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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】器具
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/00 20060101AFI20241203BHJP
   G01F 23/2962 20220101ALI20241203BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
E02B7/00 Z
G01F23/2962
B01D23/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021198322
(22)【出願日】2021-12-07
(65)【公開番号】P2023084260
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳楽 俊之
(72)【発明者】
【氏名】濱口 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】小野 翔輝
(72)【発明者】
【氏名】大林 優介
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-178174(JP,A)
【文献】特開2012-106219(JP,A)
【文献】特開平09-264014(JP,A)
【文献】特開2006-087976(JP,A)
【文献】特許第5113873(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0112806(US,A1)
【文献】特開平10-068116(JP,A)
【文献】特開2003-028382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0195969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/00
G01F 23/2962
B01D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムの堤体内への漏水量を測定するべく監査廊内に取り付けられる器具であって、
通水性を有するフィルターを有し、前記堤体内へ漏出した漏水が流れる配管の流出口から前記漏水量を測定する漏水測定装置の貯水槽に流下する前記漏水を受けるろ過部材と、
前記漏水が前記フィルターに流下するように前記ろ過部材を前記配管に取り付ける取付部材と、
を備える器具。
【請求項2】
前記配管は、前記流出口を水平より下方に向けるように延伸しており、
前記取付部材は、前記配管の外径に対応する内径を有する筒の形状であり、前記流出口を筒内に内挿することにより前記配管に取り付けられ、
前記ろ過部材は、前記取付部材の筒の側面と連続する側面を有し、前記取付部材の筒軸に沿った筒軸を有する半筒の形状であり、前記半筒の側面が前記フィルターにより構成されている、
請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記ろ過部材は、前記取付部材に連続する一端とは反対側の他端において、前記半筒の側面と角度をなす壁面を有し、前記壁面も前記フィルターにより構成されている、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記配管は、前記流出口を水平より下方に向けるように延伸しており、
前記取付部材は、前記配管の外径に対応する内径を有する筒の形状であり、前記流出口を筒内に内挿することにより前記配管に取り付けられ、
前記ろ過部材は、前記取付部材の筒の側面と連続する側面を有し、前記取付部材の筒軸に沿った筒軸を有する筒の形状であり、前記取付部材に連続する一端とは反対側の他端において、前記側面と角度をなす壁面を有し、前記筒の側面及び壁面が前記フィルターにより構成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記ろ過部材は、前記筒軸と平行な方向の長さが、前記筒軸と直交する方向の長さよりも長い、請求項2から4の何れか一項に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムは、堤体によって大量の水を堰き止めている。堤体の異変や状態の変化を把握するため、日々様々な方法で点検や監視が行われている。
