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  • 特許-鉄心構造及び変圧器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】鉄心構造及び変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20241203BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01F27/24 M
H01F27/24 E
H01F30/10 A
H01F30/10 R
H01F27/24 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021151687
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023043935
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎矢
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150089(JP,A)
【文献】特開2017-204553(JP,A)
【文献】特開昭63-174303(JP,A)
【文献】特開2017-204498(JP,A)
【文献】特開2003-309017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフェライトコアから成る外層と、
この外層の内周側に配置される複数のフェライトコアから成る中層と、
この中層の内周側に配置される複数のフェライトコアから成る内層と、
を有し、
巻線が巻回される鉄心のレグ部の前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該レグ部の前記外層及び前記中層を成すフェライトコアの横断面よりも小さく、
前記巻線が巻回されない前記鉄心のヨーク部の前記中層及び前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該ヨーク部の前記外層を成すフェライトコアの横断面よりも小さく、
前記外層、前記中層及び前記内層のフェライトコアは、当該外層、当該中層及び当該内層の磁気抵抗が同等となるように配置されること
を特徴とする鉄心構造。
【請求項2】
前記レグ部の前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該レグ部の前記外層及び前記中層を成すフェライトコアの横断面の1/2であり、
前記ヨーク部の前記中層及び前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該ヨーク部の前記外層を成すフェライトコアの横断面の1/2であり、
前記ヨーク部の前記外層のフェライトコアは、当該外層の横断面が当該ヨーク部の前記中層及び前記内層の横断面よりも小さくなるように配置されること
を特徴とする請求項1に記載の鉄心構造。
【請求項3】
複数のフェライトコアから成る外層と、
この外層の内周側に配置される複数のフェライトコアから成る中層と、
この中層の内周側に配置される複数のフェライトコアから成る内層と、
を有し、
巻線が巻回される鉄心のレグ部の前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該レグ部の前記外層及び前記中層を成すフェライトコアの横断面よりも小さく、
前記巻線が巻回されない前記鉄心のヨーク部の前記中層を成すフェライトコアの横断面は、当該ヨーク部の前記外層及び前記内層を成すフェライトコアの横断面よりも小さく、
前記外層、前記中層及び前記内層のフェライトコアは、当該外層、当該中層及び当該内層の磁気抵抗が同等となるように配置されること
を特徴とする鉄心構造。
【請求項4】
前記レグ部の前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該レグ部の前記外層及び前記中層を成すフェライトコアの横断面の1/3であり、
前記ヨーク部の前記中層を成すフェライトコアの横断面は、当該ヨーク部の前記外層及び前記内層を成すフェライトコアの横断面の1/3であること
