じた反力を発生させる必要がある。
【0004】
従来、クラッチペダルの操作量に応じたペダル反力(操作反力)を、ばね部材で疑似的に発生させるようにした操作ペダル装置が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載される操作ペダル装置は、一回動軸心まわりに回動可能にブラケットに配設され、原位置から踏込み操作されて所定の作動部を作動させるとともに、作動部の反力に従って原位に戻り回動させられる操作ペダルと、ブラケットと一体の部材と操作ペダルとに跨がって配設され、操作ペダルを原位置へ戻り回動させるとともに原位置に保持するリターンスプリング(ばね部材)とを有する。
【0006】
また、操作ペダルは、操作ペダルが予め定められた中間位置を超えて踏込み方向へ回動させられている場合には、操作ペダルに対してリターンスプリングの付勢力が作用しないようにする付勢解除手段を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-161069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の操作ペダル装置にあっては、上記のように付勢解除手段を設ける必要があるため、操作ペダル装置の設置スペースが増大するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、小型でかつ、設置スペースを低減しつつ、運転者によるクラッチペダルの操作量に応じた操作反力を疑似的に発生できるクラッチ操作反力発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、運転者によるクラッチペダルの操作量に応じた操作反力を疑似的に発生させるクラッチ操作反力発生装置であって、支持部材と、カム面を有し、前記支持部材に移動自在に設けられたカムプレートと、前記支持部材に移動自在に設けられ、前記カム面に接触する接触部を有するカムフォロアと、前記カムフォロアと前記カムプレートの間に設けられ、前記カムプレートの移動方向において前記カムフォロアと前記カムプレートが離れる方向の付勢力を発生させる付勢部材とを備え、前記カムプレートが移動することにより、前記接触部と前記カム面の接触位置が変更され、前記カムフォロアが前記カムプレートの移動方向に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように上記の本発明によれば、小型でかつ、設置スペースを低減しつつ、運転者によるクラッチペダルの操作量に応じた操作反力を疑似的に発生させられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置の断面図であり、ダッシュパネルに取付けられた状態を示す。
図2図2は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置の斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置の左側面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置のカムプレート車幅方向中心位置における縦断面図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置の踏み込み時と戻り時におけるクラッチペダルストロークと操作反力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係るクラッチ操作反力発生装置は、運転者によるクラッチペダルの操作量に応じた操作反力を疑似的に発生させるクラッチ操作反力発生装置であって、支持部材と、カム面を有し、支持部材に移動自在に設けられたカムプレートと、支持部材に移動自在に設けられ、カム面に接触する接触部を有するカムフォロアと、カムフォロアとカムプレートの間に設けられ、カムプレートの移動方向においてカムフォロアとカムプレートが離れる方向の付勢力を発生させる付勢部材とを備え、カムプレートが移動することにより、接触部とカム面の接触位置が変更され、カムフォロアがカムプレートの移動方向に移動する。
【0014】
これにより、本発明の一実施の形態に係るクラッチ操作反力発生装置は、小型でかつ、設置スペースを低減しつつ、運転者によるクラッチペダルの操作量に応じた操作反力を疑似的に発生できる。
