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特許7597043モータ制御装置、及びモータの寿命判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】モータ制御装置、及びモータの寿命判定方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20241203BHJP
【FI】
H02P29/024
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022001215
(22)【出願日】2022-01-06
(65)【公開番号】P2023100499
(43)【公開日】2023-07-19
【審査請求日】2024-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津坂 昌功
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-25462(JP,A)
【文献】特開平10-248275(JP,A)
【文献】特開2021-19398(JP,A)
【文献】特開2017-28947(JP,A)
【文献】特開2019-30913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0391820(US,A1)
【文献】特開2018-183723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動する制御部と、
前記モータの寿命を判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、
前記制御部により前記モータの電流を一定にして前記モータを駆動している場合に、予め決められた前記モータの障害パターンを所定のタイミング毎に判定し、
前記障害パターンに基づいて、前記モータに生じている障害の度合いに応じて零以上の値を示す障害レベルを算出し、
前記障害レベルを用いて、前記障害レベルの累積値を示す累積障害カウント値を算出し、
前記累積障害カウント値の演算式は、前記障害レベルを累積する増加項と、前記障害レベルが零である場合に前記累積障害カウント値を減算する減算項とを含み、
前記判定部は、さらに、
前記累積障害カウント値がしきい値よりも高い場合に、前記モータの寿命が短いと判定し、
前記累積障害カウント値が前記しきい値よりも低い場合に、前記モータの寿命が長いと判定する、モータ制御装置。
【請求項2】
前記減算項は、前記障害レベルが零である時間が長いほど大きい値である、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記減算項は、前記障害レベルが零である連続回数が多いほど大きい値である、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、第1から第3のパラメータの少なくとも1つに基づいて前記障害パターンを判定し、
前記第1のパラメータは、前記モータの角加速度の大きさであり、
前記第2のパラメータは、前記モータの角速度が目標を継続して下回っている時間を示す速度未達時間であり、
前記第3のパラメータは、前記モータの角速度が前記目標を下回る回数を示す速度未達回数であり、
前記判定部は、前記第1から第3のパラメータに基づいて、前記障害パターンである第1から第3の障害パターンをそれぞれ判定し、
前記障害レベルは、前記第1から第3の障害パターンの各々に所定の重み付けした値を加算した値である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記しきい値は、
第1のしきい値と、
前記第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値とを含み、
前記判定部は、
前記累積障害カウント値が前記第1のしきい値よりも高い場合に、前記モータの寿命が短いと判定し、
前記累積障害カウント値が前記第2のしきい値よりも低い場合に、前記モータの寿命が長いと判定し、
前記累積障害カウント値が前記第1のしきい値よりも低く、かつ、前記第2のしきい値よりも高い場合に、前記モータの寿命は短くもなく、かつ、長くもないと判定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
モータの寿命を判定する寿命判定方法であって、
前記モータの電流が一定である場合に、予め決められた前記モータの障害パターンを所定のタイミング毎に判定する第1のステップと、
前記障害パターンに基づいて、前記モータに生じている障害の度合いに応じて零以上の値を示す障害レベルを算出する第2のステップと、
前記障害レベルから、前記障害レベルの累積値を示す累積障害カウント値を算出する第3のステップと、を含み、
前記第3のステップにおける前記累積障害カウント値の演算式は、前記障害レベルを累積する増加項と、非零である前記障害レベルの最小値よりも小さく、前記障害レベルが零である場合に前記累積障害カウント値を減算する減算項とを含み、さらに、
前記累積障害カウント値がしきい値よりも高い場合に、前記モータの寿命が短いと判定する第4のステップと、
前記累積障害カウント値が前記しきい値よりも低い場合に、前記モータの寿命が長いと判定する第5のステップと、を含む、モータの寿命判定方法。
