(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】積層型コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20241203BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20241203BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 P
H01F27/28 104
(21)【出願番号】P 2022056388
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小澤 怜治
(72)【発明者】
【氏名】山田 祥耀
(72)【発明者】
【氏名】中野 真亜沙
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/022889(WO,A1)
【文献】特開2019-186254(JP,A)
【文献】特開2001-093730(JP,A)
【文献】特開2014-175383(JP,A)
【文献】国際公開第2021/085002(WO,A1)
【文献】特開2009-044030(JP,A)
【文献】特開平10-092643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/29
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層方向に積層されてなる素体と、
前記素体の内部に設けられたコイルと、
前記素体の表面上に設けられ、かつ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記コイルは、前記積層方向に積層された複数のコイル導体が前記絶縁層を前記積層方向に貫通するビア導体を介して電気的に接続されてなり、
前記積層方向に積層された複数の前記コイル導体は、複数の隣り合う前記コイル導体からなる積層部を含み、
前記積層部は、前記積層部を構成するすべての前記コイル導体が前記積層方向から見たときに重なり合う並走区間を有し、
前記並走区間は、前記ビア導体により並列接続され、
前記コイルは、複数の引き出し導体を介して同一の前記外部電極に電気的に接続され、
各々の前記引き出し導体は、前記絶縁層を前記積層方向に貫通する引き出し用ビア導体を含み、
前記引き出し用ビア導体の径は、100μm以下であ
り、
前記積層方向に積層された複数の前記コイル導体は、前記積層方向の最外位置に存在する最外コイル導体を含み、
前記最外コイル導体は、ランド部を有し、
複数の前記引き出し導体のうち、2つ以上の前記引き出し導体は、ともに同一の前記ランド部に接続されている、ことを特徴とする積層型コイル部品。
【請求項2】
複数の絶縁層が積層方向に積層されてなる素体と、
前記素体の内部に設けられたコイルと、
前記素体の表面上に設けられ、かつ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記コイルは、前記積層方向に積層された複数のコイル導体が前記絶縁層を前記積層方向に貫通するビア導体を介して電気的に接続されてなり、
前記積層方向に積層された複数の前記コイル導体は、複数の隣り合う前記コイル導体からなる積層部を含み、
前記積層部は、前記積層部を構成するすべての前記コイル導体が前記積層方向から見たときに重なり合う並走区間を有し、
前記並走区間は、前記ビア導体により並列接続され、
前記コイルは、複数の引き出し導体を介して同一の前記外部電極に電気的に接続され、
各々の前記引き出し導体は、前記絶縁層を前記積層方向に貫通する引き出し用ビア導体を含み、
前記引き出し用ビア導体の径は、100μm以下であり、
前記積層部に隣り合う前記コイル導体は、前記コイルの3/4ターンの長さを有し、前記並走区間の両端以外の領域に前記積層方向から見たときに重なっておらず、前記並走区間の両端に前記積層方向から見たときに重なっている、ことを特徴とする積層型コイル部品。
【請求項3】
前記積層方向に積層された複数の前記コイル導体は、前記積層方向の最外位置に存在する最外コイル導体を含み、
前記最外コイル導体は、ランド部
を有し、
複数の前記引き出し導体は、同一の前記ランド部に接続されている、請求
項2に記載の積層型コイル部品。
【請求項4】
前記引き出し導体が延びる方向に直交する第1断面と、前記コイル導体が延びる方向に直交する第2断面と、を定めるとき、同一の前記第1断面で定められる、同一の前記外部電極に接続された複数の前記引き出し導体を構成する前記引き出し用ビア導体の断面積の合計は、同一の前記第2断面で定められる、前記並走区間を構成する前記コイル導体の断面積の合計以上である、請求項1
~3のいずれかに記載の積層型コイル部品。
【請求項5】
前記積層部は、3つ以上の前記コイル導体からなる、請求項1~
4のいずれかに記載の積層型コイル部品。
【請求項6】
前記積層方向と前記コイルのコイル軸の方向とは、同じ方向に沿って前記素体の実装面に平行である、請求項1~
5のいずれかに記載の積層型コイル部品。
【請求項7】
前記積層部を構成するすべての前記コイル導体の長さは、前記コイルの3/4ターンの長さである、請求項1~
6のいずれかに記載の積層型コイル部品。
【請求項8】
前記積層方向に積層された複数の前記コイル導体は、前記積層方向の最外位置に存在する最外コイル導体を含み、前記最外コイル導体の長さは、複数の前記コイル導体のうちで最も短い、請求項1~7のいずれかに記載の積層型コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の絶縁体層が積層方向に積層されて構成されている直方体状の積層体であって、複数の絶縁体層の外縁が連なって形成されている第1の側面を有する積層体と、積層体に設けられ、かつ、複数のコイル導体が絶縁体層を貫通するビアホール導体により接続されることにより構成されているコイルであって、周回しながら積層方向に進行する螺旋状のコイルと、少なくとも第1の側面に設けられている第1の外部電極と、第1の外部電極よりも積層方向の他方側に設けられ、かつ、少なくとも第1の側面に設けられている第2の外部電極と、を備えており、コイルには、積層方向に並ぶm個のコイル導体の少なくとも一部分が並列接続されて構成された第1の並列部、及び、積層方向に並ぶn個のコイル導体の少なくとも一部分が並列接続されて構成された第2の並列部が設けられており、m及びnは、自然数であり、nは、mよりも大きく、第1の側面の法線方向から平面視したときに第1の外部電極と重なる第1の領域における第1の並列部の数と第2の並列部の数との合計に占める第1の並列部の数の割合の方が、第1の側面の法線方向から平面視したときに第1の外部電極及び第2の外部電極と重ならない第2の領域における第1の並列部の数と第2の並列部の数との合計に占める第1の並列部の数の割合よりも高いこと、を特徴とする電子部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の
図2には、2個又は3個のコイル導体が並列接続された電子部品が開示されている。また、特許文献1の
図2に示された電子部品では、絶縁体層を貫通する複数のビアホール導体で構成された引き出し導体を介して、コイル及び外部電極が接続されていることが記載されている。しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1の
図2に示された電子部品では、以下の問題が生じることが判明した。
【0005】
特許文献1の
図2に示された電子部品では、2個又は3個のコイル導体が並列接続されているため、その分、コイルの電流経路に沿う方向、すなわち、コイル導体が延びる方向に直交するコイルの断面積が増加する、と考えられる。よって、特許文献1の
図2に示された電子部品では、コイルの直流抵抗(Rdc)が低いものとなり、コイルに大電流を流すことが可能となる、と考えられる。
【0006】
特許文献1の
