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特許7596982ソーラー制御システム、方法、プログラム、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ソーラー制御システム、方法、プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20241203BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241203BHJP
   H02H 7/12 20060101ALI20241203BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241203BHJP
   B60L 8/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H02J7/35
H02J7/00 P
H02H7/12 G
B60L3/00 J
B60L8/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021139803
(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公開番号】P2023033874
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉尾 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲朗
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-133905(JP,A)
【文献】特開2018-019526(JP,A)
【文献】特開2021-087291(JP,A)
【文献】特開2019-187102(JP,A)
【文献】特開2020-156207(JP,A)
【文献】特開2021-035093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0164435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02H 7/00
H02H 7/10ー7/20
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H02J 1/00-1/16
H02J 3/00-5/00
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーパネルで発電した電力を出力するソーラーユニットと、
前記ソーラーユニットから電力が供給されるバッテリと、
前記ソーラーユニットと前記バッテリとの間に並列に挿入され、前記ソーラーユニットから前記バッテリへ供給される電力を指令値に基づいて制御する第1DCDCコンバータ及び第2DCDCコンバータと、
前記第1DCDCコンバータから出力される第1出力電流及び前記第2DCDCコンバータから出力される第2出力電流をそれぞれ検出するセンサと
システムに異常が発生した際、前記第1出力電流と前記第2出力電流との差分値に基づいて、前記センサに異常が発生しているか否かの判定を行う処理部と、を備え
前記処理部は、システムに異常が発生した際、出力電流をゼロにする前記指令値が指示されている状態における前記第1出力電流と前記第2出力電流との合計値に基づいて、前記第1DCDCコンバータ及び前記第2DCDCコンバータの少なくとも1つに異常が発生しているか否かの判定を行う、ソーラー制御システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記第1出力電流と前記第2出力電流との合計値に基づく判定を、前記第1出力電流と前記第2出力電流との差分値に基づく判定の後に実施する、請求項に記載のソーラー制御システム。
【請求項3】
前記処理部は、前記第1出力電流と前記第2出力電流との差分値が第1閾値を超える場合に、前記センサが常に最大値を検出する異常状態であると判定する、請求項1又は2に記載のソーラー制御システム。
【請求項4】
前記処理部は、前記第1出力電流と前記第2出力電流との合計値が第2閾値を超える場合に、前記第1DCDCコンバータ及び前記第2DCDCコンバータの少なくとも1つが前記指令値に従わない過剰な電流を出力する異常状態であると判定する、請求項1又は2に記載のソーラー制御システム。
【請求項5】
ソーラーパネルで発電した電力を出力するソーラーユニットと、
