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特許7597057打点位置検査方法及び打点位置検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】打点位置検査方法及び打点位置検査システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20241203BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B23K11/24 335
B23K11/11 591Z
B23K11/24 340
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022031757
(22)【出願日】2022-03-02
(65)【公開番号】P2023127830
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康子
(72)【発明者】
【氏名】小林 久紀
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 涼司
(72)【発明者】
【氏名】花井 建吾
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-172608(JP,A)
【文献】特開平7-325611(JP,A)
【文献】特開2021-058988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/24
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを複数箇所で溶接するスポット溶接において、ティーチデータに含まれるパラメータ値に基づいて決定される打点位置と、設計上の打点位置である設計打点位置と、の誤差を検査するための打点位置検査方法であって、
前記ティーチデータを取得する工程と、
前記パラメータ値から前記打点位置の座標を算出する工程と、
算出した前記打点位置の重心の座標と、前記設計打点位置の重心の座標と、が一致するように、算出した前記打点位置の座標を移動させる工程と、
移動後の前記打点位置と、前記設計打点位置と、の誤差を検査する工程と、を備える、
打点位置検査方法。
【請求項2】
移動後の前記打点位置と、前記設計打点位置と、の誤差を検査する工程において、
前記設計打点位置に対して、移動後の前記打点位置に過不足が存在するか否かを検査する、
請求項1に記載の打点位置検査方法。
【請求項3】
移動後の前記打点位置と、前記設計打点位置と、の誤差を検査する工程において、
移動後の前記打点位置の座標と、対応する前記設計打点位置の座標と、の差を算出する、
請求項1又は2に記載の打点位置検査方法。
【請求項4】
ワークを複数箇所で溶接するスポット溶接において、ティーチデータに含まれるパラメータ値に基づいて決定される打点位置と、設計上の打点位置である設計打点位置と、の誤差を検査するための打点位置検査システムであって、
前記ティーチデータを取得する取得部と、
前記パラメータ値から前記打点位置の座標を算出する位置算出部と、
算出した前記打点位置の重心の座標と、前記設計打点位置の重心の座標と、が一致するように算出した前記打点位置の座標を移動させる位置移動部と、
移動後の前記打点位置と、前記設計打点位置と、の誤差を検査する誤差検査部と、を備える、
打点位置検査システム。
【請求項5】
前記ワークの設計図を表示し、
前記設計図上に、移動後の前記打点位置と、前記打点位置と、を合わせて表示する、表示部をさらに備える、
請求項4に記載の打点位置検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打点位置検査方法及び打点位置検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スポット溶接の打点位置を検査する溶接打点位置検査システムが記載されている。特許文献1に記載の溶接打点検査システムは、ワークに対して実際に打点された溶接スポットをカメラによって撮影し、撮影した画像データに基づいて打点位置を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-152371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の溶接打点検査システムにおいては、実際にワークに対してスポット溶接を実行し、打点位置を検査する。つまり、打点検査のために実物のワークを用いる必要があり、検査コストが増加するという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、打点位置の検査に必要なコストを抑制可能な打点位置検査方法及び打点位置検査システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る打点位置検査方法は、