【請求項7】
前記第1のステップは、第1から第3のパラメータの少なくとも1つに基づいて前記障害パターンを判定し、
前記第1のパラメータは、前記モータの角加速度の大きさであり、
前記第2のパラメータは、前記モータの角速度が目標を継続して下回っている時間を示す速度未達時間であり、
前記第3のパラメータは、前記モータの角速度が前記目標を下回る回数を示す速度未達回数であり、
前記第1のステップは、前記第1から第3のパラメータに基づいて、前記モータの障害パターンである第1から第3の障害パターンをそれぞれ判定し、
前記第2のステップは、前記第1から第3の障害パターンの各々に所定の重み付けした値を加算する、請求項6に記載のモータの寿命判定方法。
【請求項8】
前記しきい値は、
第1のしきい値と、
前記第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値とを含み、
前記第4のステップは、前記累積障害カウント値が前記第1のしきい値よりも高い場合に、前記モータの寿命が短いと判定し、
前記第5のステップは、前記累積障害カウント値が前記第2のしきい値よりも低い場合に、前記モータの寿命が長いと判定し、さらに、
前記累積障害カウント値が前記第1のしきい値よりも低く、かつ、前記第2のしきい値よりも高い場合に、前記モータの寿命は短くもなく、かつ、長くもないと判定する第6のステップを含む、請求項6又は請求項7に記載のモータの寿命判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御装置、及びモータの寿命判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平7-71261号公報(特許文献1)には、ターボチャージャに取り付けられたモータ(回転電機)の警告装置を開示する。この警告装置では、モータの無負荷時の発電出力が計測され、その計測値が基準値以下の場合は回転子の減磁と判断されて運転者に警告が発せられる。これにより、運転者は、モータの故障に気づいて対策を行なうことができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-71261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の警告装置は、モータの故障を運転者に警告することができる点で有用であるが、モータの寿命を判定して警告するものではない。偶発的な故障ではなくモータの寿命を判定可能とすることは、利用者にとって有用である。
【0005】
本開示は、かかる課題を達成するためになされたものであり、本開示の目的は、モータの寿命を判定可能なモータ制御装置、及びモータの寿命判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のモータ制御装置は、モータを駆動する制御部と、モータの寿命を判定する判定部とを備える。判定部は、制御部によりモータの電流を一定にしてモータを駆動している場合に、予め決められたモータの障害パターンを所定のタイミング毎に判定し、その障害パターンに基づいて、モータに生じている障害の度合いに応じて零以上の値を示す障害レベルを算出し、その障害レベルを用いて、障害レベルの累積値を示す累積障害カウント値を算出する。累積障害カウント値の演算式は、障害レベルを累積する増加項と、障害レベルが零である場合に累積障害カウント値を減算する減算項とを含む。そして、判定部は、さらに、累積障害カウント値がしきい値よりも高い場合に、モータの寿命が短いと判定し、累積障害カウント値がしきい値よりも低い場合に、モータの寿命が長いと判定する。
【0007】
上記のモータ制御装置では、モータの障害パターンに基づいて障害レベルが算出され、その障害レベルから累積障害カウント値が算出される。そして、累積障害カウント値に基づいてモータの寿命が判定されるところ、累積障害カウント値の演算式は、障害レベルが零である場合に累積障害カウント値を減算する減算項を含むため、偶発的に発生した障害については、累積障害カウント値が減算される。したがって、このモータ制御装置によれば、偶発的な故障ではない、モータの寿命を判定することができる。
【0008】
減算項は、障害レベルが零である時間が長いほど大きい値であってもよい。或いは、減算項は、障害レベルが零である連続回数が多いほど大きい値であってもよい。
【0009】
障害レベルが零である時間が長いほど、或いは障害レベルが零である連続回数が多いほど、生じた障害は偶発的なものであり、モータの寿命ではない可能性が高い。したがって、モータの寿命をより精度よく判定することができる。
【0010】
判定部は、第1から第3のパラメータの少なくとも1つに基づいて障害パターンを判定してもよい。第1のパラメータは、モータの角加速度の大きさである。第2のパラメータは、モータの角速度が目標を継続して下回っている時間を示す速度未達時間である。第3のパラメータは、モータの角速度が目標を下回る回数を示す速度未達回数である。判定部は、第1から第3のパラメータに基づいて、障害パターンである第1から第3の障害パターンをそれぞれ判定してもよい。そして、障害レベルは、第1から第3の障害パターンの各々に所定の重み付けした値を加算した値であってもよい。
【0011】