図2に示された電子部品において、コイルに大電流を流そうとすると、引き出し導体にも大電流が流れることになる。引き出し導体に大電流を流しやすくするためには、例えば、引き出し導体が延びる方向に直交する引き出し導体の断面積を大きくすることにより、引き出し導体の直流抵抗を低くすることが考えられる。しかしながら、引き出し導体の断面積を大きくするために、引き出し導体を構成するビアホール導体の断面積を大きくすると、引き出し導体の作製過程において、ビアホール導体が周囲の絶縁体層よりも熱収縮しやすくなる。そのため、積層体の表面から露出した引き出し導体の露出部分が周囲の絶縁体層に対して凹んでしまい、結果的に、電子部品に外観不良が発生するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、引き出し導体の露出部分の凹みに起因する外観不良の発生が抑制された積層型コイル部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層型コイル部品は、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなる素体と、上記素体の内部に設けられたコイルと、上記素体の表面上に設けられ、かつ、上記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、上記コイルは、上記積層方向に積層された複数のコイル導体が上記絶縁層を上記積層方向に貫通するビア導体を介して電気的に接続されてなり、上記積層方向に積層された複数の上記コイル導体は、複数の隣り合う上記コイル導体からなる積層部を含み、上記積層部は、上記積層部を構成するすべての上記コイル導体が上記積層方向から見たときに重なり合う並走区間を有し、上記並走区間は、上記ビア導体により並列接続され、上記コイルは、複数の引き出し導体を介して同一の上記外部電極に電気的に接続され、各々の上記引き出し導体は、上記絶縁層を上記積層方向に貫通する引き出し用ビア導体を含み、上記引き出し用ビア導体の径は、100μm以下である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、引き出し導体の露出部分の凹みに起因する外観不良の発生が抑制された積層型コイル部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の積層型コイル部品の一例を示す斜視模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層型コイル部品(ただし、外部電極を除く)を分解した状態の一例を示す斜視模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す積層型コイル部品(ただし、外部電極を除く)を分解した状態の一例を示す平面模式図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す積層型コイル部品において、素体の第1端面の近傍を高さ方向から断面視した状態の一例を拡大して示す断面模式図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す積層型コイル部品において、素体の第2端面の近傍を高さ方向から断面視した状態の一例を拡大して示す断面模式図である。
【
図6】
図6は、
図2及び
図3に示す積層型コイル部品において、並走区間を構成する3つのコイル導体を高さ方向から断面視した状態の一例を拡大して示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の積層型コイル部品について説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。
【0013】
本発明の積層型コイル部品は、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなる素体と、上記素体の内部に設けられたコイルと、上記素体の表面上に設けられ、かつ、上記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、上記コイルは、上記積層方向に積層された複数のコイル導体が上記絶縁層を上記積層方向に貫通するビア導体を介して電気的に接続されてなり、上記積層方向に積層された複数の上記コイル導体は、複数の隣り合う上記コイル導体からなる積層部を含み、上記積層部は、上記積層部を構成するすべての上記コイル導体が上記積層方向から見たときに重なり合う並走区間を有し、上記並走区間は、上記ビア導体により並列接続され、上記コイルは、複数の引き出し導体を介して同一の上記外部電極に電気的に接続され、各々の上記引き出し導体は、上記絶縁層を上記積層方向に貫通する引き出し用ビア導体を含み、上記引き出し用ビア導体の径は、100μm以下である、ことを特徴とする。
【0014】
図1は、本発明の積層型コイル部品の一例を示す斜視模式図である。
【0015】
図1に示す積層型コイル部品1は、素体10Aと、第1外部電極21と、第2外部電極22と、を有している。
図1に示していないが、後述するように、積層型コイル部品1は、素体10Aの内部に設けられたコイルも有している。
【0016】
本明細書中、長さ方向、高さ方向、及び、幅方向を、
図1等に示すように、各々、L、T、及び、Wで定められる方向とする。ここで、長さ方向Lと高さ方向Tと幅方向Wとは、互いに直交している。
【0017】
素体10Aは、長さ方向Lに相対する第1端面11a及び第2端面11bと、高さ方向Tに相対する第1主面12a及び第2主面12bと、幅方向Wに相対する第1側面13a及び第2側面13bと、を有しており、例えば、直方体状又は略直方体状である。
【0018】
素体10Aの第1端面11a及び第2端面11bは、長さ方向Lに厳密に直交している必要はない。また、素体10Aの第1主面12a及び第2主面12bは、高さ方向Tに厳密に直交している必要はない。更に、素体10Aの第1側面13a及び第2側面13bは、幅方向Wに厳密に直交している必要はない。
【0019】
積層型コイル部品1を基板に実装する場合、素体10Aの第1主面12aが実装面となる。
【0020】
素体10Aは、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。素体10Aの角部は、素体10Aの3面が交わる部分である。素体10Aの稜線部は、素体10Aの2面が交わる部分である。
【0021】
第1外部電極21は、素体10Aの表面上に設けられている。より具体的には、第1外部電極21は、素体10Aの第1端面11aから、第1主面12a、第2主面12b、第1側面13a、及び、第2側面13bの各面の一部にわたって延びている。
【0022】
第1外部電極21の配置態様は、
図1に示す態様に限定されない。例えば、第1外部電極21は、素体10Aの第1主面12aの一部から、第1端面11a、第1側面13a、及び、第2側面13bの各面の一部にわたって延びていてもよい。
【0023】
第2外部電極22は、素体10Aの表面上に設けられている。より具体的には、第2外部電極22は、素体10Aの第2端面11bから、第1主面12a、第2主面12b、第1側面13a、及び、第2側面13bの各面の一部にわたって延びている。
【0024】
第2外部電極22の配置態様は、
図1に示す態様に限定されない。例えば、第2外部電極22は、素体10Aの第1主面12aの一部から、第2端面11b、第1側面13a、及び、第2側面13bの各面の一部にわたって延びていてもよい。
【0025】
以上のように、第1外部電極21及び第2外部電極22は、素体10Aの表面上で互いに離隔した位置に設けられている。
【0026】
以上のように、第1外部電極21及び第2外部電極22が、実装面である素体10Aの第1主面12a上に設けられていることにより、積層型コイル部品1の実装性が向上する。
【0027】
第1外部電極21及び第2外部電極22は、各々、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。
【0028】
第1外部電極21及び第2外部電極22が、各々、単層構造である場合、各々の外部電極の構成材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0029】
第1外部電極21及び第2外部電極22が、各々、複層構造である場合、各々の外部電極は、素体10Aの表面側から順に、例えば、Agを含む下地電極と、Niめっき電極と、Snめっき電極と、を有していてもよい。
【0030】
図2は、
図1に示す積層型コイル部品(ただし、外部電極を除く)を分解した状態の一例を示す斜視模式図である。
図3は、
図1に示す積層型コイル部品(ただし、外部電極を除く)を分解した状態の一例を示す平面模式図である。
【0031】
図2及び
図3に示すように、素体10Aは、複数の絶縁層が、積層方向、ここでは、長さ方向Lに積層されてなる。
【0032】
素体10Aは、絶縁層P1、絶縁層P2、絶縁層P3、絶縁層P4、絶縁層P5、絶縁層P6、絶縁層P7、絶縁層P8、絶縁層P9、絶縁層P10、絶縁層P11、絶縁層P12、絶縁層P13、絶縁層P14、及び、絶縁層P15を、第1端面11a側から第2端面11b側に向かって、長さ方向Lに順に含んでいる。
【0033】
各々の絶縁層の構成材料としては、例えば、フェライト材料等の磁性材料が挙げられる。
【0034】
フェライト材料は、Ni-Cu-Zn系フェライト材料であることが好ましい。
【0035】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、全量を100mоl%としたとき、FeをFe2O3換算で40mol%以上、49.5mol%以下、ZnをZnO換算で2mol%以上、35mol%以下、CuをCuO換算で6mol%以上、13mol%以下、NiをNiO換算で10mol%以上、45mol%以下含むことが好ましい。
