IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7597065複合粒子、正極、全固体電池、および複合粒子の製造方法
<>
  • 特許-複合粒子、正極、全固体電池、および複合粒子の製造方法 図1
  • 特許-複合粒子、正極、全固体電池、および複合粒子の製造方法 図2
  • 特許-複合粒子、正極、全固体電池、および複合粒子の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】複合粒子、正極、全固体電池、および複合粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241203BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241203BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241203BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALN20241203BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20241203BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M10/052
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022049686
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2023142670
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 勝
(72)【発明者】
【氏名】中西 真二
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/254215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M 4/00- 4/62
H01M 6/00- 6/22
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質粒子と、
コーティング膜と、
を含み、
前記コーティング膜は、前記正極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
前記コーティング膜は、リン化合物を含み、
前記リン化合物は、ナトリウと、リンとを含む、
複合粒子。
【請求項2】
下記式(1):
Na/CP≧0.01…(1)
の関係を満たし、
上記式(1)中、
Na、CPは、X線光電子分光法により測定される元素濃度を示し、
Naは、ナトリウムの元素濃度を示し、
Pは、リンの元素濃度を示す、
請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
85%以上の被覆率を有し、
前記被覆率は、X線光電子分光法により測定される、
請求項1または請求項2に記載の複合粒子。
【請求項4】
合粒子と、硫化物固体電解質と、を含
前記複合粒子は、
正極活物質粒子と、
コーティング膜と、
を含み、
前記コーティング膜は、前記正極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
前記コーティング膜は、リン化合物を含み、
前記リン化合物は、ナトリウムおよびカリウムの少なくとも一方と、リンとを含む、
正極。
【請求項5】
請求項4に記載の正極を含む、
全固体電池。
【請求項6】
(a)コーティング液と正極活物質粒子とを混合することにより、混合物を準備すること、および
(b)前記混合物を乾燥することにより、複合粒子を製造すること、
を含み、
前記コーティング液は、溶質と溶媒とを含み、
前記溶質は、ナトリウムおよびカリウムの少なくとも一方と、リンとを含み、
前記コーティング液は、
下記式(2):
Na/nP≧0.02…(2)
の関係を満たし、
上記式(2)中、
Pは、前記コーティング液中におけるリンのモル濃度を示し、
Naは、前記コーティング液中におけるナトリウムのモル濃度を示す、
複合粒子の製造方法。
【請求項7】
前記コーティング液中におけるナトリウムの質量分率が、1.46×104ppm以上
である、
請求項6に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項8】
