(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】眼科画像処理装置、眼科画像処理プログラム、および眼科画像処理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2021522886
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2020021231
(87)【国際公開番号】W WO2020241794
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2019102913
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】柴 涼介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 壮平
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 佳紀
【審査官】廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0315193(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0242306(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0230564(US,A1)
【文献】特開2011-120657(JP,A)
【文献】特開2014-104275(JP,A)
【文献】特開2018-005841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理装置であって、
前記眼科画像処理装置の制御部は、
眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像について、前記被検眼の疾患に関する解析結果、前記被検眼の構造に関する解析結果、および、取得された前記眼科画像を変換した変換画像の少なくともいずれかの医療データを取得するための適正度を示す評価情報を取得する評価情報取得ステップと、
機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに、前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像
を入力することで、前記医療データを取得する医療データ取得ステップと、
を実行し、
前記数学モデルは、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、前記入力用訓練データに対応する前記医療データを出力用訓練データとする複数の訓練用データセットによって訓練されており、
前記医療データ取得ステップにおいて、前記制御部は、前記評価情報取得ステップで取得された前記評価情報が
、前記数学モデルの訓練に用いられた複数の前記入力用訓練データに基づいて設定された基準を満たすか否かに応じて、前記医療データの取得方法を変更することを特徴とする眼科画像処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の眼科画像処理装置であって、
前記制御部は、前記医療データ取得ステップにおいて、前記眼科画像の前記評価情報に関する情報を、前記眼科画像と共に前記数学モデルに入力することで、前記医療データを取得することを特徴とする眼科画像処理装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の眼科画像処理装置であって、
前記制御部は、前記医療データ取得ステップにおいて、
前記眼科画像の前記評価情報が基準を満たさない場合に、前記眼科画像の評価情報を前記基準に近づける評価情報改善処理を前記眼科画像に対して実行し、
前記評価情報改善処理が行われた眼科画像に基づいて、前記医療データを取得することを特徴とする眼科画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の眼科画像処理装置であって、
前記制御部は、前記医療データ取得ステップにおいて、
前記眼科画像の前記評価情報が基準を満たさない場合に、前記眼科画像が撮影された部位と同一の部位を追加撮影する指示を出力し、
追加撮影された眼科画像に基づいて、前記医療データを取得することを特徴とする眼科画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から
3のいずれかに記載の眼科画像処理装置であって、
前記制御部は、前記医療データ取得ステップにおいて、
前記眼科画像の前記評価情報が基準を満たさない場合に、前記眼科画像が撮影された部位と同一の部位を追加撮影する指示を出力し、
追加撮影された画像が加算平均処理された眼科画像に基づいて、前記医療データを取得することを特徴とする眼科画像処理装置。
【請求項6】
被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理装置によって実行される眼科画像処理プログラムであって、
前記眼科画像処理プログラムが前記眼科画像処理装置の制御部によって実行されることで、
眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像について、前記被検眼の疾患に関する解析結果、前記被検眼の構造に関する解析結果、および、取得された前記眼科画像を変換した変換画像の少なくともいずれかの医療データを取得するための適正度を示す評価情報を取得する評価情報取得ステップと、
機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに、前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像
を入力することで、前記医療データを取得する医療データ取得ステップと、
を前記眼科画像処理装置に実行させると共に、
前記数学モデルは、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、前記入力用訓練データに対応する前記医療データを出力用訓練データとする複数の訓練用データセットによって訓練されており、
前記医療データ取得ステップでは、前記評価情報取得ステップで取得された前記評価情報が
、前記数学モデルの訓練に用いられた複数の前記入力用訓練データに基づいて設定された基準を満たすか否かに応じて、前記医療データの取得方法が変更されることを特徴とする眼科画像処理プログラム。
【請求項7】
被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理システムであって、
前記眼科画像処理システムは、
参照光と、被検眼の組織に照射された測定光の反射光との干渉光を受光することで、前記組織の断層画像である眼科画像を撮影するOCT装置を含み、
前記眼科画像処理システムの制御部は、
前記OCT装置によって撮影された眼科画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像について、前記被検眼の疾患に関する解析結果、前記被検眼の構造に関する解析結果、および、取得された前記眼科画像を変換した変換画像の少なくともいずれかの医療データを取得するための適正度を示す評価情報を取得する評価情報取得ステップと、
機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに、前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像を入力することで、前記医療データを取得する医療データ取得ステップと、
を実行し、
前記数学モデルは、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、前記入力用訓練データに対応する前記医療データを出力用訓練データとする複数の訓練用データセットによって訓練されており、
前記制御部はさらに、
前記評価情報取得ステップにおいて取得された前記評価情報が
、前記数学モデルの訓練に用いられた複数の前記入力用訓練データに基づいて設定された基準を満たさない場合に、前記眼科画像が撮影された部位と同一の部位を追加撮影する処理、および、前記眼科画像に対する追加撮影された画像の加算平均処理を実行する加算ステップ