【実施例
【0015】
以下、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置について、図面を用いて説明する。図1から図5は、本発明の一実施例に係るクラッチ操作反力発生装置を示す図である。
【0016】
図1から図4において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態のクラッチ操作反力発生装置を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0017】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1にはダッシュパネル2が設けられている。ダッシュパネル2の前側には図示しないエンジンや変速機などが設置されるエンジンルーム2Aが設けられており、ダッシュパネル2の後側には運転者を含んだ乗員が搭乗する車室2Bが設けられている。
【0018】
ダッシュパネル2にはペダルブラケット3が設けられており、ペダルブラケット3にはクラッチペダル4が前後方向に揺動自在に設けられている。
【0019】
本実施例の変速機は、MT(Manual Transmission)から構成されており、変速機は、アクチュエータを用いて図示しないクラッチ装置を断接する。
【0020】
アクチュエータは、運転者によって操作されるクラッチペダル4の踏み込み量に応じてクラッチ装置を駆動する。このため、クラッチペダル4とクラッチ装置は機械的に接続されていない。
【0021】
車両1は、クラッチ操作反力発生装置5を有する。クラッチ操作反力発生装置5は、運転者がクラッチペダル4を操作したときに、クラッチペダル4の操作量に応じた操作反力(操作荷重)を疑似的に発生させる。
【0022】
図2図3に示すように、クラッチ操作反力発生装置5は、支持部材10を有する。支持部材10は、ダッシュパネル2に固定されている。具体的には、ダッシュパネル2には図示しない貫通孔が形成されており、支持部材10は、貫通孔を通して前側がエンジンルーム2Aに設置され、後側が車室2Bに設置されている。
【0023】
支持部材10は、前後方向に延びる前側底壁10Aと、前側底壁10Aの左端部から上方に延びる前側左側壁10Bと、前側底壁10Aの右端部から上方に延びる前側右側壁10Cと、前側左側壁10Bの後端部から後方に延びる後側左側壁10Dと、前側右側壁10Cの後端部から後方に延びる後側右側壁10Eとを有する。
【0024】
前側左側壁10Bと前側右側壁10Cは、左右方向(車幅方向)に対向しており、左右対称形状に形成されている。後側左側壁10Dと後側右側壁10Eは、左右方向に対向しており、左右対称形状に形成されている。
【0025】
後側右側壁10Eは、図示されていないが、図3において後側左側壁10Dの奥側(右側)に位置している。
【0026】
図2に示すように、支持部材10は、パネル固定部10Fを有する。パネル固定部10Fは、前側左側壁10Bと前側右側壁10Cの後端部と後側左側壁10Dと後側右側壁10Eの前端部の連絡部に取付けられている。
【0027】
すなわち、支持部材10は、パネル固定部10Fに対して前側に前側左側壁10Bと前側右側壁10Cが設けられており、パネル固定部10Fに対して後側に後側左側壁10Dと後側右側壁10Eが設けられている。
【0028】
パネル固定部10Fには貫通穴10hが設けられており、貫通穴10hには後述するコイルスプリング17が挿通されている。
【0029】
図1に示すように、パネル固定部10Fの後面10rは、ダッシュパネル2の前面2fに当接しており、複数のボルト6(図2では図示1つ)によってダッシュパネル2に締結されている。これにより、支持部材10がダッシュパネル2に固定される。
【0030】
図2図3に示すように、支持部材10は、天井壁10Gを有する。天井壁10Gは、前側左側壁10Bの上端と前側右側壁10Cの上端とを連絡しており、後述するカムプレート13の移動方向Aに対して上下方向に傾斜している。
【0031】
具体的には、天井壁10Gは、カムプレート13の移動方向Aに対し、傾斜方向の上端部から下端部に向かって前下方に傾斜している。
【0032】
