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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】フォークリフトのホースクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/08 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B66F9/08 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021184450
(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公開番号】P2023072117
(43)【公開日】2023-05-24
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩二
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-195520(JP,A)
【文献】実開昭57-174493(JP,U)
【文献】特開2003-027549(JP,A)
【文献】実開昭55-107558(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0104780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
F16L 3/00- 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役装置の油圧機器に作動油を給排する作動油ホースをクランプするクランプ機構と、
前記荷役装置に設けられ、前記クランプ機構が取り付けられるブラケットと、を有するフォークリフトのホースクランプ装置において、
前記クランプ機構は、
前記ブラケットに対してスライド可能なスライド部材と、
前記スライド部材とともに前記作動油ホースをクランプするクランプ部材と、
前記クランプ部材を前記スライド部材に締結する締結部材と、有し、
前記ブラケットは、回転可能に保持される送りねじを備え、
前記スライド部材は、前記送りねじと螺合する雌ねじ部を有し、
前記クランプ機構は、前記送りねじの回転に応じて前記ブラケットに対してスライドすることを特徴とするフォークリフトのホースクランプ装置。
【請求項2】
前記送りねじの端部は、前記送りねじを回転させる工具と嵌合する嵌合部を有することを特徴とする請求項1記載のフォークリフトのホースクランプ装置。
【請求項3】
前記送りねじは、台形ねじであることを特徴とする請求項1又は2記載のフォークリフトのホースクランプ装置。
【請求項4】
前記雌ねじ部は、前記スライド部材を貫通するねじ孔であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のフォークリフトのホースクランプ装置。
【請求項5】
前記雌ねじ部は、前記スライド部材における前記ブラケットと対向する対向面に前記送りねじの軸方向に形成されるねじ溝であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のフォークリフトのホースクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォークリフトが備える作動油ホースをクランプして固定するためのフォークリフトのホースクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトのホースクランプ装置の従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたフォークリフトの配管取付部材が知られている。特許文献1に開示されたフォークリフトの配管取付部材では、荷役装置は、リフトシリンダを昇降させるため作動油を給排するための油圧ホースを備えている。油圧ホースは、リフトシリンダにより昇降するホース用プーリから垂下され、一端はフォークリフトの前面側にてアクチュエータと接続され、他端は外マストの外側を引き回され、荷役装置の下部にて車両本体側の配管と接続されている。
【0003】
ホース用プーリから垂下して外マストに沿って引き回される油圧ホースは、取付部材により外マストに取り付けられる。取付部材は、第1クランプ部材と、第2クランプ部材と、取付ボルトとを有する。第1クランプ部材は、外マストに設けられ、チェーンの一端が連結される連結部材に取り付けられる。油圧ホースが第1クランプ部材と第2クランプ部材とに形成された取付溝に嵌合した状態で、第1クランプ部材と第2クランプ部材は取付ボルトにて締結される。
