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▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<図1>
  • 特許-サーバ、システム、及び情報処理方法 図1
  • 特許-サーバ、システム、及び情報処理方法 図2
  • 特許-サーバ、システム、及び情報処理方法 図3
  • 特許-サーバ、システム、及び情報処理方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】サーバ、システム、及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20240101AFI20241203BHJP
   G06Q 10/047 20230101ALI20241203BHJP
【FI】
G06Q50/22
G06Q10/047
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021184390
(22)【出願日】2021-11-11
(65)【公開番号】P2023071543
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【弁理士】
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛之
(72)【発明者】
【氏名】金光 善徳
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕奈
(72)【発明者】
【氏名】辰本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】宇野 慶一
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-022332(JP,A)
【文献】特開2008-000417(JP,A)
【文献】特開2021-086246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ健康診断の複数の診断項目の何れか一つ以上を実行可能な複数の車両の巡回スケジュールを決定するサーバであって、
診断対象のユーザの居所及び診断項目を含むユーザの情報を取得する通信部と、
複数の前記ユーザに対応して、それぞれの前記ユーザの前記診断項目に対応する車両が前記ユーザの前記居所を巡回する巡回スケジュールを決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、地図情報に基づいて、前記ユーザの前記居所又は該居所に隣接する道路上に駐車可能なスペースがない場合、駐車可能な場所に移動するのにかかる時間を予測して、前記巡回スケジュールを決定するサーバ。
【請求項2】
前記制御部は、それぞれの前記ユーザの前記居所の位置関係に基づいて、前記巡回スケジュールを決定する、請求項1に記載のサーバ。
【請求項3】
前記診断項目が、複数の前記ユーザの間で互いに異なる場合、前記制御部は、前記診断項目が異なるユーザの前記居所を循環する前記車両の少なくとも一部が、異なる車両となるように前記巡回スケジュールを決定する、請求項1又は2に記載のサーバ。
【請求項4】
前記通信部は、前記ユーザの在宅時間帯の情報を取得し、前記制御部は、取得した前記在宅時間帯の情報に基づいて、前記巡回スケジュールを決定する、請求項1から3の何れか一項に記載のサーバ。
【請求項5】
前記通信部は、前記ユーザの体調を示す体調情報を取得し、前記制御部は、取得した前記体調情報に基づいて、前記巡回スケジュールを決定し、前記体調情報は時間帯及び気象条件の少なくとも何れかに基づく前記ユーザの体調の傾向の情報を含む、請求項1から4の何れか一項に記載のサーバ。
【請求項6】
前記通信部は、前記ユーザが前記居所に派遣された前記車両に移動するまでにかかる移動時間を取得し、前記制御部は、前記移動時間を考慮して、前記巡回スケジュールを決定し、前記移動時間は、それぞれの前記ユーザごとに異なる、請求項1から5の何れか一項に記載のサーバ。
【請求項7】
前記制御部は、前記車両が前記ユーザを前記居所で乗車させ、前記居所と異なる場所で診断を行い、前記居所で前記ユーザを降車させるように、前記巡回スケジュールを決定することができる、請求項1から6の何れか一項に記載のサーバ。
【請求項8】
前記複数の車両は、無人により診断を行うことが可能な車両を含む、請求項1から7の何れか一項に記載のサーバ。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数の車両の利用効率が最も高くなるように、前記巡回スケジュールを決定する、請求項1から8の何れか一項に記載のサーバ。
【請求項10】
前記制御部は、前記車両の実行する診断に係る時間を考慮して、前記巡回スケジュールを決定する、請求項1から9の何れか一項に記載のサーバ。
【請求項11】
それぞれ健康診断の複数の診断項目の何れか一つ以上を実行可能な複数の車両と、
前記複数の車両の巡回スケジュールを決定するサーバであって、診断対象のユーザの居所及び診断項目を含むユーザの情報を取得する通信部、及び、複数の前記ユーザに対応して、それぞれの前記ユーザの前記診断項目に対応する車両が前記ユーザの前記居所を巡回する巡回スケジュールを決定する制御部であって、地図情報に基づいて、前記ユーザの前記居所又は該居所に隣接する道路上に駐車可能なスペースがない場合、駐車可能な場所に移動するのにかかる時間を予測して、前記巡回スケジュールを決定する該制御部を含むサーバと
を備えるシステム。
【請求項12】
前記制御部は、それぞれの前記ユーザの前記居所の位置関係に基づいて、前記巡回スケジュールを決定する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記診断項目が、複数の前記ユーザの間で互いに異なる場合、前記制御部は、前記診断項目が異なるユーザの前記居所を循環する前記車両の少なくとも一部が、異なる車両となるように前記巡回スケジュールを決定する、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記通信部は、前記ユーザの在宅時間帯の情報を取得し、前記制御部は、取得した前記在宅時間帯の情報に基づいて、前記巡回スケジュールを決定する、請求項11から13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記通信部は、前記ユーザの体調を示す体調情報を取得し、前記制御部は、取得した前記体調情報に基づいて、前記巡回スケジュールを決定し、前記体調情報は時間帯及び気象条件に基づく前記ユーザの体調の傾向の情報を含む、請求項11から14の何れか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記通信部は、前記ユーザが前記居所に派遣された前記車両に移動するまでにかかる移動時間を取得し、前記制御部は、前記移動時間を考慮して、前記巡回スケジュールを決定し、前記移動時間は、それぞれの前記ユーザごとに異なる、請求項11から15の何れか一項に記載のシステム。