前記溶質は、メタリン酸およびポリリン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項6または請求項7に記載の複合粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合粒子、正極、全固体電池、および複合粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010-135090号公報(特許文献1)は、正極活物質と固体電解質との界面に、ポリアニオン構造含有化合物を形成することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-135090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硫化物系全固体電池(以下「全固体電池」と略記され得る。)が開発されている。全固体電池は、硫化物固体電解質を含む。硫化物固体電解質が正極活物質粒子と直接接触すると、硫化物固体電解質が劣化し得る。硫化物固体電解質(イオン伝導パス)の劣化により、電池抵抗が増大し得る。そこで、正極活物質粒子の表面にコーティング膜を形成することが提案されている。コーティング膜が正極活物質粒子と硫化物固体電解質との直接接触を阻害することにより、硫化物固体電解質の劣化が軽減され得る。
【0005】
従来、コーティング膜の原料として、リン酸化合物が知られている。コーティング処理は、例えば、次の方法で実施され得る。すなわち、リン酸化合物が溶媒に溶解されることにより、コーティング液が準備される。コーティング液が正極活物質粒子の表面に付着する。粒子表面に付着したコーティング液が乾燥することにより、コーティング膜が形成される。コーティング膜はリン化合物を含むと考えられる。
【0006】
従来、不純物を含まないコーティング液が使用されている。不純物が、コーティング膜の特性に悪影響を及ぼす可能性があると考えられるためである。例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等の不純物は、リチウム(Li)イオンの移動を阻害する可能性があると考えられている。
【0007】
本開示の目的は、電池抵抗の低減にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
【0009】
1.複合粒子は、正極活物質粒子とコーティング膜とを含む。コーティング膜は、正極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。コーティング膜は、リン化合物を含む。リン化合物は、ナトリウムおよびカリウムの少なくとも一方と、リンとを含む。
【0010】
本開示においては、従来思想に反して、コーティング膜(リン化合物)にあえてNa、Kが添加される。本開示の新知見によると、コーティング膜がNa、Kを含むことにより、電池抵抗はむしろ低減し得る。リン酸化合物は、コーティング液中において、例えば、加溶媒分解等により低分子化する可能性がある。例えば、Na、Kがコーティング液中におけるリン酸化合物の安定性を高めることにより、良質なコーティング膜が形成され、電池抵抗が低減している可能性がある。ただし、現時点においてメカニズムの詳細は不明である。
【0011】
2.上記「1.」に記載の複合粒子は、下記式(1)の関係を満たしていてもよい。
Na/CP≧0.01…(1)
上記式(1)中、CNa、CPは、X線光電子分光法により測定される元素濃度を示す。CNaは、ナトリウムの元素濃度を示す。CPは、リンの元素濃度を示す。
【0012】
X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy,XPS)によれば、複合粒子の表面組成が特定され得る。複合粒子の表面組成は、コーティング膜の組成に対応する。上記式(1)中の「CNa/CP」は、粒子表面の組成比を示す。上記式(1)が満たされることにより、電池抵抗の低減が期待される。
【0013】
3.上記「1.」または「2.」に記載の複合粒子は、例えば85%以上の被覆率を有していてもよい。被覆率は、X線光電子分光法により測定される。
【0014】
コーティング膜がNa、Kを含む時、被覆率が高くなる傾向がある。コーティング液中におけるリン酸化合物の安定性が向上することにより、連続性を有するコーティング膜が形成されやすくなり、被覆率が向上している可能性がある。被覆率の向上により、硫化物固体電解質と正極活物質粒子との接触機会が低減し、電池抵抗が低減している可能性がある。
【0015】
4.正極は、上記「1.」~「3.」のいずれか1項に記載の複合粒子と、硫化物固体電解質とを含む。
【0016】
5.全固体電池は、上記「4.」に記載の正極を含む。
【0017】
6.複合粒子の製造方法は、下記(a)および(b)を含む。
(a)コーティング液と正極活物質粒子とを混合することにより、混合物を準備する。
(b)混合物を乾燥することにより、複合粒子を製造する。
コーティング液は、溶質と溶媒とを含む。溶質は、ナトリウムおよびカリウムの少なくとも一方と、リンとを含む。
コーティング液は、下記式(2)の関係を満たす。
Na/nP≧0.02…(2)
上記式(2)中、nPは、コーティング液中におけるリンのモル濃度を示す。nNaは、コーティング液中におけるナトリウムのモル濃度を示す。
【0018】
コーティング液が上記式(2)の関係を満たす時、上記「1.」に記載の複合粒子が形成され得る。
【0019】
7.上記「6.」に記載の複合粒子の製造方法において、コーティング液中におけるナトリウムの質量分率が、例えば1.46×104ppm以上であってもよい。
【0020】
