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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20241203BHJP
   B65F 9/00 20060101ALI20241203BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20241203BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20241203BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20241203BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B65F9/00
B01D53/82
F25J1/00 D
B01D53/02
B01D53/14 200
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021164017
(22)【出願日】2021-10-05
(65)【公開番号】P2023054969
(43)【公開日】2023-04-17
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 宏石
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-110248(JP,A)
【文献】特開2021-065807(JP,A)
【文献】特開2017-030996(JP,A)
【文献】特表2018-524534(JP,A)
【文献】特開2021-062374(JP,A)
【文献】特表2017-528316(JP,A)
【文献】特開2019-135034(JP,A)
【文献】特開2013-031822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34 - 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B65F 5/00 - 9/00
F25J 1/00 - 5/00
B01D 53/02 - 53/12
B01D 53/14 - 53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建物と、前記建物の中の空気が前記建物から排出された建物排気に所定の処理を施す処理装置と、前記処理装置で処理された前記建物排気を処理空気として貯蔵する貯蔵容器と、を備えた二酸化炭素回収システムにおいて、
前記建物から前記処理装置に流入させる前記建物排気の流入量を調整可能な流量調整機構と、
前記流量調整機構を制御して前記流入量を調整するコントロールユニットと、を備えている
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記コントロールユニットは、
前記建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報を取得し、
取得した前記情報に基づいて、前記流量調整機構を制御する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
請求項2に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記建物に出入りする人の人数および行動に関する行動データを検出する検出機器を備え、
前記コントロールユニットは、
前記情報として、前記行動データを取得し、
取得した前記行動データに基づいて、前記流入量を調整する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
請求項3に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記コントロールユニットは、
前記建物内に居る人の人数が多いほど、前記流入量を大きくする
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
請求項3に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記コントロールユニットは、
前記建物内に居る人の人数が多い時間帯は、前記人数が少ない時間帯よりも、前記流入量を大きくする
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記コントロールユニットは、
前記建物内に人が居ない場合は、前記建物排気の前記処理装置への流入を停止する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
請求項3に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記コントロールユニットは、
前記行動データに基づいて、前記建物排気中の二酸化炭素濃度を推定し、
推定した前記二酸化炭素濃度が高いほど、前記流入量を大きくする
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
請求項1または2に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記建物排気中の二酸化炭素濃度を検出するCOセンサを備え、
前記コントロールユニットは、
前記COセンサで検出した前記二酸化炭素濃度が高いほど、前記流入量を大きくする
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記コントロールユニットは、
前記貯蔵容器に貯蔵された前記処理空気の貯蔵量を所得し、
前記貯蔵量が所定値以上の場合は、前記建物排気の前記処理装置への流入を停止する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項10】
請求項9に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記貯蔵容器に貯蔵した前記処理空気を、空気中の二酸化炭素を捕集または分離して回収する二酸化炭素回収装置に搬送する回収車両を備え、
前記コントロールユニットは、
前記回収車両の運行計画を策定して、前記回収車両の運行を管理するとともに、
前記貯蔵量が所定値以上の場合は、前記貯蔵量に関する情報を反映させて前記運行計画を策定する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記流量調整機構は、
前記建物と前記処理装置との間に設けられたバルブ機構であり、
前記コントロールユニットは、
前記バルブ機構の動作を制御することにより、前記流入量を調整する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記流量調整機構は、
前記建物と前記処理装置との間に設けられた送風機器であり、
前記コントロールユニットは、
前記送風機器の出力を制御することにより、前記流入量を調整する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記処理装置は、空気を圧縮する圧縮装置であり、
前記処理空気は、前記圧縮装置で前記建物排気を圧縮した圧縮空気である
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記処理装置は、空気を液化する液化装置であり、
前記処理空気は、前記液化装置で前記建物排気を液化した液体空気である
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムにおいて、
前記処理装置は、空気中の二酸化炭素濃度を高める二酸化炭素濃縮装置であり、
前記処理空気は、前記二酸化炭素濃縮装置で前記建物排気中の二酸化炭素濃度を高めた二酸化炭素濃縮空気である