上記のような構成とすることにより、第1から第3のパラメータの各々と障害レベルとの関係、ひいては各パラメータとモータの寿命との関係を調整することができる。したがって、モータの寿命をより精度よく判定することが可能となる。
【0012】
上記のしきい値は、第1のしきい値と、第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値とを含んでもよい。そして、判定部は、累積障害カウント値が第1のしきい値よりも高い場合に、モータの寿命が短いと判定し、累積障害カウント値が第2のしきい値よりも低い場合に、モータの寿命が長いと判定し、累積障害カウント値が第1のしきい値よりも低く、かつ、第2のしきい値よりも高い場合に、モータの寿命は短くもなく、かつ、長くもないと判定してもよい。
【0013】
上記のような構成とすることにより、モータの寿命を適切に判定することができる。
【0014】
また、本開示の寿命判定方法は、モータの寿命を判定する寿命判定方法であって、モータの電流が一定である場合に、予め決められたモータの障害パターンを所定のタイミング毎に判定する第1のステップと、その障害パターンに基づいて、モータに生じている障害の度合いに応じて零以上の値を示す障害レベルを算出する第2のステップと、その障害レベルから、障害レベルの累積値を示す累積障害カウント値を算出する第3のステップとを含む。第3のステップにおける累積障害カウント値の演算式は、障害レベルを累積する増加項と、非零である障害レベルの最小値よりも小さく、障害レベルが零である場合に累積障害カウント値を減算する減算項とを含む。寿命判定方法は、さらに、累積障害カウント値がしきい値よりも高い場合に、モータの寿命が短いと判定する第4のステップと、累積障害カウント値がしきい値よりも低い場合に、モータの寿命が長いと判定する第5のステップとを含む。
【0015】
上記の寿命判定方法では、モータの障害パターンに基づいて障害レベルが算出され、その障害レベルから累積障害カウント値が算出される。そして、累積障害カウント値に基づいてモータの寿命が判定されるところ、累積障害カウント値の演算式は、障害レベルが零である場合に累積障害カウント値を減算する減算項を含むため、偶発的に発生した障害については、累積障害カウント値が減算される。したがって、この寿命判定方法によれば、偶発的な故障ではない、モータの寿命を判定することができる。
【0016】
第1のステップは、第1から第3のパラメータの少なくとも1つに基づいて障害パターンを判定してもよい。第1のパラメータは、モータの角加速度の大きさである。第2のパラメータは、モータの角速度が目標を継続して下回っている時間を示す速度未達時間である。第3のパラメータは、モータの角速度が目標を下回る回数を示す速度未達回数である。そして、第1のステップは、第1から第3のパラメータに基づいて、モータの障害パターンである第1から第3の障害パターンをそれぞれ判定し、第2のステップは、第1から第3の障害パターンの各々に所定の重み付けした値を加算してもよい。
【0017】
上記のような構成とすることにより、第1から第3のパラメータの各々と障害レベルとの関係、ひいては各パラメータとモータの寿命との関係を調整することができる。したがって、モータの寿命をより精度よく判定することが可能となる。
【0018】
上記のしきい値は、第1のしきい値と、第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値とを含んでもよい。第4のステップは、累積障害カウント値が第1のしきい値よりも高い場合に、モータの寿命が短いと判定し、第5のステップは、累積障害カウント値が第2のしきい値よりも低い場合に、モータの寿命が長いと判定してもよい。そして、寿命判定方法は、さらに、累積障害カウント値が第1のしきい値よりも低く、かつ、第2のしきい値よりも高い場合に、モータの寿命は短くもなく、かつ、長くもないと判定する第6のステップを含んでもよい。
【0019】
上記のような構成とすることにより、モータの寿命を適切に判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示のモータ制御装置、及びモータの寿命判定方法によれば、モータの寿命を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の実施の形態に従うモータ制御装置の構成の一例を示す図である。
図2】モータが正常である(障害が生じていない)場合の、モータの回転角、角速度、及び角加速度の推移を示す図である。
図3】モータに障害が生じている場合の、モータの回転角、角速度、及び角加速度の推移を示す図である。
図4】モータに障害が生じている場合の、モータの回転角、角速度、及び角加速度の推移を示す図である。
図5】モータに障害が生じている場合の、モータの回転角、角速度、及び角加速度の推移を示す図である。
図6】モータに障害が生じている場合の、モータの回転角、角速度、及び角加速度の推移を示す図である。
図7】モータに障害が生じている場合の、モータの回転角、角速度、及び角加速度の推移を示す図である。
図8】モータに障害が生じている場合の、モータの回転角、角速度、及び角加速度の推移を示す図である。
図9】障害レベルの推移の一例を示す図である。
図10図9に示す障害レベルに基づいて算出される累積障害カウント値の推移を示す図である。