を実行し、
前記医療データ取得ステップでは、前記加算平均処理が実行された前記眼科画像を、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに入力することで、前記医療データを取得す
ることを特徴とする眼科画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼科画像の処理に使用される眼科画像処理装置、眼科画像処理プログラム、および眼科画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検眼の眼科画像に基づいて、種々の医療データを取得する技術が提案されている。例えば、非特許文献1で開示されている技術では、眼科画像に写っている組織の各層の境界に関する解析結果が、眼科画像に基づいて取得される。また、被検眼の疾患に関する解析結果、または、眼科画像を変換した変換画像を、撮影された眼科画像に基づいて取得することも考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Yufan He, Aaron Carass, et al. “Topology guaranteed segmentation of the human retina from OCT using convolutional neural networks.”arXiv:1803.05120, 14 Mar 2018
【発明の概要】
【0004】
眼科画像に基づいて医療データを取得する場合、撮影された眼科画像が、医療データを取得するために適していない眼科画像である場合もあり得る。不適切な眼科画像に基づいて医療データが取得されると、医療データの信頼性が低下し、医師等にとって有用なデータとならない場合が多い。
【0005】
本開示の典型的な目的は、眼科画像に基づいて医療データを適切に取得することが可能な眼科画像処理装置、眼科画像処理プログラム、および眼科画像処理システムを提供することである。
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科画像処理装置は、被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理装置であって、前記眼科画像処理装置の制御部は、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像について、前記被検眼の疾患に関する解析結果、前記被検眼の構造に関する解析結果、および、取得された前記眼科画像を変換した変換画像の少なくともいずれかの医療データを取得するための適正度を示す評価情報を取得する評価情報取得ステップと、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに、前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像を入力することで、前記医療データを取得する医療データ取得ステップと、を実行し、前記数学モデルは、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、前記入力用訓練データに対応する前記医療データを出力用訓練データとする複数の訓練用データセットによって訓練されており、前記医療データ取得ステップにおいて、前記制御部は、前記評価情報取得ステップで取得された前記評価情報が、前記数学モデルの訓練に用いられた複数の前記入力用訓練データに基づいて設定された基準を満たすか否かに応じて、前記医療データの取得方法を変更する。
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科画像処理プログラムは、被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理装置によって実行される眼科画像処理プログラムであって、前記眼科画像処理プログラムが前記眼科画像処理装置の制御部によって実行されることで、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像について、前記被検眼の疾患に関する解析結果、前記被検眼の構造に関する解析結果、および、取得された前記眼科画像を変換した変換画像の少なくともいずれかの医療データを取得するための適正度を示す評価情報を取得する評価情報取得ステップと、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに、前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像を入力することで、前記医療データを取得する医療データ取得ステップと、を前記眼科画像処理装置に実行させると共に、前記数学モデルは、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、前記入力用訓練データに対応する前記医療データを出力用訓練データとする複数の訓練用データセットによって訓練されており、前記医療データ取得ステップでは、前記評価情報取得ステップで取得された前記評価情報が、前記数学モデルの訓練に用いられた複数の前記入力用訓練データに基づいて設定された基準を満たすか否かに応じて、前記医療データの取得方法が変更される。
【0008】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科画像処理システムは、被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理システムであって、前記眼科画像処理システムは、参照光と、被検眼の組織に照射された測定光の反射光との干渉光を受光することで、前記組織の断層画像である眼科画像を撮影するOCT装置を含み、前記眼科画像処理システムの制御部は、前記OCT装置によって撮影された眼科画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像について、前記被検眼の疾患に関する解析結果、前記被検眼の構造に関する解析結果、および、取得された前記眼科画像を変換した変換画像の少なくともいずれかの医療データを取得するための適正度を示す評価情報を取得する評価情報取得ステップと、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに、前記画像取得ステップにおいて取得された前記眼科画像を入力することで、前記医療データを取得する医療データ取得ステップと、を実行し、前記数学モデルは、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、前記入力用訓練データに対応する前記医療データを出力用訓練データとする複数の訓練用データセットによって訓練されており、前記制御部はさらに、前記評価情報取得ステップにおいて取得された前記評価情報が、前記数学モデルの訓練に用いられた複数の前記入力用訓練データに基づいて設定された基準を満たさない場合に、前記眼科画像が撮影された部位と同一の部位を追加撮影する処理、および、前記眼科画像に対する追加撮影された画像の加算平均処理を実行する加算ステップを実行し、前記医療データ取得ステップでは、前記加算平均処理が実行された前記眼科画像を、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに入力することで、前記医療データを取得する。
【0009】
本開示に係る眼科画像処理装置、眼科画像処理プログラム、および眼科画像処理システムによると、眼科画像に基づいて医療データを適切に取得することができる。
【0010】
本開示で例示する眼科画像処理装置の制御部は、画像取得ステップ、評価情報取得ステップ、および医療データ取得ステップを実行する。画像取得ステップでは、制御部は、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得する。評価情報取得ステップでは、制御部は、画像取得ステップにおいて取得された眼科画像について、医療データを取得するための適正度を示す評価情報を取得する。医療データとは、被検眼に疾患に関する解析結果、被検眼の構造に関する解析結果、および、眼科画像を変換した変換画像のデータの少なくともいずれかである。医療データ取得ステップでは、制御部は、画像データ取得ステップにおいて取得された眼科画像に基づいて医療データを取得する。制御部は、医療データ取得ステップにおいて、眼科画像の評価情報が基準を満たすか否かに応じて医療データの取得方法を変更する。
