(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】回転電機用のロータの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20241203BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H02K15/02 Z
H02K1/22 C
(21)【出願番号】P 2021208351
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河島 孝明
(72)【発明者】
【氏名】安立 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】星野 彰教
(72)【発明者】
【氏名】西澤 弘輔
(72)【発明者】
【氏名】近藤 良彦
(72)【発明者】
【氏名】杉田 浩彰
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106797(JP,A)
【文献】特開平5-38101(JP,A)
【文献】特開平11-201343(JP,A)
【文献】実開昭51-114447(JP,U)
【文献】特開2014-18828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機用のロータの製造方法であって、
ロータコア及び中空のロータシャフトを含むワークを支持し、前記ロータコアの内径側に前記ロータシャフトが配置される状態を形成する配置工程と、
前記ロータシャフトの中空内部に配置可能であり、径方向内側に空洞部を有しかつ径方向に変位又は変形可能な作動部材を、前記ロータシャフトの内周面における成形加圧領域に前記作動部材が径方向に対向又は接触するように、前記ロータシャフトに対して位置付ける位置付け工程と、
前記配置工程及び前記位置付け工程の後に、駆動部材に対して軸方向の力を付与することで、前記駆動部材を前記作動部材の前記空洞部内において前記作動部材の被接触部に接触させつつ、前記作動部材
に対して径方向の力を付与する荷重付与工程と、を含む、製造方法。
【請求項2】
前記位置付け工程は、一の前記ワークに対して、前記ロータシャフトの内周面における軸方向の複数の前記成形加圧領域のそれぞれごとに前記作動部材が径方向に対向又は接触するように、複数回実行される、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記荷重付与工程は、一の前記ワークに対して、前記位置付け工程ごとに実行され、一の前記位置付け工程に対応して実行されるときと、他の一の前記位置付け工程に対応して実行されるときとで、異なる大きさの前記力を前記駆動部材に付与する、請求項
2に記載の製造方法。
【請求項4】
回転電機用のロータの製造装置であって、
ロータコア及び中空のロータシャフトを含むワークを支持し、前記ロータコアの内径側に前記ロータシャフトが配置される状態を形成するワーク支持部と、
前記ロータシャフトの中空内部に配置可能であり、径方向内側に空洞部を有し、径方向に変位又は変形可能な作動部材と、
前記作動部材の前記空洞部内において前記作動部材の被接触部に接触する駆動部材と、
前記ロータシャフトの内周面における成形加圧領域に前記作動部材が径方向に対向又は接触するように、前記ロータシャフトに対して前記作動部材を位置付ける位置付け手段と、
前記位置付け手段により位置付けられた前記作動部材の前記空洞部内に位置する前記駆動部材に対して軸方向の力を付与することで、前記駆動部材を前記被接触部に接触させつつ、前記作動部材
に対して径方向の力を付与する荷重付与部と、を含む、製造装置。
【請求項5】
前記被接触部は、径方向で前記成形加圧領域に対向する、請求項
4に記載の製造装置。
【請求項6】
前記位置付け手段は、前記ワークに対して上下動可能なベース部材を含み、
前記作動部材は、前記ベース部材に対して径方向に摺動可能であり、かつ、軸方向に対して傾斜する第1傾斜面を前記被接触部に有し、
前記駆動部材は、前記第1傾斜面に面接触する第2傾斜面を有する、請求項
4又は
5に記載の製造装置。
【請求項7】
前記作動部材は、周方向に分割された形態であり、各分割体が、前記第1傾斜面を形成する、請求項
6に記載の製造装置。
【請求項8】
前記ベース部材は、前記ワークに対して軸まわりに回転可能である、請求項
7に記載の製造装置。
【請求項9】
前記位置付け手段は、前記ロータシャフトの内周面における軸方向の複数の前記成形加圧領域のそれぞれごとに前記作動部材が径方向に対向又は接触するように、前記ロータシャフトに対して前記作動部材を位置付ける、請求項
4から
8のうちのいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項10】
前記荷重付与部は、複数の前記成形加圧領域のうちの、第1の成形加圧領域に前記作動部材が径方向に対向又は接触するときと、前記第1の成形加圧領域とは異なる第2の成形加圧領域に前記作動部材が径方向に対向又は接触するときとで、異なる大きさの前記力を前記駆動部材に付与する、請求項
4から
9のうちのいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項11】
前記作動部材及び前記駆動部材は、カム機構を形成し、かつ、それぞれ金属材料により形成される、請求項
4から
10のうちのいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項12】
上下方向に昇降可能なスライド及びボルスタを有するプレス機と、
前記スライドに固定される上型固定部を含む上型と、
前記ボルスタに固定される前記ワーク支持部を含み、前記上型に対して上下方向に対向する下型とを含み、
前記位置付け手段は、前記上型固定部を含み、
前記作動部材は、前記上型固定部に支持され、
前記駆動部材は、前記上型固定部に支持され、
前記荷重付与部は、前記ボルスタに備わるベッドノックアウトピンを含む、請求項
4から
11のうちのいずれか1項に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機用のロータの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空のロータシャフトの中空内部に挿入したウレタン製のマンドレルをダイスとパッドとで軸方向に圧縮することで、ロータシャフトをロータコアのシャフト孔に嵌合する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、ウレタン製のマンドレルを利用し、軸方向の両端からの圧縮力によりマンドレルの拡径量を制御する構成であるので、マンドレルの径方向の拡径量を軸方向の各位置で適切に制御することが難しい。このため、上記のような従来技術では、嵌合部全体(成形加圧領域全体)にわたってロータコアと中空のロータシャフトとの間の締め代を所望の締め代となるように制御することが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、成形加圧領域全体にわたってロータコアと中空のロータシャフトとの間の締め代を適切に制御可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、回転電機用のロータの製造装置であって、
