(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20241203BHJP
B60W 30/14 20060101ALI20241203BHJP
B60W 40/076 20120101ALI20241203BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W30/14
B60W40/076
B60T7/12 F
(21)【出願番号】P 2021139625
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 大介
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0118178(US,A1)
【文献】特開2002-67733(JP,A)
【文献】特開2012-218719(JP,A)
【文献】特開2012-47147(JP,A)
【文献】特開2016-137819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-60/00
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
G08G 1/00-99/00
B60K 31/00
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に適用される運転支援装置であって、
前記自車両の走行環境を表す情報及び前記自車両の運転状態についての情報を取得する情報取得装置と、
前記自車両に制動力を付与するように作動する制動装置と、
前記自車両の運転者に対して報知を行う報知装置と、
前記情報取得装置により取得された情報に基いて前記制動装置を用いて前記自車両に前記制動力を自動的に付与することにより前記自車両を減速して停止させ、且つ、前記自車両が停止した後に所定時間が経過したとき前記自車両に対する前記制動力の付与を解除する自動停止制御、を含む運転支援制御を行うとともに、前記運転支援制御に関連した報知を前記報知装置に行わせる制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、
前記自動停止制御により前記自車両を停止させる場合、前記情報取得装置により取得された情報に基いて前記自車両が所定の閾値勾配よりも小さい大きさの勾配を有する平坦路を走行していると判定しているときには、前記自車両が停止した時点から前記自車両に対する前記制動力の付与を解除する時点までの間において前記運転者に前記制動装置を作動させるためのブレーキ操作を行うことを促す停止時報知を前記報知装置に行わせ、
前記自動停止制御により前記自車両を停止させる場合、前記情報取得装置により取得された情報に基いて前記自車両が前記閾値勾配以上の大きさの勾配を有する急坂路を走行していると判定しているときには、前記自車両が停止する時点よりも前の時点にて成立する予め定められた事前報知条件が成立した時点にて前記運転者に前記ブレーキ操作を行うことを促す事前報知を前記報知装置に行わせる、
ように構成された、運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記自車両が当該自車両の直前を走行している先行車両である追従対象車両に追従するように前記自車両を走行させる追従走行制御を前記運転支援制御として実行するように構成され、
更に、前記制御ユニットは、
前記追従走行制御の実行中に前記追従対象車両が停止したことに起因して前記自動停止制御が行われる場合、前記追従対象車両が停止しており且つ前記自車両の速度がゼロよりも大きい閾値速度以下となったとき前記事前報知条件が成立したと判定する、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記事前報知の実行中に前記ブレーキ操作が検出されたとき前記報知装置による前記事前報知を終了し、
前記事前報知の実行中に前記ブレーキ操作が検出されることなく前記自車両が停止したときには前記停止時報知を前記報知装置に行わせる、
ように構成された、
運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の運転者に対してブレーキ操作を促す報知を実行可能な運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、追従対象車両(先行車両)に追従するように自車両を走行させる追従車間距離制御を運転支援制御の一つとして実行する運転支援装置(以下、「従来装置」と称する。)が知られている。この従来装置は、追従車間距離制御の実行中に追従対象車両が停止した場合、自車両に制動力を付与することにより自車両を減速し、自車両を追従対象車両の後方の所定の位置に停止させる(例えば、特許文献1及び2を参照。)。以下、自車両に制動力を自動的に付与して自車両を減速して停止させる制御を「自動停止制御」と称する場合がある。
【0003】
更に、従来から、運転支援制御を解除する時点にて運転者にその旨を報知し、運転者による自車両の手動運転を円滑に開始させる装置も知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-147178号公報
【文献】特開2009-280014号公報
【文献】特開2017-043292号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、従来装置が、自動停止制御の実行により自車両が停止した時点以降において運転者にブレーキ操作を促す報知を行い、その後、制動力の付与を解除することにより運転支援制御を終了するように構成されていると、以下に述べる問題が生じる。
【0006】
例えば、自車両が平坦路において停止している場合、制動力の付与を解除する時点までに運転者によるブレーキ操作が行われなかったとしても、制動力の付与を解除した時点以降において自車両はクリープ力によって穏やかに前進するのみである。しかしながら、自車両が急な坂路(登坂路及び降坂路)において停止している場合、制動力の付与を解除する時点までに運転者によるブレーキ操作が行われないと、制動力の付与を解除した時点以降において自車両が重力により急に後進したり前進したりする。このような急坂路における自車両の挙動は、自車両が走行している道路が平坦路である場合に発生する自車両の挙動と大きく相違するので、運転者に不安を感じさせる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、自動停止制御による制動力の付与を解除する際に運転者に不安を与えてしまう可能性を小さくすることが可能な運転支援装置を提供することにある。
【0008】