【0003】
その一つとして、堤体の内部に漏出する漏水量の測定が行われている。漏水量を測定する際には、堤体の内部に監視通路として構築されている監査廊内に設置した水槽に漏水を集めて、水槽から溢れる水量を測定する。ところが、監査廊内の漏水には、堤体を構成するコンクリートが溶解した成分などの不純物が含まれており、水槽から溢れる水量を正確に測定するためには定期的に水槽を清掃する必要がある。一方、水などの液体から不純物を取り除く技術は、様々な分野で開発されており、例えば特許文献1のような技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5113873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水槽の清掃は狭い監査廊内で行われなければならず、作業負担が大きい。特に夏季や冬季の清掃は、作業員にとって大きな負担となっている。
【0006】
また、ダムは山間部に建設されることが多く、作業員がダムに出向くには時間がかかるため、出向く頻度を減らすことも望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであって、監査廊内の漏水量測定業務の作業負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、ダムの堤体内への漏水量を測定するべく監査廊内に取り付けられる器具であって、通水性を有するフィルターを有し、前記堤体内へ漏出した漏水が流れる配管の流出口から前記漏水量を測定する漏水測定装置の貯水槽に流下する前記漏水を受けるろ過部材と、前記漏水が前記フィルターに流下するように前記ろ過部材を前記配管に取り付ける取付部材と、を備える器具が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、監査廊内の漏水量測定業務の作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】配管1と漏水測定装置10の斜視図である。
図2】取付部材30とフレーム41の斜視図である。
図3】フィルター材42の斜視図である。
図4】器具20の斜視図である。
図5】変形例1における器具20の斜視図である。
図6】変形例2における器具20の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、これらの限定は、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
<漏水量の測定方法>
図1は、本実施形態に係る器具20を用いて堤体内の漏水量を測定する際の様子を示す図である。
【0013】
堤体内には不図示の集水装置が複数箇所に設置されている。そして堤体内の漏水は、配管1を通じて監査廊に設置されている貯水槽11に集められる。
【0014】
貯水槽11には切欠き部11Aが形成されており、貯水槽11内の水の高さが切欠き部11Aの下端に達すると、切欠き部11Aから水が流出しはじめる。
【0015】
このとき、配管1から貯水槽11に流入する水量が多いほど、貯水槽11内の水面の高さは切欠き部11Aの下端から、より高い位置で安定する。逆に、配管1から貯水槽11に流入する水量が少ないほど、貯水槽11内の水面の高さは切欠き部11Aの下端により近い位置で安定する。
【0016】
このため、貯水槽11内の水面の高さを測定することで、配管1から貯水槽11内に流入する漏水量を求めることができる。
【0017】
本実施形態では、後述する測定器12を用いることで貯水槽11内の水面の高さを測定している。
【0018】
ここで、配管1を流れてくる堤体内の漏水には、堤体を構成するコンクリートが溶解した成分や砂等の粒子、藻や水の華等の浮遊物質、バクテリア、微生物などの様々な不純物(以下、不純物)が混入している。そして、これらの不純物が切欠き部11Aに堆積すると、貯水槽11内の水面の高さを上昇させるように作用するため、漏水量を正しく求めることができなくなる。
【0019】
そこで本実施形態では、器具20を用いることで、漏水内の不純物が切欠き部11Aに堆積することを防止している。以下、詳細に説明する。
【0020】
<配管、漏水測定装置>
図1は、監査廊内に設けられた配管1と漏水測定装置10の斜視図である。
【0021】
