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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20241203BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241203BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20241203BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20241203BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20241203BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20241203BHJP
【FI】
E02F3/43 B
E02F9/20 N
E02F9/22 K
E02F9/26 A
G01B11/00 H
G06T7/70 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021509685
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014353
(87)【国際公開番号】W WO2020196895
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019061772
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019061773
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 亮太
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-107395(JP,A)
【文献】特開2017-096006(JP,A)
【文献】特開2016-089559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/20
E02F 9/22
E02F 9/26
G01B 11/00
G06T 7/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載され、自機の周囲の状況を表す情報を取得する取得装置と、
前記取得装置により取得される情報に基づき、自機の周囲の物体を検出し、検出した物体の位置情報を取得し、取得した、検出した物体の位置情報を含む、自機と検出した物体との位置関係表すマップ情報を生成し、前記マップ情報に基づき、自機の周囲の停止している又は固定されている物体を基準として認識し、前記上部旋回体から見た前記基準の物体の位置の変化に基づき、前記上部旋回体の旋回角度を算出することにより推定する制御装置と、を備える、
ショベル。
【請求項2】
前記制御装置は、推定した旋回角度に基づき、自機の周囲の所定の目標物に正対するように前記上部旋回体の旋回動作を制御する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記目標物に関する情報は、施工情報に含まれる、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御装置により認識される、自機の周囲の複数の物体の中から前記目標物に対応する物体を選択する操作入力を受け付ける入力装置を更に備える、
請求項2に記載のショベル。
【請求項5】
前記制御装置は、前記上部旋回体から見た前記基準の物体としての前記目標物の位置の変化に基づき、前記上部旋回体の旋回角度を推定しながら、前記上部旋回体を前記目標物に正対させる、
請求項4に記載のショベル。
【請求項6】
前記取得装置は、複数あり、
前記制御装置は、一の前記基準の物体に関する情報を取得可能な二以上の前記取得装置の出力情報に基づき、一の前記基準の物体の位置の変化を認識する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項7】
前記制御装置は、前記上部旋回体から見た複数の前記基準の物体の位置の変化に基づき、前記上部旋回体の旋回角度を推定する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項8】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられ、自機の周囲の状況を表す情報を取得する取得装置と、
前記取得装置により取得される情報に基づき、自機の周囲の物体を検出し、検出した物体の位置情報を取得し、作業現場での自機及びその周囲の物体の絶対位置に関する情報を用いることなく、取得した、検出した物体の位置情報を含む、自機とその周囲の体との位置関係表すマップ情報を生成し、前記マップ情報に基づき、自機の周囲の物体を認識し、認識した物体に対する自機の位置を把握する制御装置と、を備える、
ショベル。
【請求項9】
前記制御装置は、前記マップ情報に認識した物体に対する自機の位置を格納し保持する、
請求項8に記載のショベル。
【請求項10】
前記制御装置は、前記取得装置により取得される、自機の周囲の物体の位置の精度が現在の前記マップ情報よりも高い精度の物体に関する情報に基づき、前記マップ情報を更新する、
請求項9に記載のショベル。
【請求項11】
前記制御装置は、認識した物体に対する自機の位置に、施工情報に対応する施工目標の位置を関連付けた情報を生成し保持する、
請求項8に記載のショベル。
【請求項12】
前記制御装置は、認識した物体に対する自機の位置に、所定の作業対象の位置を関連付けた情報を生成し保持する、
請求項8に記載のショベル。
【請求項13】
前記取得装置は、自機の周囲の画像を取得する撮像装置と、前記撮像装置の撮像範囲の物体までの距離情報を取得する距離情報取得装置とを含み、
前記制御装置は、前記画像と前記距離情報とに基づき、自機の周囲の物体を認識し、認識した物体に対する自機の位置を把握する、
請求項8に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下部走行体を撮像する撮像装置を設け、当該撮像装置の撮像画像から下部走行体の所定の部位を検出することによって、下部走行体に対する上部旋回体の相対角度を求める技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-58272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ショベルが作業を行う場合、作業装置としてのアタッチメントとショベルの周囲の作業対象(例えば、土砂を積み込むダンプトラック等)を含む物体との位置関係が重要になる。そのため、ショベルは、下部走行体に対する上部旋回体の相対角度を求めても、アタッチメントとショベルの周囲の物体との位置関係、具体的には、ショベルの周囲の物体を基準とする上部旋回体の向き(即ち、上面視の角度)を認識できない可能性がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、ショベルにおいて、自機と自機の周囲の物体との位置関係を確実に把握可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載され、自機の周囲の状況を表す情報を取得する取得装置と、
前記取得装置により取得される情報に基づき、自機の周囲の物体を検出し、検出した物体の位置情報を取得し、取得した、検出した物体の位置情報を含む、機と検出た物体との位置関係表すマップ情報を生成し、前記マップ情報に基づき、自機の周囲の停止している又は固定されている物体を基準として認識し、前記上部旋回体から見た前記基準の物体の位置の変化に基づき、前記上部旋回体の旋回角度を算出することにより推定する制御装置と、を備える、
ショベルが提供される。
【0007】
また、本開示の他の実施形態では、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられ、自機の周囲の状況を表す情報を取得する取得装置と、
前記取得装置により取得される情報に基づき、自機の周囲の物体を検出し、検出した物体の位置情報を取得し、作業現場での自機及びその周囲の物体の絶対位置に関する情報を用いることなく、取得した、検出した物体の位置情報を含む、機とその周囲の体との位置関係表すマップ情報を生成し、前記マップ情報に基づき、自機の周囲の物体を認識し、認識した物体に対する自機の位置を把握する制御装置と、を備える、
ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、ショベルにおいて、自機と自機の周囲の物体との位置関係を確実に把握可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ショベルの側面図である。
図2】ショベルの構成の一例を概略的に示す図である。
図3】ショベルの油圧システムの構成の一例を概略的に示す図である。
図4A】ショベルの油圧システムにおける操作系の構成部分の一例を示す図である。
図4B】ショベルの油圧システムにおける操作系の構成部分の一例を示す図である。
図4C】ショベルの油圧システムにおける操作系の構成部分の一例を示す図である。
図5】ショベルの旋回角度の推定方法の第1例を説明する図である。
図6A】ショベルの旋回角度の推定方法の第1例を説明する図である。
図6B】ショベルの旋回角度の推定方法の第1例を説明する図である。
図7】ショベルの旋回角度の推定方法の第2例を説明する図である。
図8A】ショベルの旋回角度の推定方法の第2例を説明する図である。
図8B】ショベルの旋回角度の推定方法の第2例を説明する図である。
図9】ショベルの旋回角度の推定方法の第3例を説明する図である。
図10】ショベルの旋回角度の推定方法の第3例を説明する図である。
図11】ショベルの旋回角度の推定方法の第3例を説明する図である。
図12】ショベルの構成の他の例を概略的に示す図である。
図13】ショベルの位置の推定方法の第1例を説明する図である。
図14A】ショベルの位置の推定方法の第1例を説明する図である。
図14B】ショベルの位置の推定方法の第1例を説明する図である。
図15】ショベルの位置の推定方法の第2例を説明する図である。
図16】ショベルの位置の推定方法の第3例を説明する図である。
図17】ショベルの位置の推定方法の第4例を説明する図である。
図18】ショベルの位置の推定方法の第4例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
[ショベルの概要]
最初に、図1を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る掘削機としてのショベル100の側面図である。
【0013】
尚、図1では、ショベル100は、施工対象の上り傾斜面ESに面する水平面に位置すると共に、後述する目標施工面の一例である上り法面BS(つまり、上り傾斜面ESに対する施工後の法面形状)が併せて記載されている(図8A図8B参照)。
【0014】
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメント(作業機)を構成するブーム4、アーム5、及び、バケット6と、キャビン10とを備える。
【0015】
下部走行体1は、左右一対のクローラが走行油圧モータ1L,1Rでそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。つまり、駆動部としての一対の走行油圧モータ1L,1Rは、被駆動部としての下部走行体1(クローラ)を駆動する。
【0016】
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aで駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。つまり、駆動部としての旋回油圧モータ2Aは、被駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向き(換言すれば、アタッチメントの向き)を変化させることができる。
【0017】
尚、上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aの代わりに、電動機(以下、「旋回用電動機」)により電気駆動されてもよい。つまり、旋回用電動機は、旋回油圧モータ2Aと同様、被駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向きを変化させることができる。
【0018】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0019】
尚、バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメント、例えば、法面用バケット、浚渫用バケット、ブレーカ等が取り付けられてもよい。
【0020】
キャビン10は、オペレータが搭乗する運転室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0021】
[ショベルの構成の一例]
次に、図1に加えて、図2を参照して、本実施形態に係るショベル100の具体的な構成の一例、具体的には、後述のショベル100(自機)の旋回角度の推定方法に関する構成の具体例について説明する。
【0022】
図2は、本実施形態に係るショベル100の構成の一例を概略的に示す図である。
【0023】
尚、図2において、機械的動力ライン、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御ラインは、それぞれ、二重線、実線、破線、及び点線で示されている。以下、後述の図3図4図4A図4C)、図12についても同様である。
【0024】
本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の駆動部としての油圧アクチュエータを含む。また、本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17とを含む。
【0025】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。エンジン11は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、後述するコントローラ30による直接或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。
【0026】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(以下、「傾転角」)を調節する。レギュレータ13は、例えば、後述の如く、レギュレータ13L,13Rを含む。
【0027】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、上述の如く、コントローラ30による制御下で、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御される。メインポンプ14は、例えば、後述の如く、メインポンプ14L,14Rを含む。
【0028】
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ラインを介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26の操作状態に応じて、油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)に選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する制御弁171~176を含む。より具体的には、制御弁171は、走行油圧モータ1Lに対応し、制御弁172は、走行油圧モータ1Rに対応し、制御弁173は、旋回油圧モータ2Aに対応する。また、制御弁174は、バケットシリンダ9に対応し、制御弁175は、ブームシリンダ7に対応し、制御弁176は、アームシリンダ8に対応する。また、制御弁175は、例えば、後述の如く、制御弁175L,175Rを含み、制御弁176は、例えば、後述の如く、制御弁176L,176Rを含む。制御弁171~176の詳細は、後述する(図3参照)。
【0029】
本実施形態に係るショベル100の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26とを含む。
【0030】
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットラインを介して比例弁31等の各種油圧機器にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11により駆動される。
【0031】
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータがショベル100の被駆動部(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの被駆動部を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)の操作を行うための操作入力手段である。例えば、操作装置26は、電気式であり、その操作内容に対応する電気信号(以下、「操作信号」)を出力し、当該操作信号は、コントローラ30に入力される。そして、コントローラ30は、操作信号に対応する制御指令を比例弁31に出力することにより、比例弁31からコントロールバルブ17に、操作装置26の操作内容に応じたパイロット圧が供給される。これにより、コントロールバルブ17は、操作装置26に対するオペレータの操作内容に応じたショベル100の動作を実現させることができる。操作装置26は、例えば、アーム5(アームシリンダ8)を操作するレバー装置を含む。また、操作装置26は、例えば、ブーム4(ブームシリンダ7)、バケット6(バケットシリンダ9)、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)のそれぞれを操作するレバー装置26A~26Cを含む(図4A図4C参照)。また、操作装置26は、例えば、下部走行体1の左右一対のクローラ(走行油圧モータ1L,1R)のそれぞれを操作するレバー装置或いはペダル装置を含む。
【0032】
尚、操作装置26は、油圧パイロット式であってもよい。この場合、操作装置26には、パイロットラインを通じてパイロットポンプ15から元圧としてのパイロット圧が供給されると共に、その操作内容に応じたパイロット圧が二次側のパイロットラインに出力され、シャトル弁を介してコントロールバルブ17に供給される。また、コントロールバルブ17内の制御弁171~176は、コントローラ30からの指令により駆動される電磁ソレノイド式スプール弁であってもよいし、パイロットポンプ15と各制御弁171~176のパイロットポートとの間に、コントローラ30からの電気信号に応じて動作する電磁弁が配置されてもよい。これらの場合、コントローラ30は、電気式の操作装置26の操作量(例えば、レバー操作量)に対応する操作信号に応じて、これらの電磁弁を制御しパイロット圧を増減させることで、操作装置26に対する操作内容に合わせて、各制御弁171~176を動作させることができる。
【0033】
本実施形態に係るショベル100の制御系は、コントローラ30と、吐出圧センサ28と、比例弁31と、減圧用比例弁33と、表示装置40と、入力装置42と、音出力装置43と、記憶装置47とを含む。また、本実施形態に係るショベル100の制御系は、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、バケット角度センサS3と、機体傾斜センサS4と、撮像装置S6と、測位装置P1と、通信装置T1とを含む。
【0034】
コントローラ30(制御装置の一例)は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100に関する各種制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、或いは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種入出力に関するインタフェース装置等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。また、コントローラ30は、例えば、CPUと連動する、GPU(Graphics Processing Unit),ASIC(Application Specific Integrated Circuit),FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算回路を含んでもよい。コントローラ30は、例えば、補助記憶装置にインストールされる各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0035】