前記ソーラーユニットから電力が供給されるバッテリと、
前記ソーラーユニットと前記バッテリとの間に並列に挿入され、前記ソーラーユニットから前記バッテリへ供給される電力を指令値に基づいて制御する第1DCDCコンバータ及び第2DCDCコンバータと、
前記第1DCDCコンバータから出力される第1出力電流及び前記第2DCDCコンバータから出力される第2出力電流をそれぞれ検出するセンサと、を備える、ソーラー制御システムが行う方法であって、
システムに異常が発生した際、前記第1出力電流と前記第2出力電流との差分値に基づいて、前記センサに異常が発生しているか否かの判定を行うステップと、
システムに異常が発生した際、出力電流をゼロにする前記指令値が指示されている状態における前記第1出力電流と前記第2出力電流との合計値に基づいて、前記第1DCDCコンバータ及び前記第2DCDCコンバータの少なくとも1つに異常が発生しているか否かの判定を行うステップと、を含む、方法。
【請求項6】
ソーラーパネルで発電した電力を出力するソーラーユニットと、
前記ソーラーユニットから電力が供給されるバッテリと、
前記ソーラーユニットと前記バッテリとの間に並列に挿入され、前記ソーラーユニットから前記バッテリへ供給される電力を指令値に基づいて制御する第1DCDCコンバータ及び第2DCDCコンバータと、
前記第1DCDCコンバータから出力される第1出力電流及び前記第2DCDCコンバータから出力される第2出力電流をそれぞれ検出するセンサと、を備える、ソーラー制御システムのコンピューターが実行するプログラムであって、
システムに異常が発生した際、前記第1出力電流と前記第2出力電流との差分値に基づいて、前記センサに異常が発生しているか否かの判定を行うステップと、
システムに異常が発生した際、出力電流をゼロにする前記指令値が指示されている状態における前記第1出力電流と前記第2出力電流との合計値に基づいて、前記第1DCDCコンバータ及び前記第2DCDCコンバータの少なくとも1つに異常が発生しているか否かの判定を行うステップと、を含む、プログラム。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のソーラー制御システムを搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ソーラーパネルの発電電力を用いたバッテリの充電を制御するソーラー制御システムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、2つのソーラーパネルと、各ソーラーパネルに対応して設けられる2つのソーラーDCDCコンバータと、ソーラーDCDCコンバータの出力電力を高圧バッテリに供給する高圧DCDCコンバータと、ソーラーDCDCコンバータの出力電力を補機バッテリに供給する補機DCDCコンバータと、を備えた、ソーラー制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-087291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている複数のDCDCコンバータを備えたシステムでは、システムに異常が生じた場合に、異常が生じているDCDCコンバータを特定することは可能である。しかしながら、発生した異常が、DCDCコンバータ自体に起因するものなのか、DCDCコンバータの入出力を監視するセンサに起因するものなのかを、区別して判断することができない。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、DCDCコンバータに異常が生じた場合に、DCDCコンバータ自体に起因する異常であるのかDCDCコンバータの出力を監視するセンサに起因する異常であるのかを判断することができる、ソーラー制御システムなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、ソーラーパネルで発電した電力を出力するソーラーユニットと、ソーラーユニットから電力が供給されるバッテリと、ソーラーユニットとバッテリとの間に並列に挿入され、ソーラーユニットからバッテリへ供給される電力を指令値に基づいて制御する第1DCDCコンバータ及び第2DCDCコンバータと、第1DCDCコンバータから出力される第1出力電流及び第2DCDCコンバータから出力される第2出力電流をそれぞれ検出するセンサと、システムに異常が発生した際、第1出力電流と第2出力電流との差分値に基づいて、センサに異常が発生しているか否かの判定を行い、出力電流をゼロにする指令値が指示されている状態における第1出力電流と第2出力電流との合計値に基づいて、第1DCDCコンバータ及び第2DCDCコンバータの少なくとも1つに異常が発生しているか否かの判定を行う処理部と、を備える、ソーラー制御システムである。