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、戸別の建物から排出される二酸化炭素(CO)をそれぞれ回収するための二酸化炭素回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、大気中に排出される二酸化炭素の量を削減することを目的とした車両の制御システムに関する発明が記載されている。この特許文献1に記載された車両の制御システムは、空気中から二酸化炭素を回収するCO回収装置を搭載した車両を制御して、車両の外部の所定の建物から排出される空気(建物の排気)中の二酸化炭素を回収するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-65807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された車両の制御システムでは、所定の建物の排気口とCO回収装置を搭載した車両とが接続された場合に、建物の排気が車両に送られ、その建物の排気中に含まれる二酸化炭素が、車両に搭載されたCO回収装置で直接的に回収される。地球温暖化の一因とされている二酸化炭素は、大規模な発電所や製造プラントなどの他に、例えば、一般の住宅、店舗、あるいは、事務所など、上記の特許文献1に記載された車両の制御システムで対象にしているような、中小規模の建物からも排出される。そのような一般の建物の排気も対象にして二酸化炭素を回収することにより、二酸化炭素の排出量を削減することができ、ひいては、地球温暖化の抑制に多少とも寄与することができる。但し、上記の特許文献1に記載された車両の制御システムでは、排気を回収する一戸の建物と、CO回収装置を搭載した一台の車両とが接続され、その一戸の建物の排気中の二酸化炭素が回収される。CO回収装置を搭載した一台の車両で複数の建物から排出される排気中の二酸化炭素を回収することは想定されていない。そのため、例えば、所定の地域内にある複数(かつ多数)の建物を対象にして、それら複数の建物から排出される排気中の二酸化炭素をそれぞれ回収する場合には、効率よく二酸化炭素を回収できないおそれがある。
【0005】
また、各建物の排気をCO回収装置に効率的に搬送するために、例えば、建物の排気を圧縮または液化して、単位体積当たりの二酸化炭素の量または濃度を高めた状態にして、CO回収装置に搬送することも考えられる。但し、各建物の排気中の二酸化炭素濃度は一定ではなく、例えば、建物に出入りする人の人数や行動の態様等によって変化する。そのため、各建物の排気に対して、一律に、圧縮や液化等の処理を施すと、効率よく二酸化炭素を含む排気を搬送できない、あるいは、圧縮や液化等の処理を実施することの費用対効果が低下してしまうおそれがある。
【0006】
この発明は、上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、一般の複数の建物から排出される空気(建物排気)中の二酸化炭素を、効率よく、適切に回収することが可能な二酸化炭素回収システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、複数の建物と、前記建物の中の空気が前記建物から排出された建物排気に所定の処理を施す処理装置と、前記処理装置で処理された前記建物排気を処理空気として貯蔵する貯蔵容器と、を備えた二酸化炭素回収システムにおいて、前記建物から前記処理装置に流入させる前記建物排気の流入量を調整可能な流量調整機構と、前記流量調整機構を制御して前記流入量を調整するコントロールユニットと、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報を取得し、取得した前記情報に基づいて、前記流量調整機構を制御するように構成してもよい。
【0009】
また、この発明は、前記建物に出入りする人の人数および行動に関する行動データを検出する検出機器を備えていてもよく、この発明における前記コントロールユニットは、前記情報として、前記行動データを取得し、取得した前記行動データに基づいて、前記流入量を調整するように構成してもよい。
【0010】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記建物内に居る人の人数が多いほど、前記流入量を大きくするように構成してもよい。
【0011】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記建物内に居る人の人数が多い時間帯は、前記人数が少ない時間帯よりも、前記流入量を大きくするように構成してもよい。
【0012】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記建物内に人が居ない場合は、前記建物排気の前記処理装置への流入を停止する(すなわち、前記流入量を0にする)ように構成してもよい。
【0013】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記行動データに基づいて、前記建物排気中の二酸化炭素濃度を推定し、推定した前記二酸化炭素濃度が高いほど、前記流入量を大きくするように構成してもよい。
【0014】
また、この発明は、前記建物排気中の二酸化炭素濃度を検出するCOセンサを備えていてもよく、この発明における前記コントロールユニットは、前記COセンサで検出した前記二酸化炭素濃度が高いほど、前記流入量を大きくするように構成してもよい。
【0015】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記貯蔵容器に貯蔵された前記処理空気の貯蔵量を所得し、前記貯蔵量が所定値以上の場合は、前記建物排気の前記処理装置への流入を停止する(すなわち、前記流入量を0にする)ように構成してもよい。
【0016】
また、この発明は、前記貯蔵容器に貯蔵した前記処理空気を、空気中の二酸化炭素を捕集または分離して回収する二酸化炭素回収装置に搬送する回収車両を備え、この発明における前記コントロールユニットは、前記回収車両の運行計画を策定して、前記回収車両の運行を管理するとともに、前記貯蔵量が所定値以上の場合は、前記貯蔵量に関する情報を反映させて前記運行計画を策定するように構成してもよい。
【0017】
また、この発明における前記流量調整機構は、前記建物と前記処理装置との間に設けられたバルブ機構であってもよく、この発明における前記コントロールユニットは、前記バルブ機構の動作(開度、開閉状態等)を制御することにより、前記流入量を調整するように構成してもよい。
【0018】
また、この発明における前記流量調整機構は、前記建物と前記処理装置との間に設けられた送風機器であってもよく、この発明における前記コントロールユニットは、前記送風機器の出力を制御することにより、前記流入量を調整するように構成してもよい。
【0019】
また、この発明における前記処理装置は、空気を圧縮する圧縮装置であってもよく、この発明における前記処理空気は、前記圧縮装置で前記建物排気を圧縮した圧縮空気であってもよい。
【0020】
また、この発明における前記処理装置は、空気を液化する液化装置であってもよく、この発明における前記処理空気は、前記液化装置で前記建物排気を液化した液体空気であってもよい。
【0021】
そして、この発明における前記処理装置は、空気中の二酸化炭素濃度を高める二酸化炭素濃縮装置であってもよく、この発明における前記処理空気は、前記二酸化炭素濃縮装置で前記建物排気中の二酸化炭素濃度を高めた二酸化炭素濃縮空気であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
この発明の二酸化炭素回収システムは、例えば、近年、開発が進められているスマートシティのような所定の地域あるいは区域内に設置された、複数の、かつ、多数の建物(例えば、住宅、店舗、工場、病院、倉庫等)を対象にして二酸化炭素を回収する。各建物からは、建物の中に居住するまたは滞在する人の呼吸によって二酸化炭素が排出される。また、建物の中で使用する暖房機器や調理器具などから二酸化炭素が排出される。そして、この発明の二酸化炭素回収システムは、上記のように各建物から排出される二酸化炭素を含んだ空気(建物排気)を、例えば、二酸化炭素回収装置に搬送する。二酸化炭素回収装置では、各建物から送り込まれる建物排気中の二酸化炭素が、分離または捕集されて回収される。その際に、この発明の二酸化炭素回収システムでは、二酸化炭素を含む各建物の建物排気が、所定の処理装置によって所定の処理を施した処理空気として、一旦、貯蔵容器に貯蔵される。例えば、気体の圧縮装置によって建物排気が圧縮され、圧縮空気として貯蔵容器に貯蔵される。あるいは、気体の液化装置によって建物排気が液化され、液体空気として貯蔵容器に貯蔵される。あるいは、二酸化炭素濃縮装置により、建物排気中の二酸化炭素が濃縮され、二酸化炭素濃縮空気として貯蔵容器に貯蔵される。そのため、各建物の建物排気を、単位体積当たりの二酸化炭素の量または濃度を高めた状態で、効率よく、貯蔵容器に貯蔵することができる。