図11】モータ制御装置において実行されるモータ寿命判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図12】モータが障害により停止した後、モータの電流を増加させたときの回転角、角速度、及び角加速度の推移を示す図である。
図13】変形例1における障害パターンS2の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
図1は、本開示の実施の形態に従うモータ制御装置の構成の一例を示す図である。図1を参照して、モータ制御装置1は、モータ制御部10と、回転角センサ15と、演算部20,25と、判定部30と、記憶部35と、タイマ40とを備える。
【0024】
モータ制御部10は、モータ2を駆動するための電流指令Imを生成し、その生成した電流指令Imに従ってモータ2を制御する。モータ2は、例えば交流モータであるが、直流モータであってもよい。
【0025】
回転角センサ15は、モータ2のロータの回転角θを検出する。回転角センサ15には、公知の回転角センサを用いることができる。演算部20は、回転角センサ15によって検出された回転角θの微分値dθ/dtを演算することにより、モータ2の角速度ωを算出する。演算部25は、演算部20により算出された角速度ωの微分値dω/dtを演算することにより、モータ2の角加速度αを算出する。
【0026】
判定部30は、演算部20,25からそれぞれモータ2の角速度ω及び角加速度αの算出値を受ける。そして、判定部30は、モータ2の角速度ω及び角加速度αに基づいて、モータ2に生じている障害パターンを判定し、その障害パターンの判定結果に基づいてモータ2の寿命を判定する。なお、図示のようにモータ2の回転角θを回転角センサ15から判定部30が受け、演算部20,25による演算を判定部30において行なってもよい。モータ2の障害パターン及び寿命の各判定手法については、後ほど詳しく説明する。
【0027】
記憶部35は、各種データを記憶するストレージであって、本実施の形態では、後述の累積障害カウント値TCを記憶する。記憶部35は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)やソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)等である。タイマ40は、判定部30において、後述の速度未達時間T、及び速度未達回数Nをカウントする一定期間を計時するのに用いられる。
【0028】
なお、モータ制御部10、判定部30、及び演算部20,25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含む電子制御ユニット(ECU(Electronic Control Unit))によって構成される。メモリは、処理プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、及びデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)を含む。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、モータ制御部10、判定部30、演算部20,25により実行される各種処理が記述されている。なお、ECUは、モータ制御部10、判定部30、及び演算部20,25毎に設けられてもよいし、モータ制御部10、判定部30、及び演算部20,25の各機能を含む1つのECUで構成してもよい。
【0029】
<モータ2の障害パターンの判定>
モータ2の障害パターン及び寿命の判定は、モータ2の電流を一定にしてモータ2が駆動されている場合に実施される。モータ2の電流を一定にすることにより、モータ2の角速度ωが目標に未達である状況や、モータ2の角加速度αの大きさから、モータ2に生じている障害のレベルを判定することができる。
【0030】
モータ2の角加速度αの大きさからは、以下のようにしてモータ2の障害を検出することができる。モータ2については、以下の運動方程式が成り立つ。
【0031】
J×α=Tm-TL …(1)
上式において、Jは回転体の慣性モーメント、Tmはモータ2が発生するトルク、TLはモータ2を含む回転体に生じる負荷トルクである。Tm=k×Im(kは定数)として式(1)を変形すると、次式が得られる。
【0032】
TL=k×Im-J×α …(2)
モータ2の電流がImで一定である場合、モータ2が正常であればモータ2は一定の角速度で回転するから、角加速度αは0であり、TL=k×Im(一定値)となる。
【0033】
他方、モータ2に何らかの障害が生じているために、モータ2の電流がImで一定であるにも拘わらず負荷トルクTLが変動すると、式(2)の右辺第1項は一定値であるから、負荷トルクTLの変動分が式(2)の右辺第2項すなわち角加速度αに現れる。したがって、モータ2の電流が一定の状況下で、モータ2の角加速度αから負荷トルクTLの変動を検出することができ、角加速度αに基づいて、モータ2の障害の一つ(モータ2の電流が一定であるにも拘わらず負荷トルクTLが変動)を検出することができる。
【0034】
図2から図8の各々は、モータ2の回転角θ、角速度ω、及び角加速度αの推移の一例を示す図である。図2は、モータ2が正常である(障害が生じていない)場合の推移を示す。図3から図8は、モータ2に何らかの障害が生じている場合の推移を示す。なお、各図では、モータ2の電流Imが一定である場合の回転角θ、角速度ω、及び角加速度αの推移が示されている。
