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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】二酸化炭素の回収利用システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20241203BHJP
   A01G 7/02 20060101ALI20241203BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241203BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20241203BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241203BHJP
   F25J 3/02 20060101ALI20241203BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20241203BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20241203BHJP
【FI】
G06Q10/06
A01G7/02
B01D53/62 ZAB
B01D53/02
B01D53/14 200
F25J3/02 Z
G06Q50/02
G06Q50/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021150013
(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公開番号】P2023042729
(43)【公開日】2023-03-28
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 宏石
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108256(JP,A)
【文献】特開平10-333710(JP,A)
【文献】国際公開第2021/124608(WO,A1)
【文献】特開2011-187020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A01G 7/02
B01D 53/62
B01D 53/02
B01D 53/14
F25J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の二酸化炭素を捕集して回収する二酸化炭素回収装置と、前記二酸化炭素回収装置で回収された前記二酸化炭素を貯蔵する二酸化炭素貯蔵設備とを備え、前記二酸化炭素貯蔵設備に貯蔵された前記二酸化炭素を、植物の生育を促す肥料として利用する肥料用途と、燃焼させて熱エネルギを生成する二酸化炭素由来燃料として利用する燃料用途とに分けて有効利用する二酸化炭素の回収利用システムであって、
前記二酸化炭素貯蔵設備から供給する前記二酸化炭素の供給状態を制御するコントロールユニットを備え、
前記コントロールユニットは、
前記肥料用途での前記二酸化炭素の需要量、および、前記燃料用途での前記二酸化炭素の需要量を取得し、
取得した前記需要量に基づいて、前記二酸化炭素を前記肥料用途で利用する量と、前記二酸化炭素を前記燃料用途で利用する量との比率を決定し、
決定した前記比率に基づいて、前記肥料用途および前記燃料用途の少なくともいずれかに、前記二酸化炭素を供給する
ことを特徴とする二酸化炭素の回収利用システム。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素の回収利用システムであって、
前記コントロールユニットは、
前記肥料用途での前記二酸化炭素の需要量として前記二酸化炭素を利用する農作物の作付面積を取得し、
所定の前記作付面積の場合の前記比率を、前記所定の作付面積より広い作付面積の場合の前記比率より小さい値にする
ように構成されている
ことを特徴とする二酸化炭素の回収利用システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二酸化炭素の回収利用システムであって、
前記コントロールユニットは、
前記燃料用途での前記二酸化炭素の需要量として前記二酸化炭素を利用して発電する電力の需要量を取得し、
所定の前記需要量の場合の前記比率を、前記所定の需要量より多い前記需要量の場合の前記比率より小さい値にする
ように構成されている
ことを特徴とする二酸化炭素の回収利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大気中に排出される二酸化炭素(CO)を回収して有効利用する二酸化炭素の回収利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の発電機を含む電力系統を運用するための情報処理装置に関する発明が記載されている。この特許文献1に記載された情報処理装置は、例えば、CCS[Carbon Dioxide Capture and Storage]装置と称される二酸化炭素の回収・貯留装置、および、CCS装置が装備された発電機を含む複数の発電機を有する電力系統を制御対象にしている。そして、特許文献1に記載された情報処理装置は、燃料費および二酸化炭素の排出量をそれぞれ抑制し、かつ、CCS装置の稼働数が最適となるように各発電機の運転スケジュールを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-35952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1に記載された情報処理装置では、電力系統における複数の発電機の運転に対して、CCS装置の最適な運用が行われ、CCS装置が過不足なく稼働する。