IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
A01C11/02 303Z
A01C11/02 303C
A01C11/02 301E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021124027
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019366
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】周防 僚太
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6319206(JP,B2)
【文献】特開2018-33(JP,A)
【文献】特開2019-24413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付け具(131)を間欠的に昇降させるための駆動力の伝達を制御する植付け具昇降クラッチ(200)と、
前記植付け具昇降クラッチ(200)をオンオフする回動アーム(300)と、
前記回動アーム(300)の動きを規制することができるスライドプレート(400)と、
前記スライドプレート(400)を間欠的にスライドさせるソレノイド装置(500)と、
前記スライドプレート(400)が貫通する壁部(601)を有するステー部材(600)と、
を備え、
前記スライドプレート(400)と、前記ソレノイド装置(500)のソレノイドプランジャー(510)と、は、連結ピン(420)および連結ピン挿入孔(401)を利用して連結されており、
前記連結ピン挿入孔(401)には、前記スライドプレート(400)のスライド方向と直交する方向における前記連結ピン(420)の遊びがあることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記スライドプレート(400)には、車体(101)の側に設けられたスライドピン(430)が挿入されるスライドピン挿入スリット(402)が設けられており、
前記スライドピン挿入スリット(402)は、前記ステー部材(600)を基準として前記ソレノイド装置(500)の反対側にあり、
前記スライドプレート(400)が回動アーム動き規制位置にあるとき、前記スライドピン挿入スリット(402)には前記スライドピン(430)の遊びがあることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記スライドプレート(400)が前記回動アーム動き規制位置にあるときの前記スライドピン(430)の前記遊びの幅は、前記スライドプレート(400)が回動アーム動き非規制位置にあるときの前記スライドピン(430)の遊びの幅と比較して、大きいことを特徴とする請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
前記スライドプレート(400)には、前記回動アーム(300)が入込むスライドプレート切欠き(403)が設けられており、
前記スライドプレート切欠き(403)は、前記スライドプレート(400)の一方の側縁部から形成されており、
前記スライドプレート(400)の他方の側縁部は、前記スライドプレート切欠き(403)の位置で膨らんでいることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項5】
前記ソレノイド装置(500)の取付け位置を決める箱型部材(700)を備え、
前記箱型部材(700)は、前記ステー部材(600)の前記壁部(601)と、前記壁部(601)に対向する、前記ソレノイド装置(500)のソレノイド装置本体部(520)の壁面(521)と、の間へ嵌込まれており、
前記スライドプレート(400)および前記ソレノイドプランジャー(510)は、前記箱型部材(700)を貫通することを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項6】
前記スライドプレート(400)は、フランジ部(404)を有し、
前記フランジ部(404)は、前記ステー部材(600)を基準として前記ソレノイド装置(500)の側にあり、
前記スライドプレート(400)が前記回動アーム(300)の動きを規制するように前記スライドプレート(400)を付勢するスライドプレート付勢スプリング(410)が、前記フランジ部(404)と、前記ソレノイド装置本体部(520)の前記壁面(521)と、の間へ嵌込まれており、