ロータコア及び中空のロータシャフトを含むワークを支持し、前記ロータコアの内径側に前記ロータシャフトが配置される状態を形成する支持部と、
前記ロータシャフトの中空内部に配置可能であり、径方向内側に空洞部を有し、径方向に変位又は変形可能な作動部材と、
前記作動部材の前記空洞部内において前記作動部材の被接触部に接触する駆動部材と、
前記ロータシャフトの内周面における成形加圧領域に前記作動部材が径方向に対向又は接触するように、前記ロータシャフトに対して前記作動部材を位置付ける位置付け手段と、
前記位置付け手段により位置付けられた前記作動部材の前記空洞部内に位置する前記駆動部材に対して軸方向の力を付与することで、前記駆動部材を前記被接触部に接触させつつ、前記作動部材を径方向外側に変位又は変形させる荷重付与部と、を含む、製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、成形加圧領域全体にわたってロータコアと中空のロータシャフトとの間の締め代が適切に制御可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施例によるモータの断面構造を概略的に示す断面図である。
【
図2】ロータの製造装置を概略的に示す断面図である。
【
図3】下方から視た加圧成形機構の分解斜視図である。
【
図4】基準軸を通る面で切断した加圧成形機構の断面斜視図である。
【
図5】組み立て状態を下方から視た加圧成形機構の斜視図である。
【
図6】本製造方法の流れを示す概略フローチャートである。
【
図7】
図6に示すいくつかの工程における各状態を概略的に示す断面図である。
【
図8】
図6に示すいくつかの工程における各状態を概略的に示す断面図である。
【
図9】
図6に示すいくつかの工程における各状態を概略的に示す断面図である。
【
図10】
図6に示すいくつかの工程における各状態を概略的に示す断面図である。
【
図11】
図6に示すいくつかの工程における各状態を概略的に示す断面図である。
【
図12B】成形加圧工程におけるカムパンチの状態を上面視で示す説明図である。
【
図13】
図6に示すいくつかの工程における各状態を概略的に示す断面図である。
【
図14】
図6に示すいくつかの工程における各状態を概略的に示す断面図である。
【
図15】本実施例によるカムパンチに対する変形例の説明図である。
【
図16】カムパンチが基準軸まわりで回転する変形例の説明図である。
【
図17】本実施例による加圧成形機構に対する他の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
図1は、一実施例によるモータ1の断面構造を概略的に示す断面図である。
図1には、X方向とともに、X方向X1側とX方向X2側とが定義されている。
【0011】
図1には、モータ1の回転軸12が図示されている。以下のモータ1に関する説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、X方向に平行である。また、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
【0012】
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
【0013】
モータ1は、インナーロータ型であり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、ステータコア22の径方向外側がステータ支持部10に固定される。
【0014】
ケース2は、モータ1を収容する空間を形成する。ケース2は、ステータ支持部10を含む。ステータ支持部10は、ステータコア22の径方向外側の表面に結合される。ステータ支持部10は、冷却水が通る流路を有してもよいし、及び/又は、油路を有してもよい。ステータ支持部10は、2ピース以上の部材により形成されてもよい。
【0015】
ステータ21は、ステータコア22と、ステータコイル29とを含む。
【0016】
ステータコア22は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板により形成されるが、変形例では、ステータコア22は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。なお、ステータコア22は、周方向で分割される分割コアにより形成されてもよいし、周方向で分割されない形態であってもよい。
【0017】
ステータコア22には、径方向内側に突出する複数のティースが形成され、ステータコイル29が巻装される。
【0018】
ステータコイル29は、例えば、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルを含む。ステータコイル29は、ステータコア22のスロットに挿入されるスロット挿入部(図示せず)とともに、ステータコア22の軸方向両側から突出するコイルエンド29A、29Bを有する。
【0019】
ステータコイル29は、セグメントコイルの形態のコイル片(図示せず)をステータコア22に組み付けることでステータコア22に巻装されてもよい。なお、セグメントコイルとは、各相のコイルを、組み付けやすい単位(例えば2つのスロットに挿入される単位)で分割した形態である。コイル片は、例えば、断面略矩形の線状導体(平角線)を、絶縁被膜(図示せず)で被覆してなる。線状導体は、銅により形成されるが、変形例では、線状導体は、鉄のような他の導体材料により形成されてもよい。
【0020】
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34とを備える。ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータシャフト34は、ケース2にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。具体的には、ロータシャフト34は、X1側では内周面がベアリング14aにより支持され、X2側では外周面がベアリング14bにより支持されている。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
【0021】