例えば、コントローラ30は、オペレータ等の所定操作により予め設定される運転モード等に基づき、目標回転数を設定し、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。
【0036】
また、例えば、コントローラ30は、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
【0037】
また、例えば、コントローラ30は、例えば、オペレータによる操作装置26を通じたショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能に関する制御を行う。また、コントローラ30は、例えば、オペレータによる操作装置26を通じたショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能に関する制御を行う。つまり、コントローラ30は、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する機能部として、マシンガイダンス部50を含む。
【0038】
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。例えば、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能(マシンガイダンス部50の機能)は、専用のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。
【0039】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。吐出圧センサ28により検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28は、例えば、後述の如く、吐出圧センサ28L,28Rを含む。
【0040】
比例弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17とを接続するパイロットラインに設けられ、その流路面積(作動油が通流可能な断面積)を変更できるように構成される。比例弁31は、コントローラ30から入力される制御指令に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、操作装置26から入力される操作内容信号に応じて、操作装置26の操作内容に応じたパイロット圧を、比例弁31を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。また、コントローラ30は、オペレータにより操作装置26(具体的には、レバー装置26A~26C)が操作されていない場合であっても、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。比例弁31は、例えば、後述の如く、比例弁31AL,31AR,31BL,31BR,31CL,31CRを含む。
【0041】
また、比例弁31は、作動油が通流可能な断面積を操作装置26の操作状態に依らずにゼロにしたり、操作状態に対応する流路面積にしたりすることにより、操作装置26に対する操作、つまり、ショベル100の各種被駆動要素の操作の有効状態と無効状態とを切り換えることができる。これにより、コントローラ30は、比例弁31に制御指令を出力することにより、ショベル100の動作を制限(停止)させることができる。
【0042】
また、操作装置26が油圧パイロット式の場合、パイロットポンプ15と操作装置26との間のパイロットラインに、コントローラ30からの制御指令に応じて、パイロットラインの連通/遮断(非連通)を切り換える油圧制御弁が設けられてもよい。当該油圧制御弁は、例えば、コントローラ30からの制御指令に応じて動作するように構成されるゲートロック弁であってよい。ゲートロック弁は、例えば、キャビン10の操縦席の入口付近に設けられるゲートロックレバーが引き上げられると、連通状態となって、操作装置26に対する操作が有効状態(操作可能状態)になり、ゲートロックレバーが押し下げられると、遮断状態となって、操作装置26に対する操作が無効状態(操作不可状態)になる。これにより、コントローラ30は、当該油圧制御弁に制御指令を出力することにより、ショベル100の動作を制限(停止)させることができる。
【0043】
尚、操作装置26として電気式の代わりに油圧パイロット式が採用される場合、比例弁31の二次側のパイロットラインは、上述のシャトル弁を介してコントロールバルブ17に接続される。この場合、シャトル弁からコントロールバルブ17に供給されるパイロット圧は、操作装置26から出力される、操作内容に応じたパイロット圧と、比例弁31から出力される、操作装置26の操作内容と関係のない所定のパイロット圧とのうちの高い方である。
【0044】
減圧用比例弁33は、比例弁31とコントロールバルブ17との間のパイロットラインに配置される。コントローラ30は、物体検知装置(例えば、撮像装置S6等)からの信号に基づき、油圧アクチュエータの減速或いは停止の制動動作が必要と判断した場合、当該パイロットラインの作動油をタンクへ排出することでパイロット圧を減圧させる。これにより、比例弁31の状態にかかわらず、コントロールバルブ17内の制御弁のスプールを中立方向へ移動させることができる。そのため、減圧用比例弁33は、制動特性を高めたい場合に有効である。減圧用比例弁33は、例えば、後述の如く、減圧用比例弁33AL,33AR,33BL,33BR,33CL,33CRを含む。
【0045】
尚、操作装置26として電気式の代わりに油圧パイロット式が採用される場合、減圧用比例弁33は、省略される。
【0046】
表示装置40は、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い場所に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報画像を表示する。表示装置40は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。表示装置40は、CAN(Controller Area Network)等の車載通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよいし、一対一の専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0047】
入力装置42は、キャビン10内のオペレータによる各種入力を受け付け、受付られる入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。入力装置42は、例えば、キャビン10内の着座したオペレータから手が届く範囲に設けられ、オペレータの操作入力を受け付ける操作入力装置を含む。操作入力装置は、各種情報画像を表示する表示装置40のディスプレイに実装されるタッチパネル、レバー装置26A~26Cのレバー部の先端に設けられるノブスイッチ、表示装置40の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル、回転ダイヤル等を含む。また、入力装置42は、例えば、キャビン10内のオペレータの音声入力やジェスチャ入力を受け付ける音声入力装置やジェスチャ入力装置を含んでもよい。音声入力装置は、例えば、キャビン10内に設けられるマイクロフォンを含む。また、音声入力装置は、例えば、キャビン10内に設けられ、オペレータの様子を撮像可能な撮像装置を含む。入力装置42に対する入力内容に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0048】
音出力装置43は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30による制御下で、所定の音を出力する。音出力装置43は、例えば、スピーカやブザー等である。音出力装置43は、コントローラ30からの制御指令に応じて各種情報を音で出力する、つまり、聴覚的な情報を出力する。
【0049】
記憶装置47は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報を記憶する。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶装置47は、ショベル100の動作中に各種機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に各種機器を介して取得する情報を記憶してもよい。記憶装置47は、例えば、通信装置T1等を介して取得される、或いは、入力装置42等を通じて設定される目標施工面に関するデータを記憶していてもよい。当該目標施工面は、ショベル100のオペレータにより設定(保存)されてもよいし、施工管理者等により設定されてもよい。
【0050】
ブーム角度センサS1は、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する俯仰角度(以下、「ブーム角度」)、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよい。また、ブーム角度センサS1は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、ブーム角度に対応する油圧シリンダ(ブームシリンダ7)のストローク量を検出するシリンダセンサ等を含んでもよい。以下、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3についても同様である。ブーム角度センサS1によるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0051】
アーム角度センサS2は、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。アーム角度センサS2によるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0052】
バケット角度センサS3は、バケット6に取り付けられ、バケット6のアーム5に対する回動角度(以下、「バケット角度」)、例えば、側面視において、アーム5の両端の支点を結ぶ直線に対してバケット6の支点と先端(刃先)とを結ぶ直線が成す角度を検出する。バケット角度センサS3によるバケット角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0053】
機体傾斜センサS4は、所定の平面(例えば、水平面)に対する機体(上部旋回体3或いは下部走行体1)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、ショベル100(即ち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU等を含んでよい。機体傾斜センサS4による傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0054】
撮像装置S6は、ショベル100の周辺を撮像し、ショベル100の周囲の様子を表す画像情報を取得する。撮像装置S6は、ショベル100の前方を撮像するカメラS6F、ショベル100の左方を撮像するカメラS6L、ショベル100の右方を撮像するカメラS6R、及び、ショベル100の後方を撮像するカメラS6Bを含む。
【0055】
カメラS6F(取得装置の一例)は、例えば、キャビン10の天井、即ち、キャビン10の内部に取り付けられている。また、カメラS6F(取得装置の一例)は、キャビン10の屋根、ブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。カメラS6L(取得装置の一例)は、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、カメラS6R(取得装置の一例)は、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、カメラS6B(取得装置の一例)は、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0056】
撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)は、それぞれ、例えば、非常に広い画角を有する単眼の広角カメラである。また、撮像装置S6は、ステレオカメラ、距離画像カメラ、デプスカメラ等であってもよい。撮像装置S6による撮像画像は、表示装置40を介してコントローラ30に取り込まれる。
【0057】
また、撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)に代えて、或いは、加えて、ショベル100の周囲の様子を表す情報を取得可能な他のセンサが設けられてもよい。他のセンサは、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging)、赤外線センサ等であってよい。具体的には、他のセンサは、ショベル100の周囲に出力する出力信号の反射信号を受信することにより、ショベル100の周囲の物体までの距離を点群データ等により算出してもよい。また、撮像装置S6やこれらの他のセンサは、物体検知装置として機能してもよい。この場合、撮像装置S6やこれらの他のセンサは、ショベル100の周囲に存在する所定の検出対象の物体を検知してよい。検知対象の物体には、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、穴等が含まれうる。撮像装置S6やこれらの他のセンサは、自身或いはショベル100から認識された物体までの距離を取得(算出)してもよい。
【0058】
コントローラ30は、例えば、撮像装置S6や他のセンサの出力に基づき、ショベル100の周囲の所定の監視領域内(例えば、ショベル100から5メートル以内の作業領域)で、監視対象の物体(例えば、人、トラック、他の建設機械等)が検知された場合、ショベル100と監視対象の物体との当接等を回避させる制御(以下、「当接回避制御」)を行う。具体的には、コントローラ30は、当接回避制御の一例として、表示装置40や音出力装置43に制御指令を出力し、警報を出力させてよい。また、コントローラ30は、当接回避制御の一例として、比例弁31、減圧用比例弁33、或いは、上述の制御弁に制御指令を出力し、ショベル100の動作を制限してもよい。このとき、動作制限の対象は、全ての被駆動要素であってもよいし、監視対象の物体とショベル100との当接回避のために必要な一部の被駆動要素だけであってもよい。
【0059】
コントローラ30による監視領域内における監視対象の存在の判断は、操作不可状態においても、実行される。そして、ショベル100は、ショベル100の監視領域内において監視対象が存在するかどうかも判断するとともに、ショベル100の監視領域外においても監視対象が存在するかどうかも判断してよい。また、ショベル100の監視領域外における監視対象が存在するかどうかの判断は、ショベル100が操作不可状態においても、実行されてよい。
【0060】
尚、撮像装置S6は、直接、コントローラ30と通信可能に接続されてもよい。
【0061】
測位装置P1は、ショベル100(上部旋回体3)の位置を測定する。測位装置P1は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)モジュールであり、上部旋回体3の位置を検出し、上部旋回体3の位置に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0062】
尚、ショベル100の位置は、後述の推定方法を用いて、取得されてもよい。この場合、測位装置P1は、省略されてもよい。
【0063】
通信装置T1は、基地局を末端とする移動体通信網、通信衛星を利用する衛星通信網、インターネット網等を含みうる所定のネットワークに接続し、外部機器(例えば、後述の管理装置200)と通信を行う。通信装置T1は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュールや、衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等である。
【0064】
マシンガイダンス部50は、例えば、マシンガイダンス機能に関するショベル100の制御を実行する。マシンガイダンス部50は、例えば、目標施工面とアタッチメントの先端部、具体的には、エンドアタッチメントの作業部位との距離等の作業情報を、表示装置40や音出力装置43等を通じて、オペレータに伝える。目標施工面に関するデータは、例えば、上述の如く、記憶装置47に予め記憶されている。目標施工面に関するデータは、例えば、基準座標系で表現されている。基準座標系は、例えば、施工現場に固有のローカル座標系である。オペレータは、施工現場の任意の点を基準点と定め、入力装置42を通じて、基準点との相対的な位置関係により目標施工面を設定してもよい。バケット6の作業部位は、例えば、バケット6の爪先、バケット6の背面等である。また、エンドアタッチメントとして、バケット6の代わりに、例えば、ブレーカが採用される場合、ブレーカの先端部が作業部位に相当する。マシンガイダンス部50は、表示装置40、音出力装置43等を通じて、作業情報をオペレータに通知し、オペレータによる操作装置26を通じたショベル100の操作をガイドする。
【0065】
また、マシンガイダンス部50は、例えば、マシンコントロール機能に関するショベル100の制御を実行する。マシンガイダンス部50は、例えば、オペレータの操作装置26に対する操作に応じて、バケット6の作業部位が所定の目標軌道に沿って移動するように、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6の少なくとも一つを自動で動作させる。具体的には、マシンガイダンス部50は、オペレータが手動で掘削操作を行っているときに、目標施工面とバケット6の先端位置(つまり、作業部位における制御基準となる位置)とが一致するように、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の少なくとも一つを自動的に動作させてよい。また、マシンガイダンス部50は、例えば、所定の作業対象(例えば、土砂の積み込み対象のダンプトラックや、切土や転圧等の施工対象である法面等)に上部旋回体3が正対するように、上部旋回体3を自動で移動させてもよい。また、マシンガイダンス部50は、例えば、ショベル100が所定の経路で移動するように、下部走行体1を自動で動作させてもよい。
【0066】
マシンガイダンス部50は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、撮像装置S6、測位装置P1、通信装置T1及び入力装置42等から情報を取得する。そして、マシンガイダンス部50は、例えば、取得した情報に基づき、バケット6と目標施工面との間の距離を算出し、音出力装置43からの音声及び表示装置40に表示される画像により、バケット6と作業対象(例えば、目標施工面やとの間の距離の程度をオペレータに通知したり、アタッチメントの先端部(具体的には、バケット6の爪先や背面等の作業部位)が目標施工面に一致するように、アタッチメントの動作を自動的に制御したりする。マシンガイダンス部50は、当該マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する詳細な機能構成として、位置算出部51と、距離算出部52と、情報伝達部53と、自動制御部54と、旋回角度算出部55と、相対角度算出部56とを含む。
【0067】
位置算出部51は、所定の測位対象の位置を算出する。例えば、位置算出部51は、アタッチメントの先端部、具体的には、バケット6の爪先や背面等の作業部位の基準座標系における座標点を算出する。具体的には、位置算出部51は、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれの俯仰角度(ブーム角度、アーム角度、及びバケット角度)からバケット6の作業部位の座標点を算出する。
【0068】
距離算出部52は、2つの測位対象間の距離を算出する。例えば、距離算出部52は、アタッチメントの先端部、具体的には、バケット6爪先や背面等の作業部位と目標施工面との間の距離を算出する。また、距離算出部52は、バケット6の作業部位としての背面と目標施工面との間の角度(相対角度)を算出してもよい。
【0069】
情報伝達部53は、表示装置40や音出力装置43等の所定の通知手段を通じて、各種情報をショベル100のオペレータに伝達(通知)する。情報伝達部53は、距離算出部52により算出された各種距離等の大きさ(程度)をショベル100のオペレータに通知する。例えば、表示装置40による視覚情報及び音出力装置43による聴覚情報の少なくとも一方を用いて、バケット6の先端部と目標施工面との間の距離(の大きさ)をオペレータに伝える。また、情報伝達部53は、表示装置40による視覚情報及び音出力装置43による聴覚情報の少なくとも一方を用いて、バケット6の作業部位としての背面と目標施工面との間の相対角度(の大きさ)をオペレータに伝えてもよい。