それにより、電力系統における発電機の運転に伴う燃料費や二酸化炭素(温室効果ガス)の排出量を抑えることができる、とされている。CCS装置は、例えば、活性炭やゼオライトなどの固体吸着作用を利用して、大気中や排気中から二酸化炭素を捕集して回収する(物理吸着法)。あるいは、例えば、アミンのような吸収液に二酸化炭素を吸収させ、大気中や排気中から二酸化炭素を捕集して回収する(化学吸収法)。そして、CCS装置は、回収した二酸化炭素を、例えば、地中や海底に圧入して貯留する。あるいは、貯留タンクのような所定の貯留設備内に貯留する。
【0005】
上記の特許文献1に記載されているようなCCS装置等で回収して貯留した二酸化炭素を、有効に利用するための方法やシステムが検討されている。その場合の二酸化炭素は、大きく分けて、農業分野での利用、および、燃焼させて熱エネルギを生成する燃料としての利用の二つの用途が想定される。二酸化炭素の農業分野での利用では、例えば、農作物の生育増進のための肥料として二酸化炭素が用いられる。農作物に二酸化炭素を施肥することにより、農作物の生育環境における二酸化炭素濃度が高くなり、その分、農作物の光合成が促進される。その結果、農作物の生育が増進し、収穫量を増やすことができる。このような二酸化炭素の肥料としての用途では、二酸化炭素は、植物の光合成によって有機化合物を合成し、植物の細胞内に固定化される。二酸化炭素が固定化される分、二酸化炭素の排出を抑制することができる。一方、二酸化炭素の燃料としての用途では、例えば、藻類が吸収する二酸化炭素から燃料(二酸化炭素由来燃料)が生成される。藻類が光合成を行うことにより、大気中から二酸化炭素が吸収または回収され、藻類の細胞内に炭化水素化合物が合成される。その藻類から、合成された炭化水素化合物の油分を絞り出すことにより、化学的構成要素に炭化水素化合物を含む燃料、すなわち、いわゆる二酸化炭素由来燃料が生成される。そして、生成された二酸化炭素由来燃料が、例えば、発電用の燃料として、火力発電所等の発電設備に供給される。二酸化炭素由来燃料が燃焼することによって生成される二酸化炭素は、元来、大気中や排気中から回収されたものである。また、その際に排出される二酸化炭素は、再び回収して再利用することができる。したがって、所定の地域や環境の下で二酸化炭素を循環させ、新たな二酸化炭素の排出を抑制することができる。
【0006】
上記のように、従来は大気中に排出されていた二酸化炭素を回収して、農業用の肥料としての用途、または、発電用の燃料としての用途で利用することにより、二酸化炭素の排出量を削減することができ、ひいては、地球温暖化の抑制に寄与することができる。但し、それら農業用の肥料、および、発電用の燃料の需要(需要量、需要時期)は、いずれも一定ではない。例えば、季節や時期あるいは時間や時間帯等に応じて、それぞれ、刻々と変化する。したがって、回収した二酸化炭素を、農業用の肥料としての用途、および、発電用の燃料としての用途で、一律に(各用途での利用先への振り分けや配分を考慮せずに)供給すると、各用途において二酸化炭素を適切に利用できないおそれがある。
【0007】
この発明は、上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、空気中あるいは排気中から回収する二酸化炭素を、農業用の肥料としての用途、および、発電用の燃料としての用途に、適切に振り分けて利用することが可能な二酸化炭素の回収利用方法および回収利用システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明は、空気中の二酸化炭素を捕集して回収する二酸化炭素回収装置と、前記二酸化炭素回収装置で回収された前記二酸化炭素を貯蔵する二酸化炭素貯蔵設備とを備え、前記二酸化炭素貯蔵設備に貯蔵された前記二酸化炭素を、植物の生育を促す肥料として利用する肥料用途と、燃焼させて熱エネルギを生成する二酸化炭素由来燃料として利用する燃料用途とに分けて有効利用する二酸化炭素の回収利用システムであって、前記二酸化炭素貯蔵設備から供給する前記二酸化炭素の供給状態を制御するコントロールユニットを備え、前記コントロールユニットは、前記肥料用途での前記二酸化炭素の需要量、および、前記燃料用途での前記二酸化炭素の需要量を取得し、取得した前記需要量に基づいて、前記二酸化炭素を前記肥料用途で利用する量と、前記二酸化炭素を前記燃料用途で利用する量との比率(または、割合)を決定し、決定した前記比率に基づいて、前記肥料用途および前記燃料用途の少なくともいずれかに、前記二酸化炭素を供給することを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記肥料用での前記二酸化炭素の需要量として前記二酸化炭素を利用する農作物の作付面積を取得し、所定の前記作付面積の場合の前記比率を、前記所定の作付面積より広い作付面積の場合の前記比率より小さい値にするように構成されていてもよい。