【0011】
本開示で例示する眼科画像処理装置によると、医療データを取得するための適正度を示す評価情報が眼科画像について取得され、評価情報に応じて医療データの取得方法が変更される。従って、眼科画像の評価情報に応じて、眼科画像から医療データが適切に取得される。
【0012】
なお、眼科画像の評価情報には、眼科画像の画質に関する種々のパラメータを適宜使用することが可能である。例えば、眼科画像の信号の強さ、または、信号の良好さを示す指標(例えば、SSI(Signal Strength Index)またはQI(Quality Index)等)が、眼科画像の評価情報として使用されてもよい。また、画像の信号レベルに対するノイズレベルの比(SNR(Signal to Noise Ratio)、背景のノイズレベル、画像のコントラスト等の少なくともいずれかが、眼科画像の評価情報として使用されてもよい。また、眼科画像撮影装置によって眼科画像が撮影された際の撮影条件(例えば、光を組織上でスキャンさせて眼科画像を撮影する際の、スキャンに関する条件、および露光時間等の少なくともいずれか)が、評価情報として使用されてもよい。また、同一部位の画像を複数枚撮影し、複数枚の画像の加算処理(例えば、加算平均処理)を行うことで眼科画像が取得される場合、加算処理に用いられた画像の枚数(以下、「加算枚数」という)が評価情報として使用されてもよい。
【0013】
また、眼科画像に基づいて取得される医療データの具体的内容も適宜選択できる。例えば、被検眼に何等かの疾患があるか否かを示す自動解析結果が、医療データとして眼科画像から取得されてもよい。この場合、例えば、各々の疾患が存在する確率等が、解析結果として取得されてもよい。また、被検眼の構造の解析結果の内容も適宜選択できる。例えば、被検眼の組織(例えば眼底等)の断層画像から、組織の層および層の境界の少なくともいずれかの解析結果が、医療データとして取得されてもよい。また、被検眼の眼底画像から、眼底血管の解析結果が医療データとして取得されてもよい。この場合、解析結果には、眼底の動脈と静脈の解析結果(判別結果)が含まれていてもよい。また、眼科画像を変換した変換画像を取得する方法も適宜選択できる。例えば、画質が低い眼科画像から、高画質画像のデータが変換画像のデータとして取得されてもよい。この場合、高画質画像のデータは、例えば、眼科画像のノイズを減少させることで取得されてもよいし、眼科画像のコントラストを向上させることで取得されてもよい。また、眼科画像の解像度を高めた高解像度画像が、変換画像として取得されてもよい。また、眼科画像の視認性を高めた画像、または、眼科画像に写る特定の構造の強調等を行った画像等が、変換画像として取得されてもよい。
【0014】
制御部は、医療データ取得ステップにおいて、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに眼科画像を入力することで医療データを取得してもよい。この場合、複数の訓練用データによって訓練された数学モデルが用いられることで、機械学習アルゴリズムを利用しない関数等では医療データを適切に取得することが困難な場合等でも、有用な医療データが取得され易い。
【0015】
また、機械学習アルゴリズムを利用する場合には、数学モデルの訓練に使用された眼科画像の品質と、数学モデルに入力される眼科画像の品質に差がある程、数学モデルから出力される医療データの信頼性が低下する。しかし、本実施形態の眼科画像処理装置は、眼科画像の適正度(例えば画像の品質等)を示す評価情報に応じて、医療データの取得方法を変更することができる。従って、医師等にとって有用な医療データが、より適切に取得され易い。
【0016】
ただし、制御部は、医療データ取得ステップにおいて、機械学習アルゴリズムを利用せずに、眼科画像から医療データを取得することも可能である。例えば、機械学習アルゴリズムを利用せずに、関数を用いて眼科画像の画像処理を行うことで、前述した医療データを取得する場合でも、本開示で例示する技術の少なくとも一部を適用できる。
【0017】
また、制御部は、数学モデルを実現するためのプログラムが記憶された他のデバイス(例えばサーバ等)に眼科画像を出力してもよい。眼科画像の出力先のデバイスは、眼科画像処理装置から入力された眼科画像を数学モデルに入力することで、医療データを取得し、取得した医療データを眼科画像処理装置に出力してもよい。制御部は、眼科画像の出力先のデバイスから入力される医療データを取得してもよい。
【0018】
機械学習アルゴリズムが利用される場合、数学モデルは、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、入力用訓練データに対応する医療データを出力用訓練データとする複数の訓練用データセットによって訓練されていてもよい。評価情報の基準は、数学モデルの訓練に用いられた複数の入力用訓練データに基づいて設定されてもよい。この場合、数学モデルの訓練に用いられた複数の入力用訓練データに基づいて、評価情報の基準が適切に設定される。例えば、数学モデルに入力される眼科画像の画質が、入力用訓練データの画質に近いか否かを判断する場合等に、設定された基準を用いてより適切に判断が行われる。
【0019】
入力用訓練データに基づいて評価情報の基準を設定するための具体的な方法も、適宜選択できる。例えば、複数の入力用訓練データの評価情報の分布を示す値(例えば、平均値および標準偏差σ等)を取得し、取得した値から設定される所定範囲内(例えば、±3σの範囲内等)に評価情報が収まるか否かの境界を、基準として設定してもよい。
【0020】
ただし、評価情報の基準の設定方法を変更することも可能である。例えば、固定された基準が予め設定されていてもよい。複数の眼科画像の各々について、眼科画像から医療データを適切に取得できたか否かを示す情報が得られている場合には、各々の眼科画像の評価情報と、医療データを適切に取得できたか否かを示す情報との関係に基づいて、評価情報の基準が設定されてもよい。また、ユーザから入力された指示に応じて基準が設定されてもよい。
【0021】
また、眼科画像の評価情報を比較するための基準(つまり、医療データを取得するための適正度を判断する第1基準)と、撮影された眼科画像がユーザに観察させる画像として適切であるか否かを判断するための基準(つまり、撮影が成功したか否かを判断する第2基準)が別で設定されていてもよい。この場合、眼科画像が適切であるか否かがより適切に判断される。また、制御部は、眼科画像が第1基準を満たすか否かを示す情報と、眼科画像が第2基準を満たすか否かを示す情報を、同時に、または別々にユーザに通知してもよい。この場合、ユーザは、眼科画像が適切であるか否かを状況に応じて適切に把握することができる。
【0022】
制御部は、医療データ取得ステップにおいて、眼科画像の評価情報に関する情報を、眼科画像と共に数学モデルに入力することで、利用データを取得してもよい。この場合、眼科画像の評価情報も考慮されたうえで、数学モデルから医療データが出力される。従って、出力される医療データの信頼性が向上する。
【0023】
なお、評価情報に関する情報を数学モデルに入力する場合、数学モデルは、評価情報が異なる多数の入力用訓練データによって予め訓練されていてもよい。この場合、入力される眼科画像の評価情報に応じたアルゴリズムに従って、医療データが適切に数学モデルから出力される。
【0024】
また、数学モデルに入力される評価情報に関する情報は、評価情報そのものであってもよいし、評価情報から得られる情報(例えば、評価情報が基準を満たしているか否かを示す情報等)であってもよい。
【0025】
制御部は、医療データ取得ステップにおいて、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合に、眼科画像の評価情報を基準に近づける評価情報改善処理を、眼科画像に対して実行してもよい。制御部は、評価情報改善処理が行われた眼科画像に基づいて、医療データを取得してもよい。この場合、眼科画像撮影装置から取得された眼科画像の評価情報(例えば画質等)が基準を満たさない場合でも、評価情報改善処理が行われたうえで、眼科画像から医療データが取得される。よって、取得される医療データの信頼性が適切に向上する。
【0026】