8.上記「6.」または「7.」に記載の複合粒子の製造方法において、溶質は、メタリン酸およびポリリン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0021】
メタリン酸およびポリリン酸は、リン酸化合物である。メタリン酸およびポリリン酸は、その他のリン酸化合物に比して、長い分子鎖を有し得る。溶質がメタリン酸およびポリリン酸の少なくとも一方を含むことにより、例えば、連続性を有するコーティング膜が形成されやすくなることが期待される。これにより、例えば、被覆率の向上が期待される。
【0022】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本実施形態における複合粒子を示す概念図である。
図2図2は、本実施形態における全固体電池を示す概念図である。
図3図3は、本実施形態における複合粒子の製造方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<用語の定義等>
「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
【0025】
「AおよびBの少なくとも一方」は、「AまたはB」ならびに「AおよびB」を含む。「AおよびBの少なくとも一方」は、「Aおよび/またはB」とも記され得る。
【0026】
「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0027】
単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も意味し得る。
【0028】
各種方法に含まれる複数のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その実行順序が記載順序に限定されない。例えば、複数のステップが同時進行してもよい。例えば複数のステップが相前後してもよい。
【0029】
例えば「m~n%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。さらに数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0030】
全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値であり得る。全ての数値は有効数字で表示され得る。測定値は、複数回の測定における平均値であり得る。測定回数は、3回以上であってもよいし、5回以上であってもよいし、10回以上であってもよい。一般に測定回数が多い程、平均値の信頼性が向上することが期待される。測定値は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により端数処理され得る。測定値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差等を含み得る。
【0031】
幾何学的な用語(例えば「平行」、「垂直」、「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本開示技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0032】
化合物が化学量論的組成式(例えば「LiCoO2」等)によって表現されている場合、該化学量論的組成式は該化合物の代表例に過ぎない。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
【0033】
「D50」は、体積基準の粒子径分布において、粒子径が小さい側からの頻度の累積が50%に到達する粒子径を示す。D50は、レーザ回折法により測定され得る。
【0034】
《XPS測定》
(粒子表面における組成比)
粒子表面における組成比「CNa/CP」、「CK/CP」は、次の手順で測定され得る。XPS装置が準備される。例えば、アルバック・ファイ社製のXPS装置「製品名 PHI X-tool」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。複合粒子からなる試料粉末がXPS装置にセットされる。224eVのパスエネルギーにより、ナロースキャン分析が実施される。測定データが解析ソフトフェアにより処理される。例えば、アルバック・ファイ社製の解析ソフトフェア「製品名 MulTiPak」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。P2pスペクトルのピーク面積が、Pの元素濃度(CP)に変換される。Na1sスペクトルのピーク面積が、Naの元素濃度(CNa)に変換される。K2p3/2スペクトルのピーク面積が、Kの元素濃度(CK)に変換される。CNaがCPで除されることにより、組成比「CNa/CP」が求まる。CKがCPで除されることにより、組成比「CK/CP」が求まる。
【0035】
(被覆率)
被覆率もXPSにより測定される。上記の測定データが解析されることにより、C1s、O1s、P2p、Na1s、K2p3/2、M2p(またはM2p3/2)等の各ピーク面積から、各元素の比率(元素濃度)が求まる。下記式(3)により、被覆率が求まる。