本発明の運転支援装置(以下、「本発明装置」と称呼される場合がある。)は、自車両に適用され、
前記自車両の走行環境を表す情報及び前記自車両の運転状態についての情報を取得する情報取得装置(11-15、40-42、60)、と、
前記自車両に制動力を付与するように作動する制動装置(30、31)と、
前記自車両の運転者に対して報知を行う報知装置(50-52)と、
前記情報取得装置により取得された情報に基いて前記制動装置を用いて前記自車両に前記制動力を自動的に付与することにより前記自車両を減速して停止させ、且つ、前記自車両が停止した後に所定時間が経過したとき前記自車両に対する前記制動力の付与を解除する自動停止制御、を含む運転支援制御を行うとともに、前記運転支援制御に関連した報知を前記報知装置に行わせる制御ユニット(10)と、
を備える。
【0009】
更に、前記制御ユニットは、
前記自動停止制御により前記自車両を停止させる場合(ステップ410乃至ステップ420を参照。)、前記情報取得装置により取得された情報に基いて前記自車両が所定の閾値勾配よりも小さい大きさの勾配を有する平坦路を走行していると判定しているときには(ステップ425:No)、前記自車両が停止した時点から前記自車両に対する前記制動力の付与を解除する時点までの間において前記運転者に前記制動装置を作動させるためのブレーキ操作を行うことを促す停止時報知を前記報知装置に行わせ(ステップ415:No、ステップ440乃至ステップ450)、
前記自動停止制御により前記自車両を停止させる場合(ステップ410乃至ステップ420を参照。)、前記情報取得装置により取得された情報に基いて前記自車両が前記閾値勾配以上の大きさの勾配を有する急坂路を走行していると判定しているときには(ステップ425:Yes)、前記自車両が停止する時点よりも前の時点にて成立する予め定められた事前報知条件が成立した時点にて前記運転者に前記ブレーキ操作を行うことを促す事前報知を前記報知装置に行わせる(ステップ430:Yes、ステップ435)、
ように構成されている。
【0010】
従って、自車両が自動停止制御により停止させられつつある場合、自車両が平坦路を走行しているときには自車両が停止した時点以降においてブレーキ操作を行うことを促す停止時報知が行われ、自車両が急坂路を走行しているときには自車両が停止する時点よりも前の時点(即ち、事前報知条件の成立時)にてブレーキ操作を行うことを促す事前報知が行われる。
【0011】
よって、このような事前報知が実行されない従来の装置と比較して、本発明装置は、「運転者がブレーキ操作を行うことがない状態で制動力の付与(自動ブレーキ)が解除され、自車両が急坂路に停止しているがために急な後進又は前進を開始する可能性」を低くすることができる。この結果、運転者に不安を与える可能性を低減することができる。
【0012】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、
前記自車両が当該自車両の直前を走行している先行車両である追従対象車両に追従するように前記自車両を走行させる追従走行制御を前記運転支援制御として実行するように構成され(ステップ410)、
更に、前記制御ユニットは、
前記追従走行制御の実行中に前記追従対象車両が停止したことに起因して前記自動停止制御が行われる場合、前記追従対象車両が停止しており(ステップ420:Yes)且つ前記自車両の速度がゼロよりも大きい閾値速度以下となったとき(ステップ430:Yes)前記事前報知条件が成立したと判定する、
ように構成されている。
【0013】
これによれば、追従車間距離制御の一部として自動停止制御が実行されて自車両が停止しつつあるとき、自車両が急坂路を走行していれば、自車両が停止する前の時点(即ち、自車両の速度がゼロよりも大きい閾値速度以下となった時点)にて事前報知が行われる。この結果、追従車間距離制御の実行により自車両が停止した場合、運転者に不安を与える可能性を低減することができる。
【0014】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、
前記事前報知の実行中に前記ブレーキ操作が検出されたとき(ステップ510:Yes、ステップ530:Yes)前記報知装置による前記事前報知を終了し(ステップ560)、
前記事前報知の実行中に前記ブレーキ操作が検出されることなく前記自車両が停止したときには前記停止時報知を前記報知装置に行わせる(ステップ510:Yes、ステップ530:No、ステップ415:No、ステップ440:Yes、ステップ450)、
ように構成されている。
【0015】
これによれば、追従車間距離制御の一部として自動停止制御が実行されて、自車両が停止しつつあるときに事前報知が行われ、更に、この事前報知によってもブレーキ操作がなされない場合には自車両が停止した後に停止時報知が行われる。よって、急坂路において制動力の付与が解除される前に、運転者によるブレーキ操作が行われている可能性をより高めることができるから、運転者に不安を与える可能性を低減することができる。
【0016】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る運転支援装置(本実施支援装置)の概略構成図である。
【
図2】本実施支援装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【
図3】本実施支援装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【
図4】本実施支援装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図5】本実施支援装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図6】本実施支援装置の作動を説明するための図である。
【
図7】本実施支援装置の作動を説明するための図である。
【
図8】本実施支援装置の作動を説明するための図である。
【
図9】本実施支援装置の作動を説明するための図である。
【
図10】本実施支援装置の作動を説明するための図である。
【
図11】本実施支援装置の作動を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る運転支援装置(以下、「本実施支援装置」と称する場合がある。)は、
図1に示したように、車両(以下、他の車両と区別するために、「自車両」と称する場合がある。)に適用・搭載されている。本実施支援装置は、運転支援ECU10、駆動力ECU20、ブレーキECU30、ナビゲーションECU40、及び、報知ECU50を備えている。
【0019】
これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)であり、図示しないCAN(Controller Area Network)を介して相互に情報を送信可能及び受信可能に接続されている。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェースI/F等を含む。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。これらのECUは、幾つか又は全部が一つのECUに統合されてもよい。
【0020】
運転支援ECU10は、以下に列挙するセンサ(スイッチを含む。)と接続されていて、それらのセンサの検出信号又は出力信号を受信するようになっている。なお、各センサは、運転支援ECU10以外のECUに接続されていてもよい。その場合、運転支援ECU10は、センサが接続されたECUからCANを介して「そのセンサの検出信号に基く値」を表す信号を受信する。
【0021】
アクセルペダル操作量センサ11は、自車両のアクセルペダル11aの操作量(アクセル開度)を検出し、アクセルペダル操作量APを表す信号を出力するようになっている。
【0022】
ブレーキペダル操作量センサ12は、自車両のブレーキペダル12aの操作量を検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す信号を出力するようになっている。
【0023】
ストップランプスイッチ13は、ブレーキペダル12aが踏み込まれていないとき(操作されていないとき)にローレベルとなり、ブレーキペダル12aが踏み込まれたとき(操作されているとき)にハイレベルとなる、ストップランプ信号Stpを出力するようになっている。
【0024】
車速センサ14は、自車両の走行速度(車速)を検出し、車速SPDhを表す信号を出力するようになっている。なお、自車両は各車輪の車輪速度を表す車輪速度信号を出力する車輪速度センサ(図示省略)を各車輪毎に備えている。運転支援ECU10は、各車輪の車輪速度の平均値を算出し、その平均値を自車両の車速SPDhとして取得してもよい。
【0025】
車両環境検出センサ(周囲センサ)15は、自車両の走行環境についての情報を取得する装置であり、レーダセンサ15a及びカメラセンサ15bを含む。
【0026】
レーダセンサ15aは、ミリ波帯の電波を利用して、自車両の前方の道路、及び、その道路に存在する立体物に関する情報を取得するようになっている。立体物は、例えば、歩行者、自転車及び自動車などの移動物、並びに、電柱、樹木及びガードレールなどの固定物を含む。以下、これらの立体物は「物標」と称呼される場合がある。レーダセンサ15aは周知である。レーダセンサ15aは、検出した各物標(n)に対する、車間距離(縦距離)Dfx(n)、相対速度Vfx(n)、横距離Dfy(n)及び相対横速度Vfy(n)等を含む物標情報を所定時間の経過毎に取得する。
【0027】
車間距離Dfx(n)は、自車両と物標(n)(例えば、先行車両)と間の自車両の中心軸に沿った距離である。
相対速度Vfx(n)は、物標(n)の速度Vsと自車両の速度Vjとの差(=Vs-Vj)である。物標(n)の速度Vsは自車両の進行方向における物標(n)の速度である。なお、物標(n)が後述する追従対象車両である場合、その速度Vsは車速SPDpと表される。また、前述したように、自車両の車速Vjは車速SPDhと表される。即ち、物標(n)が後述する追従対象車両である場合、下記式が成立する。
Vfx(n)=SPDp-SPDh
【0028】
横距離Dfy(n)は、「物標(n)の中心位置(例えば、先行車両の車幅中心位置)」の、自車両の中心軸と直交する方向における同中心軸からの距離である。横距離Dfy(n)は「横位置」とも称呼される。
相対横速度Vfy(n)は、物標(n)の中心位置(例えば、先行車両の車幅中心位置)の、自車両の中心軸と直交する方向における速度である。
【0029】
カメラセンサ15bは、何れも図示しない「ステレオカメラ及び画像処理部」を備えている。
ステレオカメラは、車両前方の左側領域及び右側領域の風景を撮影して左右一対の画像データを取得する。
画像処理部は、ステレオカメラが撮影した左右一対の画像データに基づいて、物標の有無、自車両と物標との相対関係(物標情報)、信号機の点灯状態及び道路標識などの情報を取得する。
【0030】
なお、運転支援ECU10は、レーダセンサ15aによって得られた物標情報と、カメラセンサ15bによって得られた物標情報と、を合成することにより、最終的な物標情報を決定するようになっている。更に、運転支援ECU10は、カメラセンサ15bが撮影した左右一対の画像データ(道路画像データ)に基づいて、道路の左及び右の白線などのレーンマーカー(以下、単に「白線」と称する。)を認識し、道路の形状(道路の曲率半径)、及び、道路と車両との車両幅方向における位置関係等を取得するようになっている。
【0031】
操作スイッチ60は、後述するACC(運転支援制御の一つ)に対する各種の信号(要求信号及び設定信号等)を発生させるためのスイッチであり、メインスイッチ61、キャンセルスイッチ62、車間時間設定スイッチ63、及び、自動発進スイッチ64を含んでいる。これらのスイッチ61乃至64は運転者が操作可能な位置に配置されている。
【0032】
駆動力ECU20は、駆動力アクチュエータ21に接続されている。駆動力アクチュエータ21は、自車両の駆動力源(この場合、内燃機関)の運転状態を変更するためのアクチュエータである。本例において、内燃機関はガソリン燃料噴射・火花点火式・多気筒エンジンであり、吸入空気量を調整するためのスロットル弁を備えている。駆動力アクチュエータ21は、少なくとも、スロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含む。
【0033】
駆動力ECU20は、駆動力アクチュエータ21を駆動することによって、内燃機関が発生するトルクを変更することができる。内燃機関が発生するトルクは図示しない変速機を介して図示しない駆動輪に伝達される。従って、駆動力ECU20は、駆動力アクチュエータ21を制御することによって、自車両の駆動力を制御し加速状態(加速度)を変更することができる。即ち、駆動力ECU20、駆動力アクチュエータ21及び駆動力源等は、自車両に駆動力を付与する駆動装置を構成している。
【0034】
なお、自車両の駆動力源は電動モータであってもよい。換言すると、自車両は電気自動車であってもよく、その場合、駆動力アクチュエータ21は電動モータのトルクを変更可能なインバータである。また、自車両の駆動力源は、内燃機関及び電動モータの両者であってもよい。換言すると、自車両はハイブリッド車両であってもよく、その場合、駆動力アクチュエータ21は電動モータのトルクを変更可能なインバータ及び内燃機関のスロットル弁アクチュエータを含む。
