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特許7597045制御システム、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】制御システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/65 20230101AFI20241203BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241203BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241203BHJP
   H04N 23/61 20230101ALI20241203BHJP
   H04N 23/611 20230101ALI20241203BHJP
【FI】
H04N23/65 100
G05D1/43
G06T7/00 660Z
H04N23/61
H04N23/611
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022002508
(22)【出願日】2022-01-11
(65)【公開番号】P2023102125
(43)【公開日】2023-07-24
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】吉川 恵
(72)【発明者】
【氏名】小田 志朗
(72)【発明者】
【氏名】清水 奨
(72)【発明者】
【氏名】松井 毅
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195087(JP,A)
【文献】特開2015-041820(JP,A)
【文献】特開2021-086199(JP,A)
【文献】特開2015-070581(JP,A)
【文献】特開2012-004754(JP,A)
【文献】特開2003-295951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/40ー23/959
G05D 1/43
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行し、
前記カメラで撮像された人物の特徴を認識し、前記特徴に基づいて前記人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類するグループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、
前記第1グループに属する前記人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、前記第1グループに属する前記人物が存在しない場合には前記第1動作モードと異なる第2動作モードを選択し、
前記第2動作モードを選択した場合、前記第1動作モードを選択した場合に比べて、前記複数のカメラのうち稼働させるカメラの台数及び前記グループ分類処理での分類において前記複数のカメラのうち情報源として使用するカメラの台数の一方を少なくするように、
前記グループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、前記第1動作モードを選択した場合、前記複数のカメラを稼働させ、前記第2動作モードを選択した場合、前記複数のカメラのうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、前記複数のカメラを制御し、
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、
前記複数のカメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられており、
前記システム制御は、前記移動ロボットの走行位置に合わせて、前記第1カメラとして機能させるカメラを変更するように、前記複数のカメラを制御する、
制御システム。
【請求項2】
施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行し、
前記カメラで撮像された人物の特徴を認識し、前記特徴に基づいて前記人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類するグループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、
前記第1グループに属する前記人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、前記第1グループに属する前記人物が存在しない場合には前記第1動作モードと異なる第2動作モードを選択し、
前記第2動作モードを選択した場合、前記第1動作モードを選択した場合に比べて、前記複数のカメラのうち稼働させるカメラの台数及び前記グループ分類処理での分類において前記複数のカメラのうち情報源として使用するカメラの台数の一方を少なくするように、
前記グループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、
前記複数のカメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられている、
制御システム。
【請求項3】
前記システム制御は、前記第1動作モードを選択した場合、前記複数のカメラを稼働させ、前記第2動作モードを選択した場合、前記複数のカメラのうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、前記複数のカメラを制御する、
請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第1カメラは、前記施設におけるセキュリティゲートを監視する位置に設けられているカメラを含む、
請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記グループ分類処理は、前記人物の着衣の特徴に応じて、あるいは前記人物が所定の所持品を所持しているか否かに応じて、前記人物を分類する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行し、
前記カメラで撮像された人物の特徴を認識し、前記特徴に基づいて前記人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類するグループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、
前記第1グループに属する前記人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、前記第1グループに属する前記人物が存在しない場合には前記第1動作モードと異なる第2動作モードを選択し、
前記第2動作モードを選択した場合、前記第1動作モードを選択した場合に比べて、前記複数のカメラのうち稼働させるカメラの台数及び前記グループ分類処理での分類において前記複数のカメラのうち情報源として使用するカメラの台数の一方を少なくするように、
前記グループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、前記第1動作モードを選択した場合、前記複数のカメラを稼働させ、前記第2動作モードを選択した場合、前記複数のカメラのうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、前記複数のカメラを制御し、
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、
前記複数のカメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられており、
前記システム制御は、前記移動ロボットの走行位置に合わせて、前記第1カメラとして機能させるカメラを変更するように、前記複数のカメラを制御する、
制御方法。
【請求項7】
施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行し、
前記カメラで撮像された人物の特徴を認識し、前記特徴に基づいて前記人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類するグループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、
前記第1グループに属する前記人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、前記第1グループに属する前記人物が存在しない場合には前記第1動作モードと異なる第2動作モードを選択し、
前記第2動作モードを選択した場合、前記第1動作モードを選択した場合に比べて、前記複数のカメラのうち稼働させるカメラの台数及び前記グループ分類処理での分類において前記複数のカメラのうち情報源として使用するカメラの台数の一方を少なくするように、
前記グループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、
前記複数のカメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられている、
制御方法。
【請求項8】
前記システム制御は、前記第1動作モードを選択した場合、前記複数のカメラを稼働させ、前記第2動作モードを選択した場合、前記複数のカメラのうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、前記複数のカメラを制御する、
請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記第1カメラは、前記施設におけるセキュリティゲートを監視する位置に設けられているカメラを含む、
請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記グループ分類処理は、前記人物の着衣の特徴に応じて、あるいは前記人物が所定の所持品を所持しているか否かに応じて、前記人物を分類する、
請求項6~9のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、制御方法を実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行し、
前記カメラで撮像された人物の特徴を認識し、前記特徴に基づいて前記人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類するグループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、
前記第1グループに属する前記人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、前記第1グループに属する前記人物が存在しない場合には前記第1動作モードと異なる第2動作モードを選択し、
前記第2動作モードを選択した場合、前記第1動作モードを選択した場合に比べて、前記複数のカメラのうち稼働させるカメラの台数及び前記グループ分類処理での分類において前記複数のカメラのうち情報源として使用するカメラの台数の一方を少なくするように、
前記グループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、前記第1動作モードを選択した場合、前記複数のカメラを稼働させ、前記第2動作モードを選択した場合、前記複数のカメラのうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、前記複数のカメラを制御し、
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、
前記複数のカメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられており、
前記システム制御は、前記移動ロボットの走行位置に合わせて、前記第1カメラとして機能させるカメラを変更するように、前記複数のカメラを制御する、
プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、制御方法を実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行し、