【請求項17】
それぞれ健康診断の複数の診断項目の何れか一つ以上を実行可能な複数の車両の巡回スケジュールを決定する情報処理方法であって、
診断対象のユーザの居所及び診断項目を含むユーザの情報を取得するステップと、
複数の前記ユーザに対応して、それぞれの前記ユーザの前記診断項目に対応する車両が前記ユーザの前記居所を巡回する巡回スケジュールを決定するステップであって、地図情報に基づいて、前記ユーザの前記居所又は該居所に隣接する道路上に駐車可能なスペースがない場合、駐車可能な場所に移動するのにかかる時間を予測して、前記巡回スケジュールを決定するステップと
を含む処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項18】
それぞれの前記ユーザの前記居所の位置関係に基づいて、前記巡回スケジュールを決定する、請求項17に記載の情報処理方法。
【請求項19】
前記診断項目が、複数の前記ユーザの間で互いに異なる場合、前記診断項目が異なるユーザの前記居所を循環する前記車両の少なくとも一部が、異なる車両となるように前記巡回スケジュールを決定する、請求項17又は18に記載の情報処理方法。
【請求項20】
前記ユーザの在宅時間帯の情報を取得し、取得した前記在宅時間帯の情報に基づいて、前記巡回スケジュールを決定する、請求項17から19の何れか一項に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーバ、システム、及び情報処理方法に関し、特に、健康診断のサービスを提供する車両がユーザの居所を巡回する巡回スケジュールを決定するサーバ、システム、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「健康診断」は、病気の予防及び早期発見のためには不可欠のものである。通常、すべての企業は従業員に対して毎年健康診断を実施しており、企業に勤める従業員は、健康診断を受診し易い環境にいる。これに対し、企業に勤めていない人又は被扶養者として生活している人は、いわゆる「家族健診」又は自治体が実施する健康診断を受診することとなる。このような健康診断は、通常、会社又は自治体が指定する病院又は施設へ出向いて受けるケースが多い。
【0003】
しかしながら、健康診断のために、遠くの病院又は施設に出向くのは不便であり、企業に勤めていない人は、長期間、健康診断を受診しないままになることが多い。このため、健康診断を受けるユーザが在住する地域に、健康診断に使用する設備を搭載した車両を派遣する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、健康診断を受信するユーザは、健康診断用の設備を搭載した車両が駐車しているユーザの近隣の駐車場所で、健康診断を受信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-22332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、健康診断用の設備を搭載した車両が同じ地域に駐車していたとしても、介護を要する人、又は、健康状態がすぐれない人等の中には、近距離の移動が困難な人が含まれる。また、健康診断を受信するために、在住する地域内ではあっても健康診断用の車両の駐車位置まで移動することを、面倒に感じる人もいる。その結果、健康診断が受信されないままになることがある。
【0006】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、受診者に対して利便性を向上させた健康診断のサービスを提供することができる、サーバ、システム、及び情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係るサーバは、それぞれ健康診断の複数の診断項目の何れか一つ以上を実行可能な複数の車両の巡回スケジュールを決定するサーバであって、診断対象のユーザの居所及び診断項目を含むユーザの情報を取得する通信部と、複数の前記ユーザに対応して、それぞれの前記ユーザの前記診断項目に対応する車両が前記ユーザの前記居所を巡回する巡回スケジュールを決定する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本開示の一実施形態に係るシステムは、それぞれ健康診断の複数の診断項目の何れか一つ以上を実行可能な複数の車両と、前記複数の車両の巡回スケジュールを決定するサーバであって、診断対象のユーザの居所及び診断項目を含むユーザの情報を取得する通信部、及び、複数の前記ユーザに対応して、それぞれの前記ユーザの前記診断項目に対応する車両が前記ユーザの前記居所を巡回する巡回スケジュールを決定する制御部を含むサーバと、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、それぞれ健康診断の複数の診断項目の何れか一つ以上を実行可能な複数の車両の巡回スケジュールを決定する情報処理方法であって、診断対象のユーザの居所及び診断項目を含むユーザの情報を取得するステップと、複数の前記ユーザに対応して、それぞれの前記ユーザの前記診断項目に対応する車両が前記ユーザの前記居所を巡回する巡回スケジュールを決定するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示におけるサーバ、システム、及び情報処理方法によれば、受診者に対して利便性を向上させた健康診断のサービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るシステムの構成例を示す図である。
図2】一実施形態に係るサーバの構成例を示す図である。
図3】サーバの情報処理方法の例を示すフローチャートである。