【0014】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記燃料用での前記二酸化炭素の需要量として前記二酸化炭素を利用して発電する電力の需要量を取得し、所定の前記需要量の場合の前記比率を、前記所定の需要量より多い前記需要量の場合の前記比率より小さい値にするように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明の二酸化炭素の回収利用システムは、二酸化炭素回収装置で回収した二酸化炭素を、肥料用途と燃料用途とに振り分けて、有効利用する。二酸化炭素回収装置は、空気中(または、排気中)の二酸化炭素を捕集または分離して回収する。回収された二酸化炭素は、一旦、二酸化炭素貯蔵設備に貯蔵され、肥料用途と燃料用途とに振り分けられる。肥料用途では、二酸化炭素は、植物、特に、農作物の生育を促す農業用の肥料として利用される。燃料用途では、二酸化炭素は、燃焼することにより熱エネルギを発生する二酸化炭素由来燃料として利用される。例えば、火力発電所に供給する発電用の燃料として利用される。そのようにして回収した二酸化炭素を有効利用することにより、二酸化炭素の排出量を削減または抑制することができる。但し、上記のような農業用の肥料の需要量、および、発電用の燃料の需要量は、それぞれ、季節や時期あるいは時間や時間帯等に応じて変化する。そこで、この発明の二酸化炭素の回収利用システムでは、肥料用途および燃料用途における二酸化炭素の需要(例えば、需要量、あるいは、需要のピーク時期等)を考慮して、肥料用途で二酸化炭素を利用する量と、燃料用途で二酸化炭素を利用する量との比率が求められる。そして、その比率に基づいて、肥料用途の利用先および燃料用途の利用先に、二酸化炭素が供給される。例えば、肥料用途で、施肥の対象となる農作物に供給される。また、燃料用途で、二酸化炭素由来燃料を生成する資源化設備あるいは燃料生成装置等に供給される。そして、生成された二酸化炭素由来燃料が火力発電所等の発電設備に供給される。このようにして、回収された二酸化炭素が、肥料用途および燃料用途で有効利用される。
【0017】
上記のように、この発明の二酸化炭素の回収利用システムでは、二酸化炭素の需要に関連する情報に基づいて、回収した二酸化炭素が肥料用途と燃料用途とに振り分けられる。具体的には、回収した二酸化炭素を施肥する農作物の作付面積に基づいて、前記比率を決定するための肥料用途の需要量が採用される。言い換えると、施肥の対象となる農作物の種類やその作付面積に応じた、肥料としての二酸化炭素の需要量に基づいて、肥料用途と燃料用途との振り分けの比率が定められる。そして、その定められた比率で、それぞれの用途の利用先に二酸化炭素が供給される。例えば、施肥の対象となる農作物の作付面積が増えて、肥料としての需要が増加する時期または季節は、肥料用途の二酸化炭素の量を多くした比率で、二酸化炭素が供給される。
【0018】
また、この発明の二酸化炭素の回収利用システムでは、回収した二酸化炭素を燃料にして発電する電力の需要量に基づいて、前記比率を決定するための燃料用途の需要量が採用される。上記のような肥料用途と燃料用途との振り分けの比率が定められる。そして、その定められた比率で、それぞれの用途の利用先に二酸化炭素が供給される。例えば、一般的な電力の需要が増加する時期または時間帯は、燃料用途の二酸化炭素の量を多くした比率で、二酸化炭素が供給される。
【0019】
また、この発明の二酸化炭素の回収利用システムでは、回収した二酸化炭素を、上記のような肥料用途および燃料用途のいずれかの用途で利用する時期または季節、もしくは、時間または時間帯等に基づいて、肥料用途と燃料用途との振り分けの比率が定められる。そして、その定められた比率で、それぞれの用途の利用先に二酸化炭素が供給される。例えば、二酸化炭素の施肥の効果が高くなる時間帯、あるいは、二酸化炭素の肥料としての需要が増加する時期は、肥料用途の二酸化炭素の量を多くした比率で、二酸化炭素が供給される。また、例えば、冷暖房用の電力の需要が増加する真夏日や猛暑日あるいは真冬日(もしくは、そのような予報が出された日)は、燃料用途の二酸化炭素の量を多くした比率で、二酸化炭素が供給される。
【0020】
したがって、この発明の二酸化炭素の回収利用システムによれば、空気中あるいは排気中から回収する二酸化炭素を、農業用の肥料用途、および、発電用の燃料用途に、それぞれ、適切に振り分けて利用することができる。そのため、回収した二酸化炭素を有効に利用することができ、いわゆる温室効果ガスとなる二酸化炭素の排出量を削減または抑制することができる。ひいては、地球温暖化の抑制に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の二酸化炭素の回収利用システムを適用するスマートシティ、および、そのスマートシティの中で二酸化炭素が循環するイメージを説明するための図である。
図2】この発明の二酸化炭素の回収利用システムの構成を説明するための図であって、所定の地域(スマートシティ)内に設置された複数の建物から排出される空気(建物排気)、および、建物排気中から回収される二酸化炭素(CO)の流通系統、ならびに、二酸化炭素回収装置(CO回収装置)に送り込む建物排気の流入量を調整するための制御系統等を示す模式的なブロック図である。
図3】この発明の二酸化炭素の回収利用システムによって実行される制御の一例を説明するための図であって、空気中から回収した二酸化炭素を、肥料用途での二酸化炭素の需要、および、燃料用途での二酸化炭素の需要に関連する情報に基づいて、肥料用途と燃料用途とに振り分けて利用する制御の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0023】