θ=(P+Na+K)/(P+Na+K+M)×100…(3)
上記式(3)中、θは被覆率(%)を示す。P、Na、K、Mは、各元素の比率を示す。
【0036】
「M2p(またはM2p3/2)」および上記式(3)中のMは、正極活物質粒子の構成元素であって、LiおよびO以外の元素を示す。すなわち、正極活物質粒子は下記式(4)により表されてもよい。
LiMO2…(4)
Mは、1種の元素からなっていてもよいし、複数の元素からなっていてもよい。Mは、例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)およびアルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。Mが複数の元素を含む時、各元素の組成比の合計は1であってもよい。
【0037】
例えば、正極活物質粒子が「LiNi1/3Co1/3Mn1/32」である時、上記式(3)は、下記式(3’)に変形され得る。
θ=(P+Na+K)/(P+Na+K+Ni+Co+Mn)×100…(3’)
上記式(3’)中のNiは、Ni2p3/2のピーク面積から求まるニッケルの元素比率を示す。Coは、Co2p3/2のピーク面積から求まるコバルトの元素比率を示す。Mnは、Mn2p3/2のピーク面積から求まるマンガンの元素比率を示す。
【0038】
《膜厚測定》
膜厚(コーティング膜の厚さ)は、次の手順で測定され得る。複合粒子が樹脂材料に包埋されることにより、試料が準備される。イオンミリング装置により、試料に断面出し加工が施される。例えば、日立ハイテクノロジーズ社製のイオンミリング装置「製品名 Arblade(登録商標)5000」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。試料の断面がSEM(Scanning Electron Microscope)により観察される。例えば、日立ハイテクノロジーズ社製のSEM装置「製品名 SU8030」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。10個の複合粒子について、それぞれ、20個の視野で膜厚が測定される。合計で200箇所の膜厚の算術平均が、膜厚とみなされる。
【0039】
《ICP測定》
コーティング液中のモル比「nNa/nP」、「nK/nP」は、次の手順で測定される。0.01gのコーティング液が純水で希釈されることにより、100mlの試料液が準備される。P、Na、Kの水溶液(1000ppm、10000ppm)が準備される。0.01gの水溶液が純水で希釈されることにより、標準液が準備される。ICP-AES(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)装置が準備される。ICP-AES装置により、標準液の発光強度が測定される。標準液の発光強度から、検量線が作成される。ICP-AES装置により、試料液(コーティング液の希釈液)の発光強度が測定される。試料液の発光強度と、検量線とから、コーティング液におけるP、Na、Kの質量濃度が求まる。さらにP、Na、Kの質量濃度がモル濃度に変換される。Naのモル濃度(nNa)がPのモル濃度(nP)で除されることにより、モル比「nNa/nP」が求まる。Kのモル濃度(nK)がPのモル濃度(nP)で除されることにより、モル比「nK/nP」が求まる。
【0040】
<複合粒子>
図1は、本実施形態における複合粒子を示す概念図である。複合粒子5は、例えば「被覆正極活物質」等と称され得る。複合粒子5は、正極活物質粒子1とコーティング膜2とを含む。複合粒子5は、例えば凝集体を形成していてもよい。すなわち1個の複合粒子5が、2個以上の正極活物質粒子1を含んでいてもよい。複合粒子5は、例えば、1~50μmのD50を有していてもよいし、1~20μmのD50を有していてもよいし、5~15μmのD50を有していてもよい。
【0041】
《コーティング膜》
コーティング膜2は、複合粒子5のシェルである。コーティング膜2は、正極活物質粒子1の表面の少なくとも一部を被覆している。コーティング膜2は、リン化合物を含む。リン化合物は、NaおよびKの少なくとも一方と、Pとを含む。
【0042】
例えば、リン化合物は、Na、K、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、Fr(フランシウム)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)およびラジウム(Ra)からなる群より選択される少なくとも1種と、Pとを含んでいてもよい。
【0043】
リン化合物は、例えば、リチウム(Li)、酸素(O)、炭素(C)等をさらに含んでいてもよい。Pは、複合粒子5に対して、例えば1~10%の質量分率を有していてもよい。複合粒子は、例えば、下記式(5)の関係を満たしていてもよい。
Li/CP≦2.5…(5)