図4図3のユーザの居所に車両を巡回させるスケジュールを決定する方法の例を示すフローチャートである。
図5】一実施形態に係る車両の構成例を示す図である。
図6】端末装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】一実施形態に係るシステムの全体の動作例を示すシーケンス図である。
図8】サーバにより決定される車両の巡回経路の一例を示す図である。
図9図8に示した車両が各ユーザの居所を巡回して診断を行うタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を示している。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係る、健康診断のサービスを提供するシステム1の構成例を示す図である。本実施形態に係るシステム1は、サーバ10と、車両20と、端末装置30とを備える。これらは、情報通信が可能な任意のネットワーク40で接続される。さらに、システム1は、必要なデータベース(DB)15がネットワーク40に接続されている。なお、図1では、車両20と端末装置30とがそれぞれ1台記載されているが、これらはネットワーク40に複数台接続されている。また、医師等の医療従事者により操作される1台以上のリモートコンピュータ50がネットワーク40に接続されていてよい。リモートコンピュータ50は、医療機関に配置されてよい。
【0014】
本開示の概要を説明すると、車両20は健康診断の複数の診断項目の何れか一つ以上を実行するための設備が搭載される。健康診断の診断項目は、身長、体重及び腹囲の測定、視力検査、聴力検査、血圧検査、採尿検査、採血検査、胸部レントゲン撮影、胃部レントゲン撮影、超音波検査、心電図検査、及び、問診等を含む。車両20が搭載する設備は、それぞれの車両20が対応する診断項目に応じて診断を行うための検査装置装置、及び、付属設備を含む。検査装置は、例えば、身長計、体重計、視力検査装置、聴力検査装置、血圧計、尿検査装置、血液検査装置、X線画像診断機器、超音波検査装置、及び心電計を含む。付属設備は、例えば検査時に受診者が横たわるベッド及び椅子を含む。さらに、健康診断の診断項目は、CT(Computed Tomography)検査、頭部MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査、マンモグラフィ検査、骨粗鬆症検査等の種々の検査を含んでよい。車両20は、それぞれの診断項目に応じた検査装置を装備してよい。
【0015】
サーバ10は、データベース15及び診断対象のユーザが使用する端末装置30の少なくとも一方から、ユーザの情報を取得する。ここで診断対象のユーザとは、健康診断を受診する対象者であって、健康診断を受けるべき者(受診すべき健康診断を未受診である者)、或いは、自ら健康診断の受診を希望する者等が含まれる。診断対象のユーザを以下にユーザと呼ぶ。ユーザの情報は、ユーザの氏名、生年月日、居所(位置情報)等の個人情報に加えて、健康診断において当該ユーザが受診すべき診断項目、又は、当該ユーザが希望する診断項目を含む。さらに、ユーザの情報は、ユーザの受診希望日時、ユーザの在宅時間帯、及び、ユーザの体調情報を含んでもよい。ユーザの体調情報は、例えば、時間帯及び/又は気候条件によるユーザの体調の傾向を含んでよい。例えば、ユーザによっては、午後になると体調が悪くなる傾向を有することがある。また、例えば、ユーザによっては、気圧が低下すると体調が悪くなる傾向を有することがある。体調情報は、さらに、ユーザが端末装置30から入力したユーザの現在の体調の良否の情報を含んでよい。
【0016】
また、サーバ10は、それぞれのユーザの情報に基づいて、それぞれのユーザの診断項目に対応する車両20を選択する。さらに、サーバ10は、ユーザの情報に基づいてそれぞれの車両20をユーザの居所に巡回させる巡回スケジュールを決定する。巡回スケジュールは、車両20のそれぞれのユーザの居所への到着時刻、滞在時間、及び、車両20の通る経路(巡回経路)の情報を含むことができる。サーバ10の構成と動作は、後に詳述する。
【0017】
データベース15は、健康診断を受診するユーザに関する情報が蓄積されたデータベースである。データベース15は、住民の氏名・住所・健康診断受診履歴等が蓄積された行政機関のデータベースであってもよく、また、本システム1と提携する企業の従業員及びその家族の健康診断受診履歴を蓄積したデータベースであってもよい。データベース15は、さらに、地図情報を記憶する地図データベースを含んでよい。地図情報は、車両20がユーザの居所を巡回する経路を決定するために必要となる道路情報を含む。道路情報は、道路上の地点間の距離情報及び道路の幅の情報を含んでよい。道路情報は、巡回スケジュールを決定するために必要となる道路の制限速度及び混雑度の情報を含んでよい。混雑度の情報は、過去の同じ曜日及び時間帯の混雑度から推定される混雑度を用いることができる。
【0018】
それぞれの車両20は、サーバ10で設定された巡回スケジュールに基づいて、健康診断を受診するユーザの居所を巡回する。後述のとおり、車両20は、自動運転走行又は追従走行を行ってもよい。
【0019】
複数の車両20は、各ユーザの複数の診断項目の診断を分担して実行する。本願において、診断を実行することには、身体の測定を行うこと、検査を行うこと、および、問診を行うことを含む。例えば、複数の車両20に含まれる第1の車両は、身長、体重及び腹囲の測定並びに血圧検査を実行する。例えば、複数の車両20に含まれる第2の車両は、視力検査及び聴力検査を実行する。例えば、複数の車両20に含まれる第3の車両は、採尿検査、及び、採血検査を実行する。例えば、複数の車両20に含まれる第4の車両は胸部レントゲン撮影及び胃部レントゲン撮影を実行する。以下同様に、車両20がそれぞれの車両20の提供可能な診断項目に応じた診断を実行する。
【0020】
健康診断を受けるユーザの数及び診断項目に応じて、それぞれの診断項目に対応した車両20が、複数台ずつ用意されてよい。ユーザは、第1から第4の車両を含む複数の車両20から選択された車両20により、当該ユーザに必要とされる診断項目の診断を受けることができる。利用者の診断項目に応じて、利用者の居所を巡回する車両20の組合せは異なる。それぞれの車両20は、健康診断の診断項目の一部のみを分担することにより、従来の大型の健康診断用車両とは異なり、比較的小型の車両とすることが可能となる。
【0021】