配管1は、監査廊内に漏出する漏水を漏水測定装置10へと導水する管である。配管1は、例えば金属製の管である。配管1は、漏水測定装置10の近傍において先端が水平より下方を向くように直線状に設けられている。配管1の先端には、流出口2が設けられている。流出口2は、漏水が配管1から流出する開口である。流出口2は、配管1の延伸方向に沿って直線状に延びる筒の形状である。配管1には、器具20が取り付けられている。なお、配管1は、樹脂製、木製、石製、コンクリート製であってもよい。
【0022】
漏水測定装置10は、漏水量を測定する装置である。漏水測定装置10は、貯水槽11を備えており、貯水槽11に溜まった漏水の水位から漏水量を求める装置である。
【0023】
本実施形態に係る漏水測定装置10は、一例として、貯水槽11と、測定器12と、通信機13と、を備える。
【0024】
貯水槽11は、漏水を溜める水槽である。貯水槽11は、流出口2の下方に設けられ、流出口2から流出する漏水をその内部に溜める。貯水槽11は、例えば、上面が開放された直方体箱状である。貯水槽11は、側面のいずれか1面に切欠き部11Aを有する。切欠き部11Aは、貯水槽11における漏水の流出口である。切欠き部11Aは、側面を上辺から三角形状に切り欠いた部分である。
【0025】
測定器12は、貯水槽11に溜められた漏水の水位を測定する装置である。測定器12は、超音波発生器12Aと、検出器12Bと、を備える。
【0026】
超音波発生器12Aは、超音波を発生させる装置である。超音波発生器12Aは、貯水槽11の上方に設けられる。超音波発生器12Aは、貯水槽11に溜められた漏水の水面に向かって超音波を発生させる。超音波発生器12Aは、検出器12B及び通信機13と通信可能に接続されている。超音波発生器12Aは、超音波を発生させるタイミングで検出器12Bに信号を送信する。
【0027】
検出器12Bは、超音波を検出する装置である。検出器12Bは、超音波発生器12Aの近傍かつ貯水槽11の上方に設けられる。検出器12Bは、超音波発生器12Aから発射され、貯水槽11に溜められた漏水の水面で反射した超音波を検出する。検出器12Bは、超音波発生器12A及び通信機13と通信可能に接続されている。検出器12Bは、超音波発生器12Aが発生した超音波を検出する。
【0028】
また、検出器12Bは、超音波発生器12Aが超音波を発生してから、水面を反射した超音波を検出するまでの時間を測定することによって、検出器12Bから水面までの距離を検出する。あらかじめ、貯水槽11の底板から検出器12Bまでの距離を測定しておき、その距離から、検出器12Bから水面までの距離を引くことによって、検出器12Bは、貯水槽11に溜められた漏水の水位を検出する。そして、検出器12Bは、検出した漏水の水位データを通信機13に送信する。
【0029】
通信機13は、監査廊外部に設けられる不図示のコンピュータとデータの送受信を行う装置である。通信機13は、超音波発生器12A及び検出器12Bと通信可能に接続されている。また、通信機13は、無線又は有線接続によって、例えば監視センターなどの監査廊外部のコンピュータと通信可能に接続されている。したがって、通信機13は、検出器12Bから漏水の水位データを受信し、監査廊外部のコンピュータに送信する。
【0030】
ここで、漏水の量を測定する方法について説明する。貯水槽11に流入する漏水の量と、切欠き部11Aから流出する漏水の量は同じである。ところで、切欠き部11Aは三角形状の切欠きであるから、貯水槽11の水位が高くなると、切欠き部11Aから流出する漏水の量が多くなる。そこで、あらかじめ、貯水槽11に溜められた漏水の水位と、その水位における切欠き部11Aから流出する漏水の量との関係を測定しておくことによって、貯水槽11に溜められた漏水の水位から漏水の量を算出することができる。つまり、漏水測定装置10は、貯水槽11に溜められた漏水の水位を測定することによって、漏水の量を間接的に測定する。
【0031】
<器具>
器具20は、配管1に取り付けられ、流出口2から流れ落ちる漏水から不純物を取り除く。器具20は、取付部材30と、ろ過部材40と、を備える(図4参照)。
【0032】
取付部材30は、漏水が後述するフィルター材42に流下するようにろ過部材40を配管1に取り付ける部材である。図2に示すように、取付部材30は、筒の形状である。取付部材30は、例えば金属製の部材である。取付部材30の内径は、流出口2の外径に対応している。そのため、取付部材30は、流出口2を筒内に内挿することによって、流出口2と同軸に取り付けることができる。なお、図2等に示した取付部材30は、配管1の断面形状に合わせた円筒形状であるが、配管1の断面形状が方形である場合は、取付部材30は角筒形状にするとよい。また、取付部材30は、樹脂製や木製であってもよい。