前記カメラで撮像された人物の特徴を認識し、前記特徴に基づいて前記人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類するグループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、
前記第1グループに属する前記人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、前記第1グループに属する前記人物が存在しない場合には前記第1動作モードと異なる第2動作モードを選択し、
前記第2動作モードを選択した場合、前記第1動作モードを選択した場合に比べて、前記複数のカメラのうち稼働させるカメラの台数及び前記グループ分類処理での分類において前記複数のカメラのうち情報源として使用するカメラの台数の一方を少なくするように、
前記グループ分類処理を実行し、
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、
前記複数のカメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられている、
プログラム。
【請求項13】
前記システム制御は、前記第1動作モードを選択した場合、前記複数のカメラを稼働させ、前記第2動作モードを選択した場合、前記複数のカメラのうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、前記複数のカメラを制御する、
請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記第1カメラは、前記施設におけるセキュリティゲートを監視する位置に設けられているカメラを含む、
請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記グループ分類処理は、前記人物の着衣の特徴に応じて、あるいは前記人物が所定の所持品を所持しているか否かに応じて、前記人物を分類する、
請求項11~14のいずれか1項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、施設内を移動する移動ロボットを制御する制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-86199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、病院をはじめとする様々な施設においては、人の監視を行う監視システムが導入されているが、病院施設内での利用時のように、例えば患者や来客等の施設外部の人が居る場面とそのような人が存在せずに病院スタッフ等の施設内の人だけが居る場面とがある。しかしながら、このような監視システムにおいて、これらのいずれの場面(状況)でも区別せずに監視を行うと、常に一定の処理負荷がかかったままとなる。
【0005】
よって、状況に応じて処理負荷を臨機応変に変え、消費電力を低減することが望まれる。なお、このような問題は、特許文献1に記載の技術で解決できるものではない。
【0006】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するに際し、状況に応じて、処理負荷を臨機応変に変え、消費電力を低減することが可能な制御システム、制御方法、及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係る制御システムは、施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行し、前記カメラで撮像された人物の特徴を認識し、前記特徴に基づいて前記人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類するグループ分類処理を実行し、前記システム制御は、前記第1グループに属する前記人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、前記第1グループに属する前記人物が存在しない場合には前記第1動作モードと異なる第2動作モードを選択し、前記第2動作モードを選択した場合、前記第1動作モードを選択した場合に比べて、前記複数のカメラのうち稼働させるカメラの台数及び前記グループ分類処理での分類において前記複数のカメラのうち情報源として使用するカメラの台数の一方を少なくするように、前記グループ分類処理を実行する。これにより、施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するに際し、状況に応じて、処理負荷を臨機応変に変え、消費電力を低減することができる。
【0008】
前記システム制御は、前記第1動作モードを選択した場合、前記複数のカメラを稼働させ、前記第2動作モードを選択した場合、前記複数のカメラのうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、前記複数のカメラを制御してもよい。これにより、第2動作モードの場合において、監視に必要な第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることが可能になる。
【0009】
前記第1カメラは、前記施設におけるセキュリティゲートを監視する位置に設けられているカメラを含んでもよい。これにより、第2動作モードの場合において、セキュリティ上、監視が必要な部分に設置された第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることが可能になる。
【0010】
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、前記カメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられており、前記システム制御は、前記移動ロボットの走行位置に合わせて、前記第1カメラとして機能させるカメラを変更するように、前記複数のカメラを制御してもよい。これにより、移動ロボットの監視も行うことができ、且つ、第2動作モードの場合において、移動ロボットの周囲に設置された第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることができる。
【0011】
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、前記カメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられていてもよい。これにより、移動ロボットの監視も行うことができる。
【0012】
前記グループ分類処理は、前記人物の着衣の特徴に応じて、あるいは前記人物が所定の所持品を所持しているか否かに応じて、前記人物を分類してもよい。これにより、人物の分類を容易に行うことができる。
【0013】
本開示の第2の態様に係る制御方法は、施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行し、前記カメラで撮像された人物の特徴を認識し、前記特徴に基づいて前記人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類するグループ分類処理を実行し、前記システム制御は、前記第1グループに属する前記人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、前記第1グループに属する前記人物が存在しない場合には前記第1動作モードと異なる第2動作モードを選択し、前記第2動作モードを選択した場合、前記第1動作モードを選択した場合に比べて、前記複数のカメラのうち稼働させるカメラの台数及び前記グループ分類処理での分類において前記複数のカメラのうち情報源として使用するカメラの台数の一方を少なくするように、前記グループ分類処理を実行する。これにより、施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するに際し、状況に応じて、処理負荷を臨機応変に変え、消費電力を低減することができる。
【0014】
前記システム制御は、前記第1動作モードを選択した場合、前記複数のカメラを稼働させ、前記第2動作モードを選択した場合、前記複数のカメラのうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、前記複数のカメラを制御してもよい。これにより、第2動作モードの場合において、監視に必要な第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることが可能になる。
【0015】
前記第1カメラは、前記施設におけるセキュリティゲートを監視する位置に設けられているカメラを含んでもよい。これにより、第2動作モードの場合において、セキュリティ上、監視が必要な部分に設置された第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることが可能になる。
【0016】
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、前記カメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられており、前記システム制御は、前記移動ロボットの走行位置に合わせて、前記第1カメラとして機能させるカメラを変更するように、前記複数のカメラを制御してもよい。これにより、移動ロボットの監視も行うことができ、且つ、第2動作モードの場合において、移動ロボットの周囲に設置された第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることができる。
【0017】
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、前記カメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられていてもよい。これにより、移動ロボットの監視も行うことができる。
【0018】
前記グループ分類処理は、前記人物の着衣の特徴に応じて、あるいは前記人物が所定の所持品を所持しているか否かに応じて、前記人物を分類してもよい。これにより、人物の分類を容易に行うことができる。
【0019】
本開示の第3の態様に係るプログラムは、コンピュータに、制御方法を実行させるためのプログラムであって、前記制御方法は、施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行し、前記カメラで撮像された人物の特徴を認識し、前記特徴に基づいて前記人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類するグループ分類処理を実行し、前記システム制御は、前記第1グループに属する前記人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、前記第1グループに属する前記人物が存在しない場合には前記第1動作モードと異なる第2動作モードを選択し、前記第2動作モードを選択した場合、前記第1動作モードを選択した場合に比べて、前記複数のカメラのうち稼働させるカメラの台数及び前記グループ分類処理での分類において前記複数のカメラのうち情報源として使用するカメラの台数の一方を少なくするように、前記グループ分類処理を実行する。これにより、施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するに際し、状況に応じて、処理負荷を臨機応変に変え、消費電力を低減することができる。
【0020】
前記システム制御は、前記第1動作モードを選択した場合、前記複数のカメラを稼働させ、前記第2動作モードを選択した場合、前記複数のカメラのうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、前記複数のカメラを制御してもよい。これにより、第2動作モードの場合において、監視に必要な第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることが可能になる。
【0021】
前記第1カメラは、前記施設におけるセキュリティゲートを監視する位置に設けられているカメラを含んでもよい。これにより、第2動作モードの場合において、セキュリティ上、監視が必要な部分に設置された第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることが可能になる。