この発明の実施形態における二酸化炭素の回収利用システムは、例えば、いわゆるスマートシティのような所定の地域内あるいは区域内で排出される二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を、主に、農業用の肥料(肥料用途)と、発電用の燃料(燃料用途)とに振り分けて、有効利用する。スマートシティは、例えば、「都市が抱える諸問題に対して、ICT[Information and Communication Technology]等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・設備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」(国土交通省)のように定義される都市または地域である。そのようなスマートシティは、近年、実証実験や実用化に向けた開発が進められている。スマートシティの中で日常的に排出される二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を、上記のような肥料用途および燃料用途で有効利用することにより、スマートシティの中で二酸化炭素を循環させ、実質的に、二酸化炭素の排出量を削減または抑制することができる。
【0024】
図1に、上記のようなスマートシティを対象にして、この発明の実施形態における二酸化炭素の回収利用システムを適用し、スマートシティの中で二酸化炭素を循環させる概略のイメージを示してある。この図1に示すスマートシティの例では、エネルギの発生源として、所定の発電設備で資源が消費され、それに伴って二酸化炭素(CO)が排出される。この場合の発電設備は、主に、火力発電所であり、燃料を燃焼させることにより発生する熱エネルギを電気エネルギに変換する。特に、このスマートシティの火力発電所では、二酸化炭素由来燃料やバイオマス燃料などを燃焼させて電力を発生する。発電設備で発電した電力は、住宅、商店、飲食店、工場、病院、倉庫など、スマートシティの中に建てられた各建物に供給される。例えば、後述する二酸化炭素資源化設備にも供給される。
【0025】
上記のような発電設備から排出された二酸化炭素、および、スマートシティの中の各建物から排出された二酸化炭素は、二酸化炭素回収装置で回収される。二酸化炭素回収装置は、例えば、前述したCCS装置のような二酸化炭素の回収装置であり、空気中または排気中から二酸化炭素を捕集して回収する。
【0026】
二酸化炭素回収装置で回収した二酸化炭素は、二酸化炭素資源化設備に送られて、資源化される。具体的には、二酸化炭素資源化設備は、回収した二酸化炭素から、いわゆる二酸化炭素由来燃料を生成する。生成された二酸化炭素由来燃料は、発電用の燃料として、発電設備(火力発電所)に供給される。すなわち、スマートシティの中で回収した二酸化炭素が、二酸化炭素由来燃料となって、燃料用途で有効利用される。
【0027】
なお、このスマートシティでは、前述したように、二酸化炭素資源化設備を稼働するために、発電設備で発電した電力が供給される。それとともに、例えば、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギあるいは再生可能エネルギを利用して発電した電力が供給される。そのような再生可能エネルギを利用して発電した電力は、スマートシティの中の各建物や、農産物の生産現場などにも供給される。
【0028】
また、二酸化炭素回収装置で回収した二酸化炭素は、農業の分野でも利用される。具体的には、回収した二酸化炭素が、農作物の育成を促進させる肥料として、農地に供給される。すなわち、スマートシティの中で回収した二酸化炭素が、肥料用途で有効利用される。
【0029】
このように、図1に示すスマートシティの例では、二酸化炭素回収装置で回収した二酸化炭素が、主に、肥料用途および燃料用途の二通りの用途に振り分けられて有効利用される。すなわち、スマートシティの中で排出される二酸化炭素が、肥料用途および燃料用途で、スマートシティの中で消費される。したがって、スマートシティの中で二酸化炭素が循環し、実質的に、二酸化炭素の排出量が削減または抑制される。
【0030】
図2に、この発明の実施形態における二酸化炭素の回収利用方法を実行するCO回収利用システム1、ならびに、空気中または排気中から回収される二酸化炭素(CO)の流通系統、および、その二酸化炭素から資源化される二酸化炭素由来燃料(CO由来燃料)の流通系統の一例を示してある。図2に示すように、CO回収利用システム1は、複数の建物2から排出される空気または排気(建物排気)を、流路3を通して、二酸化炭素回収装置(CO回収装置)4に送り込む。そして、二酸化炭素回収装置4で、建物排気中の二酸化炭素(CO)を分離または捕集して回収する。回収した二酸化炭素は、所定の二酸化炭素貯蔵設備(COタンク)5に送られて貯蔵される。なお、図2では、CO回収利用システム1が、いわゆるスマートシティの中に建てられた複数(多数)の建物2(後述する発電設備8も含む)から排出される二酸化炭素を、集中的に、二酸化炭素回収装置4で回収するイメージを示してある。そして、二酸化炭素回収装置4で回収され、二酸化炭素貯蔵設備5に貯蔵された二酸化炭素は、大きく分けて、二つの用途で利用される。一方の肥料用途では、回収した二酸化炭素は、農業用の肥料として、農地6に供給される。他方の燃料用途では、回収した二酸化炭素は、二酸化炭素資源化装置7で資源化され、燃料(二酸化炭素由来燃料)として、発電設備8に供給される。そして、この発明の実施形態におけるCO回収利用システム1は、上記のような二酸化炭素貯蔵設備5に貯蔵した二酸化炭素(すなわち、回収した二酸化炭素)の供給状態(供給量、使用量、分配比、等)を制御するコントロールユニット9を備えている。
【0031】
