(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241203BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241203BHJP
H02P 27/08 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H02M7/48 M
B60L3/00 J
H02P27/08
(21)【出願番号】P 2021143378
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】栗原 貴史
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/098481(WO,A1)
【文献】特開2011-234538(JP,A)
【文献】特開2002-101684(JP,A)
【文献】特開2007-209158(JP,A)
【文献】国際公開第2015/140960(WO,A1)
【文献】特開2012-080703(JP,A)
【文献】特開2008-154426(JP,A)
【文献】特開2005-057918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B60L 3/00
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(200)とモータ(400)との間で高電位側配線(301)と低電位側配線(302)とを介して電力変換を行う電力変換装置(100)であって、
前記高電位側配線と前記低電位側配線とに接続され、複数のスイッチ(521、522)を有するインバータ(500)と、
前記インバータに並列する態様で前記高電位側配線と前記低電位側配線とに接続され、なおかつ、アースに接続されるYコンデンサ(310、320)と、
前記インバータが地絡した場合に、前記インバータが地絡していない場合よりも複数の前記スイッチのスイッチ回数を減らすように複数の前記スイッチを制御する制御装置(600)と、を備え
、
前記制御装置は、前記インバータが地絡した場合に、前記モータのトルクと回転数の少なくとも一方を小さくするモータ調整部(630)を有する電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、複数の前記スイッチそれぞれのオンオフの切り替えを制御するキャリア波(420)のキャリア周波数を低減するキャリア制御部(610)を有し、前記インバータが地絡した場合に前記キャリア制御部が前記キャリア周波数を低減することで前記スイッチ回数を減らす請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記モータを駆動する駆動波(410)の駆動方式を変更する駆動制御部(620)を有し、前記インバータが地絡した場合に前記駆動制御部が前記駆動方式を変更することで前記スイッチ回数を減らす請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記駆動制御部が前記駆動波を3相変調方式から2相変調方式へと変更することで前記スイッチ回数を減らす請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記駆動制御部が前記駆動波を正弦波から矩形波に変更することで前記スイッチ回数を減らす請求項3または4に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示はバッテリとモータとの間で電力変換を行う電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはバッテリBにパワーラインSを介して接続される平滑回路Fと、それに並列に接続される3相交流変換回路Eが記載されている。平滑回路Fには、3相交流変換回路Eから平滑回路Fに漏れ出す高周波成分を接地で除去するYコンデンサが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3相交流変換回路Eが地絡すると意図しない電流がYコンデンサに流れることがある。その結果Yコンデンサが発熱する虞があった。
【0005】
そこで本開示の目的は、インバータが地絡した時に流れる電流によってYコンデンサが発熱することの抑制された電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による電力変換装置は、
バッテリ(200)とモータ(400)との間で高電位側配線(301)と低電位側配線(302)とを介して電力変換を行う電力変換装置(100)であって、
高電位側配線と低電位側配線とに接続され、複数のスイッチ(521、522)を有するインバータ(500)と、
インバータに並列する態様で高電位側配線と低電位側配線とに接続され、なおかつ、アースに接続されるYコンデンサ(310、320)と、
インバータが地絡した場合に、インバータが地絡していない場合よりも複数のスイッチのスイッチ回数を減らすように複数のスイッチを制御する制御装置(600)と、を備え、