上記式(5)中、CLiは、Liの元素濃度を示す。CPは、Pの元素濃度を示す。CLi、CPは、XPSにより測定される。Li1sスペクトルのピーク面積が、CLiに変換される。「CLi/CP」は、粒子表面におけるPに対するLiの組成比を示す。上記式(5)の関係が満たされることにより、例えば、電池抵抗の低減が期待される。
【0044】
リン化合物は、例えば、リン酸骨格を含んでいてもよい。すなわちリン化合物は、リン酸化合物であってもよい。リン化合物がリン酸骨格を含む時、例えば、TOF-SIMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)により、複合粒子5を分析すると、PO2 -、PO3 -等のフラグメントが検出され得る。
【0045】
粒子表面における組成比「CNa/CP」は、例えば0.01以上であってもよい。組成比「CNa/CP」が0.01以上であることにより、電池抵抗の低減が期待される。組成比「CNa/CP」は、例えば、0.11以上であってもよいし、0.49以上であってもよい。組成比「CNa/CP」は、例えば、0.49以下であってもよいし、0.11以下であってもよい。
【0046】
粒子表面における組成比「(CNa+CK)/CP」は、例えば0.01以上であってもよい。組成比「(CNa+CK)/CP」は、例えば、0.11以上であってもよいし、0.49以上であってもよい。組成比「(CNa+CK)/CP」は、例えば、0.49以下であってもよいし、0.11以下であってもよい。
【0047】
被覆率は、例えば85%以上であってもよい。被覆率が85%以上であることにより、電池抵抗の低減が期待される。被覆率は、例えば、88%以上であってもよいし、89%以上であってもよい。被覆率は、例えば、100%以下であってもよいし、95%以下であってもよいし、89%以下であってもよい。
【0048】
コーティング膜2は、例えば、5~100nmの厚さを有していてもよいし、5~50nmの厚さを有していてもよいし、10~30nmの厚さを有していてもよいし、20~30nmの厚さを有していてもよい。
【0049】
《正極活物質粒子》
正極活物質粒子1は、複合粒子5のコアである。正極活物質粒子1は、二次粒子(一次粒子の集合体)であってもよい。正極活物質粒子1(二次粒子)は、例えば、1~50μmのD50を有していてもよいし、1~20μmのD50を有していてもよいし、5~15μmのD50を有していてもよい。一次粒子は、例えば、0.1~3μmの最大フェレ径を有していてもよい。
【0050】
正極活物質粒子1は、任意の成分を含み得る。正極活物質粒子1は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」における「(NiCoMn)」は、括弧内の組成比の合計が1であることを示す。合計が1である限り、個々の成分量は任意である。Li(NiCoMn)O2は、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNi0.5Co0.2Mn0.32、LiNi0.8Co0.1Mn0.12等を含んでいてもよい。Li(NiCoAl)O2は、例えばLiNi0.80Co0.15Al0.052等を含んでいてもよい。
【0051】
<全固体電池>
図2は、本実施形態における全固体電池を示す概念図である。全固体電池は、発電要素50を含む。全固体電池100は、例えば、外装体(不図示)を含んでいてもよい。外装体は、例えば、金属箔ラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。外装体が、発電要素50を収納していてもよい。発電要素50は、正極10とセパレータ層30と負極20とを含む。すなわち全固体電池100は、正極10とセパレータ層30と負極20とを含む。
【0052】
《正極》
正極10は層状である。正極10は、例えば、正極活物質層と、正極集電体とを含んでいてもよい。例えば、正極集電体の表面に正極合材が塗着されることにより、正極活物質層が形成されていてもよい。正極集電体は、例えば、Al箔等を含んでいてもよい。正極集電体は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。
【0053】
正極活物質層は、例えば、10~200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層は、セパレータ層30に密着している。正極活物質層は正極合材を含む。正極合材は、複合粒子と硫化物固体電解質とを含む。すなわち正極10は、複合粒子と硫化物固体電解質とを含む。複合粒子の詳細は、前述のとおりである。
【0054】