前記箱型部材(700)には、前記壁面(521)へ当接する前記スライドプレート付勢スプリング(410)の端部が差込まれるスライドプレート付勢スプリング差込み孔(701)が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の移植機。
【請求項7】
前記箱型部材(700)は、前記ソレノイド装置(500)の前記取付け位置を調節する、単数また複数の抜差し可能なシムプレート(710)を有することを特徴とする請求項5に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜苗移植機などのような移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
植付け具を間欠的に昇降させるための駆動力の伝達を制御する植付け具昇降クラッチを有する野菜苗移植機などのような移植機が、知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6319206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、植付け具を間欠的に昇降させるための機構の耐久性を向上することが重要であると考えている。
【0005】
しかしながら、上述された従来の野菜苗移植機などのような移植機については、植付け具を間欠的に昇降させるための機構の耐久性は必ずしも十分でない。
【0006】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、植付け具を間欠的に昇降させるための機構の耐久性を向上することができる移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、植付け具(131)を間欠的に昇降させるための駆動力の伝達を制御する植付け具昇降クラッチ(200)と、
前記植付け具昇降クラッチ(200)をオンオフする回動アーム(300)と、
前記回動アーム(300)の動きを規制することができるスライドプレート(400)と、
前記スライドプレート(400)を間欠的にスライドさせるソレノイド装置(500)と、
前記スライドプレート(400)が貫通する壁部(601)を有するステー部材(600)と、
を備え、
前記スライドプレート(400)と、前記ソレノイド装置(500)のソレノイドプランジャー(510)と、は、連結ピン(420)および連結ピン挿入孔(401)を利用して連結されており、
前記連結ピン挿入孔(401)には、前記スライドプレート(400)のスライド方向と直交する方向における前記連結ピン(420)の遊びがあることを特徴とする移植機である。
【0008】
第2の本発明は、前記スライドプレート(400)には、車体(101)の側に設けられたスライドピン(430)が挿入されるスライドピン挿入スリット(402)が設けられており、
前記スライドピン挿入スリット(402)は、前記ステー部材(600)を基準として前記ソレノイド装置(500)の反対側にあり、
前記スライドプレート(400)が回動アーム動き規制位置にあるとき、前記スライドピン挿入スリット(402)には前記スライドピン(430)の遊びがあることを特徴とする第1の本発明の移植機である。
【0009】
第3の本発明は、前記スライドプレート(400)が前記回動アーム動き規制位置にあるときの前記スライドピン(430)の前記遊びの幅は、前記スライドプレート(400)が回動アーム動き非規制位置にあるときの前記スライドピン(430)の遊びの幅と比較して、大きいことを特徴とする第2の本発明の移植機である。
【0010】
第4の本発明は、前記スライドプレート(400)には、前記回動アーム(300)が入込むスライドプレート切欠き(403)が設けられており、
前記スライドプレート切欠き(403)は、前記スライドプレート(400)の一方の側縁部から形成されており、
前記スライドプレート(400)の他方の側縁部は、前記スライドプレート切欠き(403)の位置で膨らんでいることを特徴とする第1の本発明の移植機である。
【0011】
第5の本発明は、前記ソレノイド装置(500)の取付け位置を決める箱型部材(700)を備え、
前記箱型部材(700)は、前記ステー部材(600)の前記壁部(601)と、前記壁部(601)に対向する、前記ソレノイド装置(500)のソレノイド装置本体部(520)の壁面(521)と、の間へ嵌込まれており、
前記スライドプレート(400)および前記ソレノイドプランジャー(510)は、前記箱型部材(700)を貫通することを特徴とする第1の本発明の移植機である。
【0012】
第6の本発明は、前記スライドプレート(400)は、フランジ部(404)を有し、
前記フランジ部(404)は、前記ステー部材(600)を基準として前記ソレノイド装置(500)の側にあり、