【0023】
上記のように各建物の建物排気を処理装置で処理する場合、各建物からそれぞれ排出される建物排気中の二酸化炭素の量、すなわち、建物排気中の二酸化炭素濃度は一定ではない。そのため、各建物の建物排気を、一律に、処理装置に流入させると、二酸化炭素を含む建物排気を効率よく貯蔵できない、あるいは、処理装置を稼働して建物排気に処理を施すことの費用対効果が低下してしまう場合がある。例えば、建物排気の二酸化炭素濃度が低い場合は、建物排気中の二酸化炭素濃度が高い場合と比較して、処理装置を稼働するために消費するエネルギ量に対する二酸化炭素の貯蔵量が少なくなる。すなわち、処理装置を稼働する費用対効果が低くなる。そこで、この発明の二酸化炭素回収システムでは、各建物と処理装置との間に流量調整機構が設けられ、各建物から処理装置に流入させる建物排気の流入量がそれぞれ調整される。そのため、各建物から排出される建物排気の状態(例えば、建物排気中の二酸化炭素濃度)に応じて、処理装置に流入させる建物排気の流入量を調整することができる。
【0024】
具体的には、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報(例えば、二酸化炭素濃度の検出値、または、二酸化炭素濃度の推定値、もしくは、建物内で二酸化炭素を排出する人に関する情報等)を取得し、その建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報に基づいて、処理装置に流入させる建物排気の流入量を調整する。例えば、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、建物の中に居る人の人数や、人の動きに関するデータを取得し、その人数や人の動きから、建物排気中の二酸化炭素濃度を推定する。または、建物排気中の二酸化炭素濃度を、センサ等を用いて直接検出する。そして、例えば、推定または検出した建物排気中の二酸化炭素濃度が低い場合は、建物排気中の二酸化炭素濃度が高い場合と比較して、処理装置に流入させる建物排気の流入量を少なくする。それにより、建物排気の状態に応じて、処理装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0025】
また、この発明の二酸化炭素回収システムでは、建物に出入りする人の人数および行動に関する行動データ(例えば、建物の中に居る人の人数、人の位置情報、動作・運動情報等)を検出する検出機器(例えば、カメラ、人感センサ、携帯情報端末、Gセンサ等)が備えられる。そして、その検出機器で検出する行動データに基づいて、処理装置に流入させる建物排気の流入量が調整される。例えば、検出機器として、建物に出入りする人の動きを観察するカメラ(監視カメラ等)が用いられ、行動データとして、建物に出入りする人の人数が検出される。それとともに、検出された人数に基づいて、建物排気中の二酸化炭素濃度が推定される。建物の中に居る人の人数が多いほど、その建物から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。あるいは、検出機器として、建物に出入りする人が所持している携帯情報端末(例えば、携帯電話、GPS[Global Positioning System]発信器等)の位置検索機能が用いられ、行動データとして、建物に出入りする人の位置情報が検出される。それとともに、検出された人の位置情報に基づいて、建物排気中の二酸化炭素濃度が推定される。建物の中で人に所持されている携帯情報端末の位置情報が多いほど、建物の中に居る人が多く、その建物から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。あるいは、検出機器として、建物に出入りする人が所持する携帯情報端末(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、電子手帳等)のスケジュール帳機能が用いられ、行動データとして、建物に出入りする人のスケジュール(移動、行動予定等)が検出される。それとともに、検出されたスケジュールに基づいて、建物の中に居る人が多い時間帯が予測される。人が多いと予測される時間帯は、人が少ないと予測される時間帯よりも、その建物から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。そして、上記のようにして推定した建物排気中の二酸化炭素濃度が高いほど、処理装置に流入させる建物排気の流入量が増大される。そのため、建物排気中の二酸化炭素濃度の推定値または予測値に基づいて、処理装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0026】
また、この発明の二酸化炭素回収システムでは、建物の中に居る人の人数が多いほど、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと判断され、処理装置に流入させる建物排気の流入量が増大される。あるいは、建物の中に居る人の人数が多い時間帯は、建物の中に居る人の人数が少ない時間帯よりも、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと判断され、処理装置に流入させる建物排気の流入量が増大される。あるいは、建物の中に人が居ない場合は、建物排気中の二酸化炭素濃度は低いと判断され、建物排気の処理装置への流入が停止される、すなわち、処理装置に流入させる建物排気の流入量が0にされる。そのため、建物排気中の二酸化炭素濃度の推定値または予測値に則して、処理装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0027】
また、この発明の二酸化炭素回収システムでは、上記のように建物排気中の二酸化炭素濃度を推定する代わりに、COセンサを用いて、直接、建物排気中の二酸化炭素濃度を検出してもよい。COセンサで検出した建物排気中の二酸化炭素濃度が高いほど、処理装置に流入させる建物排気の流入量が増大される。また、例えば、COセンサで検出した建物排気中の二酸化炭素濃度が所定値よりも低い場合は、建物排気の処理装置への流入が停止される、すなわち、処理装置に流入させる建物排気の流入量が0にされる。そのため、実際に検出した建物排気中の二酸化炭素濃度に則して、処理装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0028】
また、この発明の二酸化炭素回収システムでは、貯蔵容器に貯蔵された処理空気の貯蔵量に基づいて、流量調整機構が制御され、処理装置に流入させる建物排気の流入量が調整される。特に、処理空気の貯蔵量が所定値以上の場合は、建物排気の処理装置への流入が停止される、すなわち、処理装置に流入させる建物排気の流入量が0にされる。したがって、貯蔵容器に貯蔵された処理空気の貯蔵量が所定値以上となり、貯蔵容器の空き容量に余裕がない場合に、処理装置から貯蔵容器に、新たに処理空気が送り込まれることがない。そのため、建物排気を処理装置で処理したにもかかわらず、貯蔵容器に貯蔵できなくなってしまう事態を回避できる。すなわち、処理装置を無駄に稼働させてしまうことを回避でき、その結果、建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、回収することができる。
【0029】