なお、評価情報改善処理の具体的な内容は適宜選択できる。例えば、公知のノイズ除去処理、先鋭化処理等の画像処理の少なくともいずれかが、眼科画像に対して実行されてもよい。また、機械学習アルゴリズムを利用して、眼科画像に対する評価情報改善処理が実行されてもよい。また、制御部は、眼科画像を撮影した眼科画像撮影装置とは異なる装置によって取得された、同一の被検眼の画像または各種測定結果等のデータを取得し、取得したデータを利用して評価情報改善処理を実行してもよい。
【0027】
制御部は、医療データ取得ステップにおいて、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合に、眼科画像が撮影された部位と同一の部位を追加撮影する指示を出力してもよい。制御部は、追加撮影された眼科画像に基づいて、医療データを取得してもよい。この場合、評価情報が基準を満たすように、同一の部位の眼科画像の撮り直しが実行される。従って、取得される医療データの信頼性が適切に向上する。
【0028】
制御部は、医療データ取得ステップにおいて、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合に、眼科画像が撮影された部位と同一の部位を追加撮影する指示を出力してもよい。制御部は、追加撮影された画像が加算平均された眼科画像に基づいて、医療データを取得してもよい。この場合、加算平均処理によって評価情報が基準に近づいた眼科画像に基づいて、医療データが取得される。よって、取得される医療データの信頼性が適切に向上する。なお、制御部は、評価情報が基準を満たすまで、同一の部位の撮影処理、および、追加撮影された画像の加算平均処理を実行してもよい。この場合、医療データの信頼性はさらに向上する。
【0029】
制御部は、画像取得ステップにおいて、同一の被検眼の同一の組織を撮影した複数の眼科画像を取得してもよい。制御部は、医療データ取得ステップにおいて、複数の眼科画像のうち、評価情報が基準を満たす少なくとも1つの眼科画像に基づいて、医療データを取得してもよい。この場合、同一の部位を撮影した複数の眼科画像から、医療データを取得するために用いられる眼科画像が、評価情報に基づいて適切に選択される。よって、取得される医療データの信頼性が適切に向上する。
【0030】
制御部は、医療データ取得ステップにおいて、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合に、ユーザに対する警告情報を出力してもよい。この場合、ユーザは、医療データが取得される基となる眼科画像の評価情報が基準を満たさない旨を把握したうえで、診断または追加検査の要否等の各種判断を適切に行うことができる。
【0031】
なお、警告情報を出力するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、眼科画像の評価情報が基準を満たす場合にのみ、眼科画像に基づいて医療データを取得する処理を行い、評価情報が基準を満たさない場合には、眼科画像に基づいて医療データを取得する処理を行わずに警告情報を出力してもよい。この場合、ユーザは、眼科画像の評価情報が基準を満たさない旨(つまり、取得される医療データの信頼性が低くなる可能性がある旨)を、警告情報によって把握したうえで、各種判断を行うことができる。また、制御部は、評価情報が基準を満たさない場合に、警告情報を出力すると共に、評価情報が基準を満たさない眼科画像から医療データを取得させるか否かのユーザからの指示の入力を受け付けても良い。制御部は、医療データを取得させる指示が入力された場合に、評価情報が基準を満たさない眼科画像に基づいて医療データを取得してもよい。
【0032】
また、制御部は、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合でも、眼科画像に基づいて医療データを取得し、取得した医療データに警告情報を付随させて出力してもよい。この場合、ユーザは、評価情報が基準を満たさない眼科画像に基づいて医療データが取得された旨を、警告情報によって容易に把握することができる。
【0033】
画像取得ステップ、評価情報取得ステップ、および医療データ取得ステップを実行するデバイスは、適宜選択できる。例えば、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)の制御部が、画像取得ステップ、評価情報取得ステップ、および医療データ取得ステップの全てを実行してもよい。つまり、PCの制御部は、眼科画像撮影装置から眼科画像を取得し、取得した眼科画像に基づいて、評価情報の取得処理および医療データの取得処理を行ってもよい。また、眼科画像撮影装置の制御部が、画像取得ステップ、評価情報取得ステップ、および医療データ取得ステップの全てを実行してもよい。また、複数のデバイス(例えば、眼科画像撮影装置およびPC等)の制御部が協働して、画像取得ステップ、評価情報取得ステップ、および医療データ取得ステップを実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】数学モデル構築装置1、眼科画像処理装置21、および眼科画像撮影装置11A,11Bの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】数学モデル構築装置1が実行する数学モデル構築処理のフローチャートである。
【
図3】被検眼の眼底組織における構造の解析結果を数学モデルに出力させる場合の、入力用訓練データの一例を示す図である。
【
図4】被検眼の眼底組織における構造の解析結果を数学モデルに出力させる場合の、出力用訓練データの一例を示す図である。
【
図5】変換画像を数学モデルに出力させる場合の、入力用訓練データと出力用訓練データの一例を示す図である。
【
図6】眼科画像処理システム100が実行する眼科画像処理のフローチャートである。
【
図7】第1実施形態の眼科画像処理システム100が実行する医療データ取得処理のフローチャートである。
【
図8】第2実施形態の眼科画像処理システム100が実行する医療データ取得処理のフローチャートである。
【
図9】第3実施形態の眼科画像処理システム100が実行する医療データ取得処理のフローチャートである。
【
図10】第4実施形態の眼科画像処理システム100が実行する医療データ取得処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(装置構成)
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態では、数学モデル構築装置1、眼科画像処理装置21、および眼科画像撮影装置11A,11Bが用いられる。数学モデル構築装置1は、機械学習アルゴリズムによって数学モデルを訓練させることで、数学モデルを構築する。構築された数学モデルを実現するプログラムは、眼科画像処理装置21の記憶装置24に記憶される。眼科画像処理装置21は、数学モデルに眼科画像を入力することで、医療データを取得する。眼科画像撮影装置11A,11Bは、被検眼の組織の画像である眼科画像を撮影する。
【0036】
一例として、本実施形態の数学モデル構築装置1にはパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)が用いられる。詳細は後述するが、数学モデル構築装置1は、眼科画像撮影装置11Aから取得した眼科画像(以下、「訓練用眼科画像」という)と、訓練用眼科画像に対応する医療データとを利用して数学モデルを訓練させることで、数学モデルを構築する。しかし、数学モデル構築装置1として機能できるデバイスは、PCに限定されない。例えば、眼科画像撮影装置11Aが数学モデル構築装置1として機能してもよい。また、複数のデバイスの制御部(例えば、PCのCPUと、眼科画像撮影装置11AのCPU13A)が、協働して数学モデルを構築してもよい。
【0037】