前記スライドプレート(400)が前記回動アーム(300)の動きを規制するように前記スライドプレート(400)を付勢するスライドプレート付勢スプリング(410)が、前記フランジ部(404)と、前記ソレノイド装置本体部(520)の前記壁面(521)と、の間へ嵌込まれており、
前記箱型部材(700)には、前記壁面(521)へ当接する前記スライドプレート付勢スプリング(410)の端部が差込まれるスライドプレート付勢スプリング差込み孔(701)が設けられていることを特徴とする第5の本発明の移植機である。
【0013】
第7の本発明は、前記箱型部材(700)は、前記ソレノイド装置(500)の前記取付け位置を調節する、単数また複数の抜差し可能なシムプレート(710)を有することを特徴とする第5の本発明の移植機である。
【発明の効果】
【0014】
第1の本発明により、植付け具(131)を間欠的に昇降させるための機構の耐久性を向上することが可能である。
【0015】
第2の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、植付け具(131)を間欠的に昇降させる正確性を向上することが可能である。
【0016】
第3の本発明により、第2の本発明の効果に加えて、植付け具(131)を間欠的に昇降させるための機構の耐久性をさらに向上することが可能である。
【0017】
第4の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、植付け具(131)を間欠的に昇降させるための機構の耐久性をさらに向上することが可能である。
【0018】
第5の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、ソレノイド装置(500)の取付け位置を決める正確性を向上することが可能である。
【0019】
第6の本発明により、第5の本発明の効果に加えて、植付け具(131)を間欠的に昇降させる正確性を向上することが可能である。
【0020】
第7の本発明により、第5の本発明の効果に加えて、植付け具(131)を間欠的に昇降させる正確性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明における実施の形態の移植機の左側面図
図2】本発明における実施の形態の移植機の植付け具昇降クラッチおよび回動アーム復帰カム機構近傍の部分右側面図
図3】本発明における実施の形態の移植機のスライドプレートおよびソレノイド装置近傍の部分斜視図
図4】本発明における実施の形態の移植機のスライドプレートおよびソレノイド装置近傍の部分背面図
図5】本発明における実施の形態の移植機の連結ピン挿入孔近傍の部分拡大背面図
図6】本発明における実施の形態の移植機の箱型部材近傍の部分斜視図(その一)
図7】本発明における実施の形態の移植機の箱型部材近傍の部分斜視図(その二)
図8】本発明における変形例の実施の形態の移植機のスライドプレート付勢スプリング近傍の部分斜視図
図9】本発明における実施の形態の移植機のシムプレート近傍の部分斜視図
図10】本発明における実施の形態の移植機のシムプレートの部分斜視図
図11】本発明における実施の形態の移植機の回動アームおよびスライドプレート近傍の部分斜視図
図12】本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ホース近傍の部分斜視図(その一)
図13】本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ホース近傍の部分斜視図(その二)
図14】本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ホース近傍の部分斜視図(その三)
図15】本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ポンプシリンダー近傍の部分斜視図
図16】本発明における変形例の実施の形態の移植機の嵌込み式潅水バルブ近傍の部分斜視図(その一)
図17】本発明における変形例の実施の形態の移植機の嵌込み式潅水バルブ近傍の部分斜視図(その二)
図18】本発明における変形例の実施の形態の移植機の嵌込み式潅水バルブ近傍の部分斜視図(その三)
図19】本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ホースジョイント部品近傍の部分斜視図
図20】(a)本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水スプール部材近傍の部分斜視図(その一)、(b)本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水スプール部材近傍の部分斜視図(その二)