【0004】
ところで、フォークリフトでは、ホース用プーリから垂下された油圧ホースの張力を調整する必要がある。油圧ホースの張力が適切でないと、リフトシリンダの作動時に油圧ホースが荷役装置における他部材と干渉するおそれがある。油圧ホースの張力の調整は作業者によって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-11186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたフォークリフトの配管取付部材では、作業者が作動油ホース(油圧ホース)の張力を調整する場合、例えば、ホース用プーリから垂下された作動油ホースを取付部材により外マストに仮固定した後に行う。しかしながら、張力の調整作業は、作動油ホースを掴みつつ取付ボルトを緩めてから、掴んでいる作動油ホースを引っ張ることにより適切な張力とし、その状態を維持した上で締結ボルトを締結する必要がある。つまり、作動油ホースの調整作業は極めて煩雑であって、一人の作業者では多大な労力を要して非常に困難であるという問題がある。さらに、4本の作動油ホースを取り付ける場合では、作動油ホースの張力調整の作業は一人の作業者では事実上不可能である。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、作動油ホースの張力の調整を簡単に行うことができるフォークリフトのホースクランプ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、荷役装置の油圧機器に作動油を給排する作動油ホースをクランプするクランプ機構と、前記荷役装置に設けられ、前記クランプ機構が取り付けられるブラケットと、を有するフォークリフトのホースクランプ装置において、前記クランプ機構は、前記ブラケットに対してスライド可能なスライド部材と、前記スライド部材とともに前記作動油ホースをクランプするクランプ部材と、前記クランプ部材を前記スライド部材に締結する締結部材と、有し、前記ブラケットは、回転可能に保持される送りねじを備え、前記スライド部材は、前記送りねじと螺合する雌ねじ部を有し、前記クランプ機構は、前記送りねじの回転に応じて前記ブラケットに対してスライドすることを特徴とする。
【0009】
本発明では、荷役装置において作動油ホースはクランプ機構によりクランプされ、クランプ機構はブラケットに取り付けられる。送りねじを回転させることでクランプ機構がブラケットに対してスライドするので、クランプ機構の位置に応じて作動油ホースの張力が変更される。作動油ホースがクランプされた状態のままで作動油ホースの張力を変更するので、作動油ホースの張力を調整する作業者は、作動油ホースの張力の調整を簡単に行うことができる。
【0010】
また、上記のフォークリフトのホースクランプ装置において、前記送りねじの端部は、前記送りねじを回転させる工具と嵌合する嵌合部を有する構成としてもよい。
この場合、作動油ホースの張力を調整する作業者は、送りねじの嵌合部と嵌合可能な工具を用いて送りねじを回転させることができるので、作動油ホースの張力の調整をより簡単に行うことができる。
【0011】
また、上記のフォークリフトのホースクランプ装置において、前記送りねじは、台形ねじである構成としてもよい。
この場合、クランプ機構が荷役装置の作動時に作動油ホースを介して引っ張られる荷重を受けても、送りねじが引っ張りの荷重によって回転するおそれはない。
【0012】
また、上記のフォークリフトのホースクランプ装置において、前記雌ねじ部は、前記スライド部材を貫通するねじ孔である構成としてもよい。
この場合、雌ねじ部がスライド部材を貫通するねじ孔であるので、スライド部材に雌ねじ部を形成することが比較的簡単である。
【0013】
また、上記のフォークリフトのホースクランプ装置において、前記雌ねじ部は、前記スライド部材における前記ブラケットと対向する対向面に前記送りねじの軸方向に形成されるねじ溝である構成としてもよい。
この場合、雌ねじ部が、スライド部材におけるブラケットと対向する対向面に軸方向に形成されるねじ溝であるため、スライド部材にねじ孔を設ける場合と比較すると、スライド部材を薄くすることが可能となり、クランプ機構に必要なスペースを低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作動油ホースの張力の調整を簡単に行うことができるフォークリフトのホースクランプ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