なお、ロータシャフト34の内周面の形態は、上面視で、回転軸12に関して回転対称であってもよいし、回転軸12に関して回転対称でなくてもよい。例えば、ロータシャフト34の内周面は、上面視で、円形や楕円形の形態であってもよいし、あるいは、多角形であってよい。また、ロータシャフト34の内周面や外周面には、スプライン歯や溝部等が形成されてもよい。
【0022】
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板から形成される。ロータコア32の内部には、永久磁石321が挿入される。永久磁石321の数や配列等は任意である。変形例では、ロータコア32は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。
【0023】
ロータコア32の軸方向の両側には、エンドプレート35A、35Bが取り付けられてよい。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32を支持する支持機能の他、ロータ30のアンバランスの調整機能(切削等されることでアンバランスを無くす機能)を有してよい。
【0024】
ロータシャフト34は、
図1に示すように、中空部34Aを有する。中空部34Aは、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。中空部34Aは、油路として機能してもよい。例えば、中空部34Aには、
図1にて矢印R1で示すように、軸方向の一端側から油が供給され、ロータシャフト34の径方向内側の表面を伝って油が流れることで、ロータコア32を径方向内側から冷却できる。また、ロータシャフト34の径方向内側の表面を伝う油は、ロータシャフト34の両端部に形成される油穴348、349を通って径方向外側へと噴出され(矢印R5、R6)、コイルエンド29A、29Bの冷却に供されてもよい。
【0025】
ロータシャフト34は、ロータコア32と結合する軸方向範囲を結合部としたとき、結合部の一方側が縮径する形態を有してもよい。具体的には、ロータシャフト34は、
図1に示すように、X2側の端部が縮径する一方、X1側の端部は縮径していない形態である。従って、中空部34Aは、X2側の端部で内径が小さくなる。具体的には、ロータシャフト34は、X1側の端面からX2側の端部に至るまで第1内径r1を有し、かつ、X2側の端部において第2内径r2を有する。第2内径r2は、第1内径r1よりも有意に小さい。
【0026】
なお、
図1に示す例では、第1内径r1の値は、略一定であり、第1内径r1の値が変化する段差部として、ベアリング14aのスラスト荷重の受け用の第1段差部346等が形成されている。なお、第1段差部346は、第1内径r1から第2内径r2への変化に関連した径方向の第2段差部347よりも段差(径方向の差)が有意に小さくてよい。
【0027】
このようなロータシャフト34によれば、ロータコア32と結合する軸方向範囲での比較的大きい第1内径r1を有するので、ロータシャフト34の内周面を伝う油を介して永久磁石321等を効率的に冷却できる。
【0028】
なお、
図1では、特定の構造のモータ1が示されるが、モータ1の構造は、ロータコア32の軸孔329(シャフト孔)内に中空のロータシャフト34が嵌合されていれば、他の構成は実質的に任意であり、また、ロータシャフト34の中空部34Aの詳細な構成も任意である。また、
図1では、油による特定の冷却方法が開示されているが、油によるモータ1の冷却方法は任意である。従って、例えば、中空部34A内に挿入される油導入管が設けられてもよいし、ステータ支持部10内に形成されてもよい油路を介して径方向外側からコイルエンド29A、29Bに向けて油が滴下されてもよい。
【0029】
次に、
図2以降を参照して、上述した実施例のモータ1におけるロータ30の製造装置200及び製造方法の例について説明する。
図2等には、回転軸12に平行なZ方向とともに、Z方向に沿ったZ1側とZ2側が定義されている。以下では、説明上、一例として、製造工程中において、Z方向が上下方向に対応し、Z2側が下側であるとする。また、
図2等には、製造装置200における基準軸Iが示される。基準軸Iは、ワークの芯出しの際の中心軸を構成し、上述した回転軸12に対応する。また、以下では、軸方向等の用語は、基準軸Iを基準とする。従って、例えば径方向とは、基準軸Iを中心とした回転体の径方向に対応する。
【0030】
図2は、ロータ30の製造装置200を概略的に示す断面図である。
図3から
図5は、カムパンチベース256、カムドライバ258及びカムパンチ260を含む加圧成形機構の説明図であり、
図3は、下方から視た加圧成形機構の分解斜視図であり、
図4は、基準軸Iを通る面で切断した加圧成形機構の断面斜視図であり、
図5は、組み立て状態を下方から視た加圧成形機構25の斜視図である。なお、
図3では、カムパンチ260の一部(4つのうちの2つ)の図示が省略されている。
【0031】
製造装置200は、プレス機210と、金型240とを含む。
【0032】
プレス機210は、通常的な構成を有してよく、この場合、既存のプレス機を利用して製造装置200を形成できる。プレス機210は、下側のボルスタ(ベッド)212に対して上側のスライド214が上下方向にスライド可能(摺動可能)である。なお、スライド214は、上下方向の位置の制御が可能である。ボルスタ212には、上下方向に移動可能なベッドノックアウトピン2122が設けられる。例えば、ベッドノックアウトピン2122は、下型からワークを持ち上げる機能(下型から離す機能)を有し、ボルスタ212に内蔵されてよい。ベッドノックアウトピン2122は、通常のプレス機に備わるベッドノックアウトピンと同様であってよい。ベッドノックアウトピン2122は、上下方向の位置及び/又は荷重(ベッドノックアウトピン2122を介して伝達する上下方向の荷重)が制御可能である。
【0033】
金型240は、上型250と、下型270とを含む。
【0034】
上型250は、上型固定部252と、カムパンチベース256と、カムドライバ258と、カムパンチ260と、を含む。
【0035】
上型固定部252は、プレス機210のスライド214に固定される。上型固定部252は、スライド214と一体に上下方向に移動(昇降)する。
【0036】
カムパンチベース256は、上型固定部252に固定される。従って、カムパンチベース256は、上型固定部252及びスライド214と一体に上下方向に移動(昇降)する。なお、カムパンチベース256は、上型固定部252の一部又は全部と一体に形成されてもよい。
【0037】
カムパンチベース256は、
図3から
図5に示すように、円柱状の形態で上下方向に延在し、下端面に、カムドライバ258を支持するスライド支持部2562を有する。スライド支持部2562は、
図3及び
図4に示すように、径方向に視て、下向きのT字状の断面形状を有し、等断面で径方向に延在する。
