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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電機子の製造装置及び電機子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H02K15/085
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021120717
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016422
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】竹本 雅昭
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-087284(JP,A)
【文献】特開2015-019505(JP,A)
【文献】特開2002-125338(JP,A)
【文献】国際公開第2013/076883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備える電機子の製造装置であって、
前記コイルのうち前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを前記鉄心の周方向における両側から加圧して保持する保持治具と、
前記スロットの内部に配置された前記コイルを前記鉄心の径方向において前記スロットの内面に向けて押圧して塑性変形させる押圧治具と、を備え
前記保持治具は、
前記コイルエンドを前記周方向における両側から加圧して保持する2つの突出部と、
前記2つの突出部よりも前記鉄心の軸線方向における前記スロット側に設けられ、前記周方向において互いに対向する2つの逃がし部と、を含み、
前記周方向における前記2つの突出部同士の距離は、前記スロットの幅よりも小さく、
前記周方向における前記2つの逃がし部同士の距離は、前記周方向における前記2つの突出部同士の距離よりも大きい、
電機子の製造装置。
【請求項2】
複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備える電機子の製造方法であって、
前記コイルを前記スロットの内部に配置するコイル配置工程と、
前記スロットの内部に配置された前記コイルのうち前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを、保持治具によって前記鉄心の周方向における両側から加圧して保持する保持工程と、
前記保持治具によって保持された前記コイルを、押圧治具によって前記鉄心の径方向において前記スロットの内面に向けて押圧することで、前記コイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させる押圧工程と、を備え
前記保持治具は、
前記コイルエンドを前記周方向における両側から加圧して保持する2つの突出部と、
前記2つの突出部よりも前記鉄心の軸線方向における前記スロット側に設けられ、前記周方向において互いに対向する2つの逃がし部と、を含み、
前記周方向における前記2つの突出部同士の距離は、前記スロットの幅よりも小さく、
前記周方向における前記2つの逃がし部同士の距離は、前記周方向における前記2つの突出部同士の距離よりも大きい、
電機子の製造方法。
【請求項3】
前記コイルのうち前記スロットの内部に配置される部分を配置部とするとき、
前記コイル配置工程では、前記スロットの幅よりも小さい幅を有する前記配置部を前記スロットの内部に配置し、
前記押圧工程では、前記押圧治具により前記配置部を押圧して塑性変形させることに伴って、前記コイルエンドのうち前記配置部に隣接する部分に、前記配置部から離れるほど断面積が徐々に小さくなる徐変部を形成し、
前記保持工程では、前記コイルエンドのうち前記徐変部が形成される予定の部分よりも前記配置部から離れた部分を前記保持治具によって保持する、
請求項2に記載の電機子の製造方法。
【請求項4】
前記コイルのうち前記スロットの内部に配置される部分を配置部とするとき
前記コイル配置工程では、前記コイルとして、互いに異なる2つの前記スロットの内部にそれぞれ配置される2つの前記配置部と、前記2つの配置部からそれぞれ片持ち状に延びる2つの第1コイルエンドと、前記2つの配置部における前記第1コイルエンドとは反対側の部分同士を連結する第2コイルエンドと、を有するセグメントコイルを用い、
前記保持工程では、前記第1コイルエンドを前記保持治具によって前記周方向における両側から加圧して保持する、
請求項2または3に記載の電機子の製造方法。
【請求項5】
複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備える電機子の製造装置であって、
前記スロットの内部に配置された前記コイルを前記鉄心の径方向において前記スロットの内面に向けて押圧して塑性変形させる押圧治具を備え、
前記押圧治具における前記コイルを押圧する押圧面には、微細な凹凸を有し、その他の部分よりも表面粗さが大きい粗面部が設けられており、
前記コイルは、導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を有しており、
前記凹凸の最大高さは、前記絶縁被覆の厚さよりも小さい、
電機子の製造装置。
【請求項6】
複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備える電機子の製造方法であって、
前記コイルを前記スロットの内部に配置するコイル配置工程と、