【0022】
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、前記カメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられており、前記システム制御は、前記移動ロボットの走行位置に合わせて、前記第1カメラとして機能させるカメラを変更するように、前記複数のカメラを制御してもよい。これにより、移動ロボットの監視も行うことができ、且つ、第2動作モードの場合において、移動ロボットの周囲に設置された第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることができる。
【0023】
前記システム制御は、前記施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボットの制御を含み、前記カメラは、走行する前記移動ロボットの周辺を撮像するように前記移動ロボットの走行面から離間した位置に設けられていてもよい。これにより、移動ロボットの監視も行うことができる。
【0024】
前記グループ分類処理は、前記人物の着衣の特徴に応じて、あるいは前記人物が所定の所持品を所持しているか否かに応じて、前記人物を分類してもよい。これにより、人物の分類を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するに際し、状況に応じて、処理負荷を臨機応変に変え、消費電力を低減することが可能な制御システム、制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る制御システムを組み込み可能な、移動ロボットによる搬送システムの全体構成例を説明するための概念図である。
図2図1の搬送システムの制御ブロック図である。
図3】移動ロボットの一例を示す概略図である。
図4】モード制御の制御系を示す制御ブロック図である。
図5】スタッフ情報の例を説明するための表である。
図6】モード情報の例を説明するための表である。
図7】実施形態に係る制御方法の一例を示すフローチャートである。
図8】モード制御の実施例を説明するための図である。
図9】モード制御の実施例を説明するための図である。
図10】実施形態に係る制御方法の他の例を示すフローチャートである。
図11】装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明は以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0028】
(概略構成)
本実施形態に係る制御システムは、施設内に設置される複数のカメラを含むシステムを制御するシステム制御を実行するとともに、人物を分類するグループ分類処理を実行し、人を監視することができるシステムである。システム制御は、制御システムに備えられたシステム制御部が担うことができ、グループ分類処理は制御システムに備えられたグループ分類部が実行することができる。
【0029】
まず、本実施形態に係る制御システムを組み込み可能な、移動ロボットによる搬送システムの一例について説明する。図1は、本実施形態に係る制御システムを組み込み可能な、移動ロボット20による搬送システム1の全体構成例を説明するための概念図である。例えば、移動ロボット20は、搬送物の搬送をタスクとして実行する搬送ロボットである。移動ロボット20は、病院、リハビリセンタ、介護施設、高齢者入居施設などの医療福祉施設内において、搬送物を搬送するために自律走行する。また、本実施形態に係る搬送システムは、ショッピングモールなどの商業施設等にも利用可能である。
【0030】
ユーザU1は、移動ロボット20に搬送物を収容して、搬送を依頼する。移動ロボット20は、設定された目的地まで自律的に移動して、搬送物を搬送する。つまり、移動ロボット20は荷物の搬送タスク(以下、単にタスクともいう)を実行する。以下の説明では、搬送物を搭載する場所を搬送元とし、搬送物を届ける場所を搬送先とする。
【0031】
例えば、移動ロボット20が複数の診療科がある総合病院内を移動するものとする。移動ロボット20は、複数の診療科間で備品、消耗品、医療器具等を搬送する。例えば、移動ロボット20は、搬送物をある診療科のナースステーションから、別の診療科へのナースステーションに届ける。あるいは、移動ロボット20は、備品や医療器具の保管庫から診療科のナースステーションまで搬送物を届ける。また、移動ロボット20は、調剤科で調剤された薬品を使用予定の診療科や患者まで届ける。
【0032】
搬送物の例としては、薬剤、包袋などの消耗品、検体、検査器具、医療器具、病院食、文房具などの備品等が挙げられる。医療機器としては、血圧計、輸血ポンプ、シリンジポンプ、フットポンプ、ナースコール、離床センサ、フットポンプ、低圧持続吸入器心電図モニタ、医薬品注入コントローラ、経腸栄養ポンプ、人工呼吸器、カフ圧計、タッチセンサ、吸引器、ネブライザ、パルスオキシメータ、血圧計、人工蘇生器、無菌装置、エコー装置などが挙げられる。また、病院食、検査食などの食事を搬送しても良い。さらに、移動ロボット20は、使用済みの機器、食事済みの食器などを搬送しても良い。搬送先が異なる階にある場合、移動ロボット20はエレベータなどを利用して移動してもよい。
【0033】
搬送システム1は、移動ロボット20と、上位管理装置10と、ネットワーク600と、通信ユニット610と、ユーザ端末400と、を備えている。ユーザU1又はユーザU2は、ユーザ端末400を用いて、搬送物の搬送依頼を行うことができる。例えば、ユーザ端末400は、タブレットコンピュータやスマートフォンなどである。ユーザ端末400は、無線又は有線で通信可能な情報処理装置であればよい。
【0034】
本実施形態においては、移動ロボット20とユーザ端末400は、ネットワーク600を介して上位管理装置10を接続されている。移動ロボット20及びユーザ端末400は、通信ユニット610を介して、ネットワーク600と接続される。ネットワーク600は有線又は無線のLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。さらに、上位管理装置10は、ネットワーク600と有線又は無線で接続されている。通信ユニット610はそれぞれの環境に設置された例えば無線LANユニットである。通信ユニット610は、例えば、WiFi(登録商標)ルータなどの汎用通信デバイスであってもよい。
【0035】
ユーザU1、U2のユーザ端末400から発信された各種信号は、ネットワーク600を介して一旦、上位管理装置10へ送られ、上位管理装置10から対象となる移動ロボット20へ転送される。同様に、移動ロボット20から発信される各種信号は、ネットワーク600を介して一旦、上位管理装置10へ送られ、上位管理装置10から対象となるユーザ端末400へ転送される。上位管理装置10は各機器と接続されたサーバであり、各機器からのデータを収集する。また、上位管理装置10は、物理的に単一な装置に限られるものではなく、分散処理を行う複数の装置を備えていてもよい。また、上位管理装置10は、移動ロボット20等のエッジデバイスに分散して配置されていても良い。例えば、搬送システム1の一部又は全部が移動ロボット20に搭載されていても良い。
【0036】
ユーザ端末400と移動ロボット20は、上位管理装置10を介さずに、信号を送受信してもよい。例えば、ユーザ端末400と移動ロボット20は、無線通信により直接信号を送受信してもよい。あるいは、ユーザ端末400と移動ロボット20は、通信ユニット610を介して、信号を送受信してもよい。
【0037】
ユーザU1又はユーザU2は、ユーザ端末400を用いて搬送物の搬送を依頼する。以下、ユーザU1が搬送元にいる搬送依頼者であり、ユーザU2が搬送先(目的地)にいる受領予定者であるとして説明を行う。もちろん、搬送先にいるユーザU2が搬送依頼を行うことも可能である。また、搬送元又は搬送先以外の場所にいるユーザが搬送依頼を行ってもよい。
【0038】
ユーザU1が搬送依頼を行う場合、ユーザ端末400を用いて、搬送物の内容、搬送物の受取先(以下、搬送元ともいう)、搬送物の届け先(以下、搬送先ともいう)、搬送元の到着予定時刻(搬送物の受取時刻)、搬送先への到着予定時間(搬送期限)等を入力する。以下、これらの情報を搬送依頼情報ともいう。ユーザU1は、ユーザ端末400のタッチパネルを操作することで、搬送依頼情報を入力することができる。搬送元は、ユーザU1がいる場所でも良く、搬送物の保管場所などであってもよい。搬送先は、使用予定のユーザU2や患者がいる場所である。
【0039】
ユーザ端末400は、ユーザU1によって入力された搬送依頼情報を上位管理装置10に送信する。上位管理装置10は、複数の移動ロボット20を管理する管理システムである。上位管理装置10は、移動ロボット20に搬送タスクを実行するための動作指令を送信する。上位管理装置10は搬送依頼毎に、搬送タスクを実行する移動ロボット20を決定する。そして、上位管理装置10は、その移動ロボット20に対して動作指令を含む制御信号を送信する。移動ロボット20が、動作指令に従って、搬送元から搬送先に到着するように移動する。
【0040】
例えば、上位管理装置10は、搬送元又はその近傍の移動ロボット20に搬送タスクを割り当てる。あるいは、上位管理装置10は、搬送元又はその近傍に向かっている移動ロボット20に搬送タスクを割り当てる。タスクを割り当てられた移動ロボット20が搬送元まで搬送物を取りに行く。搬送元は、例えば、タスクを依頼したユーザU1がいる場所である。
【0041】
移動ロボット20が搬送元に到着すると、ユーザU1又はその他の職員が移動ロボット20に搬送物を載せる。搬送物を搭載した移動ロボット20が搬送先を目的地として自律移動する。上位管理装置10は、搬送先のユーザU2のユーザ端末400に対して信号を送信する。これにより、ユーザU2は、搬送物が搬送中であることや、その到着予定時間を知ることができる。設定された搬送先に移動ロボット20が到着すると、ユーザU2は、移動ロボット20に収容されている搬送物を受領することができる。このようにして、移動ロボット20が、搬送タスクを実行する。
【0042】
このような全体構成においては、搬送システム1における移動ロボット20の制御に関するロボット制御システムは、その各要素を、移動ロボット20、ユーザ端末400および上位管理装置10に分散して構築することができる。また、ロボット制御システムの要素、即ち移動ロボット20により搬送物の搬送を実現するための実質的な要素を、一つの装置に集めて構築することもできる。この装置として機能させることができる上位管理装置10は、1又は複数の移動ロボット20を制御することになる。
【0043】
搬送システム1で利用される移動ロボット20は、マップを参照して自律移動する移動ロボットとすることができる。移動ロボット20を制御するロボット制御システムは、例えば、測距センサを用いて測定された人までの距離を示す距離情報を取得する。ロボット制御システムは、人までの距離の変化に応じて、上記人の移動速度及び移動方向を示す移動ベクトルを推定する。ロボット制御システムは、移動ロボット20の移動を制限するためのコストをマップ上に付与する。ロボット制御システムは、測距センサの測定結果に応じて更新されるコストに応じて移動するように制御する。ロボット制御システムは、移動ロボット20に搭載されていても良いし、ロボット制御システムの一部又は全部は上位管理装置10に搭載されていても良い。但し、本実施形態においてロボット制御システムにおける移動ロボット20の制御方法は問わない。
【0044】
そして、本実施形態に係る制御システムは、このようなロボット制御システムとともにあるいは独立したシステムとして、搬送システム1に組み込むことができる。かかる制御システムの要素、即ち人を監視するための制御システムの要素は、移動ロボット20、ユーザ端末400および上位管理装置10に分散して構築することができ、あるいは、一つの装置に集めて構築することができる。以下の例では、この装置の例としての上位管理装置10が制御システムの要素を備えるものとして、即ち上位管理装置10がシステム制御及びグループ分類処理を実行するもの、つまりシステム制御部及びグループ分類部を備える例を挙げて説明する。
【0045】
