(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電機子の製造装置及び電機子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/085 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H02K15/085
(21)【出願番号】P 2021120718
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】竹本 雅昭
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-087284(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104645(WO,A1)
【文献】特開2002-125338(JP,A)
【文献】特開2017-050966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備え、前記コイルは、前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを有するとともに前記鉄心の径方向に並んで配置された複数のセグメントコイルによって構成されている電機子の製造装置であって、
前記コイルエンドに対して前記鉄心の周方向における両側から接触することで、前記スロットの内部での前記セグメントコイルの前記径方向における移動を許容する一方、前記周方向における移動を規制する規制治具と、
前記スロットの内部に配置された前記セグメントコイルを前記径方向において前記スロットの内面に向けて押圧して塑性変形させる押圧治具と、を備え
、
前記規制治具は、
前記コイルエンドに対して前記周方向における両側から接触する2つの突出部と、
前記2つの突出部よりも前記鉄心の軸線方向における前記スロット側に設けられ、前記周方向において互いに対向する2つの逃がし部と、を含み、
前記周方向における前記2つの突出部同士の距離は、前記スロットの幅よりも小さく、
前記周方向における前記2つの逃がし部同士の距離は、前記周方向における前記2つの突出部同士の距離よりも大きい、
電機子の製造装置。
【請求項2】
複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備え、前記コイルは、前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを有するとともに前記鉄心の径方向に並んで配置された複数のセグメントコイルによって構成されている電機子の製造
方法であって、
前記セグメントコイルを前記スロットの内部に配置するコイル配置工程と、
前記スロットの内部に配置された前記セグメントコイルの前記コイルエンドに対して、規制治具を前記鉄心の周方向における両側から接触させることで、前記スロットの内部での前記セグメントコイルの前記径方向における移動を許容する一方、前記周方向における移動を規制する規制工程と、
前記規制治具が接触した状態の前記セグメントコイルを、押圧治具によって前記径方向において前記スロットの内面に向けて押圧することで、前記セグメントコイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させる押圧工程と、を備え、
前記規制治具は、
前記コイルエンドに対して前記周方向における両側から接触する2つの突出部と、
前記2つの突出部よりも前記鉄心の軸線方向における前記スロット側に設けられ、前記周方向において互いに対向する2つの逃がし部と、を含み、
前記周方向における前記2つの突出部同士の距離は、前記スロットの幅よりも小さく、
前記周方向における前記2つの逃がし部同士の距離は、前記周方向における前記2つの突出部同士の距離よりも大きく、
前記コイル配置工程では、前記セグメントコイルとして、互いに異なる2つの前記スロットの内部にそれぞれ配置される2つの配置部と、前記2つの配置部からそれぞれ片持ち状に延びる2つの第1コイルエンドと、前記2つの配置部における前記第1コイルエンドとは反対側の部分同士を連結する第2コイルエンドと、を有するものを用い、
前記規制工程では、前記第1コイルエンドに対して、前記規制治具を前記周方向における両側から接触させる、
電機子の製造方法。
【請求項3】
前記コイル配置工程では、前記スロットの幅よりも小さい幅を有する前記配置部を前記スロットの内部に配置し、
前記押圧工程では、前記押圧治具により前記配置部を押圧して塑性変形させることに伴って、前記第1コイルエンドのうち前記配置部に隣接する部分に、前記配置部から離れるほど断面積が徐々に小さくなる徐変部を形成し、
前記規制工程では、前記第1コイルエンドのうち前記徐変部が形成される予定の部分よりも前記配置部から離れた部分に対して、前記規制治具を前記周方向における両側から接触させる、
請求項2に記載の電機子の製造方法。
【請求項4】
複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、前記鉄心の軸線方向における端面に設けられたカフサと、を備え、前記コイルは、前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを有するとともに前記鉄心の径方向に並んで配置された複数のセグメントコイルによって構成されている電機子の製造方法であって、
前記鉄心の前記端面に前記カフサを配置するカフサ配置工程と、
前記カフサ配置工程の後または前に、前記セグメントコイルを前記スロットの内部に配置するコイル配置工程と、
前記スロットの内部に配置された前記セグメントコイルの前記コイルエンドに対して、前記カフサを前記鉄心の周方向における両側から接触させることで、前記スロットの内部での前記セグメントコイルの前記径方向における移動を許容する一方、前記周方向における移動を規制する規制工程と、
前記カフサが接触した状態の前記セグメントコイルを、押圧治具によって前記径方向において前記スロットの内面に向けて押圧することで、前記セグメントコイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させる押圧工程と、を備え、
