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<図1>
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  • 特許-車両 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20241203BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B60K1/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021183908
(22)【出願日】2021-11-11
(65)【公開番号】P2023071255
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 敏之
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-086901(JP,A)
【文献】特開2014-226972(JP,A)
【文献】特開2020-075657(JP,A)
【文献】特開2017-081503(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0282818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータを有する車両であって、
フロントコンパートメントを備えたボデーと、
前記フロントコンパートメントの内部に配置されており第1方向に延びているブラケットと、
前記ブラケット上に固定されている高電圧部品と、
前記高電圧部品の近傍に配置されており、前記第1方向からみたときに少なくとも一部が前記高電圧部品と重複している車載部品と、
を備え、
前記ブラケットは、前記第1方向における中間に配置されている脆弱部を備えており、
前記ブラケットは、前記脆弱部よりも前記車載部品に近い側の区間である第1区間と、前記脆弱部よりも前記車載部品から遠い側の区間である第2区間とを備えており、前記第2区間で前記高電圧部品は前記ブラケットに固定されており、
前記ブラケットは、前記高電圧部品が前記車載部品に近づく方向の外力が前記ブラケットに印加された場合に、前記脆弱部が上方へ移動するように少なくとも前記脆弱部で折れ曲がる構造を有している、車両。
【請求項2】
前記ブラケットの前記第1方向に垂直な断面の断面積は、前記脆弱部において最小である、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ブラケットの前記第1方向に垂直な第2方向の幅は、前記脆弱部において最小である、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記ブラケットは、前記第1区間および前記第2区間の少なくとも一部にリブ加工部を備えている、請求項1~3の何れか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記第1区間の上面と前記第2区間の上面とは、前記脆弱部が上側に突出するような角度を有するように接続している、請求項1~4の何れか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記第1区間の前記第1方向における長さが、前記高電圧部品の下面と前記車載部品の上面との高低差よりも大きい、請求項1~5の何れか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記ブラケットは、
前記第1区間の前記第1方向における端部である第1端部と、
前記第2区間の前記第1方向における端部である第2端部と、
を備えており、
前記第2端部はアッパーサイドメンバに固定されており、
前記第1端部は前記車載部品に対向する位置に配置されている、請求項1~6の何れか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記第1方向は、前記車両の車幅方向である、請求項1~7の何れか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両に関する。特に、衝突時に高圧部品の損傷を防止することを可能にする構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両のフロントコンパートメント内において、リレーボックスの近傍にモータを配置する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-100364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高電圧部品の近傍に車載部品が配置されている構造において、衝突物が衝突した場合には、高圧部品が車載部品と衝突物との間に挟まれてしまう場合がある。