【0038】
また、カムパンチベース256は、
図4に示すように、基準軸Iを軸心とする中空内部により形成されるスライド孔2564を有し、スライド孔2564は、等断面(例えば上面視で矩形状の等断面)で上下方向に延在する。
【0039】
カムドライバ258は、カムパンチ260を駆動する駆動部材として機能する。カムパンチベース256に対して上下方向に移動可能となる態様で、カムパンチベース256に支持される。
【0040】
カムドライバ258は、上側の作動位置と、下側の非作動位置との間で、カムパンチベース256に対して上下方向に移動可能である。カムドライバ258が作動位置及び非作動位置の間で移動すると、それに連動して、カムパンチ260が、径方向外側の作動位置と径方向内側の非作動位置との間で変位する。
【0041】
カムドライバ258は、後述するドライバ駆動ピン274により上側の作動位置へと押し上げられる。なお、カムドライバ258は、後述するドライバ駆動ピン274から軸方向で離間している状態では、重力の影響により、下側の非作動位置に位置する。なお、カムパンチベース256に対するカムドライバ258の変位であって、下側の非作動位置よりも下方への変位は、ストッパ2581(
図2参照、
図4等には図示せず)により規定されてよい。なお、上側の作動位置は、後述するように、一定であってもよいし、可変とされてもよい。
【0042】
カムドライバ258は、被支持部2582と、駆動部2584とを含む。
【0043】
被支持部2582は、カムパンチベース256のスライド孔2564に挿通される。被支持部2582は、スライド孔2564に対応した等断面(例えば上面視で矩形状の等断面)で上下方向に延在する。
【0044】
駆動部2584は、被支持部2582の下端から連続する態様で、上下方向に延在する。駆動部2584は、カムパンチ260の径方向内側に配置される。具体的には、駆動部2584は、カムパンチ260の径方向内側の空洞部262(
図3参照)に配置される。
【0045】
駆動部2584は、下方に向かうほど断面積(水平面で切断した際の断面積)が大きくなる形態である。
図3から
図5に示す例では、駆動部2584は、矩形状の断面形状(例えば正方形の断面形状)を有する。ただし、変形例では、駆動部2584は、後述するカムパンチ260の分割態様(及びそれに関連する径方向内側の空洞部262の断面形状)に応じて、多角形のような他の断面形状を有してもよい。
【0046】
駆動部2584は、外周面(側面)に、上下方向に対して傾斜する第2傾斜面25842を有する。第2傾斜面25842は、平面状の形態であり、駆動部2584の4方の側面(外周面)を形成する。駆動部2584の4方の側面における各第2傾斜面25842の傾斜角度(例えば基準軸Iに対する傾斜角度であり、後出の
図12Aの角度θの補角参照)は、互いに同じであってよい。
【0047】
駆動部2584は、第2傾斜面25842が後述するカムパンチ260の第1傾斜面2601に面接触する態様で、カムパンチ260の径方向内側の空洞部262に配置される。この場合、駆動部2584とカムパンチ260との間の面接触は、カムドライバ258が、上側の作動位置と下側の非作動位置との間の任意の位置にあるときにも維持されてよい。
【0048】
カムパンチ260は、カムパンチベース256のスライド支持部2562に支持される。カムパンチ260は、カムパンチベース256に対して径方向に変位可能となる態様で、カムパンチベース256に支持される。
【0049】
カムパンチ260は、径方向内側の非作動位置と、径方向外側の作動位置との間で、径方向に変位可能である。カムパンチ260は、その非作動位置にあるとき、ロータシャフト34の中空部34A内に位置可能な形態を有する。径方向内側の非作動位置にあるときのカムパンチ260は、上面視で、ロータシャフト34の内周面の形態に応じた外形(例えば全体として略円形又は楕円形の外形)を有する。この際、径方向内側の非作動位置にあるときのカムパンチ260は、上面視で、ロータシャフト34の内周面の形状を径方向内側にオフセットした外形を有してよい。
【0050】
カムパンチ260は、常態では径方向内側の非作動位置に位置する。カムパンチ260のリング溝261には、リング状の弾性部材である弾性リング(図示せず)が設けられてもよい。このようにして、カムパンチ260は、弾性リング(図示せず)のような付勢手段により径方向内側の非作動位置へと付勢されてよい。
【0051】
カムパンチ260は、カムドライバ258の軸方向の変位に連動して、径方向の位置が変化する。具体的には、カムパンチ260は、カムドライバ258が下側の非作動位置から上側の作動位置へと移動すると、それに連動して、径方向内側の非作動位置から径方向外側の作動位置へと移動する。また、カムパンチ260は、カムドライバ258が上側の作動位置から下側の非作動位置へと移動すると、それに連動して、径方向外側の作動位置から径方向内側の非作動位置へと移動する。径方向外側の作動位置にあるときのカムパンチ260は、上面視で、ロータシャフト34の内周面の形態に応じた外形(例えば全体として略円形又は楕円形の外形)を有する。この際、径方向外側の作動位置にあるときのカムパンチ260は、上面視で、ロータシャフト34の内周面の形状を径方向外側にオフセットした外形(後出の
図12Bの一点鎖線参照)を有してよい。
【0052】
カムパンチ260は、径方向内側に空洞部262を有する。空洞部262は、カムパンチベース256のスライド孔2564から連続し、基準軸Iを軸心として軸方向に延在する。なお、空洞部262は、上面視で、カムドライバ258の駆動部2584に対応した形態を有する。なお、空洞部262は、基準軸Iに関して回転対称の断面形状(水平面で切断した際の断面に係る形状)を有してよい。
【0053】
カムパンチ260は、空洞部262を形成する内周面に、上下方向に対して傾斜する第1傾斜面2601を有する。第1傾斜面2601は、カムドライバ258の駆動部2584の第2傾斜面25842が接触する非接触部を形成する。第1傾斜面2601は、
図12Aを参照して後述するように、カムパンチ260が駆動部2584から受ける力の一部を、径方向の力に変換する機能を有する。
【0054】
カムパンチ260は、ロータシャフト34の内周面に径方向の力を付与することで、ロータシャフト34を塑性変形を伴う態様で拡径させる機能を有する。かかる機能を適切に実現できるように、カムパンチ260は、好ましくは、高い剛性/硬度を有するように構成される。例えば、カムパンチ260は、金属材料から形成され、実質的に剛体(後述する成形加圧工程において実質的に変形しない剛体)であってよい。金属材料から形成される場合、カムパンチ260は、ウレタンに比べると摩耗等がなく、有意に高い耐久性を有することができる。
【0055】
図3から