図4に示すように、支持部材10にはカムプレート13が設けられており、カムプレート13は、支持部材10に対して前後方向に移動自在となっている。
【0033】
カムプレート13には嵌合溝13aが形成されており、嵌合溝13aにはロッド14の前端部が嵌合されている。図1に示すように、ペダルブラケット3にはロッド支持部3Aが設けられており、ロッド14の後端部はロッド支持部3Aに連結されている。
【0034】
これにより、クラッチペダル4がペダルブラケット3に対して前後方向に揺動されると、ロッド14を介してカムプレート13が前後方向に移動する。
【0035】
具体的には、カムプレート13は、クラッチペダル4の踏み込み時にロッド14に押されて前側に移動し、クラッチペダル4が踏み込まれた状態から踏み込みが解除される戻り時に、ロッド14に引かれて後側に移動する。
【0036】
カムプレート13には前後方向に延びる長穴13bが形成されており、長穴13bにはピン15が挿通されている。ピン15の左端部と右端部はそれぞれ後側左側壁10Dと後側右側壁10Eに連結されている。
【0037】
長穴13bの上下方向の幅は、ピン15の直径よりも僅かに大きく形成されている。これにより、カムプレート13の前後方向の移動時において、カムプレート13は上下方向に振れることがなく、支持部材10に対して前後方向に円滑、かつ、安定して移動する。
【0038】
支持部材10にはカムフォロア16が設けられており、カムフォロア16は、天井壁10Gに沿って移動自在となっている。
【0039】
カムフォロア16は、カムフォロア本体16Aと、カムフォロア本体16Aに固定されたローラ軸16aと、ローラ軸16aに回転自在に支持されたローラ16Bとを有する。本実施例のローラ16Bは、回転体を構成する。
【0040】
カムプレート13の上面にはカム面13Aが形成されており、カム面13Aにはローラ16Bが接触している。
【0041】
カム面13Aは、カムプレート13の移動方向Aに沿って形成されている。ここで、カムプレート13の移動方向Aは前後方向である。また、カムプレート13の移動方向Aは、ロッド14の軸線14aの方向と同一方向である。
【0042】
カム面13Aは、カムフォロア16側のカムプレート13の移動方向Aの前端部13fから移動方向Aの後端部13rに向かい、カムプレート13の移動方向Aに対して直交する方向に漸次突出する凸状カム面13cを有する。
【0043】
カム面13Aは、凸状カム面13cの頂点13tからカムプレート13の後端部13rに向かい、カムプレート13の移動方向Aに対して直交する方向に漸次窪む凹状カム面13dと、凹状カム面13dの最深部13pからカムプレート13の後端部13rに向かい、カムプレート13の移動方向Aに対して直交する方向に漸次突出する凸状カム面13eとを有する。
【0044】
本実施例のカムプレート13の前端部13fは、カムプレートの移動方向の一端部を構成し、カムプレート13の後端部13rは、カムプレートの移動方向の他端部を構成する。
【0045】
クラッチペダル4が踏み込まれていない初期位置(クラッチの完全締結位置)にあるときに、ローラ16Bは、凸状カム面13cの頂点13tよりも低い位置で、かつ、凹状カム面13dの最深部13pよりも高い位置に位置している。最深部13pは、凹状カム面13dの中で最も深い部位である。
【0046】
クラッチペダル4の操作時にカムプレート13が前後方向に移動すると、ローラ16Bとカム面13Aの接触位置が変更される。
【0047】
カムフォロア16とカムプレート13の間にはコイルスプリング17が設けられている。コイルスプリング17の前端部は、カムフォロア本体16Aに当接しており、コイルスプリング17の後端部は、カムプレート13の後端部に設けられたスプリング受部13Bに当接している。
【0048】
本実施例のコイルスプリング17は、外側コイルスプリング17Aと、外側コイルスプリング17Aの内部に設けられた内側コイルスプリング17Bとからなる二重コイルスプリングから構成されている。
【0049】
コイルスプリング17は、カムプレート13の移動方向Aにおいてカムフォロア16とカムプレート13が離れる方向の付勢力を発生させる。
【0050】