車両20は、サーバ10が決定した巡回スケジュールに基づいて、健康診断を受診するユーザの居所を巡回して診断を行う。ユーザの居所とは、健康診断を受けるユーザが所在する場所である。ユーザの居所は、ユーザの居住している住居及びユーザの滞在する施設を含む。ユーザの居所は、ユーザの居住する行政機関のデータベースに登録されたユーザの住所、または、ユーザが端末装置30から指定したユーザ個人の健康診断受診場所を含む。ユーザの居所は、データベース15又は他のシステムに登録されてよい。車両20は、ユーザの居所の敷地内の駐車場又は隣接する道路に順次派遣される。車両20を比較的小型の車両とすることにより、車両20は比較的狭い道路又は敷地であっても、走行及び駐車をすることが可能になる。
【0022】
いくつかの車両20は、対応する診断項目に応じて、無人による測定及び検査を実行することができてよい。ユーザは、車両20から受ける指示に従って、測定及び検査を受けることができる。また、いくつかの車両20は、ネットワーク40を介して、リモートコンピュータ50に接続するように構成されてよい。ユーザは、リモートコンピュータ50を操作する医師等の医療従事者と対話しながら、検査及び測定を行い、診断を受けることができる。車両20の数に対して、リモートコンピュータ50の数は少なくてよい。車両20は、診断を行うのに必要なときにのみ、他の車両20と接続していない利用可能なリモートコンピュータ50に接続されてよい。したがって、システム1では、車両20ごとに医療関係者を割り当てる必要がないので、医療関係者の時間を効率的に利用することができる。
【0023】
端末装置30は、健康診断を受診するユーザが使用する通信装置であって、例えば、携帯電話、スマートフォン、スマートスピーカ又はPC(Personal Computer)等であるが、これらに限られず、ユーザによって利用される任意の装置であってもよい。
【0024】
端末装置30は、サーバ10に対して、健康診断に関するユーザの情報を送信する。例えば、端末装置30は、アプリケーションを利用して、ユーザの氏名及び住所等の基本的情報に加えて、受診を希望する診断項目、受診希望日時等の情報を送信することができる。また、端末装置30は、サーバ10から情報を受信してもよい。サーバ10から受信する情報は、車両20のユーザの居所への巡回予定情報、車両20が近付いたときのプッシュ通知等を含む。車両20のユーザの居所への巡回予定情報は、車両20の巡回スケジュールに含まれる情報である。車両20のユーザの居所への巡回予定情報は、車両20のユーザの居所への到着予定時刻及び健康診断のための滞在予定時間の情報を含む。
【0025】
ネットワーク40は、サーバ10、車両20、端末装置30、及びリモートコンピュータ50が相互に通信可能な、任意の通信網である。ネットワーク40は、無線又は有線の伝送路であってよく、インターネット等の通信網であってもよい。例えば、本実施形態におけるネットワーク40には、アドホックネットワーク、MAN(Metropolitan Area Network)、セルラーネットワーク、WPAN(Wireless Personal Area Network)、PSTN(Public Switched Telephone Network)、地上波無線ネットワーク(Terrestrial Wireless Network)、光ネットワークもしくは他のネットワーク又はこれらいずれかの組み合わせが含まれる。無線ネットワークの構成要素には、例えば、アクセスポイント(例えば、Wi-Fiアクセスポイント)、フェムトセルなどが含まれる。さらに、無線通信機器は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、セルラー通信技術又はその他の無線技術及び技術標準を用いた無線ネットワークに接続することができる。
【0026】
このシステム1によれば、ユーザの診断項目に対応した複数の車両20が、順次健康診断を受診するユーザの居所を巡回することにより、ユーザは、ユーザの居所から移動することなく利便性良く健康診断を受診することができる。したがって、健康診断の受診率が高まる。なお、上記の実施形態においては、システム1のネットワーク40に、データベース15が接続されているものとして説明したが、データベース15に蓄積された情報を使用しない場合は、データベース15はなくてもよい。
【0027】
次に、サーバ10の構成と動作(情報処理方法)について、詳述する。
【0028】
(サーバの構成)
図2は、一実施形態に係るサーバ10の構成例を示す図である。サーバ10は、サーバ通信部11と、サーバ記憶部12と、サーバ制御部13と、を備える。
【0029】
サーバ通信部(単に、通信部ということがある。)11は、ネットワーク40に接続する通信モジュールを含む。当該通信モジュールは、例えば、4G(4th Generation)及び5G(5th Generation)などの移動体通信規格、有線LAN(Local Area Network)規格又は無線LAN規格などに対応するが、これらに限られず、任意の通信規格に対応してもよい。本実施形態において、サーバ10は、サーバ通信部11を介してネットワーク40に接続される。サーバ通信部11は、データベース15又はユーザの端末装置30からネットワーク40を介して送信されてきたユーザの情報を受信(取得)する。また、サーバ通信部11は、車両20又はユーザの端末装置30へ、ネットワーク40を介して情報(例えば、巡回スケジュール)を送信することもできる。
【0030】
サーバ記憶部(単に、記憶部ということがある。)12は、半導体メモリ又は磁気メモリを含む。サーバ記憶部12は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。サーバ記憶部12は、サーバ10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、サーバ記憶部12は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、管理データベース等を記憶してもよい。サーバ記憶部12に記憶された情報は、例えばサーバ通信部11を介してネットワーク40から取得される情報で更新可能であってもよい。
【0031】
本実施形態において、サーバ記憶部12は、データベース15及びユーザが使用する端末装置30の少なくとも一方から取得したユーザの情報を記憶する。また、サーバ記憶部12は、健康診断の診断項目とそれぞれの車両20との対応関係を記憶する。サーバ記憶部12は、さらに、地図情報をデータベース15から取得して記憶してよい。