を特徴とする請求項3に記載の鉄心構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の鉄心構造を有する変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波大容量の変圧器の鉄心、特に、フェライトコアからなる鉄心の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の変圧器の鉄心は、一般的に、例えばフェライトコアからなる板状の磁性体を額縁状に配置したものを一方向に積層した構造を成す(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実全昭58-12915号公報
【文献】特開平5-326289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェライトコアが積層された鉄心は、隣り合うフェライトコアのギャップ(間隙)に起因する磁気抵抗により、特に鉄心の巻線巻回部と非巻線巻回部との接合部における磁束が鉄心の内周側に集中し、また、鉄損も当該内周側に集中して起こる。
【0005】
本発明は、以上の事情を鑑み、フェライトコアからなる鉄心の巻線巻回部と非巻線巻回部との接合部の内周側への磁束集中及び鉄損の緩和を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、複数のフェライトコアから成る外層と、この外層の内周側に配置される複数のフェライトコアから成る中層と、この中層の内周側に配置される複数のフェライトコアから成る内層と、を有し、巻線が巻回される鉄心のレグ部の前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該レグ部の前記外層及び前記中層を成すフェライトコアの横断面よりも小さく、前記巻線が巻回されない前記鉄心のヨーク部の前記中層及び前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該ヨーク部の前記外層を成すフェライトコアの横断面よりも小さく、前記外層、前記中層及び前記内層のフェライトコアは、当該外層、当該中層及び当該内層の磁気抵抗が同等となるように配置される鉄心構造である。
【0007】
本発明の一態様は、前記鉄心構造において、前記レグ部の前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該レグ部の前記外層及び前記中層を成すフェライトコアの横断面の1/2であり、前記ヨーク部の前記中層及び前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該ヨーク部の前記外層を成すフェライトコアの横断面の1/2であり、前記ヨーク部の前記外層のフェライトコアは、当該外層の横断面が当該ヨーク部の前記中層及び前記内層の横断面よりも小さくなるように配置される。
【0008】
本発明の一態様は、複数のフェライトコアから成る外層と、この外層の内周側に配置される複数のフェライトコアから成る中層と、この中層の内周側に配置される複数のフェライトコアから成る内層と、を有し、巻線が巻回される鉄心のレグ部の前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該レグ部の前記外層及び前記中層を成すフェライトコアの横断面よりも小さく、前記巻線が巻回されない前記鉄心のヨーク部の前記中層を成すフェライトコアの横断面は、当該ヨーク部の前記外層及び前記内層を成すフェライトコアの横断面よりも小さく、前記外層、前記中層及び前記内層のフェライトコアは、当該外層、当該中層及び当該内層の磁気抵抗が同等となるように配置される鉄心構造である。
【0009】
本発明の一態様は、前記鉄心構造において、前記レグ部の前記内層を成すフェライトコアの横断面は、当該レグ部の前記外層及び前記中層を成すフェライトコアの横断面の1/3であり、前記ヨーク部の前記中層を成すフェライトコアの横断面は、当該ヨーク部の前記外層及び前記内層を成すフェライトコアの横断面の1/3である。
【0010】
本発明の一態様は、上記の鉄心構造を有する変圧器である。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明によれば、フェライトコアからなる鉄心の巻線巻回部と非巻線巻回部との接合部の内周側への磁束集中及び鉄損の緩和を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1の変圧器における鉄心構造の横断面図。
図2】変圧器の鉄心の外層、中層及び内層を模した磁気回路の磁気抵抗の説明図。