【0070】
具体的には、情報伝達部53は、音出力装置43による断続音を用いて、バケット6の作業部位と目標施工面との間の距離(例えば、鉛直距離)の大きさをオペレータに伝える。この場合、情報伝達部53は、鉛直距離が小さくなるほど、断続音の間隔を短くし、鉛直距離が大きくなるほど、断続音の感覚を長くしてよい。また、情報伝達部53は、連続音を用いてもよく、音の高低、強弱等を変化させながら、鉛直距離の大きさの違いを表すようにしてもよい。また、情報伝達部53は、バケット6の先端部が目標施工面よりも低い位置になった、つまり、目標施工面を超えてしまった場合、音出力装置43を通じて警報を発してもよい。当該警報は、例えば、断続音より顕著に大きい連続音である。
【0071】
また、情報伝達部53は、アタッチメントの先端部、具体的には、バケット6の作業部位と目標施工面との間の距離の大きさやバケット6の背面と目標施工面との間の相対角度の大きさ等を作業情報として表示装置40に表示させてもよい。表示装置40は、コントローラ30による制御下で、例えば、撮像装置S6から受信した画像データと共に、情報伝達部53から受信した作業情報を表示する。情報伝達部53は、例えば、アナログメータの画像やバーグラフインジケータの画像等を用いて、鉛直距離の大きさをオペレータに伝えるようにしてもよい。
【0072】
自動制御部54は、ショベル100の被駆動部を駆動するアクチュエータを自動的に動作させることでオペレータによる操作装置26を通じたショベル100の手動操作を自動的に支援する。具体的には、自動制御部54は、比例弁31を制御し、複数の油圧アクチュエータに対応するコントロールバルブ17内の制御弁に作用するパイロット圧を個別的に且つ自動的に調整することができる。これにより、自動制御部54は、それぞれの油圧アクチュエータを自動的に動作させることができる。自動制御部54によるマシンコントロール機能に関する制御は、例えば、入力装置42に含まれる所定のスイッチが押下された場合に実行されてよい。当該所定のスイッチは、例えば、マシンコントロールスイッチ(以下、「MC(Machine Control)スイッチ」)であり、ノブスイッチとして操作装置26(例えば、アーム5の操作に対応するレバー装置)のオペレータによる把持部の先端に配置されていてもよい。以下、MCスイッチが押下されている場合に、マシンコントロール機能が有効である前提で説明を進める。
【0073】
例えば、自動制御部54は、MCスイッチ等が押下されている場合、掘削作業や整形作業を支援するために、アームシリンダ8の動作に合わせて、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも一方を自動的に伸縮させる。具体的には、自動制御部54は、オペレータが手動でアーム5の閉じ操作(以下、「アーム閉じ操作」)を行っている場合に、目標施工面とバケット6の爪先や背面等の作業部位の制御基準となる位置とが一致するようにブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも一方を自動的に伸縮させる。この場合、オペレータは、例えば、アーム5の操作に対応するレバー装置をアーム閉じ操作するだけで、バケット6の爪先等を目標施工面に一致させながら、アーム5を閉じることができる。
【0074】
また、自動制御部54は、MCスイッチ等が押下されている場合、上部旋回体3を所定の作業対象(例えば、土砂の積み込み対象のダンプトラックや施工対象の目標施工面等)に正対させるために旋回油圧モータ2Aを自動的に回転させてもよい。以下、コントローラ30(自動制御部54)による上部旋回体3を目標施工面に正対させる制御を「正対制御」と称する場合がある。これにより、オペレータ等は、所定のスイッチを押下するだけで、或いは、当該スイッチが押下された状態で、旋回操作に対応する後述のレバー装置26Cを操作するだけで、上部旋回体3を作業対象に正対させることができる。また、オペレータは、MCスイッチを押下するだけで、上部旋回体3を作業対象に正対させ且つダンプトラックへの排土作業や目標施工面の掘削作業等に関するマシンコントロール機能を開始させることができる。
【0075】
例えば、ショベル100の上部旋回体3が作業対象としてのダンプトラックに正対している状態は、アタッチメントの先端のバケット6をダンプトラックの荷台の長手方向、つまり、ダンプトラックの荷台の前後方向の軸に沿って移動させることが可能な状態である。
【0076】
例えば、ショベル100の上部旋回体3が作業対象としての目標施工面に正対している状態は、アタッチメントの動作に従い、アタッチメントの先端部(例えば、バケット6の作業部位としての爪先や背面等)を目標施工面(例えば、図1の上り法面BS)の傾斜方向に沿って移動させることが可能な状態である。具体的には、ショベル100の上部旋回体3が目標施工面に正対している状態は、ショベル100の旋回平面SFに鉛直なアタッチメントの稼動面(アタッチメント稼動面)AFが、円筒体CBに対応する目標施工面の法線を含む状態(換言すれば、当該法線に沿う状態)である(後述の図8B参照)。
【0077】
ショベル100のアタッチメント稼動面AFが円筒体CBに対応する目標施工面の法線を含む状態にない場合、アタッチメントの先端部は、目標施工面を傾斜方向に移動させることができない。そのため、結果として、ショベル100は、目標施工面を適切に施工できない(後述の図8A参照)。これに対して、自動制御部54は、自動的に旋回油圧モータ2Aを回転させることで、上部旋回体3を正対させることができる。これにより、ショベル100は、目標施工面を適切に施工することができる(図8B参照)。
【0078】
自動制御部54は、目標施工面(上り法面)に対する正対制御において、例えば、バケット6の爪先の左端の座標点と目標施工面との間の左端鉛直距離(以下、単に「左端鉛直距離」)と、バケット6の爪先の右端の座標点と目標施工面との間の右端鉛直距離(以下、単に「右端鉛直距離」)とが等しくなった場合に、ショベルが目標施工面に正対していると判断する。また、自動制御部54は、左端鉛直距離と右端鉛直距離とが等しくなった場合(即ち、左端鉛直距離と右端鉛直距離との差がゼロになった場合)ではなく、その差が所定値以下になった場合に、ショベル100が目標施工面に正対していると判断してもよい。
【0079】
また、自動制御部54は、目標施工面(上り法面)に対する正対制御において、例えば、左端鉛直距離と右端鉛直距離との差に基づき、旋回油圧モータ2Aを動作させてもよい。具体的には、MCスイッチ等の所定のスイッチが押下された状態で旋回操作に対応するレバー装置26Cが操作されると、上部旋回体3を目標施工面に正対させる方向にレバー装置26Cが操作されたか否かを判断する。例えば、バケット6の爪先と目標施工面(上り法面)との間の鉛直距離が大きくなる方向にレバー装置26Cが操作された場合、自動制御部54は、正対制御を実行しない。一方で、バケット6の爪先と目標施工面(上り法面)との間の鉛直距離が小さくなる方向に旋回操作レバーが操作された場合、自動制御部54は、正対制御を実行する。その結果、自動制御部54は、左端鉛直距離と右端鉛直距離との差が小さくなるように旋回油圧モータ2Aを動作させることができる。その後、自動制御部54は、その差が所定値以下或いはゼロになると、旋回油圧モータ2Aを停止させる。また、自動制御部54は、その差が所定値以下或いはゼロとなる旋回角度を目標角度として設定し、その目標角度と現在の旋回角度(具体的には、旋回状態センサS5の検出信号に基づく検出値)との角度差がゼロになるように、旋回油圧モータ2Aの動作制御を行ってもよい。この場合、旋回角度は、例えば、基準方向に対する上部旋回体3の前後軸の角度である。
【0080】
尚、上述の如く、旋回油圧モータ2Aの代わりに、旋回用電動機がショベル100に搭載される場合、自動制御部54は、旋回用電動機を制御対象として、正対制御を行う。
【0081】
旋回角度算出部55は、上部旋回体3の旋回角度を算出する。これにより、コントローラ30は、上部旋回体3の現在の向きを特定することができる。旋回角度算出部55は、例えば、後述の如く、撮像装置S6の撮像画像に含まれる(映っている)、停止している或いは固定されている物体の位置(換言すれば、見える方向)の変化に基づき、上部旋回体3の旋回角度を算出(推定)する。詳細は、後述する(図5図8参照)。
【0082】
旋回角度は、上部旋回体3から見た基準方向に対するアタッチメント稼動面が延びる方向(即ち、上部旋回体3の上面視でアタッチメントの延出方向)を表す。アタッチメント稼動面は、例えば、アタッチメントを縦断する仮想平面であり、旋回平面に垂直となるように配置される。旋回平面は、例えば、旋回軸に垂直な旋回フレームの底面を含む仮想平面である。コントローラ30(マシンガイダンス部50)は、例えば、アタッチメント稼動面が目標施工面の法線を含んでいると判断した場合に、上部旋回体3が目標施工面に正対していると判断してよい。
【0083】
相対角度算出部56は、上部旋回体3を作業対象に正対させるために必要な旋回角度(以下、「相対角度」)を算出する。相対角度は、例えば、上部旋回体3を作業対象に正対させたときの上部旋回体3の前後軸の方向と、上部旋回体3の前後軸の現在の方向との間に形成される相対的な角度である。相対角度算出部56は、例えば、上部旋回体3を土砂等の積み込み対象のダンプトラックに正対させる場合、撮像装置S6によるダンプトラックの荷台が映っている撮像画像と、旋回角度算出部55により算出された旋回角度とに基づき、相対角度を算出する。相対角度算出部56は、例えば、上部旋回体3を目標施工面に正対させる場合、記憶装置47に記憶されている目標施工面に関するデータと、旋回角度算出部55により算出された旋回角度とに基づき、相対角度を算出する。
【0084】
自動制御部54は、MCスイッチ等の所定のスイッチが押下された状態で旋回操作に対応するレバー装置26Cが操作されると、上部旋回体3を作業対象に正対させる方向に旋回操作されたか否かを判断する。自動制御部54は、上部旋回体3を作業対象に正対させる方向に旋回操作されたと判断した場合、相対角度算出部56により算出された相対角度を目標角度として設定する。そして、自動制御部54は、レバー装置26Cが操作された後の旋回角度の変化が目標角度に達した場合、上部旋回体3が作業対象に正対したと判断し、旋回油圧モータ2Aの動きを停止させてよい。これにより、自動制御部54は、図2に示す構成を前提として、オペレータによるレバー装置26Cの操作をアシストして、上部旋回体3を作業対象に正対させることができる。また、自動制御部54は、MCスイッチ等の所定のスイッチが押下されると、レバー装置26Cの操作に依らず、自動で、上部旋回体3を作業対象に正対させてもよい。
【0085】
[ショベルの油圧システム]
次に、図3を参照して、本実施形態に係るショベル100の油圧システムについて説明する。
【0086】
図3は、本実施形態に係るショベル100の油圧システムの構成の一例を概略的に示す図である。
【0087】
尚、図3において、機械的動力系、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御系は、図2の場合と同様、それぞれ、二重線、実線、破線、及び点線で示されている。
【0088】
当該油圧回路により実現される油圧システムは、エンジン11により駆動されるメインポンプ14L,14Rのそれぞれから、センタバイパス油路C1L,C1R、パラレル油路C2L,C2Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0089】
センタバイパス油路C1Lは、メインポンプ14Lを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁171,173,175L,176Lを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0090】
センタバイパス油路C1Rは、メインポンプ14Rを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁172,174,175R,176Rを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0091】
制御弁171は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を走行油圧モータ1Lへ供給し、且つ、走行油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクに排出させるスプール弁である。
【0092】
制御弁172は、メインポンプ14Rから吐出される作動油を走行油圧モータ1Rへ供給し、且つ、走行油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0093】
制御弁173は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0094】
制御弁174は、メインポンプ14Rから吐出される作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0095】
制御弁175L,175Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0096】
制御弁176L,176Rは、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出させる。
【0097】
制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176Rは、それぞれ、パイロットポートに作用するパイロット圧に応じて、油圧アクチュエータに給排される作動油の流量を調整したり、流れる方向を切り換えたりする。
【0098】
パラレル油路C2Lは、センタバイパス油路C1Lと並列的に、制御弁171,173,175L,176Lにメインポンプ14Lの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路C2Lは、制御弁171の上流側でセンタバイパス油路C1Lから分岐し、制御弁171,173,175L,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Lの作動油を供給可能に構成される。これにより、パラレル油路C2Lは、制御弁171,173,175Lの何れかによってセンタバイパス油路C1Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0099】
パラレル油路C2Rは、センタバイパス油路C1Rと並列的に、制御弁172,174,175R,176Rにメインポンプ14Rの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路C2Rは、制御弁172の上流側でセンタバイパス油路C1Rから分岐し、制御弁172,174,175R,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Rの作動油を供給可能に構成される。パラレル油路C2Rは、制御弁172,174,175Rの何れかによってセンタバイパス油路C1Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0100】
レギュレータ13L,13Rは、それぞれ、コントローラ30による制御下で、メインポンプ14L、14Rの斜板の傾転角を調節することによって、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節する。
【0101】
吐出圧センサ28Lは、メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することができる。
【0102】
センタバイパス油路C1L,C1Rには、最も下流にある制御弁176L,176Rのそれぞれと作動油タンクとの間には、ネガティブコントロール絞り(以下、「ネガコン絞り」)18L,18Rが設けられる。これにより、メインポンプ14L,14Rにより吐出された作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rで制限される。そして、ネガコン絞り18L、18Rは、レギュレータ13L,13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」)を発生させる。
【0103】
ネガコン圧センサ19L,19Rは、ネガコン圧を検出し、検出されたネガコン圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0104】
コントローラ30は、吐出圧センサ28L,28Rにより検出されるメインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御し、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて、レギュレータ13Lを制御し、メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することにより、吐出量を減少させてよい。レギュレータ13Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14L,14Rの吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないように、メインポンプ14L,14Rの全馬力制御を行うことができる。
【0105】
また、コントローラ30は、ネガコン圧センサ19L,19Rにより検出されるネガコン圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することにより、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させる。
【0106】
具体的には、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態(図3に示す状態)の場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、センタバイパス油路C1L,C1Rを通ってネガコン絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンタバイパス油路C1L,C1Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0107】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作装置26を通じて操作された場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータを確実に駆動させることができる。
【0108】
[ショベルのマシンコントロール機能に関する構成の詳細]
次に、図4図4A図4C)を参照して、ショベル100のマシンコントロール機能に関する構成の詳細について説明する。
【0109】
図4A図4Cは、本実施形態に係るショベル100の油圧システムのうちの操作系に関する構成部分の一例を概略的に示す図である。具体的には、図4Aは、ブームシリンダ7を油圧制御する制御弁175L,175Rにパイロット圧を作用させるパイロット回路の一例を示す図である。また、図4Bは、バケットシリンダ9を油圧制御する制御弁174にパイロット圧を作用させるパイロット回路の一例を示す図である。また、図4Cは、旋回油圧モータ2Aを油圧制御する制御弁173にパイロット圧を作用させるパイロット回路の一例を示す図である。
【0110】
また、例えば、図4Aに示すように、レバー装置26Aは、オペレータ等がブーム4に対応するブームシリンダ7を操作するために用いられる。レバー装置26Aは、その操作内容(例えば、操作方向及び操作量)に応じた電気信号(以下、「操作内容信号」)をコントローラ30に出力する。
【0111】
コントローラ30には、操作装置26の操作量(例えば、レバー装置26A~26Cの傾倒角度)に応じた比例弁31への制御電流との対応関係が予め設定されている。操作装置26に含まれる個々のレバー装置(レバー装置26A~26C等)のそれぞれに対応する比例弁31は、設定された対応関係に基づき制御される。
【0112】