【0036】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、Co、Bi、Sn、Mn等の添加物を更に含んでいてもよい。
【0037】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、不可避不純物を更に含んでいてもよい。
【0038】
素体10Aの内部には、コイル30Aが設けられている。
【0039】
図2及び
図3に示すように、コイル30Aは、コイル導体Q1、コイル導体Q2、コイル導体Q3、コイル導体Q4、コイル導体Q5、コイル導体Q6、コイル導体Q7、コイル導体Q8、コイル導体Q9、コイル導体Q10、コイル導体Q11、コイル導体Q12、コイル導体Q13、コイル導体Q14、及び、コイル導体Q15を、長さ方向Lに順に含んでいる。
【0040】
コイル導体Q1は、直線状であり、絶縁層P1の主面上に設けられている。
【0041】
コイル導体Q1は、ランド部Ra1及びランド部Rb1を別々の端部に有している。
【0042】
コイル導体Q2は、L字状であり、絶縁層P2の主面上に設けられている。
【0043】
コイル導体Q2は、ランド部Ra2及びランド部Rc2を別々の端部に有している。
【0044】
ランド部Ra2は、絶縁層P2を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa2に接続されている。ビア導体Sa2は、ランド部Ra2に加えて、ランド部Ra1にも接続されている。つまり、ランド部Ra1及びランド部Ra2は、ビア導体Sa2を介して電気的に接続されている。
【0045】
コイル導体Q2は、屈曲部Ub2を有している。
【0046】
屈曲部Ub2は、絶縁層P2を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb2に接続されている。ビア導体Sb2は、屈曲部Ub2に加えて、ランド部Rb1にも接続されている。つまり、ランド部Rb1及び屈曲部Ub2は、ビア導体Sb2を介して電気的に接続されている。
【0047】
コイル導体Q3は、U字状であり、絶縁層P3の主面上に設けられている。
【0048】
コイル導体Q3は、ランド部Ra3及びランド部Rd3を別々の端部に有している。
【0049】
ランド部Ra3は、絶縁層P3を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa3に接続されている。ビア導体Sa3は、ランド部Ra3に加えて、ランド部Ra2にも接続されている。つまり、ランド部Ra2及びランド部Ra3は、ビア導体Sa3を介して電気的に接続されている。
【0050】
コイル導体Q3は、屈曲部Ub3及び屈曲部Uc3を有している。
【0051】
屈曲部Ub3は、絶縁層P3を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb3に接続されている。ビア導体Sb3は、屈曲部Ub3に加えて、屈曲部Ub2にも接続されている。つまり、屈曲部Ub2及び屈曲部Ub3は、ビア導体Sb3を介して電気的に接続されている。
【0052】
屈曲部Uc3は、絶縁層P3を長さ方向Lに貫通するビア導体Sc3に接続されている。ビア導体Sc3は、屈曲部Uc3に加えて、ランド部Rc2にも接続されている。つまり、ランド部Rc2及び屈曲部Uc3は、ビア導体Sc3を介して電気的に接続されている。
【0053】
コイル導体Q4は、U字状であり、絶縁層P4の主面上に設けられている。
【0054】
コイル導体Q4は、ランド部Ra4及びランド部Rb4を別々の端部に有している。
【0055】
ランド部Rb4は、絶縁層P4を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb4に接続されている。ビア導体Sb4は、ランド部Rb4に加えて、屈曲部Ub3にも接続されている。つまり、屈曲部Ub3及びランド部Rb4は、ビア導体Sb4を介して電気的に接続されている。
【0056】
コイル導体Q4は、屈曲部Uc4及び屈曲部Ud4を有している。
【0057】
屈曲部Uc4は、絶縁層P4を長さ方向Lに貫通するビア導体Sc4に接続されている。ビア導体Sc4は、屈曲部Uc4に加えて、屈曲部Uc3にも接続されている。つまり、屈曲部Uc3及び屈曲部Uc4は、ビア導体Sc4を介して電気的に接続されている。
【0058】
屈曲部Ud4は、絶縁層P4を長さ方向Lに貫通するビア導体Sd4に接続されている。ビア導体Sd4は、屈曲部Ud4に加えて、ランド部Rd3にも接続されている。つまり、ランド部Rd3及び屈曲部Ud4は、ビア導体Sd4を介して電気的に接続されている。
【0059】
コイル導体Q5は、U字状であり、絶縁層P5の主面上に設けられている。
【0060】
コイル導体Q5は、ランド部Rb5及びランド部Rc5を別々の端部に有している。
【0061】
ランド部Rc5は、絶縁層P5を長さ方向Lに貫通するビア導体Sc5に接続されている。ビア導体Sc5は、ランド部Rc5に加えて、屈曲部Uc4にも接続されている。つまり、屈曲部Uc4及びランド部Rc5は、ビア導体Sc5を介して電気的に接続されている。
【0062】
コイル導体Q5は、屈曲部Ua5及び屈曲部Ud5を有している。
【0063】
屈曲部Ua5は、絶縁層P5を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa5に接続されている。ビア導体Sa5は、屈曲部Ua5に加えて、ランド部Ra4にも接続されている。つまり、ランド部Ra4及び屈曲部Ua5は、ビア導体Sa5を介して電気的に接続されている。
【0064】
屈曲部Ud5は、絶縁層P5を長さ方向Lに貫通するビア導体Sd5に接続されている。ビア導体Sd5は、屈曲部Ud5に加えて、屈曲部Ud4にも接続されている。つまり、屈曲部Ud4及び屈曲部Ud5は、ビア導体Sd5を介して電気的に接続されている。
【0065】
コイル導体Q6は、U字状であり、絶縁層P6の主面上に設けられている。
【0066】
コイル導体Q6は、ランド部Rc6及びランド部Rd6を別々の端部に有している。
【0067】
ランド部Rd6は、絶縁層P6を長さ方向Lに貫通するビア導体Sd6に接続されている。ビア導体Sd6は、ランド部Rd6に加えて、屈曲部Ud5にも接続されている。つまり、屈曲部Ud5及びランド部Rd6は、ビア導体Sd6を介して電気的に接続されている。
【0068】
コイル導体Q6は、屈曲部Ua6及び屈曲部Ub6を有している。
【0069】
屈曲部Ua6は、絶縁層P6を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa6に接続されている。ビア導体Sa6は、屈曲部Ua6に加えて、屈曲部Ua5にも接続されている。つまり、屈曲部Ua5及び屈曲部Ua6は、ビア導体Sa6を介して電気的に接続されている。
【0070】
屈曲部Ub6は、絶縁層P6を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb6に接続されている。ビア導体Sb6は、屈曲部Ub6に加えて、ランド部Rb5にも接続されている。つまり、ランド部Rb5及び屈曲部Ub6は、ビア導体Sb6を介して電気的に接続されている。
【0071】
コイル導体Q7は、U字状であり、絶縁層P7の主面上に設けられている。
【0072】
コイル導体Q7は、ランド部Ra7及びランド部Rd7を別々の端部に有している。
【0073】
ランド部Ra7は、絶縁層P7を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa7に接続されている。ビア導体Sa7は、ランド部Ra7に加えて、屈曲部Ua6にも接続されている。つまり、屈曲部Ua6及びランド部Ra7は、ビア導体Sa7を介して電気的に接続されている。
【0074】
コイル導体Q7は、屈曲部Ub7及び屈曲部Uc7を有している。
【0075】
屈曲部Ub7は、絶縁層P7を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb7に接続されている。ビア導体Sb7は、屈曲部Ub7に加えて、屈曲部Ub6にも接続されている。つまり、屈曲部Ub6及び屈曲部Ub7は、ビア導体Sb7を介して電気的に接続されている。
【0076】
屈曲部Uc7は、絶縁層P7を長さ方向Lに貫通するビア導体Sc7に接続されている。ビア導体Sc7は、屈曲部Uc7に加えて、ランド部Rc6にも接続されている。つまり、ランド部Rc6及び屈曲部Uc7は、ビア導体Sc7を介して電気的に接続されている。
【0077】
コイル導体Q8は、U字状であり、絶縁層P8の主面上に設けられている。
【0078】