【0035】
図2を参照して、モータ2が正常である場合、電流Imが一定となる時刻t1以降は、角速度ωは目標(電流Imの大きさに応じた値)に沿って一定であり、角加速度αは0である。
【0036】
図3を参照して、この例では、時刻t11以降、電流Imは一定であるけれども、時刻t12において、何らかの大きな負荷異常が生じてモータ2が急停止し、時刻t12以降もモータ2の停止状態が継続した場合が示されている。この場合、角速度ωについては、時刻t12以降、角速度ωが0である状態が継続し、角加速度αについては、時刻t12において、大きな値が生じている。
【0037】
図4を参照して、この例では、時刻t22において、何らかの大きな負荷異常が生じてモータ2が一旦急停止したけれども、その後まもなくモータ2が再び動き出し、時刻t23において、正常な状態に復帰した場合が示されている。この場合、角速度ωについては、時刻t22~t23の間は、角速度ωが低下しているけれども、時刻t23以降は、正常値に復帰しており、角加速度αについては、時刻t22において、大きな値が生じている。
【0038】
図5を参照して、この例では、時刻t31以降、電流Imは一定であるけれども、時刻t32において何らかの負荷異常が生じたことにより、時刻t33においてモータ2が緩停止し、時刻t33以降もモータ2の停止状態が継続した場合が示されている。この場合、角速度ωについては、時刻t33以降、角速度ωが0である状態が継続している。角加速度αについては、モータ2は緩やかに停止したため、角加速度αの振れは小さい。
【0039】
図6を参照して、この例では、時刻t42において、何らかの負荷異常が生じたことにより、その後モータ2が一旦緩停止したけれども、その後まもなくモータ2が再び動き出し、時刻t43において、正常な状態に復帰した場合が示されている。この場合、角速度ωについては、時刻t42~t43の間は、角速度ωが低下しているけれども、時刻t43以降は、正常値に復帰している。角加速度αについては、モータ2は緩やかに停止したため、角加速度αの振れは小さい。
【0040】
図7を参照して、この例では、時刻t51以降、電流Imは他の例と同じ大きさで一定であるけれども、モータ2に何らかの負荷異常が生じていることにより、角速度ωは、点線で示される目標(電流Imの大きさに応じた値)を下回る状態が継続している。但し、角速度ωの変動は小さいため、角加速度αはほぼ0である。
【0041】
図8を参照して、この例では、時刻t62において、何らかの大きな負荷異常が生じてモータ2が一旦急停止したけれども、その後まもなくモータ2が動き出し、時刻t63において、正常な状態に復帰している。その後、時刻t64において、何らかの大きな負荷異常が再度生じてモータ2が一旦急停止したけれども、その後まもなくモータ2が再び動き出し、時刻t65において、正常な状態に復帰している。この例では、このようなモータ2の急停止及びその後まもなくの復帰が繰り返されている。この場合、角速度ωについては、モータ2が停止する毎に角速度ωが低下している。角加速度αについては、モータ2が急停止する毎に大きな値が生じている。
【0042】
このように、モータ2に障害が生じると、角速度ω及び角加速度αが様々な形で変化する。言い換えると、モータ2の角速度ω及び角加速度αによって、モータ2に生じた障害の様々な状況を検知し得る。そこで、本実施の形態では、角速度ω及び角加速度αに基づく3つのパラメータによって、モータ2に生じている障害のレベルを判定する。
【0043】
第1のパラメータは、モータ2の角加速度αの大きさである。電流Imが一定である場合に、モータ2に生じた角加速度αの大きさが大きいほど、モータ2に生じた障害の程度は大きいと考えられる(例えば、回転体の接触面に生じた傷が深く大きい等)。したがって、角加速度αの大きさが大きいほど、モータ2の障害パターン(以下「障害パターンS1」とする。)は大きいものとする。例えば、図3に示される状況と、図5に示される状況とでは、角加速度αの大きさが大きい図3の状況の方が図5の状況よりも障害パターンS1は大きいと判定される。図4に示される状況と、図6に示される状況とについても、大きな角加速度αが生じた図4の状況の方が図6の状況よりも障害パターンS1は大きいと判定される。
【0044】
第2のパラメータは、モータ2の角速度ωが目標(電流Imの大きさに応じた値)を継続して下回っている時間を示す速度未達時間である。速度未達時間が長いほど、モータ2に生じた障害の程度は大きいと考えられる(例えば、障害により停止したモータ2の停止状態が継続する等)。したがって、速度未達時間が長いほど、モータ2の障害パターン(以下「障害パターンS2」とする。)は大きいものとする。例えば、図3図5に示される状況と、図4に示される状況とでは、速度未達時間が長い図3及び図5の状況の方が図4の状況よりも障害パターンS2は大きいと判定される。また、図4に示される状況と、図7に示される状況とでは、速度未達時間が長い図7の状況の方が図4の状況よりも障害パターンS2は大きいと判定される。
【0045】
第3のパラメータは、モータ2の角速度ωが目標を下回る回数を示す速度未達回数である。速度未達回数が多いほど、モータ2に生じた障害の程度は大きいと考えられる(例えば、モータ2の停止及び再作動を繰り返す等)。したがって、速度未達回数が多いほど、モータ2の障害パターン(以下「障害パターンS3」とする。)は大きいものとする。例えば、図4に示される状況と、図8に示される状況とでは、速度未達回数が多い図8の状況の方が図4の状況よりも障害パターンS3は大きいと判定される。