比例弁31ALは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31ALは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側のパイロットポートと制御弁175Rの左側のパイロットポートとに出力する。これにより、比例弁31ALは、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。例えば、コントローラ30からレバー装置26Aに対するブーム4の上げ方向の操作(以下、「ブーム上げ操作」)に対応する制御電流が入力されることで、比例弁31ALは、レバー装置26Aにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側のパイロットポートと制御弁175Rの左側のパイロットポートに作用させることができる。また、レバー装置26Aの操作内容に依らず、コントローラ30から所定の制御電流が入力されることで、比例弁31ALは、レバー装置26Aにおける操作内容と関係なく、パイロット圧を制御弁175Lの右側のパイロットポートと制御弁175Rの左側のパイロットポートとに作用させることができる。
【0113】
比例弁31ARは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31ARは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31ARは、制御弁175Rの右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。例えば、コントローラ30からレバー装置26Aに対するブーム4の下げ方向の操作(以下、「ブーム下げ操作」)に対応する制御電流が入力されることで、比例弁31ARは、レバー装置26Aにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側のパイロットポートに作用させることができる。また、レバー装置26Aの操作内容に依らず、コントローラ30から所定の制御電流が入力されることで、比例弁31ARは、レバー装置26Aにおける操作内容と関係なく、制御弁175Rの右側のパイロットポートに作用させることができる。
【0114】
換言すれば、レバー装置26Aは、ブーム上げ操作がされた場合に、操作方向及び操作量に応じた操作内容信号をコントローラ30に出力し、コントローラ30及び比例弁31ALを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポートと制御弁175Rの左側のパイロットポートにその操作内容に応じたパイロット圧を作用させる。また、レバー装置26Aは、ブーム下げ操作がされた場合に、操作方向及び操作量に応じた操作内容信号をコントローラ30に出力し、コントローラ30及び比例弁31ARを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートにその操作内容に応じたパイロット圧を作用させる。
【0115】
このように、比例弁31AL,31ARは、コントローラ30の制御下で、レバー装置26Aの操作状態に応じて、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。また、比例弁31AL,31ARは、コントローラ30の制御下で、レバー装置26Aの操作状態に依らず、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
【0116】
減圧用比例弁33ALは、比例弁31ALと、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートとの間のパイロットラインに配置される。コントローラ30は、物体検知装置(例えば、撮像装置S6等)からの信号に基づき、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ7)の減速或いは停止の制動動作が必要と判断した場合、当該パイロットラインの作動油をタンクへ排出することでパイロット圧を減圧させる。これにより、比例弁31ALの状態にかかわらず、制御弁175L,175Rのスプールを中立方向へ移動させることができる。そのため、減圧用比例弁33ALは、制動特性を高めたい場合に有効である。
【0117】
尚、本実施形態では、減圧用比例弁33ALを必ずしも備える必要はなく、省略されてもよい。以下、他の減圧用比例弁33(減圧用比例弁33AR,33BL,33BR,33CL,33CR等)についても同様である。
【0118】
減圧用比例弁33ARは、比例弁31ARと、制御弁175Rの右側のパイロットポートとの間のパイロットラインに配置される。コントローラ30は、物体検知装置(例えば、撮像装置S6等)からの信号に基づき、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ7)の減速或いは停止の制動動作が必要と判断した場合、当該パイロットラインの作動油をタンクへ排出することでパイロットラインのパイロット圧を減圧させる。これにより、比例弁31ARの状態にかかわらず、制御弁175L,175Rのスプールを中立方向へ移動させることができる。そのため、減圧用比例弁33ARは、制動特性を高めたい場合に有効である。
【0119】
コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Aに対するブーム上げ操作に対応する操作内容信号に応じて、比例弁31ALを制御し、レバー装置26Aにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Aに対するブーム下げ操作に対応する操作内容信号に応じて、比例弁31ARを制御し、レバー装置26Aにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、レバー装置26Aから入力される操作内容信号に応じて、比例弁31AL,31ARを制御し、レバー装置26Aの操作内容に応じたブーム4の上げ下げの動作を実現することができる。
【0120】
また、コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Aに対するブーム上げ操作とは無関係に、比例弁31ALを制御し、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Aに対するブーム下げ操作とは無関係に、比例弁31ARを制御し、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、制御弁175Rの右側のパイロットポートに供給できる。即ち、コントローラ30は、ブーム4の上げ下げの動作を自動制御することができる。
【0121】
図4Bに示すように、レバー装置26Bは、オペレータ等がバケット6に対応するバケットシリンダ9を操作するために用いられる。レバー装置26Bは、その操作内容(例えば、操作方向及び操作量)に応じた操作内容信号をコントローラ30に出力する。
【0122】
比例弁31BLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31BLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧を制御弁174の左側のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31BLは、制御弁174の左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。例えば、コントローラ30からレバー装置26Bに対するバケット6の閉じ方向の操作(以下、「バケット閉じ操作」)に対応する制御電流が入力されることで、比例弁31BLは、レバー装置26Bにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁174の左側のパイロットポートに作用させることができる。また、レバー装置26Bの操作内容に依らず、コントローラ30から所定の制御電流が入力されることで、比例弁31BLは、レバー装置26Bにおける操作内容と関係なく、パイロット圧を制御弁174の左側のパイロットポートに作用させることができる。
【0123】
比例弁31BRは、コントローラ30が出力する制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31BRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧を制御弁174の右側のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31BRは、シャトル弁32BRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。例えば、コントローラ30からレバー装置26Bに対するバケット6の開き方向の操作(以下、「バケット開き操作」)に対応する制御電流が入力されることで、比例弁31BRは、レバー装置26Bにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁174の右側のパイロットポートに作用させることができる。また、レバー装置26Bの操作内容に依らず、コントローラ30から所定の制御電流が入力されることで、比例弁31BRは、レバー装置26Bにおける操作内容と関係なく、パイロット圧を制御弁174の右側のパイロットポートに作用させることができる。
【0124】
換言すれば、レバー装置26Bは、バケット閉じ操作がされた場合に、操作方向及び操作量に応じた操作内容信号をコントローラ30に出力し、コントローラ30及び比例弁31BLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートにその操作内容に応じたパイロット圧を作用させる。また、レバー装置26Bは、バケット開き操作がされた場合に、操作方向及び操作量に応じた操作内容信号をコントローラ30に出力し、コントローラ30及び比例弁31BRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートにその操作内容に応じたパイロット圧を作用させる。
【0125】
このように、比例弁31BL,31BRは、コントローラ30の制御下で、レバー装置26Bの操作状態に応じて、制御弁174を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。また、比例弁31BL,31BRは、レバー装置26Bの操作状態に依らず、制御弁174を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
【0126】
減圧用比例弁33BLは、比例弁31BLと、制御弁174の左側のパイロットポートとの間のパイロットラインに配置される。コントローラ30は、物体検知装置(例えば、撮像装置S6等)からの信号に基づき、油圧アクチュエータ(バケットシリンダ9)の減速或いは停止の制動動作が必要と判断した場合、当該パイロットラインの作動油をタンクへ排出することでパイロット圧を減圧させる。これにより、比例弁31BLの状態にかかわらず、制御弁174のスプールを中立方向へ移動させることができる。そのため、減圧用比例弁33BLは、制動特性を高めたい場合に有効である。
【0127】
減圧用比例弁33BRは、比例弁31BRと、制御弁174の右側のパイロットポートとの間のパイロットラインに配置される。コントローラ30は、物体検知装置(例えば、撮像装置S6等)からの信号に基づき、油圧アクチュエータ(バケットシリンダ9)の減速或いは停止の制動動作が必要と判断した場合、当該パイロットラインの作動油をタンクへ排出することでパイロットラインのパイロット圧を減圧させる。これにより、比例弁31BRの状態にかかわらず、制御弁174のスプールを中立方向へ移動させることができる。そのため、減圧用比例弁33BRは、制動特性を高めたい場合に有効である。
【0128】
コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Bに対するバケット閉じ操作に対応する操作内容信号に応じて、比例弁31BLを制御し、レバー装置26Bにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁174の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Bに対するバケット開き操作に対応する操作内容信号に応じて、比例弁31BRを制御し、レバー装置26Bにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁174の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、レバー装置26Bから入力される操作内容信号に応じて、比例弁31BL,31BRを制御し、レバー装置26Bの操作内容に応じたバケット6の開閉動作を実現することができる。
【0129】
また、コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Bに対するバケット閉じ操作とは無関係に、比例弁31BLを制御し、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、制御弁174の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Bに対するバケット開き操作とは無関係に、比例弁31BRを制御し、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、制御弁174の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、バケット6の開閉動作を自動制御することができる。
【0130】
また、例えば、図4Cに示すように、レバー装置26Cは、オペレータ等が上部旋回体3(旋回機構2)に対応する旋回油圧モータ2Aを操作するために用いられる。レバー装置26Cは、その操作内容(例えば、操作方向及び操作量)に応じた操作内容信号をコントローラ30に出力する。
【0131】
比例弁31CLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31CLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧を制御弁173の左側のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31CLは、制御弁173の左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。例えば、コントローラ30からレバー装置26Cに対する上部旋回体3の左方向の旋回操作(以下、「左旋回操作」)に対応する制御電流が入力されることで、比例弁31CLは、レバー装置26Cにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁173の左側のパイロットポートに作用させることができる。また、レバー装置26Cの操作内容に依らず、コントローラ30から所定の制御電流が入力されることで、比例弁31CLは、レバー装置26Cにおける操作内容と関係なく、パイロット圧を制御弁173の左側のパイロットポートに作用させることができる。
【0132】
比例弁31CRは、コントローラ30が出力する制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31CRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧を制御弁173の右側のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31CRは、制御弁173の右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。例えば、コントローラ30からレバー装置26Cに対する上部旋回体3の右方向の旋回操作(以下、「右旋回操作」)に対応する制御電流が入力されることで、比例弁31CRは、レバー装置26Cにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁173の右側のパイロットポートに作用させることができる。また、レバー装置26Cの操作内容に依らず、コントローラ30から所定の制御電流が入力されることで、比例弁31CRは、レバー装置26Cにおける操作内容と関係なく、パイロット圧を制御弁173の右側のパイロットポートに作用させることができる。
【0133】
換言すれば、レバー装置26Cは、左旋回操作がされた場合に、操作方向及び操作量に応じた操作内容信号をコントローラ30に出力し、コントローラ30及び比例弁31CLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートにその操作内容に応じたパイロット圧を作用させる。また、レバー装置26Cは、右旋回操作がされた場合に、操作方向及び操作量に応じた操作内容信号をコントローラ30に出力し、コントローラ30及び比例弁31CRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートにその操作内容に応じたパイロット圧を作用させる。
【0134】
このように、比例弁31CL,31CRは、コントローラ30の制御下で、レバー装置26Cの操作状態に応じて、制御弁173を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。また、比例弁31CL,31CRは、レバー装置26Cの操作状態に依らず、制御弁173を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
【0135】
減圧用比例弁33CLは、比例弁31CLと、制御弁173の左側のパイロットポートとの間のパイロットラインに配置される。コントローラ30は、物体検知装置(例えば、撮像装置S6等)からの信号に基づき、油圧アクチュエータ(旋回油圧モータ2A)の減速或いは停止の制動動作が必要と判断した場合、当該パイロットラインの作動油をタンクへ排出することでパイロット圧を減圧させる。これにより、比例弁31CLの状態にかかわらず、制御弁173のスプールを中立方向へ移動させることができる。そのため、減圧用比例弁33CLは、制動特性を高めたい場合に有効である。
【0136】
減圧用比例弁33CRは、比例弁31CRと、制御弁173の右側のパイロットポートとの間のパイロットラインに配置される。コントローラ30は、物体検知装置(例えば、撮像装置S6等)からの信号に基づき、油圧アクチュエータ(旋回油圧モータ2A)の減速或いは停止の制動動作が必要と判断した場合、当該パイロットラインの作動油をタンクへ排出することでパイロットラインのパイロット圧を減圧させる。これにより、比例弁31CRの状態にかかわらず、制御弁173のスプールを中立方向へ移動させることができる。そのため、減圧用比例弁33CRは、制動特性を高めたい場合に有効である。
【0137】
コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Cに対する左旋回操作に対応する操作内容信号に応じて、比例弁31CLを制御し、レバー装置26Cにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁173の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Cに対する右旋回操作に対応する操作内容信号に応じて、比例弁31CRを制御し、レバー装置26Cにおける操作内容(操作量)に応じたパイロット圧を制御弁173の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、レバー装置26Cから入力される操作内容信号に応じて、比例弁31CL,31CRを制御し、レバー装置26Cの操作内容に応じたバケット6の開閉動作を実現することができる。
【0138】
コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Cに対する左旋回操作とは無関係に、比例弁31CLを制御し、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、制御弁173の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータのレバー装置26Cに対する右旋回操作とは無関係に、比例弁31CRを制御し、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、制御弁173の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、上部旋回体3の左右方向への旋回動作を自動制御することができる。
【0139】
尚、ショベル100は、更に、アーム5を自動的に開閉させる構成、及び、下部走行体1(具体的には、左右それぞれのクローラ)を自動的に前進・後進させる構成を備えていてもよい。この場合、油圧システムのうち、アームシリンダ8の操作系に関する構成部分、走行油圧モータ1Lの操作系に関する構成部分、及び、走行油圧モータ1Rの操作に関する構成部分は、ブームシリンダ7の操作系に関する構成部分等(図4A図4C)と同様に構成されてよい。