制御装置は、インバータが地絡した場合に、モータのトルクと回転数の少なくとも一方を小さくするモータ調整部(630)を有する。
【0007】
これによれば、インバータ(500)が地絡したときにYコンデンサ(310、320)に流れる電流が抑制されやすくなっている。Yコンデンサ(310、320)が発熱することを抑制することができるようになっている。
【0008】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】キャリア制御部を含む電力変換装置と車載システムを説明する電気回路図である。
【
図2】キャリア周波数とスイッチ回数との関係を説明する模式図である。
【
図3】制御装置の処理を説明するフローチャートである。
【
図4】キャリア周波数と実効値との関係を説明するデータの一例を表す図である。
【
図5】駆動制御部を含む電力変換装置と車載システムを説明する電気回路図である。
【
図6】制御装置の処理を説明するフローチャートである。
【
図7】制御方式とスイッチ回数との関係を説明する模式図である。
【
図8】キャリア制御部と駆動制御部を含む電力変換装置と車載システムを説明する電気回路図である。
【
図9】制御装置の処理を説明するフローチャートである。
【
図10】キャリア制御部と駆動制御部とモータ制御部を含む電力変換装置と車載システムを説明する電気回路図である。
【
図11】制御装置の処理を説明するフローチャートである。
【
図12】モータの回転数とトルクの関係を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0011】
また、各実施形態で組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
先ず、
図1に基づいて車載システム10を説明する。この車載システム10は電気自動車用のシステムを構成している。車載システム10は電力変換装置100、バッテリ200、モータ400、および、漏電検出器700を有している。電力変換装置100は第1Yコンデンサ310、第2Yコンデンサ320、インバータ500、および、制御装置600を有している。
【0013】
バッテリ200は複数の二次電池を有する。これら複数の二次電池は直列接続された電池スタックを構成している。この電池スタックのSOCがバッテリ200のSOCに相当する。二次電池としてはリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、および、有機ラジカル電池などを採用することができる。バッテリ200の高電位側の電極には高電位側配線301が接続されている。バッテリ200の低電位側の電極には低電位側配線302が接続されている。バッテリ200は高電位側配線301と低電位側配線302を介してモータ400に接続されている。
【0014】
インバータ500はバッテリ200とモータ400との間の電力変換を行う。インバータ500はバッテリ200の直流電力を交流電力に変換する。電力変換はモータ400の発電(回生)によって生成された交流電力を直流電力に変換する。
【0015】
モータ400は図示しない電気自動車の出力軸に連結されている。モータ400の回転エネルギーは出力軸を介して電気自動車の走行輪に伝達される。逆に、走行輪の回転エネルギーは出力軸を介してモータ400に伝達される。
【0016】
モータ400はインバータ500から供給される交流電力によって力行する。これにより走行輪への推進力の付与が成される。またモータ400は走行輪から伝達される回転エネルギーによって回生する。この回生によって発生した交流電力は、インバータ500によって直流電力に変換される。この直流電力がバッテリ200に供給される。また直流電力は電気自動車に搭載された各種電気負荷にも供給される。
【0017】
第1Yコンデンサ310と第2Yコンデンサ320はインバータ500に並列する態様で高電位側配線301と低電位側配線302に接続されている。第1Yコンデンサ310と第2Yコンデンサ320は高電位側配線301と低電位側配線302の間で直列接続されている。
【0018】
具体的に言えば第1Yコンデンサ310の備える2つの電極のうちの一方が第1中間配線303を介して高電位側配線301に接続されている。第2Yコンデンサ320の備える2つの電極のうちの一方が第3中間配線305を介して低電位側配線302に接続されている。第1Yコンデンサ310の備える2つの電極のうちの他方が第2中間配線304を介して第2Yコンデンサ320の備える2つの電極のうちの他方に接続されている。さらに第2中間配線304には車両アースに接続される接地配線306が接続されている。
【0019】
第1Yコンデンサ310と第2Yコンデンサ320はインバータ500から漏れ出たノイズ成分を車両アースに流すことでインバータ500からノイズ成分を取り除く役割を果たしている。
【0020】