前記スロットの内部に配置された前記コイルを、押圧治具によって前記鉄心の径方向において前記スロットの内面に向けて押圧することで、前記コイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させる押圧工程と、を備え、
前記押圧治具として、前記コイルを押圧する押圧面に微細な凹凸を有し、その他の部分よりも表面粗さが大きい粗面部が設けられたものを用い
前記コイルは、導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を有しており、
前記凹凸の最大高さは、前記絶縁被覆の厚さよりも小さい、
電機子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子の製造装置及び電機子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータなどの電機子は、複数のスロットを有する鉄心と、スロットの内部に配置されたコイルとを備えている。
こうしたステータの製造方法において、特許文献1には、スロットの内部に配置されたコイルが押圧されて塑性変形することで、コイルの断面形状が変化することが開示されている。特許文献1に記載の方法では、断面円形状のコイルがスロットの内部に配置された後、当該コイルが鉄心の径方向において押圧されて塑性変形することによって、コイルが断面矩形状に成形される。これにより、スロットの内部におけるコイル同士の隙間が小さくなるため、コイルの占積率が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-125338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コイルの塑性変形によって当該コイルの断面形状が変化する際、当該コイルは、鉄心の軸線方向と、当該軸線方向に直交する面方向との双方に塑性変形する。軸線方向におけるコイルの塑性変形では、コイルが軸線方向に伸びるため、当該塑性変形の前後においてコイルの断面積が変化する。すなわち、塑性変形後のコイルの断面積が、塑性変形前のコイルの断面積よりも減少する。この場合、コイルの電気抵抗が増大するため、塑性変形後のコイルの断面積の減少を抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための電機子の製造装置は、複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備える電機子の製造装置であって、前記コイルのうち前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを前記鉄心の周方向における両側から加圧して保持する保持治具と、前記スロットの内部に配置された前記コイルを前記鉄心の径方向において前記スロットの内面に向けて押圧して塑性変形させる押圧治具と、を備える。
【0006】
同構成によれば、コイルエンドが鉄心の周方向における両側から保持治具によって加圧されて保持される。これにより、押圧治具によって押圧されることでコイルが塑性変形する際に、上記軸線方向におけるコイルの塑性変形が規制されやすくなる。このため、コイルは、上記軸線方向に直交する面方向には塑性変形しやすくなる一方で、当該軸線方向には塑性変形しにくくなる。その結果、上記軸線方向におけるコイルの伸びが低減される。したがって、塑性変形後のコイルの断面積の減少を抑制することができる。
【0007】
上記課題を解決するための電機子の製造方法は、複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備える電機子の製造方法であって、前記コイルを前記スロットの内部に配置するコイル配置工程と、前記スロットの内部に配置された前記コイルのうち前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを、保持治具によって前記鉄心の周方向における両側から加圧して保持する保持工程と、前記保持治具によって保持された前記コイルを、押圧治具によって前記鉄心の径方向において前記スロットの内面に向けて押圧することで、前記コイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させる押圧工程と、を備える。
【0008】
同方法によれば、保持工程において、コイルエンドが鉄心の周方向における両側から保持治具によって加圧されて保持される。これにより、押圧工程においてコイルが押圧治具によって押圧されて塑性変形する際に、上記軸線方向におけるコイルの塑性変形が規制されやすくなる。このため、コイルは、上記軸線方向に直交する面方向には塑性変形しやすくなる一方で、当該軸線方向には塑性変形しにくくなる。その結果、上記軸線方向におけるコイルの伸びが低減される。したがって、塑性変形後のコイルの断面積の減少を抑制することができる。
【0009】
上記課題を解決するための電機子の製造装置は、複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備える電機子の製造装置であって、前記スロットの内部に配置された前記コイルを前記鉄心の径方向において前記スロットの内面に向けて押圧して塑性変形させる押圧治具を備え、前記押圧治具における前記コイルを押圧する押圧面には、その他の部分よりも表面粗さが大きい粗面部が設けられている。
【0010】
同構成によれば、粗面部が設けられた押圧面によってコイルが押圧される。このため、押圧面に粗面部が設けられていない押圧治具と比較して、押圧面とコイルの外面との間に生じる摩擦力が大きくなる。これにより、コイルが押圧治具によって押圧されて塑性変形する際に、鉄心の軸線方向におけるコイルの塑性変形が生じにくくなる。このため、上記軸線方向におけるコイルの伸びが低減される。したがって、塑性変形後のコイルの断面積の減少を抑制することができる。
【0011】