【発明の効果】
【0007】
上記本開示のソーラー制御システムなどによれば、DCDCコンバータに異常が生じた場合に、DCDCコンバータ自体に起因する異常であるのかDCDCコンバータの出力を監視するセンサに起因する異常であるのかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るソーラー制御システムの概略構成図
図2】補機DDCの詳細な回路例
図3】ソーラー制御システムが実行する第1異常検出処理のフローチャート
図4】ソーラー制御システムが実行する第2異常検出処理のフローチャート
図5】ソーラー制御システムが実行する第2異常検出処理の変形例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示によるソーラー制御システムは、補機DCDCコンバータを2つのコンバータ回路を並列に接続した構成とし、2つのコンバータ回路にそれぞれ流れる電流の差分値と、2つのコンバータ回路にそれぞれ流れる電流の合計値とに基づいて、補機DCDCコンバータ自体に異常が生じているのか補機DCDCコンバータの出力センサに異常が生じているのかを判断する。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るソーラー制御システムの概略構成を示すブロック図である。図1に例示したソーラー制御システム1は、2つのソーラーパネル11及び12と、2つのソーラーDDC21及び22と、高圧DDC30と、補機DDC40と、高圧バッテリ50と、補機バッテリ60と、コンデンサ70と、処理部100と、を備えている。このソーラー制御システム1は、車両などに搭載することができる。
【0011】
ソーラーパネル11及び12は、それぞれ、太陽光の照射を受けて発電する発電装置であり、典型的には太陽電池セルの集合体である太陽電池モジュールである。このソーラーパネル11及び12は、例えば車両のルーフなどに設置することができる。一方のソーラーパネル11は、後述する一方のソーラーDDC21に接続されており、ソーラーパネル11で発電された電力がソーラーDDC21に出力される。他方のソーラーパネル12は、後述する他方のソーラーDDC22に接続されており、ソーラーパネル12で発電された電力は、ソーラーDDC22に出力される。ソーラーパネル11とソーラーパネル12とは、性能、容量、サイズ、及び形状などが全て同じであってもよいし、一部又は全部が異なっていてもよい。
【0012】
ソーラーDDC21及び22は、ソーラーパネル11及び12に対応して設けられ、ソーラーパネル11及び12でそれぞれ発電された電力を、高圧DDC30及び補機DDC40に供給するDCDCコンバータである。ソーラーDDC21は、電力供給の際、入力電圧であるソーラーパネル11の発電電圧を所定の電圧に変換(昇圧/降圧)して、高圧DDC30及び補機DDC40に出力することができる。また、ソーラーDDC22は、電力供給の際、入力電圧であるソーラーパネル12の発電電圧を所定の電圧に変換(昇圧/降圧)して、高圧DDC30及び補機DDC40に出力することができる。ソーラーDDC21及び22の構成や性能は、同じであってもよいし、ソーラーパネル11及び12に応じて異ならせてもよい。
【0013】
上述したソーラーパネル11及び12、及びソーラーDDC21及び22は、ソーラーパネル11とソーラーDDC21とによって1つのソーラーユニットを構成し、ソーラーパネル12とソーラーDDC22とによって1つのソーラーユニットを構成する。本実施形態のソーラー制御システム1では、この2つのソーラーユニットを並列に設けた構成を一例に説明するが、ソーラー制御システムとしてソーラーユニットを1つだけ設けた構成にしてもよいし、ソーラーユニットを3つ以上並列に設けた構成にしてもよい。
【0014】
高圧DDC30は、ソーラーDDC21及び22が出力する電力を、高圧バッテリ50に供給するDCDCコンバータである。高圧DDC30は、電力供給の際、入力電圧であるソーラーDDC21及び22の出力電圧を、所定の電圧に変換(昇圧)して、高圧バッテリ50に出力することができる。
【0015】