また、本実施形態では、眼科画像に基づいて医療データを取得する眼科画像処理システム100に、PCである眼科画像処理装置21と、眼科画像撮影装置11Bが含まれる。しかし、眼科画像処理システムの構成を変更することも可能である。例えば、眼科画像処理装置21および眼科画像撮影装置11Bの一方が、単体で眼科画像処理システムとして機能してもよい。また、眼科画像処理装置21は、PC以外のデバイス(例えば、タブレット端末またはスマートフォン等の携帯端末)であってもよい。複数のデバイスの制御部が協働して、眼科画像処理装置21として機能してもよい。また、眼科画像処理装置21とは異なるデバイス(例えばサーバ等)が、数学モデルに眼科画像を入力して医療データを取得してもよい。この場合、眼科画像処理装置21は、数学モデルを実現させるプログラムが記憶されたデバイスに眼科画像を出力し、デバイスから医療データを入力することで、医療データを取得してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、各種処理を行うコントローラの一例としてCPUが用いられる場合について例示する。しかし、各種デバイスの少なくとも一部に、CPU以外のコントローラが用いられてもよいことは言うまでもない。例えば、コントローラとしてGPUを採用することで、処理の高速化を図ってもよい。
【0039】
数学モデル構築装置1について説明する。数学モデル構築装置1は、例えば、眼科画像処理装置21または眼科画像処理プログラムをユーザに提供するメーカー等に配置される。数学モデル構築装置1は、各種制御処理を行う制御ユニット2と、通信I/F5を備える。制御ユニット2は、制御を司るコントローラであるCPU3と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置4を備える。記憶装置4には、後述する数学モデル構築処理(
図2参照)を実行するための数学モデル構築プログラムが記憶されている。また、通信I/F5は、数学モデル構築装置1を他のデバイス(例えば、眼科画像撮影装置11Aおよび眼科画像処理装置21等)と接続する。
【0040】
数学モデル構築装置1は、操作部7および表示装置8に接続されている。操作部7は、ユーザが各種指示を数学モデル構築装置1に入力するために、ユーザによって操作される。操作部7には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の少なくともいずれかを使用できる。なお、操作部7と共に、または操作部7に代えて、各種指示を入力するためのマイク等が使用されてもよい。表示装置8は、各種画像を表示する。表示装置8には、画像を表示可能な種々のデバイス(例えば、モニタ、ディスプレイ、プロジェクタ等の少なくともいずれか)を使用できる。なお、本開示における「画像」には、静止画像も動画像も共に含まれる。
【0041】
数学モデル構築装置1は、眼科画像撮影装置11Aから眼科画像のデータ(以下、単に「眼科画像」という場合もある)を取得することができる。数学モデル構築装置1は、例えば、有線通信、無線通信、着脱可能な記憶媒体(例えばUSBメモリ)等の少なくともいずれかによって、眼科画像撮影装置11Aから眼科画像のデータを取得してもよい。
【0042】
眼科画像処理装置21について説明する。眼科画像処理装置21は、例えば、被検者の診断または検査等を行う施設(例えば、病院または健康診断施設等)に配置される。眼科画像処理装置21は、各種制御処理を行う制御ユニット22と、通信I/F25を備える。制御ユニット22は、制御を司るコントローラであるCPU23と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置24を備える。記憶装置24には、後述する眼科画像処理(
図6参照)を実行するための眼科画像処理プログラムが記憶されている。眼科画像処理プログラムには、数学モデル構築装置1によって構築された数学モデルを実現させるプログラムが含まれる。通信I/F25は、眼科画像処理装置21を他のデバイス(例えば、眼科画像撮影装置11Bおよび数学モデル構築装置1等)と接続する。
【0043】
眼科画像処理装置21は、操作部27および表示装置28に接続されている。操作部27および表示装置28には、前述した操作部7および表示装置8と同様に、種々のデバイスを使用することができる。
【0044】
眼科画像処理装置21は、眼科画像撮影装置11Bから眼科画像を取得することができる。眼科画像処理装置21は、例えば、有線通信、無線通信、着脱可能な記憶媒体(例えばUSBメモリ)等の少なくともいずれかによって、眼科画像撮影装置11Bから眼科画像を取得してもよい。また、眼科画像処理装置21は、数学モデル構築装置1によって構築された数学モデルを実現させるプログラム等を、通信等を介して取得してもよい。
【0045】
眼科画像撮影装置11A,11Bについて説明する。一例として、本実施形態では、数学モデル構築装置1に眼科画像を提供する眼科画像撮影装置11Aと、眼科画像処理装置21に眼科画像を提供する眼科画像撮影装置11Bが使用される場合について説明する。しかし、使用される眼科画像撮影装置の数は2つに限定されない。例えば、数学モデル構築装置1および眼科画像処理装置21は、複数の眼科画像撮影装置から眼科画像を取得してもよい。また、数学モデル構築装置1および眼科画像処理装置21は、共通する1つの眼科画像撮影装置から眼科画像を取得してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、眼科画像撮影装置11(11A,11B)として、OCT装置を例示する。ただし、OCT装置以外の眼科画像撮影装置(例えば、レーザ走査型検眼装置(SLO)、眼底カメラ、シャインプルーフカメラ、または角膜内皮細胞撮影装置(CEM)等)が用いられてもよい。
【0047】
眼科画像撮影装置11(11A,11B)は、各種制御処理を行う制御ユニット12(12A,12B)と、眼科画像撮影部16(16A,16B)を備える。制御ユニット12は、制御を司るコントローラであるCPU13(13A,13B)と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置14(14A,14B)を備える。後述する眼科画像処理(
図4参照)の少なくとも一部を眼科画像撮影装置11が実行する場合には、眼科画像処理を実行するための眼科画像処理プログラムの少なくとも一部が記憶装置14に記憶されることは言うまでもない。
【0048】
眼科画像撮影部16は、被検眼の眼科画像を撮影するために必要な各種構成を備える。本実施形態の眼科画像撮影部16には、OCT光源、OCT光源から出射されたOCT光を測定光と参照光に分岐する分岐光学素子、測定光を走査するための走査部、測定光を被検眼に照射するための光学系、被検眼の組織によって反射された光と参照光の合成光を受光する受光素子等が含まれる。
【0049】
眼科画像撮影装置11は、被検眼の眼底の二次元断層画像および三次元断層画像を撮影することができる。詳細には、CPU13は、スキャンライン上にOCT光(測定光)を走査させることで、スキャンラインに交差する断面の二次元断層画像(
図3および
図5参照)を撮影する。また、CPU13は、OCT光を二次元的に走査することによって、組織における三次元断層画像を撮影することができる。例えば、CPU13は、組織を正面から見た際の二次元の領域内において、位置が互いに異なる複数のスキャンライン上の各々に測定光を走査させることで、複数の二次元断層画像を取得する。次いで、CPU13は、撮影された複数の二次元断層画像を組み合わせることで、三次元断層画像を取得する。
【0050】
さらに、CPU13は、組織上の同一部位(本実施形態では、同一のスキャンライン上)に測定光を複数回走査させることで、同一部位の眼科画像を複数撮影する。CPU13は、同一部位の複数の眼科画像に対して加算平均処理を行うことで、スペックルノイズの影響が抑制された加算平均画像を取得することができる。加算平均処理は、例えば、複数の眼科画像のうち、同一の位置の画素の画素値を平均化することで行われてもよい。加算平均処理を行う画像の数が多い程、スペックルノイズの影響は抑制され易いが、撮影時間は長くなる。なお、眼科画像撮影装置11は、同一部位の眼科画像を複数撮影する間に、被検眼の動きにOCT光の走査位置を追従させるトラッキング処理を実行する。
【0051】
(数学モデル構築処理)
図2~
図5を参照して、数学モデル構築装置1が実行する数学モデル構築処理について説明する。数学モデル構築処理は、記憶装置4に記憶された数学モデル構築プログラムに従って、CPU3によって実行される。
【0052】