システム制御部は、施設内に設置される複数のカメラ(以下、環境カメラで例示)を含むシステムを制御する。グループ分類部は、環境カメラで撮像された人物の特徴を認識し、その特徴に基づいて人物を予め設定された第1グループまたは第2グループに分類する。本実施形態では第1グループが非スタッフ、第2グループがスタッフである例を挙げて説明するが、人物の分類は他の様々な属性によっても実施することができる。また、移動ロボット20も監視対象にすることができ、その場合には移動ロボット20はスタッフに分類すればよい。
【0046】
グループ分類部は、予め記憶しておいたスタッフの画像(例えば顔画像)と環境カメラで撮像された人物の画像とをマッチングすることで、分類を行うことができる。分類のための人物の特徴の認識方法(検出方法、抽出方法)は問わない。また、グループ分類部は、例えば機械学習した学習モデルを用いて分類を行うこともできる。グループ分類部は、例えば、人物の着衣の特徴に応じて、あるいは人物が所定の所持品を所持しているか否かに応じて、人物を分類してもよい。これにより、人物の分類を容易に行うことができる。
【0047】
非スタッフ、スタッフについて説明する。施設のユーザには、施設で働くスタッフと、それ以外の非スタッフがいる。ここで、施設が病院である場合、非スタッフとしては、患者、入院患者、訪問者、外来患者、付き添い者等がいる。スタッフとしては、医師、看護師、薬剤師、事務員、作業療法士、各種従業員がいる。また、スタッフは各種物品の搬入者、メンテナンス業者、清掃員等を含んでいてもよい。スタッフは病院の直接の雇用者や被雇用者に限られるものではなく、関連する従業者を含んでいてもよい。
【0048】
制御システムは、病院等のスタッフと非スタッフとが監視対象として混在する環境において、消費電力を低減させることが望まれる。そのため、上位管理装置10は、施設の状況に応じて、適切に消費電力を低減させながら施設をモニタする必要がある。
【0049】
具体的には、上位管理装置10のシステム制御部は、非スタッフに属する人物が存在する場合には第1動作モードを選択し、非スタッフに属する人物が存在しない場合には第1動作モードと異なる第2動作モードを選択する。以下、第1動作モードを非スタッフモードと称し、第2動作モードをスタッフモードと称して説明するが、第1グループ/第2グループの分類で説明したように他の属性に基づき分類を行うこともできる。
【0050】
例えば、システム制御部は、第1動作モードが選択されているときに非スタッフに属する人物が存在しないことが認識されれば、第2動作モードに切り替え、逆に第2動作モードが選択されているときに非スタッフに属する人物が存在することが認識されれば、第1動作モードに切り替えることができる。
【0051】
そして、システム制御部は、第2動作モードを選択した場合、第1動作モードを選択した場合に比べて、施設内に備えられた複数の環境カメラのうち稼働させるカメラの台数、及び、グループ分類部での分類において上記複数の環境カメラのうち情報源として使用する環境カメラの台数、の一方を少なくするように、グループ分類処理を実行する。このようなグループ分類処理のためのシステム制御部における制御対象は、前者の場合、環境カメラ(環境カメラの稼働/非稼働の切り替え制御)とすることができ、後者の場合、グループ分類部又は分類に使用する画像データを取得する画像データ取得部などとすることができる。
【0052】
また、第2動作モードにおいて、使用する環境カメラ又は画像データは、予め決められた環境カメラとすることができるが、例えば時間帯に応じて変更する、あるいは最後に非スタッフを確認できた位置に応じて決定するなど、これに限ったものではない。また、第1動作モードにおいて、使用する環境カメラ又は画像データは、予め決められた環境カメラとすることができるが、例えば時間帯に応じて変更するなど、これに限ったものではない。
【0053】
このように、システム制御部は、監視対象の人物が監視がさほど必要のないスタッフであるか、できる限りの監視が必要な非スタッフであるかに応じて、上位管理装置10が監視のためのモードを切替えることができる。したがって、本実施形態に係る制御システムでは、非スタッフの有無に応じた監視負荷軽減対策を行うこと、即ち、施設内に監視用に設置される複数の環境カメラを含むシステムを制御するに際し、状況(場面)に応じて、処理負荷を臨機応変に変え、消費電力を低減することができる。
【0054】
(制御ブロック図)
図2は、搬送システム1の制御系を示す制御ブロック図を示す。図2に示すように、搬送システム1は、上位管理装置10、移動ロボット20、上記の環境カメラ300を備える。
【0055】
搬送システム1は、所定の施設内において移動ロボット20を自律的に移動させながら、複数の移動ロボット20を効率的に制御する。そのため、施設内には、複数個の環境カメラ300が設置されている。例えば、環境カメラ300は、施設内の通路、ホール、エレベータ、出入り口等に設置されている。環境カメラ300は、移動ロボット20の制御のためだけではなく、上述したように人の監視のためにも用いられる。但し、本実施形態において、環境カメラ300は、移動ロボット20の制御のために用いられないこと、例えば、人の監視のためだけに用いられることもでき、あるいは、人監視用のカメラと移動ロボット20の監視用のカメラとを別個に備えることもできる。
【0056】
環境カメラ300は、人や移動ロボット20が移動する範囲の画像を取得する。なお、搬送システム1では、環境カメラ300で取得された画像やそれに基づく情報は、上位管理装置10が収集する。移動ロボット20の制御に用いる画像については、環境カメラ300で取得された画像等が直接移動ロボットに送信されてもよい。環境カメラ300は、施設内の通路や出入り口に監視カメラとして設けておくことができる。環境カメラ300は、施設内の混雑状況の分布を求めるために使用されていてもよい。
【0057】
搬送に関し、搬送システム1では、上位管理装置10が搬送依頼情報に基づいて、ルート計画を行う。上位管理装置10が作成したルート計画情報に基づいて、それぞれの移動ロボット20に行き先を指示する。そして、移動ロボット20は、上位管理装置10から指定された行き先に向かって自律移動する。移動ロボット20は、自機に設けられたセンサ、フロアマップ、位置情報等を用いて行き先(目的地)に向かって自律移動する。
【0058】
例えば、移動ロボット20は、その周辺の機器、物体、壁、人(以下、まとめて周辺物体とする)に接触しないように、走行する。具体的には、移動ロボット20は、周辺物体までの距離を検知し、周辺物体から一定の距離(距離閾値とする)以上離れた状態で走行する。周辺物体までの距離が距離閾値以下になると、移動ロボット20が減速または停止する。このようにすることで、移動ロボット20が、周辺物体に接触せずに走行可能となる。接触を回避することができるため、安全かつ効率的な搬送が可能となる。
【0059】
上位管理装置10は、演算処理部11、記憶部12、バッファメモリ13、通信部14を備える。演算処理部11は、人や移動ロボット20の監視を行うための演算や、移動ロボット20を制御及び管理するための演算を行う。演算処理部11は、例えば、コンピュータの中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)等のプログラムを実行可能な装置として実装可能である。そして、各種機能はプログラムにより実現することもできる。図2では、演算処理部11において特徴的なロボット制御部111、ルート計画部115、搬送物情報取得部116、モード制御部117のみを示したが、その他の処理ブロックも備えられる。
【0060】
ロボット制御部111は、移動ロボット20を遠隔で制御するための演算を行い、制御信号を生成する。ロボット制御部111は、後述するルート計画情報125などに基づいて制御信号を生成する。さらに、環境カメラ300や移動ロボット20から得られた各種情報に基づいて、制御信号を生成する。制御信号は、後述するフロアマップ121、ロボット情報123及びロボット制御パラメータ122等の更新情報を含んでいてもよい。つまり、ロボット制御部111は、各種情報が更新された場合、その更新情報に応じた制御信号を生成する。
【0061】
搬送物情報取得部116は、搬送物に関する情報を取得する。搬送物情報取得部116は、移動ロボット20が搬送中の搬送物の内容(種別)に関する情報を取得する。搬送物情報取得部116は、エラーが発生した移動ロボット20が搬送中の搬送物に関する搬送物情報を取得する。
【0062】
ルート計画部115は、各移動ロボット20のルート計画を行う。搬送タスクが入力されると、ルート計画部115は、搬送依頼情報に基づいて、当該搬送物を搬送先(目的地)までの搬送するためのルート計画を行う。具体的には、ルート計画部115は、記憶部12に既に記憶されているルート計画情報125やロボット情報123等を参照して、新たな搬送タスクを実行する移動ロボット20を決定する。出発地は、移動ロボット20の現在位置や、直前の搬送タスクの搬送先、搬送物の受取先などである。目的地は、搬送物の搬送先、待機場所、充電場所などである。
【0063】
ここでは、ルート計画部115は、移動ロボット20の出発地から目的地までの通過ポイントを設定している。ルート計画部115は、移動ロボット20毎に、その通過ポイントの通過順を設定する。通過ポイントは、例えば、分岐点、交差点、エレベータ前のロビーやこれらの周辺に設定されている。また、幅の狭い通路では、移動ロボット20のすれ違いが困難となることもある。このような場合、幅の狭い通路の手前を通過ポイントして設定してもよい。通過ポイントの候補は、予めフロアマップ121に登録されていてもよい。
【0064】
ルート計画部115は、システム全体として効率良くタスクを実行できるように、複数の移動ロボット20の中から、各搬送タスクを行う移動ロボット20を決定する。ルート計画部115は、待機中の移動ロボット20や搬送元に近い移動ロボット20に搬送タスクを優先的に割り当てる。
【0065】
ルート計画部115は、搬送タスクが割り当てられた移動ロボット20について、出発地及び目的地を含む通過ポイントを設定する。例えば、搬送元から搬送先までの2以上の移動経路がある場合、より短時間で移動できるように通過ポイントを設定する。そのため、上位管理装置10は、カメラの画像等に基づいて、通路の混雑状況を示す情報を更新する。具体的には、他の移動ロボット20が通過している場所、人が多い場所は混雑度が高い。したがって、ルート計画部115は、混雑度が高い場所を避けるように、通過ポイントを設定する。
【0066】
移動ロボット20は、左回りの移動経路又は右回りの移動経路のいずれでも目的地まで移動できるような場合がある。このような場合、ルート計画部115は、混雑していないほうの移動経路を通過するように通過ポイントを設定する。ルート計画部115が、目的地までの間に、1又は複数の通過ポイントを設定することで、移動ロボット20が混雑していない移動経路で移動することができる。例えば、分岐点、交差点で通路が分かれている場合、ルート計画部115は、適宜、分岐点、交差点、曲がり角及びその周辺に通過ポイントを設定する。これにより、搬送効率を向上することができる。
【0067】
ルート計画部115は、エレベータの混雑状況や、移動距離などを考慮して、通過ポイントを設定してもよい。さらに、上位管理装置10は、移動ロボット20がある場所を通過する予定時刻における、移動ロボット20の数や人の数を推定してもよい。そして、推定された混雑状況に応じて、ルート計画部115が通過ポイントを設定してもよい。また、ルート計画部115は、混雑状況の変化に応じて、通過ポイントを動的に変えてもよい。ルート計画部115は、搬送タスクを割り当てた移動ロボット20について、通過ポイントを順番に設定する。通過ポイントは、搬送元や搬送先を含んでいてもよい。後述するように、移動ロボット20が、ルート計画部115により設定された通過ポイントを順番に通過するように自律移動する。
【0068】
モード制御部117は、上記グループ分類部を含むとともに、上記システム制御部の一部又は全部に該当する。モード制御部117は、施設の状況に応じて、第1動作モード(非スタッフモードで例示)と第2動作モード(スタッフモードで例示)との間でモードを切替えるための制御を行う。施設の状況に応じてモードを切替えることで、処理負荷を軽減することができ、消費電力を低減することができる。モード制御部117の制御については後述する。
【0069】
記憶部12は、人の監視、ロボットの監視を含むロボットの管理及び制御に必要な情報を格納する記憶部である。図2の例では、フロアマップ121、ロボット情報123、ロボット制御パラメータ122、ルート計画情報125、搬送物情報126、スタッフ情報128、モード情報129を示したが、記憶部12に格納される情報はこれ以外にあっても構わない。演算処理部11では、各種処理を行う際に記憶部12に格納されている情報を用いた演算を行う。また、記憶部12に記憶されている各種情報は最新の情報に更新可能である。