また、この発明の二酸化炭素回収システムでは、貯蔵容器に貯蔵された処理空気が、回収車両によって二酸化炭素回収装置に搬送される。例えば、各建物ごとに設置された貯蔵容器の貯蔵場所から、二酸化炭素回収装置の設置場所に、処理空気が搬送される。あるいは、所定数の建物の排気を集約して貯蔵する貯蔵容器が設置された貯蔵場所から、二酸化炭素回収装置の設置場所に、処理空気が搬送される。あるいは、複数の貯蔵容器が集められて設置された貯蔵場所から、二酸化炭素回収装置の設置場所に、処理空気が搬送される。回収車両は、運行計画が策定され、処理空気の貯蔵場所と二酸化炭素回収装置との間の運行が管理される。このような回収車両を用いて処理空気を搬送することにより、処理空気の貯蔵場所と二酸化炭素回収装置との間で、特別な配管やパイプライン等を敷設することなく、容易に、処理空気、すなわち、二酸化炭素を含む建物排気を搬送することができる。更に、この発明の二酸化炭素回収システムでは、貯蔵容器に貯蔵された処理空気の貯蔵量を考慮して回収車両の運行計画が策定される。特に、処理空気の貯蔵量が所定値以上の場合は、処理空気の貯蔵量に関する情報を反映して回収車両の運行計画が策定される。例えば、処理空気の貯蔵量が所定値以上になった貯蔵容器を優先して収集するように、回収車両の運行計画が策定される。そのため、空き容量に余裕がない貯蔵容器の処理空気を、速やかに、回収車両で収集することができる。その結果、建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、回収することができる。
【0030】
なお、この発明の二酸化炭素回収システムでは、流量調整機構として、例えば、バルブ機構が設けられる。そして、バルブ機構の動作(開度、開閉状態)を制御することにより、処理装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。あるいは、流量調整機構として、例えば、送風機器が設けられる。そして、送風機器の出力(送風量)を制御することにより、処理装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0031】
したがって、この発明の二酸化炭素回収システムによれば、各建物から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度を考慮して、単位体積当たりの二酸化炭素の量または濃度が高く、効率がよい状態で、処理装置を稼働させることができる。また、処理装置で処理された建物排気(処理空気)を、効率よく、貯蔵容器に貯蔵することができる。そのため、各建物から排出される建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、適切に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】この発明の二酸化炭素回収システムの構成を説明するための図であって、所定の地域(スマートシティ)内に設置された複数の建物から排出される空気(建物排気)、および、建物排気を処理装置で処理して貯蔵容器(貯蔵タンク)に貯蔵した空気(処理空気)の流通経路、ならびに、回収車両を運行するための制御系統等を模式的に示す図である。
図2】この発明の二酸化炭素回収システムの構成を説明するための図であって、特に、建物から処理装置に送り込む建物排気の流入量を調整するための制御系統等を模式的に示す図である。
図3】この発明の二酸化炭素回収システムの構成を説明するための図であって、回収車両の運行を管理するとともに、建物から処理装置に送り込む建物排気の流入量を調整するためのコントロールユニットの具体的な構成、および、コントロールユニットと流量調整機構との間の通信・制御系統等を示すブロック図である。
図4】この発明の二酸化炭素回収システムによって実行される制御の一例を説明するための図であって、建物排気中の二酸化炭素濃度を考慮して、建物から処理装置に送り込む建物排気の流入量を調整する制御の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0034】
この発明の実施形態における二酸化炭素回収システムは、例えば、スマートシティのような所定の地域あるいは区域内に建てられた複数の、かつ、多数の建物を対象にしている。そして、それら複数の建物から排出される空気中の二酸化炭素を分離または捕集して回収する。
【0035】
図1図2に示すように、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、複数の建物2から排出される空気(以下、建物排気)から二酸化炭素を回収する。建物2から出る建物排気は、処理装置3で所定の処理が施され、処理空気として貯蔵容器(貯蔵タンク)4に一旦貯蔵される。例えば、建物排気が圧縮されて、圧縮空気として貯蔵容器4に貯蔵される。あるいは、建物排気が液化されて、液体空気として貯蔵容器4に貯蔵される。そして、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気、すなわち、単位体積当たりの二酸化炭素の量または濃度が高められた状態の建物排気が、回収車両Veによって収集され、二酸化炭素回収装置(CO回収装置)5に搬送される。二酸化炭素回収装置5では、処理空気(建物排気)中の二酸化炭素が分離または捕集される。すなわち、建物2から排出される空気から二酸化炭素が回収される。そして、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、処理装置3に流入させる建物排気の流入量を調整する流量調整機構6、および、回収車両Veの運行を管理するとともに、流量調整機構6の動作を制御するコントロールユニット7を備えている。更に、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度を検出するためのCOセンサ8を備えていてもよい。また、建物2の中に居住する人、あるいは、建物2に出入りする人の行動に関する行動データを検出するための検出機器9を利用することもできる。
【0036】
建物2は、具体的には、住宅、商店、飲食店、工場、病院、倉庫など、所定の地域あるいは区域内に建てられた家屋や建築物である。例えば、一般家庭の住宅、あるいは、店舗や事務所などの比較的小規模または中規模の建物2であっても、建物2に居住するまたは滞在する人の呼吸によって二酸化炭素が排出される。また、建物2の中で使用する暖房機器や調理器具などからも二酸化炭素が排出される。この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、そのような比較的小規模または中規模の建物2を対象にして、二酸化炭素を回収する。なお、建物2は、それぞれ、後述するコントロールユニット7に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、データ通信が可能なように接続されていてもよい。
【0037】
処理装置3は、建物2から排出された建物排気に所定の処理を施すための装置である。具体的には、処理装置3は、気体の圧縮装置(エアコンプレッサ)であり、建物排気を圧縮する。圧縮された建物排気は、処理装置3で処理された処理空気として、圧縮空気となる。あるいは、処理装置3は、気体の液化装置であり、建物排気を圧縮および冷却することによって液化する。液化された建物排気は、処理装置3で処理された処理空気として、液体空気となる。あるいは、処理装置3は、二酸化炭素濃縮装置であり、建物排気中の二酸化炭素を濃縮する。例えば、所定のフィルタに二酸化炭素を吸着させ、吸着した二酸化炭素を含む空気、または、吸着した二酸化炭素を戻して二酸化炭素濃度を高めた建物排気が、処理装置3で処理された処理空気として、二酸化炭素濃縮空気となる。図1図2では、各建物2ごとに設けられた処理装置3で、各建物2から排出される建物排気をそれぞれ処理するイメージを示してある。なお、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、例えば、気体の圧縮装置と二酸化炭素濃縮装置とを組み合わせて処理装置3を構成し、二酸化炭素濃縮空気を圧縮した圧縮空気を処理空気としてもよい。あるいは、気体の液化装置と二酸化炭素濃縮装置とを組み合わせて処理装置3を構成し、二酸化炭素濃縮空気を液化した液体空気を処理空気としてもよい。
【0038】
貯蔵容器4は、上記の処理装置3で処理された処理空気を貯蔵または貯留する。具体的には、貯蔵容器4は、いわゆるガスボンベやエアタンクなどと称される圧力容器である。例えば、貯蔵容器4は、処理空気として、気体の圧縮装置で圧縮した圧縮空気を貯蔵する。あるいは、貯蔵容器4は、処理空気として、気体の液化装置で液化した液体空気を貯蔵する。あるいは、貯蔵容器4は、処理空気として、二酸化炭素濃縮装置で二酸化炭素濃度を高めた二酸化炭素濃縮空気を貯蔵する。また、貯蔵容器4は、上記のように、気体の圧縮装置と二酸化炭素濃縮装置とを組み合わせた処理装置3で処理された処理空気(すなわち、二酸化炭素濃縮空気を圧縮した圧縮空気)を貯蔵してもよい。あるいは、貯蔵容器4は、上記のように、気体の液化装置と二酸化炭素濃縮装置とを組み合わせた処理装置3で処理された処理空気(すなわち、二酸化炭素濃縮空気を液化した液体空気)を貯蔵してもよい。貯蔵容器4は、後述するコントロールユニット7に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、データ通信が可能なように接続されている。