インバータ500のノイズ成分のうち高電位側配線301を流れるノイズ成分が、第1中間配線303、第1Yコンデンサ310、第2中間配線304、および、第3中間配線305を介して車両アースに流れるようになっている。
【0021】
インバータ500のノイズ成分のうち低電位側配線302を流れるノイズ成分が、第3中間配線305、第2Yコンデンサ320、第2中間配線304、および、第3中間配線305を介して車両アースに流れるようになっている。
【0022】
制御装置600には図示しないECUやゲートドライバが搭載されている。ゲートドライバはECUの信号に基づいてインバータ500を制御している。これによりバッテリ200のSOCに応じたモータ400の回生と力行が制御される。SOCはstate of chargeの略である。ECUはelectronic control unitの略である。
【0023】
ECUには外部からの情報を取得する図示しない情報取得部が含まれている。ゲートドライバにはハイサイドスイッチ521やローサイドスイッチ522のスイッチのオンオフを制御する図示しないスイッチ制御部が含まれている。
【0024】
漏電検出器700はバッテリ200の低電位側の電極と車両アースとの間に接続されている。漏電検出器700はインバータ500から意図せずに漏れ出す電流を検出する機能を有している。なお、漏電検出器700によって検出された漏電情報は制御装置600に伝達されるようになっている。
【0025】
<インバータ>
インバータ500は平滑コンデンサ540と3相のスイッチモジュール510とを有する。高電位側配線301と低電位側配線302との間に平滑コンデンサ540と3相のスイッチモジュール510が並列接続されている。また上記したように高電位側配線301と低電位側配線302の間には、第1Yコンデンサ310と第2Yコンデンサ320が直列接続されている。
【0026】
図1に示すように高電位側配線301と低電位側配線302の間で、第1Yコンデンサ310および第2Yコンデンサ320、平滑コンデンサ540、スイッチモジュール510がバッテリ200からモータ400に向かってこの順に並列接続されている。
【0027】
モータ400を力行する場合、ECUからの制御信号によってスイッチモジュール510それぞれの備えるハイサイドスイッチ521とローサイドスイッチ522それぞれがPWM制御される。これによりインバータ500で3相交流が生成される。
【0028】
モータ400が発電(回生)する場合、ECUは例えば制御信号の出力を停止する。これによりモータ400の発電によって生成された交流電力がスイッチモジュール510それぞれの備えるダイオードを通る。この結果、交流電力が直流電力に変換される。
【0029】
本実施形態では、スイッチモジュール510それぞれに含まれるスイッチとしてnチャネル型のIGBTを採用している。ただしこれらスイッチとしては、IGBTではなくMOSFETを採用することもできる。スイッチとしてMOSFETを採用する場合、上記のダイオードはなくともよい。
【0030】
これらスイッチは、Siなどの半導体、および、SiCなどのワイドギャップ半導体によって製造することができる。半導体素子の構成材料としては特に限定されない。
【0031】
<スイッチモジュール>
スイッチモジュール510はスイッチとして、ハイサイドスイッチ521とローサイドスイッチ522を有する。スイッチモジュール510はダイオードとしてハイサイドダイオード521aとローサイドダイオード522aを有する。
【0032】
ハイサイドスイッチ521のコレクタ電極である第1コレクタ電極531にハイサイドダイオード521aのカソード電極が接続されている。ハイサイドスイッチ521のエミッタ電極である第1エミッタ電極532にハイサイドダイオード521aのアノード電極が接続されている。ハイサイドスイッチ521の第1ゲート電極535が制御装置600に電気的に接続されている。
【0033】
ローサイドスイッチ522のコレクタ電極である第2コレクタ電極533にローサイドダイオード522aのカソード電極が接続されている。ローサイドスイッチ522のエミッタ電極である第2エミッタ電極534にローサイドダイオード522aのアノード電極が接続されている。ローサイドスイッチ522の第2ゲート電極536が制御装置600に電気的に接続されている。
【0034】
また
図1に示すように第1コレクタ電極531が高電位側配線301に接続されている。第2エミッタ電極534が低電位側配線302に接続されている。第1エミッタ電極532と第2コレクタ電極533が出力バスバ430を介してモータ400に接続されている。
【0035】
より具体的に言えばスイッチモジュール510はU相スイッチモジュール511とV相スイッチモジュール512とW相スイッチモジュール513を有する。
【0036】
U相スイッチモジュール511の備えるハイサイドスイッチ521の第1エミッタ電極532とU相スイッチモジュール511の備えるローサイドスイッチ522の第2コレクタ電極533とがU相出力バスバ431を介してモータ400に接続されている。
【0037】