ワークを複数箇所で溶接するスポット溶接において、ティーチデータに含まれるパラメータ値に基づいて決定される打点位置と、設計上の打点位置である設計打点位置と、の誤差を検査するための打点位置検査方法であって、
前記ティーチデータを取得する工程と、
前記パラメータ値から前記打点位置の座標を算出する工程と、
算出した前記打点位置の重心の座標と、前記設計打点位置の重心の座標と、が一致するように、算出した前記打点位置の座標を移動させる工程と、
移動後の前記打点位置と、前記設計打点位置と、の誤差を検査する工程と、を備える、
打点位置検査方法である。
【0007】
このような構成によると、実際にスポット溶接を実行せずに打点位置を検査できる。そのため、打点位置の検査に必要なコストを抑制できる。
【0008】
本発明に係る打点位置検査方法は、移動後の前記打点位置と、前記設計打点位置と、の誤差を検査する工程において、前記設計打点位置に対して、移動後の前記打点位置に過不足が存在するか否かを検査してもよい。
このような構成によると、打点位置及び打点数の正確性を向上できる。
【0009】
本発明に係る打点位置検査方法は、移動後の前記打点位置と、前記設計打点位置と、の誤差を検査する工程において、移動後の前記打点位置の座標と、対応する前記設計打点位置の座標と、の差を算出し、
算出した差が所定の値を超える場合に、前記パラメータ値を再設定する工程をさらに備えてもよい。
このような構成によると、検査によって規格を満たさないと判定された打点位置についても、適切に位置を修正できる。
【0010】
本発明に係る打点位置検査システムは、ワークを複数箇所で溶接するスポット溶接において、ティーチデータに含まれるパラメータ値に基づいて決定される打点位置と、設計上の打点位置である設計打点位置と、の誤差を検査するための打点位置検査システムであって、
前記ティーチデータを取得する取得部と、
前記パラメータ値から前記打点位置の座標を算出する位置算出部と、
算出した前記打点位置の重心の座標と、前記設計打点位置の重心の座標と、が一致するように算出した前記打点位置の座標を移動させる位置移動部と、
移動後の前記打点位置と、前記設計打点位置と、の誤差を検査する誤差検査部と、を備える、
打点位置検査システムである。
【0011】
本発明に係る打点位置検査システムは、前記ワークの設計図を表示し、前記設計図上に、移動後の前記打点位置と、前記打点位置と、を合わせて表示する、表示部をさらに備えてもよい。
このような構成によると、検査によって規格を満たさないと判定された打点位置をユーザが視覚的に確認可能となるため、ユーザがより正確に規格を満たさない打点位置を把握可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、打点位置の検査に必要なコストを抑制可能な打点位置検査方法及び打点位置検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る打点位置検査システムの構成を説明するためのブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る打点位置検査システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図3】第2の実施形態に係る打点位置検査システムの構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明者による事前検討)
一般的な技術に係るスポット溶接装置においては、ワークを複数箇所で溶接する場合、ティーチデータに基づいて打点位置を決定し、ワークの溶接を実行する。
【0015】
ここでいうティーチデータとは、スポット溶接装置が溶接位置を決定するために必要なパラメータ値を含むデータである。ティーチデータは、ユーザが実際に溶接装置を操作して打点位置を調整し、調整された打点位置を溶接装置がパラメータ値として記憶して作成する。
【0016】
例えば、スポット溶接装置がレーザ溶接装置である場合、ユーザは、レーザが適切な打点位置に照射されるようにレーザヘッドの位置を調整する。そして、レーザ装置が、調整されたレーザヘッドの位置をパラメータ値として記憶する。
【0017】
ティーチデータは、人が調整した位置に基づいて溶接装置が作成するため、誤差を含む場合がある。ここでいう誤差としては、例えば、設計上は打点しない位置に打点してしまう打点過多や、設計上打点する位置に打点しない打点漏れや、設計上の打点位置と、実際の打点位置との位置のズレが規定を満たさない位置ずれ等が挙げられる。
【0018】
打点位置の誤差は製品の品質不良に繋がる。そのため、ティーチデータを作成した場合、打点位置を検査し、検査によって検出された打点位置の誤差に基づいて、ティーチデータを適宜修正する必要がある。
【0019】