図21】本発明における変形例の実施の形態の移植機のハンドル近傍の部分斜視図(その一)
図22】本発明における変形例の実施の形態の移植機のハンドル近傍の部分斜視図(その二)
図23】本発明における変形例の実施の形態の移植機のハンドル近傍の部分斜視図(その三)
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
以下同様であるが、いくつかの構成要素は図面において示されていないこともあるし透視的にまたは省略的に示されていることもある。
【0024】
(A)はじめに、図1から4を参照しながら、本実施の形態の移植機の構成および動作について具体的に説明する。
【0025】
ここに、図1は本発明における実施の形態の移植機の左側面図であり、図2は本発明における実施の形態の移植機の植付け具昇降クラッチ200および回動アーム復帰カム機構800近傍の部分右側面図であり、図3は本発明における実施の形態の移植機のスライドプレート400およびソレノイド装置500近傍の部分斜視図であり、図4は本発明における実施の形態の移植機のスライドプレート400およびソレノイド装置500近傍の部分背面図である。
【0026】
本実施の形態の移植機の動作について説明しながら、コントローラーなどにより実現される、本発明に関連した発明の移植機動作制御方法についても説明する。
【0027】
本実施の形態の移植機は、エンジン110から伝達されてくる駆動力を利用して、左右一対の従動前車輪121および駆動後車輪122を有する走行装置120で走行しながら、植付け具131を有する植付け装置130により移植物の植付けを行う、野菜苗移植機などのような移植機である。
【0028】
植付け具昇降クラッチ200は、植付け具131を間欠的に昇降させるための駆動力の伝達を制御するクラッチである。回動アーム300は、植付け具昇降クラッチ200をオンオフするアームである。スライドプレート400は、回動アーム300の動きを規制することができるプレートである。ソレノイド装置500は、スライドプレート400を間欠的にスライドさせる装置である。ステー部材600は、スライドプレート400が貫通する壁部601を有する部材である。
【0029】
回動アーム付勢スプリング310は、回動アーム300が駆動力伝達オン位置へ動くように、回動アーム300を付勢するスプリングである。
【0030】
規制プレートとしてのスライドプレート400などはステー部材600により支持され、回動アーム300はいわゆる規制アームとして機能する。回動アーム付勢スプリング310は回動アーム300を駆動力伝達オン位置へ動かす回動アーム戻しスプリングとして機能するので、回動アーム300は、回動アーム付勢スプリング310の付勢力でスライドプレート400の側へ付勢されることにより通常はスライドプレート400と接触するが、スライドプレート400がソレノイド装置500により移動させられると、通過切溝であるスライドプレート切欠き403に入込む。
【0031】
回動アーム復帰カム機構800は、回動アーム300が駆動力伝達オン位置から駆動力伝達オフ位置へ復帰するように、回動アーム付勢スプリング310の付勢力に抗するカム当接で回動アーム300を間欠的に動かす機構である。
【0032】
株間制御部のスライダーストッパーとして機能するスライドプレート400は、磁性体の部材でなく、ソレノイド作動にともなって磁化されないSUS部材(ステンレス鋼材)などのような非磁性体の部材である。ソレノイド吸引力のロスが発生しにくく、大きなソレノイド吸引荷重の低下は招来されないので、ソレノイド吸引はほとんど全く阻害されず、これにより設定されたタイミングで植付け具昇降クラッチ200を入状態とすることができ、安定的な株間制御が実現される。
【0033】
(B)つぎに、本実施の形態の移植機の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0034】
スライドプレート400と、ソレノイド装置500のソレノイドプランジャー510と、は、連結ピン420および連結ピン挿入孔401を利用して連結されている。
【0035】
ソレノイド摺動部材であるソレノイドプランジャー510とスライドプレート400との接続部の孔である連結ピン挿入孔401は、丸い接続ロールピンが挿入される丸孔でなく、長孔である。
【0036】
図5に示されているように、連結ピン挿入孔401には、スライドプレート400のスライド方向と直交する方向における連結ピン420の遊びがある。
【0037】
ここに、図5は、本発明における実施の形態の移植機の連結ピン挿入孔401近傍の部分拡大背面図である。