V相スイッチモジュール512の備えるハイサイドスイッチ521の第1エミッタ電極532とV相スイッチモジュール512の備えるローサイドスイッチ522の第2コレクタ電極533とがV相出力バスバ432を介してモータ400に接続されている。
【0038】
W相スイッチモジュール513の備えるハイサイドスイッチ521の第1エミッタ電極532とW相スイッチモジュール513の備えるローサイドスイッチ522の第2コレクタ電極533とがW相出力バスバ433を介してモータ400に接続されている。
【0039】
<制御装置>
上記したように制御装置600には図示しないECUやゲートドライバなどが搭載されている。ゲートドライバはECUの信号に基づいてインバータ500の備えるハイサイドスイッチ521とローサイドスイッチ522をPWM制御している。
【0040】
しかしながら
図1に示す車載システム10において、インバータ500が車両アースに地絡するといった地絡故障が発生した場合には、インバータ500と車両アースとの間に漏電経路800が形成される。
【0041】
その場合、グランドの電位が変動しインバータ500から漏れ出た意図しない電流が接地配線306を介して第1Yコンデンサ310や第2Yコンデンサ320に流れることがある。インバータ500から漏れ出た意図しない電流が第1Yコンデンサ310や第2Yコンデンサ320に流れると、第1Yコンデンサ310や第2Yコンデンサ320が発熱する虞がある。
【0042】
そこで本実施形態においてはインバータ500が地絡故障した際に、インバータ500から漏れ出た意図しない電流によって第1Yコンデンサ310や第2Yコンデンサ320が発熱することが抑制されるように制御装置600に工夫が施されている。具体的に言えば、制御装置600に含まれるECUにキャリア制御部610が備えられている。キャリア制御部610は一例として例えば制御装置600に搭載された図示しないマイコンに備えられている。
【0043】
<キャリア制御部>
まず先に
図2を基にPWM制御について説明する。
図2(a)に示すようにモータ400を駆動させる駆動波410としては例えば正弦波などがある。これまでに説明したハイサイドスイッチ521、ローサイドスイッチ522のオンオフの切り替えを制御するキャリア波420としては例えば三角波などがある。
【0044】
図2(a)は駆動波410とキャリア波420の比較を示している。
図2(b)は駆動波410とキャリア波420との比較の結果、所定の1相に含まれるハイサイドスイッチ521にかかる電圧と時間との関係を示している。
【0045】
駆動波410とキャリア波420の比較の結果、キャリア波420よりも駆動波410が大きい時にハイサイドスイッチ521の第1ゲート電極535に電圧が印加されるようになっている。言い換えれば、キャリア波420よりも駆動波410が大きい時に所定のハイサイドスイッチ521がオン状態になるようになっている。
【0046】
逆にキャリア波420よりも駆動波410が小さい時にハイサイドスイッチ521の第1ゲート電極535に電圧が印加されないようになっている。キャリア波420よりも駆動波410が小さい時に所定のハイサイドスイッチ521がオフ状態になっている。
【0047】
なお、図示しないが所定の1相に含まれるローサイドスイッチ522にかかる電圧と時間との関係は、ハイサイドスイッチ521にかかる電圧と時間との関係との逆になっている。
【0048】
このように一定周期ごとにハイサイドスイッチ521やローサイドスイッチ522への電圧印加時間を変化させることにより、この周期間の電圧の平均値を変化させる方法をPWM制御という。なお、第1実施形態におけるインバータ500のモータ制御方式は3相変調方式となっている。インバータ500から出力される電圧の波形は正弦波になっている。
【0049】
上記したように制御装置600はキャリア制御部610を有している。インバータ500が車両アースに地絡すると、
図1に示すように漏電経路800を介して意図しない電流が接地配線306、第2中間配線304、第2Yコンデンサ320、第3中間配線305、低電位側配線302を介して漏電検出器700に流れる。
【0050】
図3に示すようにステップS1000で漏電検出器700によってインバータ500に地絡が発生していることが検出されると、その地絡情報が情報取得部に送られる。
【0051】
ステップS1100で情報取得部が漏電検出器700から送られた地絡情報を取得すると、ステップS1200でキャリア制御部610がキャリア波420のキャリア周波数を低減する。より具体的に言えば、キャリア制御部610がキャリア波420のキャリア周波数をインバータ500が地絡していない場合のキャリア波420のキャリア周波数よりも低減する。
【0052】
また
図2(a)においてはインバータ500が地絡していない場合のキャリア波420を実線で示している。キャリア周波数が減った後のキャリア波420を破線と一点鎖線で示している。以下説明を簡便とするために実線で示されるキャリア波420を第1キャリア波421と示す。破線で示されるキャリア波420を第2キャリア波422と示す。一点鎖線で示されるキャリア波420を第3キャリア波423と示す。
【0053】