上記課題を解決するための電機子の製造方法は、複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備える電機子の製造方法であって、前記コイルを前記スロットの内部に配置するコイル配置工程と、前記スロットの内部に配置された前記コイルを、押圧治具によって前記鉄心の径方向において前記スロットの内面に向けて押圧することで、前記コイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させる押圧工程と、を備え、前記押圧治具として、前記コイルを押圧する押圧面に、その他の部分よりも表面粗さが大きい粗面部が設けられたものを用いる。
【0012】
同方法によれば、押圧工程において、粗面部が設けられた押圧面によってコイルが押圧される。このため、押圧面に粗面部が設けられていない押圧治具と比較して、押圧面とコイルの外面との間に生じる摩擦力が大きくなる。これにより、コイルが押圧治具によって押圧されて塑性変形する際に、鉄心の軸線方向におけるコイルの塑性変形が生じにくくなる。このため、上記軸線方向におけるコイルの伸びが低減される。したがって、塑性変形後のコイルの断面積の減少を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態におけるステータを示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態におけるステータを示す拡大断面図である。
図3図3は、第1実施形態におけるステータをステータの内側から視た正面図である。
図4図4は、第1実施形態におけるセグメントコイルを示す断面斜視図である。
図5図5は、第1実施形態における押圧治具を示す断面斜視図である。
図6図6は、第1実施形態における保持治具を示す断面図である。
図7図7(a)は、第1実施形態における保持治具によって保持されたセグメントコイルが塑性変形する前の状態を示す断面図であり、図7(b)は、同保持治具によって保持されたセグメントコイルが塑性変形した後の状態を示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態におけるコイル配置工程を示す断面図である。
図9図9は、第1実施形態における保持工程を示す断面図である。
図10図10は、第1実施形態における5つのセグメントコイルの押圧工程が完了した状態を示す断面図である。
図11図11は、第1実施形態における8つのセグメントコイルの押圧工程が完了した状態を示す断面図である。
図12図12は、第2実施形態における押圧治具を示す断面斜視図である。
図13図13は、第2実施形態におけるコイル配置工程を示す断面図である。
図14図14は、第2実施形態における1つのセグメントコイルの押圧工程が完了した状態を示す断面図である。
図15図15は、第2実施形態における3つのセグメントコイルの押圧工程が完了した状態を示す断面図である。
図16図16は、第2実施形態における8つのセグメントコイルの押圧工程が完了した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、図1図11を参照して、電機子の製造装置及び電機子の製造方法をステータの製造装置及びステータの製造方法として具体化した第1実施形態について説明する。
【0015】
各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については実際と異なる場合がある。
(ステータ10)
図1及び図2に示すように、ステータ10は、ステータコア20と、コイル30と、複数の絶縁シート50とを備えている。ステータコア20は、円筒状をなしている。コイル30は、ステータコア20に巻回されている。各絶縁シート50は、コイル30の外面を覆っている。ステータコア20は、「鉄心」に相当する。
【0016】
本実施形態のステータ10は、三相同期型の回転電機に用いられるものであり、図示しないロータを取り囲むように設けられている。
以降において、ステータコア20の軸線方向、径方向、及び周方向を単にそれぞれ軸線方向、径方向、及び周方向と称する。
【0017】
(ステータコア20)
ステータコア20は、ヨーク21と、複数のティース22と、複数のスロット23とを有している。ヨーク21は円環状をなしている。複数のティース22は、ヨーク21から径方向の内側に突出するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられている。スロット23は、周方向において隣り合うティース22同士の間に1つずつ形成されている。各スロット23は、径方向の内側及び軸線方向の両側において開口している。本実施形態のステータコア20は、都合48個のスロット23を有している。
【0018】
図1に示すように、ステータコア20は、ヨーク21から径方向の外側に突出した3つの固定部24を有している。3つの固定部24は、周方向に互いに間隔をおいて設けられている。各固定部24には、固定部24を軸線方向に貫通するボルト孔24aが設けられている。ボルト孔24aに挿入された図示しないボルトが図示しないハウジングに締結されることで、ステータコア20が当該ハウジングに対して固定されている。
【0019】
こうしたステータコア20は、例えば、軸線方向において積層された複数の電磁鋼板が互いに接合されることにより構成されている。
(コイル30)
コイル30は、U相、V相、及びW相を構成する3つの相巻線により構成されている。各相巻線は、複数のティース22に跨がって巻回されている。
【0020】
コイル30は、導体と、導体の外周を被覆する絶縁被覆とを有している。導体は、例えばアルミニウム合金などの金属材料により形成されている。各図においては、絶縁被覆の図示が省略されている。
【0021】