【0035】
ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31に接続されている。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキペダル12aの踏力によって作動油を加圧する図示しないマスタシリンダと、左右前後輪に設けられる摩擦ブレーキ機構との間の油圧回路に設けられる。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキECU30からの指示に応じて、摩擦ブレーキ機構に供給する油圧を調整し、その油圧により図示しないブレーキパッドを図示しないブレーキディスクに押し付けて摩擦制動力を発生させる。従って、ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31を制御することによって、自車両の制動力を制御することができる。更に、自車両の運転者は、ブレーキペダル12aを操作することにより、ブレーキECU30及びブレーキアクチュエータ31を介して自車両に付与される制動力を変更することができる。このように、ブレーキECU30、ブレーキアクチュエータ31及び摩擦ブレーキ機構等は、自車両に制動力を付与する制動装置を構成している。
【0036】
ナビゲーションECU40は、自車両の位置を検出するためのGPS信号を受信するGPS受信機41、地図情報等を記憶した地図データベース42、及び、ヒューマンマシンインターフェースであるタッチパネル式ディスプレイ43等と接続されている。ナビゲーションECU40は、GPS信号に基いて現時点の自車両の位置(現在の位置)Pnowを特定するとともに、自車両の位置Pnow及び地図データベース42に記憶されている地図情報等に基づいて各種の演算処理を行い、ディスプレイ43を用いて経路案内を行う。
【0037】
地図データベース42に記憶されている地図情報には、道路情報が含まれている。道路情報には、道路の各位置における形状を示すパラメータ(例えば、道路の曲率)及び道路の勾配(傾斜角)Incが含まれている。なお、勾配Incは、道路の車両の走行方向(日本国であれば中央線よりも左側の車線の車両前進方向)において、その道路が登坂路であれば正の角度、降坂路であれば負の角度となるように定められている。勾配Incの大きさ(|Inc|)はabs(Inc)と表記される。
【0038】
報知ECU50は、表示器51及びスピーカ52に接続されている。報知ECU50は、運転支援ECU10からの指示に応じて、表示器51に所定の表示(例えば、後述するブレーキ操作要求マーク及びメッセージ等)を表示したり、スピーカ52からボイスメッセージ及び警告音等を発生させることができる。スピーカ52は、所定の音を発生できるブザー装置であってもよい。
【0039】
(ACCの概要)
運転支援ECU10は、運転支援制御の一つとしてACC(アダプティブクルーズコントロール)を実行できるようになっている。ACC自体は周知である(例えば、上記特許文献1、上記特許文献2,特開2014-148293号公報、特開2006-315491号公報、特許第4172434号明細書、及び、特許第4929777号明細書等を参照。)。但し、運転支援ECU10は、自車両の車速SPDhが低い場合であってもACCを実行することができる。
【0040】
ACCは、追従車間距離制御及び定速走行制御を含む。但し、本例において、ACCは主として追従車間距離制御を意味する。追従車間距離制御は、アクセルペダル11a及びブレーキペダル12aに対する運転者による操作を要することなく、自車両の直前を走行している先行車両(即ち、追従対象車両)と自車両との間の車間距離を所定の目標車間距離に維持しながら追従対象車両に対して自車両を追従走行させる制御である。
【0041】
ACCが開始されると(例えば、メインスイッチ61がオフ状態からオン状態に変更されると)、運転支援ECU10は、車両環境検出センサ15により取得した物標情報に基いて、追従対象車両が存在しているか否かを判定する。追従対象車両は、自車両の前方(直前)を走行し且つ自車両が追従するべき車両である。例えば、運転支援ECU10は、検出した物標(n)の横距離Dfy(n)と縦距離Dfx(n)とから特定される物標(n)の相対位置が、予め定められた自車両の進行方向の所定領域(即ち、追従対象車両エリア)内に存在するか否かを判定する。
【0042】
運転支援ECU10は、物標(n)が追従対象車両エリア内に所定時間以上に渡って存在する場合、その物標(n)を追従対象車両(a)として選択する。そして、運転支援ECU10は、この追従対象車両(a)に対して追従車間距離制御を実行する。
【0043】
運転支援ECU10は、目標加速度Gtgtを下記(1)式に従って算出する。(1)式において、Vfx(a)は追従対象車両(a)の相対速度であり、ka1、k1及びk2は所定の正のゲイン(係数)であり、ΔD1は「追従対象車両(a)の縦距離(車間距離)Dfx(a)」から「目標車間距離Dtgt」を減じることにより得られる車間偏差である。なお、目標車間距離Dtgtは、車間時間設定スイッチ63を用いて設定される目標車間時間Ttgtに自車両の車速SPDhを乗じることにより算出される(即ち、Dtgt=Ttgt・SPDh)。但し、自車両の車速SPDhが所定の車速(低車速)閾値SPDLth以下であるとき、目標車間距離Dtgtは予め定められた一定距離Dpに設定される。この結果、追従対象車両(a)が停止した場合、自車両は追従対象車両(a)から一定距離Dp(又は、一定距離Dpの近傍の距離)だけ手前の位置に停止させられる。
Gtgt=ka1・(k1・ΔD1+k2・Vfx(a)) …(1)
【0044】
運転支援ECU10は、自車両の加速度が目標加速度Gtgtに一致するように、駆動力ECU20を用いて駆動力アクチュエータ21を制御して自車両の駆動力を制御するとともに、必要に応じてブレーキECU30を用いてブレーキアクチュエータ31を制御して自車両の制動力を制御する。
【0045】
前述したように、運転支援ECU10は、追従車間距離制御の実行中において、追従対象車両(a)が停止した場合、自車両に制動力を付与して自車両を減速し、当該追従対象車両(a)の後端から所定の距離だけ離れた位置に自車両を自動的に停止させる。この制御は、自動停止制御とも称される。加えて、運転支援ECU10は、追従対象車両(a)が停止したことに伴って自車両を停止させた後、所定の待機時間Tsthが経過する前に追従対象車両(a)が発進した場合、自動発進スイッチ64がオン状態であり且つブレーキペダル12aが操作されていなければ、自車両を自動的に発進させる。この制御は自動発進制御とも称される。この場合、ACCが継続される。
【0046】