従来技術に係る打点位置の誤差の検査方法においては、作成したティーチデータを用いて実際にワークをスポット溶接し、人が打点位置を1点ずつ目視及び計測によって確認し、打点位置を検査していた。
【0020】
そのため、例えば、自動車のボディーの溶接のように、1つのワークに対して数千点を溶接する必要のあるスポット溶接の打点位置を検査する場合、人的コストが増加するという課題があった。また、実際にワークを溶接する必要があるため、物的コストも増加するという課題があった。
【0021】
特許文献1に記載の検査方法においては、溶接したワークの画像データを画像処理して打点位置を検査し、人的コストを抑制している。しかしながら、特許文献1に記載の検査方法においても、実際にワークの溶接を行うため、物的コストは全く抑制できていない。
【0022】
(実施形態の概要)
そこで、本実施形態に係る打点位置検査方法は、ティーチデータを取得し、ティーチデータに含まれるパラメータ値から打点位置の座標を算出する。そして、算出した打点位置の重心の座標と、設計上の打点位置の重心の座標とが一致するように、算出した打点位置の座標を移動させ、移動後の打点位置と、設計上の打点位置と、の誤差を検査する。
このような構成によって、本実施形態に係る打点位置検査方法は、実際にワークの溶接を行わずとも、打点位置を検査できる。その結果として、打点位置の検査に必要なコストを抑制できる。
【0023】
(第1の実施形態)
<打点位置検査システムの構成>
以下、図面を参照しながら、本発明に係る第1の実施形態について詳細に説明する。本発明に係る打点位置検査方法は、溶接装置と、打点位置検査装置とを備える打点位置検査システムによって実行される。
まず始めに、本実施形態に係る打点位置検査システムの構成について詳細に説明する。図1は、第1の実施形態に係る打点位置検査システムの構成を説明するためのブロック図である。
【0024】
本実施形態に係る打点位置検査システム1は、ワークを複数箇所で溶接するスポット溶接において、ティーチデータに含まれるパラメータ値に基づいて決定される打点位置と、設計上の打点位置である設計打点位置との誤差を検査する。
【0025】
本実施形態に係る打点位置検査システム1は、溶接装置100と、打点位置検査装置200とを備える。打点位置検査装置200は、取得部201と、記憶部203と、位置算出部241と、位置移動部242と、誤差検査部243とを備える。
【0026】
なお、ティーチデータに含まれるパラメータ値は、典型的には、任意の一点を基準点としたxyz座標であるが、これに限定されない。例えば、パラメータ値は、ロボットアームの長さや角度を規定した値であってもよい。パラメータ値は、溶接装置が読み込み、打点位置を再現できる値であれば、どのような値を用いてもよい。
【0027】
溶接装置100は、ティーチデータに含まれるパラメータ値に基づいて打点位置を決定し、複数点でワークのスポット溶接を実行する溶接装置である。
溶接装置100は、例えば、レーザ溶接によってワークを溶接してもよいし、抵抗溶接によって溶接してもよい。また、アーク溶接によって溶接してもよい。つまり、溶接装置100は、ワークを溶接可能な溶接方法であれば、どのような溶接方法を用いてもよい。
【0028】
溶接装置100は、ユーザによって打点位置を調整され、調整された打点位置をパラメータ値に変換してティーチデータを作成し、記憶する。溶接装置100は、作成したティーチデータを取得部201に対して出力する。
【0029】
取得部201は、溶接装置100からティーチデータを取得する。取得部201は、取得したティーチデータを位置算出部241に対して出力する。
位置算出部241は、取得部201からティーチデータを取得する。位置算出部241は、取得したティーチデータに含まれるパラメータ値から打点位置の座標を算出する。位置算出部241は、算出した打点位置の座標を、位置移動部242に対して出力する。
なお、ここでいう座標は、任意の点を基準点とした座標であってもよく、典型的には、鉛直方向にz軸をとったxyz座標であるが、例えば、極座標等の異なる座標系を用いてもよい。以後、本実施形態においては、打点位置の座標をxyz座標で表現する。
【0030】
ここで、位置算出部241が算出する打点位置の座標は、装置誤差や、その他一切の誤差が存在しない仮想的な溶接装置100が当該パラメータ値を読み込み、溶接を実行した場合の打点位置の座標である。現実の溶接装置100には装置誤差や、その他の誤差が存在するため、現実の溶接装置100が当該パラメータ値を用いて溶接を実行した場合の打点位置の座標と、位置算出部241が算出する打点位置の座標とは、必ずしも一致しない。
【0031】
記憶部203は、設計上の打点位置である設計打点位置を記憶する。より詳細には、記憶部203は、設計打点位置の座標を記憶する。記憶部203は、記憶している設計打点位置の座標を、位置移動部242に対して出力する。
【0032】
位置移動部242は、位置算出部241から算出された打点位置の座標を取得し、記憶部203から設計打点位置の座標を取得する。位置移動部242は、算出した打点位置の重心の座標と、設計打点位置の重心の座標とを算出する。