【0039】
このように、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、各建物2から排出される建物排気が、処理装置3によって処理され、処理空気として貯蔵容器4に貯蔵される。例えば、建物排気が、気体の圧縮装置によって圧縮され、圧縮空気として貯蔵容器4に貯蔵される。あるいは、建物排気が、気体の液化装置によって液化され、液体空気として貯蔵容器4に貯蔵される。あるいは、二酸化炭素濃縮装置によって建物排気中の二酸化炭素が濃縮され、二酸化炭素濃縮空気として貯蔵容器4に貯蔵される。そのため、各建物2から排出される建物排気を、単位体積当たりの二酸化炭素の量または濃度を高めた状態で、効率よく、貯蔵容器4に貯蔵することができる。
【0040】
なお、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、例えば、上記の処理装置3および貯蔵容器4を、所定の貯蔵場所にまとめて設置してもよい。そして、複数の建物2ごとに排出される建物排気を、所定の貯蔵場所に集約して処理装置3で処理し、処理した処理空気を貯蔵容器4に貯蔵してもよい。あるいは、上記の処理装置3を、複数の建物2ごとに設置し、貯蔵容器4を、所定の貯蔵場所にまとめて設置してもよい。そして、複数の建物2ごとに処理装置3で処理した処理空気を、所定の貯蔵場所に集約して貯蔵容器4に貯蔵してもよい。
【0041】
二酸化炭素回収装置5は、空気中または排気中の二酸化炭素を捕集して回収する。この発明の実施形態における二酸化炭素回収装置5は、上記のように、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気、すなわち、処理装置3で処理され建物排気中の二酸化炭素を捕集して回収する。二酸化炭素回収装置5は、後述するコントロールユニット7に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、データ通信が可能なように接続されている。
【0042】
二酸化炭素回収装置5における二酸化炭素の回収は、例えば、特開2021-8852号公報に記載されているような「物理吸着法」、「物理吸収法」、「化学吸収法」、および、「深冷分離法」など、周知の、種々の方法・技術を適用して行うことができる。「物理吸着法」では、例えば、活性炭やゼオライトなどの固体吸着剤と排ガスとを接触させることによって二酸化炭素を固体吸着剤に吸着させ、二酸化炭素が吸着した固体吸着剤を加熱または減圧することにより、固体吸着剤から二酸化炭素を脱離させて回収する。「物理吸収法」では、例えば、メタノールやエタノールなど、二酸化炭素を溶解させることが可能な吸収液と排ガスとを接触させて高圧・低温の下で物理的に二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱または減圧することにより、吸収液から二酸化炭素を回収する。「化学吸収法」では、例えば、アミンのように、二酸化炭素を選択的に溶解させることが可能な吸収液と排ガスとを接触させ、その際に生じる化学反応によって二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱することにより、吸収液から二酸化炭素を解離させて回収する。「深冷分離法」では、排ガスを圧縮および冷却することによって二酸化炭素を液化させ、液化させたCOを選択的に蒸留させることにより、二酸化炭素を回収する。
【0043】
図2に示すように、流量調整機構6は、建物2と処理装置3との間の流路10の途中に設けられている。なお、流路10は、建物2から排出される建物排気を処理装置3に流通させる。例えば、流路10は、建物2の排気口(図示せず)と、処理装置3の流入口(図示せず)とを連通する通気管によって構成されている。図2に示す実施形態では、流路10は、建物排気、すなわち、気相の二酸化炭素を含む空気を流通させる。
【0044】
流量調整機構6は、流路10を介して、建物2から処理装置3に流入させる建物排気の流入量を調整する。具体的には、流量調整機構6は、建物2と処理装置3との間に設けられた“バルブ機構”によって構成されている。この場合、流量調整機構6は、“バルブ機構”として、例えば、弁の開度に応じて流量を変化させる流量制御弁、あるいは、弁体の位置に応じて、建物2と処理装置3との間の流路10を連通状態または遮断状態にする開閉弁などを用いることができる。また、“バルブ機構”として、例えば、一般的な換気扇の排出口に設けられるシャッタも、一種の“バルブ機構”、または、“バルブ機構”に準ずる機構として用いることができる。したがって、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、流量調整機構6として、上記のような“バルブ機構”における弁の開度や開閉状態、あるいは、シャッタの開閉状態を制御することにより、処理装置3に流入させる建物排気の流入量を調整する。
【0045】
また、流量調整機構6は、建物2と処理装置3との間に設けられた“送風機器”によって構成することもできる。“送風機器”は、出力に応じて、送風量、すなわち、建物2と処理装置3との間の流路10を流通させる建物排気の流入量を変化させる。したがって、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、流量調整機構6として、上記のような“送風機器”の出力を制御することにより、処理装置3に流入させる建物排気の流入量を調整する。なお、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、流量調整機構6として、上記のような“バルブ機構”および“送風機器”を併用してもよい。流量調整機構6は、後述するコントロールユニット7に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、データ通信が可能なように接続されている。
【0046】
回収車両Veは、処理装置3で処理されて貯蔵容器4に貯蔵された処理空気を、二酸化炭素回収装置5に搬送する。例えば、回収車両Veは、貯蔵容器4を積載する荷台または荷室等を備えた運搬車両であり、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気を、貯蔵容器4ごと収集し、二酸化炭素回収装置5に搬送する。または、回収車両Veは、処理空気が充填されるタンク(圧力容器)を備えた運搬車両であり、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気を、貯蔵容器4から運搬車両のタンクに移し替えて収集し、貯蔵容器4を設置した貯蔵場所から二酸化炭素回収装置5に搬送する。回収車両Veは、後述するコントロールユニット7に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、データ通信が可能なように接続されている。そして、回収車両Veは、後述するコントロールユニット7で策定される運行計画に基づいて、貯蔵容器4の貯蔵場所と二酸化炭素回収装置5との間を運行する。
【0047】
コントロールユニット7は、例えば、サーバコンピュータあるいはマイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置であり、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1の主要部分を構成している。コントロールユニット7は、上記のような処理空気を二酸化炭素回収装置5に搬送する回収車両Veの運行を管理する。具体的には、コントロールユニット7は、回収車両Veの運行計画を策定して、制御指令として出力する。それとともに、コントロールユニット7は、流量調整機構6の動作を制御して、建物2から処理装置3に流入させる建物排気の流入量を調整する。コントロールユニット7は、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、外部のサーバ(図示せず)や、インターネット上のウェブサイトなどと接続されている。また、コントロールユニット7は、例えば、各建物2、または、各建物2の建物排気(処理空気)を貯蔵する貯蔵容器4に設置されたコントローラ(図示せず)、および、回収車両Veに搭載された車載コントローラ(図示せず)と、それぞれ、公衆通信回線、専用の通信回線、あるいは、所定の通信機器等を介して、互いにデータ通信が可能なように接続されている。そして、コントロールユニット7には、例えば、後述するCOセンサ8、および、所定の検出機器9などから各種データが入力される。