運転支援ECU10は、追従対象車両(a)が停止したことに伴って自車両が停止した後、所定の待機時間Tsthが経過する前に追従対象車両(a)が発進した場合、その時点までに自動発進スイッチ64がオフ状態になっているか又はブレーキペダル12aが操作されているとき、自車両を自動的に発進させない。但し、運転支援ECU10は、図示しないリジュームスイッチが操作されると自車両を自動的に発進させる。この場合、ACCが再開させられる。
【0047】
運転支援ECU10は、追従対象車両(a)が停止したことに伴って自車両が停止した後、所定の待機時間Tsthが経過するまで追従対象車両(a)が発進しない場合、自車両への制動力の自動的な付与を解除し(自動ブレーキを解除し)、自動発進スイッチ64の状態に関わらずACCを終了する。
【0048】
なお、運転支援ECU10は、ACCが開始された後、追従対象車両が存在しないと判定した場合、定速走行制御を実行する。即ち、運転支援ECU10は、アクセルペダル11a及びブレーキペダル12aに対する運転者による操作を要することなく、自車両の走行速度が目標速度(設定速度Vset)と一致するように自車両を走行させる。
【0049】
(作動の概要)
運転支援ECU10は、上述した自動停止制御を実行して自車両を停止させるにあたり、自車両が走行している道路が平坦路であるか否かに応じて、次に述べるように報知制御を行う。平坦路は、勾配(傾斜角)の大きさabs(Inc)が正の所定の閾値勾配Ith未満である道路である。
【0050】
1.平坦路
自車両が平坦路を追従車間距離制御により走行してる場合に追従対象車両が停止すると、自動停止制御が作動して自動的に制動力が自車両に付与される。この結果、
図2の時刻t1から時刻t2までの期間において自車両の車速SDPhは次第に低下し、時刻t2にて「0」に到達する。即ち、時刻t2にて自車両が停止する。この時刻t2にて、運転支援ECU10は、
図2のブロックB1内に示した「運転者にブレーキ操作を行うことを促す報知」を表示器51に表示するとともに、スピーカ52から一定時間だけ第1のブザー音(警告音)を発生させる。この自車両が停止した時点にて行う表示及び第1のブザー音の発生は、「停止時ブレーキ操作要求報知」又は「停止時報知」と称する場合がある。なお、運転支援ECU10は、自動停止制御により自車両が停止した時点(時刻t2)よりも所定時間Tw(例えば、0.2秒)だけ遅れた時点から停止時報知を開始してもよい。この場合、所定時間Twは、後述する待機時間Tsthよりも短い時間に設定されている。
【0051】
時刻t2から所定の待機時間Tsth(例えば、2秒)が経過する時刻t3までの期間、運転支援ECU10は制動力の付与(自動ブレーキ)を継続する。よって、自車両の車速SDPhは「0」に維持される。時刻t3が到来すると、運転支援ECU10は、制動力の付与(自動ブレーキ)を解除する。この時刻t3にて、運転支援ECU10は、
図2のブロックB2内に示した「運転者にブレーキ操作を行うことを促す報知」を表示器51に一定時間だけ表示するとともに、スピーカ52から第2のブザー音を一定時間だけ発生させる。この自動ブレーキを解除する時点にて行う表示及び第2のブザー音の発生は、「自動ブレーキ解除時ブレーキ操作要求報知」と称する場合がある。なお、この場合、停止時ブレーキ操作要求報知による表示器51への表示は継続しているので、表示器51の表示は変化しない。なお、第1のブザー音(停止時ブザー音)と第2のブザー音(ブレーキ解除時ブザー音)は異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0052】
これらの期間(時刻t1乃至時刻t2の期間)において、運転者がブレーキペダル12aを操作しなければ、時刻t3以降において自車両にはクリープ力のみが作用し、道路が平坦であるために自車両の車速SPDhは徐々に増大する。
【0053】
2.登坂路(急勾配)
自車両が急勾配の登坂路を追従車間距離制御により走行してる場合に追従対象車両が停止すると、自動停止制御が作動して制動力が自車両に自動的に付与される。この結果、
図3の時刻t11から時刻t12までの期間において自車両の車速SDPhは次第に低下し、時刻t12にて正の所定の車速閾値SPDthに達する。この時点にて、事前報知条件が成立する。運転支援ECU10は、この時刻t12にて、
図3のブロックB3内に示した「急勾配であるが故に運転者にブレーキ操作を行うことを促す報知」を表示器51に表示するとともに、スピーカ52から第3のブザー音(事前警告ブザー音)を一定時間だけ発生させる。この車速SPDhが車速閾値SPDthにまで低下した時点にて行う表示及び第3のブザー音の発生は、「急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知」又は「事前報知」と称する場合がある。第3のブザー音は、第1のブザー音及び第2のブザー音と異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0054】
時刻t12以降において「急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知」が実行されても運転者がブレーキペダル12aを操作しない場合、自動停止制御の作動が継続して制動力が自動的に自車両に付与され続ける。この結果、
図3の時刻t12から時刻t13までの期間において、自車両の車速SDPhは更に低下し、時刻t13にて「0」に到達する。即ち、時刻t13にて自車両が停止する。運転支援ECU10は、この時刻t13にて、
図3のブロックB4に示したように前述した「停止時ブレーキ操作要求報知」を実行する。
【0055】
更に、時刻t13から待機時間Tsthが経過する時刻t14までの期間、運転支援ECU10は制動力の付与(自動ブレーキ)を継続する。よって、自車両の車速SDPhは「0」に維持される。時刻t14が到来すると、運転支援ECU10は、制動力の付与(自動ブレーキ)を解除する。運転支援ECU10は、この時刻t14にて、
図3のブロックB5内に示したように前述した「自動ブレーキ解除時ブレーキ操作要求報知」を実行する。
【0056】
これらの期間(時刻t12乃至時刻t14の期間)において運転者がブレーキペダル12aを操作しなければ、時刻t14以降において自車両には自車両を前進させようとするクリープ力と自車両を後退させる重力による力とが作用する。この場合、道路が急勾配の登坂路であるから、重力による力がクリープ力よりも大きいので、自車両は後退を始める(即ち、車速SPDhは負の値となって、その大きさが徐々に増大する。)。
【0057】