数学モデル構築処理では、訓練用データセットによって数学モデルが訓練されることで、眼科画像に基づいて医療データを出力する数学モデルが構築される。訓練用データセットには、入力側のデータ(入力用訓練データ)と出力側のデータ(出力用訓練データ)が含まれる。数学モデルには、種々の医療データを出力させることが可能である。数学モデルに出力させる医療データの種類に応じて、数学モデルの訓練に用いられる訓練用データセットの種類が定まる。以下、出力する医療データの種類と、数学モデルの訓練に用いられる訓練用データセットの関係の一例について説明する。
【0053】
まず、数学モデルに眼科画像を入力することで、被検眼の組織の構造の解析結果を数学モデルに出力させる場合について説明する。この場合、被検眼の組織の眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、入力用訓練データ(眼科画像)に写っている組織の構造を示す医療データを出力用訓練データとして、数学モデルが訓練される。
図3および
図4に、被検眼の眼底組織における構造の解析結果を医療データとして数学モデルに出力させる場合の、入力用訓練データおよび出力用訓練データの一例を示す。
図3に例示する入力用訓練データ30は、眼底組織の二次元断層画像である。入力用訓練データ30には、眼底組織における複数の層が表れている。また、
図4に例示する出力用訓練データ31は、入力用訓練データ30に写っている組織の構造の位置を示す。一例として、
図4に例示する出力用訓練データ31には、入力用訓練データ30(
図3参照)に写っている6つの境界の各々の位置を示すラベル32A~32Fのデータが含まれている。その結果、訓練された数学モデルに眼科画像が入力されると、組織の層および境界の少なくともいずれかの解析結果が、医療データとして出力される。本実施形態では、出力用訓練データ31におけるラベル32A~32Fのデータは、作業者が入力用訓練データ30における境界を見ながら操作部7を操作することで生成される。ただし、ラベルのデータの生成方法を変更することも可能である。
【0054】
なお、被検眼の組織の構造のうち、層および境界以外の構造の解析結果を数学モデルに出力させることも可能である。例えば、被検眼の眼底血管の解析結果を数学モデルに出力させることもできる。さらに、眼底の動脈および静脈の解析結果を数学モデルに出力させることもできる。この場合、例えば、眼底血管が写っている眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、入力用訓練データに写っている血管(動脈および静脈)の位置を示すデータを出力用訓練データとして、数学モデルが訓練されてもよい。また、眼底における黄斑または中心窩等の解析結果を、数学モデルに出力させることも可能である。入力用訓練データは、被検眼の組織の断層画像である必要は無く、二次元の正面画像等であってもよい。
【0055】
次に、眼科画像を数学モデルに入力することで、入力した画像を変換した変換画像を数学モデルに出力させる場合について説明する。前述したように、変換画像は、例えば、入力される眼科画像のノイズを減少させた画像、眼科画像の解像度を高めた画像、眼科画像の視認性を向上させた画像、眼科画像に写る特定の構造を強調した画像等の少なくともいずれかを示す。一例として、本実施形態では、被検眼の組織の眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、入力用訓練データよりも高画質である(例えばノイズが減少した)同一部位の眼科画像を出力用訓練データとして、数学モデルが訓練される。
図5に、変換画像を数学モデルに出力させる場合の、入力用訓練データと出力用訓練データの一例を示す。
図5に示す例では、CPU3は、組織の同一部位を撮影した複数の訓練用眼科画像400A~400Xのセット40を取得する。CPU3は、セット40内の複数の訓練用眼科画像400A~400Xの一部(後述する出力用訓練データの加算平均に使用された枚数よりも少ない枚数)を、入力用訓練データとする。また、CPU3は、セット40内の複数の訓練用眼科画像400A~400Xの加算平均画像41を、出力用訓練データとして取得する。
図5に例示する入力用訓練データおよび出力用訓練データによって数学モデルが訓練された場合、訓練された数学モデルに眼科画像が入力されることで、スペックルノイズの影響が抑制された高画質の変換画像が出力される。
【0056】
なお、高画質の出力用訓練データを生成する方法を変更することも可能である。例えば、加算平均処理以外の処理によって、入力用訓練データの画質を向上させることで、出力用訓練データが生成されてもよい。また、出力用訓練データの種類は、数学モデルに出力させる変換画像の種類に応じて適宜選択すればよい。また、入力用訓練データは、組織の断層画像に限定されない。
【0057】
次に、眼科画像を数学モデルに入力することで、被検眼に何らかの疾患があるか否かを示す自動解析結果を数学モデルに出力させる場合について説明する。この場合、例えば、被検眼の組織の眼科画像を入力用訓練データとし、且つ、入力用訓練データに写っている撮影対象における疾患の有無を示すデータを出力用訓練データとして、数学モデルが訓練される。
【0058】
図2を参照して、数学モデル構築処理について説明する。CPU3は、眼科画像撮影装置11Aによって撮影された眼科画像(訓練用眼科画像)のデータを、入力用訓練データとして取得する(S1)。本実施形態では、訓練用眼科画像のデータは、眼科画像撮影装置11Aによって生成された後、数学モデル構築装置1によって取得される。しかし、CPU3は、訓練用眼科画像を生成する基となる信号(例えばOCT信号)を眼科画像撮影装置11Aから取得し、取得した信号に基づいて訓練用眼科画像を生成することで、訓練用眼科画像のデータを取得してもよい。
【0059】
次いで、CPU3は、S1で取得した訓練用眼科画像の評価情報を取得し、記憶装置4に記憶させる(S2)。評価情報は、前述した医療データを取得するために眼科画像が適正であるか否かの度合い(適正度)を示す。一般に、眼科画像の画質が良好な程、眼科画像から適切に医療データが得られ易い。従って、本開示では、一例として、眼科画像の画質に関する値が眼科画像の評価情報として使用される。例えば、眼科画像の信号の強さ、または、信号の良好さを示す指標(例えば、SSI(Signal Strength Index)またはQI(Quality Index)等)が、眼科画像の評価情報として使用されてもよい。また、画像の信号レベルに対するノイズレベルの比(SNR(Signal to Noise Ratio)、背景のノイズレベル、画像のコントラスト等の少なくともいずれかが、眼科画像の評価情報として使用されてもよい。また、眼科画像撮影装置11Aによって眼科画像が撮影された際の撮影条件(例えば、光を組織上でスキャンさせて眼科画像を撮影する際の、スキャンに関する条件、および露光時間等の少なくともいずれか)が、評価情報として使用されてもよい。また、前述した加算平均処理を行うことで眼科画像が取得される場合、加算平均処理に用いられた画像の枚数(以下、「加算枚数」という)が評価情報として使用されてもよい。
【0060】
次いで、CPU3は、S1で取得した入力用訓練データに対応する医療データを、出力用訓練データとして取得する(S3)。入力用訓練データと出力用訓練データ(医療データ)の対応関係の一例については、前述した通りである。
【0061】
次いで、CPU3は、機械学習アルゴリズムによって、訓練データセットを用いた数学モデルの訓練を実行する(S4)。機械学習アルゴリズムとしては、例えば、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ブースティング、サポートベクターマシン(SVM)等が一般的に知られている。
【0062】
ニューラルネットワークは、生物の神経細胞ネットワークの挙動を模倣する手法である。ニューラルネットワークには、例えば、フィードフォワード(順伝播型)ニューラルネットワーク、RBFネットワーク(放射基底関数)、スパイキングニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク(リカレントニューラルネット、フィードバックニューラルネット等)、確率的ニューラルネット(ボルツマンマシン、ベイシアンネットワーク等)等がある。
【0063】
ランダムフォレストは、ランダムサンプリングされた訓練データに基づいて学習を行って、多数の決定木を生成する方法である。ランダムフォレストを用いる場合、予め識別器として学習しておいた複数の決定木の分岐を辿り、各決定木から得られる結果の平均(あるいは多数決)を取る。