コイル導体Q8は、ランド部Ra8及びランド部Rb8を別々の端部に有している。
【0079】
ランド部Rb8は、絶縁層P8を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb8に接続されている。ビア導体Sb8は、ランド部Rb8に加えて、屈曲部Ub7にも接続されている。つまり、屈曲部Ub7及びランド部Rb8は、ビア導体Sb8を介して電気的に接続されている。
【0080】
コイル導体Q8は、屈曲部Uc8及び屈曲部Ud8を有している。
【0081】
屈曲部Uc8は、絶縁層P8を長さ方向Lに貫通するビア導体Sc8に接続されている。ビア導体Sc8は、屈曲部Uc8に加えて、屈曲部Uc7にも接続されている。つまり、屈曲部Uc7及び屈曲部Uc8は、ビア導体Sc8を介して電気的に接続されている。
【0082】
屈曲部Ud8は、絶縁層P8を長さ方向Lに貫通するビア導体Sd8に接続されている。ビア導体Sd8は、屈曲部Ud8に加えて、ランド部Rd7にも接続されている。つまり、ランド部Rd7及び屈曲部Ud8は、ビア導体Sd8を介して電気的に接続されている。
【0083】
コイル導体Q9は、U字状であり、絶縁層P9の主面上に設けられている。
【0084】
コイル導体Q9は、ランド部Rb9及びランド部Rc9を別々の端部に有している。
【0085】
ランド部Rc9は、絶縁層P9を長さ方向Lに貫通するビア導体Sc9に接続されている。ビア導体Sc9は、ランド部Rc9に加えて、屈曲部Uc8にも接続されている。つまり、屈曲部Uc8及びランド部Rc9は、ビア導体Sc9を介して電気的に接続されている。
【0086】
コイル導体Q9は、屈曲部Ua9及び屈曲部Ud9を有している。
【0087】
屈曲部Ua9は、絶縁層P9を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa9に接続されている。ビア導体Sa9は、屈曲部Ua9に加えて、ランド部Ra8にも接続されている。つまり、ランド部Ra8及び屈曲部Ua9は、ビア導体Sa9を介して電気的に接続されている。
【0088】
屈曲部Ud9は、絶縁層P9を長さ方向Lに貫通するビア導体Sd9に接続されている。ビア導体Sd9は、屈曲部Ud9に加えて、屈曲部Ud8にも接続されている。つまり、屈曲部Ud8及び屈曲部Ud9は、ビア導体Sd9を介して電気的に接続されている。
【0089】
コイル導体Q10は、U字状であり、絶縁層P10の主面上に設けられている。
【0090】
コイル導体Q10は、ランド部Rc10及びランド部Rd10を別々の端部に有している。
【0091】
ランド部Rd10は、絶縁層P10を長さ方向Lに貫通するビア導体Sd10に接続されている。ビア導体Sd10は、ランド部Rd10に加えて、屈曲部Ud9にも接続されている。つまり、屈曲部Ud9及びランド部Rd10は、ビア導体Sd10を介して電気的に接続されている。
【0092】
コイル導体Q10は、屈曲部Ua10及び屈曲部Ub10を有している。
【0093】
屈曲部Ua10は、絶縁層P10を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa10に接続されている。ビア導体Sa10は、屈曲部Ua10に加えて、屈曲部Ua9にも接続されている。つまり、屈曲部Ua9及び屈曲部Ua10は、ビア導体Sa10を介して電気的に接続されている。
【0094】
屈曲部Ub10は、絶縁層P10を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb10に接続されている。ビア導体Sb10は、屈曲部Ub10に加えて、ランド部Rb9にも接続されている。つまり、ランド部Rb9及び屈曲部Ub10は、ビア導体Sb10を介して電気的に接続されている。
【0095】
コイル導体Q11は、U字状であり、絶縁層P11の主面上に設けられている。
【0096】
コイル導体Q11は、ランド部Ra11及びランド部Rd11を別々の端部に有している。
【0097】
ランド部Ra11は、絶縁層P11を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa11に接続されている。ビア導体Sa11は、ランド部Ra11に加えて、屈曲部Ua10にも接続されている。つまり、屈曲部Ua10及びランド部Ra11は、ビア導体Sa11を介して電気的に接続されている。
【0098】
コイル導体Q11は、屈曲部Ub11及び屈曲部Uc11を有している。
【0099】
屈曲部Ub11は、絶縁層P11を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb11に接続されている。ビア導体Sb11は、屈曲部Ub11に加えて、屈曲部Ub10にも接続されている。つまり、屈曲部Ub10及び屈曲部Ub11は、ビア導体Sb11を介して電気的に接続されている。
【0100】
屈曲部Uc11は、絶縁層P11を長さ方向Lに貫通するビア導体Sc11に接続されている。ビア導体Sc11は、屈曲部Uc11に加えて、ランド部Rc10にも接続されている。つまり、ランド部Rc10及び屈曲部Uc11は、ビア導体Sc11を介して電気的に接続されている。
【0101】
コイル導体Q12は、U字状であり、絶縁層P12の主面上に設けられている。
【0102】
コイル導体Q12は、ランド部Ra12及びランド部Rb12を別々の端部に有している。
【0103】
ランド部Rb12は、絶縁層P12を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb12に接続されている。ビア導体Sb12は、ランド部Rb12に加えて、屈曲部Ub11にも接続されている。つまり、屈曲部Ub11及びランド部Rb12は、ビア導体Sb12を介して電気的に接続されている。
【0104】
コイル導体Q12は、屈曲部Uc12及び屈曲部Ud12を有している。
【0105】
屈曲部Uc12は、絶縁層P12を長さ方向Lに貫通するビア導体Sc12に接続されている。ビア導体Sc12は、屈曲部Uc12に加えて、屈曲部Uc11にも接続されている。つまり、屈曲部Uc11及び屈曲部Uc12は、ビア導体Sc12を介して電気的に接続されている。
【0106】
屈曲部Ud12は、絶縁層P12を長さ方向Lに貫通するビア導体Sd12に接続されている。ビア導体Sd12は、屈曲部Ud12に加えて、ランド部Rd11にも接続されている。つまり、ランド部Rd11及び屈曲部Ud12は、ビア導体Sd12を介して電気的に接続されている。
【0107】
コイル導体Q13は、U字状であり、絶縁層P13の主面上に設けられている。
【0108】
コイル導体Q13は、ランド部Rb13及びランド部Rc13を別々の端部に有している。
【0109】
ランド部Rc13は、絶縁層P13を長さ方向Lに貫通するビア導体Sc13に接続されている。ビア導体Sc13は、ランド部Rc13に加えて、屈曲部Uc12にも接続されている。つまり、屈曲部Uc12及びランド部Rc13は、ビア導体Sc13を介して電気的に接続されている。
【0110】
コイル導体Q13は、屈曲部Ua13及び屈曲部Ud13を有している。
【0111】
屈曲部Ua13は、絶縁層P13を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa13に接続されている。ビア導体Sa13は、屈曲部Ua13に加えて、ランド部Ra12にも接続されている。つまり、ランド部Ra12及び屈曲部Ua13は、ビア導体Sa13を介して電気的に接続されている。
【0112】
屈曲部Ud13は、絶縁層P13を長さ方向Lに貫通するビア導体Sd13に接続されている。ビア導体Sd13は、屈曲部Ud13に加えて、屈曲部Ud12にも接続されている。つまり、屈曲部Ud12及び屈曲部Ud13は、ビア導体Sd13を介して電気的に接続されている。
【0113】
コイル導体Q14は、L字状であり、絶縁層P14の主面上に設けられている。
【0114】
コイル導体Q14は、ランド部Rb14及びランド部Rd14を別々の端部に有している。
【0115】
ランド部Rb14は、絶縁層P14を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb14に接続されている。ビア導体Sb14は、ランド部Rb14に加えて、ランド部Rb13にも接続されている。つまり、ランド部Rb13及びランド部Rb14は、ビア導体Sb14を介して電気的に接続されている。
【0116】
ランド部Rd14は、絶縁層P14を長さ方向Lに貫通するビア導体Sd14に接続されている。ビア導体Sd14は、ランド部Rd14に加えて、屈曲部Ud13にも接続されている。つまり、屈曲部Ud13及びランド部Rd14は、ビア導体Sd14を介して電気的に接続されている。
【0117】
コイル導体Q14は、屈曲部Ua14を有している。
【0118】