クラッチ操作反力発生装置5は、クラッチペダル4の踏み込み時や、クラッチペダル4の戻り時において、カムプレート13が前後方向に移動し、カム面13Aに対するローラ16Bの接触位置に応じてコイルスプリング17の圧縮量を変化させることにより、クラッチペダル4の操作反力を擬似的に発生し、擬似的な操作反力をクラッチペダル4に付与する。
【0051】
支持部材10には樹脂製の摩擦部材18、19が設けられている。摩擦部材18は、支持部材10の前側底壁10Aとカムプレート13との間に設置されている。
【0052】
摩擦部材18の前側底壁10Aに対向する面には嵌合突起18aが形成されている。前側底壁10Aには嵌合溝10aが形成されており、嵌合溝10aは嵌合突起18aに嵌合されている。
【0053】
これにより、摩擦部材18は、前側底壁10Aの延びる方向である前後方向に移動不能となっている。摩擦部材18は、カムプレート13が前後方向に移動したときにカムプレート13に摩擦接触する。本実施例の摩擦部材18は、第1の摩擦部材を構成する。
【0054】
摩擦部材19は、支持部材10の天井壁10Gとカムフォロア本体16Aとの間に設置されている。
【0055】
摩擦部材19は、カムプレート13の移動方向に対して傾斜している。具体的には、摩擦部材19は、上端部19bがカムプレート13の移動方向Aでカムプレート13に向き、下端部19cがカムプレート13の移動方向Aでカムプレート13と反対側を向くようにカムプレート13の移動方向Aに対して傾斜している。
【0056】
摩擦部材19の天井壁10Gに対向する面には嵌合突起19aが形成されている。天井壁10Gの内周面には嵌合溝10bが形成されており、嵌合溝10bは嵌合突起19aに嵌合されている。
【0057】
これにより、摩擦部材19は、天井壁10Gの傾斜方向に移動不能となっている。摩擦部材19は、カムフォロア16が傾斜方向に移動したときにカムフォロア16に摩擦接触する。本実施例の摩擦部材19は、第2の摩擦部材を構成する。
【0058】
支持部材10の前側にはカバー部材20が設けられている。図1に示すように、カバー部材20は、ダッシュパネル2に対してエンジンルーム2A側に設置されており、支持部材10を外方から覆っている。
【0059】
車両にはクラッチペダル4の操作量を検出する図示しないセンサが設けられており、センサは、クラッチペダル4の踏み込み量、または、カムプレート13の移動量を検出して、検出信号を図示しないコントローラに送信する。
【0060】
コントローラは、センサの検出情報に基づいてアクチュエータを制御してクラッチ装置を断接する。
【0061】
次に、作用を説明する。
運転者がクラッチペダル4を踏み込んでいない状態では、クラッチ装置が締結されている。この状態では、カムプレート13の前端部13f側のカム面13Aにカムフォロア16のローラ16Bが位置している。
【0062】
この状態から運転者がクラッチ装置を切断するためにクラッチペダル4を踏み込むと、ロッド14を介してカムプレート13が摩擦部材18に摩擦接触しながら前側に移動し、コイルスプリング17を圧縮させる。
【0063】
カムプレート13が前側に移動すると、ローラ16Bがカム面13Aの凸状カム面13cに接触しながら回転し、カムフォロア16が後側斜め上方に移動する。このとき、カムフォロア本体16Aが摩擦部材19に摩擦接触しながらカムプレート13の移動方向Aでロッド14側に移動する。
【0064】
カムプレート13がさらに前側に移動し、凸状カム面13cの頂点13tにローラ16Bが位置したときに、カムフォロア16がカムプレート13の移動方向Aでロッド14に最も近づく。換言すれば、カムプレート13の移動方向Aで支持部材10の摩擦部材19の下端部19cとカムフォロア16の距離が最も大きくなる。
【0065】
これにより、ローラ16Bがカムプレート13の前端部13f側のカム面13Aから凸状カム面13cの頂点13tに接触したときに、カムフォロア16がロッド14側に移動する分だけコイルスプリング17の圧縮量が増大する方向に調整される。
【0066】
ローラ16Bが凸状カム面13cに沿って移動するときには、図5のW1に示すように、クラッチペダル4の踏み込み量に応じて徐々に大きくなるコイルスプリング17の反力が擬似的な操作反力としてクラッチペダル4に付与される。
【0067】
カムプレート13がさらに前側に移動し、ローラ16Bが凸状カム面13cの頂点13tから凹状カム面13dに接触しながら凹状カム面13dの最深部13pに接触するまで移動すると、ローラ16Bが凹状カム面13dに沿って下方に移動する。