具体的には、建物2は、例えば、住宅、商店、飲食店、工場、病院、倉庫など、所定の地域あるいは区域内に建てられた家屋や建築物である。図2に示す実施形態では、前述したようなスマートシティの中に建てられた複数(多数)の建物2を想定している。例えば、一般家庭の住宅、あるいは、店舗や事務所などの比較的小規模または中規模の建物2であっても、建物2に居住するまたは滞在する人の呼吸によって二酸化炭素が排出される。また、建物2の中で使用する暖房機器や調理器具などからも二酸化炭素が排出される。この発明の実施形態におけるCO回収利用システム1は、上記のような、比較的小規模または中規模の建物2を対象にして、二酸化炭素を回収する。なお、この発明の実施形態におけるCO回収利用システム1は、後述する発電設備8のように、大規模で、大量の二酸化炭素を排出する設備やプラント等を対象にして、二酸化炭素を回収してもよい。図2では、スマートシティの中、もしくは、スマートシティの近隣に設置された発電設備8も対象にして二酸化炭素を回収するイメージを示してある。
【0032】
流路3は、建物2から排出される建物排気を二酸化炭素回収装置4に流通させる。流路3は、建物2と後述する二酸化炭素回収装置4とをつなぐパイプライン(図示せず)を形成している。例えば、流路3は、建物2の排気口(図示せず)と、二酸化炭素回収装置4の流入口(図示せず)とを連通する通気管によって構成されている。図2に示す実施形態では、流路3は、建物排気、すなわち、気相の二酸化炭素を含む空気を流通させる。なお、建物2から二酸化炭素回収装置4に送る建物排気は、上記の流路3の他に、例えば、建物2と二酸化炭素回収装置4との間で自動運転される輸送車両または輸送機器(図示せず)、もしくは、一般の輸送車両(図示せず)などによって輸送されてもよい。そのような輸送車両または輸送機器と、上記の流路3とを併用してもよい。
【0033】
二酸化炭素回収装置4は、空気中または排気中の二酸化炭素を捕集して回収する。この発明の実施形態における二酸化炭素回収装置4は、上記のように、建物2から流路3を通って送り込まれる建物排気中の二酸化炭素を捕集して回収する。二酸化炭素回収装置4は、後述するコントロールユニット9に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等(図示せず)を介して、データ通信が可能なように接続されている。
【0034】
なお、二酸化炭素回収装置4における二酸化炭素の回収は、例えば、特開2021-8852号公報に記載されているような「物理吸着法」、「物理吸収法」、「化学吸収法」、および、「深冷分離法」など、周知の、種々の方法・技術を適用して行うことができる。「物理吸着法」では、例えば、活性炭やゼオライトなどの固体吸着剤と排ガスとを接触させることによって二酸化炭素を固体吸着剤に吸着させ、二酸化炭素が吸着した固体吸着剤を加熱または減圧することにより、固体吸着剤から二酸化炭素を脱離させて回収する。「物理吸収法」では、例えば、メタノールやエタノールなど、二酸化炭素を溶解させることが可能な吸収液と排ガスとを接触させて高圧・低温の下で物理的に二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱または減圧することにより、吸収液から二酸化炭素を回収する。「化学吸収法」では、例えば、アミンのように、二酸化炭素を選択的に溶解させることが可能な吸収液と排ガスとを接触させ、その際に生じる化学反応によって二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱することにより、吸収液から二酸化炭素を解離させて回収する。「深冷分離法」では、排ガスを圧縮および冷却することによって二酸化炭素を液化させ、液化させた二酸化炭素を選択的に蒸留させることにより、二酸化炭素を回収する。
【0035】
二酸化炭素貯蔵設備5は、上記のように、二酸化炭素回収装置4で回収した二酸化炭素を貯蔵する。この二酸化炭素貯蔵設備5と、上記の二酸化炭素回収装置4との間は、流路10によって連通されている。例えば、流路10は、二酸化炭素回収装置4の流出口(図示せず)と、二酸化炭素貯蔵設備5の流入口(図示せず)とを連通する配管によって構成されている。流路10は、二酸化炭素回収装置4で分離・回収した後の、液相の二酸化炭素を流通させる。なお、流路10は、二酸化炭素回収装置4における二酸化炭素の回収方法に応じて、気相の二酸化炭素を流通させてもよい。二酸化炭素貯蔵設備5は、後述するコントロールユニット9に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等(図示せず)を介して、データ通信が可能なように接続されている。例えば、二酸化炭素の貯蔵量、あるいは、設備の貯蔵可能残量等に関するデータが、二酸化炭素貯蔵設備5からコントロールユニット9に送信される。貯蔵可能残量に余裕がない場合には、コントロールユニット9は、建物2から二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量を抑制する。
【0036】
二酸化炭素貯蔵設備5に貯蔵された二酸化炭素、すなわち、回収した二酸化炭素は、肥料用途では、農作物を育成するための肥料として、後述する農地6に供給される。燃料用途では、後述する二酸化炭素資源化装置7で資源化され、燃料(二酸化炭素由来燃料)として、後述する発電設備8に供給される。なお、この二酸化炭素貯蔵設備5と農地6との間は、二酸化炭素貯蔵設備5から農地6に供給する二酸化炭素の供給量を制御することが可能なように構成されている。例えば、二酸化炭素貯蔵設備5と農地6とをつなぐパイプライン(図示せず)に、二酸化炭素貯蔵設備5から農地6に流入させる二酸化炭素の流入量を調整する流量調整機構11が設けられている。同様に、この二酸化炭素貯蔵設備5と二酸化炭素資源化装置7との間は、二酸化炭素貯蔵設備5から二酸化炭素資源化装置7に供給する二酸化炭素の供給量を制御することが可能なように構成されている。例えば、二酸化炭素貯蔵設備5と二酸化炭素資源化装置7とをつなぐパイプライン(図示せず)に、二酸化炭素貯蔵設備5から二酸化炭素資源化装置7に流入させる二酸化炭素の流入量を調整する流量調整機構12が設けられている。