図3に示すように、コイル30は、複数の配置部31と、複数の第1コイルエンド32と、複数の第2コイルエンド33とを有している。
配置部31は、スロット23の内部に配置されている。配置部31は、軸線方向において直線状に延びている。スロット23の内部には、8つの配置部31が径方向に並んで設けられている。
【0022】
コイル30の長さ方向に直交する断面形状は、長辺及び短辺を有する長方形状をなしている。配置部31の断面形状における長辺は、スロット23の幅方向に延びており、配置部31の断面形状における短辺は、径方向に延びている。配置部31の長辺は、絶縁シート50の開口幅と同一である。なお、スロット23の幅方向とは、軸線方向と径方向との双方に直交する方向である。
【0023】
第1コイルエンド32は、配置部31から延びている。第1コイルエンド32は、軸線方向の一方においてスロット23から突出するとともに周方向に屈曲している。第1コイルエンド32は、異なる2つのスロット23の内部に配置された2つの配置部31同士を連結している。
【0024】
第1コイルエンド32は、一般部32aと、徐変部32bとを有している。徐変部32bは、配置部31に隣接する部分であって、配置部31と一般部32aとの間に設けられている。
【0025】
一般部32aの幅は、配置部31の幅よりも小さい。
徐変部32bの断面積は、配置部31から離れるほど、すなわち一般部32aに向かうほど徐々に小さくなっている。徐変部32bの幅は、配置部31から離れるほど徐々に小さくなっている。
【0026】
第2コイルエンド33は、配置部31から延びている。第2コイルエンド33は、軸線方向の一方とは反対の他方においてスロット23から突出するとともに周方向に屈曲している。第2コイルエンド33は、異なる2つのスロット23の内部に配置された2つの配置部31同士を連結している。
【0027】
第2コイルエンド33は、一般部33aと、徐変部33bとを有している。一般部33a及び徐変部33bの構成は、第1コイルエンド32の一般部32a及び徐変部32bの構成と同一である。このため、一般部33a及び徐変部33bの構成についての詳細な説明を省略する。
【0028】
(セグメントコイル40)
図2に示すように、上述したコイル30の各相巻線は、複数のセグメントコイル40が互いに接合されることによって構成されている。本実施形態では、1つのスロット23の内部において、8つのセグメントコイル40が径方向に並んで配置される。
【0029】
図4に示すように、セグメントコイル40は、平行に延びる2つの直線部と、2つの直線部の端部同士を連結する連結部とを有している。セグメントコイル40は、U字状をなしている。
【0030】
こうしたセグメントコイル40の2つの直線部は、異なる2つのスロット23のそれぞれに対して、軸線方向の一方から挿入される。その後、スロット23から突出した直線部の一部が周方向の一方または他方に曲げられる。そして、1つのセグメントコイル40の直線部と、当該セグメントコイル40とは別のセグメントコイル40の直線部とが接合される。これにより、各相巻線が構成されている。
【0031】
上記各直線部は、第1コイルエンド32、配置部31、及び第2コイルエンド33の一部を構成している。上記連結部は、第2コイルエンド33の一部を構成している。したがって、セグメントコイル40は、2つの配置部31と、2つの第1コイルエンド32と、1つの第2コイルエンド33とを有している。セグメントコイル40における2つの第1コイルエンド32は、2つの配置部31からそれぞれ片持ち状に延びている。第2コイルエンド33は、2つの配置部31における第1コイルエンド32とは反対側の部分同士を連結している。
【0032】
(絶縁シート50)
図2に示すように、絶縁シート50は、各スロット23の内部に1つずつ配置されている。絶縁シート50は、スロット23の内面とコイル30の外面との間に配置されている。絶縁シート50は、スロット23の内面全体を覆っている。絶縁シート50は、例えば、スロット23と同様に、径方向の内側及び軸線方向の両側において開口している。軸線方向における絶縁シート50の両端は、スロット23から突出している。
【0033】
(ステータの製造装置60)
図5及び図6に示すように、ステータの製造装置60(以下、製造装置60と称する)は、押圧治具70と、保持治具80とを備えている。押圧治具70は、スロット23の内部に配置されたセグメントコイル40を押圧して塑性変形させるものである。保持治具80は、セグメントコイル40の第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33を加圧して保持するものである。
【0034】
(押圧治具70)
図5に示すように、押圧治具70は、例えば、軸線方向に延びる柱状をなしている。押圧治具70の長さは、軸線方向におけるセグメントコイル40の長さよりも大きい。
【0035】
押圧治具70の材料としては、例えば、鉄系材料などの金属材料が挙げられる。
押圧治具70は、配置部31に対向する対向部71を有している。対向部71の幅は、押圧治具70におけるその他の部分の幅よりも大きい。対向部71の幅は、絶縁シート50の開口幅と略同一である。軸線方向における対向部71の長さは、軸線方向におけるスロット23の長さよりも大きく、例えば、軸線方向における絶縁シート50の長さと略同一である。
【0036】
対向部71は、セグメントコイル40の外面を押圧する押圧面70aを有している。押圧面70aは、径方向に直交する平坦面である。
(保持治具80)
図6に示すように、保持治具80は、軸線方向における各ティース22の両端面上に配置される複数の保持部材81を有している。各保持部材81は、径方向に延びる柱状をなしている。各保持部材81の長さは、スロット23の径方向における長さよりも大きい。
【0037】
保持部材81の材料としては、例えば、鉄系材料などの金属材料が挙げられる。