補機DDC40は、ソーラーDDC21及び22が出力する電力を、補機バッテリ60に供給するDCDCコンバータである。補機DDC40は、電力供給の際、入力電圧であるソーラーDDC21及び22の出力電圧を、所定の電圧に変換(降圧)して、補機バッテリ60に出力することができる。本実施形態の補機DDC40は、出力可能な電力容量を増大させるために、同一のコンバータ回路(第1DDC、第2DDC)を2つ並列に接続して構成(2相構成)されている。
【0016】
図2に、同一のDCDCコンバータを2つ並列に接続して構成された補機DDC40の詳細な回路の一例を示す。図2に例示する補機DDC40は、第1DDC41と、第2DDC42と、出力電圧センサ43と、第1出力電流センサ44と、第2出力電流センサ45と、を含む。
【0017】
第1DDC41は、スイッチング素子M11、スイッチング素子M12、インダクタL1、及び駆動回路D1を含むDCDCコンバータである。この第1DDC41は、図示しないDDC制御部から受信した出力電流指令値に基づき、駆動回路D1によってスイッチング素子M11及びM12のON/OFF動作を制御する。第2DDC42は、スイッチング素子M21、スイッチング素子M22、インダクタL2、及び駆動回路D2を含むDCDCコンバータである。この第2DDC42は、図示しないDDC制御部から受信した出力電流指令値に基づき、駆動回路D2によってスイッチング素子M21及びM22のON/OFF動作を制御する。第1DDC41と第2DDC42とは、並列に接続されている。出力電圧センサ43は、補機DDC40の出力側(補機バッテリ60側)の電圧を監視及び検出するセンサである。第1出力電流センサ44は、第1DDC41から出力側(補機バッテリ60側)に出力される電流を監視及び検出するセンサである。第2出力電流センサ45は、第2DDC42から出力側(補機バッテリ60側)に出力される電流を監視及び検出するセンサである。これらのセンサでそれぞれ検出された出力電圧及び出力電流の値は、処理部100に出力される。
【0018】
なお、補機DDC40には、ソーラーDDC21及び22から補機DDC40に入力される電流を検出するセンサや、補機DDC40の入力側の電圧を検出するセンサが設けられてもよい。また、出力電圧センサ43、第1出力電流センサ44、及び第2出力電流センサ45の一部又は全部は、補機DDC40以外のソーラー制御システム1の構成として設けられてもよい。
【0019】
高圧バッテリ50は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの、充放電可能に構成された二次電池である。この高圧バッテリ50は、高圧DDC30が出力する電力によって充電可能に高圧DDC30と接続されている。車両に搭載される高圧バッテリ50としては、スタータモーターや電動モーターなどの、車両を駆動させるための主機的な機器(図示せず)の動作に必要な電力を供給することができる、いわゆる駆動用バッテリを例示できる。
【0020】
補機バッテリ60は、例えばリチウムイオン電池や鉛蓄電池などの、充放電可能に構成された二次電池である。この補機バッテリ60は、補機DDC40が出力する電力によって充電可能に補機DDC40と接続されている。車両に搭載される補機バッテリ60は、ヘッドランプや室内灯などの灯火類、ヒーターやクーラーなどの空調類、及び自動運転や先進運転支援の装置などの、車両を駆動させるため以外の補機的な機器(図示せず)の動作に必要な電力を供給することができるバッテリである。
【0021】
コンデンサ70は、ソーラーDDC21及び22と高圧DDC30及び補機DDC40との間に接続されている。このコンデンサ70は、ソーラーパネル11及び12で発生した電力を必要に応じて充放電したり、ソーラーDDC21及び22の出力と高圧DDC30及び補機DDC40の入力との間に生じる電圧を安定させたり、するためなどに用いられる大容量の容量素子である。なお、このコンデンサ70は、ソーラー制御システム1の構成から省かれてもよい。
【0022】
処理部100は、補機DDC40で検出された出力電圧及び出力電流のうち、少なくとも第1DDC41の出力電流と第2DDC42の出力電流とを取得する。また、処理部100は、補機DDC40に指示される出力電流指令値をモニタすることができる。そして、処理部100は、補機DDC40に異常が生じた場合に、補機DDC40から取得した2つの出力電流の値と出力電流指令値とに基づいて、補機DDC40自体に異常が生じているのか、補機DDC40のセンサ(第1出力電流センサ44又は第2出力電流センサ45)に異常が生じているのかを、区別して判断する。
【0023】