【0068】
ローラ16Bが凹状カム面13dに沿って移動するときには、カムフォロア16が摩擦部材19に沿って前側斜め下方に移動しながら、カムプレート13の移動方向Aでロッド14から離れる側に移動するので、コイルスプリング17の圧縮量が減少する方向に調整される。
【0069】
このとき、図5のW2に示すように、クラッチペダル4の踏み込み量に応じて徐々に小さくなるコイルスプリング17の反力がクラッチペダル4に付与される。
【0070】
カムプレート13がさらに前側に移動すると、ローラ16Bが凹状カム面13dの最深部13pから凸状カム面13eに接触しながら上方に移動し、カムフォロア16が摩擦部材19に沿って後側斜め上方に移動しながら、カムプレート13の移動方向Aでロッド14に近づく側に移動するので、コイルスプリング17の圧縮量が増大する方向に調整される。
【0071】
このとき、図5のW3に示すように、クラッチペダル4の踏み込み量に応じて徐々に大きくなるコイルスプリング17の反力がクラッチペダル4に付与される。
【0072】
クラッチ装置を切断可能な状態までクラッチペダル4が踏み込まれ、変速機の変速操作が終了した後、クラッチペダル4の踏み込みを解除すると、運転者によるクラッチペダル4の踏み込み力がクラッチペダル4の踏み込み時よりも小さくなる。
【0073】
このとき、カムプレート13がコイルスプリング17に付勢されることにより、ロッド14を介してカムプレート13が後側に移動する。
【0074】
カムプレート13がコイルスプリング17に付勢されると、ローラ16Bが凹状カム面13dから凸状カム面13cに沿って接触し、凹状カム面13dと凸状カム面13cとに対するローラ16Bの接触位置に応じてカムフォロア16がカムプレート13の移動方向Aに移動する。
【0075】
これにより、コイルスプリング17の圧縮量が調整され、コイルスプリング17の圧縮量に応じた反力が擬似的な操作反力としてクラッチペダル4に付与される。
【0076】
図5に示すように、クラッチペダル4の戻り側ではクラッチペダル4の踏み込み側に比べて小さい操作反力がクラッチペダル4に付与される。
【0077】
具体的には、クラッチペダル4が踏み込まれるときには、摩擦部材18とカムプレート13の間と、摩擦部材19とカムフォロア16の間とにおいて、クラッチペダル4の踏込み方向に摩擦力が生じ、摩擦力はコイルスプリング17の圧縮量が増大するのに伴って増大する。
【0078】
一方、クラッチペダル4の踏み込みが解除されてクラッチペダル4が戻されるときには、摩擦部材18とカムプレート13の間と、摩擦部材19とカムフォロア16の間とにおいて、クラッチペダル4の踏み込み方向と逆向きに摩擦力が生じ、摩擦力はコイルスプリング17の圧縮量が減少するのに伴って減少する。
【0079】
運転者によるクラッチペダル4の踏み込み力は、踏み込み側に対して戻り側が小さくなるので、図5に示すように、クラッチペダル4の操作反力にヒステリシス荷重が発生する。
【0080】
これにより、クラッチペダル4の踏み込み側ではクラッチ操作反力発生装置5によって大きい操作反力を得ることができ、クラッチペダル4の戻り側ではクラッチ操作反力発生装置5によって踏み込み側よりも小さい操作反力を得ることができる。
【0081】
このように、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5は、支持部材10と、カム面13Aを有し、支持部材10に移動自在に設けられたカムプレート13と、支持部材10に移動自在に設けられ、カム面13Aに接触するローラ16Bを有するカムフォロア16とを有する。
【0082】
また、クラッチ操作反力発生装置5は、カムフォロア16とカムプレート13の間に設けられ、カムプレート13の移動方向においてカムフォロア16とカムプレート13が離れる方向の付勢力を発生させるコイルスプリング17を備えており、カムプレート13が移動することにより、ローラ16Bとカム面13Aの接触位置が変更され、カムフォロア16がカムプレート13の移動方向Aに移動する。
【0083】
これにより、クラッチペダル4の操作時に、カムプレート13の移動量とカムフォロア16の移動量に応じてコイルスプリング17の圧縮量を変化させ、コイルスプリング17の圧縮量に応じた操作反力をクラッチペダル4に付与できる。