【0064】
ブースティングは、複数の弱識別器を組み合わせることで強識別器を生成する手法である。単純で弱い識別器を逐次的に学習させることで、強識別器を構築する。
【0065】
SVMは、線形入力素子を利用して2クラスのパターン識別器を構成する手法である。SVMは、例えば、訓練データから、各データ点との距離が最大となるマージン最大化超平面を求めるという基準(超平面分離定理)で、線形入力素子のパラメータを学習する。
【0066】
数学モデルは、例えば、入力データと出力データの関係を予測するためのデータ構造を指す。数学モデルは、訓練データセットを用いて訓練されることで構築される。前述したように、訓練データセットは、入力用訓練データと出力用訓練データのセットである。例えば、訓練によって、各入力と出力の相関データ(例えば、重み)が更新される。
【0067】
本実施形態では、機械学習アルゴリズムとして多層型のニューラルネットワークが用いられている。ニューラルネットワークは、データを入力するための入力層と、予測したいデータを生成するための出力層と、入力層と出力層の間の1つ以上の隠れ層を含む。各層には、複数のノード(ユニットとも言われる)が配置される。詳細には、本実施形態では、多層型ニューラルネットワークの一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が用いられている。ただし、他の機械学習アルゴリズムが用いられてもよい。例えば、競合する2つのニューラルネットワークを利用する敵対的生成ネットワーク(Generative adversarial networks:GAN)が、機械学習アルゴリズムとして採用されてもよい。
【0068】
数学モデルの構築が完了するまで(S5:NO)、S1~S4の処理が繰り返される。数学モデルの構築が完了すると(S5:YES)、数学モデル構築処理は終了する。構築された数学モデルを実現させるプログラムおよびデータは、眼科画像処理装置21に組み込まれる。
【0069】
(眼科画像処理)
図6~
図10を参照して、眼科画像処理システム100が実行する眼科画像処理について説明する。眼科画像処理では、眼科画像に基づいて、眼科画像に写っている被検眼についての医療データが取得される。本実施形態では、眼科画像処理システム100に含まれる眼科画像処理装置21が、
図6~
図10に例示する眼科画像処理を実行する場合を例示する。しかし、前述のように、眼科画像処理システム100に含まれる他のデバイスのCPU(例えば、眼科画像撮影装置11BのCPU13B等)が、眼科画像処理を実行してもよい。また、眼科画像処理システム100に含まれる複数の制御部(例えば、眼科画像処理装置21のCPU23と、眼科画像撮影装置11BのCPU13B)が、協働して眼科画像処理を実行してもよい。本実施形態の眼科画像処理は、記憶装置24に記憶された眼科画像処理プログラムに従って、CPU23によって実行される。
【0070】
図6に示すように、CPU23は、眼科画像の評価情報に関する基準を設定する(S11)。詳細は後述するが、CPU23は、医療データを取得するための眼科画像の評価情報が基準を満たしているか否かに応じて、医療データの取得方法を変更する。本実施形態では、医療データを取得するための眼科画像が、医療データを取得するために適正か否かを判断する際に、眼科画像の評価情報が基準と比較される。
【0071】
一例として、本実施形態のS1では、数学モデルの訓練に用いられた複数の入力用訓練データに基づいて、評価情報の基準が設定される。数学モデルの訓練に用いられた入力用訓練データの評価情報は、前述した数学モデル構築処理(
図2のS2)で記憶されている。CPU23は、記憶されている入力用訓練データの評価情報に基づいて、基準を設定する。基準を設定するための具体的な方法は、適宜選択できる。一例として、本実施形態では、CPU23は、複数の入力用訓練データの評価情報の分布を示す値(平均値および標準偏差σ)を取得し、取得した値から設定される所定範囲内(例えば、±3σの範囲内)に評価情報が収まるか否かの境界値を、基準として設定する。しかし、基準の設定方法を変更することも可能である。例えば、CPU23は、ユーザから入力された指示に応じて基準を設定してもよい。眼科画像処理装置21以外のデバイスの制御部(例えば、数学モデル構築装置1のCPU3等)が、評価情報の基準を設定してもよい。また、固定された基準が予め設定されていてもよい。また、本実施形態では、眼科画像の評価情報を比較するための基準(つまり、医療データを取得するための適正度を判断する第1基準)と、撮影された眼科画像がユーザに観察させる画像として適切であるか否かを判断するための基準(つまり、撮影が成功したか否かを判断する第2基準)が別で設定されている。CPU23は、眼科画像が第1基準を満たすか否かを示す情報と、眼科画像が第2基準を満たすか否かを示す情報を、同時に、または別々にユーザに通知(例えば、表示装置28に表示)することができる。
【0072】
次いで、CPU23は、眼科画像撮影装置11Bによって撮影された被検眼の眼科画像を取得する(S12)。S12で取得される眼科画像は、数学モデルの訓練において入力用訓練データとして用いられた眼科画像と同種の画像である。つまり、二次元断層画像が入力用訓練データとして用いられた場合、S12で取得される眼科画像も二次元断層画像となる。また、二次元正面画像が入力用訓練データとして用いられた場合、S12で取得される眼科画像も二次元正面画像となる。なお、S12では、同一の被検眼を撮影対象とする複数の眼科画像が取得される場合もあるし、1枚の眼科画像が取得される場合もある。
【0073】
次いで、CPU23は、S12で取得された眼科画像についての評価情報を取得する(S13)。前述したように、評価情報は、医療データを取得するために眼科画像が適正であるか否かの度合い(適正度)を示す。本実施形態では、前述したように、眼科画像の画質に関する種々の値を評価情報として使用できる。
【0074】
次いで、CPU23は、S12で取得された眼科画像に基づいて医療データを取得する(S14)。ここで、S14では、S13で取得された評価情報が基準を満たすか否かに応じて、医療データの取得方法が変更される。以下、第1実施形態~第4実施形態の各々における医療データ取得処理について、
図7~
図10を参照して詳細に説明する。
【0075】
(第1実施形態)
図7を参照して、第1実施形態の眼科画像処理システム100が実行する医療データ取得処理について説明する。第1実施形態では、眼科画像の評価情報に関する情報が、眼科画像と共に数学モデルに入力されることで、医療データの信頼性の向上が図られる。また、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合に、ユーザに対する警告情報が出力される。
【0076】
まず、CPU23は、評価情報に関する情報と眼科画像を数学モデルに入力する(S21)。評価情報に関する情報は、
図6のS3で取得された評価情報そのものでもよいし、S3で取得された評価情報から得られる情報(例えば、評価情報が基準を満たしているか否かを示す情報)であってもよい。なお、第1実施形態における数学モデルは、数学モデル構築処理(
図2参照)において、評価情報が異なる多数の入力用訓練データによって予め訓練されている。評価情報に関する情報と眼科画像が数学モデルに入力されると、数学モデルは、眼科画像の評価情報に応じたアルゴリズムに従って医療データを出力する。従って、アルゴリズムを構築するために用いられた入力用訓練データの評価情報と、数学モデルに入力される眼科画像の評価情報に、差が生じにくい。よって、医療データの信頼性が向上し易い。
【0077】
CPU23は、数学モデルから出力される医療データを取得する(S22)。CPU23は、S21で数学モデルに入力された眼科画像の評価情報が、基準を満たしているか否かを判断する(S23)。評価情報が基準を満たしている場合(S23:YES)、S22で取得された医療データの信頼性は高い場合が多い。従って、CPU23は、S22で取得された医療データをそのまま出力する(S24)。一方で、評価情報が基準を満たしていない場合(S23:NO)、S22で取得された医療データの信頼性が低い可能性がある。従って、CPU23は、S22で取得した医療データに、ユーザに対する警告を行うための警告情報を付随させて出力する(S25)。その結果、ユーザは、評価情報が基準を満たさない眼科画像に基づいて医療データが取得された旨を、警告情報によって容易に把握することができる。