なお、ソーラーDDC21及び22、高圧DDC30、補機DDC40、及び処理部100の一部又は全部は、典型的にはプロセッサ、メモリ、及び入出力インタフェースなどを含んだ電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)として構成され得る。この電子制御装置は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、上述した様々な制御を実施することができる。
【0024】
[制御]
次に、図3乃至図5をさらに参照して、補機DDC40に異常が発生している場合に、ソーラー制御システム1によって実行される異常検出処理を説明する。この異常検出処理には、センサ(第1出力電流センサ44又は第2出力電流センサ45)のHigh固着の検出を目的とする第1異常検出処理と、第1DDC41又は第2DDC42による過剰出力の検出を目的とする第2異常検出処理とがある。この第1異常検出処理と第2異常検出処理とは、並列的に実行される。
【0025】
(1)第1異常検出処理
図3は、ソーラー制御システム1の処理部100が実行する第1異常検出処理の手順を説明するフローチャートである。この図3に例示した第1異常検出処理は、例えば、車両のイグニッションがオンされると開始され、異常の原因が確定して処理が終了するまで所定の周期(例えば8ms)で繰り返し実施される。なお、処理の開始時には、後述する第1判定カウンタのカウント値がリセットされる。
【0026】
(ステップS301)
処理部100は、ソーラー制御システム1において他の異常が確定しているか否かを判断する。他の異常とは、本第1異常検出処理で検出対象とするセンサのHigh固着以外の異常であり、例えば、ソーラーDDC21の異常や高圧DDC30の異常などを含んでもよい。他の異常がすでに確定している場合に第1異常検出処理を実施しても、正確な結果や信頼性の高い結果が得られないと考えられる。よって、他の異常が確定している場合は(ステップS301、はい)、本第1異常検出処理が終了する。一方、他の異常が確定していない場合は(ステップS301、いいえ)、ステップS302に処理が進む。
【0027】
(ステップS302)
処理部100は、2相間の電流偏差を演算する。2相間の電流偏差とは、補機DDC40の第1DDC41から出力される電流と第2DDC42から出力される電流との差分値である。処理部100は、補機DDC40から第1出力電流センサ44が検出した電流の値と第2出力電流センサ45が検出した電流の値とを取得し、それらの値の差分をとって電流差分値(電流偏差)を演算する。2相間の電流偏差が演算されると、ステップS303に処理が進む。
【0028】
(ステップS303)
処理部100は、2相間の電流偏差が異常であるか否かを判定する。この判定は、補機DDC40の第1DDC41と第2DDC42との電流差分値の絶対値が予め定めた第1基準値を超えるか否かによって行われる。異常検出の条件は、式[|第1DDC41の出力電流値-第2DDC42の出力電流値|>第1基準値]で表すことができる。第1基準値は、スイッチング素子、インダクタ、及び各出力電流センサのばらつきや性能などを考慮して、第1DDC41と第2DDC42とが共に正常に動作している状態で許容される電流差分値に基づいた所定の値に設定することができる。2相間の電流偏差が異常である場合は(ステップS303、はい)、ステップS304に処理が進む。一方、2相間の電流偏差が正常である場合は(ステップS303、いいえ)、ステップS305に処理が進む。
【0029】
(ステップS304)
処理部100は、第1判定カウンタの値を1つインクリメントしてカウントアップする。第1判定カウンタは、2相間の電流偏差の異常確定を高信頼度で実現するためのカウンタであり、2相間の電流偏差の異常状態が継続している時間を計るために用いられる。この第1判定カウンタは、典型的には処理部100に設けられる。第1判定カウンタの値がカウントアップされると、ステップS306に処理が進む。
【0030】
(ステップS305)
処理部100は、第1判定カウンタの値をゼロにしてリセットする。このリセットは、発生から継続していた2相間の電流偏差の異常状態が途切れたことを意味する。第1判定カウンタの値がリセットされると、ステップS306に処理が進む。
【0031】
(ステップS306)
処理部100は、第1判定カウンタの値が第1閾値を超えるか否かを判断する。この判断は、2相間の電流偏差の異常を高信頼度で確定するために行われる。よって、異常発生から異常確定までに掛かる時間に相当する第1閾値は、第1DDC41及び第2DDC42の仕様や性能などに基づいて、高信頼度を担保できる任意の値(カウント値又は時間)に設定される。第1判定カウンタの値が第1閾値を超える場合は(ステップS306、はい)、ステップS308に処理が進む。一方、第1判定カウンタの値が第1閾値を超えない場合は(ステップS306、いいえ)、ステップS307に処理が進む。