高圧部品が損傷し、感電などのおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車両は、走行用モータを有する車両である。車両は、フロントコンパートメントを備えたボデーを備える。車両は、フロントコンパートメントの内部に配置されており第1方向に延びているブラケットを備える。車両は、ブラケット上に固定されている高電圧部品を備える。車両は、高電圧部品の近傍に配置されており、第1方向からみたときに少なくとも一部が高電圧部品と重複している車載部品を備える。ブラケットは、第1方向における中間に配置されている脆弱部を備えている。ブラケットは、脆弱部よりも車載部品に近い側の区間である第1区間と、脆弱部よりも車載部品から遠い側の区間である第2区間とを備えており、第2区間で高電圧部品はブラケットに固定されている。ブラケットは、高電圧部品が車載部品に近づく方向の外力がブラケットに印加された場合に、脆弱部が上方へ移動するように少なくとも脆弱部で折れ曲がる構造を有している。
【0006】
衝突などによって、高電圧部品が車載部品に近づく方向の外力がブラケットに印加された場合に、脆弱部に応力集中させることができる。脆弱部が上方へ移動するように脆弱部を折れ曲がらせることができる。高電圧部品は車載部品から遠い側の第2区間でブラケットに固定されているため、高電圧部品の車載部品に近い側を上方へ移動させることができる。その結果、高圧部品が車載部品と衝突物との間に挟まれることを防止することが可能となる。
【0007】
なお、中間に配置されている脆弱部とは、中点に配置されている脆弱部に限られない。ブラケットの両端の間の何れかの位置に配置されている脆弱部を含む概念である。
【0008】
ブラケットの第1方向に垂直な断面の断面積は、脆弱部において最小であってもよい。脆弱部の曲げ強度を、第1区間および第2区間よりも小さくすることができる。脆弱部に応力集中させることが可能となる。
【0009】
ブラケットの第1方向に垂直な第2方向の幅は、脆弱部において最小であってもよい。脆弱部の曲げ強度を、第1区間および第2区間よりも小さくすることができる。脆弱部に応力集中させることが可能となる。
【0010】
ブラケットは、第1区間および第2区間の少なくとも一部にリブ加工部を備えていてもよい。脆弱部の曲げ強度を、第1区間および第2区間よりも小さくすることができる。脆弱部に応力集中させることが可能となる。
【0011】
第1区間の上面と第2区間の上面とは、脆弱部が上側に突出するような角度を有するように接続していてもよい。ブラケットの長手方向に伝達される圧縮力の向きを、脆弱部において下方側に変化させることができる。その結果、脆弱部が上方へ移動するような折れ曲げ力を発生させることが可能となる。
【0012】
第1区間の第1方向における長さが、高電圧部品の下面と車載部品の上面との高低差よりも大きくてもよい。第1区間の車載部品側の端部近傍を回転中心として、脆弱部が回転しながら上方へ移動するように折れ曲がる場合がある。この場合、高電圧部品の下面の上昇量は、第1区間の第1方向の長さを長くするほど大きくなる。そして第1区間の第1方向の長さが、高電圧部品の下面と車載部品の上面との高低差よりも大きい構成とされているため、高電圧部品の車載部品側の下端部が車載部品の上面よりも高い位置まで押し上げられる構成とすることができる。高圧部品が車載部品と衝突物との間に挟まれることを防止することが可能となる。
【0013】
ブラケットは、第1区間の第1方向における端部である第1端部と、第2区間の第1方向における端部である第2端部と、を備えていてもよい。第2端部はアッパーサイドメンバに固定されていてもよい。第1端部は車載部品に対向する位置に配置されていてもよい。高電圧部品が車載部品に近づく方向の外力がブラケットに印加された場合に、第1端部を車載部品に接触させることで、折り曲げ力を発生させることができる。
【0014】
第1方向は、車両の車幅方向であってもよい。
【0015】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】車両の前部の概略構成を説明する平面図である。
図2】実施例1における電力制御装置30近傍の上面拡大図である。
図3図2のIII―III線における断面から車両後方側を見た図である(衝突前)。
図4図2のIV―IV線における断面から車幅方向左側を見た図である。
図5図2のIII―III線における断面から車両後方側を見た図である(衝突後)。
図6】実施例2における電力制御装置30近傍の上面拡大図である。
図7図6のVII―VII線における断面から車両後方側を見た図である(衝突前)。
図8図6のVII―VII線における断面から車両後方側を見た図である(衝突後)。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
<車両の前部の概略構成>