【0070】
フロアマップ121は、移動ロボット20を移動させる施設の地図情報である。このフロアマップ121は、予め作成されるものでもよいし、移動ロボット20から得た情報から生成されるものでもよく、また、予め作成された基本地図に移動ロボット20から得た情報から生成された地図修正情報を加えたものであってもよい。
【0071】
例えば、フロアマップ121には、施設の壁面、ゲート、扉、階段、エレベータ、固定棚などの位置やその情報が格納されている。フロアマップ121は、2次元のグリッドマップとして表現されていてもよい。この場合、フロアマップ121では、各グリッドに壁や扉なの情報が付されている。
【0072】
ロボット情報123は、上位管理装置10が管理する移動ロボット20のID、型番、仕様等が記述される。ロボット情報123は、移動ロボット20の現在位置を示す位置情報を含んでいてもよい。ロボット情報123は、移動ロボット20がタスクを実行中か、待機中かの情報を含んでいてもよい。また、ロボット情報123は、移動ロボット20が動作中か、故障中か等を示す情報を含んでいてもよい。また、ロボット情報123は、搬送可能な搬送物、搬送不可な搬送物の情報を含んでいてもよい。
【0073】
ロボット制御パラメータ122は、上位管理装置10が管理する移動ロボット20についての周辺物体との閾値距離等の制御パラメータが記述される。閾値距離は、人を含む周辺物体との接触を回避するためのマージン距離となる。さらに、ロボット制御パラメータ122は、移動ロボット20の移動速度の速度上限値などの動作強度に関する情報を含んでいても良い。
【0074】
ロボット制御パラメータ122は、状況に応じて更新されてもよい。ロボット制御パラメータ122は、収納庫291の収容スペースの空き状況や使用状況を示す情報を含んでいてもよい。ロボット制御パラメータ122は、搬送可能な搬送物や、搬送不可能な搬送物の情報を含んでいても良い。ロボット制御パラメータ122は、それぞれの移動ロボット20に対して、上記の各種情報が対応付けられている。
【0075】
ルート計画情報125は、ルート計画部115で計画されたルート計画情報を含んでいる。ルート計画情報125は、例えば、搬送タスクを示す情報を含んでいる。ルート計画情報125は、タスクが割り当てられた移動ロボット20のID、出発地、搬送物の内容、搬送先、搬送元、搬送先への到着予定時間、搬送元への到着予定時間、到着期限などの情報を含んでいても良い。ルート計画情報125では、搬送タスク毎に、上述した各種情報が対応付けられていてもよい。ルート計画情報125は、ユーザU1から入力された搬送依頼情報の少なくとも一部を含んでいても良い。
【0076】
さらに、ルート計画情報125は、それぞれの移動ロボット20や搬送タスクについて、通過ポイントに関する情報を含んでいてもよい。例えば、ルート計画情報125は、それぞれの移動ロボット20についての通過ポイントの通過順を示す情報を含んでいる。ルート計画情報125は、フロアマップ121における各通過ポイントの座標や、通過ポイントを通過したか否かの情報を含んでいてもよい。
【0077】
搬送物情報126は、搬送依頼が行われた搬送物に関する情報である。例えば、搬送物の内容(種別)、搬送元、搬送先等の情報を含んでいる。搬送物情報126は、搬送を担当する移動ロボット20のIDを含んでいても良い。さらに、搬送物情報は、搬送中、搬送前(搭載前)、搬送済みなどのステータスを示す情報を含んでいてもよい。搬送物情報126は搬送物毎にこれらの情報が対応付けられている。搬送物情報126については後述する。
【0078】
スタッフ情報128は施設のユーザがスタッフであるか否かを分類するための情報である。つまり、スタッフ情報128は、画像データに含まれる人物を非スタッフまたはスタッフに分類するための情報を含む。例えば、スタッフ情報128は、予め登録されたスタッフに関する情報を含んでいる。モード情報129は、分類結果から各モードを制御するための情報を含む。なお、スタッフ情報128およびモード情報129の詳細は後述する。
【0079】
なお、ルート計画部115は、記憶部12に記憶されている各種情報を参照して、ルート計画を策定する。例えば、フロアマップ121、ロボット情報123、ロボット制御パラメータ122、ルート計画情報125に基づいて、タスクを実行する移動ロボット20を決定する。そして、ルート計画部115は、フロアマップ121等を参照して、搬送先までの通過ポイントとその通過順を設定する。フロアマップ121には、予め通過ポイントの候補が登録されている。そして、ルート計画部115が混雑状況等に応じて、通過ポイントを設定する。また、タスクを連続処理する場合などは、ルート計画部115が搬送元及び搬送先を通過ポイントして設定してもよい。
【0080】
なお、1つの搬送タスクについて、2つ以上の移動ロボット20が割り当てられていてもよい。例えば、搬送物が移動ロボット20の搬送可能容量よりも大きい場合、1つの搬送物を2つに分けて、2つの移動ロボット20に搭載する。あるいは、搬送物が移動ロボット20の搬送可能重量よりも重い場合、1つの搬送物を2つに分けて、2つの移動ロボット20に搭載する。このようにすることで、1つの搬送タスクを2つ以上の移動ロボット20が分担して実行することができる。もちろん、異なるサイズの移動ロボット20を制御する場合、搬送物を搬送可能な移動ロボット20が搬送物を受け取るようにルート計画を行ってもよい。
【0081】
さらには、1つの移動ロボット20が、2つ以上の搬送タスクを並行して行ってもよい。例えば、1つの移動ロボット20が2つ以上の搬送物を同時に搭載して、異なる搬送先に順次搬送してもよい。あるいは、1つ移動ロボット20が1つの搬送物を搬送中に、他の搬送物を搭載してもよい。また、異なる場所で搭載された搬送物の搬送先は同じであってもよく、異なっていてもよい。このようにすることで、タスクを効率よく実行することができる。
【0082】
このような場合、移動ロボット20の収容スペースについて、使用状況又は空き状況を示す収容情報を更新するようにしてもよい。つまり、上位管理装置10が空き状況を示す収容情報を管理して、移動ロボット20を制御してもよい。例えば、搬送物の搭載又は受取が完了すると、収容情報が更新される。搬送タスクが入力されると、上位管理装置10は、収容情報を参照して、搬送物を搭載可能な空きがある移動ロボット20を受け取りに向かわせる。このようにすることで、1つの移動ロボット20が、同時に複数の搬送タスクを実行することや、2つ以上の移動ロボット20が搬送タスクを分担して実行することが可能になる。例えば、移動ロボット20の収容スペースにセンサを設置して空き状況を検出しても良い。また、搬送物毎にその容量や重さが予め登録されていてもよい。
【0083】
バッファメモリ13は、演算処理部11における処理において生成される中間情報を蓄積するメモリである。通信部14は、搬送システム1が用いられる施設に設けられる複数の環境カメラ300及び少なくとも1台の移動ロボット20と通信するための通信インタフェースである。通信部14は、有線通信と無線通信の両方の通信を行うことができる。例えば、通信部14は、それぞれの移動ロボット20に対して、その移動ロボット20の制御に必要な制御信号を送信する。また、通信部14は、移動ロボット20や環境カメラ300で収集された情報を受信する。また、通信部14は、環境カメラ300の稼働/非稼働を遠隔で制御する情報を、制御対象の環境カメラ300に送信する。
【0084】
移動ロボット20は、演算処理部21、記憶部22、通信部23、近接センサ(例えば、距離センサ群24)、カメラ25、駆動部26、表示部27、操作受付部28を備える。なお、図2では、移動ロボット20に備えられている代表的な処理ブロックのみを示したが、移動ロボット20には図示していない他の処理ブロックも多く含まれる。
【0085】
通信部23は、上位管理装置10の通信部14と通信を行うための通信インタフェースである。通信部23は、例えば、無線信号を用いて通信部14と通信を行う。距離センサ群24は、例えば、近接センサであり、移動ロボット20の周囲に存在する物又は人との距離を示す近接物距離情報を出力する。距離センサ群24はライダなどの測距センサを備えている。光信号の出射方向を操作していくことで、周辺物体までの距離を測定することができる。また、測距センサ等で検出された点群データから、周辺物体を認識してもよい。カメラ25は、例えば、移動ロボット20の周囲の状況を把握するための画像を撮影する。また、カメラ25は、例えば、施設の天井等に設けられる位置マーカーを撮影することもできる。この位置マーカーを用いて移動ロボット20に自機の位置を把握させてもよい。
【0086】
また、カメラ25は、環境カメラ300の一つとして機能させることもでき、この場合には、カメラ25は移動中の移動ロボット20の移動に必要なため、スタッフモードで少なくする対象は、移動中の移動ロボット20のカメラ25を含まない(当該カメラ25を非稼働にはしない)が、情報源としてのカメラ25からの画像を含むこと(当該カメラ25からの画像を使用しないこと)はできる。
【0087】
駆動部26は、移動ロボット20に備え付けられている駆動輪を駆動する。なお、駆動部26は、駆動輪やその駆動モータの回転回数を検出するエンコーダなどを備えていてもよい。エンコーダの出力に応じて、自機位置(現在位置)が推定されていても良い。移動ロボット20は、自身の現在位置を検出して、上位管理装置10に送信する。移動ロボット20は、オドメトリーなどによりフロアマップ121における自己位置を推定している。
【0088】
表示部27及び操作受付部28はタッチパネルディスプレイにより実現される。表示部27は、操作受付部28となるユーザーインタフェース画面を表示する。また、表示部27には、移動ロボット20の行き先や移動ロボット20の状態を示す情報を表示させても構わない。操作受付部28は、ユーザからの操作を受け付ける。操作受付部28は、表示部27に表示されるユーザーインタフェース画面に加えて、移動ロボット20に設けられる各種スイッチを含む。
【0089】
演算処理部21は、移動ロボット20の制御に用いる演算を行う。演算処理部21は、例えば、コンピュータの中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)等のプログラムを実行可能な装置として実装可能である。そして、各種機能はプログラムにより実現することもできる。演算処理部21は、移動命令抽出部211、駆動制御部212を備える。なお、図2では、演算処理部21が備える代表的な処理ブロックのみを示したが、図示しない処理ブロックも含まれる。演算処理部21は、通過ポイント間の経路を探索しても良い。
【0090】
移動命令抽出部211は、上位管理装置10から与えられた制御信号から移動命令を抽出する。例えば、移動命令は、次の通過ポイントに関する情報を含んでいる。例えば、制御信号は、通過ポイントの座標や、通過ポイントの通過順に関する情報を含んでいてもよい。そして、移動命令抽出部211が、これらの情報を移動命令として抽出する。
【0091】
さらに、移動命令は、次の通過ポイントへの移動が可能になったことを示す情報を含んでいてもよい。通路幅が狭いと、移動ロボット20がすれ違うことできない場合がある。また、一時的に通路を通行できない場合がある。このような場合、制御信号は、停止すべき場所の手前の通過ポイントで、移動ロボット20を停止させる命令を含んでいる。そして、他の移動ロボット20が通過した後や通行可能となった後に、上位管理装置10が移動ロボット20に移動可能なことになったことを知らせる制御信号を出力する。これにより、一時的に停止していた移動ロボット20が移動を再開する。
【0092】
駆動制御部212は、移動命令抽出部211から与えられた移動命令に基づいて、移動ロボット20を移動させるように、駆動部26を制御する。例えば、駆動部26は、駆動制御部212からの制御指令値に応じて回転する駆動輪を備えている。移動命令抽出部211は、上位管理装置10から受信した通過ポイントに向かって移動ロボット20が移動するように、移動命令を抽出する。そして、駆動部26が駆動輪を回転駆動する。移動ロボット20は、次の通過ポイントに向かって自律移動する。このようにすることで、通過ポイントを順番に通過して、搬送先に到着する。また、移動ロボット20は、自機位置を推定して、通過ポイントを通過したことを示す信号を上位管理装置10に送信しても良い。これにより、上位管理装置10が、各移動ロボット20の現在位置や搬送状況を管理することができる。