【0038】
連結ピン挿入孔401は、スライドプレート400の側の孔として形成されているが、ソレノイドプランジャー510の側の孔として形成されていてもよい。両方の側にこのような孔が形成されている場合においては、連結ピン420の遊びが少なくとも一方の側の孔にあればよい。
【0039】
部品高さ方向の寸法バラつきにともなうソレノイド装置500の高さ変化が吸収され、スライドプレート400が斜めに傾いても、ステー部材600との干渉はほとんど全く発生しない。ソレノイド吸引力のロスが発生しにくく、ソレノイド吸引はほとんど全く阻害されないので、安定的な株間制御が実現される。
【0040】
図4に示されているように、スライドプレート400には、車体101の側に設けられたスライドピン430が挿入されるスライドピン挿入スリット402が設けられている。
【0041】
スライドピン挿入スリット402は、ステー部材600を基準としてソレノイド装置500の反対側にある。
【0042】
スライドプレート400が回動アーム動き規制位置にあるとき、スライドピン挿入スリット402にはスライドピン430の遊びがある。
【0043】
スライドプレート400が回動アーム動き非規制位置にあるときのスライドピン430の遊びの幅は、ゼロでもよい。
【0044】
図4に示されているように、スライドプレート400が回動アーム動き規制位置にあるときのスライドピン430の遊びの幅は、スライドプレート400が回動アーム動き非規制位置にあるときのスライドピン430の遊びの幅と比較して、大きい。
【0045】
スライドプレート400の規制ボルトとして機能するスライドピン430の挿入孔部であるスライドピン挿入スリット402の幅は、スライドプレート400がソレノイド吸引前の待機位置にあるとき、大き目であり、スライドプレート400がソレノイド吸引後の作動位置にあるとき、小さ目である。スライドピン挿入スリット402は、一様な長孔でなく、このようないわゆる斜め長孔であるので、待機位置の上下方向の寸法バラつきが吸収され、スライダーストッパー作動位置決め精度が向上されるので、安定的な株間制御が実現される。
【0046】
また、ソレノイド装置500が通電により作動してソレノイドプランジャー510が引き寄せられる際、あるいはソレノイド装置500への通電が停止してソレノイドプランジャー510が待機位置、即ち通電前の位置に戻される際に、スライドピン430とスライドピン挿入スリット402の間に僅かながら空間が生じるので、スライドピン挿入スリット402がスライドピン430との接触で摩耗して変形することが防止される。
【0047】
図3に示されているように、スライドプレート400には、回動アーム300が入込むスライドプレート切欠き403が設けられている。
【0048】
スライドプレート切欠き403は、スライドプレート400の一方の側縁部から形成されている。
【0049】
スライドプレート400の他方の側縁部は、スライドプレート切欠き403の位置で膨らんでいる。
【0050】
スライダーストッパー逃がし切欠きであるスライドプレート切欠き403の上部形状が強度の向上のために太くされるので、スライドプレート400はソレノイド吸引によりスライドピン430へ当接して停止するが、繰返される衝撃荷重の印加に起因するスライドプレート400の変形は抑制される。
【0051】
スライドピン430のピン尾部にはピン取付けダブルナットの捩込みのための螺子溝が形成されるが、ピン頭部に近いスライドピン430のピン首元には螺子溝が形成されない。螺子溝がスライドプレート400のプレート当接部であるピン首元に形成されないので、十分な大きさのプレート当接部が確保される。繰返される衝撃荷重の印加に起因する螺子山部の潰れおよび削れなどは発生せず、スライドプレート400の回動アーム動き規制位置および回動アーム動き非規制位置がズレないので、安定的な株間制御が実現される。
【0052】
図6および7に示されているように、箱型部材700は、ソレノイド装置500の取付け位置を決める部材である。
【0053】
ここに、図6および7は、本発明における実施の形態の移植機の箱型部材700近傍の部分斜視図(その一および二)である。
【0054】
箱型部材700は、ステー部材600の壁部601と、壁部601に対向する、ソレノイド装置500のソレノイド装置本体部520の壁面521と、の間へ嵌込まれている。
【0055】
スライドプレート400およびソレノイドプランジャー510は、箱型部材700を貫通する。
【0056】
コの字形状のプレートである箱型部材700は、ソレノイドベースとして機能する、ステー部材600とソレノイド装置500との間に配置される。ステー部材600へのソレノイド装置500の組付けが行われるとき、ソレノイド固定角度が90度とほぼ正確に一致する、正規的な直角組付けが容易に実現され、ソレノイド組付け不良はほとんど全く発生しない。