図7(a)及び図7(b)に示すように、保持部材81は、第1コイルエンド32を保持する保持部材81Aと、第2コイルエンド33を保持する保持部材81Bとを含んでいる。
【0038】
保持部材81Aは、1つのスロット23から突出する複数の第1コイルエンド32の周方向における両側に1つずつ配置される。同様に、保持部材81Bは、1つのスロット23から突出する複数の第2コイルエンド33の周方向における両側に1つずつ配置される。
【0039】
以降において、1つのスロット23から突出する複数の第1コイルエンド32を挟んで周方向において互いに反対側に位置する2つの保持部材81Aを単に「2つの保持部材81A」と称する。また、1つのスロット23から突出する複数の第2コイルエンド33を挟んで周方向において互いに反対側に位置する2つの保持部材81Bを単に「2つの保持部材81B」と称する。
【0040】
保持部材81Aの構成と保持部材81Bの構成とは同一である。このため、以降では、保持部材81Aの構成について説明することで、保持部材81Bの構成についての説明を省略する場合がある。
【0041】
各保持部材81Aは、径方向において進退可能に設けられている。各保持部材81Aは、例えば、径方向の外側から内側に向かって移動することでティース22の軸線方向における一端面上に配置される。
【0042】
2つの保持部材81Aは、周方向において互いに接近及び離間可能に構成されている。2つの保持部材81Aは、第1コイルエンド32を周方向における両側から加圧して保持可能に構成されている。
【0043】
2つの保持部材81Aは、各スロット23に対応して設けられている。本実施形態では、保持部材81Aが、各ティース22の軸線方向における一端面上に1つずつ配置されている。また、保持部材81Bが、各ティース22の上記一端面とは反対側の他端面上に1つずつ配置されている。なお、各図においては、複数の保持部材81Aのうち2つの保持部材81Aのみが図示されており、複数の保持部材81Bのうち2つの保持部材81Bのみが図示されている。
【0044】
図7(b)に示すように、保持部材81Aは、一般部32aに向かって突出する突出部82と、徐変部32bを逃がす逃がし部83とを有している。
2つの保持部材81Aにおける突出部82によって、一般部32aが周方向における両側から加圧されて保持される。
【0045】
2つの保持部材81Aにおける逃がし部83によって、徐変部32bと保持部材81Aとの干渉が回避される。
(ステータの製造方法)
ステータの製造方法は、絶縁シート配置工程、コイル配置工程、保持工程、押圧工程、及び接合工程を備えている。本実施形態では、絶縁シート配置工程、コイル配置工程、保持工程、押圧工程、及び接合工程がこの順で行われる。ただし、コイル配置工程、保持工程、及び押圧工程は、この順で複数回繰り返し行われる。
【0046】
(絶縁シート配置工程)
図8に示すように、絶縁シート配置工程では、スロット23の内部に絶縁シート50が配置される。このとき、絶縁シート50は、径方向の内側からスロット23の内部に挿入されてもよいし、軸線方向からスロット23の内部に挿入されてもよい。
【0047】
(コイル配置工程)
コイル配置工程では、スロット23の内部に複数のセグメントコイル40が配置される。本実施形態では、まず、1つのスロット23の内部に配置される都合8つのセグメントコイル40のうち、5つのセグメントコイル40がスロット23の内部において径方向に並んで配置される。
【0048】
コイル配置工程では、スロット23の幅よりも小さい幅、より詳しくは、絶縁シート50の開口幅よりも小さい幅を有する配置部31がスロット23の内部に配置される。したがって、配置部31と絶縁シート50との間には、スロット23の幅方向において隙間が設けられている。
【0049】
(保持工程)
図9に示すように、保持工程では、5つのセグメントコイル40の第1コイルエンド32が、保持治具80の保持部材81Aによって周方向における両側から加圧して保持される。図示は省略するが、このとき、5つのセグメントコイル40の第2コイルエンド33が、保持部材81Bによって周方向における両側から加圧して保持される。こうした保持部材81による保持によって、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33には、保持部材81によって加圧された跡がそれぞれ形成される。
【0050】
(押圧工程)
図10に示すように、押圧工程では、保持治具80によって保持されたセグメントコイル40の配置部31が、押圧治具70によって径方向の外側におけるスロット23の内面に向けて押圧される。これにより、配置部31がスロット23の内面に沿って塑性変形する。このため、上述した配置部31と絶縁シート50との隙間が無くなる。したがって、配置部31の幅が絶縁シート50の開口幅と同一になる。
【0051】
図7(b)に示すように、押圧工程では、配置部31の塑性変形に伴って、配置部31の軸線方向における両側に徐変部32b,33bがそれぞれ形成される。
図11に示すように、次に、残り2つのセグメントコイル40において、コイル配置工程、保持工程、及び押圧工程がこの順で行われた後に、残り1つのセグメントコイル40において、コイル配置工程、保持工程、及び押圧工程がこの順で行われる。なお、残り3つのセグメントコイル40において、コイル配置工程、保持工程、及び押圧工程がこの順で行われてもよい。
【0052】
(接合工程)
図示は省略するが、接合工程では、各第1コイルエンド32に係合する円環状の捻り治具によって、各セグメントコイル40における一方の第1コイルエンド32が周方向の一方に捻られるとともに、他方の第1コイルエンド32が周方向の他方に捻られる。これにより、セグメントコイル40における第1コイルエンド32の端部と、当該セグメントコイル40とは別のセグメントコイル40における第1コイルエンド32の端部とが、径方向において隣接する。そして、これらの端部同士が溶接によって接合されることによりコイル30が製造される。