図1に、実施例1の車両の前部の概略構成を説明する平面図を示す。図1はボデー1のフロントコンパートメント2を模式的に示した平面図である。なお、図1を含む各図において、矢印FRは車両前方向を示し、矢印RHは車両右方向を示し、矢印UPは車両上方向を示す。以後の図でも、座標系の意味は同じである。
【0018】
フロントコンパートメント2は、ダッシュパネル3よりも車両前方側の空間である。
フロントコンパートメント2の内部には、一対のフロントサイドメンバ4が、車両前後方向に延びている。さらに、一対のフロントサイドメンバ4の前端と一対のフロントピラー5を接続するように、一対のアッパーサイドメンバ6が設けられている。アッパーサイドメンバ6は、閉断面構造の長尺部材である。フロントサイドメンバ4とアッパーサイドメンバ6との間には、サスペンションタワー7が位置している。
【0019】
ダッシュパネル3から車両右側のサスペンションタワー7まで、ブレース9が配置されている。ブレース9は、閉断面構造の長尺部材である。車両右側のアッパーサイドメンバ6からブレース9までは、一対のブラケット10が接続されている。一対のブラケット10は、互いに略平行に、車幅方向へ延びている。一対のブラケット10の上方には、電力制御装置30が固定されている。電力制御装置30は、不図示のモータに供給される電力を制御する装置であり、高電圧を取り扱う部品である。具体的には、電力制御装置30は、高電圧バッテリ(不図示)の直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換する。また、モータが発電した交流の回生電力は、電力制御装置30によって直流電力に変換されて高電圧バッテリへ供給される。電力制御装置30の車幅方向左側であって、電力制御装置30の近傍には、エンジン40が配置されている。なお、その他の部品については記載および説明を省略する。
【0020】
<電力制御装置30の固定構造>
図2図4を用いて、電力制御装置30の固定構造について詳細に説明する。図2は、電力制御装置30近傍の上面拡大図である。図3は、図2のIII―III線における断面から車両後方側を見た図である。図4は、図2のIV―IV線における断面から車幅方向左側を見た図である。
【0021】
一対のブラケット10の構造について説明する。一対のブラケット10は、電力制御装置30に対して対称の形状を有している。従って以下では、車両前方側に配置されているブラケット10について説明し、車両後方側に配置されているブラケット10の説明は省略する。
【0022】
図2の上面図に示すように、ブラケット10は、一定幅を有して車幅方向へ延びる形状を有する。ブラケット10の車幅方向左側の第1端部10e1は、ブレース9に固定されている。ブラケット10の車幅方向右側の第2端部10e2は、アッパーサイドメンバ6に固定されている。固定方法は特に限定されず、例えば溶接によって固定されていてもよい。
【0023】
図3の側面図に示すように、ブラケット10は、車幅方向における中間に脆弱部FPを備えている。ブラケット10は、脆弱部FPよりもエンジン40に近い側の区間である第1区間SE1と、脆弱部FPよりもエンジン40から遠い側の区間である第2区間SE2と、を備えている。ここで、電力制御装置30の下面30bとエンジン40の上面40uとの高低差をDHと定義する。第1区間SE1の車幅方向における長さは、高低差DHよりも大きい。
【0024】
第1区間SE1および第2区間SE2の各々において、ブラケット10の側面には、リブ11および12が車幅方向へ延びるように形成されている。リブ11および12は壁形状の突起であり、ブラケット10の強度を高めるための部位である。脆弱部FPの近傍には、リブ11および12が形成されていない。
【0025】
ブラケット10の車幅方向に垂直な車両上下方向(図3の上下方向)における上下幅を説明する。第2区間SE2における上下幅は、第2端部10e2において最大であり、第2端部10e2から脆弱部FPに至るまで連続的に減少している。第1区間SE1における上下幅は、第1端部10e1において最大であり、第1端部10e1から脆弱部FPに至るまで連続的に減少している。そして上下幅は、脆弱部FPにおいて最小となっている。すなわちブラケット10の側面視において、脆弱部FPが切り欠き形状とされている。
【0026】
図4に示すように、ブラケット10の車幅方向に垂直な断面形状は、上面および両側面を備えたオープンボックス形状である。そして上述したように、ブラケット10の上下幅は、脆弱部FPにおいて最小となっている。従って、車幅方向に垂直な断面積は、脆弱部FPにおいて最小である。
【0027】
以上説明したように、脆弱部FPは、リブ11および12が形成されておらず、切り欠き形状とされており、断面積が最小とされている。これにより、脆弱部FPの折り曲げ強度を他の部分に比して低下させることができる。電力制御装置30がエンジン40に近づく方向の外力F1が衝突などによって入力された場合において、脆弱部FPに応力集中させることが可能となる。脆弱部FPで折り曲げが発生するとともに、脆弱部FP以外の部分で折り曲げが発生しない構造を実現することができる。