前記カフサは、
前記コイルエンドに対して前記周方向における両側から接触する2つの突出部と、
前記2つの突出部よりも前記鉄心の軸線方向における前記スロット側に設けられ、前記周方向において互いに対向する2つの逃がし部と、を含み、
前記周方向における前記2つの突出部同士の距離は、前記スロットの幅よりも小さく、
前記周方向における前記2つの逃がし部同士の距離は、前記周方向における前記2つの突出部同士の距離よりも大きく、
前記コイル配置工程では、前記セグメントコイルとして、互いに異なる2つの前記スロットの内部にそれぞれ配置される2つの配置部と、前記2つの配置部からそれぞれ片持ち状に延びる2つの第1コイルエンドと、前記2つの配置部における前記第1コイルエンドとは反対側の部分同士を連結する第2コイルエンドと、を有するものを用い、
前記規制工程では、前記第1コイルエンドに対して、前記カフサを前記周方向における両側から接触させる、
電機子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子の製造装置及び電機子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータなどの電機子は、複数のスロットを有する鉄心と、スロットの内部に配置されたコイルとを備えている。
こうしたコイルとしては、複数のセグメントコイルが互いに接合することにより構成されたものが知られている。セグメントコイルは、平行に延びる2つの直線部と、2つの直線部の端部同士を連結する連結部とを有している。
【0003】
特許文献1には、異なる2つのセグメントコイルの直線部同士を接合するステータの製造方法が開示されている。同方法では、まず、複数のセグメントコイルがスロットの内部に挿入される。これにより、各セグメントコイルにおける2つの直線部の端部が、軸線方向においてスロットから突出する。次に、複数の直線部の端部に係合する円環状の捻り治具によって、当該端部のそれぞれが鉄心の周方向に捻り成形される。このとき、各セグメントコイルにおける一方の直線部は、周方向の一方に捻られるとともに、各セグメントコイルにおける他方の直線部は、周方向の他方に捻られる。これにより、セグメントコイルにおける直線部の端部と、当該セグメントコイルとは別のセグメントコイルにおける直線部の端部とが、径方向において隣接する。そして、これらの端部同士が溶接によって接合されることによりコイルが製造される。
【0004】
一方、特許文献2には、スロットの内部において鉄心の径方向に並んで配置された複数のセグメントコイルが治具により押圧されて塑性変形するステータの製造方法が開示されている。スロットの内部においてセグメントコイルが塑性変形することにより、コイルの占積率が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-131453号公報
【文献】特開2021-87284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載の方法では、スロットの幅よりも小さい幅を有するセグメントコイルがスロットの内部に配置される。このため、塑性変形前の複数のセグメントコイルの位置が、周方向において互いに異なることがある。この場合、塑性変形後の複数のセグメントコイルにおける直線部の位置が周方向においてばらつくおそれがある。その結果、複数の直線部の端部に捻り治具が係合しにくくなることで、セグメントコイルの捻り成形が困難となるおそれがある。このため、塑性変形後の複数のセグメントコイルの周方向における位置のばらつきを抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための電機子の製造装置は、複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備え、前記コイルは、前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを有するとともに前記鉄心の径方向に並んで配置された複数のセグメントコイルによって構成されている電機子の製造装置であって、前記コイルエンドに対して前記鉄心の周方向における両側から接触することで、前記スロットの内部での前記セグメントコイルの前記径方向における移動を許容する一方、前記周方向における移動を規制する規制治具と、前記スロットの内部に配置された前記セグメントコイルを前記径方向において前記スロットの内面に向けて押圧して塑性変形させる押圧治具と、を備える。
【0008】
同構成によれば、スロットの内部に配置されたセグメントコイルのコイルエンドに対して、規制治具が鉄心の周方向における両側から接触する。これにより、セグメントコイルは、スロットの内部での径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制される。これにより、押圧治具によって押圧されて塑性変形した複数のセグメントコイルが、スロットの内部において径方向に整列することとなる。したがって、塑性変形後の複数のセグメントコイルの周方向における位置のばらつきを抑制することができる。
【0009】
上記課題を解決するための電機子の製造方法は、複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、を備え、前記コイルは、前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを有するとともに前記鉄心の径方向に並んで配置された複数のセグメントコイルによって構成されている電機子の製造装置であって、前記セグメントコイルを前記スロットの内部に配置するコイル配置工程と、前記スロットの内部に配置された前記セグメントコイルの前記コイルエンドに対して、規制治具を前記鉄心の周方向における両側から接触させることで、前記スロットの内部での前記セグメントコイルの前記径方向における移動を許容する一方、前記周方向における移動を規制する規制工程と、前記規制治具が接触した状態の前記セグメントコイルを、押圧治具によって前記径方向において前記スロットの内面に向けて押圧することで、前記セグメントコイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させる押圧工程と、を備え、前記コイル配置工程では、前記セグメントコイルとして、互いに異なる2つの前記スロットの内部にそれぞれ配置される2つの配置部と、前記2つの配置部からそれぞれ片持ち状に延びる2つの第1コイルエンドと、前記2つの配置部における前記第1コイルエンドとは反対側の部分同士を連結する第2コイルエンドと、を有するものを用い、前記規制工程では、前記第1コイルエンドに対して、前記規制治具を前記周方向における両側から接触させる。