【0053】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)製造装置60は、保持治具80と、押圧治具70とを備える。保持治具80は、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33を周方向における両側から加圧して保持するものである。押圧治具70は、スロット23の内部に配置されたセグメントコイル40を径方向においてスロット23の内面に向けて押圧して塑性変形させるものである。
【0054】
こうした構成によれば、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33がステータコア20の周方向における両側から保持治具80によって加圧されて保持される。これにより、押圧治具70によって押圧されることでセグメントコイル40が塑性変形する際に、軸線方向におけるセグメントコイル40の塑性変形が規制されやすくなる。このため、セグメントコイル40は、軸線方向に直交する面方向には塑性変形しやすくなる一方で、軸線方向には塑性変形しにくくなる。その結果、軸線方向におけるセグメントコイル40の伸びが低減される。したがって、塑性変形後のセグメントコイル40の断面積の減少を抑制することができる。
【0055】
(1-2)ステータの製造方法は、コイル配置工程と、保持工程と、押圧工程とを備える。コイル配置工程では、セグメントコイル40をスロット23の内部に配置する。保持工程では、スロット23の内部に配置されたセグメントコイル40における第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33を、保持治具80によって周方向における両側から加圧して保持する。押圧工程では、保持治具80によって保持されたセグメントコイル40を、押圧治具70によって径方向においてスロット23の内面に向けて押圧することで、セグメントコイル40をスロット23の内面に沿って塑性変形させる。
【0056】
こうした方法によれば、保持工程において、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33が周方向における両側から保持治具80によって加圧されて保持される。これにより、押圧工程においてセグメントコイル40が押圧治具70によって押圧されて塑性変形する際に、軸線方向におけるセグメントコイル40の塑性変形が規制されやすくなる。このため、セグメントコイル40は、軸線方向に直交する面方向には塑性変形しやすくなる一方で、軸線方向には塑性変形しにくくなる。その結果、上記軸線方向におけるセグメントコイル40の伸びが低減される。したがって、塑性変形後のセグメントコイル40の断面積の減少を抑制することができる。
【0057】
ところで、セグメントコイル40では、2つの第1コイルエンド32が2つの配置部31からそれぞれ片持ち状に延びるとともに、第2コイルエンド33が上記2つの配置部31を連結している。このため、配置部31が軸線方向に塑性変形する場合、配置部31は、軸線方向において第2コイルエンド33に向かう方向よりも第1コイルエンド32に向かう方向に伸びやすくなる。
【0058】
上記方法によれば、第1コイルエンド32が保持治具80によって加圧されて保持される。このため、押圧工程において、上記第1コイルエンド32に向かう方向における配置部31の伸びが低減される。また、第2コイルエンド33が保持治具80によって加圧されて保持されることによって、上記第2コイルエンド33に向かう方向における配置部31の伸びが低減される。したがって、塑性変形後のセグメントコイル40の断面積の減少を効果的に抑制することができる。
【0059】
(1-3)コイル配置工程では、スロット23の幅よりも小さい幅を有する配置部31をスロット23の内部に配置する。押圧工程では、押圧治具70により配置部31を押圧して塑性変形させることに伴って、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33のうち配置部31に隣接する部分に徐変部32b,33bをそれぞれ形成する。保持工程では、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33のうち徐変部32b,33bが形成される予定の部分よりも配置部31から離れた部分を保持治具80によってそれぞれ保持する。
【0060】
スロット23の幅よりも小さい幅を有する配置部31が押圧治具70によって押圧されて塑性変形した場合、配置部31の幅が大きくなる。こうした配置部31の塑性変形に伴って、配置部31と、第1コイルエンド32のうち断面積が変化しない部分である一般部32aとの間には、徐変部32bが配置部31に隣接して形成される。同様にして、第2コイルエンド33には、徐変部33bが形成される。このため、保持工程において、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33のうち配置部31に隣接する部分が保持治具80によってそれぞれ保持された場合、当該部分は断面積が変化しにくくなる。このため、徐変部32b,33bに相当する部分が、配置部31のうち軸線方向における端部に形成されることになる。その結果、配置部31の断面積が部分的に減少するおそれがある。
【0061】
この点、上記方法によれば、保持工程において、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33のうち上記予定の部分よりも配置部31から離れた部分が保持治具80によって保持される。これにより、上記予定の部分が保持治具80によって保持されることが回避される。したがって、上述した不都合が生じることを抑制できる。