【0046】
なお、障害パターンS1~S3の各々は、例えば5段階で判定される。すなわち、障害パターンS1については、生じた角加速度αの大きさに応じて5段階に判定される。障害パターンS2,S3についても、それぞれ速度未達時間の長さ及び速度未達回数の多さに応じて5段階に判定される。なお、5段階での判定は一例であって、5段階より少なくてもよいし、多くてもよい。
【0047】
<モータ2の寿命の判定>
本実施の形態では、上記のように判定される障害パターンS1~S3に基づいて、モータ2の寿命を判定する。モータ2の寿命の判定は、具体的に以下のようにして行なわれる。
【0048】
本実施の形態では、まず、障害パターンS1~S3に基づいて、モータ2に生じている障害の度合いを示す障害レベルCを算出する。この障害レベルCは、障害パターンS1~S3を考慮した総合的な障害の程度を示すものである。障害レベルCは、障害パターンS1~S3の関数として次式にて表される。
【0049】
障害レベルC=f(S1,S2,S3) …(3)
関数fには、種々の式を採用可能であるが、本実施の形態では、障害パターンS1~S3の各々に重み付けをした値を加算する次式が用いられる。
【0050】
障害レベルC=S1×w1+S2×w2+S3×w3 …(4)
wi(i=1~3)は、障害パターンSiに対する重みを示す。重みwiは、適宜設定可能であるが、例えば、w2>w3>w1である。すなわち、速度未達時間に基づく障害パターンS2の重みw2が最も大きく、次に、速度未達回数に基づく障害パターンS3の重みw3が大きい。但し、重みwiの大きさ順は、上記の順に限定されるものではない。
【0051】
この障害レベルCは、ある時点におけるモータ2の障害の程度を示すものであり、本実施の形態では、障害レベルCを累積した累積障害カウント値TCが算出される。累積障害カウント値TCは、障害レベルCに基づいて、次式にて算出される。
【0052】
TC(今回値)=TC(前回値)+C (C>0のとき) …(5-1)
TC(今回値)=TC(前回値)-A (C=0のとき) …(5-2)
なお、Aは正の定数であり、障害レベルCが0である場合(モータ2に障害は生じておらず、障害パターンS1~S3のいずれも0)に累積障害カウント値TCを減算する減算項である。Aの大きさは、0でない障害レベルCの最小値よりも小さい値に設定される。障害レベルC及び累積障害カウント値TCの演算は、所定の演算周期毎に行なわれ、TC(前回値)は、前回の演算タイミングにおいて算出された累積障害カウント値TCの値を示す。
【0053】
本実施の形態では、この累積障害カウント値TCに基づいてモータ2の寿命が判定される。具体的には、モータ2に生じている障害の度合いを示す障害レベルCの累積値が大きいほど、モータ2の寿命が短いと判定される。
【0054】
ここで、式(5-2)に示されるように、本実施の形態では、累積障害カウント値TCの演算式は、障害レベルCが0である場合に累積障害カウント値TCを減算する減算項Aを含む。これにより、偶発的(単発的)に生じた障害については、累積障害カウント値TCは、障害の発生時に一時的に上昇するけれども、その後、累積障害カウント値TCの演算が行なわれる度に減算項Aによって減算される。したがって、本実施の形態によれば、モータ2の寿命を判定するに際し、偶発的に発生した障害は未考慮とすることができ、偶発的な故障ではない真の寿命を判定することができる。
【0055】
図9は、障害レベルCの推移の一例を示す図である。図9を参照して、障害レベルCは、ある時点において生じているモータ2の障害の程度を示すものであり、この例では、時刻t1~t7の各々においてモータ2に障害が生じていることが示されている。なお、時刻t1~t5と、時刻t6,t7とでは、障害レベルCの大きさが異なることから、生じている障害のレベル又は種類が異なるものであることが理解される。
【0056】
図10は、図9に示した障害レベルCに基づいて算出される累積障害カウント値TCの推移を示す図である。図10を参照して、時刻t1において、障害レベルC>0となったことに応じて累積障害カウント値TCが上昇したけれども、その後、障害レベルC=0が継続したことにより、累積障害カウント値TCは、しきい値L1を超えることなく徐々に減少して0となっている。
【0057】
しきい値L1,L2(L1<L2)は、モータ2の寿命を示すしきい値であり、累積障害カウント値TCがしきい値L1よりも低いときは、モータ2の寿命はまだ長いと判定され、累積障害カウント値TCがしきい値L2を超えると、モータ2の寿命は短いと判定される。累積障害カウント値TCがしきい値L1よりも高く、かつ、しきい値L2よりも低いときは、モータ2の寿命は短くもなく、かつ、長くもないと判定される。なお、この例では、2つのしきい値L1,L2(L1<L2)を設けるものとしたが、L1=L2としてもよい。
【0058】
時刻t2,t3においても、累積障害カウント値TCは、しきい値L1を超えることなくその後減少して0となっている。他方、時刻t4以降は、障害レベルC>0が継続しており、累積障害カウント値TCは、障害レベルCが累積されることによって上昇している。そして、累積障害カウント値TCは、しきい値L2を超えており、モータ2の寿命は短いと判定される。