【0010】
同方法によれば、スロットの内部に配置されたセグメントコイルの第1コイルエンドに対して、規制治具が鉄心の周方向における両側から接触する。これにより、セグメントコイルは、スロットの内部での径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制される。その結果、押圧治具によって押圧されて塑性変形した複数のセグメントコイルが、スロットの内部において径方向に整列することとなる。したがって、塑性変形後の複数のセグメントコイルの周方向における位置のばらつきを抑制することができる。
【0011】
上記課題を解決するための電機子の製造方法は、複数のスロットを有する円筒状の鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、前記鉄心の軸線方向における端面に設けられたカフサと、を備え、前記コイルは、前記鉄心の軸線方向において前記スロットから突出したコイルエンドを有するとともに前記鉄心の径方向に並んで配置された複数のセグメントコイルによって構成されている電機子の製造方法であって、前記鉄心の前記端面に前記カフサを配置するカフサ配置工程と、前記カフサ配置工程の後または前に、前記セグメントコイルを前記スロットの内部に配置するコイル配置工程と、前記スロットの内部に配置された前記セグメントコイルの前記コイルエンドに対して、前記カフサを前記鉄心の周方向における両側から接触させることで、前記スロットの内部での前記セグメントコイルの前記径方向における移動を許容する一方、前記周方向における移動を規制する規制工程と、前記カフサが接触した状態の前記セグメントコイルを、押圧治具によって前記径方向において前記スロットの内面に向けて押圧することで、前記セグメントコイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させる押圧工程と、を備え、前記コイル配置工程では、前記セグメントコイルとして、互いに異なる2つの前記スロットの内部にそれぞれ配置される2つの配置部と、前記2つの配置部からそれぞれ片持ち状に延びる2つの第1コイルエンドと、前記2つの配置部における前記第1コイルエンドとは反対側の部分同士を連結する第2コイルエンドと、を有するものを用い、前記規制工程では、前記第1コイルエンドに対して、前記カフサを前記周方向における両側から接触させる。
【0012】
同方法によれば、スロットの内部に配置されたセグメントコイルの第1コイルエンドに対して、カフサが鉄心の周方向における両側から接触する。これにより、セグメントコイルは、スロットの内部での径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制される。これにより、押圧治具によって押圧されて塑性変形した複数のセグメントコイルが、スロットの内部において径方向に整列することとなる。したがって、塑性変形後の複数のセグメントコイルの周方向における位置のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態におけるステータを示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態におけるステータを示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態におけるステータをステータの内側から視た正面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態におけるセグメントコイルを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態における押圧治具を示す断面斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態における規制治具を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態における規制治具が接触したセグメントコイルが塑性変形する前の状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態における規制治具が接触したセグメントコイルが塑性変形した後の状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態におけるコイル配置工程を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態における規制工程を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態における5つのセグメントコイルの押圧工程が完了した状態を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態における8つのセグメントコイルの押圧工程が完了した状態を示す断面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態におけるステータを示す拡大断面図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態におけるステータをステータの内側から視た正面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態におけるカフサ配置工程を示す平面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態におけるコイル配置工程を示す断面図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態における5つのセグメントコイルの押圧工程が完了した状態を示す断面図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態における8つのセグメントコイルの押圧工程が完了した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図12を参照して、電機子の製造装置及び電機子の製造方法をステータの製造装置及びステータの製造方法として具体化した第1実施形態について説明する。