屈曲部Ua14は、絶縁層P14を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa14に接続されている。ビア導体Sa14は、屈曲部Ua14に加えて、屈曲部Ua13にも接続されている。つまり、屈曲部Ua13及び屈曲部Ua14は、ビア導体Sa14を介して電気的に接続されている。
【0119】
コイル導体Q15は、直線状であり、絶縁層P15の主面上に設けられている。
【0120】
コイル導体Q15は、ランド部Ra15及びランド部Rb15を別々の端部に有している。
【0121】
ランド部Ra15は、絶縁層P15を長さ方向Lに貫通するビア導体Sa15に接続されている。ビア導体Sa15は、ランド部Ra15に加えて、屈曲部Ua14にも接続されている。つまり、屈曲部Ua14及びランド部Ra15は、ビア導体Sa15を介して電気的に接続されている。
【0122】
ランド部Rb15は、絶縁層P15を長さ方向Lに貫通するビア導体Sb15に接続されている。ビア導体Sb15は、ランド部Rb15に加えて、ランド部Rb14にも接続されている。つまり、ランド部Rb14及びランド部Rb15は、ビア導体Sb15を介して電気的に接続されている。
【0123】
本明細書中、L字状は、2辺が略直交した形状と言えるものであればよく、2辺が厳密に直交した形状である必要はない。
【0124】
本明細書中、U字状は、3辺のうちで隣接する2辺が略直交した形状と言えるものであればよく、3辺のうちで隣接する2辺が厳密に直交した形状である必要はない。
【0125】
積層型コイル部品1では、上述したように、絶縁層P1、絶縁層P2、絶縁層P3、絶縁層P4、絶縁層P5、絶縁層P6、絶縁層P7、絶縁層P8、絶縁層P9、絶縁層P10、絶縁層P11、絶縁層P12、絶縁層P13、絶縁層P14、及び、絶縁層P15が、長さ方向Lに順に積層されている。これにより、コイル導体Q1、コイル導体Q2、コイル導体Q3、コイル導体Q4、コイル導体Q5、コイル導体Q6、コイル導体Q7、コイル導体Q8、コイル導体Q9、コイル導体Q10、コイル導体Q11、コイル導体Q12、コイル導体Q13、コイル導体Q14、及び、コイル導体Q15が、上述した絶縁層とともに長さ方向Lに順に積層されつつ、上述したビア導体を介して電気的に接続され、結果的に、コイル30Aが構成される。
【0126】
コイル30Aは、例えば、ソレノイド状である。
【0127】
長さ方向Lから見たとき、コイル30Aは、
図2及び
図3に示すような直線部で構成される形状(例えば、多角形状)であってもよいし、曲線部で構成される形状(例えば、円形状)であってもよいし、直線部及び曲線部で構成される形状であってもよい。
【0128】
本発明の積層型コイル部品において、上記積層方向と上記コイルのコイル軸の方向とは、同じ方向に沿って上記素体の実装面に平行であることが好ましい。
【0129】
素体10Aにおいて、絶縁層の積層方向は、長さ方向Lに平行である。つまり、絶縁層の積層方向は、実装面である素体10Aの第1主面12aに平行である。
【0130】
コイル30Aは、コイル軸Cを有している。コイル30Aのコイル軸Cは、長さ方向Lから見たときのコイル30Aの中心軸に該当し、長さ方向Lに延びている。つまり、コイル30Aのコイル軸Cの方向は、実装面である素体10Aの第1主面12aに平行である。
【0131】
したがって、積層型コイル部品1において、絶縁層の積層方向とコイル30Aのコイル軸Cの方向とは、同じ長さ方向Lに沿って、実装面である素体10Aの第1主面12aに平行である。
【0132】
積層型コイル部品1では、絶縁層の積層方向とコイル30Aのコイル軸Cの方向とが、同じ長さ方向Lに沿って、実装面である素体10Aの第1主面12aに平行である態様を示したが、絶縁層の積層方向とコイルのコイル軸の方向とが、実装面である素体の第1主面に直交していてもよい。
【0133】
積層型コイル部品1において、長さ方向Lに積層された複数のコイル導体は、第1積層部Ea1を含んでいる。
【0134】
第1積層部Ea1は、3つの隣り合うコイル導体Q3、コイル導体Q4、及び、コイル導体Q5からなる。
【0135】
第1積層部Ea1は、第1積層部Ea1を構成するすべてのコイル導体、すなわち、コイル導体Q3、コイル導体Q4、及び、コイル導体Q5が長さ方向Lから見たときに重なり合う第1並走区間Ma1を有している。
【0136】
第1並走区間Ma1は、ビア導体Sc4、ビア導体Sd4、ビア導体Sc5、及び、ビア導体Sd5により並列接続されている。つまり、コイル導体Q3、コイル導体Q4、及び、コイル導体Q5は、第1並走区間Ma1において並列接続されている。
【0137】
コイル導体Q3、コイル導体Q4、及び、コイル導体Q5は、第1並走区間Ma1以外において、長さ方向Lから見たときにすべて重なり合っていない。
【0138】
積層型コイル部品1において、長さ方向Lに積層された複数のコイル導体は、第1積層部Ea1に加えて、第2積層部Fa1を更に含んでいる。
【0139】
第2積層部Fa1は、第1積層部Ea1と同数である3つの隣り合うコイル導体Q7、コイル導体Q8、及び、コイル導体Q9からなる。
【0140】
第2積層部Fa1は、第2積層部Fa1を構成するすべてのコイル導体、すなわち、コイル導体Q7、コイル導体Q8、及び、コイル導体Q9が長さ方向Lから見たときに重なり合う第2並走区間Na1を有している。
【0141】
第2並走区間Na1は、ビア導体Sc8、ビア導体Sd8、ビア導体Sc9、及び、ビア導体Sd9により並列接続されている。つまり、コイル導体Q7、コイル導体Q8、及び、コイル導体Q9は、第2並走区間Na1において並列接続されている。
【0142】
コイル導体Q7、コイル導体Q8、及び、コイル導体Q9は、第2並走区間Na1以外において、長さ方向Lから見たときにすべて重なり合っていない。
【0143】
第1並走区間Ma1及び第2並走区間Na1は、長さ方向Lから見たときに重なり合っている。
【0144】
以上では、積層型コイル部品1において、3つの隣り合うコイル導体からなる積層部として、第1積層部Ea1及び第2積層部Fa1を例示したが、3つの隣り合うコイル導体の他の組み合わせからなる積層部についても同様である。つまり、積層型コイル部品1において、3つの隣り合うコイル導体は、これらのコイル導体が長さ方向Lから見たときに重なり合う並走区間において並列接続されている。
【0145】
積層型コイル部品1では、3つの隣り合うコイル導体が並走区間において並列接続されているため、その分、コイル30Aの電流経路に沿う方向、すなわち、コイル導体が延びる方向に直交するコイル30Aの断面積が増加する。よって、積層型コイル部品1では、コイル30Aの直流抵抗(Rdc)が低いものとなり、コイル30Aに大電流を流すことが可能となる。
【0146】
本発明の積層型コイル部品において、上記積層部を構成するすべての上記コイル導体の長さは、上記コイルの3/4ターンの長さであってもよい。
【0147】
積層型コイル部品1において、例えば、第1積層部Ea1を構成するすべてのコイル導体の長さは、コイル30Aの3/4ターンの長さである。また、積層型コイル部品1において、例えば、第2積層部Fa1を構成するすべてのコイル導体の長さは、コイル30Aの3/4ターンの長さである。
【0148】
本明細書中、コイル導体の長さは、積層方向(
図2及び
図3では、長さ方向L)から見たときの、積層方向に直交する平面上でのコイル導体が延びる方向の長さを意味する。
【0149】
素体10Aは、絶縁層Pxを更に含んでいる。
【0150】
絶縁層Pxは、絶縁層P1の第1端面11a側、すなわち、絶縁層P1の絶縁層P2と反対側に積層されている。
【0151】
絶縁層Pxの主面上には、引き出し用ランド部Raxが設けられている。引き出し用ランド部Raxは、絶縁層Pxを長さ方向Lに貫通する引き出し用ビア導体Saaxに接続されている。引き出し用ランド部Raxは、引き出し用ビア導体Saaxに加えて、絶縁層P1を長さ方向Lに貫通する引き出し用ビア導体Saa1にも接続されている。これにより、引き出し用ランド部Rax、引き出し用ビア導体Saax、及び、引き出し用ビア導体Saa1からなる第1引き出し導体41が構成される。
【0152】
引き出し用ビア導体Saa1は、引き出し用ランド部Raxに加えて、ランド部Ra1にも接続されている。つまり、第1引き出し導体41は、コイル30Aに接続されている。
【0153】
図4は、
図1に示す積層型コイル部品において、素体の第1端面の近傍を高さ方向から断面視した状態の一例を拡大して示す断面模式図である。
【0154】
図4に示すように、絶縁層Pxが絶縁層P1の絶縁層P2と反対側に積層されていることにより、第1引き出し導体41は、素体10Aの第1端面11aから露出する。第1引き出し導体41の露出部分は、素体10Aの第1端面11a上に設けられた第1外部電極21に接続されている。
【0155】