【0032】
サーバ制御部(単に、制御部ということがある。)13は、1つ以上のプロセッサを含む。本実施形態において、「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限られない。サーバ制御部13は、サーバ10全体の動作を制御する。例えば、サーバ制御部13は、サーバ記憶部12に記憶されたシステムプログラム、アプリケーションプログラム等に基づいて、サーバ10を制御する。
【0033】
本実施形態において、サーバ制御部13は、サーバ記憶部12に記憶されたユーザの情報に含まれる各ユーザの診断項目、及び、各診断項目とそれぞれの車両20との対応関係を参照し、健康診断のために派遣する車両20を選択する。例えば、サーバ制御部13は、次回の複数の車両20を用いた健康診断の提供を準備する際に、健康診断の対象となる複数のユーザの診断項目から、診断項目に対応した複数の車両20を選択する。サーバ制御部13は、それぞれのユーザに対して、1台以上の車両20により、当該ユーザの診断項目の診断が実行されるように、車両20を選択する。1台の車両20は、一人以上のユーザに対応する診断項目の診断を提供する。
【0034】
サーバ制御部13は、選択された複数の車両20について、効率よく各ユーザの居所を巡回できるように、各ユーザの居所の位置関係に基づいて、巡回スケジュールを決定する。サーバ制御部13は、車両20全体の利用効率が最も高くなるように、又は、車両20全体の利用効率が所定の目標値を超えるように、巡回スケジュールを決定してよい。サーバ制御部13は、各ユーザに対して、複数の車両20が同一の日に巡回するようにスケジュールすることができる。サーバ制御部13は、同一のユーザに対して、診断項目に応じて異なる日に異なる診断を提供するようにスケジュールを決定してもよい。決定された巡回スケジュールまたはその一部の情報は、サーバ通信部11を介して車両20及び端末装置30に送信される。サーバ制御部13は、車両20が提供する診断項目の情報を、端末装置30に巡回スケジュールとともに送信してよい。
【0035】
また、サーバ制御部13は、サーバ通信部11を介して車両20から車両20の運行情報(車両20の位置情報、走行速度等)を受信することができる。サーバ制御部13は、運行情報をサーバ記憶部12に蓄積し、蓄積した情報に基づき、必要に応じて車両20の巡回スケジュールを修正してもよい。サーバ制御部13は、サーバ通信部11を介して、車両20の巡回スケジュール、システムプログラム、アプリケーションプログラム等の更新情報を、車両20に送信してもよい。
【0036】
(サーバの情報処理方法)
サーバ10の情報処理方法の例を、図3に示すフローチャートを用いて説明する。サーバ10は、以下のステップS11~ステップS14を実行して、各診断項目の診断を提供する車両20の巡回スケジュールを決定し、決定した巡回スケジュール又はその一部の情報を車両20及び端末装置30に送信する。
【0037】
ステップS11:サーバ10は、データベース15及びユーザの端末装置30の少なくとも一方から、健康診断の受診対象者であるユーザの情報を取得する。
【0038】
例えば、サーバ10は、ユーザの情報が蓄積されたデータベース15とネットワーク40を介して接続し、データベース15から健康診断を受診すべきユーザ(所定期間にわたり健康診断を受診していない者等)の情報を抽出することができる。また、サーバ10は、ユーザが使用する端末装置30から、健康診断の受診を希望するユーザの情報を受信することができる。ユーザの情報は、ユーザの診断項目(各ユーザが受診する診断項目)と、ユーザの居所の位置情報と、ユーザの受診希望日時の少なくとも1つを含む。サーバ10は、取得したユーザの情報をサーバ記憶部12に記憶する。サーバ10は、特に、端末装置30から情報を送信したユーザを、システム1の健康診断利用者として登録してもよい。
【0039】
ステップS12:サーバ10は、取得したユーザの情報に基づいて、ユーザの診断項目に対応する車両20を選択する。すなわち、サーバ10は、それぞれのユーザの健康診断の診断項目と、それぞれの車両20が対応する診断項目とを参照し、健康診断に使用する車両20を選択する。サーバ10は、ユーザの数及びユーザごとの診断項目を考慮して、車両20の種類と台数とを決定する。
【0040】
ステップS13:次に、サーバ10は、ユーザの居所に車両20を巡回させる巡回スケジュールを決定する。巡回スケジュールを決定する処理は、図4のフローチャートに例示として記載されているステップS21からS26により実行される。
【0041】
ステップS21:サーバ10は、ユーザの情報からユーザの居所及び診断項目を抽出する。
【0042】
ステップS22:サーバ10は、ユーザの情報からユーザの在宅時間帯/体調情報を抽出する。ステップS22は、必須ではない。
【0043】
ステップS23:サーバ10は、ユーザの情報からユーザの車両20への移動時間を抽出する。ステップS23は、必須ではない。
【0044】
ステップ24:サーバ10は、データベース15から健康診断を受けるユーザの居所を含む領域の地図情報を取得する。サーバ10は、予め地図情報をデータベース15から取得して、サーバ記憶部12に記憶してよい。
【0045】
ステップ25:サーバ10は、各診断項目の診断を実行するために必要となる時間の情報を取得する。このような情報は、予めサーバ記憶部12に記憶されてよい。
【0046】
ステップS26:サーバ10は、ステップS21からS25により取得した各情報に基づいて、各車両20がユーザの居所を巡回する巡回スケジュールを算出する。
【0047】
ステップS14:図3に戻り、サーバ10は、ステップS26で算出した巡回スケジュールを車両20及び端末装置30に送信する。サーバ10は、車両20に対しては、当該車両20に関係する部分の巡回スケジュールを送信してよい。サーバ10は、端末装置30に対しては、車両20のユーザの居所への到着時刻を、診断時刻として送信してよい。また、サーバ10は、端末装置30に対して、診断に必要となる時間を送信してよい。さらに、サーバ10は、車両20の対応する診断項目を、端末装置30に送信してよい。端末装置30は、ユーザに対して受信した情報を提示する。これにより、ユーザは、何時、何の検査が予定されているかを認識することができる。
【0048】
(車両の構成)