【0062】
<第2実施形態>
以下、図12図16を参照して、電機子の製造装置及び電機子の製造方法をステータの製造装置及びステータの製造方法として具体化した第2実施形態について説明する。
【0063】
第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、重複した説明を省略する。
各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については実際と異なる場合がある。
【0064】
(ステータの製造装置160)
図12に示すように、ステータの製造装置160(以下、製造装置160と称する)は、押圧治具170を備えている。
【0065】
(押圧治具170)
押圧治具170は、例えば、軸線方向に延びる柱状をなしている。押圧治具170の長さは、軸線方向におけるセグメントコイル40の長さよりも大きい。
【0066】
押圧治具170の材料としては、例えば、鉄系材料などの金属材料が挙げられる。
押圧治具170の幅は、絶縁シート50の開口幅と略同一である。
押圧治具170は、セグメントコイル40の外面を押圧する押圧面170aを有している。押圧面170aには、その他の部分よりも表面粗さが大きい粗面部が設けられている。
【0067】
粗面部は、微細な凹凸を有している。粗面部は、例えば、押圧面170aに対するショットブラストやエッチングなどにより形成されている。粗面部における凹凸の最大高さは、セグメントコイル40の絶縁被覆の厚さよりも小さいことが好ましく、当該厚さの半分以下であることがより好ましい。
【0068】
(ステータの製造方法)
ステータの製造方法は、絶縁シート配置工程、コイル配置工程、押圧工程、及び接合工程を備えている。本実施形態では、絶縁シート配置工程、コイル配置工程、押圧工程、及び接合工程がこの順で行われる。ただし、コイル配置工程及び押圧工程は、この順で複数回繰り返し行われる。
【0069】
本実施形態における絶縁シート配置工程及び接合工程は、第1実施形態における絶縁シート配置工程及び接合工程と同一である。このため、以降では、絶縁シート配置工程及び接合工程の詳細な説明を省略する。
【0070】
また、以降において、便宜上、1つのスロット23の内部に配置される8つのセグメントコイル40を、径方向の外側から順にセグメントコイルS1~セグメントコイルS8と称して説明する。
【0071】
(コイル配置工程)
図13に示すように、コイル配置工程では、まず、スロット23の内部に1つのセグメントコイルS1が配置される。
【0072】
コイル配置工程では、スロット23の幅よりも小さい幅を有する配置部31がスロット23の内部に配置される。したがって、配置部31とスロット23との間には、スロット23の幅方向において隙間が設けられている。
【0073】
(押圧工程)
図14に示すように、押圧工程では、セグメントコイルS1の配置部31が、押圧治具170によって径方向の外側におけるスロット23の内面に向けて押圧される。これにより、配置部31がスロット23の内面に沿って塑性変形する。このため、上述した配置部31と絶縁シート50との隙間が無くなる。したがって、配置部31の幅が絶縁シート50の開口幅と同一になる。
【0074】
このとき、第1実施形態と同様に、配置部31の軸線方向の両側に徐変部32b,33bがそれぞれ形成される。
押圧工程では、セグメントコイルS1の外面に対して、押圧面170aの粗面部が押し付けられる。これにより、セグメントコイルS1の上記外面には、粗面部の凹凸形状が転写された転写面40aが形成される。転写面40aの表面粗さは、セグメントコイルS1におけるその他の部分の表面粗さよりも大きい。なお、転写面40aは、セグメントコイルS1の絶縁被覆が変形することにより形成される。
【0075】
図15に示すように、次に、スロット23の内部に2つのセグメントコイルS2,S3が配置されるコイル配置工程が行われる。そして、これら2つのセグメントコイルS2,S3に対して押圧工程が行われる。このとき、セグメントコイルS3の外面に対して、押圧面170aの粗面部が押し付けられるため、当該外面には、セグメントコイルS1と同様にして転写面40aが形成される。また、セグメントコイルS2は、セグメントコイルS1の転写面40aに対して押し付けられる。
【0076】
図16に示すように、次に、セグメントコイルS2,S3と同様に、セグメントコイルS4,S5に対してコイル配置工程と押圧工程とが行われる。その後、同様に、セグメントコイルS6,S7に対してコイル配置工程と押圧工程とが行われる。最後に、セグメントコイルS8に対してコイル配置工程と押圧工程とが行われる。
【0077】
以上のようにコイル配置工程と押圧工程とが繰り返し行われることで、セグメントコイルS1,S3,S5,S7,S8の外面にそれぞれ転写面40aが形成される。また、押圧工程において、セグメントコイルS2,S4,S6,S8は、セグメントコイルS1,S3,S5,S7の転写面40aに対してそれぞれ押し付けられる。
【0078】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(2-1)製造装置160は、スロット23の内部に配置されたセグメントコイル40を径方向においてスロット23の内面に向けて押圧して塑性変形させる押圧治具170を備える。押圧治具170におけるセグメントコイル40を押圧する押圧面170aには、その他の部分よりも表面粗さが大きい粗面部が設けられている。
【0079】