図3】本発明の実施形態2の変圧器における鉄心構造の横断面図。
図4】本発明の実施形態3の変圧器における鉄心構造の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
[実施形態1]
図1に示された実施形態1の鉄心構造は例えば内鉄形の変圧器1に適用される。
【0015】
変圧器1は、フェライトコア21~25からなる鉄心2と、この鉄心2に巻回される一次巻線3及び二次巻線4を備える。
【0016】
鉄心2は、例えば同図に示したように、直方体状若しくは長板状のフェライトコア21~25が額縁状に配置されたものがさらに一方向に積層されて中空角柱状を成す。
【0017】
一次巻線3,二次巻線4が各々券回される鉄心2のレグ部26、並びに、一次巻線3,二次巻線4が券回されない鉄心2のヨーク部27は、同一寸法のフェライトコア21が配置及び一方向に積層されて成る。隣接のフェライトコア21は鉄心製造分野において周知の接着法により接着される。
【0018】
レグ部26とヨーク部27との接合部である鉄心2の角部28は、鉄心2の軸方向と直交する横断面の異なる複数のフェライトコア21~25が配置及び一方向に積層されて成る。前記横断面は鉄心2の外周側から内周側に連れて小さくなる。尚、隣接のフェライトコア21~25も前記周知の接着法により接着される。
【0019】
図1に例示された三層の鉄心2の場合、角部28は横断面の形状が略正方形を成す。そして、この角部28の外層OUT(図2)には、通常寸法の横断面長方形のフェライトコア21及び当該通常寸法の略2/3である横断面長方形のフェライトコア22が配される。さらに、外層OUTよりも内周側の中層CEN(同図)には、フェライトコア21の略1/3若しくは略1/3~4/5の横断面のフェライトコア23,24が配される。そして、中層CENよりも内周側の内層IN(同図)には、フェライトコア21の略1/3若しくは略1/10の横断面のフェライトコア24,25が配される。
【0020】
特に、フェライトコア21~25は、鉄心2の内層IN、中層CEN及び外層OUTの磁気抵抗が略均等となるように配置及び積層される。すなわち、同図に例示した三層の鉄心2の内層INの磁気抵抗Rm_IN、中層CENの磁気抵抗Rm_CEN及び外層OUTの磁気抵抗Rm_OUTは、以下の式(1)~(3)により示される(但し、μ:鉄心2の透磁率、lIN:内層INの磁路の長さ、lCEN:中層CENの磁路の長さ、lOUT:外層OUTの磁路の長さ、S:前記磁路の横断面積、μ0:真空の透磁率、lgap:内層IN,中層CEN,外層OUTにおいて隣接するフェライトコア21~25のギャップの長さ、Sgap:前記ギャップの断面積 以下、実施形態2,3も同様)。
【0021】
【数1】
【0022】
【数2】
【0023】
【数3】
【0024】
通常の磁気抵抗Rm_OUTと磁気抵抗Rm_CENと磁気抵抗Rm_INの関係は、以下の式(4)により示される。
【0025】
【数4】
【0026】
磁気抵抗Rm_OUT、磁気抵抗Rm_CEN及び磁気抵抗Rm_INは、フェライトコア21~25の磁気抵抗よりも、隣接するフェライトコア21~25のギャップの磁気抵抗が大きいので、当該ギャップの長さ及び数の調整により略均等に調整される。特に、磁気抵抗率μ(φ)は磁束φの関数であるので、磁気抵抗Rm_OUT、磁気抵抗Rm_CEN及び磁気抵抗Rm_INは以下の式(5)のように同等となるように有限要素法等の数値解析手法により前記ギャップの長さ及び数が調整される。
【0027】
【数5】
【0028】
以上のように角部28は、例えば、隣り合うフェライトコア21~25のギャップの長さが鉄心2の外周から内周に近づくに連れて小さくなるように、前記横断面の寸法が異なるフェライトコア21~25は配置及び積層される。これにより、フェライトコア21~25間のギャップの数が鉄心2の外側で少なく内側で多くなり、当該外側及び内側の磁気抵抗が均一となるので、鉄心2の角部28(レグ部26とヨーク部27との接合部)における磁束の集中が緩和される。
【0029】
鉄心2のフェライトコア21~25の大型化は技術的な制約があるが、入手可能なサイズのフェライトコアの配置及び積層により実現が可能である。特に前記ギャップの数の調整による磁気抵抗の均一化により、鉄心2の内周側に磁束が集中し、鉄損が冷却しにくい内側に集中することを回避できる。
【0030】
[実施形態2]