ただし、算出した打点位置の重心の座標は、位置算出部241によって算出されてもよい。また、設計打点位置の重心の座標は、予め記憶部203に記憶されていてもよい。
【0033】
ここで、算出した打点位置の重心の座標を(XCG、YCG、ZCG)と表すと、下記数式1が成り立つ。
ただし、nは、位置算出部241が算出した打点位置の座標の数であり、(XC1、YC1、ZC1)、(XC2、YC2、ZC2)、・・・、(XCn、YCn、ZCn)は、位置算出部241が算出した打点位置の座標であり、kはダミー変数である。
【0034】
【数1】
・・・数式1
【0035】
また、設計打点位置の重心の座標を(XPG、YPG、ZPG)と表すと、下記数式2が成り立つ。
ただし、mは、設計打点位置の座標の数であり、(XP1、YP1、ZP1)、(XP2、YP2、ZP2)、・・・、(XPm、YPm、ZPm)は、設計打点位置の座標であり、kはダミー変数である。なお、打点過多や打点漏れが存在しない場合は、m=nが成り立つ。
【0036】
【数2】
・・・数式2
【0037】
位置移動部242は、算出した打点位置の重心の座標と、設計打点位置の重心の座標と、が一致するように算出した打点位置の座標を移動させる。すなわち、移動後の打点位置の座標を(XRk、YRk、ZRk)と表すと、下記数式3が成り立つ。
ただし、kは1からnまでの整数である。
【0038】
【数3】
・・・数式3
【0039】
ここで、溶接装置100が実際に溶接する打点位置の重心と、設計打点位置の重心と、が品質管理上問題ない程度に一致していると仮定する。この場合、算出した打点位置の重心の座標と、設計打点位置の重心の座標との差は、算出した打点位置の重心の座標と、溶接装置100が実際に溶接する打点位置の重心の座標との差に対応する。
そのため、算出した打点位置の重心の座標と、設計打点位置の重心の座標とが一致するように算出した打点位置の座標を移動させると、現実の溶接装置100が実際に溶接する打点位置の座標を再現できる。
【0040】
誤差検査部243は、移動後の打点位置と、設計打点位置との誤差を検査する。より詳細には、誤差検査部243は、位置移動部242から、移動後の打点位置の座標と、設計打点位置とを取得し、両者を比較して検査する。
【0041】
誤差検査部243は、まず始めに、設計打点位置に対して、移動後の打点位置に過不足が存在するか否かを検査してもよい。即ち、誤差検査部243は、打点過多及び打点漏れの有無を検査してもよい。
【0042】
また、設計打点位置に対して対応する移動後の打点位置が存在する場合、誤差検査部243は、移動後の打点位置の座標と、対応する設計打点位置の座標との差を算出してもよい。そして、移動後の打点位置の座標と、対応する設計打点位置の座標との差に基づいて、移動後の打点位置と、対応する設計打点位置との距離を算出してもよい。
【0043】
ここで、移動後の打点位置の座標と、対応する設計打点位置の座標との差を(XEk、YEk、ZEk)と表し、移動後の打点位置と、対応する設計打点位置との距離をEと表すと、下記式4及び式5が成り立つ。
【0044】
【数4】
・・・式4
【数5】
・・・式5
【0045】
誤差検査部243は、打点過多又は打点漏れ、あるいはその両方を検出した場合、ユーザに対して警告を通知してもよい。また、誤差検査部243は、移動後の打点位置と、対応する設計打点位置との距離Eについて、所定の値を超える打点位置があった場合にも、ユーザに対して警告を通知してもよい。
【0046】
<打点位置検査システムの動作>
続いて、打点位置検査システムの動作、即ち、本実施形態に係る打点位置検査方法について詳細に説明する。図2は、第1の実施形態に係る打点位置検査システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0047】
まず始めに、取得部201が、ティーチデータを取得する(ステップST1)。より詳細には、取得部201が、溶接装置100がスポット溶接の打点位置を決定するために必要なパラメータ値を含むティーチデータを、溶接装置100から取得する。
【0048】
次に、位置算出部241が、パラメータ値に基づいて打点位置の座標を算出する(ステップST2)。より詳細には、位置算出部241が、取得部201が取得したティーチデータに含まれるパラメータ値に基づいて、打点位置の座標を算出する。
ステップST2によって、装置誤差が存在しない仮想的な溶接装置100が溶接を実行した場合の打点位置の座標が得られる。
【0049】
次に、位置移動部242が、算出した打点位置の重心の座標と、設計上の打点位置の重心の座標が一致するように、算出した打点位置の座標を移動させる(ステップST3)。
ステップST3によって、装置誤差が存在する現実の溶接装置100が溶接を実行した場合の打点位置の座標が近似的に得られる。
【0050】