【0015】
各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については実際と異なる場合がある。
(ステータ10)
図1及び
図2に示すように、ステータ10は、ステータコア20と、コイル30と、複数の絶縁シート50とを備えている。ステータコア20は、円筒状をなしている。コイル30は、ステータコア20に巻回されている。各絶縁シート50は、コイル30の外面を覆っている。ステータコア20は、「鉄心」に相当する。
【0016】
本実施形態のステータ10は、三相同期型の回転電機に用いられるものであり、図示しないロータを取り囲むように設けられている。
以降において、ステータコア20の軸線方向、径方向、及び周方向を単にそれぞれ軸線方向、径方向、及び周方向と称する。
【0017】
(ステータコア20)
ステータコア20は、ヨーク21と、複数のティース22と、複数のスロット23とを有している。ヨーク21は円環状をなしている。複数のティース22は、ヨーク21から径方向の内側に突出するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられている。スロット23は、周方向において隣り合うティース22同士の間に1つずつ形成されている。各スロット23は、径方向の内側及び軸線方向の両側において開口している。本実施形態のステータコア20は、都合48個のスロット23を有している。
【0018】
図1に示すように、ステータコア20は、ヨーク21から径方向の外側に突出した3つの固定部24を有している。3つの固定部24は、周方向に互いに間隔をおいて設けられている。各固定部24には、固定部24を軸線方向に貫通するボルト孔24aが設けられている。ボルト孔24aに挿入された図示しないボルトが図示しないハウジングに締結されることで、ステータコア20が当該ハウジングに対して固定されている。
【0019】
こうしたステータコア20は、例えば、軸線方向において積層された複数の電磁鋼板が互いに接合されることにより構成されている。
(コイル30)
コイル30は、U相、V相、及びW相を構成する3つの相巻線により構成されている。各相巻線は、複数のティース22に跨がって巻回されている。
【0020】
コイル30は、導体と、導体の外周を被覆する絶縁被覆とを有している。導体は、例えばアルミニウム合金などの金属材料により形成されている。各図においては、絶縁被覆の図示が省略されている。
【0021】
図3に示すように、コイル30は、複数の配置部31と、複数の第1コイルエンド32と、複数の第2コイルエンド33とを有している。
配置部31は、スロット23の内部に配置されている。配置部31は、軸線方向において直線状に延びている。スロット23の内部には、8つの配置部31が径方向に並んで設けられている。
【0022】
コイル30の長さ方向に直交する断面形状は、長辺及び短辺を有する長方形状をなしている。配置部31の断面形状における長辺は、スロット23の幅方向に延びており、配置部31の断面形状における短辺は、径方向に延びている。配置部31の長辺は、絶縁シート50の開口幅と同一である。なお、スロット23の幅方向とは、軸線方向と径方向との双方に直交する方向である。
【0023】
第1コイルエンド32は、配置部31から延びている。第1コイルエンド32は、軸線方向の一方においてスロット23から突出するとともに周方向に屈曲している。第1コイルエンド32は、異なる2つのスロット23の内部に配置された2つの配置部31同士を連結している。
【0024】
第1コイルエンド32は、一般部32aと、徐変部32bとを有している。徐変部32bは、配置部31に隣接する部分であって、配置部31と一般部32aとの間に設けられている。
【0025】
一般部32aの幅は、配置部31の幅よりも小さい。
徐変部32bの断面積は、配置部31から離れるほど、すなわち一般部32aに向かうほど徐々に小さくなっている。徐変部32bの幅は、配置部31から離れるほど徐々に小さくなっている。
【0026】
第2コイルエンド33は、配置部31から延びている。第2コイルエンド33は、軸線方向の一方とは反対の他方においてスロット23から突出するとともに周方向に屈曲している。第2コイルエンド33は、異なる2つのスロット23の内部に配置された2つの配置部31同士を連結している。
【0027】
第2コイルエンド33は、一般部33aと、徐変部33bとを有している。一般部33a及び徐変部33bの構成は、第1コイルエンド32の一般部32a及び徐変部32bの構成と同一である。このため、一般部33a及び徐変部33bの構成についての詳細な説明を省略する。
【0028】
(セグメントコイル40)
図2に示すように、上述したコイル30の各相巻線は、複数のセグメントコイル40が互いに接合されることによって構成されている。本実施形態では、1つのスロット23の内部において、8つのセグメントコイル40が径方向に並んで配置される。
【0029】
図4に示すように、セグメントコイル40は、平行に延びる2つの直線部と、2つの直線部の端部同士を連結する連結部とを有している。セグメントコイル40は、U字状をなしている。
【0030】
こうしたセグメントコイル40の2つの直線部は、異なる2つのスロット23のそれぞれに対して、軸線方向の一方から挿入される。その後、スロット23から突出した直線部の一部が周方向の一方または他方に曲げられる。そして、1つのセグメントコイル40の直線部と、当該セグメントコイル40とは別のセグメントコイル40の直線部とが接合される。これにより、各相巻線が構成されている。
【0031】