3つのキャリア波420の中で第1キャリア波421が最もキャリア周波数が高く、第3キャリア波423が最もキャリア周波数が低くなっている。
【0054】
そしてステップS1300で駆動波410とステップS1200で低減されたキャリア周波数を有するキャリア波420に基づいて、スイッチ制御部が第1ゲート電極535と第2ゲート電極536に電圧を印加する。
【0055】
また
図2(b)においては上段に駆動波410と第1キャリア波421に基づく第1電圧信号421aを示している。中段に駆動波410と第2キャリア波422に基づく第2電圧信号422aを示している。下段に駆動波410と第3キャリア波423に基づく第3電圧信号423aを示している。
【0056】
ステップS1200でキャリア制御部610がキャリア波420のキャリア周波数を低減すると、
図2(b)に示すようにハイサイドスイッチ521のスイッチ回数が減少する。図示しないが同様にローサイドスイッチ522のスイッチ回数が減少する。キャリア周波数が低くなればなるほどハイサイドスイッチ521とローサイドスイッチ522のスイッチ回数が減少する。
【0057】
そして
図4に示すようにスイッチ回数の減少に伴い、モータ400に流れる電流の実効値が小さくなる。なお
図4においては上段に第1電圧信号421aに基づく第1電流421bとその第1実効値421cを示す。中段に第2電圧信号422aに基づく第2電流422bとその第2実効値422cを示す。下段に第3電圧信号423aに基づく第3電流423bとその第3実効値423cを示す。キャリア周波数が低くなればなるほどスイッチ回数が減少し、なおかつ、モータ400に流れる電流の実効値が小さくなる。
【0058】
<作用効果>
そのために、インバータ500が地絡して接地配線306を介して電流がYコンデンサ310、320に流れたとしても、Yコンデンサ310、320に流れる電流が小さくなりやすくなっている。Yコンデンサ310、320が発熱することが抑制されやすくなっている。なおYコンデンサ310、320とは第1Yコンデンサ310と第2Yコンデンサ320を示している。
【0059】
また本実施形態とは異なり、電力変換装置100に昇圧回路を含む形態では、インバータ500が地絡した際にインバータ500にかかる電圧を降圧させることで地絡時にYコンデンサ310、320に流れる電流を抑制させることができるようになっている。
【0060】
しかしながら本実施形態では電力変換装置100に昇圧回路を含まずとも上記した構成によりインバータ500の地絡時にYコンデンサ310、320に流れる電流を抑制させることができるようになっている。
【0061】
昇圧回路の含まれない電力変換装置100においてもインバータ500の地絡時においてYコンデンサ310、320の発熱を抑制することができるようになっている。なお、当然のことながら電力変換装置100に昇圧回路と上記した構成の両方が含まれていてもインバータ500の地絡時においてYコンデンサ310、320の発熱を抑制することができるようになっている。昇圧回路の有無に関わらずインバータ500の地絡時においてYコンデンサ310、320の発熱を抑制することができるようになっている。インバータ500が地絡した場合においても車両の走行が継続可能になっている。
【0062】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を
図5~
図7に基づいて説明する。第1実施形態では制御装置600にキャリア制御部610が備えられた形態を説明したが、制御装置600にキャリア制御部610が含まれていなくても良い。
図5に示すように制御装置600に駆動制御部620が含まれていても良い。
【0063】
図6に示すようにステップS2000で漏電検出器700によってインバータ500に地絡が発生していることが検出されるとその地絡情報が情報取得部に送られる。
【0064】
ステップS2100で情報取得部が漏電検出器700から送られた地絡情報を取得すると、ステップS2200で駆動制御部620がモータ400を駆動する駆動波410を制御する。
【0065】
ステップS2200では駆動制御部620がインバータ500の駆動方式を変更する。
図7に示すように一例として変調方式を3相変調方式から2相変調方式へと変更する。
図7においては3相変調方式を採用した場合の駆動波410を第1駆動波411として示している。2相変調方式を採用した場合の駆動波410を第2駆動波412として示している。
【0066】
また他の一例として駆動波410を正弦波から矩形波へと変更する。
図7においては正弦波を採用した場合の駆動波410を第1駆動波411として示している。矩形波を採用した場合の駆動波410を第3駆動波413として示している。
【0067】
ステップS2300でキャリア波420と駆動方式の変更された駆動波410に基づいて、スイッチ制御部が第1ゲート電極535と第2ゲート電極536に電圧を印加する。その結果ハイサイドスイッチ521とローサイドスイッチ522のスイッチ回数が減少する。それに伴いモータ400に流れる電流の実効値が小さくなる。
【0068】