【0033】
このように、取付部材30の内径が流出口2の外径に対応しているため、取付部材30は、流出口2に容易に取り付けられる。
【0034】
また、取付部材30とろ過部材40が連続しているため、2つの部材の間に隙間がない。そのため、流出口2から流出する漏水は、漏れることなくろ過部材40へと流れ落ちる。
【0035】
ろ過部材40は、流出口2から流下する漏水を受ける部材である。ろ過部材40は、フレーム41と、フィルター材42と、を備える。
【0036】
フレーム41は、フィルター材42を半筒の形状に保持するための部材である。フレーム41は、例えば金属製の部材である。フレーム41は、例えば図2に示すように、棒材を長方形状に形成した部材41Aと、棒材を取付部材30の筒と略同一径の半円の弧状に形成した部材41Bとを組み合わせることで構成される。フレーム41は、例えば部材41Aに、部材41Aの長辺方向に複数の部材41Bをそれぞれ所定の間隔だけ離して取り付けることで構成される。複数の部材41Bは、部材41Aの長辺の両端と、その間に取り付けられる。さらに、複数の部材41Bは、それぞれの弧の端部を部材41Aの異なる長辺に接続し、部材41Aに対して垂直となるように取り付けられる。そのようにして構成されたフレーム41は、部材41Aの2つの短辺のうち一方を取付部材30の端部に接触させるように取り付けられる。そのため、取付部材30と、フレーム41とが連続している。また、フレーム41は、部材41Aの長辺が取付部材30の筒軸に沿って延伸し、部材41Bの軸心が、取付部材30の筒軸に沿って延伸するように構成されている。
【0037】
なお、フレーム41は、複数本の針金を折り曲げ加工することで上記長方形状の部材41A及び半円の弧状の部材41Bに相当する部材を作ることで構成されてもよい。あるいはフレーム41は、金属製の網を半筒状に曲げることにより構成されてもよい。また、フレーム41は、樹脂製や木製であってもよい。
【0038】
フィルター材42は、漏水から不純物を取り除く部材である。フィルター材42は、通水性を有する。フィルター材42は、例えば目の細かい網である。図3に示すように、フレーム41の形状に合わせて成形したフィルター材42は、フレーム41に対して接着剤で接着、ひも状の部材で支持、クリップで挟持することによって取り付けられる。そして、図4に示すように、フィルター材42は、フレーム41に沿って取付部材30との間に隙間なく取り付けられ、ろ過部材40の側面43を形成する。側面43は、取付部材30の筒軸と同軸あるいは平行軸となっている部材41Bに沿って形成されるため、取付部材30の筒軸と同軸あるいは平行軸の半筒である。また、側面43は、フィルター材42が取付部材30との間に隙間なくフレーム41に取り付けられているため、取付部材30の側面と連続している。なお、フィルター材42は、金属製の網や非水溶性の紙製フィルターであってもよい。
【0039】
このような器具20が流出口2に取り付けられることによって、漏水から不純物が取り除かれるため、貯水槽11に不純物が流れにくくなる。
【0040】
<器具の使用方法>
器具20の使用方法について説明する。器具20は、配管1に取り付けられる。不純物を含んだ漏水は、流出口2を通じて配管1から器具20に流れ落ちる。そして漏水は、側面43に到達すると、フィルター材42を通過して、下方に配置された貯水槽11に流れる。一方、不純物は、フィルター材42を通過できず、漏水から取り除かれる。
【0041】
器具20を継続して使用すると、次第にフィルター材42の漏水が通過した部分に不純物が溜まってくる。このような場合であっても、フィルター材42の側面43は、部材41Bに沿って取付部材30の筒軸と同軸方向に一定の長さをもって形成されているため、流出口2から流れ落ちてくる漏水は、フィルター材42の不純物が溜まっていない部分を通過して貯水槽11に流れる。
【0042】
このため、本実施形態に係る器具20によれば、フィルター材42の一部が詰まってしまっても、漏水がフィルター材42の詰まっていない部分を通過するため、長期間にわたって漏水から不純物を除去することができる。これにより、器具20の交換の頻度が低く済む。
【0043】
また、貯水槽11に不純物が流入すると、不純物が付着、堆積して、異臭が発生したり、貯水槽11が腐食したりする。そのため、貯水槽11を定期的に清掃する必要がある。しかし、器具20を用いることによって、漏水に含まれる不純物を取り除くことができる。従って、不純物が貯水槽11に流入しにくくなり、貯水槽11が汚れ難くなる。そのため、貯水槽11を清掃する頻度を減らすことが可能となり、漏水測定装置10のメンテナンス負担が軽減される。