【0093】
記憶部22には、フロアマップ221とロボット制御パラメータ222と搬送物情報226が格納される。図2に示したのは、記憶部22に格納される情報の一部で有り、図2に示したフロアマップ221とロボット制御パラメータ222と搬送物情報226以外の情報も含まれる。フロアマップ221は、移動ロボット20を移動させる施設の地図情報である。このフロアマップ221は、例えば、上位管理装置10のフロアマップ121をダウンロードしたものである。なお、フロアマップ221は、予め作成されたものであってもよい。また、フロアマップ221は、施設全体の地図情報ではなく、移動予定の領域を部分的に含む地図情報であってもよい。
【0094】
ロボット制御パラメータ222は、移動ロボット20を動作させるためのパラメータである。ロボット制御パラメータ222には、例えば、周辺物体との距離閾値が含まれる。さらに、ロボット制御パラメータ222には、移動ロボット20の速度上限値が含まれている。
【0095】
搬送物情報226は、搬送物情報126と同様に搬送物に関する情報を含んでいる。搬送物の内容(種別)、搬送元、搬送先等の情報を含んでいる。搬送物情報は、搬送中、搬送前(搭載前)、搬送済みなどのステータスを示す情報を含んでいてもよい。搬送物情報226は搬送物毎にこれらの情報が対応付けられている。搬送物情報226は、移動ロボット20が搬送する搬送物に関する情報を含んでいればよい。したがって、搬送物情報226は搬送物情報126の一部となる。つまり、搬送物情報226は、他の移動ロボット20が搬送する情報を含んでいなくても良い。
【0096】
駆動制御部212は、ロボット制御パラメータ222を参照して、距離センサ群24から得られた距離情報が示す距離が距離閾値を下回ったことに応じて動作を停止或いは減速をする。駆動制御部212は、速度上限値以下の速度で走行するように、駆動部26を制御する。駆動制御部212は、速度上限値以上の速度で移動ロボット20が移動しないように、駆動輪の回転速度を制限する。
【0097】
(移動ロボット20の構成)
ここで、移動ロボット20の外観について説明する。図3は、移動ロボット20の概略図を示す。図3に示す移動ロボット20は、移動ロボット20の態様の1つであり、他の形態であってもよい。なお、図3では、x方向が移動ロボット20の前進方向及び後進方向、y方向が移動ロボット20の左右方向であり、z方向が移動ロボット20の高さ方向である。
【0098】
移動ロボット20は、本体部290と、台車部260とを備えている。台車部260の上に、本体部290が搭載されている。本体部290と、台車部260とそれぞれ直方体状の筐体を備えており、この筐体内部に各構成要素が搭載されている。例えば、台車部260の内部には駆動部26が収容されている。
【0099】
本体部290には、収容スペースとなる収納庫291と、収納庫291を密封する扉292とが設けられている。収納庫291には、複数段の棚が設けられており、段毎に空き状況が管理される。例えば、各段に重量センサ等の各種センサを配置することで、空き状況を更新することができる。移動ロボット20は、収納庫291に収納された搬送物を上位管理装置10から指示された目的地まで自律移動により搬送する。本体部290は図示しない制御ボックスなどを筐体内に搭載していても良い。また、扉292は電子キーなどで施錠可能となっていても良い。搬送先に到着するとユーザU2が電子キーで扉292を開錠する。あるいは、搬送先に到着した場合、自動で扉292が開錠してもよい。
【0100】
図3に示すように、移動ロボット20の外装には、距離センサ群24として前後距離センサ241及び左右距離センサ242が設けられる。移動ロボット20は、前後距離センサ241により移動ロボット20の前後方向の周辺物体の距離を計測する。また、移動ロボット20は、左右距離センサ242により移動ロボット20の左右方向の周辺物体の距離を計測する。
【0101】
例えば、前後距離センサ241は、本体部290の筐体の前面及び後面にそれぞれ配置される。左右距離センサ242は、本体部290の筐体の左側面及び右側面にそれぞれ配置される。前後距離センサ241及び左右距離センサ242は例えば、超音波距離センサやレーザレンジファインダである。周辺物体までの距離を検出する。前後距離センサ241又は左右距離センサ242で検出された周辺物体までの距離が、距離閾値以下となった場合、移動ロボット20が減速または停止する。
【0102】
駆動部26には、駆動輪261及びキャスタ262が設けられる。駆動輪261は移動ロボット20を前後左右に移動させるための車輪である。キャスタ262は、駆動力は与えられず、駆動輪261に追従して転がる従動輪である。駆動部26は、図示しない駆動モータを備えており、駆動輪261を駆動する。
【0103】
例えば、駆動部26は、筐体内に、それぞれが走行面に接地する2つの駆動輪261と2つのキャスタ262を支持している。2つの駆動輪261は、互いに回転軸芯が一致するように配設されている。それぞれの駆動輪261は、不図示のモータによって独立して回転駆動される。駆動輪261は、図2の駆動制御部212からの制御指令値に応じて回転する。キャスタ262は、従動輪であり、駆動部26から鉛直方向に延びる旋回軸が車輪の回転軸から離れて車輪を軸支するように設けられており、駆動部26の移動方向に倣うように追従する。
【0104】
移動ロボット20は、例えば、2つの駆動輪261が同じ方向に同じ回転速度で回転されれば直進し、逆方向に同じ回転速度で回転されれば2つの駆動輪261のほぼ中央を通る鉛直軸周りに旋回する。また、2つの駆動輪261を同じ方向と異なる回転速度で回転させることで、左右に曲がりながら進むことができる。例えば、左の駆動輪261の回転速度を右の駆動輪261の回転速度より高くすることで、右折することができる。反対に、右の駆動輪261の回転速度を左の駆動輪261の回転速度より高くすることで、左折することができる。すなわち、移動ロボット20は、2つの駆動輪261の回転方向、回転速度がそれぞれ制御されることにより、任意の方向へ並進、旋回、右左折等することができる。
【0105】
また、移動ロボット20では、本体部290の上面に表示部27、操作インタフェース281が設けられる。表示部27には、操作インタフェース281が表示される。ユーザが表示部27に表示された操作インタフェース281をタッチ操作することで、操作受付部28がユーザからの指示入力を受け付けることができる。また、非常停止ボタン282が表示部27の上面に設けられる。非常停止ボタン282及び操作インタフェース281が操作受付部28として機能する。
【0106】
表示部27は、例えば液晶パネルであり、キャラクターの顔をイラストで表示したり、移動ロボット20に関する情報をテキストやアイコンで呈示したりする。表示部27にキャラクターの顔を表示すれば、表示部27が擬似的な顔部であるかの印象を周囲の観察者に与えることができる。移動ロボット20に搭載されている表示部27等をユーザ端末400として用いることも可能である。
【0107】
本体部290の前面には、カメラ25が設置されている。ここでは、2つのカメラ25がステレオカメラとして機能する。つまり、同じ画角を有する2つのカメラ25が互いに水平方向に離間して配置されている。それぞれのカメラ25で撮像された画像を画像データとして出力する。2つのカメラ25の画像データに基づいて、被写体までの距離や被写体の大きさを算出することが可能である。演算処理部21は、カメラ25の画像を解析することで、移動方向前方に人や障害物などを検知することができる。進行方向前方に人や障害物などがいる場合、移動ロボット20は、それらを回避しながら、経路に沿って移動する。また、カメラ25の画像データは、上位管理装置10に送信される。
【0108】
移動ロボット20は、カメラ25が出力する画像データや、前後距離センサ241及び左右距離センサ242が出力する検出信号を解析することにより、周辺物体を認識したり、自機の位置を同定したりする。カメラ25は、移動ロボット20の進行方向前方を撮像する。移動ロボット20は、図示するように、カメラ25が設置されている側を自機の前方とする。すなわち、通常の移動時においては矢印で示すように、自機の前方が進行方向となる。
【0109】
(モード制御処理)
次に、図4を用いて、モード制御処理について説明する。ここでは、モード制御のための処理を上位管理装置10が行うものとして説明する。したがって、図4は、主として、モード制御部117の制御系を示すブロック図となっている。もちろん、移動ロボット20にモード制御部を備え、モード制御部117の処理の少なくとも一部を行ってもよい。あるいは、環境カメラ300がモード制御のための処理の少なくとも一部を実行してもよい。
【0110】
モード制御部117は、画像データ取得部1170と、特徴抽出部1171と、分類器1172と、選択部1173と、切替部1174とを備えている。環境カメラ300は、図示しないが撮像素子と演算処理部を備えている。撮像素子は施設内をモニタするために画像を撮像する。環境カメラ300の演算処理部は、撮像素子の撮像画像に対して画像処理などを行うGPUを備えており、外部からの稼働/非稼働の制御に対しても応答し、電源供給の停止(又は低電源モード)/開始を行うことが可能に構成されている。
【0111】
画像データ取得部1170は、環境カメラ300で撮像された画像の画像データを取得する。ここで、画像データは、環境カメラ300で撮像された撮像された撮像データ自体であってもよく、撮像データに処理が施されたデータであってもよい。例えば、画像データは、撮像データから抽出された特徴量のデータであってもよい。また、画像データには撮像時間や撮像場所などの情報が付加されていてもよい。また、画像データ取得部1170は、環境カメラ300からの画像データに限らず、移動ロボット20のカメラ25からの画像データを取得しても良い。つまり、画像データ取得部1170は、移動ロボット20に設けられたカメラ25が撮像した画像に基づく画像データを取得してもよい。画像データ取得部1170は、複数の環境カメラ300から画像データを取得しても良い。
【0112】
特徴抽出部1171は、上記のグループ分類部の一部に該当し、撮像画像内の人の特徴を抽出する。より具体的には、特徴抽出部1171は、画像データに対して画像処理を行うことで、画像データに含まれる人を検出する。そして、画像データに含まれる人の特徴を抽出する。また、環境カメラ300に設けられた演算処理部311が特徴量抽出のための処理の少なくとも一部を行ってもよい。なお、画像データに人が含まれることを検出する手段は、例えばHOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量や畳み込み処理を含む機械学習など種々の技術が当業者に知られている。そのためここでは詳述を省略する。
【0113】
特徴抽出部1171は、検出した人の着衣の色を検出する。さらに詳細には、例えば特徴抽出部1171は、検出した人における着衣から、特定の色の面積が占める割合を算出する。あるいは、特徴抽出部1171は、検出した人物における着衣から、特定の部分における着衣の色を検出する。このようにして、特徴検出部511は、スタッフの着衣に特徴的な部分を抽出する。
【0114】
また、スタッフの着衣の特徴的な形状や特徴的な装着品等の所持品を特徴として抽出してもよい。さらに特徴抽出部1171の顔画像の特徴などを抽出しても良い。つまり、特徴抽出部1171は、顔認識用の特徴を抽出しても良い。特徴抽出部1171は、抽出した特徴情報を分類器1172に供給する。
【0115】
分類器1172は、上記のグループ分類部の一部に該当し、特徴の抽出結果に基づいて、人を予め設定された第1グループ又は第2グループに分類する。例えば、分類器1172は、特徴抽出部1171から受け取った特徴情報と、記憶部12が記憶するスタッフ情報128とから、人を分類する。分類器1172は、分類の結果を、選択部1173に供給する。分類器1172は、スタッフを第2グループに分類し、スタッフ以外の人を第1グループに分類する。分類器1172は、分類結果を選択部1173に供給する。
【0116】
選択部1173は、分類結果に基づき、非スタッフに属する人物が存在する場合には非スタッフを選択し、非スタッフに属する人物が存在しない場合にはスタッフモードを選択し、選択結果を切替部1174に供給する。
【0117】