【0140】
[旋回角度の推定方法(第1例)]
次に、図5図6図6A図6B)を参照して、コントローラ30(旋回角度算出部55)による旋回角度の推定方法の第1例について説明する。
【0141】
<旋回角度の推定に関する機能構成>
図5は、本実施形態に係るショベル100の旋回角度の推定に関する機能構成の第1例を示す機能ブロック図である。
【0142】
図5に示すように、本例では、ショベル100は、通信装置T1を用いて、管理装置200と通信可能に接続される。
【0143】
管理装置200は、その機能が任意のハードウェア、或いは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、管理装置200は、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ装置、ROM等の補助記憶装置、及び外部との通信用のインタフェース装置等を含むサーバコンピュータを中心に構成される。管理装置200は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをCPU上で実行することにより実現される機能部として、モデル学習部201と、配信部203とを含む。また、管理装置200は、学習結果記憶部202等を利用する。学習結果記憶部202等は、例えば、管理装置200の補助記憶装置や通信可能な外部記憶装置等により実現可能である。
【0144】
モデル学習部201は、所定の教師データセットを用いて、学習モデルを機械学習させ、いわゆる教師あり学習の結果としての学習済みモデル(物体検出モデルLM)を出力する。そして、生成された物体検出モデルLMは、予め準備される検証用データセットを用いて、精度検証が実施された上で、学習結果記憶部202に格納される。また、モデル学習部201は、追加学習用の教師データセットを用いて、物体検出モデルLMの追加学習を行わせることにより追加学習済みモデルを生成してもよい。そして、追加学習済みモデルは、予め準備される検証用データセットを用いて、精度検証が実施されると共に、学習結果記憶部202の物体検出モデルLMは、精度検証済みの追加学習済みモデルで更新されてよい。
【0145】
物体検出モデルLMは、物体検知装置による作業現場の撮像画像や点群データ等を入力情報として、作業現場の撮像画像に含まれる所定の物体(例えば、人、車両、他の作業機械、建物、パイロン、電柱、木等)(以下、「対象物」)の有無、その対象物の種別、その対象物の位置、及び、その対象物の大きさ等を判定する。そして、物体検出モデルLMは、その判定結果に関する情報(例えば、対象物の種別(種類)を表すラベル情報や、対象物の位置を表す位置情報)を出力する。つまり、物体検出モデルLMは、ショベル100に適用される場合、撮像装置S6の撮像画像に基づき、ショベル100の周囲の対象物の有無、その対象物の種別(種類)、及びその対象物の位置等を判定することができる。ベースの学習モデル及びその学習結果としての物体検出モデルLMは、例えば、既知のディープニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)を中心に構成されてよい。
【0146】
尚、教師データセット及び精度検証用のデータセットは、例えば、ショベル100から適宜アップロードされる、撮像装置S6による様々な作業現場の撮像画像に基づき作成されてよい。また、教師データセット及び精度検証用のデータセットは、例えば、コンピュータグラフィクス等に関連する技術を用いて人工的に作成される作業現場の画像に基づき作成されてもよい。
【0147】
学習結果記憶部202には、モデル学習部201により生成される物体検出モデルLMが記憶される。また、学習結果記憶部202の物体検出モデルLMは、モデル学習部201により生成される追加学習済みモデルにより更新されてもよい。
【0148】
配信部203は、学習結果記憶部202に記憶される最新の物体検出モデルLMをショベル100に配信する。
【0149】
また、本例では、ショベル100は、旋回角度の推定に関する構成として、撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)、コントローラ30、比例弁31CL,31CR、及び入力装置42を含む。
【0150】
コントローラ30は、旋回角度の推定に関する構成として、周囲状況認識部60と、上述のマシンガイダンス部50を含む。
【0151】
周囲状況認識部60は、例えば、モデル記憶部61と、検出部62と、物体位置マップ生成部63と、マップ記憶部64とを含む。
【0152】
モデル記憶部61には、通信装置T1を通じて管理装置200から受信される、最新の物体検出モデルLMが記憶される。
【0153】
検出部62は、撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)から入力される撮像画像に基づき、上部旋回体3の周囲の対象物を検出する。具体的には、検出部62は、モデル記憶部61から物体検出モデルLMを読み出し、物体検出モデルLMを用いて、上部旋回体3の周囲の対象物に関する判定(例えば、対象物の有無、その対象物の種別、その対象物の位置、及びその対象物の大きさ等の判定)を行う。検出部62は、例えば、検出された対象物の種別を示すラベル情報、物体の位置情報、及び対象物の大きさに関する情報等を出力する。また、検出部62は、対象物が検出されなかった場合、検出されなかったことを示すラベル情報を出力してよい。本例では、複数のカメラ(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)の撮像画像を利用することができるため、検出部62は、上部旋回体3の全周に亘る対象物、つまり、より広い対象範囲で対象物を検出することができる。また、撮像装置S6を利用する事例を示したが、検出部62は、ショベル100の周囲に出力する出力信号(例えば、レーザ、赤外線、電磁波、超音波等)の反射信号を受信し、ショベル100の周囲の物体までの距離を点群データ等により算出してもよい。また、検出部62は、受信される反射信号に基づく点群の形状及び点群までの距離等により、対象物の種別(種類)を表すラベル情報や、対象物の位置を表す位置情報等を求めることができる。
【0154】
物体位置マップ生成部63は、検出部62により検出された対象物の位置を示すマップ情報(物体位置マップMP)を生成し、生成される物体位置マップMPは、マップ記憶部64に格納される。物体位置マップMPには、ショベル100の位置情報と、検出された対象物ごとの位置情報と、それぞれの対象物の位置情報に紐付けられる、対象物の種別情報及び対象物の大きさに関する情報等が含まれる。例えば、物体位置マップ生成部63は、ショベル100の起動から停止までの間で、検出部62の検出周期に合わせて、物体位置マップMPを作成し、最新の物体位置マップMPでマップ記憶部64の物体位置マップMPを逐次更新する態様であってよい。
【0155】
尚、ショベル100(上部旋回体3)を基準として、検出部62が対象物を検出可能な距離範囲は限定されるため、例えば、ショベル100が下部走行体1で走行移動すると、物体位置マップMPに含まれるある対象物の位置が検出範囲外になってしまう可能性がある。つまり、ショベル100が下部走行体1で走行移動してしまうと、コントローラ30は、ショベル100から相対的に離れた位置の物体がそのままその位置にいるのか、その位置から移動してしまったのか等を把握することができない可能性がある。よって、物体位置マップ生成部63は、物体位置マップMPに含まれる、ショベル100(自機)からある程度離れた位置の対象物に関する情報を、更新の際に、削除してもよいし、例えば、精度が低い情報であることを示すフラグ等を付した上でマップ情報の中に残してもよい。
【0156】
マップ記憶部64には、物体位置マップ生成部63により生成される、最新の物体位置マップMPが記憶される。
【0157】
マシンガイダンス部50は、旋回角度の推定に関する機能構成として、自動制御部54と、旋回角度算出部55と、相対角度算出部56と、記憶部57と、目標位置情報生成部58とを含む。
【0158】
自動制御部54は、上述の如く、相対角度算出部56により算出(推定)される相対角度に基づき、比例弁31CL,31CRを制御し、上部旋回体3をショベル100(自機)の周囲の作業対象に正対させる。換言すれば、自動制御部54は、相対角度算出部56により算出される相対角度に基づき、作業対象に正対するように上部旋回体3の旋回動作を制御する。本例では、自動制御部54は、後述の如く、物体位置マップMPから認識される一又は複数の対象物の中からオペレータが選択する作業対象に対応する対象物に上部旋回体3を正対させる。
【0159】
旋回角度算出部55は、撮像装置S6の撮像画像に基づき、ショベル100の周囲の停止している対象物(以下、「停止対象物」)或いは固定されている対象物(以下、「固定対象物」)を認識する。停止対象物は、移動可能な対象物のうちの移動せずに停止している対象物(例えば、土砂の積み込み待ちで停車しているダンプトラック等)を意味する。また、固定対象物は、ある位置に固定されており移動しない対象物(例えば、木、電柱等)を意味する。具体的には、旋回角度算出部55は、マップ記憶部64に格納される物体位置マップMPに基づき、ショベル100の周囲の停止対象物或いは固定対象物を認識(抽出)し、その中から基準となる対象物(以下、「基準対象物」)を決定する。例えば、旋回角度算出部55は、後述の如く、入力装置42を通じた操作入力に基づき、物体位置マップMPに含まれる複数の対象物の中から選択された作業対象に対応する停止対象物或いは固定対象物を基準対象物に決定してよい。そして、旋回角度算出部55は、物体位置マップMPの更新による上部旋回体3から見た基準対象物の位置の変化(換言すれば、撮像装置S6の撮像画像上での基準対象物の位置の変化)に基づき、旋回角度を推定(算出)する。上部旋回体3が旋回すると、上部旋回体3から基準対象物が見える方向が変化するからである。
【0160】
相対角度算出部56は、上述の如く、作業対象に正対するために必要な旋回角度としての相対角度を算出する。具体的には、相対角度算出部56は、旋回角度算出部55により算出される上部旋回体3の旋回角度と、目標位置情報生成部58により生成される、作業時の目標としての作業対象の位置に関する情報(以下、「目標位置情報」)とに基づき、相対角度を算出(推定)する。また、相対角度算出部56は、作業対象が上述の基準対象物に設定されている場合、旋回角度算出部55により算出される旋回角度をそのまま相対角度として用いてよい。上述の如く、旋回角度算出部55によって、作業対象を基準とする旋回角度(上部旋回体3の向き)が算出されるからである。
【0161】
記憶部57には、目標設定情報57Aが記憶される。
【0162】
目標設定情報57Aは、入力装置42を通じたオペレータ等のユーザからの操作入力により設定される、作業時の目標としての作業対象(例えば、土砂等の積み込み作業におけるダンプトラック等)に関する設定情報である。
【0163】
例えば、オペレータ等は、入力装置42を用いて、表示装置40に表示される所定の操作画面(以下、「目標選択画面」)を操作することにより、物体位置マップMPで特定される一又は複数の対象物の中から作業対象に対応する対象物を選択し、作業時の目標として設定することができる。具体的には、表示装置40の目標選択画面には、撮像装置S6の撮像画像に基づき、ショベル100の周囲の様子を表す画像(以下、「周囲画像」)が表示される。そして、表示装置40の目標選択画面には、当該周囲画像上における、物体位置マップMPで特定されるショベル100の周囲の対象物に対応する位置にマーカや対象物の種別を示す情報が重畳的に表示される。オペレータ等は、当該目標選択画面上で、対象物の位置や種別を確認することで、作業対象を特定し選択(設定)することができる。
【0164】
目標位置情報生成部58は、物体位置マップMPと、目標設定情報57Aとに基づき、目標位置情報を生成する。
【0165】
<旋回角度の推定方法の具体例>
図6A図6Bは、本実施形態に係るショベル100の旋回角度の推定に関する動作の第1例を示す図である。具体的には、図6A図6Bは、作業対象としてのダンプトラックDTに土砂等を積み込む作業において、ショベル100がコントローラ30の制御下で旋回角度を推定しながら作業対象としてのダンプトラックDTに正対するように旋回動作を行う状況を示す図である。より具体的には、図6Aは、作業中のショベル100の上面図であり、図6Bは、作業中のショベル100(具体的には、バケット6)を図6Aの矢印AR1で示す方向から見た図である。
【0166】
尚、図6A,Bにて、実線のショベル100(バケット6)は、土砂をバケット6に掬い終わったときの状態を示し、バケット6Aは、この状態(位置P1)のときのバケット6を示している。また、図6A,Bにて、破線のショベル100(バケット6)は、バケット6に土砂を抱え込んで、ブーム4を上げながら上部旋回体3をダンプトラックDTに正対する方向に旋回する複合動作中の状態を示し、バケット6Bは、この状態(位置P2)のときのバケット6を示す。また、図6A,Bにて、一点鎖線のショベル100(バケット6)は、上部旋回体3が作業対象としてのダンプトラックDTに正対し、バケット6の土砂の排土動作を開始する前の状態を示し、バケット6Cは、この状態(位置P3)のときのバケット6を示す。
【0167】
本例では、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、作業対象としてのダンプトラックDTを基準対象物とする旋回角度θaを推定(算出)する。つまり、図6Aに示すように、コントローラ30は、ダンプトラックDTの荷台の長手方向の軸、つまり、ダンプトラックDTの前後軸を基準とする上部旋回体3の旋回角度θaを推定(算出)する。
【0168】
例えば、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、バケット6が位置P1にある状態において、ダンプトラックDTを基準対象物とする旋回角度θaが角度値θa0と推定(算出)する。また、コントローラ30(相対角度算出部56)は、作業対象としてのダンプトラックDTが基準対象物であるため、相対角度として旋回角度θa(角度値θa0)を用いることができる。そして、コントローラ30(自動制御部54)は、オペレータがMCスイッチ等の所定のスイッチを押下した状態でレバー装置26Cに対して右旋回操作、つまり、ダンプトラックDTに正対する方向に旋回操作を行うと、上部旋回体3がダンプトラックDTに正対するように、つまり、相対角度に相当する旋回角度θaが角度値θa0からゼロになるように、比例弁31CRを制御する。
【0169】
バケット6が位置P1から位置P2を経由して、上部旋回体3がダンプトラックDTに正対した状態に対応する位置P3に向かう間で、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、旋回角度θaを推定しながら、比例弁31CRを通じて、上部旋回体3の旋回動作を制御する。例えば、バケット6が位置P2にある状態において、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、ダンプトラックDTを基準対象物とする旋回角度θaが角度値θa1と推定(算出)する。そして、コントローラ30(自動制御部54)は、推定する旋回角度θaに基づく相対角度、つまり、旋回角度θaがゼロになると、旋回油圧モータ2Aの動作を停止させる。これにより、コントローラ30は、オペレータによるレバー装置26Cの操作をアシストし、上部旋回体3をダンプトラックDTに正対させることができる。また、コントローラ30は、オペレータがMCスイッチ等の所定のスイッチを押下すると、作業対象としてのダンプトラックDTを基準対象物とする旋回角度θaを推定しながら、自動で、上部旋回体3をダンプトラックDTに正対させてもよい。この場合、コントローラ30は、上部旋回体3の自動制御と併せて、ブーム4の上げ動作の自動制御を行い、ショベル100の複合動作全体を自動で行うようにしてもよい。
【0170】
また、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、ダンプトラックDTを基準対象物とする旋回角度θaに加えて、ショベル100の周囲にある固定対象物としての樹木TR1を基準対象物とする旋回角度θbを算出してもよい。例えば、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、バケット6が位置P1にある状態において、樹木TR1を基準対象物とする旋回角度θbが角度値θb0と推定する。また、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、バケット6が位置P3にある状態において、樹木TR1を基準対象物とする旋回角度θbが角度値θb1と推定する。これにより、コントローラ30(相対角度算出部56)は、ダンプトラックDTを基準対象物とする旋回角度θaと樹木TR1を基準対象物とする旋回角度θbとの双方を用いて、相対角度を推定(算出)することができる。そのため、コントローラ30は、相対角度の推定精度をより向上させることができ、結果として、上部旋回体3をダンプトラックDTに正対させる制御の精度をより向上させることができる。
【0171】
[旋回角度の推定方法(第2例)]
次に、図7図8図8A図8B)を参照して、コントローラ30(旋回角度算出部55)による旋回角度の推定方法の第2例について説明する。
【0172】
<旋回角度の推定に関する機能構成>
図7は、本実施形態に係るショベル100の旋回角度の推定に関する機能構成の第2例を示す機能ブロック図である。以下、本例では、上述の図5と異なる部分を中心に説明する。
【0173】
図7に示すように、本例では、図5の第1例の場合と同様、通信装置T1を用いて、管理装置200と通信可能に接続される。
【0174】
管理装置200は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをCPU上で実行することにより実現される機能部として、モデル学習部201と、配信部203とを含む。また、管理装置200は、学習結果記憶部202及び施工情報記憶部204を利用する。学習結果記憶部202及び施工情報記憶部204等は、例えば、管理装置200の補助記憶装置や通信可能な外部記憶装置等により実現可能である。
【0175】
施工情報記憶部204には、ショベル100の作業現場を含む複数の作業現場の施工情報を含む施工情報データベースが構築される。施工情報には、施工目標に関する情報(例えば、目標施工面データ等)が含まれる。
【0176】
配信部203は、施工情報データベースからショベル100の作業現場の施工情報を抽出し、ショベル100に配信する。
【0177】
また、本例では、ショベル100は、旋回角度の推定に関する構成として、図5の第1例の場合と同様、撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)、コントローラ30、及び比例弁31CL,31CRを含む。
【0178】
コントローラ30は、旋回角度の推定に関する構成として、図5の第1例の場合と同様、マシンガイダンス部50と、周囲状況認識部60とを含む。
【0179】
マシンガイダンス部50は、旋回角度の推定に関する機能構成として、図5の第1例の場合と同様、自動制御部54と、旋回角度算出部55と、相対角度算出部56と、記憶部57と、目標位置情報生成部58とを含む。
【0180】
記憶部57には、管理装置200から配信される施工情報57Bが記憶される。
【0181】
目標位置情報生成部58は、施工情報に含まれる目標施工面データに基づき、作業対象としての目標施工面に関する目標位置情報を生成する。
【0182】
相対角度算出部56は、旋回角度算出部55により算出される上部旋回体3の旋回角度と、作業対象の目標施工面に対応する目標位置情報とに基づき、相対角度を算出(推定)する。
【0183】
自動制御部54は、相対角度算出部56により算出(推定)される相対角度に基づき、比例弁31CL,31CRを制御し、施工情報57Bに対応する目標施工面に上部旋回体3を正対させる。また、自動制御部54は、所定範囲内に物体が検出された場合、検出された物体との位置関係に基づき、減圧用比例弁33を制御することで、制動動作(減速、停止)を行うことができる。
【0184】
<旋回角度の推定方法の具体例>
図8A図8Bは、本実施形態に係るショベル100の旋回角度の推定に関する動作の第2例を示す図である。具体的には、図8は、施工済の法面CSと未施工の傾斜面に対応する目標施工面の一例としての法面NSとの境界付近から、ショベル100が未施工の法面NSの施工を開始する状態を示す。図8Aは、作業対象として法面NSに上部旋回体3が正対していない状態を示し、図8Bは、ショベル100が図8Aの状態から上部旋回体3を旋回させ、作業対象としての法面NSに上部旋回体3が正対した状態を示す。