【0044】
また、切欠き部11Aに不純物が付着すると漏水量を正しく測定できなくなるため、切欠き部11Aも清掃する必要がある。しかし、器具20を用いることによって、貯水槽11に不純物が流入しにくくなり、その結果、切欠き部11Aに不純物が付着しにくくなるため、切欠き部11Aを清掃する頻度を減らすことができる。
【0045】
なお、ダムは都市部から離れたところに建設されることが多いため、作業員がダムに出向くためには時間がかかる。そのため、漏水測定装置10のメンテナンスの頻度を減らすことが望まれていた。前述の通り、器具20を用いることによって、漏水測定装置10のメンテナンスの頻度が減るため、作業者の負担が減少する。
【0046】
<効果>
上記実施形態において、ダムの堤体内への漏水量を測定するべく監査廊内に取り付けられる器具20は、通水性を有するフィルター材42を有し、堤体内へ漏出した漏水が流れる配管1の流出口2から漏水量を測定する漏水測定装置10の貯水槽11に流下する漏水を受けるろ過部材40と、漏水がフィルター材42に流下するようにろ過部材40を配管1に取り付ける取付部材30と、を備える。
【0047】
器具20が監査廊内の配管1に取り付けられると、漏水がフィルター材42に流下し、フィルター材42によって漏水から不純物が取り除かれる。すると、不純物が貯水槽11に流入しにくくなるため、不純物が貯水槽11に溜まりにくくなる。その結果、貯水槽11の清掃の頻度を減らすことが可能となり、監査廊内の漏水量測定業務の作業負担を軽減することができる。
【0048】
そして、貯水槽11の清掃の頻度を減らすことが可能となったことで、作業員がダムに出向く回数も減らすことが可能となる。そのため、監査廊内の漏水量測定業務の作業負担を軽減することができる。
【0049】
さらに、不純物が器具20によって取り除かれ、不純物が貯水槽11に流入しにくくなるため、漏水測定装置10のメンテナンス作業は、主に器具20に対して行うこととなる。ここで、器具20のメンテナンスは、フィルター材42のみを交換あるいは清掃するか、器具20全体を交換あるいは清掃すればよいため、貯水槽11を清掃する場合に比べ、容易である。そのため、監査廊内の漏水量測定業務の作業負担を軽減することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る器具20は、流出口2を水平より下方に向けるように延伸する配管1の外径に対応する内径を有する筒の形状を有し、流出口2を筒内に内挿することにより配管1に取り付けられる取付部材30と、取付部材30の筒の側面と連続する側面43を有し、取付部材30の筒軸に沿った筒軸を有する半筒の形状であり、半筒の側面43がフィルター材42により構成されるろ過部材40と、を備えている。
【0051】
このような構成の取付部材30を用いることにより、器具20を、配管1に容易に取り付けることができる。つまり、器具20の取り付け作業が容易となり、作業時間が短縮される。そのため、監査廊内の漏水量測定業務の作業負担をさらに軽減することができる。
【0052】
また、本実施形態において、ろ過部材40は取付部材30の筒の側面と連続する側面43を有し、取付部材30の筒軸に沿った筒軸を有する半筒の形状であり、側面43がフィルター材42により構成されていることによって、筒軸に沿ってフィルター材42が延びている。このような構成によれば、フィルター材42の面積が増加するため、フィルター材42による不純物を除去する効果は、長期間維持される。つまり、器具20は、長期間使用することができるため、フィルター材42又は器具20の交換の頻度が低くなる。そのため、監査廊内の漏水量測定業務の作業負担をさらに軽減することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る器具20は、ろ過部材40が、筒軸と平行な方向の長さが、筒軸と直交する方向の長さよりも長い。
【0054】
流出口2から流れる漏水が筒軸と平行な方向に流れ落ちるため、フィルター材42は、筒軸と平行な方向に詰まりやすい。一方、本実施形態のろ過部材40は、筒軸と平行な方向にフィルター材42を長く配置している。その結果、漏水は流れの向きを変化させずにフィルター材42の詰まった部分を乗り越えて、フィルター材42が詰まっていない部分へと到達しやすい。そのため、漏水がろ過部材40の内側に溜まったり、ろ過部材40から溢れる可能性を低減できる。
【0055】
<変形例>