硫化物固体電解質は、正極活物質層内にイオン伝導パスを形成し得る。硫化物固体電解質の配合量は、100体積部の複合粒子(正極活物質)に対して、例えば、1~200体積部であってもよいし、50~150体積部であってもよいし、50~100体積部であってもよい。硫化物固体電解質は、硫黄(S)を含む。硫化物固体電解質は、例えば、Li、P、およびSを含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、酸素(O)、珪素(Si)等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えばハロゲン等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えばヨウ素(I)、臭素(Br)等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えばガラスセラミックス型であってもよいし、アルジロダイト型であってもよい。硫化物固体電解質は、例えば、LiI-LiBr-Li3PS4、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P25、LiI-Li2O-Li2S-P25、LiI-Li2S-P25、LiI-Li3PO4-P25、Li2S-P25、およびLi3PS4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0055】
例えば、「LiI-LiBr-Li3PS4」は、LiIとLiBrとLi3PS4とが任意のモル比で混合されることにより生成された硫化物固体電解質を示す。例えば、メカノケミカル法により硫化物固体電解質が生成されてもよい。「Li2S-P25」はLi3PS4を含む。Li3PS4は、例えばLi2SとP25とが「Li2S/P25=75/25(モル比)」で混合されることにより生成され得る。
【0056】
正極活物質層は、例えば導電材をさらに含んでいてもよい。導電材は、正極活物質層内に電子伝導パスを形成し得る。導電材の配合量は、100質量部の複合粒子(正極活物質)に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0057】
正極活物質層は、例えばバインダをさらに含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の複合粒子(正極活物質)に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0058】
《負極》
負極20は層状である。負極20は、例えば、負極活物質層と、負極集電体とを含んでいてもよい。例えば、負極集電体の表面に負極合材が塗着されることにより、負極活物質層が形成されていてもよい。負極集電体は、例えば、Cu箔、Ni箔等を含んでいてもよい。負極集電体は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。
【0059】
負極活物質層は、例えば、10~200μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層は、セパレータ層30に密着している。負極活物質層は負極合材を含む。負極合材は、負極活物質粒子と硫化物固体電解質とを含む。負極合材は、導電材およびバインダをさらに含んでいてもよい。負極合材と正極合材との間で、硫化物固体電解質は同種であってもよいし、異種であってもよい。負極活物質粒子は、任意の成分を含み得る。負極活物質粒子は、例えば、黒鉛、Si、SiOx(0<x<2)、およびLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0060】
《セパレータ層》
セパレータ層30は、正極10と負極20との間に介在している。セパレータ層30は、正極10を負極20から分離している。セパレータ層30は、硫化物固体電解質を含む。セパレータ層30はバインダをさらに含んでいてもよい。セパレータ層30と正極合材との間で、硫化物固体電解質は同種であってもよいし、異種であってもよい。セパレータ層30と負極合材との間で、硫化物固体電解質は同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0061】
<複合粒子の製造方法>
図3は、本実施形態における複合粒子の製造方法の概略フローチャートである。以下「本実施形態における複合粒子の製造方法」が「本製造方法」と略記され得る。本製造方法は、「(a)混合物の準備」および「(b)複合粒子の製造」を含む。本製造方法は、例えば「(c)熱処理」等をさらに含んでいてもよい。
【0062】
《(a)混合物の準備》
本製造方法は、コーティング液と、正極活物質粒子とを混合することにより、混合物を準備することを含む。正極活物質粒子の詳細は、前述のとおりである。混合物は、例えば、懸濁液であってもよいし、湿粉であってもよい。例えば、コーティング液中に正極活物質粒子(粉末)が分散されることにより、懸濁液が形成されてもよい。例えば、粉末中に、コーティング液が噴霧されることにより、湿粉が形成されてもよい。本製造方法においては、任意の混合装置、造粒装置等が使用され得る。
【0063】
コーティング液は、溶質と溶媒とを含む。溶質は、コーティング膜の原料を含む。コーティング液は、例えば、懸濁物(不溶解成分)、沈殿物等をさらに含んでいてもよい。
【0064】
溶質量は、100質量部の溶媒に対して、例えば、0.1~20質量部であってもよいし、1~15質量部であってもよいし、5~10質量部であってもよい。溶媒は、溶質が溶解する限り、任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、水、アルコール等を含んでいてもよい。溶媒は、例えば、イオン交換水等を含んでいてもよい。