【0057】
ステー部材600の側に位置する、箱型部材700の端部の形状はいわゆる曲残し形状であり、ソレノイド装置本体部520への押当てを利用して、ステー部材600に対するベース横寸法を確認しながら、ソレノイド装置500の組付けを行うことができるので、利便性が向上される。
【0058】
スライドプレート400は、フランジ部404を有する。
【0059】
フランジ部404は、ステー部材600を基準としてソレノイド装置500の側にある。
【0060】
スライドプレート400が回動アーム300の動きを規制するようにスライドプレート400を付勢するスライドプレート付勢スプリング410が、フランジ部404と、ソレノイド装置本体部520の壁面521と、の間へ嵌込まれている。
【0061】
図6および7に示されているように、箱型部材700には、壁面521へ当接するスライドプレート付勢スプリング410の端部が差込まれるスライドプレート付勢スプリング差込み孔701が設けられている。
【0062】
ソレノイドプランジャー戻しスプリングとして機能するスライドプレート付勢スプリング410のスプリング端部がほぼきっちりと収まるように、ソレノイド装置本体部520の壁面521の中央部と対応する箱型部材700の壁部には、スライドプレート付勢スプリング差込み孔701がスプリング端部外径寸法とほぼ一致する孔径寸法で設けられている。スライドプレート付勢スプリング410の位置が正確に決定されるので、スライドプレート付勢スプリング410とソレノイドプランジャー510との間の接触的な干渉はほとんど発生せず、ソレノイド動作が安定する。
【0063】
本発明における変形例の実施の形態の移植機のスライドプレート付勢スプリング410近傍の部分斜視図である図8に示されているように、スライドプレート付勢スプリング410は、スライドプレート付勢スプリング差込み孔701を形成する必要がない、円錐スプリングであってもよい。ソレノイド装置500の側のスプリング外径寸法はソレノイドカバー内径寸法とほぼ一致し、スライドプレート付勢スプリング410の位置がソレノイドカバーにより正確に決定されるので、構成簡素化が促進される。
【0064】
図9および10に示されているように、箱型部材700は、ソレノイド装置500の取付け位置を調節する、単数また複数の抜差し可能なシムプレート710を有する。
【0065】
ここに、図9は本発明における実施の形態の移植機のシムプレート710近傍の部分斜視図であり、図10は本発明における実施の形態の移植機のシムプレート710の部分斜視図である。
【0066】
ステー部材600の壁部601と箱型部材700との間に差込まれるソレノイドプランジャー底付き度合を容易に調節するためのシムプレート710の枚数は、ソレノイド形状などを考慮し、複数であってもよい。シムプレート710は、たとえば、ソレノイド装置本体部520の壁面521と箱型部材700との間に差込まれてもよい。
【0067】
なお、僅かな組み付け公差や、継続的な使用による消耗等の影響で、シムプレート710を設けるとかえってソレノイドプランジャーの底付き度合が不適当なものになる状況も考えられる。このとき、シムプレート710を一つも設けない構成が成立し得る。
【0068】
本発明における実施の形態の移植機の回動アーム300およびスライドプレート400近傍の部分斜視図である図11に示されているように、回動アーム300とスライドプレート400との間の接触干渉に起因する傷つきが線接触などにより低減されるように、スライドプレート400と接触する回動アーム300のアーム先端部の形状は、接触面積が小さい、いわゆるR形状である。回動アーム300と接触するスライドプレート400のプレート先端部の形状が、いわゆるR形状であってもよい。回動アーム300とスライドプレート400との間の摺動抵抗が低減されるので、安定的な株間制御が実現される。
【0069】
(C)つぎに、本実施の形態の移植機の構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0070】
本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ホース1100近傍の部分斜視図(その一)である図12において示されているような態様が、考えられる。
【0071】
ジョイント1110が潅水ホース1100の先端のメッシュフィルター1120に挿入され、ワイヤバンド1121による固定が行われる。メッシュフィルター1120が絶縁チューブなどを介してクレセントクランプのようなクランプで固定されると、メッシュフィルター1120が経年劣化のために絶縁体を貫通してクランプと接触するので、錆びが発生しやすいが、このような態様においては、錆びが発生しにくい。