図5に示す例では、一例として、カムパンチ260は、周方向に4分割された形態であり、各分割体がカムスライダ2602を形成する。なお、変形例では、カムパンチ260は、5分割以上で分割されてもよいし(
図15参照)、3分割以下で分割されてもよい。
【0056】
各カムスライダ2602は、カムパンチベース256のスライド支持部2562に対して径方向に沿って径方向外側にスライド可能となる態様で、スライド支持部2562に支持される。
図3及び
図4に示す例では、各カムスライダ2602は、スライド支持部2562と係合する係合溝2604を有し、係合溝2604は、径方向に視て、スライド支持部2562に断面形状に対応した下向きのT字状の断面形状を有し、等断面で径方向に延在する。なお、
図3から
図5に示す例では、各カムスライダ2602は、4分割に係る分割体であるので、それぞれのスライド方向は、直交する関係であってよい。
【0057】
各カムスライダ2602は、駆動部2584の4方の側面における各第2傾斜面25842に、一対一で対応する関係で、上述した第1傾斜面2601を形成する。また、各カムスライダ2602の第1傾斜面2601は、全体として、空洞部262の径方向外側の境界面を形成する。各カムスライダ2602の第1傾斜面2601の傾斜角度(例えば基準軸Iに対する傾斜角度であり、後出の
図12Aの角度θの補角参照)は互いに同じであってよい。
【0058】
下型270は、ワーク支持部272と、ドライバ駆動ピン274とを含む。
【0059】
ワーク支持部272は、プレス機210のボルスタ212に固定される下型固定部である。ワーク支持部272は、ロータコア32及び中空のロータシャフト34を含むワークを下側から支持する。この際、ワーク支持部272は、ロータコア32の内径側にロータシャフト34が配置される状態を形成する(後出の
図8参照)。
【0060】
ドライバ駆動ピン274は、加圧成形機構の一構成要素として機能する。ドライバ駆動ピン274は、カムドライバ258の下端面(すなわち駆動部2584の下端面)に上下方向に当接可能な態様で、ワーク支持部272に対して上下方向に移動可能である。ドライバ駆動ピン274は、ベッドノックアウトピン2122と一体となる態様で、上下方向に移動可能とされてよい。
【0061】
ドライバ駆動ピン274は、カムドライバ258の下端面に上端面が当接した状態において、ベッドノックアウトピン2122からの軸方向の荷重に基づいて、カムドライバ258に対して軸方向の力を付与する。すなわち、ドライバ駆動ピン274は、ベッドノックアウトピン2122からの軸方向の荷重をカムドライバ258に伝達することで、カムドライバ258に対して軸方向の力(上向きの力)を付与する。
【0062】
このような製造装置200によれば、既存のプレス機210を利用して、以下で説明する製造方法によって、ロータ30を適切に製造できる。なお、変形例では、プレス機210に代えて、設備が利用されてもよい。製造装置200の動作例は、以下で説明する本製造方法に関連して説明する。
【0063】
図6は、本製造方法の流れを示す概略フローチャートである。
図7~
図11、
図13及び
図14は、
図6に示すいくつかの工程における製造装置200におけるロータシャフト34及びロータコア32の状態を概略的に示す断面図である。
図12Aは、
図11のQ1部の拡大図であり、成形加圧工程の荷重の伝達態様の説明図である。
図12Bは、成形加圧工程におけるカムパンチ260の状態を上面視で示す説明図である。
図12Bには、径方向内側の非作動位置にあるときのカムパンチ260が示されるとともに、径方向外側の作動位置にあるときのカムパンチ260の外形を表す一点鎖線が示されている。
【0064】
まず、本製造方法は、
図7に示すように、ワークとして、ロータシャフト34及びロータコア32のそれぞれ(互いに結合されていない状態)を、準備する準備工程(ステップS500)を含む。
【0065】
なお、この段階で、ロータシャフト34は、上述した第1段差部346や第2段差部347を有してもよい。また、この段階でのロータシャフト34は、製品状態で第1内径r1の内周面を形成する拡径部341に対応する部分は、内径r1’を有し、内径r1’は、製品状態の第1内径r1(
図1参照)よりもわずかに小さくてよい。また、この段階でのロータシャフト34は、外径r20がロータコア32の内径r10と同じ又は内径r10よりもわずかに小さくてよい。
【0066】
また、ロータシャフト34と同様に、この段階でのロータコア32は、外径が製品状態の外径よりもわずかに小さくてよい。これは、後述する締結工程においてロータコア32は、ロータシャフト34の拡径に伴って径方向外側にわずかに変形するためである。
【0067】
ついで、本製造方法は、
図8に示すように、ロータシャフト34及びロータコア32を、製造装置200に対してセットする工程(ステップS501)(配置工程の一例)を含む。この際、製造装置200の下型270のワーク支持部272は、ロータシャフト34及びロータコア32を同時に下側から支持し、ロータシャフト34及びロータコア32の下側への移動(変位)を拘束する。
図8には、ステップS501の終了時点の状態が模式的に示されている。
【0068】
なお、ロータシャフト34及びロータコア32は、必ずしも同時に製造装置200のワーク支持部272に対してセットされる必要はなく、順に製造装置200のワーク支持部272に対してセットされてもよい。
【0069】
ついで、本製造方法は、上型250の下降を開始し(ステップS502)、準備位置まで、上型250を下降させる工程(ステップS504)を含む。
図9には、ステップS504の終了時点の状態が模式的に示されている。
【0070】
ついで、本製造方法は、ロータシャフト34を拡径させることで、ロータコア32とロータシャフト34と一体化させる一体化工程(ステップS506)を含む。
【0071】
本実施例では、ロータシャフト34の内周面における軸方向の複数の成形対象領域のそれぞれごとに、一体化工程が実行される。この場合、軸方向の複数の成形対象領域のうちの、上から順に、一体化工程が実行されてよい。以下では、軸方向の複数の成形対象領域のうちの、今回の一体化工程で成形加圧する領域を、「今回の成形対象領域」と称する。
【0072】
一体化工程(ステップS506)は、まず、上型250を更に下降させ、ロータシャフト34の内周面における今回の成形対象領域にカムパンチ260が径方向に対向又は接触するように、ロータシャフト34に対してカムパンチ260を位置付ける成形位置決め工程(ステップS5061)(位置付け工程の一例)を含む。
図10には、軸方向の複数の成形対象領域のうちの、上から1つ目の成形対象領域が、今回の成形対象領域であるときの、ステップS5061の終了時点の状態が模式的に示されている。
【0073】