上記各直線部は、第1コイルエンド32、配置部31、及び第2コイルエンド33の一部を構成している。上記連結部は、第2コイルエンド33の一部を構成している。したがって、セグメントコイル40は、2つの配置部31と、2つの第1コイルエンド32と、1つの第2コイルエンド33とを有している。セグメントコイル40における2つの第1コイルエンド32は、2つの配置部31からそれぞれ片持ち状に延びている。第2コイルエンド33は、2つの配置部31における第1コイルエンド32とは反対側の部分同士を連結している。
【0032】
(絶縁シート50)
図2に示すように、絶縁シート50は、各スロット23の内部に1つずつ配置されている。絶縁シート50は、スロット23の内面とコイル30の外面との間に配置されている。絶縁シート50は、スロット23の内面全体を覆っている。絶縁シート50は、例えば、スロット23と同様に、径方向の内側及び軸線方向の両側において開口している。軸線方向における絶縁シート50の両端は、スロット23から突出している。
【0033】
(ステータの製造装置60)
図5及び
図6に示すように、ステータの製造装置60(以下、製造装置60と称する)は、押圧治具70と、規制治具80とを備えている。押圧治具70は、スロット23の内部に配置されたセグメントコイル40を押圧して塑性変形させるものである。規制治具80は、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33に対して、周方向の両側から接触することで、スロット23の内部でのセグメントコイル40の径方向における移動を許容する一方、周方向における移動を規制するものである。
【0034】
(押圧治具70)
図5に示すように、押圧治具70は、例えば、軸線方向に延びる柱状をなしている。押圧治具70の長さは、軸線方向におけるセグメントコイル40の長さよりも大きい。
【0035】
押圧治具70の材料としては、例えば、鉄系材料などの金属材料が挙げられる。
押圧治具70は、配置部31に対向する対向部71を有している。対向部71の幅は、押圧治具70におけるその他の部分の幅よりも大きい。対向部71の幅は、絶縁シート50の開口幅と略同一である。軸線方向における対向部71の長さは、軸線方向におけるスロット23の長さよりも大きく、例えば、軸線方向における絶縁シート50の長さと略同一である。
【0036】
対向部71は、セグメントコイル40の外面を押圧する押圧面70aを有している。押圧面70aは、径方向に直交する平坦面である。
(規制治具80)
図6及び
図7に示すように、規制治具80は、軸線方向における各ティース22の両端面上に配置される複数の規制部材81を有している。各規制部材81は、径方向に延びる柱状をなしている。各規制部材81の長さは、スロット23の径方向における長さよりも大きい。
【0037】
規制部材81の材料としては、例えば、鉄系材料などの金属材料が挙げられる。
図7に示すように、規制部材81は、第1コイルエンド32に接触する規制部材81Aと、第2コイルエンド33に接触する規制部材81Bとを含んでいる。
【0038】
規制部材81Aは、1つのスロット23から突出する複数の第1コイルエンド32の周方向における両側に1つずつ配置される。同様に、規制部材81Bは、1つのスロット23から突出する複数の第2コイルエンド33の周方向における両側に1つずつ配置される。
【0039】
以降において、1つのスロット23から突出する複数の第1コイルエンド32を挟んで周方向において互いに反対側に位置する2つの規制部材81Aを単に「2つの規制部材81A」と称する。また、1つのスロット23から突出する複数の第2コイルエンド33を挟んで周方向において互いに反対側に位置する2つの規制部材81Bを単に「2つの規制部材81B」と称する。
【0040】
規制部材81Aの構成と規制部材81Bの構成とは同一である。このため、以降では、規制部材81Aの構成について説明することで、規制部材81Bの構成についての説明を省略する場合がある。
【0041】
各規制部材81Aは、径方向において進退可能に設けられている。各規制部材81Aは、例えば、径方向の外側から内側に向かって移動することでティース22の軸線方向における一端面上に配置される。
【0042】
2つの規制部材81Aは、第1コイルエンド32に対して周方向における両側から接触可能に構成されている。
2つの規制部材81Aは、各スロット23に対応して設けられている。本実施形態では、規制部材81Aが、各ティース22の軸線方向における一端面上に1つずつ配置されている。また、規制部材81Bが、各ティース22の上記一端面とは反対側の他端面上に1つずつ配置されている。なお、各図においては、複数の規制部材81Aのうち2つの規制部材81Aのみが図示されており、複数の規制部材81Bのうち2つの規制部材81Bのみが図示されている。
【0043】
図8に示すように、規制部材81Aは、一般部32aに向かって突出するとともに接触する突出部82と、徐変部32bを逃がす逃がし部83とを有している。
周方向において互いに対向する2つの突出部82は、径方向において平行に延びている。上記2つの突出部82の間隔は、セグメントコイル40の一般部32a,33aの幅と略同一である。したがって、セグメントコイル40が2つの規制部材81Aの間に配置されることで、第1コイルエンド32の一般部32aには、当該2つの規制部材81Aの突出部82が周方向における両側から接触する。これにより、スロット23の内部にてセグメントコイル40の径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制される。
【0044】
2つの規制部材81Aにおける逃がし部83によって、徐変部32bと規制部材81Aとの干渉が回避される。
(ステータの製造方法)
ステータの製造方法は、絶縁シート配置工程、コイル配置工程、規制工程、押圧工程、及び接合工程を備えている。本実施形態では、絶縁シート配置工程、コイル配置工程、規制工程、押圧工程、及び接合工程がこの順で行われる。ただし、コイル配置工程、規制工程、及び押圧工程は、この順で複数回繰り返し行われる。
【0045】
(絶縁シート配置工程)
図9に示すように、絶縁シート配置工程では、スロット23の内部に絶縁シート50が配置される。このとき、絶縁シート50は、径方向の内側からスロット23の内部に挿入されてもよいし、軸線方向からスロット23の内部に挿入されてもよい。
【0046】
(コイル配置工程)