よって、コイル30A及び第1外部電極21は、第1引き出し導体41を介して電気的に接続されている。
【0156】
なお、
図4では、説明の便宜上、絶縁層間の境界が示されているが、実際にはこれらの境界が明瞭に現れていない。
【0157】
引き出し用ランド部Raxは、引き出し用ビア導体Saaxと離隔して設けられた、絶縁層Pxを長さ方向Lに貫通する引き出し用ビア導体Sabxに接続されている。引き出し用ランド部Raxは、引き出し用ビア導体Sabxに加えて、絶縁層P1を長さ方向Lに貫通する引き出し用ビア導体Sab1にも接続されている。これにより、引き出し用ランド部Rax、引き出し用ビア導体Sabx、及び、引き出し用ビア導体Sab1からなる第2引き出し導体42が構成される。一方、引き出し用ビア導体Sab1は、引き出し用ランド部Raxに加えて、ランド部Ra1にも接続されている。つまり、第2引き出し導体42は、コイル30Aに接続されている。
【0158】
絶縁層Pxが絶縁層P1の絶縁層P2と反対側に積層されていることにより、第2引き出し導体42は、素体10Aの第1端面11aから露出する。第2引き出し導体42の露出部分は、素体10Aの第1端面11a上に設けられた第1外部電極21に接続されている。第2引き出し導体42と第1外部電極21との接続態様を示す断面図は、第1引き出し導体41と第1外部電極21との接続態様を示す断面図である
図4と同様である。
【0159】
よって、コイル30A及び第1外部電極21は、第2引き出し導体42を介して電気的に接続されている。
【0160】
以上のことから、コイル30Aは、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42を介して、同一の第1外部電極21に電気的に接続されている。これにより、コイル30A及び第1外部電極21の間の電流経路を、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42の2つの経路にすることができるため、1つの引き出し導体当たりの電流密度を低くすることができる。よって、積層型コイル部品1では、例えば、コイル30A及び第1外部電極21の間に大電流を流しても、コイル30A及び第1外部電極21が1つの引き出し導体のみで電気的に接続されている場合と比較して、1つの引き出し導体における発熱及びエレクトロマイグレーションの発生を抑制できる。コイル30A及び第1外部電極21が1つの引き出し導体のみで電気的に接続されている場合、引き出し導体において発熱及びエレクトロマイグレーションによる断線が発生すると、積層型コイル部品が機能しなくなるおそれがある。これに対して、積層型コイル部品1では、コイル30A及び第1外部電極21の間に大電流を流しても、1つの引き出し導体における発熱及びエレクトロマイグレーションの発生を抑制できるため、引き出し導体の断線を抑制できる。更に、積層型コイル部品1では、万が一、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42の一方に断線が発生しても、他方により積層型コイル部品の機能を維持できる。
【0161】
絶縁層Pxの層数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0162】
絶縁層Pxの層数が複数である場合、第1引き出し導体41は、複数の引き出し用ランド部Rax及び複数の引き出し用ビア導体Saaxが交互に接続された上で、引き出し用ビア導体Saa1が更に接続されてなる。
【0163】
絶縁層Pxの層数が複数である場合、第2引き出し導体42は、複数の引き出し用ランド部Rax及び複数の引き出し用ビア導体Sabxが交互に接続された上で、引き出し用ビア導体Sab1が更に接続されてなる。
【0164】
素体10Aは、絶縁層Pyを更に含んでいる。
【0165】
絶縁層Pyは、絶縁層P15の第2端面11b側、すなわち、絶縁層P15の絶縁層P14と反対側に積層されている。
【0166】
絶縁層Pyの主面上には、引き出し用ランド部Rbyが設けられている。引き出し用ランド部Rbyは、絶縁層Pyを長さ方向Lに貫通する引き出し用ビア導体Sbayに接続されている。これにより、引き出し用ランド部Rby及び引き出し用ビア導体Sbayからなる第3引き出し導体43が構成される。
【0167】
引き出し用ビア導体Sbayは、引き出し用ランド部Rbyに加えて、ランド部Rb15にも接続されている。つまり、第3引き出し導体43は、コイル30Aに接続されている。
【0168】
図5は、
図1に示す積層型コイル部品において、素体の第2端面の近傍を高さ方向から断面視した状態の一例を拡大して示す断面模式図である。
【0169】
図5に示すように、絶縁層Pyが絶縁層P15の絶縁層P14と反対側に積層されていることにより、第3引き出し導体43は、素体10Aの第2端面11bから露出する。第3引き出し導体43の露出部分は、素体10Aの第2端面11b上に設けられた第2外部電極22に接続されている。
【0170】
よって、コイル30A及び第2外部電極22は、第3引き出し導体43を介して電気的に接続されている。
【0171】
なお、
図5では、説明の便宜上、絶縁層間の境界が示されているが、実際にはこれらの境界が明瞭に現れていない。
【0172】
引き出し用ランド部Rbyは、引き出し用ビア導体Sbayと離隔して設けられた、絶縁層Pyを長さ方向Lに貫通する引き出し用ビア導体Sbbyに接続されている。これにより、引き出し用ランド部Rby及び引き出し用ビア導体Sbbyからなる第4引き出し導体44が構成される。一方、引き出し用ビア導体Sbbyは、引き出し用ランド部Rbyに加えて、ランド部Rb15にも接続されている。つまり、第4引き出し導体44は、コイル30Aに接続されている。
【0173】
絶縁層Pyが絶縁層P15の絶縁層P14と反対側に積層されていることにより、第4引き出し導体44は、素体10Aの第2端面11bから露出する。第4引き出し導体44の露出部分は、素体10Aの第2端面11b上に設けられた第2外部電極22に接続されている。第4引き出し導体44と第2外部電極22との接続態様を示す断面図は、第3引き出し導体43と第2外部電極22との接続態様を示す断面図である
図5と同様である。
【0174】
よって、コイル30A及び第2外部電極22は、第4引き出し導体44を介して電気的に接続されている。
【0175】
以上のことから、コイル30Aは、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44を介して、同一の第2外部電極22に電気的に接続されている。これにより、コイル30A及び第2外部電極22の間の電流経路を、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44の2つの経路にすることができるため、1つの引き出し導体当たりの電流密度を低くすることができる。よって、積層型コイル部品1では、例えば、コイル30A及び第2外部電極22の間に大電流を流しても、コイル30A及び第2外部電極22が1つの引き出し導体のみで電気的に接続されている場合と比較して、1つの引き出し導体における発熱及びエレクトロマイグレーションの発生を抑制できる。コイル30A及び第2外部電極22が1つの引き出し導体のみで電気的に接続されている場合、引き出し導体において発熱及びエレクトロマイグレーションによる断線が発生すると、積層型コイル部品が機能しなくなるおそれがある。これに対して、積層型コイル部品1では、コイル30A及び第2外部電極22の間に大電流を流しても、1つの引き出し導体における発熱及びエレクトロマイグレーションの発生を抑制できるため、引き出し導体の断線を抑制できる。更に、積層型コイル部品1では、万が一、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44の一方に断線が発生しても、他方により積層型コイル部品の機能を維持できる。
【0176】
絶縁層Pyの層数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0177】
絶縁層Pyの層数が複数である場合、第3引き出し導体43は、複数の引き出し用ランド部Rby及び複数の引き出し用ビア導体Sbayが交互に接続されてなる。
【0178】
絶縁層Pyの層数が複数である場合、第4引き出し導体44は、複数の引き出し用ランド部Rby及び複数の引き出し用ビア導体Sbbyが交互に接続されてなる。
【0179】
絶縁層Px及び絶縁層Pyの層数は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0180】
各々のコイル導体(ランド部を含む)、各々のビア導体、及び、各々の引き出し用ビア導体の構成材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0181】
長さ方向Lから見たとき、各々のコイル導体は、