このように、自車両が急勾配の登坂路を追従車間距離制御により走行している場合に自動停止制御が作動して車速SDPhが車速閾値SPDthにまで低下することにより事前報知条件が成立すると、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知が実行される。そのため、運転者が、自車両が停止するまでにブレーキペダル12aを操作する可能性が高くなる。よって、このような急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知が実行されない装置と比較し、「ブレーキペダル12aが運転者によって操作されることがないまま待機時間Tsthが経過して自動ブレーキが解除されることにより自車両が急な後進を始める可能性」を低くすることができる。よって、運転者に不安を与える可能性を低減することができる。
【0058】
3.降坂路(急勾配)
急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知は、自車両が急勾配の降坂路を追従車間距離制御により走行してる場合にも実行される。即ち、自車両が急勾配の降坂路を走行中、自動停止制御が作動して車速SDPhが車速閾値SPDthにまで低下した時、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知が実行される。そのため、自車両が停止する前に運転者がブレーキペダル12aを操作する可能性が高くなる。よって、このような急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知が実行されない装置と比較し、「ブレーキペダル12aが運転者によって操作されることがないまま待機時間Tsthが経過して自動ブレーキが解除されることにより自車両が急な前進を始める可能性」を低くすることができる。よって、運転者に不安を与える可能性を低減することができる。
【0059】
(具体的作動)
運転支援ECU10のCPU(以下、単に「CPU」と称する。)の作動について説明する。CPUは、所定時間が経過する毎に
図4及び
図5にフローチャートにより示したルーチンのそれぞれを実行するようになっている。
【0060】
・運転支援制御(追従車間距離制御(ACC)及びブレーキ操作要求報知)
所定のタイミングになると、CPUは
図4のステップ400から処理を開始してステップ405に進み、現時点において追従車間距離制御が実行されているか否かを判定する。
【0061】
現時点において追従車間距離制御が実行中でなければ、CPUはステップ405にて「No」と判定し、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、追従車間距離制御が実行中でない場合、メインスイッチ61がオフ状態からオン状態に変更されたとき、CPUは追従車間距離制御を開始する。
【0062】
これに対し、現時点において追従車間距離制御が実行中であると、CPUはステップ405にて「Yes」と判定してステップ410に進み、上述した追従車間距離制御を実行する。次いで、CPUはステップ415に進み、現時点における自車両の車速SPDhが「0」よりも大きいか否か(即ち、自車両が停止していない状態であるか否か)を判定する。
【0063】
現時点における自車両の車速SPDhが「0」よりも大きい場合(即ち、自車両が走行中である場合)、CPUはステップ415にて「Yes」と判定してステップ420に進み、追従対象車両の車速SPDpが「0」であるか否かを判定する。即ち、CPUはステップ420にて追従対象車両が停止しているか否かを判定する。CPUは、追従車間距離制御を実行中にステップ420が成立すると(追従対象車両が停止すると)、自動停止制御が実行中であると判定する。なお、CPUは、以下の(2)式に従って追従対象車両の車速SPDpを求める。
追従対象車両の車速SPDp=相対速度Vfx(n)+自車両の車速SPDh…(2)
【0064】
追従対象車両の車速SPDpが「0」でなければ、CPUはステップ420にて「No」と判定し、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、追従対象車両の車速SPDpが「0」であると、CPUはステップ420にて「Yes」と判定してステップ425に進み、ナビゲーションECU40から自車両が走行している道路(路面)の勾配Incを取得する。なお、ナビゲーションECU40は、現時点の自車両の位置(現在の位置)Pnowと地図データベース42に格納されている情報とに基づいて、自車両が走行している道路の勾配Incを取得している。更に、CPUはステップ425にて、その勾配Incの大きさabs(Inc)が正の所定の閾値勾配Ith以上であるか否かを判定する。
【0065】
勾配の大きさabs(Inc)が閾値勾配Ith以上でなければ、CPUはステップ425にて「No」と判定し、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、勾配の大きさabs(Inc)が閾値勾配Ith以上であると、CPUはステップ425にて「Yes」と判定してステップ430に進み、自車両の車速SPDhが上述した正の車速閾値SPDth以下であるか否かを判定する。
【0066】
自車両の車速SPDhが車速閾値SPDthよりも大きい場合、CPUはステップ430にて「No」と判定し、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、自車両の車速SPDhが車速閾値SPDth以下である場合、CPUは事前報知条件が成立したと判定して(ステップ430にて「Yes」と判定して)ステップ435に進む。そして、ステップ435にて、CPUは、表示器51及びスピーカ52を用いて、上述した急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知を実行する。その後、CPUはステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、CPUは、ステップ420乃至ステップ430の総てのステップにて「Yes」と判定された時点から一定時間だけ第3のブザー音を発生させる。
【0067】
一方、CPUがステップ415に進んだとき、現時点における自車両の車速SPDhが「0」である場合(即ち、自車両が停止中である場合)、CPUはステップ415にて「No」と判定してステップ440に進む。ステップ440にて、CPUは、現時点が自車両の車速SPDhが「0」となってから待機時間(閾値時間)Tsth以内であるか否かを判定する。
【0068】
現時点が「自車両の車速SPDhが「0」となった時点から待機時間Tsthが経過する時点」までの期間内にあれば、CPUはステップ440にて「Yes」と判定してステップ445に進み、制動装置を用いた自車両への制動力の自動的な付与を継続し(即ち、自動ブレーキを継続し)、自車両を停止状態に保持する。