図10に示す例では、成形位置決め工程(ステップS5061)と並列的に、ドライバ駆動ピン274がカムドライバ258に当接する直前位置まで、ベッドノックアウトピン2122が上昇されている。ただし、変形例では、このようなベッドノックアウトピン2122の上昇は、成形位置決め工程(ステップS5061)の後であって、ステップS5062の前に実行されてもよいし、成形位置決め工程(ステップS5061)の前に実行されてもよい。
【0074】
一体化工程(ステップS506)は、ついで、ベッドノックアウトピン2122からの軸方向の荷重をドライバ駆動ピン274を介してカムドライバ258に対して軸方向の力に伝達することで、カムパンチ260を径方向に変位(スライド)させる成形加圧工程(ステップS5062)(荷重付与工程の一例)を含む。
図11には、成形加圧工程(ステップS5062)中の状態が模式的に示されている。
【0075】
成形加圧工程(ステップS5062)では、ドライバ駆動ピン274は、ベッドノックアウトピン2122からの軸方向の荷重に基づいて、ドライバ駆動ピン274がカムドライバ258を押し上げる。カムドライバ258が押し上げられると、
図12Aに示すように、カムドライバ258の第2傾斜面25842とカムパンチ260の第1傾斜面2601とが接触した状態で、カムパンチ260が径方向外側の作動位置に向けて径方向外側に押し出される。
【0076】
カムパンチ260が径方向外側の作動位置へと変位する過程では、ロータシャフト34の内周面における今回の成形対象領域に対してカムパンチ260が径方向に当接する。そして、カムパンチ260が径方向外側の作動位置へと更に変位すると、ロータシャフト34から反力(径方向内側に向かう反力)に応じて、カムドライバ258の第2傾斜面25842とカムパンチ260の第1傾斜面2601との間の当接面に対して垂直な力F3が発生する。この力F3は、
図12Aに示すように、上下方向の成分F1と、径方向外側に向かう径方向成分F2とに分けられ、その大きさは、ベッドノックアウトピン2122からの軸方向の荷重の大きさに依存する。なお、径方向成分F2の大きさは、F2=F3×sinθで表すことができる。この場合、角度θは、
図12Aに示すように、水平面に対する第1傾斜面2601(及び第2傾斜面25842)の傾斜角度に対応する。
【0077】
そして、ベッドノックアウトピン2122からの軸方向の荷重を更に増加させることで(すなわち径方向成分F2を増加させることで)、カムパンチ260を径方向外側の作動位置へと更に変位させると、ロータシャフト34の塑性変形を伴う態様でカムパンチ260が作動位置まで至る。すなわち、増加された径方向成分F2は、ロータシャフト34の内周面における今回の成形対象領域(
図12Aの領域P参照)に対して径方向外側に作用し、ロータシャフト34が塑性変形を伴い拡径させる。このようにして、ドライバ駆動ピン274が作動位置まで押し上げられることでカムパンチ260が作動位置まで至ると、ロータシャフト34が塑性変形を伴い拡径する。その結果、今回の成形対象領域に対応する軸方向範囲でロータシャフト34が拡径し、ロータコア32とロータシャフト34との間の一体化が実現される。
【0078】
ここで、成形加圧工程(ステップS5062)で実現されるロータコア32とロータシャフト34との間の径方向の締め代は、ロータシャフト34の内周面にカムパンチ260が当接してから作動位置に至るまでのカムパンチ260の径方向の変位量(スライド量)Δd(
図12B参照)に応じて決まる。このカムパンチ260の径方向の変位量(スライド量)Δdは、ロータシャフト34の内周面にカムパンチ260が当接したときのドライバ駆動ピン274の上下方向位置と、作動位置に至ったときのドライバ駆動ピン274の上下方向位置との間の差分によって決まる。このような差分に係る上下移動量は、ベッドノックアウトピン2122の上下方向の位置制御を介して、精度良く制御できる。このようにして、本実施例によれば、ベッドノックアウトピン2122の位置制御を介して、ロータコア32とロータシャフト34との間の径方向の締め代を精度良く制御できる。
【0079】
一体化工程(ステップS506)は、ついで、ベッドノックアウトピン2122及びドライバ駆動ピン274をわずかに下降させることで、カムドライバ258を非作動位置に戻す加圧解除工程を含む(ステップS5063)。これに伴い、カムパンチ260が作動位置から非作動位置へと径方向内側に戻される。なお、このようなカムパンチ260の径方向の移動を実現するためのリターン機構として、カムパンチ260のリング溝261(
図4参照)には、リング状の弾性体(図示せず)が巻回されてもよい。この場合、弾性リングは、4つのカムスライダ2602を同時に非作動位置に向けて径方向内側へと付勢できる。
【0080】
本実施例では、このようにしてカムパンチ260の径方向内側の空洞部262に位置するカムドライバ258の駆動部2584により、カムパンチ260に径方向の力(径方向成分F2参照)を付与できる。この際、ロータシャフト34の内周面における成形対象領域(
図12Aの領域P参照)は、径方向に視て、カムパンチ260とカムドライバ258との間の接触領域(すなわち第1傾斜面2601と第2傾斜面25842との間の接触領域)に重なる。これにより、カムパンチ260を介してロータシャフト34の内周面に付与される径方向の力を、成形対象領域の軸方向範囲全体にわたって均一化することが可能となる。このようにして、本実施例によれば、成形対象領域の軸方向範囲全体にわたってロータコア32とロータシャフト34との間の締め代を適切に制御して、所望の締め代を制御することが可能となる。
【0081】
本実施例では、一体化工程(ステップS506)は、軸方向に分割された各成形加圧領域に対して、一の成形加圧領域ごとに、繰り返し実行される(ステップS507)。例えば、
図11に示すような上側から1つ目の成形加圧領域に対して一体化工程(ステップS506)が終了すると、上側から2つ目の成形加圧領域に対して次の一体化工程(ステップS506)が実行される。具体的には、
図13に示すように、上側から2つ目の成形加圧領域に対して成形位置決め工程(ステップS5061)が実行され、次いで、
図14に示すように、上側から2つ目の成形加圧領域に対して成形加圧工程(ステップS5062)が実行される。
【0082】
本実施例では、このようにロータシャフト34の内周面を軸方向で複数の成形加圧領域に分割し、成形加圧領域ごとに一体化工程(ステップS506)を実行する。これにより、ロータシャフト34とロータコア32との間の嵌合領域の軸方向範囲が比較的長い場合でも、嵌合領域の軸方向範囲にわたって締め代を適切に制御して、所望の締め代を制御することが可能となる。
【0083】