こうした構成によれば、粗面部が設けられた押圧面170aによってセグメントコイル40が押圧される。このため、押圧面170aに粗面部が設けられていない押圧治具と比較して、押圧面170aとセグメントコイル40の外面との間に生じる摩擦力が大きくなる。これにより、セグメントコイル40が押圧治具170によって押圧されて塑性変形する際に、軸線方向におけるセグメントコイル40の塑性変形が生じにくくなる。このため、軸線方向におけるセグメントコイル40の伸びが低減される。したがって、塑性変形後のセグメントコイル40の断面積の減少を抑制することができる。
【0080】
(2-2)ステータの製造方法は、コイル配置工程と、押圧工程とを備える。押圧工程では、セグメントコイル40を押圧する押圧面170aに、その他の部分よりも表面粗さが大きい粗面部が設けられた押圧治具170を用いる。
【0081】
こうした方法によれば、押圧工程において、粗面部が設けられた押圧面170aによってセグメントコイル40が押圧される。このため、押圧面170aに粗面部が設けられていない押圧治具と比較して、押圧面170aとセグメントコイル40の外面との間に生じる摩擦力が大きくなる。これにより、セグメントコイル40が押圧治具170によって押圧されて塑性変形する際に、軸線方向におけるセグメントコイル40の塑性変形が生じにくくなる。このため、軸線方向におけるセグメントコイル40の伸びが低減される。したがって、塑性変形後のセグメントコイル40の断面積の減少を抑制することができる。
【0082】
(2-3)押圧工程では、転写面40aが形成されたセグメントコイル40に向けて、径方向に並ぶ2つのセグメントコイル40を押圧治具170によって押圧する。
こうした方法によれば、上記2つのセグメントコイル40の一方が、転写面40aに対して押し付けられる。転写面40aは、粗面部の形状が転写された面であるため、転写面40aが形成されたセグメントコイル40と、当該セグメントコイル40に押し付けられるセグメントコイル40との間に生じる摩擦力が大きくなる。これにより、転写面40aに対して押し付けられるセグメントコイル40の軸線方向における塑性変形が生じにくくなる。このため、軸線方向におけるセグメントコイル40の伸びが低減される。また、上記2つのセグメントコイル40の他方は、押圧治具170により押圧されることで、軸線方向における伸びが低減される。したがって、塑性変形後のセグメントコイル40の断面積の減少を抑制することができる。
【0083】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0084】
・第1実施形態において、保持治具80は、保持部材81Aのみを有するものであってもよい。すなわち、保持工程において、保持治具80によって第1コイルエンド32が保持される一方、第2コイルエンド33は保持されなくてもよい。
【0085】
・第1実施形態において、保持工程では、徐変部32b,33bが形成される予定の部分が保持治具80によって保持されてもよい。
・第1実施形態において、保持部材81Aが、各ティース22の軸線方向における一端面上に2つずつ配置されていてもよい。また、保持部材81Bが、各ティース22の他端面上に2つずつ配置されていてもよい。
【0086】
・第1実施形態において、押圧治具70の押圧面70aに第2実施形態の粗面部が設けられていてもよい。この場合、塑性変形後のセグメントコイル40の断面積の減少をより一層抑制することができる。
【0087】
・第2実施形態において、粗面部は、押圧面170aのうち配置部31を押圧する部分の軸線方向における両端部にのみ設けられていてもよい。
・第2実施形態において、粗面部は、幅方向に延びるとともに軸線方向に互いに間隔をおいて設けられた複数の突条によって構成されていてもよい。この構成によれば、軸線方向におけるセグメントコイル40の塑性変形が規制される一方、幅方向におけるセグメントコイル40の塑性変形が許容されやすくなる。
【0088】
・各実施形態におけるコイル配置工程において、スロット23の内部に一度に配置されるセグメントコイル40の数は、適宜変更されてもよい。
・各実施形態において、スロット23の内部に配置される配置部31の数は、適宜変更されてもよい。
【0089】
・各実施形態において、ステータ10から絶縁シート50が省略されてもよい。この場合、絶縁シート配置工程が省略される。また、塑性変形後の配置部31の幅は、スロット23の幅と同一となる。
【0090】
・コイル30の導体の材料は、銅合金などのアルミニウム合金以外の金属材料であってもよい。
・各実施形態におけるコイル30は、複数のセグメントコイル40が屈曲及び接合されることによって構成されるものであったが、コイル30は、導体及び絶縁被覆を有する導線が予め環状に形成された巻線により構成されていてもよい。
【0091】
・各実施形態では、電機子の製造装置の一例として回転電機のステータの製造装置を例示したが、同様の構成を回転電機のロータの製造装置に対しても適用することも可能である。また、各実施形態では、電機子の製造方法の一例として回転電機のステータの製造方法を例示したが、同様の方法を回転電機のロータの製造方法に対して適用することも可能である。
【符号の説明】
【0092】
S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8…セグメントコイル
10…ステータ
20…ステータコア
21…ヨーク
22…ティース
23…スロット
24…固定部
24a…ボルト孔
30…コイル
31…配置部
32…第1コイルエンド
32a…一般部
32b…徐変部
33…第2コイルエンド
33a…一般部
33b…徐変部
40…セグメントコイル
40a…転写面
50…絶縁シート
60…製造装置
70…押圧治具
70a…押圧面
71…対向部
80…保持治具
81,81A,81B…保持部材
82…突出部
83…逃がし部
160…製造装置
170…押圧治具
170a…押圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16