【0069】
次いで、CPUはステップ450に進み、上述した停止時ブレーキ操作要求報知を実行する。なお、CPUは、自車両の車速SPDhが「0」となった時点から一定時間だけ第1のブザー音を発生させる。その後、CPUは、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0070】
この状態が継続し、以て、自車両の車速SPDhが「0」となってから待機時間Tsthが経過すると、CPUはステップ440に進んだときに当該ステップ440にて「No」と判定する。そして、CPUは、以下に述べるステップ455乃至ステップ465の処理を順に行い、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0071】
ステップ455:CPUは、追従車間距離制御を終了する。
ステップ460:CPUは、制動装置を用いた自車両への制動力の自動的な付与を停止する。即ち、CPUは自動ブレーキを解除する。
ステップ465:CPUは、上述した自動ブレーキ解除時ブレーキ操作要求報知を一定時間だけ実行する。その後、CPUはステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0072】
・ブレーキ操作要求報知の終了
所定のタイミングになると、CPUは
図5のステップ500から処理を開始してステップ510に進み、現時点において急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知による表示器51への表示が実行されているか否かを判定する。
【0073】
現時点において急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知による表示器51への表示が実行されている場合、CPUはステップ510にて「Yes」と判定してステップ530に進む。これに対し、現時点において急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知による表示器51への表示が実行されていない場合、CPUはステップ510にて「No」と判定してステップ520に進む。
【0074】
CPUは、ステップ520にて現時点において停止時ブレーキ操作要求報知による表示器51への表示が実行されているか否かを判定する。現時点において停止時ブレーキ操作要求報知による表示器51への表示が実行されている場合、CPUはステップ520にて「Yes」と判定してステップ530に進む。これに対し、現時点において停止時ブレーキ操作要求報知による表示器51への表示が実行されていない場合、CPUはステップ520にて「No」と判定し、ステップ595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0075】
CPUがステップ530に進んだ場合、CPUは現時点が「運転者がブレーキペダル12aを操作した時点」の直後であるか否かを判定する。なお、CPUは、ブレーキペダル12aが操作されたか否かを、ブレーキペダル操作量センサ12により検出されるブレーキペダル操作量BPが「0」から「0よりも大きい値」に変化したか否か、或いは、ストップランプスイッチ13からのストップランプ信号Stpがローレベルからハイレベルに変化したか否かにより判定する。
【0076】
現時点が、運転者がブレーキペダル12aを操作した時点の直後でなければ、CPUはステップ530にて「No」と判定し、ステップ595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0077】
これに対し、現時点が、運転者がブレーキペダル12aを操作した時点の直後である場合、CPUはステップ530にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ540乃至ステップ560の処理を順に行い、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0078】
ステップ540:CPUは追従車間距離制御を終了する。
ステップ550:CPUは、制動装置を用いた自車両への制動力の自動的な付与を停止する。即ち、CPUは自動ブレーキを解除する。
ステップ560:CPUは、現時点において実行されているブレーキ操作要求報知(即ち、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知及び停止時ブレーキ操作要求報知の何れか)の実行を停止する。
【0079】
なお、CPUは、ステップ510にて「Yes」と判定した場合に追従対象車両の車速SPDpが「0以上に設定された走行開始閾値SPDpth」よりも大きいか否かを判定し、追従対象車両の車速SPDpが走行開始閾値SPDpthよりも大きい場合、ステップ550及びステップ560の処理を行うように構成されていてもよい。つまり、CPUは、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知の実行中に、追従対象車両が走行を開始してその車速が走行開始閾値SPDpthよりも大きくなったとき、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知を停止するように構成されていてもよい。
【0080】
このように構成された本実施支援装置によれば、例えば、
図6に示したように、追従対象車両Vpの先行車両V1が停止していた場合であっても、追従対象車両Vpが例えば20km/hで走行していて、且つ、追従対象車両Vpと自車両Vhとの車間距離が目標車間距離としての一定距離Dpに維持されている場合、自車両Vhは20km/hにて走行させられる。
【0081】
この状態において、
図7に示したように、自車両Vhが急勾配の登坂路に進入し、且つ、追従対象車両Vpが先行車両V1の停止に起因して停止した場合、本実施支援装置は自動停止制御を開始する。そして、本実施支援装置は、自車両Vhの車速SPDhが車速閾値SPDthにまで低下した時点にて(即ち、自車両Vhが停止する前の所定時点にて)急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知を実行する。
【0082】
更に、
図8に示したように、運転者がブレーキペダル12aに対する操作を行わない状態にて自車両Vhが停止すると、本実施支援装置は自車両Vhが停止した時点にて停止時ブレーキ操作要求報知を実行する。
【0083】
更に、
図9に示したように、運転者がブレーキペダル12aに対する操作を行わない状態にて自車両Vhが停止している時間が待機時間Tsthよりも長くなると、本実施支援装置はこの時点にて自動ブレーキ解除時ブレーキ操作要求報知を実行し、自動ブレーキを解除する。