以下に説明する各変更点を組み合わせて適用してもよい。
【0056】
(1)変形例1
ろ過部材40は、図5に示すように、取付部材30に連続する一端とは反対側の他端において、半筒の側面43と角度をなす壁面44を有してもよい。
【0057】
壁面44は、フレーム41の取付部材30に連続する一端とは反対側の他端において、長方形状の部材41Aの短辺部分と半円の弧状の部材41Bとによって囲まれる面に形成される。そして、その面を覆うようにフィルター材42を部材41A,41Bに対して取り付けることで、壁面44は形成される。なお、図5において、部材41Bが部材41Aに対して垂直に取り付けられている。つまり、壁面44は、側面43に対して垂直である。この場合、側面43と壁面44とがなす角度は、直角である。
【0058】
また、側面43と壁面44とがなす角度は、直角以外であってもよい。例えば、側面43と壁面44とがなす角度が30度の場合、ろ過部材40を部材41Aの短辺が延びる方向から視て、壁面44の下端が取付部材30の側に30度傾く。この場合、壁面44は、部材41Aの短辺の両端に楕円の弧状の部材を30度傾けて取り付け、部材41Aの短辺と、楕円の弧状の部材とによって囲まれる面に形成される。そして、その面を覆うようにフィルター材42を部材41Aと楕円の弧状の部材に取り付けることで壁面44は形成される。なお、壁面44は、側面43に対して隙間なく設けられることが好ましい。
【0059】
このように、ろ過部材40が、取付部材30に連続する一端とは反対側の他端において、半筒の側面43と角度をなす壁面44を有し、壁面44がフィルター材42によって構成されることによって、フィルター材42の面積が増加するため、フィルター材42による不純物を除去する効果は、さらに長期間維持される。つまり器具20は、さらに長期間使用することができるため、フィルター材42又は器具20の交換の頻度が低い。そのため、監査廊内の漏水量測定業務の作業負担をさらに軽減することができる。
【0060】
また、側面43に対して壁面44を隙間なく設けることによって、漏水は、側面43又は壁面44を通過する。そのため、漏水から不純物をより効果的に除去することができる。
【0061】
(2)変形例2
ろ過部材40は、取付部材30の筒の側面と連続する側面43と、取付部材30に連続する一端とは反対側の他端において、側面43と角度をなす壁面44とを有し、取付部材30の筒軸に沿った筒軸を有する筒の形状であってもよい。
【0062】
例えば、ろ過部材40は、図6に示すように半筒であって、取付部材30の筒の側面と連続する半筒の側面43と、半筒の側面43と角度をなす壁面44と、側面43の上側の開口部を塞ぐ上面45とを有する。
【0063】
この場合、半筒型を形成するフレーム41は、実施形態と同一の形状に構成される。そして、フレーム41は、部材41Aの2つの短辺のうち一方を取付部材30の端部に接触させ、部材41Aの長辺が取付部材30の筒軸に沿って延伸するように取付部材30に取り付けられる。
【0064】
あるいは、ろ過部材40は、筒状であって、取付部材30の筒の側面と連続する筒の側面43と、取付部材30に連続する一端とは反対側の他端において側面43の開口部を塞ぐ壁面44とを有してもよい。
【0065】
この場合、筒型を形成するフレーム41は、棒材と、棒材を取付部材30の筒と略同一径の円形に形成した円形部材とを組み合わせて構成される。はじめに、複数の円形部材がそれぞれの円の中心が同一直線上となるように平行に配置され、それぞれ所定の間隔だけ離される。次に、複数の棒材が複数の円形部材をつなぐように複数の円形部材に取り付けられる。この時、棒材は、複数の円形部材の中心を通る直線と平行となるように円形部材に取り付けられる。また、棒材は、その両端に円形部材が接続するように複数の円形部材に取り付けられる。このようにしてフレーム41は、筒状に形成される。そして、フレーム41は、筒の両端部を構成する円形部材の一方を取付部材30の端部に接触させて、取付部材30に取り付けられる。そのため、取付部材30と、フレーム41とが連続している。また、フレーム41は、棒材が取付部材30の筒軸に沿って延伸し、円形部材の軸心が、取付部材30の筒軸に沿って延伸するように構成されている。
【0066】
そして、フィルター材42が、半筒型を形成するフレーム41あるいは筒型を形成するフレーム41に対してその全周を覆うように取り付けられる。フィルター材42は、半筒型を形成するフレーム41に取り付けられることで、側面43と、壁面44と、上面45とを形成する。あるいは、筒型を形成するフレーム41に取り付けられることで、筒の側面43と、壁面44とを形成する。