【0185】
図8A,Bに示すように、本例では、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、ショベル100(自機)の周囲にある固定対象物としての樹木TR2を基準対象物とする旋回角度を算出する。
【0186】
例えば、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、図8Aの状態において、樹木TR2を基準対象物とする旋回角度を推定(算出)する。また、コントローラ30(相対角度算出部56)は、推定した旋回角度と、目標施工面としての法面NSに対応する目標位置情報に基づき、相対角度を推定(算出)する。そして、コントローラ30(自動制御部54)は、オペレータがMCスイッチ等の所定のスイッチを押下した状態でレバー装置26Cに対して左旋回操作を行うと、樹木TR2を基準対象物とする旋回角度を推定しながら、上部旋回体3が法面NSに正対するように、比例弁31CLを制御する。これにより、図8Bに示すように、コントローラ30は、オペレータによるレバー装置26Cの操作をアシストして、作業対象としての法面NSに正対させることができる。また、コントローラ30は、オペレータがMCスイッチ等の所定のスイッチを押下すると、樹木TR2を基準対象物とする旋回角度を推定しながら、自動で、上部旋回体3を法面NSに正対させてもよい。
【0187】
[旋回角度の推定方法(第3例)]
次に、図9図11を参照し、コントローラ30(旋回角度算出部55)による旋回角度の推定方法の第3例について説明する。
【0188】
尚、本例に係るショベル100の旋回角度の推定に関する機能構成を表す機能ブロック図は、上述の第1例或いは第2例の機能ブロック図(図5或いは図7)を援用可能であるため、図示を省略する。
【0189】
<固定対象物の検出方法>
図9は、ショベル100の旋回角度の推定方法の第3例を説明する図である。具体的には、図9は、本例に係るショベル100の周囲の物体(例えば、固定対象物)の検出方法の一例を説明する図であり、検出部62によるショベル100の周囲の物体の検出に関する一連の処理を説明する図である。
【0190】
<<物体検出処理>>
検出部62は、撮像装置S6の出力(撮像画像)に基づき、学習済みの物体検出モデルLMを用いて、ショベル100(上部旋回体3)の周囲の対象物を検出する処理(物体検出処理901)を行う。
【0191】
本例では、物体検出モデルLMは、ニューラルネットワーク(Neural Network)DNNを中心に構成される。
【0192】
本例では、ニューラルネットワークDNNは、入力層及び出力層の間に一層以上の中間層(隠れ層)を有する、いわゆるディープニューラルネットワークである。ニューラルネットワークDNNでは、それぞれの中間層を構成する複数のニューロンごとに、下位層との間の接続強度を表す重みづけパラメータが規定されている。そして、各層のニューロンは、上位層の複数のニューロンからの入力値のそれぞれに上位層のニューロンごとに規定される重み付けパラメータを乗じた値の総和を、閾値関数を通じて、下位層のニューロンに出力する態様で、ニューラルネットワークDNNが構成される。
【0193】
ニューラルネットワークDNNを対象とし、後述の如く、管理装置200(モデル学習部201)により機械学習、具体的には、深層学習(ディープラーニング:Deep Learning)が行われ、上述の重み付けパラメータの最適化が図られる。これにより、ニューラルネットワークDNNは、入力信号x(x1~xm)として、撮像装置S6の撮像画像が入力され、出力信号y(y1~yn)として、予め規定される対象物リスト(本例では、"樹木"、"ダンプ"、・・・)に対応する物体の種類ごとの物体が存在する確率(予測確率)を出力することができる。mは、2以上の整数であり、例えば、複数の画像領域に区分された撮像画像の区分数に相当する。nは、2以上の整数であり、対象物リストに含まれる対象物の種類数に相当する。
【0194】
ニューラルネットワークDNNは、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)である。CNNは、既存の画像処理技術(畳み込み処理及びプーリング処理)を適用したニューラルネットワークである。具体的には、CNNは、撮像装置S6の撮像画像に対する畳み込み処理及びプーリング処理の組み合わせを繰り返すことにより撮像画像よりもサイズの小さい特徴量データ(特徴マップ)を取り出す。そして、取り出した特徴マップの各画素の画素値が複数の全結合層により構成されるニューラルネットワークに入力され、ニューラルネットワークの出力層は、例えば、物体の種類ごとの物体が存在する予測確率を出力することができる。
【0195】
また、ニューラルネットワークDNNは、入力信号xとして撮像装置S6の撮像画像が入力され、撮像画像における物体の位置及び大きさ(つまり、撮像画像上の物体の占有領域)及びその物体の種類を出力信号yとして出力可能な構成であってもよい。つまり、ニューラルネットワークDNNは、撮像画像上の物体の検出(撮像画像上で物体の占有領域部分の判定)と、その物体の分類の判定とを行う構成であってもよい。また、この場合、出力信号yは、入力信号xとしての撮像画像に対して物体の占有領域及びその分類に関する情報が重畳的に付加された画像データ形式で構成されていてもよい。これにより、検出部62は、物体検出モデルLM(ニューラルネットワークDNN)から出力される、撮像装置S6の撮像画像の中の物体の占有領域の位置及び大きさに基づき、当該物体のショベル100からの相対位置(距離や方向)を特定することができる。撮像装置S6(カメラS6F、カメラS6B、カメラS6L、及びカメラS6R)は、上部旋回体3に固定され、撮像範囲(画角)が予め規定(固定)されているからである。そして、検出部62は、物体検出モデルLMにより検出された物体の位置が監視領域内であり、且つ、監視対象リストの物体に分類されている場合、監視領域内で、監視対象の物体が検出されたと判定できる。
【0196】
例えば、ニューラルネットワークDNNは、撮像画像の中の物体が存在する占有領域(ウィンドウ)を抽出する処理、及び、抽出された領域の物体の種類を特定する処理のそれぞれに相当するニューラルネットワークを有する構成であってよい。つまり、ニューラルネットワークDNNは、物体の検出と、物体の分類とを段階的に行う構成であってよい。また、例えば、ニューラルネットワークDNNは、撮像画像の全領域が所定数の部分領域に区分されたグリッドセルごとに物体の分類及び物体の占有領域(バウンディングボックス:Bounding box)を規定する処理と、グリッドセルごとの物体の分類に基づき、種類ごとの物体の占有領域を結合し、最終的な物体の占有領域を確定させる処理とのそれぞれに対応するニューラルネットワークを有する構成であってもよい。つまり、ニューラルネットワークDNNは、物体の検出と、物体の分類とを並列的に行う構成であってもよい。
【0197】
検出部62は、例えば、所定の制御周期ごとに、ニューラルネットワークDNNを用いて、撮像画像上における物体の種類ごとの予測確率を算出する。検出部62は、予測確率を算出する際、今回の判定結果と前回の判定結果とが一致する場合、今回の予測確率を更に上げるようにしてもよい。例えば、前回の判定時に、撮像画像上の所定の領域に映っている物体が"ダンプ"(y2)と判定される予測確率に対し、今回も継続して"ダンプ"(y2)と判定された場合、今回の"ダンプ"(y2)と判定される予測確率を更に高めてよい。これにより、例えば、同じ画像領域に関する物体の分類に関する判定結果が継続的に一致している場合に、予測確率が相対的に高く算出される。そのため、検出部62は、誤判定を抑制することができる。
【0198】
また、検出部62は、ショベル100の走行や旋回等の動作を考慮して、撮像画像上の物体に関する判定を行ってもよい。ショベル100の周囲の物体が静止している場合であっても、ショベル100の走行や旋回によって、撮像画像上の物体の位置が移動し、同じ物体として認識できなくなる可能性があるからである。例えば、ショベル100の走行や旋回によって、今回の処理で"樹木"(y1)と判定された画像領域と前回の処理で"樹木"(y1)と判定された画像領域とが異なる場合がありうる。この場合、検出部62は、今回の処理で"樹木"(y1)と判定された画像領域が前回の処理で"樹木"(y1)と判定された画像領域から所定の範囲内にあれば、同一の物体とみなし、継続的な一致判定(即ち、同じ物体を継続して検出している状態の判定)を行ってよい。検出部62は、継続的な一致判定を行う場合、今回の判定で用いる画像領域を、前回の判定に用いた画像領域に加え、この画像領域から所定の範囲内の画像領域も含めてよい。これにより、ショベル100が走行したり、旋回したりしたとしても、検出部62は、ショベル100の周囲の同じ物体に関して継続的な一致判定を行うことができる。
【0199】
尚、上述の第1例、第2例の場合についても、本例と同様、物体検出モデルLMは、ニューラルネットワークDNNを中心に構成されてもよい。
【0200】
また、検出部62は、ニューラルネットワークDNNを用いる方法以外の任意の機械学習に基づく物体検出方法を用いて、ショベル100の周囲の物体を検出してもよい。
【0201】
例えば、撮像装置S6の撮像画像から取得される多変数の局所特徴量について、この多変数の空間上で物体の種類ごとにその種類の物体である範囲とその種類の物体でない範囲とを区分する境界を表す物体検出モデルLMが、教師あり学習により生成されてよい。境界に関する情報の生成に適用される機械学習(教師あり学習)の手法は、例えば、サポートベクターマシーン(SVM:Support Vector Machine)、k近傍法、混合ガウス分布モデル等であってよい。これにより、検出部62は、当該物体検出モデルLMに基づき、撮像装置S6の撮像画像から取得される局所特徴量が所定の種類の物体である範囲にあるのか、その種類の物体でない範囲にあるのかに基づき、物体を検出することができる。
【0202】
<<距離算出処理>>
検出部62は、物体検出処理901とは別に、ショベル100に搭載される距離測定装置S7の出力に基づき、ショベル100から周囲の物体までの距離を算出する処理(距離算出処理902)を行う。本例では、検出部62は、撮像装置S6の撮像画像を複数の画像領域に区分した画像領域x1~xmに対応するショベル100(撮像装置S6)から見た方向ごとの物体までの距離L1~Lmを算出する。
【0203】
距離測定装置S7は、上部旋回体3に搭載され、ショベル100の周囲の物体との距離に関する情報を取得する。距離測定装置S7は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、LIDAR、赤外線センサ等を含む。また、距離測定装置S7は、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、距離画像カメラ、デプスカメラ等の撮像装置であってもよい。単眼カメラの場合、検出部62は、ショベル100の走行時や旋回時の撮像画像に基づき、距離を算出することができる。
【0204】
<<対象物情報生成処理>>
検出部62は、物体検出処理901の出力と、距離算出処理902の出力と組み合わせて、複数の対象物ごとの予測確率及び位置を含む対象物情報を生成する処理(対象物情報生成処理903)を行う。具体的には、検出部62は、対象物リストに含まれる複数の種類の対象物ごとの予測確率及び撮像画像上の占有領域と、撮像画像の画像領域x1~xmごとの距離情報(距離L1~Lm)とに基づき、対象物ごとの予測確率及び位置を含む対象物情報を生成してよい。本例では、対象物情報は、出力信号y1に対応する"樹木"が予測確率"xx%"で、座標"(e,n,h)"に位置することを表している。また、本例では、対象物情報は、出力信号y2に対応する"ダンプ(トラック)"が予測確率"xx%"で、座標"(e,n,h)"に位置していることを表している。また、本例では、対象物情報は、出力信号ynに対応する"xxxxxx"が予測確率"xx%"で、座標"(e,n,h)に位置していることを表している。これにより、検出部62は、対象物情報に基づき、対象物リストの複数の種類の対象物ごとの予測確率に基づき、撮像装置S6の撮像範囲内の対象物を検出したり、検出した対象物の位置を特定したりすることができる。
【0205】
尚、検出部62は、上述の如く、対象物ごとの占有領域の位置及び大きさだけを用いて、対象物ごとの位置を特定してもよい。この場合、距離算出処理902は、省略され、距離測定装置S7は、省略されてもよい。
【0206】
<旋回角度の推定方法の具体例>
図10図11は、ショベル100の旋回角度の推定方法の第3例を示す説明する図である。
【0207】
本例では、コントローラ30は、上述の対象物情報生成処理903により生成される対象物情報に基づき、ショベル100の周囲の基準対象物を決定し、ショベル100から見た基準対象物の向きを算出する。そして、コントローラ30は、ショベル100から見た対象物の向きの時系列の変化に基づき、ショベル100の旋回角度を推定する。
【0208】
例えば、図12に示すように、時刻t1にて、対象物情報は、"樹木"及び"ダンプ"の予測確率が90%であることを表している。そのため、コントローラ30は、少なくとも樹木及びダンプトラックを含む複数の基準対象物を決定し、基準対象物ごとに、ショベル100から見た基準対象物の向き(角度方向)θk(t1)を算出する(k:1~nの整数)。
【0209】
また、時刻t2にて、対象物情報は、引き続き、"樹木"及び"ダンプ"の予測確率が非常に高い90%であることを表している。そのため、コントローラ30は、少なくとも樹木及びダンプトラックを含む複数の基準対象物を決定し、基準対象物ごとに、ショベル100から見た基準対象物の向きθk(t2)を算出する。
【0210】
コントローラ30は、基準対象物ごとに、時刻t1及び時刻t2におけるショベル100から見た基準対象物の向きθk(t1),θk(t2)に基づき、以下の式(1)により、時刻t1から時刻t2までの間の旋回角度Δθを算出することができる。
【0211】
Δθ=θk(t2)-θk(t1) ・・・(1)
【0212】
コントローラ30は、複数の基準対象物ごとに算出した旋回角度Δθに基づき、時刻t1から時刻t2までの間のショベル100の旋回角度を決定する。コントローラ30は、例えば、複数の基準対象物ごとの旋回角度Δθを平均化する等の統計処理を行うことにより、時刻t1から時刻t2までの間のショベル100の旋回角度を決定してよい。
【0213】
尚、対象物情報からショベル100の周囲に一つの対象物(基準対象物)しか存在しない場合、コントローラ30は、一つの基準対象物に対応する旋回角度Δθをショベル100の旋回角度に決定してよい。
【0214】
このように、本例では、コントローラ30は、対象物情報に基づき、ショベル100の周囲の基準対象物を決定し、ショベル100から見た基準対象物の向きの時系列での変化に基づき、ショベル100の旋回角度を推定することができる。また、本例では、コントローラ30は、複数の基準対象物ごとに、ショベル100から見た基準対象物の向きの時系列での変化に基づき、ショベル100の旋回角度を推定し、旋回角度の複数の推定値に基づき、ショベル100の旋回角度を決定する。これにより、旋回角度の推定精度を向上させることができる。
【0215】
また、例えば、図12に示すように、時刻t3にて、時刻t2までの基準対象物のダンプトラックが移動し、対象物情報は、"ダンプ"の予測確率が0%に変化している。そのため、時刻t3にて、コントローラ30は、ダンプトラックを基準対象物として利用できない。
【0216】
一方、時刻t3にて、対象物情報は、引き続き、"樹木"の予測確率が非常に高い90%であることを表している。そのため、コントローラ30は、少なくとも樹木含む一又は複数の基準対象物を決定し、基準対象物ごとに、ショベル100から見た基準対象物の向きθk(t3)を算出する。
【0217】
コントローラ30は、基準対象物ごとに、時刻t2及び時刻t3におけるショベル100から見た基準対象物の向きθk(t2),θk(t3)に基づき、以下の式(2)により、時刻t2から時刻t3までの間の旋回角度Δθを算出することができる。
【0218】
Δθ=θk(t3)-θk(t2) ・・・(2)
【0219】
このように、本例では、コントローラ30は、一部の基準対象物が非検出状態になった場合であっても、検出状態の他の基準対象物が存在する場合、ショベル100から見た他の基準対象物の向きの変化に基づき、ショベル100の旋回角度を推定することができる。即ち、コントローラ30は、複数の基準対象物を利用することで、一部の基準対象物が非検出状態になるような状況であっても、ショベル100の旋回角度の推定処理を安定して継続することができる。
【0220】
[ショベルの構成の他の例]
次に、図1に加えて、図12を参照して、本実施形態に係るショベル100の具体的な構成の他の例、具体的には、後述のショベル100(自機)の位置の推定方法に関する構成の具体例について説明する。以下、上述の一例(図2)と異なる部分を中心に説明し、同じ或いは対応する内容に関する説明を省略する場合がある。
【0221】
図12は、本実施形態に係るショベル100の構成の他の例を概略的に示す図である。
【0222】
本実施形態に係るショベル100の制御系は、コントローラ30と、吐出圧センサ28と、操作圧センサ29と、比例弁31と、表示装置40と、入力装置42と、音出力装置43と、記憶装置47と、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、バケット角度センサS3と、機体傾斜センサS4と、旋回状態センサS5と、撮像装置S6と、通信装置T1とを含む。
【0223】
旋回状態センサS5は、上部旋回体3の旋回状態に関する検出情報を出力する。旋回状態センサS5は、例えば、上部旋回体3の旋回角速度及び旋回角度を検出する。旋回状態センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含んでよい。旋回状態センサS5による上部旋回体3の旋回角度や旋回角速度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0224】
コントローラ30は、マシンガイダンス部50を含む。
【0225】
マシンガイダンス部50は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5、撮像装置S6、通信装置T1及び入力装置42等から情報を取得する。そして、マシンガイダンス部50は、例えば、取得した情報に基づき、バケット6と目標施工面との間の距離を算出し、音出力装置43からの音声及び表示装置40に表示される画像により、バケット6と作業対象(例えば、目標施工面やとの間の距離の程度をオペレータに通知したり、アタッチメントの先端部(具体的には、バケット6の爪先や背面等の作業部位)が目標施工面に一致するように、アタッチメントの動作を自動的に制御したりする。マシンガイダンス部50は、当該マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する詳細な機能構成として、位置算出部51と、距離算出部52と、情報伝達部53と、自動制御部54と、旋回角度算出部55と、相対角度算出部56と、位置推定部59とを含む。
【0226】
旋回角度算出部55は、上部旋回体3の旋回角度を算出する。これにより、コントローラ30は、上部旋回体3の現在の向きを特定することができる。旋回角度算出部55は、旋回状態センサS5の検出信号に基づき、旋回角度を算出する。また、施工現場に基準点が設定されている場合、旋回角度算出部55は、旋回軸から基準点を見た方向を基準方向としてもよい。また、旋回角度算出部55は、例えば、上述の推定方法を用いて、撮像装置S6の撮像画像に含まれる(映っている)、停止している或いは固定されている物体の位置(見える向き)の変化に基づき、上部旋回体3の旋回角度を算出(推定)してもよい(図5図11参照)。この場合、旋回状態センサS5は、省略されてもよい。
【0227】
位置推定部59は、ショベル100の位置を推定する。位置推定部59は、例えば、撮像装置S6の撮像画像に基づき、ショベル100(自機)の周囲の物体を認識し、認識した物体に対するショベル100の相対的な位置を算出(推定)する。詳細は、後述する(図13図18参照)。
【0228】
[ショベルの位置の推定方法(第1例)]
次に、図13図14を参照して、コントローラ30によるショベル100(自機)の位置の推定方法の第1例について説明する。
【0229】
<ショベルの位置の推定に関する機能構成>
図13は、本実施形態に係るショベル100の位置の推定に関する機能構成の第1例を示す機能ブロック図である。
【0230】
図13に示すように、本例では、ショベル100は、通信装置T1を用いて、管理装置200と通信可能に接続される。
【0231】