【0084】
なお、
図10に示したように、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知の実行中(正確には、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知による表示器51への表示が実行されている場合)において自車両Vhが停止する前に追従対象車両Vpが発進した場合、本実施支援装置は、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知の実行を停止するとともに、追従車間距離制御を継続する。よって、自車両Vhの車速SPDhは次第に増加する。その後、
図11に示したように、追従対象車両Vpが加速を継続する場合、本実施支援装置は追従車間距離制御を継続する。その結果、自車両Vhは加速され続ける。
【0085】
以上、説明したように、本実施支援装置によれば、自車両が自動停止制御により停止させられつつある場合、自車両が平坦路を走行しているときには自車両が停止した時点以降においてブレーキ操作を行うことを促す停止時報知(停止時ブレーキ操作要求報知)が行われ、自車両が急坂路を走行しているときには自車両が停止する時点よりも前の時点にて成立する事前報知条件が成立したときにブレーキ操作を行うことを促す事前報知(急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知)が行われる。
【0086】
よって、本実施支援装置は、「運転者がブレーキ操作を行うことがない状態で制動力の付与(自動ブレーキ)が解除され、自車両が急坂路に停止しているがために急な後進又は前進を開始する可能性」を低くすることができる。この結果、運転者に不安を与える可能性を低減することができる。
【0087】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本実施支援装置は、追従車間距離制御における自動停止制御を実行する際に、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知及び停止時ブレーキ操作要求報知を実行していた。これに対し、本発明は、赤信号自動停止制御又は一時停止標識自動停止制御を実行する場合にも適用することができる。
【0088】
簡単に述べると、赤信号自動停止制御は、カメラセンサ15bにより取得された画像(車両前方画像)から、自車両の前方に位置する信号機の赤色灯が点灯状態にあるか否かを判定し、赤色灯が点灯状態にあると判定した場合に当該信号機が敷設された交差点の手前に自車両を自動停止制御により停止させる制御である。更に、一時停止標識自動停止制御は、カメラセンサ15bにより取得された画像(車両前方画像)から、一時停止標識が自車両の前方に存在するか否かを判定し、一時停止標識が存在すると判定した場合に当該標識の手前に自車両を自動停止制御により停止させる制御である。更に、本発明は、運転支援装置のうち制動装置以外の装置(例えば、操舵装置)に異常が発生したと判定した場合、自車両を自動停止制御により停止させる場合にも適用することができる。
【0089】
本実施支援装置は、第1のブザー音、第2のブザー音、第3のブザー音を表示器51への報知表示とともに発生させていたが、これらのブザー音を発生させなくてもよい。加えて、第1のブザー音に代え、「ブレーキペダルを踏んで下さい。」といったボイスメッセージをスピーカ52から発生させてもよい。第2のブザー音に代え、「自動ブレーキが解除されるので、ブレーキペダルを踏んで下さい。」といったボイスメッセージをスピーカ52から発生させてもよい。更に、第3のブザー音に代え、「急勾配のため、ブレーキペダルを踏んで下さい。」といったボイスメッセージをスピーカ52から発生させてもよい。
【0090】
本実施支援装置は、急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知を、自車両の車速SDPhが車速閾値SPDthにまで低下した時点から「自車両が停止するまでに要する時間よりも短い一定時間」だけ行うように構成されてもよい。同様に、本実施支援装置は、停止時ブレーキ操作要求報知を、自車両が停止した時点から「待機時間よりも短い一定時間」だけ行うように構成されてもよい。更に、本実施形態は、自動ブレーキ解除時ブレーキ操作要求報知を、待機時間が経過する時点よりも所定の時間だけ前の時点から開始してもよい。
【0091】
本実施支援装置は、自車両の前後方向加速度を検出する加速度センサを用いて、周知の方法により、自車両が走行している道路の勾配(傾斜角)Incを検出してもよい。加えて、本実施形態は、自車両が走行している道路の勾配Incを直接計測可能な傾斜角センサを備え、その傾斜角センサの出力信号に基いて、自車両が走行している道路の勾配(傾斜角)Incを検出してもよい。また、地図データベース42は、道路の勾配の大きさが閾値勾配以上である領域を記憶していて、ナビゲーションECU40が自車両の位置に基いて、自車両が走行している道路が勾配閾値よりも大きい勾配を有する道路であるか否かを判定してもよい。その場合、運転支援ECUは、ナビゲーションECU40によるその判定結果をナビゲーションECU40から取得し、ステップ425の判定に利用してもよい。
【0092】
本実施支援装置は、以下の総ての条件(a)乃至(d)が成立したとき、事前報知条件が成立したと判定して急勾配時停止前ブレーキ操作要求報知を実行してもよい。
(a)追従車間距離制御による自動停止制御の実行中である。
(b)追従対象車両が停止している。なお、この(b)の条件は、(a)の条件が成立するための条件として含まれていてもよい。
(c)自車両が走行している道路の勾配の大きさabs(Inc)が閾値勾配Ith以上である。
(d)自車両が走行している(停止していない)。
(e)自車両から「自動停止制御による目標停止位置」までの距離が閾値距離よりも長い距離から当該閾値距離以下の距離となった。
更に、上記条件(e)は、以下の条件(f)であってもよい。
(f)自車両と追従対象車両との距離が所定車間距離以下となった。
また、上記条件(a)及び(b)は、赤信号自動停止制御及び一時停止標識自動停止制御を実行中である、との条件に置換することができる。
【符号の説明】
【0093】
10…運転支援ECU、12…ブレーキペダル操作量センサ、12a…ブレーキペダル、13…ストップランプスイッチ、14…車速センサ、15…車両環境検出センサ(周囲センサ)、15a…レーダセンサ、15b…カメラセンサ、30…ブレーキECU、31…ブレーキアクチュエータ、40…ナビゲーションECU、41…GPS受信機、42…地図データベース、50…報知ECU、51…表示器、52…スピーカ。