【0048】
また、コントロールユニット7は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントロールユニット7は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上述した回収車両Veの運行を管理するように構成されている。例えば、コントロールユニット7は、回収車両Veの運行計画として、回収車両Veの運行時機、または、運行日時、および、運行ルート、走行ルート、または、処理空気の回収ルート等を策定する。それとともに、策定した回収車両Veの運行計画を、回収車両Veに出力する。例えば、運行計画として、運行日時および運行ルートを回収車両Veのダッシュボードに表示して、回収車両Veの運転者に認識させる。回収車両Veの運転者が、表示された運行計画に則って回収車両Veを運転することにより、回収車両Veは、各建物2または貯蔵容器4と二酸化炭素回収装置5との間を運行する。すなわち、コントロールユニット7は、策定した運行計画に基づいて、回収車両Veの運行を管理する。
【0049】
更に、コントロールユニット7は、上述した流量調整機構6の動作を制御するように構成されている。例えば、コントロールユニット7は、流量調整機構6として“バルブ機構”における弁の開度や開閉状態を制御する。あるいは、コントロールユニット7は、流量調整機構6として“送風機器”の出力を制御する。それにより、コントロールユニット7は、建物2から処理装置3に流入させる建物排気の流入量を調整する。具体的には、コントロールユニット7は、各建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報を取得する。それとともに、取得した建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報に基づいて、流量調整機構6の動作を制御する。このコントロールユニット7については、より具体的な構成を後述する。
【0050】
COセンサ8は、例えば、建物2の排気口(図示せず)付近や、建物2と処理装置3との間の流路10に設置されている。COセンサ8は、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度を、直接検出する。
【0051】
検出機器9は、建物2に出入りする人の人数および行動に関する行動データを検出する。この検出機器9としては、例えば、建物2に対する人の出入りを観察するカメラ(監視カメラ等)、または、建物2に出入りする人を感知する人感センサなどが用いられる。そのようなカメラや人感センサ等を利用し、建物2に出入りする人の行動に関する行動データとして、建物2に出入りする人の人数が検出される。または、建物2の中に居る人の人数が検出される。そして、検出された人数に基づいて、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、建物排気中の二酸化炭素濃度が推定される。建物2の中に居る人の人数が多いほど、その建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。あるいは、検出機器9として、携帯電話、パーソナルコンピュータ、電子手帳など、建物2に出入りする人が所持する携帯情報端末(図示せず)が用いられる。検出機器9は、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、例えば、上記のような携帯情報端末のスケジュール帳機能を利用して、建物2に出入りする人の人数および行動に関する行動データを取得する。具体的には、建物2に出入りする人の行動データとして、建物2に出入りする人のスケジュール(移動予定、行動予定等)が検出される。また、検出されたスケジュールに基づいて、建物2の中に居る人が多い時間帯が予測される。人が多いと予測される時間帯は、人が少ないと予測される時間帯よりも、その建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。あるいは、建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高くなると予測される。
【0052】
なお、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、複数の、かつ、多数の建物2が建てられた地域または地区、あるいは、都市の一例として、いわゆるスマートシティ11を想定している。スマートシティ11は、例えば、「都市が抱える諸問題に対して、ICT[Information and Communication Technology]等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・設備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」(国土交通省)のように定義される都市または地域である。そのようなスマートシティ11は、近年、実証実験や実用化に向けた開発が進められている。スマートシティ11の中で日常的に排出される二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を、例えば、発電用の燃料や農業用の肥料として有効利用することも想定される。それにより、スマートシティ11の中で二酸化炭素を循環させ、実質的に、二酸化炭素の排出量を削減または抑制することができる。
【0053】
また、図1図2では、スマートシティ11の中に建てられた各建物2から排出される建物排気(具体的には、処理装置3で処理され、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気)を、戸別に、回収車両Veで収集し、二酸化炭素回収装置5に搬送するイメージを示している。この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、例えば、各建物2から排出される建物排気を集約して所定の貯蔵容器4に貯蔵し、その貯蔵容器4を設置した所定の貯蔵場所から、回収車両Veで処理空気を収集し、二酸化炭素回収装置5に搬送してもよい。あるいは、複数の貯蔵容器4を集結して設置した所定の貯蔵場所から、回収車両Veで処理空気を収集し、二酸化炭素回収装置5に搬送してもよい。また、処理空気は、貯蔵容器4ごと回収車両Veに積み込まれて、二酸化炭素回収装置5に搬送されてもよい。あるいは、処理空気は、貯蔵容器4から回収車両Veに移し替えられて、二酸化炭素回収装置5に搬送されてもよい。
【0054】
また、図1に示す例では、コントロールユニット7は、上記のようなスマートシティ11の中の所定の施設に設置されている。この発明の実施形態におけるコントロールユニット7は、スマートシティ11の外部の所定の施設に設置されていてもよい。また、図1図2では、一つのコントロールユニット7が設けられたイメージを示しているが、この発明の実施形態におけるコントロールユニット7は、例えば、制御内容や制御対象ごとに、複数のコントロールユニット7が設けられていてもよい。あるいは、個別に設置された複数のサーバ(図示せず)を統合したものを、総合的に、コントロールユニット7としてもよい。
【0055】
より具体的には、図3に示すように、この発明の実施形態におけるコントロールユニット7は、例えば、制御情報取得部21、貯蔵タンク監視部22、流入量算出部23、および、流入量制御部24を有している。
【0056】