【0065】
溶質は、NaおよびKの少なくとも一方と、Pとを含む。溶質は、例えば、Na、Kのリン酸塩等を含んでいてもよい。溶質は、例えば、オルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等を含んでいてもよい。
【0066】
溶質は、例えば、リン酸化合物を含んでいてもよい。溶質は、例えば、無水リン酸(P25)、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸〔(HPO3n〕、およびポリリン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。溶質は、例えば、メタリン酸、およびポリリン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。メタリン酸およびポリリン酸は、その他のリン酸化合物に比して、長い分子鎖を有し得る。リン酸化合物が長い分子鎖を有することにより、連続性を有するコーティング膜が生成されやすくなると考えられる。コーティング膜が連続性を有することにより、例えば、被覆率の向上が期待される。
【0067】
溶質がNaを含む場合、Pに対する、Naのモル比「nNa/nP」は、0.02以上である。モル比「nNa/nP」は、例えば、0.12以上であってもよいし、0.50以上であってもよいし、0.75以上であってもよい。モル比「nNa/nP」は、例えば、1以下であってもよいし、0.75以下であってもよい。
【0068】
溶質がKを含む場合、Pに対する、Kのモル比「nK/nP」は、例えば、2.22×10-5以上である。モル比「nK/nP」は、例えば、3.80×10-5以上であってもよいし、9.51×10-5以上であってもよい。モル比「nK/nP」は、例えば、8.00×10-3以下であってもよいし、9.51×10-5以下であってもよい。
【0069】
コーティング液中におけるNaの濃度(質量分率)は、例えば、1.46×104ppm(1.46%)以上であってもよい。これにより電池抵抗の低減が期待される。Naの濃度は、例えば、8.18×104ppm以上であってもよいし、2.71×105ppm以上であってもよいし、3.58×105ppm以上であってもよい。Naの濃度は、例えば、4.30×105ppm(43%)以下であってもよいし、3.58×105ppm以下であってもよい。
【0070】
コーティング液中におけるKの濃度(質量分率)は、例えば、28ppm以上であってもよい。これにより電池抵抗の低減が期待される。Kの濃度は、例えば、48ppm以上であってもよいし、120ppm以上であってもよい。Kの濃度は、例えば、10000ppm以下であってもよいし、120ppm以下であってもよい。
【0071】
溶質は、例えば、リチウム化合物をさらに含んでいてもよい。溶質は、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム等を含んでいてもよい。
【0072】
Pに対する、Liのモル比「nLi/nP」は、例えば、1.1未満であってもよい。モル比「nLi/nP」が1.1未満であることにより、例えば、電池抵抗の低減が期待される。モル比「nLi/nP」は、例えば、1.07以下であってもよいし、0.45以下であってもよいし、ゼロであってもよい。モル比「nLi/nP」は、例えば、0~0.45であってもよいし、0.45~1.07であってもよい。
【0073】
《(b)複合粒子の製造》
本製造方法は、混合物を乾燥することにより、複合粒子を製造することを含む。正極活物質粒子の表面に付着したコーティング液が乾燥することにより、コーティング膜が生成される。本製造方法においては、任意の乾燥方法が使用され得る。
【0074】
例えば、スプレードライ法により、複合粒子が形成されてもよい。すなわち、懸濁液がノズルから噴霧されることにより、液滴が形成される。液滴は、正極活物質粒子とコーティング液とを含む。例えば、熱風により、液滴が乾燥されることにより、複合粒子が形成され得る。スプレードライ法の使用により、例えば、被覆率の向上が期待される。
【0075】
スプレードライ用の懸濁液の固形分率は、体積分率で、例えば、1~50%であってもよいし、10~30%であってもよい。ノズル径は、例えば、0.1~10mmであってもよいし、0.1~1mmであってもよい。熱風温度は、例えば、100~200℃であってもよい。
【0076】
例えば、転動流動層コーティング装置により、複合粒子が製造されてもよい。転動流動層コーティング装置においては、「(a)混合物の準備」および「(b)複合粒子の製造」が同時に実施され得る。
【0077】
《(c)熱処理》
本製造方法は、複合粒子に熱処理を施すことを含んでいてもよい。熱処理によりコーティング膜が定着し得る。熱処理は「焼成」とも称され得る。本製造方法においては、任意の熱処理装置が使用され得る。熱処理温度は、例えば、150~300℃であってもよい。熱処理時間は、例えば、1~10時間であってもよい。例えば、空気中で熱処理が実施されてもよいし、不活性雰囲気下で熱処理が実施されてもよい。