図5は、一実施形態に係る車両20の構成例を説明する図である。車両20は、車両20を制御する情報処理装置25を付属装置として備えている。車両20、情報処理装置25、及びサーバ10は、例えばインターネット等のネットワーク40で接続されている。
【0049】
車両20は、例えば、自動運転走行又は追従走行が可能な自動車であるが、これに限られず、設備を搭載可能な任意の車両であってもよい。
【0050】
車両20及び情報処理装置25が協働して、車両20の車両制御が実行される。概要として、情報処理装置25は、自動運転制御ソフトウェアによって制御情報を自動的に生成し、車両20へ送信する。車両20は、受信した制御情報に基づき車両制御を行う。車両制御は、例えば自動運転であるが、これに限られない。制御情報の仕様を定めたAPI(Application Programming Interface)の少なくとも一部は、サービス事業者に開示される。サービス事業者は、開示されたAPIを用いて、情報処理装置25の自動運転制御ソフトウェアを自由にプログラミング可能である。したがって、サービス事業者は、目的に応じた設備を車両20の車室内空間に搭載し、目的に応じたAPIを用いて自動運転制御ソフトウェアをプログラミングすることによって、任意のモビリティサービスを提供可能である。
【0051】
本実施形態においては、このような車両20に健康診断に使用する設備を搭載し、サーバ10から送信された巡回スケジュールに基づいて、自動運転での走行を行ってもよい。
【0052】
車両20は、通信装置21と、制御装置22と、複数のECU23(Electronic Control Unit)と、位置情報取得装置24とを備える。各装置21~24は、例えばCAN(Controller Area Network)等の車載ネットワーク又は専用線を介して、通信可能に接続される。
【0053】
通信装置21は、例えばDCM(Data Communication Module)等の車載通信機であってもよい。通信装置21は、ネットワーク40に接続するために、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでもよい。
【0054】
制御装置22は、情報処理装置25からの制御情報に基づき、車両制御を行う装置である。車両制御は、例えば、目的地までの自動運転であるが、これらに限られない。自動運転は、例えばSAE(Society of Automotive Engineers)において定義されるレベル1乃至5を含むが、これらに限られず、任意に定義されてもよい。また車両制御は、制御装置22と各ECU23等とが協働することによって実施される。制御装置22は、情報処理装置25、通信装置21、及び各ECU23と通信する通信モジュールと、システムプログラム及びアプリケーションプログラム等を記憶する1つ以上のメモリと、制御装置22全体の動作を制御する1つ以上のプロセッサを含む制御部と、を備える。
【0055】
例えば、制御装置22は、各ECU23等から車両20に係る各種の車両情報(速度、位置、自動運転状態等)を受信する。また制御装置22は、情報処理装置25に車両情報を送信するとともに、通信装置21により車両情報をサーバ10に送信する。また制御装置22は、通信装置21を介してサーバ10から情報処理装置25のシステムプログラム等の更新情報を受信し、情報処理装置25に当該更新情報を送信する。また、制御装置22は、情報処理装置25から制御情報を取得した場合、当該制御情報に基づき車両20に係る車両制御を実行する。
【0056】
複数のECU23は、制御装置22と協働して車両20の動作を制御する。具体的には、複数のECU23は、制御装置22から制御情報に基づく制御指令を受信し、制御指令に従って車両20の動作を制御する。例えば、複数のECU23は、車両20の操作量を、制御指令に示される値となるように制御する。また、複数のECU23は、各制御タイミングにおいて、車両20に搭載された各種センサから車両20の制御量又は操作量の測定値を収集し、制御装置22へ送信する。
【0057】
位置情報取得装置24は、任意の衛星測位システムに対応する1つ以上の受信機を含む。例えば、位置情報取得装置24は、GPS(Global Positioning System)受信機を含んでもよい。位置情報取得装置24は、車両20の位置の測定値を位置情報として取得し、制御装置22へ送信する。
【0058】
情報処理装置25は、車両20の制御装置22に接続する通信モジュールと、システムプログラム及びアプリケーションプログラム等を記憶する1つ以上のメモリと、情報処理装置25の動作又は周囲環境に関する情報を検出する1つ以上のセンサと、情報処理装置25全体の動作を制御する1つ以上のプロセッサを含む制御部と、を備える。情報処理装置25は、例えば車両20のルーフトップ等に搭載される。情報処理装置25が搭載される位置はこれに限られず、車両20の外部、車室内のいずれの任意の場所に搭載されてもよい。
【0059】
情報処理装置25は、制御装置22から車両情報及び更新情報を受信する。また情報処理装置25は、センサ情報、車両情報等に基づき制御情報を生成し、制御装置22に制御情報を送信する。また、メモリに記憶されたアプリケーションプログラムは自動運転制御ソフトウェアを含むことができ、この場合、自動運転制御ソフトウェアにより情報処理装置25が自動運転キットとして機能する。
【0060】
これにより、車両20は、自動運転走行又は追従走行を行うことができる。
【0061】
車両20は、当該車両20の診断項目に応じた検査装置を搭載する。例えば車両20は、身長計、体重計、視力検査装置、聴力検査装置、血圧計、尿検査装置、血液検査装置、X線画像診断機器、超音波検査装置、及び心電計等から選択された1つ以上の検査装置を搭載する。車両20は、診断項目に応じて、ユーザに適切な動作を行わせるための誘導装置を含んでよい。誘導装置は、音声及び画像によりユーザを誘導するスピーカ及びディスプレイを含む。いくつかの診断装置は、ユーザが誘導に従うことにより人手を介さずに無人により診断が完了するように構成されてよい。
【0062】
車両20には、遠隔に位置してリモートコンピュータ50を操作する医療従事者と対話するための、カメラ、マイクロフォン、ディスプレイ、スピーカ等の装置を装備してよい。例えば、検査を受けるユーザは、ネットワーク40を介して遠隔地に位置する医療従事者により、診断装置に対する姿勢及び動作等の指示を受けてよい。また、ユーザは、ネットワーク40を介して遠隔地に位置する医師から問診を受けてよい。