【0078】
(第2実施形態)
図8を参照して、第2実施形態の眼科画像処理システム100が実行する医療データ取得処理について説明する。第2実施形態では、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合に、眼科画像に対する評価情報改善処理(一例として、本実施形態では画質向上処理)が実行される。これにより、医療データの信頼性の向上が図られる。また、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合には、医療データが取得される前に、ユーザに対する警告情報が出力される。さらに、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合に、被検眼の同一部位の追加撮影が行われて、眼科画像が再取得される。
【0079】
まず、CPU23は、眼科画像の評価情報が基準を満たしているか否かを判断する(S31)。基準を満たしている場合には(S31:YES)、眼科画像が数学モデルに入力されて(S38)、数学モデルから出力される医療データが取得・出力される(S39)。
【0080】
評価情報が基準を満たしていない場合(S31:NO)、CPU23は、医療データを取得する眼科画像に対し、評価情報を基準に近づける評価情報改善処理を実行する(S32)。本実施形態では、CPU23は、評価情報改善処理の一例として、画質を向上させる画質向上処理を実行する。画質向上処理には、例えば、公知のノイズ除去処理、先鋭化処理等の少なくともいずれかを採用できる。また、機械学習アルゴリズムを利用して、眼科画像に対する評価情報改善処理が行われてもよい。また、CPU23は、眼科画像撮影装置11Bとは異なる装置(本実施形態では、OCT装置以外の眼科撮影装置)によって取得された、同一の被検眼の画像または各種測定結果を利用して、眼科画像に対する評価情報改善処理を実行してもよい。
【0081】
CPU23は、評価情報改善処理を行った眼科画像の評価情報を取得し、評価情報が基準を満たすか否かを判断する(S33)。基準を満たしている場合には(S33:YES)、眼科画像が数学モデルに入力されて(S38)、数学モデルから出力される医療データが取得・出力される(S39)。
【0082】
評価情報が基準を満たしていない場合(S33:NO)、CPU23は、医療データを取得する処理(S38、S39)を行わずに、ユーザに対する警告情報を出力する(S34)。警告情報は、表示装置28に表示させることで出力されてもよいし、音声によって出力されてもよい。
【0083】
次いで、CPU23は、評価情報が基準を満たしていない眼科画像から医療データを取得させる指示が、ユーザによって入力されたか否かを判断する(S35)。本実施形態では、ユーザは、眼科画像の評価情報が基準を満たしていない場合に、基準を満たしていない眼科画像から医療データを取得させる指示、または、同一の被検眼に対する眼科画像の追加撮影の実行指示を、操作部27等を介して入力することができる。医療データを取得させる指示が入力されている場合(S35:YES)、眼科画像が数学モデルに入力されて(S38)、数学モデルから出力される医療データが取得・出力される(S39)。一方で、追加撮影の実行指示が入力されている場合(S35:NO)、CPU23は、同一の部位を追加撮影する指示を、眼科画像撮影装置11Bに出力する(S36)。CPU23は、追加撮影された眼科画像を再取得する(S37)。その後、処理はS31へ戻る。評価情報が基準に近づいた眼科画像がS37で再取得されれば、S38,S39で取得される医療データの信頼性は向上する。
【0084】
(第3実施形態)
図9を参照して、第3実施形態の眼科画像処理システム100が実行する医療データ取得処理について説明する。第3実施形態では、眼科画像の評価情報が基準を満たさない場合に、被検眼の同一部位の追加撮影が行われて、元の眼科画像に対する加算平均処理が行われる。その結果、取得される医療データの信頼性が向上する。
【0085】
まず、CPU23は、眼科画像の評価情報が基準を満たしているか否かを判断する(S41)。基準を満たしている場合には(S41:YES)、眼科画像が数学モデルに入力されて(S44)、数学モデルから出力される医療データが取得・出力される(S45)。
【0086】
眼科画像の評価情報が基準を満たしていない場合(S41:NO)、CPU23は、元の眼科画像(
図6のS12で取得された画像)の撮影部位と同一の部位を追加撮影する指示を、眼科画像撮影装置11Bに出力する(S42)。次いで、CPU23は、元の眼科画像に対して、追加撮影された眼科画像の加算平均処理を実行する(S42)。前述したように、加算平均処理に使用される画像の枚数が多くなる程、画像の品質は向上する。加算平均処理は、眼科画像撮影装置11Bが実行してもよいし、眼科画像処理装置21が実行してもよい。処理はS41へ戻り、評価情報が基準を満たすまで、追加撮影(S42)および加算平均処理(S43)が繰り返される。評価情報が基準を満たすと(S41:YES)、加算平均処理によって生成されて評価情報が向上した眼科画像によって、医療データが取得される(S44,S45)。
【0087】
(第4実施形態)
図10を参照して、第4実施形態の眼科画像処理システム100が実行する医療データ取得処理について説明する。第4実施形態では、同一の被検眼の同一の組織を撮影した複数の眼科画像のうち、評価情報が基準を満たす眼科画像に基づいて医療データが取得される。第4実施形態では、
図6のS12の処理において、同一の被検眼の同一の組織を撮影した複数の眼科画像が取得される。
【0088】
まず、CPU23は、
図6のS12で取得された複数の眼科画像の中に、評価情報が基準を満たす眼科画像が存在するか否かを判断する(S51)。評価情報が基準を満たす眼科画像が存在しない場合には(S51:NO)、警告情報の出力(例えば、
図8のS34参照)、および、追加撮影の処理(例えば、
図8のS35~S37参照)等が適宜実行される。評価情報が基準を満たす眼科画像が存在する場合(S51:YES)、CPU23は、基準を満たす眼科画像の少なくともいずれかを数学モデルに入力する(S52)。数学モデルから出力される医療データが取得され、出力される(S53)。
【0089】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。まず、上記実施形態で例示された複数の技術のうちの一部のみを実行することも可能である。例えば、第1実施形態における医療データ取得処理(
図7参照)では、評価情報に関する情報を眼科画像と共に数学モデルに入力する処理(S21)、および警告情報を出力する処理(S25)が、共に実行される。しかし、S21およびS25の一方のみが実行されてもよい。同様に、第2実施形態における医療データ取得処理(
図8参照)では、評価情報改善処理(S31,S32)、警告情報を出力する処理(S33,S34)、および、追加撮影処理(S35~S37)が実行される。しかし、これらの処理のうちの1つ、または2つのみが実行されてもよい。
【0090】
また、上記第1実施形態~第4実施形態の各々で例示した複数の技術を組み合わせて実行することも可能である。例えば、第1実施形態(
図7参照)のS21で眼科画像が数学モデルに入力される前に、第2実施形態(
図8参照)のS31,S32で例示した評価情報改善処理を実行してもよい。また、上記実施形態では、眼科画像の全体の評価情報が基準と比較されたうえで、各種処理が実行される。しかし、眼科画像の一部の領域(画素でもよい)の評価情報が基準を満たすか否かが判断されてもよい。つまり、眼科画像の領域毎に、評価情報が基準を満たすか否かが判断されたうえで、各種処理が実行されてもよい。
【0091】
なお、
図6のS12で眼科画像を取得する処理は、「画像取得ステップ」の一例である。
図6のS13で眼科画像の評価情報を取得する処理は、「評価情報取得ステップ」の一例である。
図7~
図10に示す医療データ取得処理は、「医療データ取得ステップ」の一例である。
図9のS41~S43に示す加算平均処理は、「加算ステップ」の一例である。
【符号の説明】
【0092】
11A,11B 眼科画像撮影装置
13A,13B CPU
14A,14B 記憶装置
21 眼科画像処理装置
23 CPU
24 記憶装置
100 眼科画像処理システム