図2及び
図3に示すような直線部で構成される形状であってもよいし、曲線部で構成される形状であってもよいし、直線部及び曲線部で構成される形状であってもよい。
【0182】
長さ方向Lから見たとき、各々のランド部は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0183】
長さ方向Lから見たとき、各々のビア導体は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0184】
長さ方向Lから見たとき、各々の引き出し用ビア導体は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0185】
各々のコイル導体、及び、各々の引き出し導体は、独立して、ランド部を有していなくてもよい。
【0186】
積層型コイル部品1において、引き出し用ビア導体の径は、100μm以下である。これにより、引き出し導体の作製過程において、引き出し用ビア導体の熱収縮具合が緩和される。そのため、素体10Aの表面から露出した引き出し導体の露出部分が、周囲の絶縁層に対して凹みにくくなる。その結果、積層型コイル部品1では、引き出し導体の露出部分の凹みに起因する外観不良の発生が抑制される。
【0187】
一方、積層型コイル部品1では、引き出し用ビア導体の径が100μm以下であることにより、引き出し用ビア導体の断面積が小さくなり、結果的に、引き出し導体の直流抵抗が高くなるおそれがある。これに対して、積層型コイル部品1では、上述したように、コイル30Aが2つの引き出し導体を介して同一の外部電極に電気的に接続されているため、1つの引き出し導体当たりの電流密度を低くすることができる。積層型コイル部品1では、1つの引き出し導体当たりの電流密度を低くすることにより、引き出し導体の直流抵抗が高くなったとしても、その影響を抑制することができる。
【0188】
積層型コイル部品1では、第1引き出し導体41、第2引き出し導体42、第3引き出し導体43、及び、第4引き出し導体44からなる群より選択される少なくとも1つの引き出し導体について、その引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の径が、100μm以下であればよい。
【0189】
積層型コイル部品1では、第1引き出し導体41、第2引き出し導体42、第3引き出し導体43、及び、第4引き出し導体44を構成する引き出し用ビア導体の径が、すべて100μm以下であることが特に好ましい。
【0190】
積層型コイル部品1において、引き出し導体の直流抵抗が高くなり過ぎないようにする観点から、引き出し用ビア導体の径は、好ましくは70μm以上である。
【0191】
積層型コイル部品1では、第1引き出し導体41、第2引き出し導体42、第3引き出し導体43、及び、第4引き出し導体44からなる群より選択される少なくとも1つの引き出し導体について、その引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の径が、70μm以上であることが好ましい。
【0192】
積層型コイル部品1では、第1引き出し導体41、第2引き出し導体42、第3引き出し導体43、及び、第4引き出し導体44を構成する引き出し用ビア導体の径が、すべて70μm以上であることが特に好ましい。
【0193】
積層型コイル部品1において、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の径は、以下のようにして定められる。
【0194】
まず、積層型コイル部品1を素体10Aの第1側面13a側から第2側面13b側に向かって研磨しながら、幅方向Wに直交する断面、すなわち、長さ方向L及び高さ方向Tに沿う断面を、幅方向Wに沿って逐次観察しつつ、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体(引き出し用ビア導体Saax及び引き出し用ビア導体Saa1を含む)の断面画像をデジタルマイクロスコープで撮影する。次に、撮影された断面画像毎に、画像解析ソフトで画像解析を行うことにより、引き出し用ビア導体の高さ方向Tにおける寸法を測定する。そして、断面画像毎に測定された引き出し用ビア導体の高さ方向Tにおける寸法のうち、最大値を、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の径と定める。
【0195】
第2引き出し導体42、第3引き出し導体43、及び、第4引き出し導体44を構成する引き出し用ビア導体の径についても、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の径と同様にして定められる。
【0196】
本発明の積層型コイル部品において、上記引き出し導体が延びる方向に直交する第1断面と、上記コイル導体が延びる方向に直交する第2断面と、を定めるとき、同一の上記第1断面で定められる、同一の上記外部電極に接続された複数の上記引き出し導体を構成する上記引き出し用ビア導体の断面積の合計は、同一の上記第2断面で定められる、上記並走区間を構成する上記コイル導体の断面積の合計以上であることが好ましい。
【0197】
積層型コイル部品1において、引き出し導体が延びる方向に直交する第1断面と、コイル導体が延びる方向に直交する第2断面と、を定める。以下では、
図2及び
図3に準じて、引き出し導体が延びる長さ方向Lに直交する断面、すなわち、高さ方向T及び幅方向Wに沿う断面を、第1断面と定める。また、
図2及び
図3に準じて、コイル導体が延びる高さ方向Tに直交する断面、すなわち、長さ方向L及び幅方向Wに沿う断面を、第2断面と定める。なお、
図2及び
図3に示すように、コイル導体は高さ方向Tとは別に幅方向Wにも延びているため、幅方向Wに直交する断面、すなわち、長さ方向L及び高さ方向Tに沿う断面を、第2断面と定めてもよい。
【0198】
積層型コイル部品1において、同一の第1断面で定められる、同一の外部電極に接続された2つの引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積の合計は、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成するコイル導体の断面積の合計以上である。より具体的には、積層型コイル部品1において、同一の第1断面で定められる、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第2引き出し導体42を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計は、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計以上である。更に、積層型コイル部品1において、同一の第1断面で定められる、第3引き出し導体43を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第4引き出し導体44を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計は、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計以上である。これにより、1つの引き出し導体当たりの電流密度を充分に低くすることができる。そのため、積層型コイル部品1では、コイル30A及び外部電極の間に大電流を流しても、1つの引き出し導体における発熱及びエレクトロマイグレーションの発生を抑制できる。
【0199】
積層型コイル部品1では、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42の組み合わせと、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44の組み合わせとの少なくとも一方について、同一の第1断面で定められる、引き出し用ビア導体の断面積の合計が、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計以上であることが好ましい。
【0200】
積層型コイル部品1では、上述したように、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42の組み合わせと、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44の組み合わせとの両方について、同一の第1断面で定められる、引き出し用ビア導体の断面積の合計が、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計以上であることが特に好ましい。
【0201】