【0059】
図11は、モータ制御装置1において実行されるモータ寿命判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。図11を参照して、まず、モータ制御装置1の判定部30は、モータ2の寿命判定を実施するか否かを判定する(ステップS10)。この実施の形態では、モータ2の寿命判定は、モータ2の電流を一定にした状態で実施されるため、例えば、モータ2による回転制御のオフライン運転中等に実施される。
【0060】
そして、モータ2の寿命判定を実施するものと判定されると(ステップS10においてYES)、モータ2の寿命判定を実施する旨の指令が判定部30からモータ制御部10へ出力される。当該指令を受けたモータ制御部10は、寿命判定を実施するために、モータ2の電流を所定の一定値に制御する(ステップS15)。一定値の大きさは、適宜設定することができる。なお、本実施の形態では、モータ2は交流モータであり、モータ電流の実効値が一定に制御される。
【0061】
次いで、判定部30は、演算部20,25からそれぞれモータ2の角速度ω及び角加速度αを取得する(ステップS20)。モータ2の角速度ωは、回転角センサ15によって検出された回転角θから演算部20により算出される。また、モータ2の角加速度αは、演算部20により算出された角速度ωから演算部25により算出される。
【0062】
そして、判定部30は、取得された角速度ωに基づいて、角速度ωが目標を継続して下回っている時間を示す速度未達時間Tを算出する(ステップS30)。角速度ωの目標は、一定に制御されるモータ2の電流Imの大きさに応じた角速度である。さらに、判定部30は、角速度ωに基づいて、所定の一定期間において角速度ωが目標を下回る回数を示す速度未達回数Nを算出する(ステップS35)。一定期間の長さは、適宜設定することができる。なお、速度未達時間T及び一定期間は、タイマ40を用いて計時される。
【0063】
続いて、判定部30は、ステップS20において取得された角加速度αに基づいて、角加速度αの大きさに応じた障害パターンS1を判定する(ステップS40)。なお、角加速度αが略0であるときは、障害パターンS1は0と判定される。
【0064】
また、判定部30は、ステップS30において算出された速度未達時間Tに基づいて、速度未達時間Tの長さに応じた障害パターンS2を判定する(ステップS45)。なお、速度未達時間Tが略0であるときは、障害パターンS2は0と判定される。
【0065】
さらに、判定部30は、ステップS35において算出された速度未達回数Nに基づいて、速度未達回数Nの多さに応じた障害パターンS3を判定する(ステップS45)。なお、速度未達回数Nが略0であるときは、障害パターンS3は0と判定される。
【0066】
そして、判定部30は、ステップS40~S50において判定された障害パターンS1~S3に基づいて、障害レベルCを算出する(ステップS55)。本実施の形態では、障害レベルCは、上記の式(4)により算出される。
【0067】
次いで、判定部30は、算出された障害レベルCに基づいて、上記の式(5-1),(5-2)により累積障害カウント値TCを算出する(ステップS60)。算出された累積障害カウント値TCは、記憶部35に一時的に記憶される。記憶部35に記憶された累積障害カウント値TCは、次回の演算時に前回値として用いられる。そして、判定部30は、算出された累積障害カウント値TCがしきい値L1よりも小さいか否かを判定する(ステップS65)。
【0068】
累積障害カウント値TCがしきい値L1よりも小さいと判定されると(ステップS65においてYES)、判定部30は、モータ2の寿命はまだ長いと判定する(ステップS70)。他方、ステップS65において累積障害カウント値TCがしきい値L1以上であると判定されると(ステップS65においてNO)、判定部30は、ステップS75へと処理を移行する。
【0069】
次いで、判定部30は、算出された累積障害カウント値TCがしきい値L2(L2>L1)よりも大きいか否かを判定する(ステップS75)。累積障害カウント値TCがしきい値L2よりも大きいと判定されると(ステップS75においてYES)、判定部30は、モータ2の寿命は短いと判定する(ステップS80)。他方、累積障害カウント値TCがしきい値L2以下であると判定されると(ステップS75においてNO)、判定部30は、ステップS80を実行することなくステップS10へ処理を戻す。なお、ステップS80の実行後もステップS10へ処理が戻される。
【0070】
以上のように、本実施の形態では、モータ2の障害パターンS1~S3に基づいて障害レベルCが算出され、その障害レベルCから累積障害カウント値TCが算出される。そして、累積障害カウント値TCに基づいてモータ2の寿命が判定されるところ、累積障害カウント値TCの演算式は、障害レベルCが零である場合に累積障害カウント値TCを減算する減算項Aを含むため、偶発的に発生した障害については、累積障害カウント値TCが減算される。したがって、この実施の形態によれば、偶発的な故障ではない、モータ2の寿命を判定することができる。
【0071】
[変形例1]
上記の実施の形態では、モータ2の速度未達時間Tについて、速度未達時間Tの長さに基づいて障害パターンS2を判定するものとしたが、モータ2の回転が障害により停止している場合に(角速度ω=0)、モータ2の電流Imを増加してモータ2が回転するか否かによって障害パターンS2を判定してもよい。