最後に、誤差検査部243が、移動した打点位置の座標と、設計上の打点位置の座標との誤差を検査する(ステップST4)。より詳細には、誤差検査部243が、移動した打点位置の座標と、設計上の打点位置の座標とを比較して、打点過多、打点漏れ、及び位置ずれを検査する。
【0051】
以上説明したような構成によって、打点位置検査システム1は、スポット溶接における打点位置を検査できる。上述したように、打点位置検査システム1は、ティーチデータに基づいて打点位置を算出し、打点位置を検査するため、検査のためにスポット溶接を実行する必要がない。その結果として、打点位置検査システム1は、打点位置の検査に必要なコストを抑制できる。
【0052】
(第2の実施形態)
<打点位置検査システムの構成>
以下、図面を参照しながら、本発明に係る第2の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態に係る打点位置検査システムは、第1の実施形態に係る打点位置検査システムの具体例である。
【0053】
図3は、第2の実施形態に係る打点位置検査システムの構成を説明するためのブロック図である。第2の実施形態に係る打点位置検査システム1は、溶接装置100と、打点位置検査装置200と、を備える。
打点位置検査システム1は、溶接装置100が出力したティーチデータを、打点位置検査装置200が取得し、打点位置検査装置200が打点位置の検査を行う。
【0054】
溶接装置100は、ティーチデータに含まれるパラメータ値に基づいて打点位置を決定し、複数点でワークのスポット溶接を実行する装置である。
また、溶接装置100は、ティーチデータを作成できる。ティーチデータを作成する場合、溶接装置100は、ユーザによって打点位置を調整され、調整された打点位置をパラメータ値に変換してティーチデータを作成し、記憶する。溶接装置100は、作成したティーチデータを打点位置検査装置200に対して出力する。
溶接装置100は、溶接実行部101と、出力部102と、記憶部103と、制御部104とを備える。
【0055】
溶接実行部101は、制御部104の制御に基づいて、所定の打点位置において、溶接を実行する。例えば溶接装置100がレーザ溶接装置である場合、溶接実行部101は、ワークに対してレーザを照射するレーザヘッドと、レーザヘッドの位置を調整する機構とを含む。また、例えば溶接装置100が抵抗溶接装置である場合、溶接実行部101は、ワークを挟み込む電極と、電極の位置を調整する機構とを含む。
ティーチデータを作成する場合、溶接実行部101は、ユーザによって打点位置を調整され、当該打点位置の情報を制御部104に対して出力する。
【0056】
出力部102は、記憶部103からティーチデータを取得し、打点位置検査装置200の取得部201に対して出力する。
例えば、出力部102は、ティーチデータを無線信号に変換し、無線通信によって取得部201に対してティーチデータを送信してもよい。
また、例えば、出力部102は、非一時的なコンピュータ可読媒体に対してティーチデータを書き込んでもよい。そして、ティーチデータが書き込まれた非一時的なコンピュータ可読媒体は、取得部201に読み込まれてもよい。つまり、出力部102は、非一時的なコンピュータ可読媒体を介して、取得部201に対してティーチデータを出力してもよい。
【0057】
記憶部103は、制御部104に溶接装置100を制御する処理を実行させるための命令群を含む1又は複数のプログラムを記録する。また、記憶部103は、制御部104が作成したティーチデータを記録する。
溶接装置100が打点位置検査装置200に対してティ―チデータを出力する場合、記憶部103は、出力部102に対してティーチデータを出力する。
【0058】
制御部104は、記憶部103から、溶接装置100を制御するためのソフトウェア、即ちコンピュータプログラムを読み出して実行し、溶接装置100を制御する。制御部104は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。また、制御部104は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0059】
溶接装置100がワークを溶接する場合、制御部104は、記憶部103に記憶されたティーチデータに基づいて溶接実行部101を制御し、ワークの溶接を実行させる。
溶接装置100がティーチデータを作成する場合、制御部104は、ユーザによって調整された打点位置の位置情報を溶接実行部101から取得する。そして、当該位置情報をパラメータ値に変換し、当該パラメータ値を含むティーチデータを作成して、当該ティーチデータを記憶部103に格納する。
【0060】
打点位置検査装置200は、溶接装置100からティーチデータを取得し、打点位置の検査を実行する。打点位置検査装置200は、例えば、コンピュータ装置として構成されてもよい。打点位置検査装置200は、取得部201と、表示部202と、記憶部203と、演算部204とを備える。