【0037】
流量調整機構11、および、流量調整機構12は、それぞれ、例えば、二酸化炭素貯蔵設備5と農地6との間、および、二酸化炭素貯蔵設備5と二酸化炭素資源化装置7との間に設けられた“バルブ機構”によって構成されている。この場合、流量調整機構11,12は、それぞれ、“バルブ機構”として、例えば、弁の開度に応じて流量を変化させる流量制御弁、あるいは、弁体の位置に応じて、二酸化炭素貯蔵設備5と農地6との間、および、二酸化炭素貯蔵設備5と二酸化炭素資源化装置7との間を連通状態または遮断状態にする開閉弁などを用いることができる。また、流量調整機構11,12は、二酸化炭素貯蔵設備5と農地6との間、および、二酸化炭素貯蔵設備5と二酸化炭素資源化装置7との間に設けられた“送風機器”によって構成することもできる。“送風機器”は、出力に応じて、送風量、すなわち、二酸化炭素貯蔵設備5と農地6との間、および、二酸化炭素貯蔵設備5と二酸化炭素資源化装置7との間を流通させる二酸化炭素の流入量を変化させる。流量調整機構11,12は、それぞれ、後述するコントロールユニット9に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、データ通信が可能なように接続されている。
【0038】
なお、二酸化炭素貯蔵設備5から農地6に送る二酸化炭素、および、二酸化炭素貯蔵設備5から二酸化炭素資源化装置7に送る二酸化炭素は、それぞれ、上記のようなパイプラインの他に、例えば、二酸化炭素貯蔵設備5と農地6との間、および、二酸化炭素貯蔵設備5と二酸化炭素資源化装置7との間で自動運転される輸送車両または輸送機器(図示せず)、もしくは、一般の輸送車両(図示せず)などによって輸送されてもよい。そのような輸送車両または輸送機器と、上記のようなパイプラインとを併用してもよい。
【0039】
農地6は、農業に利用され、農作物を育成するための土地である。この発明の実施形態におけるCO回収利用システム1では、肥料として気体の二酸化炭素(炭酸ガス)を供給する農地6を対象にしている。そのため、この発明の実施形態における農地6は、特に、炭酸ガスの施肥の効果を高められる農業ハウス内の(ハウス栽培用の)農業用地を想定している。なお、ハウス栽培用の農地6の他に、例えば、炭酸ガスを施肥するための装置や機構(図示せず)を設けた露地栽培用の農地6であってもよい。
【0040】
二酸化炭素資源化装置7は、二酸化炭素回収装置4によって回収した二酸化炭素を燃料として資源化して、いわゆる二酸化炭素由来燃料を生成する。この二酸化炭素資源化装置7における二酸化炭素の資源化、すなわち、二酸化炭素由来燃料の生成は、例えば、前述したような藻類の光合成を利用して行うことができる。その他にも、例えば、二酸化炭素と水素とを合成した液体合成燃料など、種々の方法・技術を適用して二酸化炭素由来燃料を生成することができる。そして、二酸化炭素資源化装置7で生成された二酸化炭素由来燃料は、発電用の燃料として、後述する発電設備8に供給される。なお、二酸化炭素資源化装置7と発電設備8との間に、燃料タンク(図示せず)を設置し、二酸化炭素資源化装置7で生成した二酸化炭素由来燃料を、一旦、燃料タンクに貯蔵してもよい。二酸化炭素資源化装置7は、後述するコントロールユニット9に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等(図示せず)を介して、データ通信が可能なように接続されている。
【0041】
発電設備(発電所)8は、代表的には、火力発電所であり、二酸化炭素由来燃料を含む各種の燃料を燃焼させることにより発生する熱エネルギを電気エネルギに変換する。発電設備8は、後述するコントロールユニット9に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等(図示せず)を介して、データ通信が可能なように接続されている。なお、この発明の実施形態における発電設備8は、例えば、エンジンで駆動される発電機のように、燃料を燃焼させることにより発生する熱エネルギを電気エネルギに変換する発電機や発電装置(図示せず)を対象にしてもよい。また、上記のような火力発電所以外に、例えば、水力発電所や原子力発電所など、発電所の中で使用する電力を得るための発電機や発電装置を備えた発電所を対象にしてもよい。
【0042】
コントロールユニット9は、例えば、サーバコンピュータあるいはマイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置であり、このCO回収利用システム1における制御系統の主要部分を構成している。コントロールユニット9は、流量調整機構11,12の動作をそれぞれ制御して、二酸化炭素貯蔵設備5から農地6に供給する二酸化炭素の流入量、および、二酸化炭素貯蔵設備5から二酸化炭素資源化装置7に供給する二酸化炭素の流入量をそれぞれ調整する。また、コントロールユニット9は、二酸化炭素回収装置4、二酸化炭素貯蔵設備5、二酸化炭素資源化装置7、および、発電設備8などの動作や稼働状態をそれぞれ制御する。コントロールユニット9は、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、外部のサーバ(図示せず)や、インターネット上のウェブサイトなどと接続されている。そして、コントロールユニット9には、所定の検出機器(図示せず)などから各種データが入力される。