【0084】
また、カムプレート13のカム面13Aの形状を変更することにより、カムプレート13の移動方向Aに対するカムフォロア16の移動量を調整でき、コイルスプリング17の反力を設定でき、所望する擬似的な操作反力を発生させることができる。
【0085】
以上の結果、運転者によるクラッチペダル4の操作量に応じた操作反力を疑似的に発生でき、運転者に対して違和感のないクラッチペダル4の操作感を与えることができる。
【0086】
また、カムプレート13にカム面13Aを設けるとともに、カム面13Aに接触するローラ16Bを有するカムフォロア16を設けることにより、従来のように付勢解除手段を設置することを不要にできる。このため、クラッチ操作反力発生装置5を小型化してクラッチ操作反力発生装置5の設置スペースを低減できる。
【0087】
また、支持部材10、カムプレート13、カムフォロア16およびコイルスプリング17によってクラッチ操作反力発生装置5を構成することにより、クラッチ操作反力発生装置5の構成を簡素化し、クラッチペダル4を、ロッド14を介してカムプレート13に連結することにより、クラッチ操作反力発生装置5からクラッチペダル4に擬似的な操作反力を付与できる。
【0088】
このため、クラッチ操作反力発生装置5に合わせてクラッチペダルを形成することや、クラッチ操作反力発生装置5に合わせてダッシュパネルの形状を変更することなどを不要にでき、車両の製造コストが増大することを防止できる。
【0089】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、カム面13Aは、カムフォロア16側のカムプレート13の前端部13fから後端部13rに向かい、カムプレート13の移動方向Aに対して直交する方向に漸次突出する凸状カム面13cを有する。
【0090】
また、カム面13Aは、凸状カム面13cの頂点13tからカムプレート13の後端部13rに向かい、カムプレート13の移動方向Aに対して直交する方向に漸次窪む凹状カム面13dを有する。
【0091】
これにより、図5に示すように、クラッチペダル4の踏み込みを開始してからローラ16Bを凸状カム面13cに接触させることにより、徐々に増大する操作反力を発生させることができる。
【0092】
また、ローラ16Bを凸状カム面13cから凹状カム面13dに接触させることにより、クラッチペダル4の操作反力を緩やかに下げることができる。
【0093】
このため、クラッチペダル4の踏み込み時において、クラッチペダル4の総踏み込み量(総クラッチストローク)に対して半分程度まで踏み込まれる前半(図5のW1)において徐々に強くなる操作荷重を擬似的に発生させ、それ以後の踏み込み時の後半(図5のW2-W3)において徐々によくなる操作荷重を擬似的に発生させることができる。
【0094】
このため、運転者は、クラッチペダル4の踏み込み時の前半で強い操作感を得ることができ、クラッチペダル4の踏み込み時の後半で軽くなる操作感を得ることができ、クラッチペダル4の操作量に応じた操作反力を体感できる。
【0095】
また、クラッチペダル4の戻り時には、クラッチペダル4の戻り時の前半でクラッチペダル4の踏み込み時の後半よりも弱い操作荷重を擬似的に発生させることができるので、クラッチペダル4の踏み込みを解除したときの操作感を体感できる。
【0096】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、支持部材10に摩擦部材18と摩擦部材19が設けられている。
【0097】
摩擦部材18は、支持部材10とカムプレート13との間に設置されており、カムプレート13が移動したときにカムプレート13に摩擦接触する。
【0098】
摩擦部材19は、支持部材10とカムフォロア16との間に設置されており、カムフォロア16が移動したときにカムフォロア16に摩擦接触する。
【0099】
これにより、カムプレート13と摩擦部材18の摩擦接触と、カムフォロア16と摩擦部材19の摩擦接触により、クラッチペダル4の踏み込み時と戻り時にクラッチペダル4の操作反力にヒステリシスを発生させることができる。