【0032】
(ステップS307)
処理部100は、上記ステップS301からステップS306までの処理を一定の周期で繰り返し実施すべく、処理を実施する所定の周期が到来したか否かを判断する。所定の周期は、車両に求められる性能やソーラー制御システム1に用いられる部品/素子の耐久性などに基づいて、任意に設定することができる。周期が到来した場合は(ステップS307、はい)、ステップS301に処理が進む。
【0033】
(ステップS308)
処理部100は、2相間の電流偏差の異常に基づいて、センサに発生している常に最大値を検出値として出力する異常である、いわゆるHigh固着の異常を確定する。センサのHigh固着異常が確定されると、本第1異常検出処理が終了する。
【0034】
(2)第2異常検出処理
図4は、ソーラー制御システム1の処理部100が実行する第2異常検出処理の手順を説明するフローチャートである。この図4に例示した第2異常検出処理は、例えば、第1異常検出処理と同様に車両のイグニッションがオンされると開始され、異常の原因が確定して処理が終了するまで所定の周期(例えば8ms)で繰り返し実施される。なお、処理の開始時には、後述する第2判定カウンタのカウント値がリセットされる。
【0035】
(ステップS401)
処理部100は、ソーラー制御システム1において他の異常が確定しているか否かを判断する。他の異常とは、本第2異常検出処理で検出対象とする第1DDC41又は第2DDC42による過剰出力以外の異常であり、例えば、ソーラーDDC21の異常や高圧DDC30の異常などを含んでもよい。他の異常がすでに確定している場合に第2異常検出処理を実施しても、正確な結果や信頼性の高い結果が得られないと考えられる。よって、他の異常が確定している場合は(ステップS401、はい)、本第2異常検出処理が終了する。一方、他の異常が確定していない場合は(ステップS401、いいえ)、ステップS402に処理が進む。
【0036】
(ステップS402)
処理部100は、2相の合計電流を演算する。2相の合計電流とは、DDC制御部(図示せず)から出力電流をゼロとする指令値がそれぞれの駆動回路D1及びD2に与えられた状態における、補機DDC40の第1DDC41から出力される電流と第2DDC42から出力される電流との合計値である。処理部100は、補機DDC40から第1出力電流センサ44が検出した電流の値と第2出力電流センサ45が検出した電流の値とを取得し、それらの値を加算して合計電流値を演算する。2相間の合計電流が演算されると、ステップS403に処理が進む。
【0037】
(ステップS403)
処理部100は、2相の合計電流が異常であるか否かを判定する。この判定は、出力電流指令値がゼロの状態において、補機DDC40の第1DDC41と第2DDC42との合計電流値が予め定めた第2基準値を超えるか否かによって行われる。異常検出の条件は、式[|第1DDC41の出力電流値+第2DDC42の出力電流値|>第2基準値、かつ、出力電流指令値=0]で表すことができる。第2基準値は、正常に動作している第1DDC41と第2DDC42に対して出力電流をゼロとする指令値がなされた場合には電流は流れないことに基づいて、所定の値に設定することができる。2相の合計電流が異常である場合は(ステップS403、はい)、ステップS404に処理が進む。一方、2相の合計電流が正常である場合は(ステップS403、いいえ)、ステップS405に処理が進む。
【0038】
(ステップS404)
処理部100は、第2判定カウンタの値を1つインクリメントしてカウントアップする。第2判定カウンタは、2相の合計電流の異常確定を高信頼度で実現するためのカウンタであり、2相の合計電流の異常状態が継続している時間を計るために用いられる。この第2判定カウンタは、典型的には処理部100に設けられる。第2判定カウンタの値がカウントアップされると、ステップS406に処理が進む。
【0039】
(ステップS405)
処理部100は、第2判定カウンタの値をゼロにしてリセットする。このリセットは、発生から継続していた2相の合計電流の異常状態が途切れたことを意味する。第2判定カウンタの値がリセットされると、ステップS406に処理が進む。
【0040】
(ステップS406)