管理装置200は、その機能が任意のハードウェア、或いは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、管理装置200は、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ装置、ROM等の補助記憶装置、及び外部との通信用のインタフェース装置等を含むサーバコンピュータを中心に構成される。管理装置200は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをCPU上で実行することにより実現される機能部として、モデル学習部201と、配信部203とを含む。また、管理装置200は、学習結果記憶部202等を利用する。学習結果記憶部202等は、例えば、管理装置200の補助記憶装置や通信可能な外部記憶装置等により実現可能である。
【0232】
モデル学習部201は、所定の教師データセットを用いて、学習モデルを機械学習させ、いわゆる教師あり学習の結果としての学習済みモデル(物体検出モデルLM)を出力する。そして、生成された物体検出モデルLMは、予め準備される検証用データセットを用いて、精度検証が実施された上で、学習結果記憶部202に格納される。また、モデル学習部201は、追加学習用の教師データセットを用いて、物体検出モデルLMの追加学習を行わせることにより追加学習済みモデルを生成してもよい。そして、追加学習済みモデルは、予め準備される検証用データセットを用いて、精度検証が実施されると共に、学習結果記憶部202の物体検出モデルLMは、精度検証済みの追加学習済みモデルで更新されてよい。
【0233】
物体検出モデルLMは、物体検知装置による作業現場の撮像画像や点群データ等を入力情報として、作業現場の撮像画像に含まれる所定の物体(例えば、人、車両、他の作業機械、建物、パイロン、電柱、木等)(以下、「対象物」)の有無、その対象物の種別、その対象物の位置、その対象物の大きさ等を判定する。そして、物体検出モデルLMは、その判定結果に関する情報(例えば、対象物の種別(種類)を表すラベル情報や、対象物の位置を表す位置情報)を出力する。つまり、物体検出モデルLMは、ショベル100に適用される場合、撮像装置S6の撮像画像に基づき、ショベル100の周囲の対象物の有無、その対象物の種別(種類)、及びその対象物の位置等を判定することができる。ベースの学習モデル及びその学習結果としての物体検出モデルLMは、例えば、既知のディープニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)を中心に構成されてよい。
【0234】
尚、教師データセット及び精度検証用のデータセットは、例えば、ショベル100から適宜アップロードされる、撮像装置S6による様々な作業現場の撮像画像に基づき作成されてよい。また、教師データセット及び精度検証用のデータセットは、例えば、コンピュータグラフィクス等に関連する技術を用いて人工的に作成される作業現場の画像に基づき作成されてもよい。
【0235】
学習結果記憶部202には、モデル学習部201により生成される物体検出モデルLMが記憶される。また、学習結果記憶部202の物体検出モデルLMは、モデル学習部201により生成される追加学習済みモデルにより更新されてもよい。
【0236】
配信部203は、学習結果記憶部202に記憶される最新の物体検出モデルLMをショベル100に配信する。
【0237】
また、本例では、ショベル100は、自機の位置の推定に関する構成として、撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)、コントローラ30を含む。
【0238】
コントローラ30は、ショベル100(自機)の推定に関する構成として、周囲状況認識部60と、上述のマシンガイダンス部50を含む。
【0239】
周囲状況認識部60は、例えば、モデル記憶部61と、検出部62と、物体位置マップ生成部63と、マップ記憶部64とを含む。
【0240】
モデル記憶部61には、通信装置T1を通じて管理装置200から受信される、最新の物体検出モデルLMが記憶される。
【0241】
検出部62は、撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)から入力される撮像画像に基づき、上部旋回体3の周囲の対象物を検出する。具体的には、検出部62は、モデル記憶部61から物体検出モデルLMを読み出し、物体検出モデルLMを用いて、上部旋回体3の周囲の対象物に関する判定(例えば、対象物の有無、その対象物の種別、その対象物の位置、及びその対象物の大きさ等の判定)を行う。検出部62は、例えば、検出された対象物の種別を示すラベル情報、対象物の位置情報、及び対象物の大きさに関する情報等を出力する。また、検出部62は、対象物が検出されなかった場合、検出されなかったことを示すラベル情報を出力してよい。本例では、複数のカメラ(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)の撮像画像を利用することができるため、検出部62は、上部旋回体3の全周に亘る対象物、つまり、より広い対象範囲で対象物を検出することができる。また、撮像装置S6を利用する事例を示したが、検出部62は、ショベル100の周囲に出力する出力信号(例えば、レーザ、赤外線、電磁波、超音波等)の反射信号を受信し、ショベル100の周囲の物体までの距離を点群データ等により算出してもよい。また、検出部62は、受信される反射信号に基づく点群の形状及び点群までの距離等により、対象物の種別(種類)を表すラベル情報や、対象物の位置を表す位置情報等を求めることができる。
【0242】
物体位置マップ生成部63は、周囲の物体(対象物)に対するショベル100(自機)の位置を表すマップ情報(以下、「物体位置マップ」)を生成する。生成される物体位置マップMPは、マップ記憶部64に格納される。物体位置マップMPには、検出部62により検出された対象物を含む、撮像装置S6の撮像画像に基づくショベル100の周囲の物体の三次元形状データ(具体的には、三次元的な特徴点の集合)、及び三次元形状データに対する現在のショベル100の位置や上部旋回体3の向きを表す情報が含まれる。また、物体位置マップMPには、検出部62により検出された対象物ごとの位置が含まれる。また、物体位置マップMPには、それぞれの対象物の位置に紐付けられる、対象物の種別に関する情報(以下、「種別情報」)、対象物の大きさに関する情報(以下、「大きさ情報」)等の付随情報が含まれる。具体的には、物体位置マップ生成部63は、所定の処理周期ごとに、撮像装置S6の撮像画像(検出部62の検出結果)に基づき、現時刻のショベル100の周囲の物体(対象物)の三次元形状を含む局所的なマップ情報(以下、「局所マップ」)を生成する。局所マップは、ショベル100の現在の位置及び上部旋回体3の現在の向きを基準とするマップ情報である。そして、物体位置マップ生成部63は、生成した局所マップと、直前の処理周期で作成された過去の物体位置マップMPとの間での物体の三次元形状の同定を行い、最新の物体位置マップMPを生成する。このとき、物体位置マップ生成部63は、現在のショベル100の位置及び上部旋回体3の向きを基準とする局所マップの三次元形状を、過去の物体位置マップMPの三次元形状と同定させる過程において、同時に、物体位置マップMP上でのショベル100の位置及び上部旋回体3の向きを特定する。例えば、物体位置マップ生成部63は、ショベル100の起動から停止までの間で、検出部62の検出周期に合わせて、物体位置マップMPを作成し、最新の物体位置マップMPでマップ記憶部64の物体位置マップMPを逐次更新する態様であってよい。
【0243】
尚、撮像装置S6に加えて、撮像装置S6の撮像範囲の物体までの距離を取得可能な距離センサ(距離情報取得装置の一例)が上部旋回体3に搭載される場合、物体位置マップ生成部63は、撮像装置S6の撮像画像及び距離センサの検出情報に基づき、物体位置マップMPを生成してもよい。つまり、コントローラ30は、撮像装置S6の撮像画像及び距離センサの検出情報(即ち、ショベル100の周囲の物体までの距離に関する情報)に基づき、ショベル100(自機)の位置を推定したり、上部旋回体3の向き(旋回角度)を推定したりしてもよい。具体的には、物体位置マップ生成部63は、距離センサの検出情報に基づき、ショベル100の周囲の三次元形状に相当するデータを生成し、当該データ上に、撮像装置S6の撮像画像に基づき検出部62により検出された対象物に関する情報を反映させる形で物体位置マップMPを生成してよい。これにより、距離センサは、ショベル100の周囲の物体までの距離に関する検出情報を直接取得できるため、撮像装置S6の撮像画像から距離を演算する場合よりも処理負荷が軽減され、処理時間を短縮できる。また、距離センサで取得される検出情報に対応する距離の精度は、撮像装置S6の撮像画像から演算される距離の精度よりも一般的に高いため、物体位置マップMPの精度を向上させることができる。また、ショベル100(上部旋回体3)を基準として、検出部62が対象物を検出可能な距離範囲は限定されるため、例えば、ショベル100が下部走行体1で走行移動すると、物体位置マップMPに含まれるある対象物の位置が検出範囲外になってしまう可能性がある。つまり、ショベル100が下部走行体1で走行移動してしまうと、コントローラ30は、ショベル100から相対的に離れた位置の物体の移動や、ショベル100から相対的に離れた位置の地形形状の施工作業による変化等を把握することができない可能性がある。よって、物体位置マップ生成部63は、物体位置マップMPに含まれる、ショベル100(自機)からある程度離れた位置の対象物を含む三次元形状に関する情報を、更新の際に、削除してもよいし、例えば、精度が低い情報であることを示すフラグ等を紐づけた上でマップ情報の中に残してもよい。
【0244】
マップ記憶部64には、物体位置マップ生成部63により生成される、最新の物体位置マップMPが記憶される。
【0245】
マシンガイダンス部50は、ショベル100(自機)の位置の推定に関する機能構成として、旋回角度算出部55と、位置推定部59とを含む。
【0246】
旋回角度算出部55は、撮像装置S6の撮像画像に基づき、ショベル100の周囲の停止している対象物(以下、「停止対象物」)や固定されている対象物(以下、「固定対象物」)を認識し、停止対象物や固定対象物を基準とする上部旋回体3の旋回角度(つまり、上部旋回体3の向き)を推定(算出)する。停止対象物は、移動可能な対象物のうちの移動せずに停止している対象物(例えば、停車しているダンプトラック等)を意味する。また、固定対象物は、ある位置に固定されており移動しない対象物(例えば、木、電柱、後述のスクラップ場に定置される各種装置等)を意味する。具体的には、旋回角度算出部55は、マップ記憶部64に格納される、最新の物体位置マップMP上での上部旋回体3の向き、つまり、物体位置マップMP上で特定される停止対象物や固定対象物から見た上部旋回体3の向き(旋回角度)を推定(算出)する。より具体的には、旋回角度算出部55は、物体位置マップMPにおける停止対象物や固定対象物から旋回軸を見た方向を基準とする、上部旋回体3の旋回角度を推定(算出)してよい。
【0247】
位置推定部59は、撮像装置S6の撮像画像に基づき、ショベル100の周囲の対象物(具体的には、停止対象物や固定対象物)を認識し、認識した対象物に対するショベル100(自機)の位置を把握(推定)する。具体的には、位置推定部59は、マップ記憶部64に格納される物体位置マップMP上でのショベル100の位置、つまり、物体位置マップMP上で特定される停止対象物や固定対象物に対するショベル100の位置を把握(推定)する。これにより、ショベル100は、GNSSを用いずとも、自機の位置を把握することができる。
【0248】
<ショベルの位置の推定方法の具体例>
図14図14A図14B)は、本実施形態に係るショベル100の位置の推定に関する動作の第1例を示す図である。
【0249】
図14に示すように、位置推定部59は、物体位置マップMP上で特定される、ショベル100(自機)の周囲にある固定対象物としての樹木TR21を基準(原点)とするXY座標系におけるショベル100の位置を推定(算出)する。また、旋回角度算出部55は、樹木TR21から見たショベル100(旋回軸)の方向を基準とする上部旋回体3の旋回角度を推定(算出)する。
【0250】
例えば、図14Aの作業状況において、位置推定部59は、樹木TR21を基準とするXY座標系におけるショベル100の位置を、X座標が所定値X1(>0)及びY座標が所定値Y1(>0)と算出する。また、位置推定部59は、樹木TR21から見たショベル100(旋回軸AX)の方向を基準とする上部旋回体3の旋回角度を所定値θ1(>0)と算出する。
【0251】
そして、ショベル100は、図14Aの作業状況から図14Bの作業状況に移行する、つまり、ショベル100は、下部走行体1により樹木TR21から離れる方向に移動し且つ上部旋回体3を左旋回させている。この場合、図14Bの作業状況において、位置推定部59は、樹木TR21を基準とするXY座標系におけるショベル100の位置を、X座標が所定値X2(>X1>0)及びY座標が所定値Y2(>Y1>0)と算出する。また、旋回角度算出部55は、樹木TR21から見たショベル100(旋回軸AX)の方向を基準とする上部旋回体3の旋回角度を所定値θ2(>θ1>0)と算出する。
【0252】
このように、本例では、位置推定部59は、ショベル100(自機)の周囲の樹木TR21を基準とするショベル100の位置を推定する。これにより、コントローラ30は、ショベル100が樹木TR21の周囲で移動しながら作業を行うような状況で、ショベル100の移動に合わせて、樹木TR21を基準とするショベル100の位置を把握し続けることができる。また、旋回角度算出部55は、樹木TR21からショベル100(旋回軸)を見た方向を基準とする上部旋回体3の旋回角度を推定する。これにより、コントローラ30は、ショベル100が樹木TR21の周囲で移動し且つ上部旋回体3を旋回させながら作業を行うような状況で、樹木TR21を基準とする上部旋回体3の向き(つまり、アタッチメントの向き)を把握し続けることができる。
【0253】
[ショベルの位置の推定方法(第2例)]
次に、図15を参照して、コントローラ30によるショベル100(自機)の位置の推定方法の第2例について説明する。以下、本例に係るショベル100の位置の推定に関する機能構成は、図13で示されるため、図示を省略する。
【0254】
<ショベルの位置の推定に関する機能構成>
本例では、上述の第1例と異なる部分を中心に説明する。
【0255】
図13に示すように、本例では、ショベル100は、自機の推定に関する構成として、撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)、コントローラ30を含む。
【0256】
コントローラ30は、ショベル100の位置の推定に関する構成として、マシンガイダンス部50と、周囲状況認識部60とを含む。
【0257】
物体位置マップ生成部63は、上述の第1例の場合と同様、周囲の物体(対象物)に対するショベル100(自機)の位置を表す物体位置マップMPを生成する。本例では、物体位置マップMPは、それぞれの対象物の位置に紐付けられる、対象物の種別情報、対象物の大きさ情報、対象物の位置の精度を示す情報(以下、「精度情報」)等の付随情報が含まれる。これにより、物体位置マップ生成部63は、精度情報を参照し、物体位置マップMPに含まれる対象物の位置の精度を把握することができる。そのため、物体位置マップ生成部63は、例えば、現在のショベル100の位置に対応する局所マップ上のある対象物の精度情報と、直近の処理周期で生成された過去の物体位置マップMP上の同じ対象物の精度情報を比較し、位置の精度が高い方を採用する形で、最新の物体位置マップMPを生成してよい。つまり、物体位置マップ生成部63は、撮像装置S6により取得される相対的に高い精度の物体(対象物)に関する情報に基づき、物体位置マップMPを更新してよい。これにより、物体位置マップ生成部63は、物体位置マップMPの精度を向上させることができる。
【0258】
図15に示すように、撮像装置S6(カメラS6F,S6B)が上下方向の一定角度で撮像可能な距離範囲は、ショベル100に近づくほど、相対的に短くなり、ショベル100から離れるほど、相対的に長くなることが分かる。換言すれば、撮像装置S6は、ショベル100から相対的に近接する領域について、相対的に密度の高い画素情報を取得可能である一方、ショベル100から相対的に離れた遠方の領域について、相対的に粗い画素情報しか取得できない。そのため、ショベル100と対象物との距離が長いほど、相対的に粗い画素情報から対象物の位置が推定されており、相対的に精度が低くなる。よって、精度情報は、検出部62により対象物が検出されたときのショベル100からの距離に基づき生成されてよい。この場合、精度情報は、検出部62により対象物が検出されたときのショベル100からの距離が長くなるほど、対象物の位置の精度が低くなる態様で生成される。
【0259】
また、精度情報は、例えば、対象物が最後に検出されてからの経過時間に基づき生成されてよい。ショベル100とある対象物との距離が相対的に大きく離れ、当該対象物が検出部62により検出されなくなってしまうと、その後、その対象物がそのままの形状でその位置に存在しているのかどうかを判断できないからである。この場合、精度情報は、経過時間が長くなるほど、対象物の精度が低くなる態様で生成されてよい。
【0260】
また、精度情報は、検出部62(物体検出モデルLM)による対象物の認識確率に基づき生成されてもよい。この場合、精度情報は、物体検出モデルLMにより出力される対象物の認識確率が相対的に低くなるほど、対象物の位置情報の精度が低くなる態様で生成されてよい。
【0261】
マシンガイダンス部50は、ショベル100の位置の推定に関する機能構成として、旋回角度算出部55と、位置推定部59とを含む。
【0262】
旋回角度算出部55は、マップ記憶部64に格納される物体位置マップMPから特定される、ショベル100の周囲の停止対象物或いは固定対象物のうち、位置の精度が相対的に高い対象物を基準とする上部旋回体3の向き(旋回角度)を推定(算出)する。例えば、旋回角度算出部55は、ショベル100の周囲の停止対象物或いは固定対象物のうちの位置の精度が相対的に高い(具体的には、所定基準以上である)対象物の中から、所定の条件(例えば、"ショベル100からの距離が最も近いこと"等)に従い、自動で、上部旋回体3の向きの基準とする対象物に選択してよい。また、例えば、旋回角度算出部55は、入力装置42を通じた操作入力に基づき、物体位置マップMPから特定される複数の対象物のうちの位置の精度が相対的に高い対象物の中から選択された停止対象物或いは固定対象物を上部旋回体3の向きの基準としてよい。これにより、旋回角度算出部55は、相対的に位置の精度が高い対象物を基準として、上部旋回体3の旋回角度を推定することができる。よって、旋回角度の推定精度を向上させることができる。
【0263】
位置推定部59は、マップ記憶部64に格納される物体位置マップMPから特定される、ショベル100の周囲の対象物のうち、位置の精度が相対的に高い対象物を基準とするショベル100(自機)の位置を推定(算出)する。例えば、位置推定部59は、ショベル100の周囲の停止対象物或いは固定対象物のうちの位置の精度が相対的に高い(具体的には、所定基準以上である)対象物の中から、所定の条件(例えば、"ショベル100からの距離が最も近いこと"等)に従い、自動で、ショベル100の位置の基準とする対象物に選択してよい。また、例えば、位置推定部59は、入力装置42を通じた操作入力に基づき、物体位置マップMPから特定される複数の対象物のうちの位置の精度が相対的に高い対象物の中から選択された停止対象物或いは固定対象物を、ショベル100の位置の基準としてよい。これにより、位置推定部59は、相対的に位置の精度が高い対象物を基準として、ショベル100(自機)の位置を推定することができる。よって、ショベル100の位置の推定精度を向上させることができる。
【0264】
[ショベルの位置の推定方法(第3例)]
次に、図16を参照し、図8図8A図8B)を援用して、コントローラ30によるショベル100(自機)の位置の推定方法の第3例について説明する。本例では、ショベル100は、下部走行体1の左右それぞれのクローラを自動的に前進・更新させる構成を備えている。具体的には、走行油圧モータ1Lの操作系に関する構成部分、及び、走行油圧モータ1Rの操作系に関する構成部分は、ブームシリンダ7の操作系に関する構成部分等(図4A図4C)と同様に構成される。以下、走行油圧モータ1Lの操作系に関する構成部分、及び、走行油圧モータ1Rの操作に関する構成部分のそれぞれにおける図4Aの比例弁31AL,31ARに相当する構成を、比例弁31DL,31DR、及び比例弁31EL,31ERと称する。
【0265】
<ショベルの位置の推定に関する機能構成>
図16は、本実施形態に係るショベル100の位置の推定に関する機能構成の第3例を示す機能ブロック図である。以下、本例では、上述の図13と異なる部分を中心に説明する。また、本例では、ショベル100は、下部走行体1(具体的には、左右それぞれのクローラ)を自動的に前進・後進させる構成を備える。