【0072】
図12は、モータ2が障害により停止した後、モータ2の電流Imを増加させたときの回転角θ、角速度ω、及び角加速度αの推移を示す図である。図12を参照して、この例では、時刻t72において、モータ2が障害により停止している。その後、モータ2が停止している状態で、時刻t73において、モータの電流Imが引き上げられている。この電流Imの増加によりモータ2が回転するか否かによって障害パターンS2が判定される。
【0073】
この例では、時刻t73において電流Imを増加させたことによりモータ2は回転を開始している。したがって、電流Imを増加させてもモータ2の停止状態が継続する場合よりも(図示せず)、障害パターンS2は低く判定されるものとする。
【0074】
図13は、この変形例1における障害パターンS2の判定処理の一例を示すフローチャートである。図13を参照して、判定部30は、モータ2の角速度ωが0であるか否かを判定する(ステップS110)。角速度ωが0でないときは(ステップS110においてNO)、障害パターンS2は「0」と判定される(ステップS115)。
【0075】
ステップS110において角速度ωが0であると判定されると(ステップS110においてYES)、判定部30は、モータ制御部10へ電流増加指令を出力し、モータ制御部10は、モータ2の電流を所定量増加させる(ステップS120)。
【0076】
そして、判定部30は、モータ2の角速度ωが0であるか否かを判定する(ステップS125)。角速度ωが0でないとき(ステップS125においてNO)、すなわちモータ2の電流を増加させたことによりモータ2の回転が開始したときは、障害パターンS2は「1」と判定される(ステップS130)。
【0077】
ステップS125において角速度ωがまだ0であると判定されると(ステップS125においてYES)、判定部30は、モータ2の電流をさらに所定量増加させる(ステップS135)。
【0078】
そして、判定部30は、モータ2の角速度ωが0であるか否かを再度判定する(ステップS140)。角速度ωが0でないとき(ステップS140においてNO)、すなわちモータ2の電流を再度増加させたことによりモータ2の回転が開始したときは、障害パターンS2は「2」と判定される(ステップS145)。他方、ステップS140において角速度ωがまだ0であると判定されると(ステップS140においてYES)、障害パターンS2は「3」と判定される(ステップS160)。
【0079】
なお、上記の一連の処理は、モータ2の速度未達時間Tが所定時間を超える場合に行なうものとしてもよい。
【0080】
このように、変形例1では、モータ2の回転が障害により停止している場合に(角速度ω=0)、モータ2の電流を段階的に増加してモータ2が回転するか否かにより障害パターンS2が判定される。単に速度未達時間T(モータ2の停止時間)の長さだけではなく、電流に応じてモータ2が回転するか否かを考慮するので、障害パターンS2を詳細に判定することができる。その結果、モータ2の寿命もより詳細に判定することが可能となる。
【0081】
[変形例2]
上記の実施の形態では、モータ2の角速度ω及び角加速度αに基づいて、モータ2の障害パターン及び寿命を判定するものとした。すなわち、角加速度α(第1のパラメータ)、及び角速度ωに基づき算出される速度未達時間T(第2のパラメータ)及び速度未達回数N(第3のパラメータ)に基づいてそれぞれ障害パターンS1~S3を判定し、障害パターンS1~S3を用いてモータ2の寿命を判定するものとした。
【0082】
この変形例として、角加速度α(第1のパラメータ)、速度未達時間T(第2のパラメータ)、及び速度未達回数N(第3のパラメータ)のいずれか1つ又は2つに基づいて、モータ2の障害パターン及び寿命を判定してもよい。例えば、角加速度αに基づき判定される障害パターンS1のみを用いてモータ2の寿命を判定してもよいし、角加速度αに基づき判定される障害パターンS1と、速度未達時間Tに基づき判定される障害パターンS2とを用いて、モータ2の寿命を判定してもよい。或いは、角加速度αに基づき判定される障害パターンS1と、速度未達回数Nに基づき判定される障害パターンS3とを用いて、モータ2の寿命を判定してもよいし、速度未達時間Tに基づき判定される障害パターンS2と、速度未達回数Nに基づき判定される障害パターンS3とを用いて、モータ2の寿命を判定してもよい。
【0083】
[変形例3]
上記の実施の形態では、式(5-2)に示される累積障害カウント値TCの減算項Aは、定数であるものとしたが、障害レベルCが0である時間が長いほど、或いは障害レベルCが0である連続回数が大きいほど、減算項Aの値を大きくしてもよい。障害レベルCが0である時間が長いほど、或いは障害レベルCが0である連続回数が大きいほど、前回生じた障害は偶発的なものであり、モータの寿命ではない可能性が高い。したがって、上記のように減算項Aを可変とすることにより、モータ2の寿命をより精度よく判定することができる。
【0084】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 モータ制御装置、2 モータ、10 モータ制御部、15 回転角センサ、20,25 演算部、30 判定部、35 記憶部、40 タイマ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13