処理部100は、第2判定カウンタの値が第2閾値を超えるか否かを判断する。この判断は、2相の合計電流の異常を高信頼度で確定するために行われる。よって、第2閾値は、第1DDC41及び第2DDC42の仕様や性能などに基づいて、高信頼度を担保できる任意の値(カウント値、時間)に設定される。本実施形態では、センサのHigh固着を排除して第1DDC41又は第2DDC42による過剰出力の異常を高精度に検出するために、第1異常検出処理による異常の確定判断が終了してから第2異常検出処理による異常の確定判断がされるように処理のタイミングが制御される。よって、異常発生から異常確定までに掛かる時間に相当する第2閾値は、上述した第1閾値よりも大きく、すなわち時間が長く設定される(第1閾値<第2閾値)。第2異常検出処理を実行中に第1異常検出処理による異常の確定が先に行われることで、上記ステップS401で「はい」の判断がされて、第2異常検出処理による異常検出を終了させることができる。第2判定カウンタの値が第2閾値を超える場合は(ステップS406、はい)、ステップS408に処理が進む。一方、第2判定カウンタの値が第2閾値を超えない場合は(ステップS406、いいえ)、ステップS407に処理が進む。
【0041】
(ステップS407)
処理部100は、上記ステップS401からステップS406の処理を一定の周期で繰り返し実施すべく、処理を実施する所定の周期が到来したか否かを判断する。所定の周期は、車両に求められる性能やソーラー制御システム1に用いられる部品/素子の耐久性などに基づいて、任意に設定することができる。この周期は、第1異常検出処理と第2異常検出処理とで同じにすることができる。周期が到来した場合は(ステップS407、はい)、ステップS401に処理が進む。
【0042】
(ステップS408)
処理部100は、2相の合計電流の異常に基づいて、補機DDC40の第1DDC41及び第2DDC42による過剰出力の異常を確定する。補機DDC40の過剰出力異常が確定されると、本第2異常検出処理が終了する。
【0043】
このように、上記ステップS301乃至S308による第1異常検出処理と、上記ステップS401乃至S408による第2異常検出処理とを行うことによって、DCDCコンバータを並列構成にした補機DDC40に生じた異常について、センサのHigh固着の異常か、第1DDC41及び第2DDC42による過剰出力の異常かを、区別して判断することができる。
【0044】
(3)第2異常検出処理の変形例
図5は、ソーラー制御システム1の処理部100が実行する第2異常検出処理の変形例の手順を説明するフローチャートである。この図5に示した第2異常検出処理の変形例は、第1閾値よりも時間が長い第2閾値を用いることなく、第1異常検出処理による異常の確定判断が終了してから第2異常検出処理による異常の確定判断がされるように、処理のタイミングを制御するものである。
【0045】
図5に示す変形例の第2異常検出処理は、図4に示す第2異常検出処理と比べて、ステップS401とステップS402との間にステップS501が追加され、ステップS406がステップS502に代えられていることが異なる。以下、この異なるステップを中心に、同じ処理を行う一部の説明について省略をしつつ、変形例の第2異常検出処理を説明する。
【0046】
(ステップS401)
処理部100は、ソーラー制御システム1において他の異常が確定しているか否かを判断する。他の異常が確定している場合は(ステップS401、はい)、ステップS501に処理が進む。一方、他の異常が確定していない場合は(ステップS401、いいえ)、本第2異常検出処理が終了する。
【0047】
(ステップS501)
処理部100は、補機DDC40に指示される出力電流指令値が予め定めた範囲で所定の時間以上安定しているか否かを判断する。正常なDCDCコンバータの制御では、出力電流指令値が予め定めた範囲で安定するが、異常が発生した直後には電流値を元に戻そうとして出力電流指令値が大きく変化する。よって、出力電流指令値の変化を検知してから、つまり第1異常検出処理において第1判定カウンタのカウントアップが開始されてから所定の時間を待機した後で第2判定カウンタをリセットする(下記ステップS405)、つまり第2異常検出処理のカウントアップを開始することで、第1異常検出処理による異常の確定判断が終了してから第2異常検出処理による異常の確定判断がされるように、処理のタイミングを制御することができる。所定の時間には、2つの処理のタイミングをずらす時間に応じた任意の値を設定することができる。出力電流指令値が所定の時間以上安定している場合は(ステップS501、はい)、ステップS402に処理が進む。一方、出力電流指令値が所定の時間以上安定していない場合は(ステップS501、いいえ)、ステップS405に処理が進む。
【0048】
(ステップS404)