【0043】
また、コントロールユニット9は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントロールユニット9は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上述した流量調整機構11,12の動作をそれぞれを制御するように構成されている。例えば、コントロールユニット9は、流量調整機構11,12として“バルブ機構”における弁の開度や開閉状態をそれぞれ制御する。あるいは、コントロールユニット9は、流量調整機構11,12として“送風機器”の出力をそれぞれ制御する。それにより、コントロールユニット9は、二酸化炭素貯蔵設備5から農地6に供給する二酸化炭素の流入量、および、二酸化炭素貯蔵設備5から二酸化炭素資源化装置7に供給する二酸化炭素の流入量をそれぞれ調整する。
【0044】
より具体的には、コントロールユニット9は、例えば、制御情報取得部21、CO貯蔵量把握部22、CO供給比率決定部23、CO肥料供給制御部24、および、CO燃料供給制御部25を有している。
【0045】
制御情報取得部21は、制御に適用する各種データを取得する。具体的には、制御情報取得部21は、肥料用途で利用する二酸化炭素の需要(例えば、需要量や需要時期)、および、燃料用途で利用する二酸化炭素の需要(例えば、需要量や需要時期)に関連する情報を取得する。例えば、肥料用途で二酸化炭素を利用する農作物の作付面積、および、その農作物に施肥する二酸化炭素の需要(最大需要量および需要ピーク時期等)に関する情報、ならびに、燃料用途で二酸化炭素を利用して発電する電力の需要(最大需要量および需要ピーク時期等)に関する情報等を取得する。
【0046】
CO貯蔵量把握部22は、二酸化炭素貯蔵設備5に貯蔵されている二酸化炭素の量を把握するためのデータを取得する。例えば、二酸化炭素貯蔵設備5に貯蔵されている二酸化炭素の残量に関するデータを随時またはリアルタイムで取得し、CO貯蔵量把握部22から肥料用途および燃料用途にそれぞれ供給可能な二酸化炭素の量を算出する。
【0047】
CO供給比率決定部23は、上記の制御情報取得部21で取得した各種データ、および、上記のCO貯蔵量把握部22で取得した二酸化炭素の量に基づいて、肥料用途で農地6に二酸化炭素を供給する量と、燃料用途で二酸化炭素資源化装置7に二酸化炭素を供給する量との比率(振り分け比率)算出する。具体的には、二酸化炭素貯蔵設備5から農地6に流入させる二酸化炭素の流入量、および、二酸化炭素貯蔵設備5から二酸化炭素資源化装置7に流入させる二酸化炭素の流入量を算出する。すなわち、肥料用途で農地6に供給する二酸化炭素の流入量と、燃料用途で二酸化炭素資源化装置7に供給する二酸化炭素の流入量との比率または割合を算出する。
【0048】
CO肥料供給制御部24は、CO供給比率決定部23で決定した二酸化炭素の振り分け比率に基づいて、流量調整機構11を制御する。すなわち、CO供給比率決定部23で算出した、肥料用途で農地6に供給する二酸化炭素の流入量を実現するように、流量調整機構11の動作を制御する。例えば、CO肥料供給制御部24は、流量調整機構11として“バルブ機構”における弁の開度や開閉状態を制御する。あるいは、CO肥料供給制御部24は、流量調整機構11として“送風機器”の出力を制御する。
【0049】
CO燃料供給制御部25は、CO供給比率決定部23で決定した二酸化炭素の振り分け比率に基づいて、流量調整機構12を制御する。すなわち、CO供給比率決定部23で算出した、燃料用途で二酸化炭素資源化装置7に供給する二酸化炭素の流入量を実現するように、流量調整機構12の動作を制御する。例えば、CO燃料供給制御部25は、流量調整機構12として“バルブ機構”における弁の開度や開閉状態を制御する。あるいは、CO燃料供給制御部25は、流量調整機構12として“送風機器”の出力を制御する。
【0050】
なお、図2では一つのコントロールユニット9が設けられたイメージを示しているが、この発明の実施形態におけるコントロールユニット9は、例えば、制御内容や制御対象ごとに、複数のコントロールユニット9が設けられていてもよい。あるいは、上記のような二つの流量調整機構11および流量調整機構12にそれぞれ設けられたコンピュータ(図示せず)と、所定の場所や施設に設置されたメインのサーバ(図示せず)とを統合したものを、総合的に、コントロールユニット9としてもよい。
【0051】
なお、この発明の実施形態におけるCO回収利用システム1は、二酸化炭素回収装置4を複数の建物2ごとに設置してもよい。例えば、スマートシティの中に建てられた複数(多数)の建物2から排出される二酸化炭素を、それら複数の建物2ごとに、個別に、複数(多数)の二酸化炭素回収装置4で回収するような構成であってもよい。
【0052】
前述したように、この発明の実施形態における二酸化炭素の回収利用システムは、空気中あるいは排気中から回収する二酸化炭素を、燃料用途と燃料用途とに、適切な比率で振り分けて利用方法することを主な目的にしている。そのために、この発明の実施形態における二酸化炭素の回収利用システムは、例えば、次の図3のフローチャートに示す制御を実行するように構成されている。
【0053】
図3に示すフローチャートにおいて、先ず、ステップS1では、各種情報から、資源化に振り分ける二酸化炭素の量、および、農業に振り分ける二酸化炭素の量が決定される。具体的には、回収した二酸化炭素の肥料用途での需要(例えば、需要量、あるいは、需要のピーク時期等)、および、回収した二酸化炭素の燃料用途での需要(例えば、需要量、あるいは、需要のピーク時期等)に関連する各種情報が取得される。その後、上記のように取得した、二酸化炭素の需要に関連する各種情報に基づいて、回収した二酸化炭素を肥料用途で利用する量と、回収した二酸化炭素を燃料用途で利用する量との比率が求められる。