図3に示された実施形態2の鉄心2は、レグ部26の内層を成すフェライトコア211の横断面がレグ部26の外層及び中層を成すフェライトコア21の横断面よりも小さく設定される。また、ヨーク部27の中層及び内層を成すフェライトコア212の横断面も、ヨーク部27の外層を成すフェライトコア21の横断面よりも小さく設定される。そして、鉄心2の外層、中層及び内層の磁気抵抗が同等となるようにフェライトコア21,211,212が配置されることで、鉄心2の角部28の内周側への磁束集中及び鉄損の緩和が図られる。
【0031】
図示のフェライトコア211,212はその横断面がフェライトコア21の横断面の1/2に設定される。また、ヨーク部27の外層のフェライトコア21は当該外層の横断面がヨーク部27の中層及び内層の横断面よりも小さくなるように配置される。具体的にはヨーク部27の外層におけるフェライトコア21の配置数が実施形態1のヨーク部27の外層におけるフェライトコア21の配置数「3」よりも一つ少ない「2」に削減される。
【0032】
フェライトコア21,211,212とその接続部(ギャップ)による鉄心2の内層INの磁気抵抗Rm_IN、中層CENの磁気抵抗Rm_CEN及び外層OUTの磁気抵抗Rm_OUTは、以下の式(6)~(8)により示される。
【0033】
【数6】
【0034】
【数7】
【0035】
【数8】
【0036】
前記接続部の磁気抵抗が支配的であるため、磁気抵抗Rm_OUTと磁気抵抗Rm_CENと磁気抵抗Rm_INの関係は、以下の式(9)により示される。
【0037】
【数9】
【0038】
以上のように鉄心2においてフェライトコア21,211,212の接続部の数が一致するようにフェライトコア21,211,212が配置されることで、鉄心2の内層、中層及び外層の磁気抵抗が均一となり、磁束密度の集中が緩和される。
【0039】
実施形態1の鉄心2は、複数の寸法の異なるフェライトコアを組合せて磁束密度が均一となるように鉄心2の磁気回路が調整されているが、実施形態2の鉄心2によれば実施形態1の効果に加えてフェライトコアの寸法の種類を低減できる。鉄心2の角部28は磁束密度が少ないので、実施形態2のようにヨーク部27の外層の横断面がヨーク部27の中層及び内層の横断面よりも小さくなるようにフェライトコアを配置することで、実施形態1と比べてさらにフェライトコアの配置数の削減を図ることができる。
【0040】
[実施形態3]
図4に示された実施形態3の鉄心2は、レグ部26の内層を成すフェライトコア213の横断面がレグ部26の外層及び中層を成すフェライトコア21の横断面よりも小さく設定される。また、ヨーク部27の中層におけるフェライトコア214の横断面も、ヨーク部27の外層及び内層のフェライトコア21の横断面よりも小さく設定される。図示のフェライトコア213,214はその横断面がフェライトコア21の横断面の1/3に設定される。そして、鉄心2の外層、中層及び内層の磁気抵抗が同等となるようにフェライトコア21,213,214が配置されることで、鉄心2の角部28の内周側への磁束集中及び鉄損の緩和が図られる。
【0041】
フェライトコア21,213,214とその接続部(ギャップ)による鉄心2の内層INの磁気抵抗Rm_IN、中層CENの磁気抵抗Rm_CEN及び外層OUTの磁気抵抗Rm_OUTは、以下の式(10)~(12)により示される。
【0042】
【数10】
【0043】
【数11】
【0044】
【数12】
【0045】
本実施形態においても、実施形態2と同様に、前記接続部の磁気抵抗が支配的であるため、磁気抵抗Rm_OUTと磁気抵抗Rm_CENと磁気抵抗Rm_INの関係は、上記の式(9)により示される。
【0046】
以上のように鉄心2においてフェライトコア21,213,214の接続部の数が一致するようにフェライトコア21,213,214が配置されることで、鉄心2の内層、中層及び外層の磁気抵抗が均一となり、実施形態2と同様に、磁束密度の集中が緩和される。そして、実施形態2と同様に、実施形態1の効果に加えて、フェライトコアの寸法の種類を低減できる。
【0047】
尚、以上の実施形態1~3の鉄心構造は内鉄形の変圧器に適用されたものであるが、本発明の鉄心構造は、外鉄形の変圧器にも適用しても当該実施形態と同様の効果が得られることは明らかである。また、鉄心2は三層の鉄心であるが、本発明の鉄心構造は四層以上の鉄心にも適用しても上記実施形態と同様の効果が得られることは明らかである。
【符号の説明】
【0048】
1…変圧器
2…鉄心、21~25,211~214…フェライトコア、26…レグ部、27…ヨーク部、28…角部
3…一次巻線
4…二次巻線
図1
図2
図3
図4