【0028】
図3に示すように、第2区間SE2の上面10u2は、第2端部10e2から脆弱部FPまで略水平に延びている。第1区間SE1の上面10u1は、脆弱部FPから第1端部10e1に向かって、角度A1を有する下り坂となるように延びている。換言すると、脆弱部FPが上側に突出するような角度A1を有して、上面10u1と上面10u2とが接続している。これにより、ブラケット10に入力された外力F1が圧縮力としてブラケット10の長手方向に伝達される場合に、圧縮力の向きを脆弱部FPにおいて下方側に変化させることができる。その結果、脆弱部FPが上方へ移動するような折れ曲げ力を発生させることが可能となる。
【0029】
図2および図3に示すように、上面10u2には、第1フランジ13および突起部14が形成されている。突起部14は電力制御装置30の位置決めを行うための部材である。上面10u2には電力制御装置30の下面が接触している。第1フランジ13の上面には、電力制御装置30の第2フランジ31が接触している。第1フランジ13と第2フランジ31とは、締結部材50(例:ボルト)によって互いに固定されている。これにより電力制御装置30は、第2区間SE2でブラケット10に固定されている。
【0030】
図4では、エンジン40の存在する領域を点線で示している。電力制御装置30を車幅方向右側からみたときに、エンジン40の少なくとも一部が電力制御装置30と重複している。すなわち、衝突物が車両の右側面に衝突して電力制御装置30が車幅方向右側に移動する場合に、後述する跳ね上げ動作が行われない場合には、電力制御装置30がエンジン40と衝突物との間に挟まれる可能性が高いことが分かる。
【0031】
<衝突時の動作>
図5に、ポール60が車両の右側面に衝突した場合における、衝突後の状態を示す。図5は、図3と同一箇所を示す図である。前述したようにブラケット10は、脆弱部FPにおいて折り曲げ強度が最も小さくされている。また、脆弱部FPが上方へ移動するような折れ曲げ力を発生させる構造を備えている。従って、ポール60の衝突により外力F1が入力された場合に、脆弱部FPが上方へ移動するように脆弱部FPでブラケット10が折れ曲がる。電力制御装置30は、エンジン40から遠い側の第2区間SE2でブラケット10に固定されている。よって、電力制御装置30のエンジン40に近い側の下端部30e1を、上方へ移動させることができる。
【0032】
また、第1区間SE1の第1端部10e1の近傍を回転中心として、脆弱部FPが回転しながら上方へ移動するように折れ曲がらせることができる(点線の矢印Y1参照)。この場合、電力制御装置30の下面30bの上昇量は、第1区間SE1の長さを長くするほど大きくなる。そして前述のように、第1区間SE1の長さが、高低差DHよりも大きい構成とされているため、電力制御装置30の下端部30e1がエンジン40の上面40uよりも高さH1だけ高い位置まで跳ね上げられる構成とすることができる。電力制御装置30がエンジン40とポール60との間に挟まれることを防止することが可能となる。
【0033】
<効果>
ポールなどの衝突物が車両側面に衝突した場合に、電力制御装置30がエンジン40などの車載部品と衝突物との間に挟まれると、電力制御装置30が損傷してしまう場合がある。この場合、高電圧部が露出して感電のおそれや短絡のおそれが発生してしまう。実施例1の技術では、上述のように電力制御装置30を跳ね上げることで、このような事態の発生を防止することが可能である。
【0034】
電力制御装置30とエンジン40などの車載部品との距離を十分に確保することができない場合においても、衝突時における電力制御装置30の損傷を防止することができる。フロントコンパートメント2内における、電力制御装置30の配置レイアウトの自由度を高めることが可能となる。
【0035】
下端部30e1を上昇させる高さを、第1端部10e1と第2端部10e2との間における脆弱部FPの位置に応じて調整することができる。第1端部10e1と第2端部10e2との中点に脆弱部FP形成する場合に、下端部30e1を最も高く上昇させることが可能である。
【実施例2】
【0036】
<案内機構の構造>
実施例2は、実施例1のブラケット10に代えて、衝突発生時に電力制御装置30を上方へ移動させる案内機構を備える例である。実施例1と同様の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。
【0037】
図6に、電力制御装置30近傍の上面拡大図を示す。図7に、図6のVII―VII線における断面から車両後方側を見た図を示す。第3フランジ113の下端は、フロントコンパートメント2内の何れかの部位に固定されている。第3フランジ113の上端には、電力制御装置30の第2フランジ31が締結部材50で固定されている。
【0038】