【0063】
車両20には、検査に必要となる医療従事者が乗車することも可能である。例えば、血液検査の採血のために、看護師が車両20に乗車してよい。
【0064】
(端末装置の動作)
端末装置30は、ネットワーク40を介した通信を行う機能、ユーザからの入力を受け付ける機能及び種々の情報を表示する機能などを有していれば如何なる構成でもよい。
【0065】
図6は、端末装置30の動作例を示すフローチャートである。端末装置30は、以下のステップS31からS33を実行する。
【0066】
ステップS31:端末装置30は、ユーザによる健康診断に関する入力を受け付ける。ユーザによる健康診断に関する入力は、例えば、端末装置30にインスールされた、健康診断の申し込みのためのアプリケーションを起動することで可能となる。アプリケーションは、事前にサーバ10からダウンロードされる。端末装置30は、アプリケーションが起動されると、健康診断の申し込み画面の表示要求をサーバ10に送信する。そして、端末装置30は、表示要求の送信に応じてサーバ10から送信されてきた申し込み画面を表示する。この申し込み画面へのユーザの入力により、端末装置30は、ユーザが希望する健康診断に関する入力を受け付けることができる。
【0067】
ステップS32:端末装置30は、ユーザが希望する健康診断に関する入力を受け付けると、入力情報を、ネットワーク40を介してサーバ10に送信する。送信する入力情報には、ユーザの氏名、ユーザの居所を示す住所等の基本的情報に加えて、受診を希望する診断項目(オプション診断項目)、受診希望日時等の情報を含んでもよい。なお、受診希望の診断項目は、個別に入力することも可能であるが、入力画面で「一般の健康診断」を選択すると、標準的な診断項目の一覧が自動的に選択されて送信されるように設定してもよい。また、端末装置30は、例えば、GPS(Global Positioning System)信号に基づき、位置情報を取得することができるから、送信する入力情報には、ユーザの住所に代えて、ユーザの端末装置30の現在の位置情報が含まれてもよい。
【0068】
ステップS33:その後、端末装置30は、健康診断を受ける車両20の巡回スケジュールがサーバ10から通知されると、その巡回スケジュールに基づいて、健康診断の開始時刻、診断に要する時間及び診断項目等を表示するなどしてユーザに通知する。
【0069】
図7は、一実施形態のシステム1の全体の動作の一例を示すシーケンス図である。以下に、システム1で実行される各ステップについて説明する。
【0070】
ステップS101:端末装置30は、ユーザの情報をサーバ10に送信する。このユーザの情報には、例えば、ユーザが健康診断として受診を希望する診断項目、受診希望日時等が含まれてよい。また更に、サーバ10は、データベース15等から、健康診断が必要なユーザの情報を取得してもよい。
【0071】
ステップS102:サーバ10は、複数のユーザの情報(特に、診断項目)に基づいて、健康診断に使用する複数の車両20を選択する。選択される車両20は、ユーザの診断項目に基づいて、異なる診断項目に対応する異なる種類の複数の車両20が含まれる。
【0072】
ステップS103:サーバ10は、各車両20がユーザの居所を巡回する巡回スケジュールを決定する。サーバ10は、ユーザの希望時刻、ユーザの在宅時間帯、及び、ユーザの体調等の種々の条件を考慮する。
【0073】
ステップS104:サーバ10は、決定した巡回スケジュールを、それぞれの車両20に送信する。それぞれの車両20は、少なくとも自車両に関連する部分の巡回スケジュールを受信する。
【0074】
ステップS105:サーバ10は、決定した巡回スケジュールの各ユーザに関連する部分の情報を、ユーザの端末装置30に送信する。サーバ10は、ユーザ個別の診断開始時刻及び所要の診断時間を端末装置30に送信してよい。また、サーバ10は、巡回スケジュールの送信に加えて、車両20がユーザの近所を運行した時に、端末装置30へプッシュ通知をするようにしてもよい。
【0075】
ステップS106:端末装置30は、送信された巡回スケジュール(診断開始時刻及び所要の診断時間)を例えば画面に表示し、ユーザに通知する。
【0076】
ステップS107:予定された時刻になると、車両20は、送信された巡回スケジュールに基づいて運行を開始し、ユーザの居所に向かって移動する。
【0077】
ステップS108:車両20は、走行中に、車両20の位置情報・走行速度等を含む運行情報を、サーバ10に送信する。車両20は、ユーザの居所に到着すると、直接、又は、サーバ10を経由して、端末装置30に到着を知らせる通知を送信してよい。端末装置30は、ユーザに車両20の到着を知らせてよい。
【0078】
ステップS109:ユーザは、車両20に乗車して、車両20が提供する診断項目の診断を受ける。
【0079】
ステップS110:車両20は、診断結果をサーバ10に送信して、蓄積することができる。車両20は、診断結果を記憶して、巡回スケジュールにより予定された検査がすべて終了した後に、診断結果をサーバ10に送信してもよい。
【0080】
ステップS107’~ステップS110’:S110の後、車両20は、一人のユーザの検査が終了すると、次のユーザの居所に向かって移動し、診断を行う動作を繰り返す。ステップS107’~S110’は、それぞれ、ステップS107~S110と同様の動作を示す。車両20は、巡回スケジュールで予定されたユーザの診断が終了するまで、移動と診断とを繰り返す。
【0081】
次に、診断項目の異なる複数の車両20がユーザの居所を巡回して診断を行う一例を、図8及び図9を用いて説明する。
【0082】
それぞれ、第1の地点P1から第5の地点P5までを居所とする、ユーザU1からU5が第1の診断項目の検査を受け、そのうち、ユーザU1とU4とが第2の診断項目の検査を受けると仮定する。ユーザU1からU5は、システム1を用いて健康診断を受ける多数のユーザに含まれる。第1の診断項目は、健康診断において誰もが受ける基本的な診断項目である。第2の診断項目は、ユーザが希望したオプションの診断項目、又は、ユーザの年齢又は病歴等に応じて追加される診断項目である。診断項目が、複数のユーザの間で互いに異なる場合、診断項目が異なるユーザの居所を循環する車両20の少なくとも一部が、異なる車両となる。
【0083】