図2】第1の実施形態に係るフォークリフトの荷役装置の概要を示す正面図である。
図3】第1の実施形態に係るフォークリフトの荷役装置の概要を示す斜視図である。
図4】第1の実施形態に係るホースクランプ装置の要部を示す斜視図である。
図5】第1の実施形態に係るホースクランプ装置の平面図である。
図6】第1の実施形態に係るホースクランプ装置の一部を破断して示す斜視図である。
図7】(a)は作動油ホースをクランプしたホースクランプ装置の正面図であり、(b)はクランプ機構を下降させた状態のホースクランプ装置の正面図であり、(c)はクランプ機構を上昇させた状態のホースクランプ装置の正面図である。
図8】(a)は第2の実施形態に係るホースクランプ装置の要部を示す斜視図であり、(b)は第2の実施形態に係るホースクランプ装置の別例の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るフォークリフトのホースクランプ装置(以下、単に「ホースクランプ装置」と表記する)について図面を参照して説明する。まず、ホースクランプ装置が適用されているフォークリフトについて説明する。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、フォークリフトのオペレータが運転席の運転シートに着座して、フォークリフトの前進側を向いた状態を基準として示す。
【0017】
図1に示すように、フォークリフト10は、車体11の前部に荷役装置12を備えている。車体11の中央付近には運転席13が設けられている。車体11の前部には前輪としての駆動輪14が設けられ、車体11の後部には後輪としての操舵輪15が設けられている。車体11の後部にはカウンタウエイト16が備えられており、カウンタウエイト16は車両重量の調整と車体11における重量バランスを図るためのものである。車体11には、運転席13の上部を覆うヘッドガード17が設けられている。
【0018】
荷役装置12はアウタマスト18およびインナマスト19を有するマスト20を備えている。左右一対のアウタマスト18には、アウタマスト18の内側にてスライド可能なインナマスト19が備えられている。車体11とアウタマスト18との間には、油圧により作動するティルトシリンダ21が設置されている。マスト20はティルトシリンダ21の作動により下端部を支点として前後方向に傾動する。マスト20には油圧により作動するリフトシリンダ22が設けられている。リフトシリンダ22の作動により、インナマスト19がアウタマスト18内でスライドして昇降する。マスト20には左右一対のフォーク23がリフトブラケット24を介して設けられ、リフトブラケット24はインナマスト19に対して昇降するように設けられている。
【0019】
図2に示すように、リフトブラケット24は、上下一対のフィンガーバー25、26と、上下一対のフィンガーバー25、26の両端部をそれぞれ連結する連結部材27を備えている。上側のフィンガーバー25はアッパーフィンガーバーであり、下側のフィンガーバー26はロアフィンガーバーである。フィンガーバー25、26は左右一対のフォーク23をそれぞれ係止する部材である。リフトブラケット24には、図2に示すようにバックレスト28の取り付けが可能である。
【0020】
図2図3に示すように、左右一対のアウタマスト18の上部は、アッパービーム31により連結されている。アウタマスト18には、チェーンアンカーブラケット32が設けられている。チェーンアンカーブラケット32は、リフトチェーン33の一端を連結するためのブラケットである。リフトチェーン33の他端はリフトブラケット24に連結されている。
【0021】
左右一対のインナマスト19の上部は、アッパービーム34により連結されている。インナマスト19には、リフトチェーン33が掛装されるチェーンスプロケット35が備えられている。一方(右側)のインナマスト19においてチェーンスプロケット35の近傍には、一対の作動油ホース37が掛装されるホースホイール36が備えられている。作動油ホース37は、リフトブラケット24に設けられる油圧機器(サイドシフト用シリンダやフォークシフト用シリンダ等)に作動油を給排する配管の一部である。ホースホイール36に掛装される作動油ホース37の一方の端部は、車体11に備えられた配管(図示せず)と接続され、作動油ホース37の他方の端部は、リフトブラケット24に備えられた配管又は油圧機器と接続されている。
【0022】