一対のガイド部101が、アッパーサイドメンバ6に固定されている。一対のガイド部101は、電力制御装置30の車幅方向右側に位置している。ガイド部101の車両前後方向に垂直な断面は、略三角形状を有している。ガイド部101のガイド面101gは、電力制御装置30から遠ざかるに従って高くなるような傾斜を有している。ガイド部101の下面101bとガイド面101gとの角度A2は、適宜に定めることができる。本実施例では45度とした。ガイド面101gの下端部101eは、電力制御装置30の下端部30e2よりも下方に位置している。
【0039】
ブレース109は、三角形の閉断面を有する長尺部材である。ブレース109は、電力制御装置30の車幅方向左側に位置している。ブレース109のガイド面109gは、電力制御装置30から遠ざかるに従って高くなるような傾斜を有している。ブレース109の下面109bとガイド面109gとの角度A3は、適宜に定めることができる。本実施例では45度とした。ガイド面109gの下端部109eは、電力制御装置30の下端部30e1よりも下方に位置している。
【0040】
<衝突時の動作>
図8に、ポール60が車両の右側面に衝突した場合における、衝突後の状態を示す。図8は、図7と同一箇所を示す図である。衝突によりガイド部101が車幅方向左側へ移動すると、下端部30e2がガイド面101gに接触するとともに、下端部30e1がガイド面109gに接触する。さらにガイド部101が車幅方向左側へ移動すると、ガイド面101gとガイド面109gとによって電力制御装置30を圧縮する力が発生する。しかしガイド面101gおよび109gは、角度A2およびA3を有している。よって圧縮力の一部を、垂直上方へ向かう分力F2に変換することができる。この分力F2により、第3フランジ113を破断させ、電力制御装置30の固定を解除することができる。また分力F2により、下端部30e1をガイド面109gに沿って滑り上らせるともに、下端部30e2をガイド面101gに沿って滑り上がらせることができる。その結果、図8に示すように、電力制御装置30を上方へ移動させることができる。これにより、電力制御装置30がエンジン40とポール60との間に挟まれることを防止することが可能となる。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0042】
<変形例>
実施例1では、ブラケット10が以下の3つの特徴を備える場合を説明した。特徴1:脆弱部FPの近傍にはリブ11および12が形成されていない。特徴2:脆弱部FPが切り欠き形状である。特徴3:脆弱部FPにおいて断面積が最小である。しかしブラケット10は、これらの特徴の少なくとも1つを備えていれば、実施例1の効果を発揮することが可能である。
【0043】
実施例1では、一対のブラケット10を備える形態を説明したが、この形態に限られない。板状の1つのブラケットを備えていてもよい。または3つ以上のブラケットを備えていてもよい。
【0044】
リブ11および12の形状は、壁形状の突起に限られず、様々であってよい。例えば、プレス加工によって形成される溝であってもよい。
【0045】
実施例1では、ブラケット10の第1端部10e1がブレース9に固定されている形態を説明したが、この形態に限られない。第1端部10e1が、車載部品に対向する位置に固定される形態であればよい。例えば、エプロン部などから固定部材が延びており、その固定部材に第1端部10e1が固定されていてもよい。
【0046】
電力制御装置30が挟まれることを防止する対象の車載部品は、エンジン40に限られず、様々な部品であってよい。例えば、ターボ配管などの排気系や、モータなどであってもよい。
【0047】
本明細書では、車両側面からの衝突について説明したが、この形態に限られない。ブラケットの長手方向を変更することで、様々な方向からの衝突に対応することができる。例えばブラケット10の長手方向を車両前後方向にすれば、車両正面からの衝突に対応可能である。
【0048】
実施例2において、一対のガイド部101を備える形態を説明したが、この形態に限られない。1つのガイド部101を備えていてもよい。または3つ以上のガイド部101を備えていてもよい。またガイド部101を備えていなくてもよい。この場合、衝突発生時には、下端部30e1がガイド面109gに沿って滑り上がることで、電力制御装置30をエンジン40に乗り上げさせることができる。
【0049】
電力制御装置30は高電圧部品の一例である。エンジン40は車載部品の一例である。
【符号の説明】
【0050】
1:ボデー 2:フロントコンパートメント 6:アッパーサイドメンバ 9:ブレース 10:ブラケット 10e1:第1端部 10e2:第2端部 10u1、10u2:上面 30:電力制御装置 40:エンジン DH:高低差 FP:脆弱部 SE1:第1区間 SE2:第2区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8