制御情報取得部21は、制御に適用する各種データを取得する。特に、制御情報取得部21は、建物2から排出される建物排気に含まれる二酸化炭素の量、すなわち、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報を取得する。例えば、COセンサ8で検出する建物排気中の二酸化炭素濃度に関するデータ(実際の検出値)を取得する。また、建物2に出入りする人の人数および行動に関する行動データとして、例えば、監視カメラや人感センサなどの検出機器9で検出する建物2の中に居る人の人数に関するデータを取得する。あるいは、例えば、携帯情報端末などの検出機器9で検出する建物2の中に居る人の人数および行動の態様に関するデータを取得する。そして、それら各種データから、建物排気中の二酸化炭素濃度を推定する。
【0057】
貯蔵タンク監視部22は、貯蔵容器4に貯蔵されている処理空気(建物排気)の量(貯蔵量)を、常時、監視する。例えば、貯蔵容器4の空き容量を把握するために、各建物2ごとの貯蔵容器4に貯蔵されている処理空気の貯蔵量、あるいは、その貯蔵量に関連するデータを取得する。取得した処理空気の貯蔵量が所定値以上の場合に、貯蔵容器4の空き容量に余裕がないと判断する。
【0058】
流入量算出部23は、上記の制御情報取得部21で取得した各種データ、および、貯蔵タンク監視部22で取得した貯蔵容器4の空き容量等に基づいて、建物2から処理装置3に流入させるべき建物排気の流入量を算出する。例えば、建物排気中の二酸化炭素濃度が低い場合は、建物排気中の二酸化炭素濃度が高い場合と比較して、処理装置3に流入させる建物排気の流入量が低下される。あるいは、建物2の中に居る人の人数が多い場合は、建物2の中に居る人の人数が少ない場合と比較して、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定され、処理装置3に流入させる建物排気の流入量が増大される。また、処理空気の貯蔵量が所定値以上となり、空き容量に余裕がないと判断された貯蔵容器4と接続する処理装置3に対して、その処理装置3に流入させる建物排気の流入量を0にする。すなわち、その処理装置3への建物排気の流入を停止する。
【0059】
流入量制御部24は、上記の流入量算出部23で算出した建物排気の流入量に基づいて、流量調整機構6を制御する。すなわち、流入量算出部23で算出した建物排気の流入量を実現するように、流量調整機構6の動作を制御する。例えば、流入量制御部24は、流量調整機構6として“バルブ機構”における弁の開度や開閉状態を制御する。あるいは、流入量制御部24は、流量調整機構6として“送風機器”の出力を制御する。
【0060】
なお、この発明の実施形態におけるコントロールユニット7は、上記のような制御情報取得部21、貯蔵タンク監視部22、流入量算出部23、および、流入量制御部24の他にも、所定の制御部を有していてよい。例えば、制御の実行間隔やタイミングを設定するために、時間に関するデータを取得する時間計測部(図示せず)、および、運行計画作成部(図示せず)などを有している。
【0061】
例えば、運行計画作成部は、上記の制御情報取得部21で取得した各種データ、および、貯蔵タンク監視部22で取得した貯蔵容器4の空き容量等に基づき、回収車両Veの運行計画を策定する。具体的には、運行計画作成部は、回収車両Veの運行計画として、少なくとも、回収車両Veの運行時機(または、運行期間、回収日時等)、および、回収車両Veの運行ルート(または、回収順序、回収ルート等)を策定する。例えば、各建物2の貯蔵容器4に貯蔵された処理空気(建物排気)の貯蔵量を比較して、処理空気の貯蔵量が多い貯蔵容器4を優先して収集するように、あるいは、空き容量が残り少ない貯蔵容器4を早急に収集するように、回収車両Veの運行時機、および、回収車両Veの運行ルートを策定する。また、例えば、処理空気中の二酸化炭素濃度が高いと推定または予測した貯蔵容器4を優先して収集するように、回収車両Veの運行時機、および、回収車両Veの運行ルートを策定する。
【0062】
前述したように、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、複数の、かつ、多数の建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、適切に回収することを主な目的にしている。そのために、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、例えば、次の図4のフローチャートに示す制御を実行するように構成されている。
【0063】
図4のフローチャートは、建物排気中の二酸化炭素濃度を考慮して、建物2から処理装置3に送り込む建物排気の流入量を調整する制御の例を示している。なお、この図4のフローチャートで示す制御は、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1で対象にしている複数(多数)の建物2の全て、ならびに、各建物2にそれぞれ接続する全ての流量調整機構6、全ての処理装置3、および、全ての貯蔵容器4を対象にして実行される。
【0064】
図4に示すフローチャートにおいて、先ず、ステップS1では、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気(建物排気)の貯蔵量が、所定値未満であるか否かが判断される。この場合の所定値は、貯蔵容器4の空き容量を把握し、その貯蔵容器4の貯蔵可能残量を判断するための閾値であり、例えば、実証試験やシミュレーションなどの結果を基に、予め定められている。貯蔵容器4に貯蔵された処理空気の貯蔵量が所定値以上になった場合に、貯蔵容器4の空き容量が残り少なく、早期に貯蔵容器4内の処理空気を回収する必要があると判断される。
【0065】
未だ、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気の貯蔵量が所定値未満であること、すなわち、貯蔵容器4の空き容量に余裕があることにより、ステップS1で肯定的に判断された場合は、ステップS2へ進む。
【0066】
ステップS2では、前回の制御タイミングから所定時間が経過したか否かが判断される。具体的には、前回、流量調整機構6を制御して、建物2から処理装置3に送り込む建物排気の流入量を調整した時点から、所定時間が経過したか否かが判断される。この場合の所定時間は、流量調整機構6による建物排気の流入量の調整を、適切な時間間隔で行うための時間であり、例えば、実証試験やシミュレーションなどの結果を基に、予め定められている。
【0067】
未だ、前回の制御タイミングから所定時間が経過していないことにより、このステップS2で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図4のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。それに対して、前回の制御タイミングから所定時間が経過したことにより、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ステップS3へ進む。
【0068】
ステップS3では、建物2から排出される空気に含まれる二酸化炭素の量が推定される。すなわち、建物排気中の二酸化炭素濃度が求められる。具体的には、検出機器9で検出した建物2に出入りする人の行動データから、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、建物排気中の二酸化炭素濃度が推定される。例えば、建物2に出入りする人の行動データとして、監視カメラや人感センサなどの検出機器9で、建物2の中に居る人の人数に関するデータが検出される。あるいは、携帯情報端末などの検出機器9で、建物2の中に居る人の人数および行動の態様に関するデータが検出される。そのような各種データが、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として所得される。そして、その建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報に基づいて、建物排気中の二酸化炭素濃度が推定される。なお、前述したように、COセンサ8により、建物排気中の二酸化炭素濃度を直接検出し、その二酸化炭素濃度の検出値を、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報に基づく建物排気中の二酸化炭素濃度としてもよい。
【0069】