【0072】
本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ホース1100近傍の部分斜視図(その二)である図13において示されているような態様が、考えられる。
【0073】
潅水ホース1100の先端のメッシュフィルター1120は、捩じりスプリング1122で固定される。このような態様においては、錆びが発生しにくく、固定力が安定する。
【0074】
本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ホース1100近傍の部分斜視図(その三)である図14において示されているような態様が、考えられる。
【0075】
ステンレスのスプリング1123が、潅水ホース1100の先端のメッシュフィルター1120の内部に内蔵される。メッシュフィルター1120のフィルター部に外部荷重(踏みつけなど)が加わったとき、破損が発生しやすいが、このような態様においては、踏付けなどに起因するフィルター部の壊れのような破損は発生しにくい。
【0076】
本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ポンプシリンダー1200近傍の部分斜視図である図15において示されているような態様が、考えられる。
【0077】
潅水ポンプシリンダー1200について、シリンダ回動支点軸部1210とポンプシリンダー部1220を一体化する。SUS材料で構成された軸部と樹脂材料で構成されたシリンダ部とが別部品であると、接続固定用の部品も必要になるが、このような態様においては、コストダウンのみならず組付け容易化も実現される。
【0078】
なお、図15に示すとおり、シリンダ回動支点軸部1210のうち、回動取付ステー1230の外側面に位置する部分を、潅水ホース1100の取付部とする。これにより、灌水ポンプシリンダー1200を回動可能に装着しつつ、潅水ホース1100の着脱も容易である。
【0079】
本発明における変形例の実施の形態の移植機の嵌込み式潅水バルブ2100近傍の部分斜視図(その一から三)である図16から18において示されているような態様が、考えられる。
【0080】
嵌込み式潅水バルブ2100の吐出側嵌込み部の縁部にフォーク状のプレート部を差し込むプレート部材2110が利用される。高圧力の大流量時に嵌込み部が変形して漏れが発生しやすいが、このような態様においては嵌込み部の変形が抑えられ、高圧力でも嵌込み式潅水バルブ2100に水を流すことができる。
【0081】
位置が異なる通し孔を形成するための孔部をプレート部材2110の嵌込みプレートに並べて設けて裏表から嵌込むことで、貫通する通し孔へピン2120を通すことができる。嵌込みプレートを両側からつけることで、抑え力が向上する。また、ピン2120を通すことで外れ防止となり、さらに裏表の嵌込みプレートは同一部品であるので、誤組みなどがなくなる。
【0082】
プレート部材2110に嵌込み式潅水バルブ2100のバルブ外側まで延長される鰭形状のフィン部2111を設け、取付け孔2112を設ける。取付け孔2112へ挿入された螺子およびピンでプレート部材2110を固定することにより、嵌込みプレートが取付けられた潅水バルブセットを車体101の側に固定することができる。
【0083】
本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水ホースジョイント部品3110近傍の部分斜視図である図19において示されているような態様が、考えられる。
【0084】
L字形状の潅水ホースジョイント部品3110を孔の開いたプレート3120に通し、反対側からホース3121およびクリップ3122で固定することで、潅水装置の吐出口とする構成が採用される。螺子付きノズルをプレートにナット固定すると、振動などにより緩みおよび脱落が発生しやすいが、このような態様においては、簡易な市販品であるL字形状のノズル部品である潅水ホースジョイント部品3110をプレート3120に固定することができるので、振動などによる緩みが発生しにくい抜止めを螺子部なしに実現することができる。また、抜止めホース長を延長することで、吐出時の液垂れをホッパー内部まで容易に延長することができる。
【0085】
潅水ホースジョイント部品3110を、固定プレート3131に結束バンド3132で固定する構成が採用される。工具レスの固定を実現することができるのみならず、潅水ホースジョイント部品3110の着脱が容易である。
【0086】