【0054】
例えば、回収した二酸化炭素の需要に関連する情報として、二酸化炭素を施肥する農作物の作付面積に関する情報が取得される。あるいは、二酸化炭素を燃料にして発電する電力の需要に関する情報が取得される。あるいは、回収した二酸化炭素を、肥料用途および燃料用途の少なくともいずれかで利用する時期または季節、もしくは、時間または時間帯に関する情報が取得される。例えば、施肥の対象となる農作物の作付面積が増えて、肥料としての需要が増加する時期または季節は、肥料用途の二酸化炭素の量が多い比率が算出される。あるいは、一般的な電力の需要が増加する時期または時間帯は、燃料用途の二酸化炭素が多い比率が算出される。あるいは、二酸化炭素の施肥の効果が高くなる時間帯、あるいは、二酸化炭素の肥料としての需要が増加する時期または季節は、肥料用途の二酸化炭素の量が多い比率が算出される。あるいは、冷暖房用の電力の需要が増加する真夏日や猛暑日あるいは真冬日、もしくは、それら真夏日や猛暑日あるいは真冬日の予報が出された日は、燃料用途の二酸化炭素が多い比率が算出される。
【0055】
上記のように、回収した二酸化炭素の肥料用途と燃料用途との振り分けの比率は、二酸化炭素の需要に関連する各種情報に基づいて算出される。その場合の振り分けの比率の算出は、例えば、過去の経験値や学習値を基に、各種条件ごとに予め設定した演算式や制御マップから算出してもよい。あるいは、AI[Artificial Intelligence]の技術やビッグデータを活用して予測した各種データに基づいて算出してもよい。
【0056】
このステップS1で、回収した二酸化炭素の肥料用途での需要、および、燃料用途での需要に関連する各種情報が取得され、その後、取得した各種情報に基づいて、回収した二酸化炭素の肥料用途と燃料用途との振り分けの比率が求められると、その後、ステップS2へ進む。
【0057】
ステップS2では、回収した二酸化炭素の肥料用途と燃料用途との振り分けの比率(決定量)に基づいて、実際の供給量が制御される。具体的には、上記のステップS1で求められた二酸化炭素の肥料用途と燃料用途との振り分けの比率に基づいて、二酸化炭素貯蔵設備5と農地6との間の流量調整機構11、および、二酸化炭素貯蔵設備5と二酸化炭素資源化装置7との間の流量調整機構12がそれぞれ制御される。すなわち、肥料用途で農地6に供給する二酸化炭素の流入量、および、燃料用途で二酸化炭素資源化装置7に送り込む二酸化炭素の流入量がそれぞれ制御される。したがって、回収した二酸化炭素の肥料用途と燃料用途との振り分けの比率に基づいて、それら肥料用途および燃料用途の利用先、すなわち、農地6、および、二酸化炭素資源化装置7に、回収した二酸化炭素が供給される。なお、二酸化炭素資源化装置7に供給された二酸化炭素は、二酸化炭素資源化装置7で二酸化炭素由来燃料として資源化されて、発電設備8に供給される。すなわち、燃料用途では、回収した二酸化炭素が、間接的に、発電設備8に供給される。
【0058】
このステップS2で、回収した二酸化炭素の肥料用途と燃料用途との振り分けの比率に基づいて、それら肥料用途および燃料用途に二酸化炭素が供給されると、その後、この図3のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。
【0059】
以上のように、この発明の実施形態における二酸化炭素の回収利用システムでは、上記のような肥料用途および燃料用途における二酸化炭素の需要が適切に考慮されて、回収した二酸化炭素の肥料用途と燃料用途との振り分けの比率が算出される。そして、その算出された振り分けの比率に基づいて、肥料用途の利用先および燃料用途の利用先に、それぞれ、回収した二酸化炭素が供給される。肥料用途では、施肥の対象となる農作物に、回収した二酸化炭素が供給される。また、燃料用途では、二酸化炭素由来燃料を生成する二酸化炭素資源化装置7に、回収した二酸化炭素が供給され、生成された二酸化炭素由来燃料が発電設備8に供給される。それにより、回収した二酸化炭素が、肥料用途および燃料用途でそれぞれ有効利用される。
【0060】
したがって、この発明の二酸化炭素の回収利用システムによれば、空気中あるいは排気中から回収する二酸化炭素を、農業用の肥料用途、および、発電用の燃料用途に、それぞれ、適切に振り分けて利用することができる。そのため、回収した二酸化炭素を有効に利用することができ、いわゆる温室効果ガスとなる二酸化炭素の排出量を削減または抑制することができる。ひいては、地球温暖化の抑制に寄与することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 CO回収利用システム
2 建物
3 (建物と二酸化炭素回収装置との間の)流路
4 二酸化炭素回収装置(CO回収装置)
5 二酸化炭素貯蔵設備(COタンク)
6 農地
7 二酸化炭素資源化装置
8 発電設備(発電所)
9 コントロールユニット
10 (二酸化炭素回収装置と二酸化炭素貯蔵設備との間の)流路
11 (二酸化炭素貯蔵設備と農地との間の)流量調整機構
12 (二酸化炭素貯蔵設備と二酸化炭素資源化装置との間の)流量調整機構
21 (コントロールユニットの)制御情報取得部
22 (コントロールユニットの)CO貯蔵量把握部
23 (コントロールユニットの)CO供給比率決定部
24 (コントロールユニットの)CO肥料供給制御部
25 (コントロールユニットの)CO燃料供給制御部
図1
図2
図3