【0061】
取得部201は、溶接装置100からティーチデータを取得する。取得部201は、例えば、無線通信によって出力部102からティーチデータを受信する受信機であってもよい。また、取得部201は、出力部102がティーチデータを書き込んだ非一時的なコンピュータ可読媒体を読み込む、読み込み装置であってもよい。
取得部201は、取得したティーチデータを演算部204に対して出力する。
【0062】
表示部202は、演算部204から打点位置の検査結果を取得し、当該検査結果をユーザに対して表示する。例えば、打点位置検査装置200がコンピュータ装置である場合、表示部202は、コンピュータ装置のディスプレイであってもよい。
【0063】
また、表示部202は、ワークの設計図を表示してもよい。そして、設計図上に、演算部204がティーチデータに基づいて出力した打点位置と、設計打点位置とを合わせて表示してもよい。このような構成にすると、検査によって規格を満たさないと判定された打点位置をユーザが視覚的に確認可能となるため、ユーザが、規格を満たさない打点位置をより正確に把握可能となる。
ただし、ここでいうティーチデータに基づいて出力した打点位置とは、第1の実施形態において、位置移動部242が出力する打点位置に対応する打点位置、即ち移動後の打点位置に対応する打点位置を含む。
【0064】
記憶部203は、演算部204に、ティーチデータに基づいて打点位置の座標を出力し、当該打点位置の座標と、設計打点位置の座標とを比較して検査する処理を実行させるための命令群を含む1又は複数のプログラムを記録する。また、記憶部203は、設計打点位置の座標を記憶する。また、表示部202がワークの設計図を表示する場合、記憶部203は、ワークの設計図をさらに記憶してもよい。
【0065】
演算部204は、記憶部203からソフトウェア、すなわちコンピュータプログラムを読み出して実行し、ティーチデータに基づいて打点位置を出力し、当該打点位置と、設計打点位置とを比較して検査する処理を実行する。演算部204は、例えば、MPU又はCPUであってもよい。また、演算部204は、複数のプロセッサを含んでもよい。
演算部204は、位置算出部241と、位置移動部242と、誤差検査部243とを備える。
【0066】
位置算出部241は、取得部201からティーチデータを取得し、取得したティーチデータに含まれるパラメータ値から打点位置の座標を算出する。位置算出部241は、算出した打点位置の座標を、位置移動部242に対して出力する。
【0067】
位置移動部242は、位置算出部241から算出した打点位置の座標を取得し、記憶部103から設計打点位置の座標を取得する。位置移動部242は、算出した打点位置の重心の座標と、設計打点位置の重心の座標とを算出し、これらが一致するように算出した打点位置の座標を移動させる。
位置移動部242は、移動後の打点位置の座標と、設計打点位置の座標とを誤差検査部243に出力する。
【0068】
誤差検査部243は、位置移動部242から、移動後の打点位置の座標と、設計打点位置とを取得し、両者を比較して検査する。より詳細には、設計打点位置に対して、移動後の打点位置に過不足が存在するか否かを検査し、対応する設計打点位置が存在する移動後の打点位置については、対応する設計打点位置との座標の差を算出する。
誤差検査部243は、打点位置の検査結果を表示部202に対して出力する。
【0069】
第1及び第2の実施形態に係る誤差検査部243は、打点位置の誤差を検査した後に、当該検査の結果に基づいてティーチデータを修正してもよい。そして、修正したティーチデータを溶接装置100に対して出力してもよい。
このような構成にすると、ユーザがティーチデータを修正する手間を省略できる。また、ティーチデータの精度を向上できる。
【0070】
以上説明したような構成によって、打点位置検査システム1は、スポット溶接における打点位置を検査できる。打点位置検査システム1は、ティーチデータに基づいて打点位置を算出し、打点位置を検査するため、検査のためにスポット溶接を実行する必要がないため、検査に必要なコストを抑制できる。
【0071】
(その他の実施形態)
第1及び第2の実施形態に係る打点位置検査方法は、打点位置検査装置によって実行されていたが、本発明に係る打点位置検査方法は、溶接装置によって実行されてもよい。
この場合、溶接装置の記憶部には設計打点位置が記憶されており、溶接装置の制御部が、第1及び第2の実施形態に係る位置算出部241、位置移動部242、及び誤差検査部243の処理を実行する。
【0072】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1 打点位置検査システム
100 溶接装置
101 溶接実行部
102 出力部
103 記憶部
104 制御部
200 打点位置検査装置
201 取得部
202 表示部
203 記憶部
204 演算部
241 位置算出部
242 位置移動部
243 誤差検査部
図1
図2
図3