処理部100は、第2判定カウンタの値を1つインクリメントしてカウントアップする。第2判定カウンタの値がカウントアップされると、ステップS502に処理が進む。
【0049】
(ステップS405)
処理部100は、第2判定カウンタの値をゼロにしてリセットする。第2判定カウンタの値がリセットされると、ステップS502に処理が進む。
【0050】
(ステップS502)
処理部100は、第2判定カウンタの値が第1閾値を超えるか否かを判断する。この判断は、2相の合計電流の異常を高信頼度で確定するために行われる。上記ステップS501において、補機DDC40の出力電流指令値が所定の時間以上安定していることを確認してから処理を進めているため、第1異常検出処理と同じ第1閾値を判断基準として用いても、第1異常検出処理による異常の確定判断が終了してから第2異常検出処理による異常の確定判断がされるように処理のタイミングを制御することができる。第2判定カウンタの値が第1閾値を超える場合は(ステップS502、はい)、ステップS408に処理が進む。一方、第2判定カウンタの値が第1閾値を超えない場合は(ステップS502、いいえ)、ステップS407に処理が進む。
【0051】
(ステップS407)
処理部100は、上記ステップS401からステップS502までの処理を一定の周期で繰り返し実施すべく、処理を実施する所定の周期が到来したか否かを判断する。周期が到来した場合は(ステップS407、はい)、ステップS401に処理が進む。
【0052】
このように、異常が生じたときに出力電流指令値の安定状態が所定の時間継続することを確認してから第2異常検出処理を実質的に開始させることで、上述した第1異常検出処理と本第2異常検出処理とを行うことによって、DCDCコンバータを並列構成にした補機DDC40に生じた異常について、同じ第1閾値を用いつつ、センサのHigh固着の異常か、第1DDC41及び第2DDC42による過剰出力の異常かを、区別して判断することができる。
【0053】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係るソーラー制御システム1によれば、補機DDC40を第1DDC41と第2DDC42とによる並列構成にしている。これにより、補機DDC40に異常が発生している場合、補機DDC40の入力側の電流を検出しなくても、第1DDC41の出力電流と第2DDC42の出力電流との差分値である電流偏差と、出力電流をゼロにする指令値に従った第1DDC41の出力電流と第2DDC42の出力電流との合計値とに基づいて、補機DDC40自体に異常(DDCからの過剰出力)が生じているのか、補機DDC40の出力電流センサ44又は45に異常(センサのHigh固着)が生じているのかを、区別して判断することができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、補機DDC40が第1DDC41と第2DDC42とによる2並列構成である例を説明した。しかし、補機DDC40は、DCDCコンバータを3つ以上並列に接続した構成であってもよい。このDCDCコンバータを3並列以上とする構成の場合には、各相に出力電流センサを設け、各々2相のDCDCコンバータ間の電流偏差をそれぞれ判断することによってHigh固着しているセンサを特定することが可能である。
【0055】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、ソーラー制御システムだけでなく、ソーラー制御システムが行う方法、その方法のプログラム、そのプログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、ソーラー制御システムを備えた車両などとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示のソーラー制御システムは、ソーラーパネルで発電された電力を利用してバッテリを充電する車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 ソーラー制御システム
11、12 ソーラーパネル
21、22 ソーラーDDC
30 高圧DDC
40 補機DDC
41 第1DDC
42 第2DDC
43 出力電圧センサ
44 第1出力電流センサ
45 第2出力電流センサ
50 高圧バッテリ
60 補機バッテリ
70 コンデンサ
100 処理部
M11、M12、M21、M22 スイッチング素子
L1、L2 インダクタ
D1、D2 駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5