【0266】
図16に示すように、本例では、図13の場合と同様、通信装置T1を用いて、管理装置200と通信可能に接続される。
【0267】
管理装置200は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをCPU上で実行することにより実現される機能部として、モデル学習部201と、配信部203とを含む。また、管理装置200は、学習結果記憶部202及び施工情報記憶部204を利用する。学習結果記憶部202及び施工情報記憶部204等は、例えば、管理装置200の補助記憶装置や通信可能な外部記憶装置等により実現可能である。
【0268】
施工情報記憶部204には、ショベル100の作業現場を含む複数の作業現場の施工情報を含む施工情報データベースが構築される。施工情報には、施工目標に関する情報(例えば、目標施工面データ等)が含まれる。
【0269】
配信部203は、施工情報データベースからショベル100の作業現場の施工情報を抽出し、ショベル100に配信する。
【0270】
また、本例では、ショベル100は、自機の位置の推定に関する構成として、撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)、コントローラ30、及び比例弁31CL,31CR,31DL,31DR,31EL,31ERを含む。
【0271】
コントローラ30は、ショベル100の位置の推定に関する構成として、図13の場合と同様、マシンガイダンス部50と、周囲状況認識部60とを含む。
【0272】
周囲状況認識部60は、ショベル100の位置の推定に関する機能構成として、モデル記憶部61と、検出部62と、物体位置マップ生成部63と、マップ記憶部64と、記憶部65と、目標位置情報生成部66とを含む。
【0273】
記憶部65には、管理装置200から配信される施工情報65Aが記憶される。
【0274】
目標位置情報生成部66は、作業時の目標としての作業対象の位置に関する情報(以下、「目標位置情報」)を生成し、物体位置マップMP上に登録する。本例では、目標位置情報生成部66は、施工情報65Aに基づき、作業対象としての目標施工面に関する目標位置情報、具体的には、物体位置マップMP上における目標施工面の位置及び目標施工面の三次元形状を規定する目標位置情報を生成し、物体位置マップMPに登録する。つまり、目標位置情報生成部66は、周囲の物体(対象物)に対するショベル100(自機)の位置に、施工情報65Aに対応する施工目標(目標施工面)の位置を関連付けた物体位置マップMPを生成し、マップ記憶部64に保持する。これにより、コントローラ30(自動制御部54)は、物体位置マップMP上において、ショベル100の位置と、施工目標(目標施工面)との位置関係を把握することができる。
【0275】
マシンガイダンス部50は、ショベル100の位置の推定に関する機能構成として、自動制御部54と、旋回角度算出部55と、相対角度算出部56と、位置推定部59とを含む。
【0276】
相対角度算出部56は、旋回角度算出部55により算出される、物体位置マップMP上での上部旋回体3の向き(旋回角度)と、物体位置マップMPから特定される作業対象としての目標施工面の位置や三次元形状とに基づき、相対角度を算出(推定)する。具体的には、相対角度算出部56は、旋回角度算出部55により算出される、ある対象物から見た上部旋回体3の向き(旋回角度)と、物体位置マップMP上における同じ対象物から見た目標施工面の向きとに基づき、相対角度を算出(推定)してよい。
【0277】
自動制御部54は、位置推定部59により算出(推定)される、ショベル100(自機)の周囲の対象物を基準とするショベル100の位置に基づき、比例弁31DL,DR,31EL,31ERを制御し、下部走行体1を走行させることで、施工情報65Aに対応する目標施工面(具体的には、目標施工面のうちの未施工部分)の前までショベル100を移動させる。具体的には、自動制御部54は、位置推定部59により推定される、物体位置マップMP上でのショベル100の位置と、物体位置マップMP上での目標施工面の位置とに基づき、下部走行体1を走行制御してよい。また、自動制御部54は、相対角度算出部56により算出(推定)される相対角度に基づき、比例弁31CL,31CR,31DL,DR,31EL,31ERを制御し、施工情報65Aに対応する目標施工面に上部旋回体3を正対させる。自動制御部54は、ショベル100を目標施工面の未施工部分の前まで移動させた後に、上部旋回体3が目標施工面に正対するように、上部旋回体3を旋回させてよい。また、自動制御部54は、ショベル100が目標施工面にある程度近づくと、上部旋回体3が目標施工面に正対するように、下部走行体1による走行経路を制御してもよい。また、自動制御部54は、所定範囲内に物体が検出された場合、検出された物体との位置関係に基づき、減圧用比例弁33を制御することで、制動動作(減速、停止)を行うことができる。
【0278】
<ショベルの位置の推定方法の具体例>
図8Aに示すように、本例では、コントローラ30(位置推定部59)は、物体位置マップMP上で特定される、ショベル100(自機)の周囲の固定対象物としての樹木TR2を基準とするショベル100の位置を推定する。
【0279】
例えば、コントローラ30(位置推定部59)は、樹木TR2を基準とするショベル100の位置を逐次算出(推定)する。そして、コントローラ30(位置推定部59)は、オペレータがMCスイッチ等の所定のスイッチを押下した状態で、操作装置26を通じた下部走行体1(具体的には、左右のクローラ)の操作を行うと、樹木TR2を基準とする、ショベル100の位置と法面NSの位置との差分に基づき、比例弁31DL,31DR,31EL,31ERを介して、下部走行体1の走行制御を行う。これにより、図8Aに示すように、コントローラ30は、オペレータによる操作装置26に対する下部走行体1に関する操作をアシストして、ショベル100を法面NSの前まで移動させることができる。また、コントローラ30は、MCスイッチ等の所定のスイッチが押下されると、比例弁31DL,31DR,31EL,31ERを介して、下部走行体1を自動制御し、操作装置26に対する操作に依らず、ショベル100を自動で法面NSの前まで移動させてもよい。
【0280】
また、図8A図8Bに示すように、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、物体位置マップMP上で特定される、ショベル100(自機)の周囲にある固定対象物としての樹木TR2を基準対象物とする旋回角度を算出する。具体的には、コントローラ30は、樹木TR2からショベル100(旋回軸)を見た方向を基準とする旋回角度を算出する。
【0281】
例えば、コントローラ30(旋回角度算出部55)は、図8Aの状態において、樹木TR2を基準対象物とする旋回角度を推定(算出)する。また、コントローラ30(相対角度算出部56)は、推定した旋回角度と、目標施工面としての法面NSに対応する目標位置情報に基づき、相対角度を推定(算出)する。そして、コントローラ30(自動制御部54)は、オペレータがMCスイッチ等の所定のスイッチを押下した状態でレバー装置26Cに対して左旋回操作を行うと、樹木TR2を基準対象物とする旋回角度を推定しながら、上部旋回体3が法面NSに正対するように、比例弁31CLを制御する。これにより、図Bに示すように、コントローラ30は、オペレータによるレバー装置26Cの操作をアシストして、作業対象としての法面NSに正対させることができる。また、コントローラ30は、オペレータがMCスイッチ等の所定のスイッチを押下すると、樹木TR2を基準対象物とする旋回角度を推定しながら、自動で、上部旋回体3を法面NSに正対させてもよい。
【0282】
[ショベルの位置の推定方法(第4例)]
次に、図17図18を参照して、コントローラ30によるショベル100(自機)の位置の推定方法の第4例について説明する。
【0283】
<ショベルの位置の推定に関する機能構成>
図17は、本実施形態に係るショベル100の位置の推定に関する機能構成の第4例を示す機能ブロック図である。以下、本例では、上述の図13と異なる部分を中心に説明する。
【0284】
また、本例では、ショベル100は、自機の位置の推定に関する構成として、撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)、コントローラ30、及び比例弁31CL,31CR,31DL,31DR,31EL,31ERを含む。
【0285】
コントローラ30は、ショベル100の位置の推定に関する構成として、図13の場合と同様、マシンガイダンス部50と、周囲状況認識部60とを含む。
【0286】
周囲状況認識部60は、ショベル100の位置の推定に関する機能構成として、モデル記憶部61と、検出部62と、物体位置マップ生成部63と、マップ記憶部64と、記憶部65と、目標位置情報生成部66とを含む。
【0287】
記憶部65には、目標設定情報65Bが記憶される。
【0288】
目標設定情報65Bは、入力装置42を通じたオペレータ等のユーザからの操作入力により設定される、作業時の目標としての作業対象(例えば、後述するスクラップヤードSTPに積み下ろしに来たダンプトラックやスクラップヤードSTPの各種装置やスクラップの置場等)に関する設定情報である。
【0289】
例えば、オペレータ等は、入力装置42を用いて、表示装置40に表示される所定の操作画面(以下、「目標選択画面」)を操作することにより、物体位置マップMPで特定される一又は複数の対象物の中から作業対象に対応する対象物を選択し、作業時の目標として設定することができる。具体的には、表示装置40の目標選択画面には、撮像装置S6の撮像画像に基づき、ショベル100の周囲の様子を表す画像(以下、「周囲画像」)が表示される。そして、表示装置40の目標選択画面には、当該周囲画像上における、物体位置マップMPで特定されるショベル100の周囲の対象物に対応する位置にマーカや対象物の種別を示す情報が重畳的に表示される。オペレータ等は、当該目標選択画面上で、対象物の位置や種別を確認することで、作業対象を特定し選択(設定)することができる。
【0290】
目標位置情報生成部66は、目標設定情報65Bに基づき、オペレータ等により設定(選択)された作業対象に対応する目標位置情報を生成し、物体位置マップ上に登録する。本例では、目標位置情報生成部66は、目標設定情報65Bに基づき、物体位置マップMP上の対象物のうちのオペレータ等により設定された作業対象に対応する対象物を特定する目標位置情報を生成し、物体位置マップMPに登録する。具体的には、目標位置情報生成部66は。物体位置マップMP上における目標設定情報65Bに対応する作業対象の対象物の位置に、作業対象であること示すフラグ情報や他の作業対象と区別するための識別情報等の付随情報を紐づける形で、物体位置マップMPに登録する。つまり、目標位置情報生成部66は、周囲の物体(対象物)に対するショベル100(自機)の位置に、目標設定情報65Bに対応する所定の作業対象の位置を関連付けた物体位置マップMPを生成し、マップ記憶部64に保持する。これにより、コントローラ30(自動制御部54)は、物体位置マップMP上において、ショベル100の位置と、オペレータ等からの操作入力等で設定された作業対象との位置関係を把握することができる。
【0291】
マシンガイダンス部50は、ショベル100の位置の推定に関する機能構成として、自動制御部54と、旋回角度算出部55と、相対角度算出部56と、位置推定部59とを含む。
【0292】
相対角度算出部56は、旋回角度算出部55により算出される、物体位置マップMP上での上部旋回体3の向き(旋回角度)と、物体位置マップMPから特定される作業対象としての目標施工面の位置や三次元形状とに基づき、相対角度を算出(推定)する。具体的には、相対角度算出部56は、旋回角度算出部55により算出される、ある対象物から見た上部旋回体3の向き(旋回角度)と、物体位置マップMP上における同じ対象物から見た目標施工面の向きとに基づき、相対角度を算出(推定)してよい。
【0293】
自動制御部54は、位置推定部59により算出(推定)される、ショベル100(自機)の周囲の作業対象に対応する対象物を基準とするショベル100の位置に基づき、比例弁31DL,DR,31EL,31ERを制御し、下部走行体1を走行させる。具体的には、自動制御部54は、位置推定部59により推定される、物体位置マップMP上でのショベル100の位置と、物体位置マップMP上での作業対象に対応する対象物の位置とに基づき、下部走行体1を走行制御してよい。これにより、自動制御部54は、オペレータによる操作装置26に対する操作をアシストして、或いは、操作装置26に対する操作に依らず、下部走行体1を制御し、作業対象との衝突しないように、作業対象の前までショベル100を移動させたり、複数の作業対象の間を移動させたりすることができる。また、自動制御部54は、相対角度算出部56により算出(推定)される相対角度に基づき、比例弁31CL,31CRを制御し、作業対象に対応する対象物に上部旋回体3を正対させる。
【0294】
<ショベルの位置の推定方法の具体例>
図18は、本実施形態に係るショベル100の旋回角度の推定に関する動作の第4例を示す図である。具体的には、図18は、スクラップヤードSTPにおいて、複数の作業対象の間を移動しながら作業を行う状況を示す上面図である。本例における作業対象は、スクラップを積み下ろしに来たダンプトラックDT、スクラップヤードSTPの指定のスクラップ置場(スクラップ搬入場、スクラップ分解場、各種装置の前後の集積場)、並びにスクラップヤードSTPの各種装置(破砕機、ライン選別機、振動ふるい機)である。
【0295】
ショベル100は、コントローラ30の制御下で、各種装置を識別することで、当接の可能性の有無を判断する。そして、ショベル100は、コントローラ30の制御下で、当接可能性の有無の判断結果に基づき、制動動作の可否を決定したり、エンドアタッチメントや下部走行体1の目標軌道を生成したりする。
【0296】
本例では、ショベル100は、コントローラ30の制御下で、作業対象としてのダンプトラックDTの荷台からスクラップを取り出す作業ST1を行う。作業ST1は、オペレータ等の操作装置26に対する操作をアシストする態様で行われてもよいし、オペレータ等の操作装置26に対する操作に依らず、自動で行われてもよい。以下、作業ST2の作業についても同様である。コントローラ30は、物体位置マップMPを逐次更新しながら、予め設定される作業対象(ダンプトラックDTやスクラップ搬入場のスクラップ山等)を基準とするショベル100の位置や上部旋回体3の向き(旋回角度)をモニタリングする。これにより、ショベル100は、コントローラ30の制御下で、ダンプトラックDT、スクラップ搬入場内のスクラップ等に自機が当接しないように、アタッチメントを動作させたり、ダンプトラックDTの荷台とスクラップ搬入場との間で往復するように上部旋回体3を旋回させたりすることができる。
【0297】
また、ショベル100は、コントローラ30の制御下で、集積場の分解作業後のスクラップを破砕機に投入し、その後、ライン選別機まで走行移動し、破砕機で破砕された後のスクラップを集積場からライン選別機に投入する作業ST2を連続的に行う。コントローラ30は、物体位置マップMPを逐次更新しながら、予め設定される作業対象(集積場のスクラップ山、破砕機、ライン選別機等)を基準とするショベル100の位置や上部旋回体3の向き(旋回角度)をモニタリングする。これにより、ショベル100は、コントローラ30の制御下で、集積場のスクラップ山や破砕機等に自機が当接しないように、アタッチメントを動作させたり、集積場と破砕機の投入口との間で上部旋回体3を往復旋回させたりすることができる。また、ショベル100は、コントローラ30の制御下で、集積場のスクラップ山、破砕機、ライン選別機等に自機が当接しないように、破砕機の前からライン選別機の前まで下部走行体1で走行することができる。また、ショベル100は、コントローラ30の制御下で、集積場のスクラップ山やライン選別機等に自機が当接しないように、アタッチメントを動作させたり、集積場とライン選別機の投入口との間で上部旋回体3を往復旋回させたりすることができる。
【0298】
このように、本例では、物体位置マップMPに、スクラップヤードSTPの複数の作業対象が予め設定(登録)されることにより、ショベル100は、コントローラ30の制御下で、自機がスクラップヤードSTPの各種装置等と当接しないよう、安全に作業を進めることができる。
【0299】
[ショベルの位置の推定方法(第5例)]
次に、コントローラ30によるショベル100(自機)の位置の推定方法の第例について説明する。
【0300】
尚、本例に係るショベル100の位置の推定に関する機能構成を表す機能ブロック図は、上述の第1例~第4例の何れかの機能ブロック図(図13或いは図17)を援用可能であるため、図示を省略する。
【0301】
コントローラ30は、上述の旋回角度の推定方法の第3例(図10図11)の場合と同様、ショベル100から見た基準対象物の位置の時系列での変化に基づき、ショベル100の移動距離、移動方向を推定(算出)してよい。また、コントローラ30は、ショベル100から見た基準対象物の位置の時系列での変化に基づき、ある時刻を基準として、時系列での移動距離及び移動方向を積算することにより、ショベル100の位置を推定(算出)してよい。これにより、コントローラ30は、ショベル100から見た基準対象物の位置の履歴を把握することで、ショベル100の移動距離、移動方向、位置等を算出(推定)することができる。
【0302】
また、コントローラ30は、上述の旋回角度の推定方法の第3例(図10図11)の場合と同様、ショベル100の周囲の複数の基準対象物を利用して、ショベル100の移動距離、移動方向、位置等を推定(算出)してよい。これにより、コントローラ30は、一部の基準対象物が非検出状態になった場合であっても、検出状態の他の基準対象物が存在する場合、ショベル100から見た他の基準対象物の位置の変化に基づき、ショベル100の移動距離、移動方向、位置等を推定することができる。即ち、コントローラ30は、複数の基準対象物を利用することで、一部の基準対象物が非検出状態になるような状況であっても、ショベル100の移動距離、移動方向、位置等の推定処理を安定して継続することができる。
【0303】
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0304】
例えば、上述の実施形態において、ショベル100の旋回角度や位置の推定機能は、ショベル100と通信可能に接続される所定の外部装置(例えば、管理装置200)に移管されてもよい。この場合、撮像装置S6や距離測定装置S7等の出力は、ショベル100から管理装置200に送信される。これにより、管理装置200は、ショベル100から受信される情報に基づき、旋回角度や位置を推定しながら、ショベル100とショベル100の周囲の物体との位置関係を把握し、その結果をショベル100に送信しフィードバックすることができる。そのため、ショベル100側(コントローラ30)の処理負荷を軽減させることができる。
【0305】
また、上述の実施形態において、ショベル100の監視領域内や監視領域外で検出された監視対象に関する情報は、ショベル100から管理装置200に送信されてもよい。この場合、管理装置200において、ショベル100の監視領域内や監視領域外における監視対象の種類や監視対象の位置等に関する情報が時系列的に所定の記憶部に記憶される。管理装置200の記憶部に記憶される監視対象に関する情報には、対象のショベル100の監視領域外、且つ、(同じ作業現場の)他のショベル100の監視対象内における監視対象の種類や監視対象の位置等に関する情報が含まれてよい。
【0306】
最後に、本願は、2019年3月27日に出願した日本国特許出願2019-61772号及び2019年3月27日に出願した日本国特許出願2019-61773号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0307】
1 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
26 操作装置
26A~26C レバー装置
30 コントローラ(制御装置)
31,31AL,31AR,31BL,31BR,31CL,31CR 比例弁
50 マシンガイダンス部
54 自動制御部
55 旋回角度算出部
56 相対角度算出部
57 記憶部
57A 目標設定情報
57B 施工情報
58 目標位置情報生成部
59 位置推定部
60 周囲状況認識部
62 検出部
63 物体位置マップ生成部
64 マップ記憶部
65 記憶部
65A 施工情報
65B 目標設定情報
66 目標位置情報生成部
100 ショベル
200 管理装置
MP 物体位置マップ
S6 撮像装置
S6B,S6F,S6L,S6R カメラ(取得装置)
T1 通信装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18