図2図3に示すように、本実施形態のフォークリフト10は、ホースクランプ装置40を備えている。図4に示すように、ホースクランプ装置40は、作動油ホース37をクランプするクランプ機構41と、クランプ機構41を取り付けるためのブラケット42とを有している。ブラケット42から説明すると、図5に示すように、ブラケット42は、チェーンアンカーブラケット32に固定されている。チェーンアンカーブラケット32に対するブラケットの固定はボルト(図示せず)による締結であるが、溶接であってもよい。ブラケット42は、板状の本体部43と、本体部43の一方の面から突出する一対のガイド部44と、を有する。本体部43の板面は鉛直方向に沿うように、本体部43の端部がチェーンアンカーブラケット32に取り付けられている。ガイド部44は、L字状に屈曲された板部材により形成されている。左右一対のガイド部44の間には、クランプ機構41が上下方向にスライド可能に設けられる。
【0023】
本体部43の左右方向における中心には、上下方向の溝部45が形成されている。溝部45は、ガイド部44とともに、クランプ機構41を上下方向に案内する機能を有する。本体部43の上端部および下端部には、溝部45へ向けて突出する送りねじ支持部46がそれぞれ設けられている。送りねじ支持部46は、送りねじ48を回転可能に支持する板状の部材であり、送りねじ48の端部が挿通される挿通孔47を有している。送りねじ48は、クランプ機構41をブラケット42に対して保持するとともに、クランプ機構41をブラケット42に対してスライドさせる部材である。本実施形態の送りねじ48は台形ねじである。送りねじ48の上側となる端部には、送りねじ48を回転させるドライバ等の工具が嵌合できるように嵌合部としての十字溝49が形成されている。
【0024】
クランプ機構41は、ブラケット42に対してスライド可能なスライド部材51と、スライド部材51とともに作動油ホース37をクランプするクランプ部材52と、クランプ部材52をスライド部材51に締結する締結部材としてのボルト53と、有する。スライド部材51は、板状の部材であり、左右一対のガイド部44の間に備えられる。スライド部材51は、ブラケット42における本体部43の溝部45に嵌合する突部54を備えている。
【0025】
図6に示すように、突部54には、スライド部材51を貫通し、送りねじ48と螺合する突部ねじ孔55が備えられている。したがって、送りねじ48を一方向へ回転させると、スライド部材51はブラケット42に対して上昇し、送りねじ48を他方向へ回転させると、スライド部材51はブラケット42に対して下降する。スライド部材51には、一対の締結用ねじ孔56が形成されている(図5を参照)。締結用ねじ孔56はクランプ部材52をスライド部材51に締結するためのボルト53の軸部が螺入されるねじ孔である。なお、ガイド部44は一部が、スライド部材51の左右の両端部を前方から覆うため、ガイド部44に対するスライド部材51の左右方向および前後方向への移動が規制される。
【0026】
クランプ部材52は、作動油ホース37の外周に倣うように形成された溝部57を備えている。溝部57は、左右一対の作動油ホース37を通すことができるように断面の円弧状の円弧溝58を有している(図5を参照)。クランプ部材52の長手方向の両端付近には、ボルト53の軸部が挿通可能なボルト孔59が形成されている。円弧溝58に作動油ホース37を沿わせてからボルト53でクランプ部材52をスライド部材51に締結することで、作動油ホース37は、弾性変形しつつクランプ部材52とスライド部材51によりクランプされる。
【0027】
次に、本実施形態に係るホースクランプ装置40による作動油ホース37の張力を調整する手順について説明する。作動油ホース37は、ホースホイール36に掛装され、作動油ホース37の一方の端部は、車体11に設けた配管と接続され、作動油ホース37の他端はリフトブラケット24に備えられた配管又は油圧機器と接続されている。図7(a)に示すように、まず、作業者は作動油ホース37をクランプ機構41によりクランプする。具体的には、クランプ部材52の円弧溝58に作動油ホース37を嵌め込み、クランプ部材52をボルト53によりスライド部材51に締結する。クランプ部材52がボルト53によりスライド部材51に締結されることにより、作動油ホース37は、スライド部材51およびスライド部材51によりクランプされる。
【0028】