コイル配置工程では、スロット23の内部に複数のセグメントコイル40が配置される。本実施形態では、まず、1つのスロット23の内部に配置される都合8つのセグメントコイル40のうち、5つのセグメントコイル40がスロット23の内部において径方向に並んで配置される。
【0047】
コイル配置工程では、スロット23の幅よりも小さい幅、より詳しくは、絶縁シート50の開口幅よりも小さい幅を有する配置部31がスロット23の内部に配置される。したがって、配置部31と絶縁シート50との間には、スロット23の幅方向において隙間が設けられている。
【0048】
(規制工程)
図10に示すように、規制工程では、5つのセグメントコイル40の第1コイルエンド32に対して、規制治具80の規制部材81Aが周方向における両側から接触する。図示は省略するが、このとき、5つのセグメントコイル40の第2コイルエンド33に対して、規制部材81Bが周方向における両側から接触する。これらにより、スロット23の内部にてセグメントコイル40の径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制される。
【0049】
(押圧工程)
図11に示すように、押圧工程では、規制治具80が接触した状態のセグメントコイル40の配置部31が、押圧治具70によって径方向の外側におけるスロット23の内面に向けて押圧される。これにより、配置部31がスロット23の内面に沿って塑性変形する。このため、上述した配置部31と絶縁シート50との隙間が無くなる。したがって、配置部31の幅が絶縁シート50の開口幅と同一になる。
【0050】
図8に示すように、押圧工程では、配置部31の塑性変形に伴って、配置部31の軸線方向における両側に徐変部32b,33bがそれぞれ形成される。
図12に示すように、次に、残り2つのセグメントコイル40において、コイル配置工程、規制工程、及び押圧工程がこの順で行われた後に、残り1つのセグメントコイル40において、コイル配置工程、規制工程、及び押圧工程がこの順で行われる。なお、残り3つのセグメントコイル40において、コイル配置工程、規制工程、及び押圧工程がこの順で行われてもよい。
【0051】
(接合工程)
図示は省略するが、接合工程では、各第1コイルエンド32に係合する円環状の捻り治具によって、各セグメントコイル40における一方の第1コイルエンド32が周方向の一方に捻られるとともに、他方の第1コイルエンド32が周方向の他方に捻られる。これにより、セグメントコイル40における第1コイルエンド32の端部と、当該セグメントコイル40とは別のセグメントコイル40における第1コイルエンド32の端部とが、径方向において隣接する。そして、これらの端部同士が溶接によって接合されることによりコイル30が製造される。
【0052】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)製造装置60は、規制治具80と、押圧治具70とを備える。規制治具80は、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33に対して周方向における両側から接触することで、セグメントコイル40の径方向における移動を許容する一方、周方向における移動を規制するものである。押圧治具70は、スロット23の内部に配置されたセグメントコイル40を径方向においてスロット23の内面に向けて押圧して塑性変形させるものである。
【0053】
こうした構成によれば、スロット23の内部に配置されたセグメントコイル40の第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33に対して、規制治具80が周方向における両側から接触する。これにより、セグメントコイル40は、スロット23の内部での径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制される。これにより、押圧治具70によって押圧されて塑性変形した複数のセグメントコイル40が、スロット23の内部において径方向に整列することとなる。したがって、塑性変形後の複数のセグメントコイル40の周方向における位置のばらつきを抑制することができる。
【0054】
(1-2)ステータの製造方法は、コイル配置工程と、規制工程と、押圧工程とを備える。コイル配置工程では、セグメントコイル40をスロット23の内部に配置する。規制工程では、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33に対して、規制治具80を周方向における両側から接触させる。押圧工程では、規制治具80が接触した状態のセグメントコイル40を、押圧治具70によって径方向においてスロット23の内面に向けて押圧することで、セグメントコイル40をスロット23の内面に沿って塑性変形させる。
【0055】
こうした方法によれば、スロット23の内部に配置されたセグメントコイル40の第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33に対して、規制治具80が周方向における両側から接触する。これにより、セグメントコイル40は、スロット23の内部での径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制される。その結果、押圧治具70によって押圧されて塑性変形した複数のセグメントコイル40が、スロット23の内部において径方向に整列することとなる。したがって、塑性変形後の複数のセグメントコイル40の周方向における位置のばらつきを抑制することができる。
【0056】
(1-3)コイル配置工程では、スロット23の幅よりも小さい幅を有する配置部31をスロット23の内部に配置する。押圧工程では、押圧治具70により配置部31を押圧して塑性変形させることに伴って、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33のうち配置部31に隣接する部分に徐変部32b,33bをそれぞれ形成する。規制工程では、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33のうち徐変部32b,33bが形成される予定の部分よりも配置部31から離れた部分に対して、規制治具80を周方向における両側から接触させる。