【0067】
このように、ろ過部材40の全体がフィルター材42で構成されることによって、器具20に流れ落ちる漏水は、フィルター材42によって形成される側面43、壁面44、上面45のいずれかを通過する。そのため、フィルター材42の全体が一度に詰まりにくく、漏水が器具20からあふれにくい。
【0068】
(3)変形例3
器具20は、フィルター材42の目詰まりを検出するセンサー(不図示)を有していてもよい。例えば、センサーは、側面43の取付部材30と連続する端部とは反対側の端部から所定距離だけ取付部材30側に離れた位置に設置される。センサーは、通信機13と通信可能に接続されている。センサーは、フィルター材42の目詰まりを検出すると、通信機13に目詰まり信号を送信する。そして通信機13は、目詰まり信号を受信すると、目詰まり信号を監査廊外部のコンピュータに送信する。
【0069】
このように、器具20が、フィルター材42の目詰まりを検出するセンサーを有することによって、フィルター材42が完全に目詰まりする前に、器具20のメンテナンス時期を監査廊外部の作業者に知らせることができる。それゆえ作業者は、適切なタイミングで器具20をメンテナンスすることができる。
【0070】
(4)変形例4
側面43は、その一部に凹凸部(不図示)を有していてもよい。例えば、凹凸部を有する側面43は、筒の内側に向けて突出し、筒の軸方向に延びる凸部を有する。この凸部は、次のように形成される。まず、半筒の軸方向長さよりも長辺が短い矩形状のフレームを用意する。次に、本実施形態のろ過部材40の半筒の内側において、矩形状のフレームをフレームの長辺と筒軸とが平行となるように部材41Bに取り付ける。そして、取り付けた矩形状のフレームを覆うようにフィルター材42を取り付ける。すると、矩形状のフレームが半筒の内側に凸状に取り付けられているため、矩形状のフレームに取り付けたフィルター材42が側面43の内側に凸部を形成する。
【0071】
このように、側面43が凹凸部を有することによって、フィルター材42の面積が増加するため、フィルター材42による不純物除去効果は、さらに長期間維持される。つまり器具20は、さらに長期間使用することができるため、フィルター材42又は器具20の交換の頻度を低くすることができる。そのため、監査廊内の漏水量測定業務の作業負担をさらに軽減することができる。
【0072】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0073】
本実施形態では、漏水測定装置10が貯水槽11と測定器12とを備え、貯水槽11に溜められた漏水の水位を測定器12が測定することによって、漏水の量を測定する場合について説明したが、別の方法で漏水の量を測定してもよい。
【0074】
例えば、漏水測定装置10は、測定器12の代わりに切欠き部11Aに沿って鉛直方向に設けられた目盛りと、切欠き部11A及び目盛りを撮影するカメラ(不図示)とを備える。カメラは、切欠き部11Aが設けられている側板の正面に、その側板から所定距離だけ離れた位置に設けられる。カメラは、通信機13と通信可能に接続されている。カメラは、目盛りと、切欠き部11Aから流出する漏水の水面位置を撮影し、撮影データを通信機13に送信する。そして、通信機13は、カメラから撮影データを受信し、監査廊外部のコンピュータに送信する。ここで、あらかじめ、目盛りに対する漏水の水面位置と漏水の量との関係を測定しておくことによって、目盛りに対する漏水の水面位置から漏水の量を測定することができる。
【0075】
あるいは、漏水測定装置10は、測定器12の代わりに水位計(不図示)を備えるように構成されてもよい。水位計は、測定器12の代わりに貯水槽11に溜められた漏水の水位を測定する。水位計は、例えば、フロート式、ガイドロープ式、静電容量式、圧力式等が挙げられる。水位計は、通信機13と通信可能に接続されており、水位計が測定した水位データを通信機13に送信する。そして、通信機13は水位計から水位データを受信し、監査廊外部のコンピュータに送信する。なお貯水槽11の水位から漏水の量を測定する方法は、本実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0076】
1…配管
2…流出口
10…漏水測定装置
11…貯水槽
20…器具
30…取付部材
40…ろ過部材
42…フィルター材(フィルター)
43…側面
44…壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6