図7(a)の状態から、作動油ホース37の張力を高める場合には、作業者は送りねじ48をドライバ等の工具を十字溝49に嵌合させ、工具により一方向へ回転させる。送りねじ48の一方向への回転によりスライド部材51がブラケット42に対して下降し、クランプ機構41が作動油ホース37とともにスライドして下降する。したがって、例えば、図7(b)に示すように、下降されたクランプ機構41はクランプしている作動油ホース37を引き下げているので、作動油ホース37におけるリフトブラケット24側の端部とクランプ機構41の間の張力は高くなる。つまり、作業者は、作動油ホース37が緩んで張力が不足している場合には送りねじ48を一方向へ回転させて、作動油ホース37の張力を高めるように調整すればよい。
【0029】
作動油ホース37の張力を低下させる場合には、作業者は送りねじ48をドライバ等の工具を用いて他方向へ回転させる。送りねじ48の他方向への回転によりスライド部材51がブラケット42に対して上昇し、クランプ機構41が作動油ホース37とともにスライドして上昇する。したがって、例えば、図7(c)に示すように、上方されたクランプ機構41はクランプしている作動油ホース37を引き上げているので、作動油ホース37におけるリフトブラケット24側の端部とクランプ機構41の間の張力は低くなる。つまり、作業者は、作動油ホース37が張り過ぎて張力が過大の場合には、送りねじ48を他方向へ回転させて、作動油ホース37の張力を低下させるように調整すればよい。
【0030】
クランプ機構41の昇降は、上下一対の送りねじ支持部46によって規制される。クランプ機構41は、送りねじ48の一方向への回転によりスライドして上昇し続けても、スライド部材51が上側に位置する送りねじ支持部46に当接して、クランプ機構41の上昇が規制される。また、クランプ機構41は、送りねじ48の他方向への回転によりスライドして下降し続けても、スライド部材51が下側に位置する送りねじ支持部46に当接して、クランプ機構41の下降が規制される。
【0031】
本実施形態のホースクランプ装置40は以下の効果を奏する。
(1)荷役装置12において作動油ホース37はクランプ機構41によりクランプされ、クランプ機構41はブラケット42に取り付けられる。送りねじ48を回転させることでクランプ機構41がブラケット42に対しいスライドするので、クランプ機構41の位置に応じて作動油ホース37の張力が変更される。作動油ホース37がクランプされた状態のままで作動油ホース37の張力を変更するので、作動油ホース37の張力を調整する作業者は、作動油ホース37の張力の調整を簡単に行うことができる。また、クランプされる作動油ホース37の本数に関わらず一人の作業者によって作動油ホース37の張力を調整することができる。
【0032】
(2)送りねじ48の端部は、送りねじ48を回転させる工具と嵌合する嵌合部としての十字溝49を有する。このため、作動油ホース37の張力を調整する作業者は、十字溝49に嵌合する工具を用いて送りねじ48を回転させることができるので、作動油ホース37の張力の調整をより簡単に行うことができる。
【0033】
(3)送りねじ48は、台形ねじであるので、クランプ機構41が荷役装置12の作動時に作動油ホース37を介して引っ張られる荷重を受けても、送りねじ48が引っ張りの荷重によって回転するおそれはない。また、送りねじ48が台形ねじであることから、張力を設定したクランプ機構41の位置がずれるおそれはなく、作動油ホース37の張力がクランプ機構41の位置ずれにより変動することを防止できる。
【0034】
(4)雌ねじ部がスライド部材51の突部54を貫通する突部ねじ孔55であるので、スライド部材51に雌ねじ部を形成することが比較的簡単である。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るホースクランプ装置ついて説明する。本実施形態のホースクランプ装置は、ブラケットおよびスライド部材の構成が第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0036】
図8(a)に示すように、本実施形態のホースクランプ装置60は、作動油ホース37をクランプするクランプ機構61と、クランプ機構61を取り付けるためのブラケット62とを有している。ブラケット62を説明すると、ブラケット62は、ボルト(図示せず)によりチェーンアンカーブラケット32に固定されている。ブラケット62は、板状の本体部63と、本体部63の一方の面から突出する一対のガイド部64と、を有する。ガイド部64は、L字状に屈曲された板部材により形成されている。左右一対のガイド部64の間には、クランプ機構61が上下方向にスライド可能に設けられる。本体部63のクランプ機構61と対向する面には、送りねじ48が挿入される溝部(図示せず)が設けられている。
【0037】