【0057】
スロット23の幅よりも小さい幅を有する配置部31が押圧治具70によって押圧されて塑性変形した場合、配置部31の幅が大きくなる。こうした配置部31の塑性変形に伴って、配置部31と、第1コイルエンド32のうち断面積が変化しない部分である一般部32aとの間には、徐変部32bが配置部31に隣接して形成される。同様にして、第2コイルエンド33には、徐変部33bが形成される。このため、規制工程において、規制治具80が、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33のうち配置部31に隣接する部分に接触した場合、当該部分は断面積が変化しにくくなる。このため、徐変部32b,33bに相当する部分が、配置部31のうち軸線方向における端部に形成されることになる。その結果、配置部31の断面積が部分的に減少するおそれがある。
【0058】
この点、上記方法によれば、規制工程において、第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33のうち上記予定の部分よりも配置部31から離れた部分に規制治具80が接触する。これにより、上記予定の部分に規制治具80が接触することが回避される。したがって、上述した不都合が生じることを抑制できる。
【0059】
<第2実施形態>
以下、
図13~
図18を参照して、電機子の製造方法をステータの製造方法として具体化した第2実施形態について説明する。
【0060】
第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、重複した説明を省略する。
各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については実際と異なる場合がある。
【0061】
図13及び
図14に示すように、ステータ110は、ステータコア20と、2つのカフサ90と、コイル30と、複数の絶縁シート50とを備えている。
(カフサ90)
図14に示すように、カフサ90は、ステータコア20の軸線方向の両端面に1つずつ設けられている。以降において、ステータコア20における第1コイルエンド32が突出する側の端面に設けられるカフサ90をカフサ90Aと称することがある。また、ステータコア20における第2コイルエンド33が突出する側の端面に設けられるカフサ90をカフサ90Bと称することがある。
【0062】
カフサ90Aの構成とカフサ90Bの構成とは同一である。このため、以降では、カフサ90Aの構成について説明することで、カフサ90Bの構成についての説明を省略する場合がある。
【0063】
カフサ90Aは、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。
図13に示すように、カフサ90Aは、環状部91と、複数の延在部92とを有している。環状部91は、円環状をなしている。複数の延在部92は、環状部91から径方向の内側に延在するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられている。
図13では、便宜上、カフサ90Aの一部が破断されて図示されている。
【0064】
環状部91は、ヨーク21の軸線方向における一端面に接触している。環状部91の外径は、ヨーク21の外径よりも小さい。
各延在部92は、ティース22の軸線方向における一端面に接触している。カフサ90Aには、ティース22と同数の延在部92が設けられている。各延在部92の先端面は、ティース22の先端面と面一である。各延在部92は、周方向の両側において第1コイルエンド32に接触している。
【0065】
図14に示すように、延在部92は、一般部32aに向かって突出するとともに接触する突出部93と、徐変部32bを逃がす逃がし部94とを有している。延在部92には、突出部93と逃がし部94とが周方向の両側に1つずつ設けられている。
【0066】
周方向において隣り合う2つの延在部92から突出するとともに互いに対向する2つの突出部93は、一般部32aに対して周方向における両側から接触している。これにより、セグメントコイル40の径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制されている。
【0067】
逃がし部94によって、徐変部32bと延在部92との干渉が回避されている。
(ステータの製造方法)
ステータの製造方法は、カフサ配置工程、絶縁シート配置工程、コイル配置工程、規制工程、押圧工程、及び接合工程を備えている。本実施形態では、カフサ配置工程、絶縁シート配置工程、コイル配置工程、押圧工程、及び接合工程がこの順で行われる。規制工程は、コイル配置工程と同時に行われる。ただし、コイル配置工程及び押圧工程は、この順で複数回繰り返し行われる。
【0068】
本実施形態における絶縁シート配置工程及び接合工程は、第1実施形態における絶縁シート配置工程及び接合工程と同一である。このため、以降では、絶縁シート配置工程及び接合工程の詳細な説明を省略する。
【0069】
(カフサ配置工程)
図15に示すように、カフサ配置工程では、ステータコア20の軸線方向における一端面上にカフサ90Aが配置される。また、図示は省略するが、ステータコア20の上記一端面とは反対側の他端面上にカフサ90Bが配置される。
【0070】
(コイル配置工程)
図16に示すように、コイル配置工程では、スロット23の内部に複数のセグメントコイル40が配置される。本実施形態では、まず、1つのスロット23の内部に配置される都合8つのセグメントコイル40のうち、5つのセグメントコイル40がスロット23の内部において径方向に並んで配置される。
【0071】
コイル配置工程では、スロット23の幅よりも小さい幅、より詳しくは、絶縁シート50の開口幅よりも小さい幅を有する配置部31がスロット23の内部に配置される(
図9参照)。したがって、配置部31と絶縁シート50との間には、スロット23の幅方向において隙間が設けられている。
【0072】
(規制工程)