本発明における変形例の実施の形態の移植機の潅水スプール部材4100近傍の部分斜視図(その一および二)である図20(a)および20(b)において示されているような態様が、考えられる。
【0087】
ノズルおよびバルブのための二つの接続ポートRcがあるブロックと、中空穴4110へ連通されるホースが接続可能である潅水スプール部材4100と、が潅水流路の途中に配置され、ノズル側止水のための押し動作、および反ノズル側止水のための引き動作に応じたスプール押引きで流路を切替えることができる構成が採用される。ワンタッチで流路の切替えを行うことができ、潅水したくない場合において容易に止水を行うことができるのみならず、外部からの切替えが目視で理解しやすい。止水を行うとき、ポンプからの水はタンクおよび吸水バルブに戻って水が循環するので、絶えず動作するピストンの疲弊が発生しにくい。
【0088】
抜止め面取り部4120が潅水流路切替えのための潅水スプール部材4100に設けられており、いわゆるイモネジなどのような抜止め部材4130がブロック縁部近傍に配置される。スプール抜止め機能がこのような簡素な構成で実現されるので、切替えのためのインジケーターラベルなどは不要である。
【0089】
本発明における変形例の実施の形態の移植機のハンドル5100近傍の部分斜視図(その一から三)である図21から23において示されているような態様が、考えられる。
【0090】
全自動野菜移植機において、下降ストッパーレバー5110がハンドル5100の左側であって植付け深さ調節レバーの下側である箇所に配置される。下降ストッパーが作用する車体最大リフトが行われるとき、車体101はやや前方へ傾斜するので、下降ストッパーレバー5110が見やすく操作しやすい配置が実現される。ケーブル螺子キャップの調節が行われるときも、工具挿入を容易に行うことができる。
【0091】
下降ストッパーレバー5110は、レバー回動軸となる支点ピン5111に対して余裕のある穴径を有し、スプリング5112を介して固定される。下降ストッパーレバー5110が短くても、支点から捻じることにより下降ストッパーレバー5110を左右方向において動かすことができるので、レバー固定部は左右方向において容易に動く。レバー抜けは、スプリング5112の復元力によりほとんど発生しない。
【0092】
下降ストッパーレバー5110の固定プレート部5120に設けられたレバースリット5121の解除側端部の形状は、いわゆるR形状である。解除側から固定側へのレバー操作のために持上げられるとき、下降ストッパーレバー5110はそのようなR形状のスリット側面に沿ってロック部を避けるように作用するので、レバー固定は容易である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明における移植機は、植付け具を間欠的に昇降させるための機構の耐久性を向上することができ、野菜苗移植機などのような移植機に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0094】
101 車体
110 エンジン
120 走行装置
121 従動前車輪
122 駆動後車輪
130 植付け装置
131 植付け具
200 植付け具昇降クラッチ
300 回動アーム
310 回動アーム付勢スプリング
400 スライドプレート
401 連結ピン挿入孔
402 スライドピン挿入スリット
403 スライドプレート切欠き
404 フランジ部
410 スライドプレート付勢スプリング
420 連結ピン
430 スライドピン
500 ソレノイド装置
510 ソレノイドプランジャー
520 ソレノイド装置本体部
521 壁面
600 ステー部材
601 壁部
700 箱型部材
701 スライドプレート付勢スプリング差込み孔
710 シムプレート
800 回動アーム復帰カム機構
1100 潅水ホース
1110 ジョイント
1120 メッシュフィルター
1121 ワイヤバンド
1122 捩じりスプリング
1123 スプリング
1200 潅水ポンプシリンダー
1210 シリンダ回動支点軸部
1220 ポンプシリンダー部
2100 嵌込み式潅水バルブ
2110 プレート部材
2111 フィン部
2112 取付け孔
2120 ピン
3110 潅水ホースジョイント部品
3120 プレート
3121 ホース
3122 クリップ
3131 固定プレート
3132 結束バンド
Rc 接続ポート
4100 潅水スプール部材
4110 中空穴
4120 抜止め面取り部
4130 抜止め部材
5100 ハンドル
5110 下降ストッパーレバー
5111 支点ピン
5112 スプリング
5120 固定プレート部
5121 レバースリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23