サーバ10は、図8に示すように、第1の診断項目の診断を行う車両20の巡回する第1の巡回経路R1を、出発地点P0を出発して、順次第1の地点P1から第5の地点P5を通り、出発地点P0に戻るように設定することができる。出発地点P0は、例えば、車両20の基地である。第1の巡回経路R1は、図8において実線により示される。また、サーバ10は、第2の診断項目の診断を行う車両20の巡回する第2の巡回経路R2を、出発地点P0を出発して、第1の地点P1及び第4の地点P4を通り、出発地点P0に戻るように設定することができる。第2の巡回経路R2は、図8において破線により示される。また、第2の巡回経路R2は、第1の巡回経路R1に含まれていなかった、他のユーザの居所を経由してもよい。なお、第1の診断項目及び第2の診断項目以外の診断項目の診断に対応する他の車両20が存在してよい。図8及び図9では他の車両20については記載を省略する。
【0084】
車両20が各地点P1からP5を巡回する時刻は、ユーザU1からU5の健康診断の受診を希望する日時、在宅時間帯、及び、体調等を考慮して決定される。サーバ10は、ユーザの体調が悪く健康診断を受けれなくなった場合、一度決定した巡回スケジュールを変更してよい。
【0085】
サーバ10は、それぞれの車両20の巡回経路を決定すると同時に、それぞれの車両20の各地点P1からP5及び他の地点への到着時間及び滞在時間を含むスケジュールを決定する。図9は、それぞれ図8の第1の巡回経路R1と第2の巡回経路R2とを通る、2台の車両20の運行するスケジュールの一例を示すダイヤグラムである。図9において、第1の巡回経路R1に対応する車両20の運行するスケジュールは、実線により示される。第2の巡回経路R2に対応する車両20の運行するスケジュールは、破線により示される。
【0086】
車両20が、各地点P1からP5に滞在する滞在時間は、それぞれの車両20が実行する診断項目の必要とする診断時間によって異なる。また、滞在時間は、ユーザがユーザの居所に派遣された車両20に移動するまでにかかる移動時間を考慮してよい。移動時間は、例えば、ユーザの住居の前に駐車した車両20に、ユーザが乗り込むまでにかかる時間である。ユーザの身体状況により、移動時間が長くなることがある。このような移動時間の情報を、サーバ10は、サーバ通信部11を介して予め取得してよい。
【0087】
車両20は、ユーザの居所の敷地内又は居所に隣接する道路上に駐車可能なスペースがない場合、ユーザが乗車した後に近隣の駐車可能な場所等のユーザの居所とは異なる場所に移動してよい。サーバ10は、予め、地図情報に基づいて、駐車可能な場所に移動するのにかかる時間を予測して、巡回スケジュールを決定してよい。車両20は、ユーザの診断が終了すると、再びユーザの居所に戻ってユーザを降車させてよい。
【0088】
サーバ10は、同一のユーザに対して第1の診断項目の診断を行うスケジュールと第2の診断項目の診断を行うスケジュールとが重複しないように、スケジュールを決定する。例えば、図9に示した例では、第1の地点P1においては、第1の診断項目の診断を行った後に、第2の診断項目の診断を行うように、2台の車両20が配車される。第4の地点P4においては、第2の診断項目の診断を行った後に、第1の診断項目の診断を行うように、2台の車両20が配車される。
【0089】
本開示のシステム1が提供する健康診断の方法は、従来の健康診断用の大型車両を用いた方式とは大きく異なる。従来の方法では、健康診断を実行する1台又は複数台の車両の駐車場所に、ユーザが移動して健康診断を受ける。本開示の方法では、健康診断の異なる診断項目に対応する複数の車両20が順次ユーザの居所に来て、健康診断に必要な測定、検査および問診等を行う。一人のユーザに対応する複数の車両20は、それぞれ時間的に重複しないように、異なるタイミングでユーザの居場所に派遣される。
【0090】
以上説明したように、本開示によれば、健康診断を必要とする各ユーザの診断項目に応じて、当該診断項目に対応する検査を提供する車両20が、ユーザの居所を巡回して健康診断を行うので、ユーザが健康診断を受け易くなる。とくに、近距離の移動であっても困難な障害を有するユーザにとって、健康診断を受信することが容易になる。これによって、ユーザの利便性が向上するとともに、健康診断の受診率が向上する。その結果、健康診断が普及し、社会全体の医療費が軽減する。
【0091】
また、本開示のシステム1では、ユーザの必要とする診断項目の一部に対応する複数の車両20が、ユーザの居所を巡回するので、個々の車両20は比較的小型に構成することが可能である。このため、車両20は、狭い道路及び高さ制限のある道路などの制約がある道路環境があっても、ユーザの居所まで通行することが可能である。その結果、多くのユーザの居所を巡回し、健康診断を行うことができる。
【0092】
また、本開示のシステム1では、サーバ10は、ユーザの必要とする診断項目に対応した車両20のみを、ユーザの居所に巡回させるように巡回スケジュールを決定する。また、サーバ10は、異なる診断項目に対応する複数の車両20が重複してユーザの居所に配車されないように、巡回スケジュールを決定することができる。これによって、車両20及び車両20に搭載される検査用の設備及び機器等の利用効率を高めることができる。
【0093】
さらに、本開示では、車両20の搭載する診断用の設備の自動化が図られるとともに、必要なときに遠隔の医師等の医療関係者とネットワーク40を介して対話することができる。これにより、医療関係者が車両20で健康診断を受けるユーザに、検査の指示を行うこと、及び、問診を行うこと等が可能になる。各車両20にそれぞれ医療関係者を固定して割り当てる必要がないので、医療関係者の人的リソースを有効に活用することができる。
【0094】
なお、上述したサーバ10はコンピュータを用いて構成することができる。そのようなコンピュータは、サーバ10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
【0095】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本開示は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 システム
10 サーバ
11 サーバ通信部
12 サーバ記憶部
13 サーバ制御部
15 データベース
20 車両
21 通信装置
22 制御装置
23 ECU
24 位置情報取得装置
25 情報処理装置
30 端末装置
40 ネットワーク
50 リモートコンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9