これによれば、インバータ500が地絡したとしても、Yコンデンサ310、320に流れる電流が小さくなりやすくなっている。Yコンデンサ310、320が発熱することが抑制されやすくなっている。
【0069】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を
図8~
図9に基づいて説明する。第1実施形態と第2実施形態では制御装置600にキャリア制御部610と駆動制御部620のいずれか1つが備えられた形態を説明したが、
図8に示すように制御装置600にキャリア制御部610と駆動制御部620の両方が含まれていても良い。
【0070】
その場合、
図9に示すようにステップS3000で漏電検出器700によってインバータ500に地絡が発生していることが検出されるとその地絡情報が情報取得部に送られる。
【0071】
ステップS3100で情報取得部が漏電検出器700から送られた地絡情報を取得すると、ステップS3200でキャリア制御部610がキャリア波420のキャリア周波数を低減する。
【0072】
またステップS3100で情報取得部が漏電検出器700から送られた地絡情報を取得すると、ステップS3300で駆動制御部620がモータ400を駆動する駆動波410を制御する。なおステップS3200とステップS3300は同時に行われてもよいし、順に行われても良い。さらにその順は限定されない。
【0073】
そしてステップS3400で低減されたキャリア周波数を有するキャリア波420および駆動方式の変更された駆動波410に基づいて、スイッチ制御部が第1ゲート電極535と第2ゲート電極536に電圧を印加する。その結果ハイサイドスイッチ521とローサイドスイッチ522のスイッチ回数が減少する。
【0074】
これによれば、インバータ500が地絡したとしても、Yコンデンサ310、320に流れる電流が小さくなりやすくなっている。Yコンデンサ310、320が発熱することが抑制されやすくなっている。
【0075】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を
図10~
図12に基づいて説明する。第1実施形態~第3実施形態では制御装置600にキャリア制御部610と駆動制御部620の少なくとも一方が含まれる形態について説明した。しかしながら制御装置600にキャリア制御部610と駆動制御部620の少なくとも一方の他に、モータ400の回転数とトルクの少なくとも一方を制御するモータ調整部630が含まれていても良い。
【0076】
なお
図10においては一例として制御装置600にキャリア制御部610と駆動制御部620の両方が含まれる形態を示しているが、第4実施形態には制御装置600にキャリア制御部610の駆動制御部620のうちの一方が含まれている形態も含む。
【0077】
図11に示すようにステップS4000で漏電検出器700によってインバータ500に地絡が発生していることが検出されると、その地絡情報が情報取得部に送られる。
【0078】
ステップS4100で情報取得部が地絡情報を取得すると、ステップS4200でキャリア制御部610と駆動制御部620の少なくとも一方に基づいてスイッチ制御部がハイサイドスイッチ521とローサイドスイッチ522に電圧を印加する。その結果ハイサイドスイッチ521とローサイドスイッチ522のスイッチ回数が減少する。
【0079】
そしてステップS4300で
図12に示すグラフのようにモータ調整部630がモータ400にかかるトルクまたは回転数の少なくとも一方を小さくする。
【0080】
その理由として電力変換装置100はスイッチ回数が減少したことでモータ400の制御性が低下する懸念がある。そこでステップS4300でモータ400にかかるトルクを小さくする。これによればスイッチ回数が減少した場合にユーザーが感じる違和感が低減されやすくなっている。
【0081】
そしてモータ400にかかるトルクが小さくなることで、モータ400に流れる電流が抑制される。これによればインバータ500が地絡したとしても、Yコンデンサ310、320に流れる電流が小さくなりやすくなっている。Yコンデンサ310、320が発熱することが抑制されやすくなっている。
【0082】
またスイッチ回数が減少したことで電力変換装置100を構成する回路の共振域と駆動波410の周波数が重なる懸念がある。ステップS4300でモータ400の回転数を小さくして駆動波410の周波数を変更させ、回路の共振域と駆動波410の周波数とが重ならないようにする。これによれば共振電流を抑制することができるようになっている。
【0083】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0084】
100…電力変換装置、200…バッテリ、301…高電位側配線、302…低電位側配線、310…第1Yコンデンサ、320…第2Yコンデンサ、400…モータ、410…駆動波、420…キャリア波、500…インバータ、521…ハイサイドスイッチ、522…ローサイドスイッチ、600…制御装置、610…キャリア制御部、620…駆動制御部、630…モータ調整部