規制工程では、セグメントコイル40がスロット23の内部に配置されることに伴って、第1コイルエンド32の周方向における両側にカフサ90Aが接触する。図示は省略するが、同様に、第2コイルエンド33の周方向における両側にカフサ90Bが接触する。これらにより、スロット23の内部にてセグメントコイル40の径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制される。
【0073】
以上のように、規制工程では、スロット23の内部へのセグメントコイル40の配置と同時に、当該セグメントコイル40に対してカフサ90が接触する。したがって、規制工程は、コイル配置工程と同時に行われる。
【0074】
(押圧工程)
図17に示すように、押圧工程では、カフサ90が接触した状態のセグメントコイル40が押圧治具70によって径方向の外側におけるスロット23の内面に向けて押圧される。これにより、各セグメントコイル40がスロット23の内面に沿って塑性変形する。このため、上述した配置部31と絶縁シート50との隙間が無くなる。したがって、配置部31の幅が絶縁シート50の開口幅と同一になる。
【0075】
図14に示すように、押圧工程では、配置部31の塑性変形に伴って、配置部31の軸線方向における両側に徐変部32b,33bがそれぞれ形成される。
図18に示すように、次に、残り2つのセグメントコイル40において、コイル配置工程及び規制工程と、押圧工程とがこの順で行われた後に、残り1つのセグメントコイル40において、コイル配置工程及び規制工程と、押圧工程とがこの順で行われる。なお、残り3つのセグメントコイル40において、コイル配置工程及び規制工程と、押圧工程とがこの順で行われてもよい。
【0076】
図示は省略するが、接合工程では、カフサ90Aの延在部92を支点として第1コイルエンド32が周方向の一方または他方に捻られる。
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0077】
(2-1)ステータの製造方法は、カフサ配置工程と、コイル配置工程と、規制工程と、押圧工程とを備える。カフサ配置工程では、ステータコア20の軸線方向における両端面にカフサ90を配置する。コイル配置工程では、セグメントコイル40をスロット23の内部に配置する。規制工程では、セグメントコイル40の第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33に対して、カフサ90を周方向における両側から接触させる。押圧工程では、カフサ90が接触した状態のセグメントコイル40を、押圧治具70によって径方向においてスロット23の内面に向けて押圧することで、セグメントコイル40をスロット23の内面に沿って塑性変形させる。
【0078】
こうした方法によれば、スロット23の内部に配置されたセグメントコイル40の第1コイルエンド32及び第2コイルエンド33に対して、カフサ90が周方向における両側から接触する。これにより、セグメントコイル40は、スロット23の内部での径方向における移動が許容される一方、周方向における移動が規制される。これにより、押圧治具70によって押圧されて塑性変形した複数のセグメントコイル40が、スロット23の内部において径方向に整列することとなる。したがって、塑性変形後の複数のセグメントコイルの周方向における位置のばらつきを抑制することができる。
【0079】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0080】
・第1実施形態において、規制治具80は、規制部材81Aのみを有するものであってもよい。すなわち、規制工程において、規制治具80は、第1コイルエンド32には接触する一方、第2コイルエンド33には接触しなくてもよい。
【0081】
・第1実施形態において、規制工程では、徐変部32b,33bが形成される予定の部分に対して規制治具80が接触してもよい。
・第1実施形態において、規制部材81Aが、各ティース22の軸線方向における一端面上に2つずつ配置されていてもよい。また、規制部材81Bが、各ティース22の他端面上に2つずつ配置されていてもよい。
【0082】
・第2実施形態において、カフサ配置工程のうちカフサ90Aを配置する工程については、コイル配置工程の後に行われてもよい。この場合、第1コイルエンド32については、上記カフサ90Aを配置する工程と同時に規制工程が行われる。
【0083】
・第2実施形態において、カフサ配置工程は、絶縁シート配置工程の後であって、コイル配置工程の前に行われてもよい。
・各実施形態におけるコイル配置工程において、スロット23の内部に一度に配置されるセグメントコイル40の数は、適宜変更されてもよい。
【0084】
・各実施形態において、スロット23の内部に配置される配置部31の数は、適宜変更されてもよい。
・各実施形態において、ステータ10から絶縁シート50が省略されてもよい。この場合、絶縁シート配置工程が省略される。また、塑性変形後の配置部31の幅は、スロット23の幅と同一となる。
【0085】
・コイル30の導体の材料は、銅合金などのアルミニウム合金以外の金属材料であってもよい。
・各実施形態におけるコイル30は、複数のセグメントコイル40が屈曲及び接合されることによって構成されるものであったが、コイル30は、導体及び絶縁被覆を有する導線が予め環状に形成された巻線により構成されていてもよい。
【0086】
・第1実施形態では、電機子の製造装置の一例として回転電機のステータの製造装置を例示したが、同様の構成を回転電機のロータの製造装置に対しても適用することも可能である。また、各実施形態では、電機子の製造方法の一例として回転電機のステータの製造方法を例示したが、同様の方法を回転電機のロータの製造方法に対して適用することも可能である。
【符号の説明】
【0087】
10,110…ステータ
20…ステータコア
21…ヨーク
22…ティース
23…スロット
24…固定部
24a…ボルト孔
30…コイル
31…配置部
32…第1コイルエンド
32a…一般部
32b…徐変部
33…第2コイルエンド
33a…一般部
33b…徐変部
40…セグメントコイル
50…絶縁シート
60…製造装置
70…押圧治具
70a…押圧面
71…対向部
80…規制治具
81,81A,81B…規制部材
82…突出部
83…逃がし部
90,90A,90B…カフサ
91…環状部
92…延在部
93…突出部
94…逃がし部