切替部1174は、選択部1173での選択結果に基づき、スタッフモードと非スタッフモードとの間でモードの切替えを行う。例えば、切替部1174は、非スタッフモードが選択されているときに非スタッフに属する人物が存在しないことが認識されれば、スタッフモードに切り替え、逆にスタッフモードが選択されているときに非スタッフに属する人物が存在することが認識されれば、非スタッフモードに切り替えることができる。
【0118】
スタッフモードを選択した場合、非スタッフモードを選択した場合に比べて、施設内に備えられた複数の環境カメラ300のうち稼働させるカメラの台数、及び、分類器1172での分類において上記複数の環境カメラのうち情報源として使用する環境カメラの台数、の一方を少なくするように、グループ分類処理を実行する。このようなグループ分類処理のための切替部1174の制御対象は、前者の場合、環境カメラ300(環境カメラ300の稼働/非稼働の切り替え制御)とすることができ、後者の場合、画像データ取得部1170とすることができるが、特徴抽出部1171または分類器1172とすることもできる。
【0119】
切替部1174は、環境カメラ300の稼働/非稼働を制御する場合には、制御対象の環境カメラ30の電源制御を行う。なお、或る移動ロボット20のカメラ25を環境カメラ300として機能させている場合には移動ロボット20に対してカメラ25の停止を指示することもできる。切替部1174は、情報源としての使用/不使用を制御する場合には、情報源として必要な環境カメラ300の画像データを取得するように画像データ取得部1170を制御する、あるいは当該画像データのみから特徴を抽出するように特徴抽出部1171を制御する、あるいは当該特徴のみから分類を行うように分類器1172を制御すればよい。
【0120】
切替部1174は、非スタッフモードを選択した場合、上記複数の環境カメラ300を稼働させ、スタッフモードを選択した場合、上記複数の環境カメラ300のうちの第1カメラ以外のカメラの稼働を停止するように、上記複数のカメラ300を制御してもよい。環境カメラ300の稼働/非稼働(停止)の制御方法は問わず、既存の遠隔電源制御技術を適用すればよい。これにより、スタッフモードの場合において、監視に必要な第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることが可能になる。
【0121】
あるいは、切替部1174は、非スタッフモードを選択した場合、上記複数の環境カメラ300を稼働させて上記複数の環境カメラ300を情報源として使用し、スタッフモードを選択した場合、上記複数の環境カメラ300のうちの第1カメラを稼働させて第1カメラを情報源として使用するように、上記複数の環境カメラ300等を制御することもできる。
【0122】
上記第1カメラは、施設におけるセキュリティゲートを監視する位置に設けられているカメラを含んでもよい。セキュリティゲートは出入口そのもの、あるいは出入口に設置された設備などとすることができるが、施設内の要所(監視ポイント)そのもの、あるいは当該要所に設置された設備とすることもできる。これにより、スタッフモードの場合において、セキュリティ上、監視が必要な部分に設置された第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることが可能になる。また、上記第1カメラは、上記複数の環境カメラ300のうちの予め設定された親カメラであり、それ以外のカメラは子カメラであってもよい。
【0123】
また、ここで例示している搬送システム1のように、上位管理装置10のシステム制御部(図2の例では演算処理部11)は、施設内の予め設定された領域を自律移動する移動ロボット20を制御し、環境カメラ300は、走行する移動ロボット20の周辺を撮像するように移動ロボット20の走行面から離間した位置に設けられることができる。これにより、人の監視のための環境カメラ300で移動ロボット20の監視も行うことができる。
【0124】
さらに、上位管理装置10のシステム制御部(図2の例では演算処理部11)は、移動ロボット20の走行位置に合わせて、上記第1カメラとして機能させるカメラを変更するように(追加するように又は切り替えするように)、上記複数の環境カメラ300を制御してもよい。これにより、移動ロボットの監視も行うことができ、且つ、スタッフモードの場合において、移動ロボット20の周囲に設置された第1カメラを少なくとも稼働させた状態で、処理負荷を低減させることができる。
【0125】
次に、スタッフ情報128の一例を図5に示す。図5は、スタッフ情報128の一例を示す表である。スタッフ情報128は、スタッフおよび非スタッフをその種別ごとに対応するグループに分類するための情報である。左の列は、スタッフの「カテゴリ」が示されている。スタッフのカテゴリの項目は上から「非スタッフ」、「薬剤師」および「看護師」が示されている。もちろん、例示された項目以外の項目が含まれていてもよい。スタッフのカテゴリの右側には、順に「着衣の色」、「グループ分類」の列が示されている。
【0126】
以下にスタッフカテゴリの項目ごとに対応する着衣の色(色調)について説明する。「非スタッフ」に対応する着衣の色は「特定できず」である。すなわち、特徴抽出部1171が画像データから人物を検出した場合に、検出した人物の着衣の色が予め設定されたものに含まれない場合には、特徴抽出部1171は検出した人物を「非スタッフ」と判定する。また、スタッフ情報128によれば、「非スタッフ」に対応するグループ分類は第1グループである。
【0127】
カテゴリには、着衣の色が対応付けられている。例えば、カテゴリ毎にスタッフの制服の色が決められているとする。この場合、制服の色がカテゴリ毎に異なる。よって、分類器1172は、着衣の色からカテゴリを特定することができる。もちろん、1つのカテゴリのスタッフが異なる色の制服を着用としていてもよい。例えば、看護師が白色(白衣)又はピンク色の制服が着用していてもよい。あるいは、複数のカテゴリのスタッフが共通の色の制服を着用していてもよい。例えば、看護師及び薬剤師が白色の制服を着用していてもよい。さらには、着衣の色に限らず、着衣の形状や帽子などを特徴としてもよい。そして、分類器1172は、画像中の人の特徴と一致するカテゴリを特定する。もちろん、画像中に二人以上の人が含まれている場合、分類器1172はそれぞれの人のカテゴリを特定する。
【0128】
分類器1172が着衣の色でスタッフか否かを判別することで、簡便かつ適切にスタッフか否かを判別することができる。例えば、新たなスタッフが追加された場合でも、そのスタッフの情報を用いずにスタッフか否かを判別することができる。あるいは、分類器1172は名札、IDカード、入室カード等の所定の所持品の有無に応じて、非スタッフかスタッフかを分類してもよい。例えば、分類器1172は、着衣の所定箇所に名札が取り付けられている人をスタッフと分類する。あるいは、分類器1172は、カードホルダなどによってIDカードや入室カードが首からぶら下げられている人をスタッフと分類する。
【0129】
さらに、分類器1172は、顔画像の特徴に基づいて、分類を行ってもよい。例えば、スタッフ情報128には、予めスタッフの顔画像またはその特徴量が格納されていてもよい。そして、環境カメラ300が撮像した画像に含まれる人の顔の特徴が抽出できる場合、顔画像の特徴量を比較することで、スタッフか否かを判別することができる。また、スタッフのカテゴリを予め登録されていれば、顔画像の特徴量から、スタッフを特定することができる。もちろん、分類器1172は複数の特徴を組み合わせて分類を行うことができる。
【0130】
このように分類器1172は、画像中の人がスタッフであるか否かを判定する。分類器1172は、スタッフである人を第2グループに分類する。分類器1172は、非スタッフである人を第1グループに分類する。つまり、分類器1172は、スタッフ以外の人を第1グループに分類する。換言すると、分類器1172は、スタッフとして特定できない人を第1グループに分類する。なお、スタッフは予め登録されていることが好ましいが、新たなスタッフを着衣の色で分類してもよい。
【0131】
分類器1172は機械学習で生成された機械学習モデルとしてもよい。この場合、スタッフのカテゴリ毎に撮像された画像を教師データとして機械学習できる。つまり、スタッフのカテゴリが正解ラベルとして付されている画像データを教師データとして教師あり学習を行うことで、分類精度の高い機械学習モデルを構築することができる。つまり、スタッフが所定の制服を着用した状態の撮像画像を学習用データとしても用いることができる。
【0132】
機械学習モデルは特徴抽出部1171における特徴抽出及び分類器1172における分類処理を行うものであってもよい。この場合、人を含む画像を機械学習モデルに入力することで、機械学習モデルが分類結果を出力する。また、分類する特徴に応じた機械学習モデルを用いてもよい。例えば、着衣の色から分類する機械学習モデルと、顔画像の特徴量から分類する機械学習モデルをそれぞれ独立して用いてもよい。そして、いずれか1つの機械学習モデルでスタッフと認識された場合、分類器1172は、その人が第2グループに属すると判定する。スタッフとして特定できない場合、分類器1172は、その人が第1グループに属すると判定する。
【0133】
(モード情報)
図6は、モード情報129の例を示す表である。図6では、非スタッフモードとスタッフモードによる処理の違いを示している。図6では、モード制御の対象となる項目として、環境カメラの項目が示されている。切替部1174は、選択部1173による選択結果が示すモードに応じて、図6に示す項目を切り替えることができる。
【0134】
環境カメラの項目の示されるように、切替部1174は、非スタッフモードである場合に全ての環境カメラ300を使用する(または情報源として使用する)ことができ、スタッフモードである場合に第1カメラのみを使用する(または情報源として使用する)ことができる。切替部1174が、環境カメラ300の電源またはスリープのオン/オフを切り替えることができる。スタッフモードでは、環境カメラ300が電源オフまたはスリープ状態となる。非スタッフモードでは、環境カメラ300がスリープせずに動作する。つまり、モードに応じて、切替部1174が、環境カメラ300の電源またはスリープのオンオフを切り替えるための制御信号を出力する。スタッフモードでは、環境カメラ300が電源オフまたはスリープするため、処理負荷を軽減し、消費電力を低減することができる。
【0135】
また、モード情報129にカメラピクセルの項目を追加しておき、切替部1174が、環境カメラ300のピクセル数を切り替えることもできる。スタッフモードでは、環境カメラ300が低ピクセル数の撮像画像を出力する、あるいは情報源として使用する撮像画像のピクセル数が小さくなるように画像データ取得部1170、特徴抽出部1171、分類器1172のいずれかが間引き処理を行う。非スタッフモードでは、環境カメラ300が高ピクセル数の撮像画像を出力する、あるいは情報源として使用する撮像画像をそのまま用いて画像データ取得部1170、特徴抽出部1171、分類器1172が処理を行う。
【0136】
また、カメラピクセルの項目に加えて、あるいはその代わりに、フレームレートの項目を設け、切替部1174が、環境カメラ300のフレームレートを、モードに応じて切り替えることもできる。スタッフモードでは、環境カメラ300が低フレームレートで撮像する。非スタッフモードでは、環境カメラ300が高フレームレートで撮像する。つまり、モードに応じて、切替部1174が、環境カメラ300の撮像画像のフレームレートを切り替えるための制御信号を出力する。高いフレームレートで撮像画像を撮像されるため、フレームレートが低い場合よりも、プロセッサなどの処理負荷が高くなる。また、カメラピクセルやフレームレート以外の項目も適宜追加して、処理負荷の軽減による消費電力の低減を図ることもできる。
【0137】
(制御方法の例)
図7は、本実施形態に係る制御方法の一例を示すフローチャートである。まず、画像データ取得部1170が環境カメラ300から画像データを取得する(S101)。つまり、環境カメラ300が監視領域を撮像すると、その撮像画像を上位管理装置10に送信する。画像データは動画でもよく、静止画でもよい。さらに、画像データは撮像画像に各種処理を施したデータであってもよい。
【0138】
次に、特徴抽出部1171が撮像画像内の人の特徴を抽出する(S102)。ここでは、特徴抽出部1171が、撮像画像に含まれる人を検出して、人毎に特徴を抽出する。例えば、特徴抽出部1171は、人の着衣の色を特徴として抽出する。もちろん、特徴抽出部1171は、着衣の色に限らず、顔認識ための特徴量や着衣の形状を抽出してもよい。特徴抽出部1171は、ナース帽の有無、名札の有無、IDカードの有無等を特徴として抽出してもよい。