クランプ機構61は、ブラケット62に対してスライド可能なスライド部材65と、スライド部材51とともに作動油ホース37をクランプするクランプ部材52と、クランプ部材52をスライド部材51に締結するボルト53と、有する。スライド部材65は、板状の部材であり、左右一対のガイド部64の間に備えられる。スライド部材65のブラケット62と対向する面には、送りねじ48と螺合する雌ねじ部としてのねじ溝66が備えられている。つまり、ねじ溝66は、スライド部材65におけるブラケット62と対向する対向面に軸方向に形成されている。したがって、送りねじ48を一方向へ回転させると、スライド部材65はブラケット62に対して上昇し、送りねじ48を他方向へ回転させると、スライド部材65はブラケット62に対して下降する。なお、ガイド部64は一部が、スライド部材65の左右の両端部を前方から覆うため、ガイド部64に対するスライド部材65の左右方向および前後方向への移動が規制される。
【0038】
本実施形態のホースクランプ装置60によれば、第1の実施形態の効果(1)~(3)と同等の効果を奏する。また、ねじ溝66が、スライド部材65におけるブラケット62と対向する対向面に送りねじ48の軸方向に形成されている。このため、スライド部材51に雌ねじ孔である突部ねじ孔55を設ける場合と比較すると、スライド部材65の厚さを小さくすることが可能となり、クランプ機構61に必要なスペースを低減することができる。
【0039】
なお、本実施形態の別例として、送りねじ48を台形に代えてメートルねじとしてもよい。この場合、例えば、図8(b)に示すように、端部が送りねじ支持部46から突出するような長さの送りねじ48とし、送りねじ48の突出した端部にナット67を締結してもよい。ナット67は、作動油ホース37の張力がクランプ機構61を通じて送りねじ48に作用しても、送りねじ48が張力により回転することを防止する。作動油ホース37の張力を調整するときは、ナット67を取り外して送りねじ48を回転させればよい。本別例によれば、送りねじ48にメートルねじを用いることができ、台形ねじを用いる場合と比較して、製作コストを抑制することができる。
【0040】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0041】
○ 上記の実施形態では、送りねじの端部が送りねじを回転させるための工具と嵌合する嵌合部を有したが、これに限らない。例えば、工具を使わずに送りねじを回転させることができる場合には、送りねじは嵌合部を有しなくてもよい。この場合、送りねじの製作コストの抑制や作動油ホースの調整作業の容易化が期待できる。
○ 上記の実施形態では、送りねじの嵌合部として十字溝を例示したが、嵌合部は十字溝に限定されない。嵌合部は、例えば、六角レンチの挿入が可能な六角孔でもよく、また、溝や孔以外の嵌合部であってもよい。
○ 上記の実施形態では、2本の作動油ホースをクランプするホースクランプ装置について説明したが、クランプされる作動油ホースは2本に限定されない。作動油ホースは、例えば、4本であってもよい。
○ 上記の実施形態では、アウタマストに設けたチェーンアンカーブラケットにホースクランプ装置が備えられる例を説明したが、ホースクランプ装置はチェーンアンカーブラケットに備えられるとは限らない。例えば、アウタマストの下端を連結するロアビームに立設された油圧シリンダにホースクランプ装置を設けてもよい。この場合、油圧シリンダのロッド端にホースホイールを設けておき、ホースホイールに掛装される作動油ホースをクランプするホースクランプ装置を油圧シリンダのシリンダ本体に備えればよい。
〇 第2の実施形態の別例では、送りねじがメートルねじとし、回り止めのナットを装着するようにしたが、第1の実施形態の別例として、メートルねじと回り止めのナットを用いてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 フォークリフト
12 荷役装置
20 マスト
24 リフトブラケット
32 チェーンアンカーブラケット
33 リフトチェーン
36 ホースホイール
37 作動油ホース
40、60 ホースクランプ装置
41、61 クランプ機構
42、62 ブラケット
46 送りねじ支持部
47 挿通孔
48 送りねじ
49 十字溝(嵌合部)
51、65 スライド部材
52 クランプ部材
53 ボルト(締結部材)
54 突部
55 突部ねじ孔(雌ねじ部)
57 溝部
66 ねじ溝(雄ねじ部)
67 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8