ところで、同じ内圧であってもロータシャフト34の径方向外側への変形量は、ロータシャフト34の軸方向位置に応じて異なりうる。これは、ロータシャフト34の断面形状の相違等に起因して軸方向の各位置でのロータシャフト34の剛性が異なりうるためである。例えば、同じ内圧の条件下では、ロータシャフト34の径方向外側への変形量は、ロータシャフト34とロータコア32との間の嵌合領域の軸方向範囲の中央側の方が、軸方向範囲の第2段差部347側の端部よりも大きくなりやすい。このため、嵌合領域の軸方向範囲全体にわたって同じ内圧を付与する場合、嵌合領域の軸方向範囲にわたって締め代を均一化することが難しい。
【0084】
この点、本実施例では、ロータシャフト34の内周面を軸方向で複数の成形加圧領域に分割し、成形加圧領域ごとに一体化工程(ステップS506)を実行するので、成形加圧領域ごとに、ドライバ駆動ピン274を介してカムドライバ258からカムパンチ260に付与する力F3(
図12A参照)を変化させることができる。これにより、成形加圧領域ごとに、カムパンチ260を介して成形加圧領域に付与する径方向成分F2(
図12A参照)を変化させることが可能である。従って、本実施例によれば、嵌合領域の軸方向範囲にわたって締め代を精度良く制御(調整)することが可能となる。このため、本実施例によれば、成形加圧領域ごと嵌合領域の軸方向範囲全体にわたって締め代の均一化を図ることができる。他方、本実施例によれば、必要に応じて、嵌合領域の軸方向範囲の一部において締め代を、他の部分よりも大きくすることも可能である。
【0085】
また、本実施例では、成形加圧領域ごとに一体化工程(ステップS506)を実行するので、成形加圧領域ごとに、カムドライバ258の上側の作動位置(及びそれに伴いカムパンチ260の径方向外側の作動位置)を変化させることも可能である。例えば、一の成形加圧領域に対するカムドライバ258の上側の作動位置は、他の成形加圧領域に対するカムドライバ258の上側の作動位置よりも上側に設定されてもよい。この場合、一の成形加圧領域に対するカムパンチ260の径方向外側の作動位置は、他の成形加圧領域に対するカムパンチ260の径方向外側の作動位置よりも径方向外側に位置するので、その分だけ締め代を増加させることが可能である。
【0086】
なお、本実施例において、一体化工程(ステップS506)が上述したように個別に実行される複数の成形加圧領域は、軸方向で互いに対して重複する態様で設定されてもよい。例えば、上側から1つ目の成形加圧領域の軸方向上側の一部は、上側から1つ目の成形加圧領域の軸方向上側の一部と重複してもよい。また、複数の成形加圧領域は、ロータシャフト34の内周面における軸方向の一部範囲であって、ロータシャフト34とロータコア32との嵌合領域に対応する一部範囲(すなわち径方向に視てロータコア32に重なる範囲)を漏れなくカバーするように設定されるが、当該一部範囲を超える範囲にも設定されてもよい。例えば
図11及び
図12Aに示す例では、上側から1つ目の成形加圧領域は、ロータシャフト34とロータコア32との嵌合領域に対して、径方向に視て下側の一部だけが重なる。ただし、上側から1つ目の成形加圧領域は、ロータシャフト34とロータコア32との嵌合領域に対して、上側の境界が一致されてもよい。
【0087】
ところで、ロータシャフト34の中空部34Aにウレタン製の部材を導入し、ウレタン製の部材を膨張させてロータシャフト34を拡径することで、ロータシャフト34とロータコア32との間の締め代を確保する技術が知られている。このような技術では、ウレタン製の部材の摩耗(それに伴う低寿命化)が問題となりやすい。
【0088】
この点、本実施例によれば、カムパンチ260は、ウレタンとは異なり耐摩耗性が高い材料(例えば金属材料)により形成できるので、ウレタン製の部材を用いる場合に生じうる問題を回避できる。
【0089】
また、ロータシャフト34の中空部34Aに高圧流体を導入し、ロータシャフト34を拡径することで、ロータシャフト34とロータコア32との間の締め代を確保する技術(ハイドロフォーミング)が知られている。このような技術では、高圧流体をロータシャフト34の中空部34A内に封止するためのシール構造が複雑化する問題がある。
【0090】
この点、本実施例によれば、高圧流体を利用せずにロータシャフト34とロータコア32との間の締め代を確保できるので、高圧流体を利用する場合に生じうる問題(例えば、シール構造の複雑化)を回避できる。
【0091】
図6に戻って、一体化工程(ステップS506)が終了すると、本製造方法は、上死点まで上型250を上昇させる工程(ステップS508)を含む。
【0092】
次いで、本製造方法は、ロータシャフト34において油穴348、349に対応する孔を形成する噴出孔形成工程(ステップS509)を含む。なお、噴出孔形成工程は、ロータシャフト34を製造装置200から取り出してから機械加工等により実現されてよい。噴出孔形成工程(ステップS508)が終了すると、最終的なロータシャフト34が出来上がる。
【0093】
ついで、本製造方法は、その他の仕上げ工程(ステップS510)を含む。その他の仕上げ工程は、永久磁石321を固定する工程や、着磁を行う工程や、エンドプレート35A、35Bにより回転バランスを調整する工程等を含んでよい。
【0094】
このようにして、本製造方法によれば、プレス機210に固定される金型240を含む製造装置200により、ロータコア32とロータシャフト34とを一体化できる。また、本製造方法によれば、ロータシャフト34とロータコア32との間の嵌合領域の軸方向範囲全体にわたって所望の締め代を確保することが可能となる。
【0095】
次に、
図15以降を参照して、上述した実施例に対する各種変形例について説明する。
【0096】
図15は、上述した実施例によるカムパンチ260に対する変形例の説明図であり、本変形例によるカムパンチ260Aを、上面視で外形だけを示す図である。
【0097】
本変形例によるカムパンチ260Aは、周方向に8分割された形態であり、各分割体がカムスライダ2602Aを形成する。
【0098】
カムパンチ260Aは、上述した実施例によるカムパンチ260によりも周方向の分割数が多い分だけ、成形加圧領域における1つのカムスライダ2602Aの受け持つ周方向範囲が狭くなる。従って、周方向の分割数が多いほど、成形対象領域の周方向範囲全体にわたってロータシャフト34とロータコア32との間の締め代を均一化することが可能となる。ただし、周方向の分割数が多い分だけ、強度上不利となりえ、かかる背反を考慮して分割数が適合されてもよい。
【0099】
あるいは、上述した実施例によるカムパンチ260は、基準軸Iまわりに回転可能であってもよい。この場合、
図12B及び
図16に示すように、同じ成形加圧領域に対してカムパンチ260を基準軸Iまわりに回転させつつ一体化工程(ステップS506)を実行することで、
図15に示した変形例と同様の効果が得られる。すなわち、成形対象領域の周方向範囲全体にわたってロータシャフト34とロータコア32との間の締め代を均一化することが可能となる。
【0100】