【0139】
分類器1172が、人の特徴に基づいて、撮像画像に含まれる人を第1グループ又は第2グループに分類する(S103)。分類器1172は、スタッフ情報を参照して、それぞれの人の特徴から、その人が第2グループ(スタッフ)に属するか否かを判定する。具体的には、分類器1172は、着衣の色が予め設定された制服の色と一致する場合、人が第2グループに属すると判定する。これにより、撮像画像に含まれる全ての人が、第1グループ又は第2グループに分類される。もちろん、分類器1172は着衣の色の特徴に限らず、他の特徴を用いて分類を行うことができる。
【0140】
そして、分類器1172は、監視領域内に第1グループの人がいるか否かを判定する(S104)。第1グループの人(非スタッフ)がいる場合(S104のYES)、選択部1173が高負荷の非スタッフモードを選択し、切替部1174がその選択結果に従い全ての環境カメラ300(あるいはスタッフモードより多い数の環境カメラ300)を使用するように制御する(S105)。
【0141】
第1グループの人がいない場合(S104のNO)、選択部1173が低負荷のスタッフモードを選択し、切替部1174がその選択結果に従い第1カメラのみを使用するように制御する(S106)。
【0142】
図8及び図9は、モード切替の具体例を説明するための図である。図8及び図9は、移動ロボット20が移動するフロアを上から見た模式図である。施設には、部屋901と部屋903と通路902とが設けられている。通路902は部屋901と部屋903とを繋いでいる。図8では、6台の環境カメラ300を環境カメラ300A~300Gとして識別する。環境カメラ300A~300Gはそれぞれ異なる位置及び異なる方向に設置されている。環境カメラ300A~300Gが異なる領域を撮像しており、このうち環境カメラ300Gはセキュリティゲートとして機能する出入口904での人の出入りが確認できる位置に配置されている。環境カメラ300A~300Fの位置、撮像方向、及び撮像範囲等は、フロアマップ121に予め登録されていてもよい。
【0143】
環境カメラ300A~300Fに割り当てられた領域をそれぞれ監視領域900A~900Fとする。例えば、環境カメラ300Aは、監視領域900Aを撮像し、環境カメラ300Bは監視領域900Bを撮像する。同様に、環境カメラ300C、300D、300E、300Fは、監視領域900C、900D、900E、900Fをそれぞれ撮像する。環境カメラ300Gは出入口904の範囲を撮像する。このように対象となる施設に複数の環境カメラ300A~300Gが設置されている。そして、施設が複数の監視領域に分けられている。監視領域の情報はフロアマップ121に予め登録されていても良い。
【0144】
図8のように、施設内にスタッフU2Aしかいない場合、選択部1173が低負荷のスタッフモードを選択し、切替部1174がその選択結果に従い第1カメラのみを使用するように制御する。このとき、第1カメラは例えば出入口904を監視する監視カメラ300Gのみとすることができる。
【0145】
一方で、図9のように、施設内に非スタッフU1Bがいる場合(スタッフの存在は問わない)、選択部1173が高負荷の非スタッフモードを選択し、切替部1174がその選択結果に従い全ての環境カメラ300A~300G(あるいはスタッフモードよりい数の環境カメラ300)を使用するように制御する。
【0146】
ここでは、説明の簡略化のため、それぞれの環境カメラ300A~300Gが1つの監視領域をモニタしているものとして説明したが、1つの環境カメラ300が複数の監視領域をモニタしても良い。あるいは、複数の環境カメラ300が1つの監視領域をモニタしても良い。つまり、2台以上の環境カメラの撮像範囲が重複していてもよい。その場合、スタッフモード時には重複する環境カメラのうち一部の使用または情報源としての使用を止め、非スタッフモード時には重複する環境カメラを全て使用するまたは情報源として使用するように制御されることもできる。
【0147】
さらに、上位管理装置10が撮像画像に基づいて、人の進入及び退出を検知するものとして説明したが、その他の情報を用いても良い。例えば、自動ドアやセキュリティドアが設けられている場合、ドアの動作に応じて、入退室を検知しても良い。
【0148】
(制御方法の他の例)
図10は、本実施形態に係る制御方法の他の例を示すフローチャートである。ここで、図7と同様の処理については説明を省略して概略のみ説明する。まず、画像データ取得部1170が環境カメラ300から画像データを取得する(S101)。次に、特徴抽出部1171が撮像画像内の人の特徴を抽出する(S102)。次に、分類器1172が、人の特徴に基づいて、撮像画像に含まれる人を第1グループ又は第2グループに分類する(S103)。分類器1172は、スタッフ情報を参照して、それぞれの人の特徴から、その人が第2グループ(スタッフ)に属するか否かを判定する。
【0149】
そして、分類器1172は、監視領域内に第1グループの人がいるか否かを判定する(S104)。第1グループの人(非スタッフ)がいる場合(S104のYES)、選択部1173が高負荷の非スタッフモードを選択し、切替部1174がその選択結果に従い全ての環境カメラ300(あるいはスタッフモードより多い数の環境カメラ300)を使用するように制御する(S105)。
【0150】
第1グループの人がいない場合(S104のNO)、選択部1173が低負荷のスタッフモードを選択し、切替部1174がその選択結果に従い、移動ロボット20の走行位置を取得し、その走行位置に合わせて第1カメラを決定する(S107)。例えば、走行位置は監視が薄くても問題ない位置であると捉え、第1カメラは移動ロボット20の走行位置を外れた位置の環境カメラ300とすること、あるいは走行位置及び走行ルートを外れた位置の環境カメラ300とすることができる。そして、切替部1174が決定した第1カメラのみを使用するように制御する(S106)。
【0151】
図8のように、施設内にスタッフU2Aしかいない場合、選択部1173が低負荷のスタッフモードを選択し、切替部1174がその選択結果に従い、移動ロボット20A,20Bの位置を取得して第1カメラを決定する。この例では、例えば移動ロボット20A,20Bの位置及び移動方向に従い、それぞれ監視領域900A,900Bと監視領域900E,900Fとを監視から外すように、第1カメラを環境カメラ300C,300D,300Gとすることができる。そして、切替部1174は、これらの第1カメラのみを使用するように制御する。
【0152】
一方で、図9のように、施設内に非スタッフU1Bがいる場合(スタッフの存在は問わない)、選択部1173が高負荷の非スタッフモードを選択し、切替部1174がその選択結果に従い全ての環境カメラ300A~300G(あるいはスタッフモードよりい数の環境カメラ300)を使用するように制御する。スタッフモードよりい数の環境カメラ300の例を挙げる。例えば、切替部1174は、非スタッフモード時において、移動ロボット20A,20Bの位置に従い、それぞれ監視領域900Aと監視領域900Eとを監視から外すように、それ以外の監視領域のための環境カメラ300B,300C,300D,300F,300Gを使用するように制御する。
【0153】
以上、本実施形態について説明したが、本実施形態に係る制御方法は、上位管理装置10で行われていてもよく、エッジデバイスで行われていてもよい。エッジデバイスは、例えば、環境カメラ300,移動ロボット20、通信ユニット610、及び、ユーザ端末400の一つ以上を含む。また、環境カメラ300、移動ロボット20及び上位管理装置10が協働して、制御方法を実行してもよい。つまり、本実施形態に係る制御システムは、環境カメラ300、移動ロボット20内に搭載されていてもよい。あるいは、制御システムの少なくとも一部又は全部は、移動ロボット20以外の装置、例えば、上位管理装置10に搭載されていてもよい。上位管理装置10は、物理的に単一な装置に限らず、複数の装置に分散して配置されていても良い。つまり、上位管理装置10は、複数のメモリや複数のプロセッサを備えていても良い。
【0154】
(代替例)
上述した実施形態に係る搬送システム1、上位管理装置10、移動ロボット20、ユーザ端末400、環境カメラ300、通信ユニット610は、例示した形状をもつもの例示した制御を行うものに限ったものではなく、それら各装置の機能が果たせればよい。
【0155】
また、上述した実施形態では、第1グループ、第2グループの分類を行い、第1動作モードと第2動作モードとでモードを切替えた例を挙げたが、3つ以上のグループに分類を行い、分類したグループのいずれか1又は複数を含むか含まないかに応じて、3以上の動作モードの間で切替えを行うこともできる。この場合の各動作モードは、監視の必要性の低さに応じて、使用する監視カメラの数又は画像データの情報源として使用する監視カメラの数を段階的に減らしていくようなモードとすることができる。
【0156】
また、上述した実施形態では、制御システムが搬送システムに組み込まれる例を挙げて説明したが、搬送システムに組み込まれなくてもよいし、移動ロボットの利用を行わずにあるいは移動ロボットの利用を行った場合であっても、人の監視のための制御システムとして構築してもよい。
【0157】
また、上述した実施形態に係る搬送システム1に備えられる各装置は、いずれも、例えば次のようなハードウェア構成を備えることができる。図11は、装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0158】
図11に示す装置は、プロセッサ101、メモリ102、及びインタフェース103を備えることができる。インタフェース103は、装置に応じて必要な、例えば駆動部、センサ、入出力装置などとのインタフェースを含むことができる。
【0159】
プロセッサ101は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPUなどであってもよい。プロセッサ101は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ102は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。各装置における機能は、プロセッサ101がメモリ102に記憶されたプログラムを読み込んで、インタフェース103を介して必要な情報をやり取りしながら実行することにより実現される。つまり、上述した上位管理装置10、環境カメラ300、移動ロボット20等における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。
【0160】
このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0161】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施形態は病院内を搬送ロボットが自律移動するシステムについて説明したが、上述の搬送システムは、ホテル、レストラン、オフィスビル、イベント会場または複合施設において所定の物品を荷物として搬送できる。
【符号の説明】
【0162】
1 搬送システム
10 上位管理装置
11 演算処理部
12 記憶部
13 バッファメモリ
14 通信部
20 移動ロボット
21 演算処理部
22 記憶部
23 通信部
24 距離センサ群
25 カメラ
26 駆動部
27 表示部
28 操作受付部
111 ロボット制御部
115 ルート計画部
116 搬送物情報取得部
117 モード制御部
121 フロアマップ
122 ロボット制御パラメータ
123 ロボット情報
125 ルート計画情報
126 搬送物情報
128 スタッフ情報
129 モード情報
211 移動命令抽出部
212 駆動制御部
221 フロアマップ
222 ロボット制御パラメータ
226 搬送物情報
241 前後距離センサ
242 左右距離センサ
260 台車部
261 駆動輪
262 キャスタ
281 操作インタフェース
290 本体部
291 収納庫
292 扉
400 ユーザ端末
610 通信ユニット
1170 画像データ取得部
1171 特徴抽出部
1172 分類器
1173 選択部
1174 切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11