【実施例
【0078】
<実験1>
実験1においては、Naの影響が検討された。以下のようにNo.1~4に係る複合粒子、正極および全固体電池が製造された。以下、例えば「No.1に係る複合粒子」が「No.1」と略記され得る。
【0079】
《No.1》
リン酸化合物として、メタリン酸(富士フイルム和光純薬社製)が準備された。該試薬は、賦形剤として、リン酸ナトリウムを含んでいた。166質量部のイオン交換水に、10.8質量部のメタリン酸が溶解されることにより、リン酸溶液が準備された。
【0080】
電気透析装置(製品名「アシライザーEX3B」、アストム社製)が準備された。電気透析装置により、リン酸溶液に対して脱塩処理が施された。装置の運転条件は下記のとおりである。
【0081】
電気透析槽:2室法電気透析槽(バイポーラ膜+カチオン交換膜)
アルカリ液、電極液:水酸化ナトリウム水溶液(0.5mоl/L)
定格容量:4.4A
処理時間(運転時間):90分
【0082】
脱塩処理後、モル比「nLi/nP」が0.45となるように、リン酸溶液に水酸化リチウム・1水和物が溶解されることにより、コーティング液が製造された。前述の手順に従って、モル比「nNa/nP」、Na濃度が測定された。測定結果は下記表1に示される。下記表1中、例えば「E+02」は「×102」を示す。
【0083】
正極活物質粒子として、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2が準備された。50質量部の正極活物質粒子の粉末が、53.7質量部のコーティング液に分散されることにより、懸濁液が準備された。BUCHI社製のスプレードライヤー「製品名 Mini Spray Dryer B-290」が準備された。懸濁液がスプレードライヤーに供給されることにより、複合粒子の粉末が製造された。スプレードライヤーの給気温度は200℃であり、給気風量は0.45m3/minであった。複合粒子が空気中で熱処理された。熱処理温度は200℃であった。熱処理時間は5時間であった。前述の手順により、粒子表面の組成比「CNa/CP」、被覆率が測定された。測定結果は、下記表1に示される。
【0084】
下記材料が準備された。
硫化物固体電解質:10LiI-15LiBr-75Li3PS4
導電材:VGCF
バインダ:SBR
分散媒:ヘプタン
正極集電体:Al箔
【0085】
複合粒子と、硫化物固体電解質と、導電材と、バインダと、分散媒とが混合されることにより、正極スラリーが準備された。複合粒子と硫化物固体電解質との混合比は「複合粒子/硫化物固体電解質=6/4(体積比)」であった。導電材の配合量は、100質量部の複合粒子に対して3質量部であった。バインダの配合量は、100質量部の複合粒子に対して3質量部であった。超音波ホモジナイザーにより、正極スラリーが十分攪拌された。正極スラリーが正極集電体の表面に塗工されることにより、塗膜が形成された。ホットプレートにより、塗膜が100℃で30分間乾燥された。これにより正極原反が製造された。正極原反から、円盤状の正極が切り出された。正極の面積は1cm2であった。
【0086】
負極およびセパレータ層が準備された。負極活物質粒子は黒鉛であった。正極、セパレータ層および負極の間で、同種の硫化物固体電解質が使用された。筒状治具内において、正極とセパレータ層と負極とが積層されることにより、積層体が形成された。積層体がプレスされることにより、発電要素が形成された。発電要素に端子が接続されることにより、全固体電池が形成された。
【0087】
《No.2》
脱塩処理の処理時間が、60分に変更されることを除いては、No.1と同様に、コーティング液、複合粒子、正極および全固体電池が製造された。
【0088】
《No.3》
脱塩処理の処理時間が、30分に変更されることを除いては、No.1と同様に、コーティング液、複合粒子、正極および全固体電池が製造された。
【0089】
《No.4》
脱塩処理が実施されないことを除いては、No.1と同様に、コーティング液、複合粒子、正極および全固体電池が製造された。
【0090】
《評価》
電池抵抗が測定された。測定結果は、下記表1に示される。下記表1における電池抵抗は相対値である。実験1においては、No.1の電池抵抗が100と定義される。
【0091】
【表1】
【0092】
《結果》
上記表1に示されるように、No.1に比して、No.2~4においては、電池抵抗が低減している。No.1においては、組成比「CNa/CP」がゼロである。No.1のコーティング膜は、Naを含まないと考えられる。No.2~4においては、組成比「CNa/CP」がゼロより大きい。No.2~4のコーティング膜は、Naを含むと考えられる。No.2~4は、No.1に比して、被覆率も高い傾向がみられる。
【0093】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0094】
1 正極活物質粒子、2 コーティング膜、l5 複合粒子、10 正極、20 負極、30 セパレータ層、50 発電要素、100 全固体電池。
図1
図2
図3