この場合、カムパンチ260は、カムパンチベース256が基準軸Iまわりに回転可能に構成されることで、基準軸Iまわりに回転可能に構成されてよい。カムパンチベース256は、例えばインデックステーブルのような回転テーブルを介して、上型固定部252に回転可能に支持されてよい。
【0101】
なお、このようにカムパンチ260を基準軸Iまわりに回転可能とし、同じ成形加圧領域に対してカムパンチ260を基準軸Iまわりに回転させつつ一体化工程(ステップS506)を実行する構成は、ロータシャフト34の内周面の形態(上面視の形態)が円形である場合に好適である。
【0102】
図17は、上述した実施例によるカムパンチ260等に代替可能な加圧成形機構17を説明する斜視図である。
【0103】
本変形例による加圧成形機構17は、コレットパンチを利用した機構であり、作動部材としてコレット170と、第1駆動部材171と、第2駆動部材172とを含む。
【0104】
コレット170は、上述した実施例によるカムパンチ260に代えて、同様の機能を果たす作動部材であり、径方向に弾性変形可能である。コレット170は、内周側に空洞部1708を形成する円筒状の形態である。コレット170は、径方向への弾性変形が容易となるように、上下方向に沿った切れ目1701、1702を、周方向に交互に等間隔で有してよい。この場合、切れ目1701は、上側端部から下側の途中まで延在し、切れ目1702は、下側端部から上側の途中まで延在する。
【0105】
コレット170は、内周面における下端側にテーパ面1704を有するとともに、内周面における上端側にテーパ面(
図17では可視でない)を有する。下端側のテーパ面1704は、基準軸Iに対して傾斜しつつ、周方向全体にわたって形成される。テーパ面1704は、上側に向かうほど細くなる態様(断面が円形である場合は、内径が小さくなる態様)で形成される。また、上端側のテーパ面は、テーパ面1704と上下対称の形態であってよい。
【0106】
第1駆動部材171は、上述した実施例によるカムパンチベース256に代えて、上型固定部252に固定されてよい。第1駆動部材171は、基準軸Iを中心として上下方向に延在し、下端側にテーパ面(傾斜面)1710を有する。第1駆動部材171は、コレット170の空洞部1708内においてコレット170の被接触部である上側のテーパ面(
図17では可視でない)にテーパ面1710が接触する。この際、テーパ面1710は、コレット170の上側のテーパ面(
図17では可視でない)と面接触する。
【0107】
第2駆動部材172は、上述した実施例によるドライバ駆動ピン274に代えて、ベッドノックアウトピン2122と一体となる態様で、上下方向に移動可能とされてよい。第2駆動部材172は、基準軸Iを中心として上下方向に延在し、下端側にテーパ面(傾斜面)1720を有する。第2駆動部材172は、コレット170の空洞部1708内においてコレット170の被接触部である下側のテーパ面1704にテーパ面1720が接触する。この際、テーパ面1720は、コレット170の下側のテーパ面1704と面接触する。なお、第2駆動部材172は、成形加圧工程中において、コレット170を支持してもよい。この場合、テーパ面1720の外径は、コレット170の可能な最大変形時の外径よりも大きく設定されてよい。
【0108】
本変形例による加圧成形機構17によっても、上述した実施例のカムパンチ260等による成形加圧工程を同様に実現できる。すなわち、第1駆動部材171が下降されると、第1駆動部材171は、コレット170の空洞部1708内においてコレット170の上側のテーパ面(
図17では可視でない)にテーパ面1710が接触する。そして、コレット170がロータシャフト34の内周面における成形加圧領域に径方向に対向する状態において、第1駆動部材171が作動位置へと更に下降されると、コレット170の上側が径方向外側の作動位置へと径方向外側に変形し、ロータシャフト34が塑性変形を伴い拡径する。同様に、第2駆動部材172は、コレット170の空洞部1708内においてコレット170の下側のテーパ面1704にテーパ面1720が接触する。そして、コレット170がロータシャフト34の内周面における成形加圧領域に径方向に対向する状態において、第2駆動部材172が作動位置へと更に上昇されると、コレット170の下側が径方向外側の作動位置へと径方向外側に変形し、ロータシャフト34が塑性変形を伴い拡径する。
【0109】
なお、本変形例による加圧成形機構17の場合も、一体化工程(
図6のステップS506参照)は、軸方向に分割された各成形加圧領域に対して、一の成形加圧領域ごとに、繰り返し実行されてよい。これにより、ロータシャフト34とロータコア32との間の嵌合領域の軸方向範囲が比較的長い場合でも、嵌合領域の軸方向範囲にわたって締め代を適切に制御して、所望の締め代を制御することが可能となる。
【0110】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施形態の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0111】
例えば、上述した実施例では、一体化工程(
図6のステップS506参照)において、ワークが固定された状態で、上型250等を昇降させることで、ワークの各成形加圧領域に対してカムパンチ260等を位置付けているが、ワーク側を移動させてもよい。また、上述した実施例では、ベッドノックアウトピン2122を利用して、ロータシャフト34を拡径させるための軸方向の荷重を付与しているが、上型250側から同様の軸方向の荷重を付与してもよい。
【0112】
また、上述した実施例では、一体化工程(
図6のステップS506参照)は、一の成形加圧領域ごとに1回実行されているが、一部又は全部の成形加圧領域に対して、2回以上実行されてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1・・・モータ、30・・・ロータ、32・・・ロータコア、34・・・ロータシャフト、200・・・製造装置、210・・・プレス機、214・・・スライド、212・・・ボルスタ、2122・・・ベッドノックアウトピン(荷重付与部)、250・・・上型、252・・・上型固定部(位置付け手段)、256・・・カムパンチベース(位置付け手段、ベース部材)、258・・・カムドライバ(駆動部材)、25842・・・第2傾斜面、260・・・カムパンチ(作動部材)、262・・・空洞部、2602、2602A・・・カムスライダ(分割体)、2601・・・第1傾斜面(被接触部)、270・・・下型、272・・・ワーク支持部(下型固定部)、170・・・コレット(作動部材)、1704・・・テーパ面(第1傾斜面)、1708・・・空洞部、171・・・第1駆動部材(駆動部材)、1710・・・テーパ面(第2傾斜面)、172・・・第2駆動部材(駆動部材)、1720・・・テーパ面(第2傾斜面)、P・・・領域(成形加圧領域)、I・・・基準軸(軸)