【0100】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、摩擦部材19は、上端部19bがカムプレート13の移動方向Aでカムプレート13に向き、下端部19cがカムプレート13の移動方向Aでカムプレート13と反対側を向くようにカムプレート13の移動方向Aに対して傾斜している。
【0101】
このように構成することにより、カムフォロア16のローラ16Bが凸状カム面13cと凹状カム面13dに沿って移動するときに、カムフォロア16は、天井壁10Gに沿って上方に移動しながらカムプレート13の移動方向Aに移動する。
【0102】
このとき、コイルスプリング17は、上方に移動するカムフォロア16によってカムプレート13の移動方向Aに対して斜め方向に傾くが、カムプレート13の移動方向Aに対する摩擦部材19の傾きを大きくすることにより、カムプレート13の移動時にコイルスプリング17の傾きが大きくなることを防止できる。この結果、クラッチペダル4の操作を滑らかにしつつ、コイルスプリング17の耐久性が悪化することを防止できる。
【0103】
また、摩擦部材19をカムプレート13の移動方向Aに対して傾けることにより、支持部材10がカムプレート13の移動方向Aと直交する方向に大型化することを防止でき、結果的にクラッチ操作反力発生装置5が大型化することを防止できる。
【0104】
さらに、摩擦部材19をカムプレート13の移動方向Aに対して傾けることにより、カムフォロア16と摩擦部材19の接触面の面圧を高めることができ、クラッチペダル4の踏み込み時と戻り時のヒステリシス荷重を増大できる。
【0105】
ここで、クラッチペダル4の踏み込み時と戻り時にヒステリシスを持たせるには摩擦部材18とカムプレート13の接触面の面圧と、摩擦部材19とカムフォロア16の接触面の面圧とを高くして、カムプレート13とカムフォロア16をそれぞれ摩擦部材18、19に摩擦接触させながら移動させる必要がある。
【0106】
ところが、仮に、摩擦部材18、19に金属を用いると、金属の表面が荒いため、摩擦部材18とカムプレート13の接触面の面圧と、摩擦部材19とカムフォロア16の接触面の面圧とを高くすると、摩擦部材が摩耗し、カムプレート13とカムフォロア16の移動時の荷重特性が変化する。
【0107】
本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、摩擦部材18および摩擦部材19を樹脂から構成している。
【0108】
樹脂は、表面が滑らかであり、耐摩擦性能が優れ、摩擦係数が安定しているので、カムプレート13に対する摩擦部材18の接触面の摩耗とカムフォロア16に対する摩擦部材19の接触面の摩耗とを金属に比べて抑制できる。
【0109】
このため、クラッチペダル4の操作時の操作反力を一定に保つことができ、クラッチペダル4の操作量に応じた操作反力を長期にわたって体感できる。
【0110】
また、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5によれば、カムフォロア16は、カム面13Aに回転自在に接触するローラ16Bを有する。
【0111】
これにより、カムプレート13のカム面13Aが摩耗することを抑制でき、カムプレート13の耐久性を向上できる上に、クラッチペダル4の操作時の操作反力を一定に保つことができる。このため、クラッチペダル4の操作量に応じた操作反力を長期にわたって体感できる。
【0112】
なお、本実施例のクラッチ操作反力発生装置5は、クラッチペダル4がロッド14を介してカムプレート13に連結されているが、カムプレート13をクラッチペダル4に連結してもよい。
【0113】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0114】
4...クラッチペダル、5...クラッチ操作反力発生装置、10...支持部材、13...カムプレート、13A...カム面、13c...凸状カム面、13d...凹状カム面、13f...前端部(カムプレートの移動方向の一端部)、13r...後端部(カムプレートの移動方向の他端部)、16...カムフォロア、16B...ローラ(回転体)、17...コイルスプリング(付勢部材)、18...摩擦部材(第1の摩擦部材)、19...摩擦部材(第2の摩擦部材)、19b...上端部(第2の摩擦部材の上端部)
図1
図2
図3
図4
図5