続いて、ステップS4では、推定した(または、検出した)建物排気中の二酸化炭素濃度に基づき、回収する処理空気の量が算出される。具体的には、建物2から排出される建物排気を処理装置3で処理して、貯蔵容器4に貯蔵する処理空気の量が算出される。各建物2からそれぞれ排出される建物排気中の二酸化炭素濃度は一定ではない。そのため、建物排気中の二酸化炭素濃度が低い場合に、その建物排気を処理装置3で処理すると、処理装置3を稼働する費用対効果が低くなってしまう。反対に、建物排気中の二酸化炭素濃度が高い場合に、その建物排気を処理装置3で処理すると、二酸化炭素濃度が高い状態の処理空気を貯蔵容器4に貯蔵することができ、その処理空気を収集して二酸化炭素回収装置5に搬送することにより、建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、回収することができる。したがって、このステップS4では、例えば、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いほど、貯蔵容器4に貯蔵する処理空気の量が多くなるように、建物排気中の二酸化炭素濃度に応じて、回収する処理空気の量が算出される。
【0070】
続いて、ステップS5では、建物2から処理装置3に送り込む建物排気の流入量が算出される。具体的には、上記のステップS4で算出された量の処理空気を、実際に処理装置3で処理するために必要な建物排気の流入量が算出される。すなわち、処理装置3の性能や処理能力等を考慮し、ステップS4で算出された処理空気の量から、処理装置3に流入させる建物排気の流入量が算出される。
【0071】
そして、ステップS6では、算出した建物排気の流入量に基づき、流量調整機構6が制御される。具体的には、上記のステップS5で算出された建物排気の流入量を実現するように、流量調整機構6として“バルブ機構”の開度が制御される。あるいは、流量調整機構6として“送風機器”の出力が制御される。例えば、建物2の中に居る人の人数が多いほど、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。そのため、建物2の中に居る人の人数が多いほど、建物排気の流入量が大きくなるように、流量調整機構6が制御される。また、建物2の中に居る人の人数が多い時間帯は、建物2の中に居る人の人数が少ない時間帯よりも、建物排気の流入量が大きくなるように、流量調整機構6が制御される。また、建物2の中に人が居ない場合、または、建物2の中に、所定人数以下のわずかな人しか居ない場合は、建物排気中の二酸化炭素濃度が相当に低いと推定される。そのため、建物2の中に居る人の人数が所定人数以下の場合、または、建物2の中に人が居ない場合は、建物排気の処理装置3への流入を停止する、すなわち、建物排気の流入量を0にするように、流量調整機構6が制御される。したがって、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報に基づいて、流量調整機構6が制御され、建物排気の流入量が調整される。
【0072】
このステップS6で、流量調整機構6が制御されて、建物排気の流入量が調整される(流入量が増大または減少させられる、もしくは、流入量が0にされる)と、その後、この図4のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。
【0073】
一方、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気の貯蔵量が所定値以上になったこと、すなわち、貯蔵容器4の空き容量に余裕がなくなったことにより、前述のステップS1で否定的に判断された場合には、ステップS7へ進む。
【0074】
ステップS7では、貯蔵容器4の処理空気を収集する回収車両Veの運行計画が策定または更新される。具体的には、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気の貯蔵量が所定値以上の場合に、その処理空気の貯蔵量に関する情報を反映させて、回収車両Veの運行計画が策定される。または、処理空気の貯蔵量に関する情報を反映させて、回収車両Veの運行計画が更新される。例えば、回収車両Veの運行計画を策定するコントロールユニット7の運行計画作成部に、もしくは、回収車両Veの運行計画を策定する外部のサーバ(図示せず)の運行計画作成部に、処理空気の貯蔵量に関する情報として、貯蔵容器4に貯蔵された処理空気の貯蔵量が所定値以上となった情報が送信される。そして、運行計画作成部では、その処理空気の貯蔵量に関する情報を反映して、回収車両の運行計画が策定される。または、回収車両の運行計画が更新される。例えば、処理空気の貯蔵量が所定値以上になった貯蔵容器4を優先して収集するように、回収車両Veの運行計画が策定または更新される。したがって、空き容量に余裕がない貯蔵容器4の処理空気が、速やかに、回収車両Veで収集される。そのため、建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、回収することができる。
【0075】
このステップS7で、回収車両Veの運行計画が策定または更新されると、その後、この図4のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。
【0076】
以上のように、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、二酸化炭素を含む各建物2の建物排気が、処理装置3によって圧縮または液化等の所定の処理を施した処理空気として、一旦、貯蔵容器4に貯蔵される。そのため、各建物2の建物排気を、単位体積当たりの二酸化炭素の量または濃度を高めた状態で、効率よく、貯蔵容器4に貯蔵することができる。
【0077】
また、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、各建物2と処理装置3との間に流量調整機構6が設けられ、各建物2から処理装置3に流入させる建物排気の流入量がそれぞれ調整される。そのため、各建物2から排出される建物排気の状態、特に、建物排気中の二酸化炭素濃度に応じて、処理装置3に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0078】
また、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、建物2から処理装置3に流入させる建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報(例えば、建物2に出入りする人の行動データから推定される建物排気中の二酸化炭素濃度の推定値または予測値、あるいは、COセンサ8で実際に検出される建物排気中の二酸化炭素濃度の検出値)に基づいて、流量調整機構6が制御され、処理装置3に流入させる建物排気の流入量が調整される。そのため、建物排気中の二酸化炭素濃度に応じて、建物2から処理装置3に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0079】
したがって、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1によれば、各建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度を考慮して、単位体積当たりの二酸化炭素の量または濃度が高く、効率がよい状態で、処理装置3を稼働させることができる。また、処理装置3で処理された建物排気(処理空気)を、効率よく、貯蔵容器4に貯蔵することができる。そのため、各建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、適切に回収することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 二酸化炭素回収システム
2 建物
3 処理装置(圧縮装置、液化装置、二酸化炭素濃縮装置)
4 貯蔵容器(貯蔵タンク)
5 二酸化炭素回収装置(CO回収装置)
6 流量調整機構 (バルブ機構、送風機器)
7 コントロールユニット
8 COセンサ
9 検出機器
10 (建物と処理装置との間の)流路
11 スマートシティ
21 (コントロールユニットの)制御情報取得部
22 (コントロールユニットの)貯蔵タンク監視部
23 (コントロールユニットの)流入量算出部
24 (コントロールユニットの)流入量制御部
Ve 回収車両
図1
図2
図3
図4