積層型コイル部品1において、同一の第1断面で定められる、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第2引き出し導体42を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計は、以下のようにして定められる。
【0202】
まず、積層型コイル部品1を素体10Aの第1側面13a側から第2側面13b側に向かって研磨しながら、幅方向Wに直交する断面、すなわち、長さ方向L及び高さ方向Tに沿う断面を、幅方向Wに沿って逐次観察しつつ、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体(引き出し用ビア導体Saax及び引き出し用ビア導体Saa1を含む)と、第2引き出し導体42を構成する引き出し用ビア導体(引き出し用ビア導体Sabx及び引き出し用ビア導体Sab1を含む)との断面画像をデジタルマイクロスコープで撮影する。次に、撮影された断面画像毎に、画像解析ソフトで画像解析を行うことにより、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の高さ方向Tにおける寸法を測定する。そして、断面画像毎に測定された引き出し用ビア導体の高さ方向Tにおける寸法のうちの最大値を、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の径と定め、この径から算出される円相当面積を、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の断面積と定める。同様にして、第2引き出し導体42を構成する引き出し用ビア導体の断面積を定める。そして、上述した方法で各々定められた、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第2引き出し導体42を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計を、同一の第1断面で定められる、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第2引き出し導体42を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計と定める。
【0203】
積層型コイル部品1において、同一の第1断面で定められる、第3引き出し導体43を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第4引き出し導体44を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計についても、第1引き出し導体41を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第2引き出し導体42を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計と同様にして定められる。
【0204】
積層型コイル部品1において、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計は、以下のようにして定められる。
【0205】
図6は、
図2及び
図3に示す積層型コイル部品において、並走区間を構成する3つのコイル導体を高さ方向から断面視した状態の一例を拡大して示す断面模式図である。
【0206】
まず、積層型コイル部品1を素体10Aの第2主面12b側から第1主面12a側に向かって研磨しながら、長さ方向L及び幅方向Wに沿う第2断面を、高さ方向Tに沿って逐次観察しつつ、
図6に示すような、第1並走区間Ma1を構成するコイル導体Q3、コイル導体Q4、及び、コイル導体Q5の断面画像をデジタルマイクロスコープで撮影する。この際、第1並走区間Ma1を構成するコイル導体Q3、コイル導体Q4、及び、コイル導体Q5について、ランド部を除いた部分の断面画像を撮影する。次に、撮影された断面画像毎に、画像解析ソフトで画像解析を行うことにより、コイル導体Q3、コイル導体Q4、及び、コイル導体Q5の断面積の合計を測定する。そして、断面画像毎に測定された、コイル導体の断面積の合計のうち、最大値を、同一の第2断面で定められる、第1並走区間Ma1を構成するコイル導体の断面積の合計と定める。
【0207】
積層型コイル部品1では、3つの隣り合うコイル導体が長さ方向Lから見たときに重なり合う並走区間が、第1並走区間Ma1以外(例えば、第2並走区間Na1)にも存在するが、第1並走区間Ma1以外の並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計についても、第1並走区間Ma1を構成するコイル導体の断面積の合計と同様にして定められる。
【0208】
積層型コイル部品1では、すべての並走区間のうちの少なくとも1つについて、同一の第1断面で定められる、同一の外部電極に接続された2つの引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積の合計が、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計以上であることが好ましい。
【0209】
本発明の積層型コイル部品において、上記積層方向に積層された複数の上記コイル導体は、上記積層方向の最外位置に存在する最外コイル導体を含んでいてもよく、上記最外コイル導体は、ランド部を端部に有していてもよく、複数の上記引き出し導体は、同一の上記ランド部に接続されていることが好ましい。
【0210】
積層型コイル部品1において、長さ方向Lに積層された複数のコイル導体は、長さ方向Lの最外位置に存在する最外コイル導体として、コイル導体Q1を含んでいる。コイル導体Q1は、ランド部Ra1を端部に有している。第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42は、同一のランド部Ra1に接続されている。
【0211】
積層型コイル部品1では、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42の両方が、最外コイル導体であるコイル導体Q1のランド部Ra1に接続されている態様を例示したが、コイル30Aに対する第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42の接続位置は、上記態様に限定されない。例えば、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42は、一方がコイル導体Q1のランド部Ra1に接続され、他方がコイル導体Q1のランド部Rb1に接続されていてもよい。また、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42は、一方がコイル導体Q1のランド部Ra1又はランド部Rb1に接続され、他方がコイル導体Q1のランド部Ra1及びランド部Rb1以外の部分に接続されていてもよい。更に、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42は、両方がコイル導体Q1のランド部Ra1及びランド部Rb1以外の部分に接続されていてもよい。
【0212】
積層型コイル部品1において、長さ方向Lに積層された複数のコイル導体は、長さ方向Lの最外位置に存在する最外コイル導体として、コイル導体Q1の他に、コイル導体Q15を含んでいる。コイル導体Q15は、ランド部Rb15を端部に有している。第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44は、同一のランド部Rb15に接続されている。
【0213】
積層型コイル部品1では、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44の両方が、最外コイル導体であるコイル導体Q15のランド部Rb15に接続されている態様を例示したが、コイル30Aに対する第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44の接続位置は、上記態様に限定されない。例えば、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44は、一方がコイル導体Q15のランド部Rb15に接続され、他方がコイル導体Q15のランド部Ra15に接続されていてもよい。また、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44は、一方がコイル導体Q15のランド部Ra15又はランド部Rb15に接続され、他方がコイル導体Q15のランド部Ra15及びランド部Rb15以外の部分に接続されていてもよい。更に、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44は、両方がコイル導体Q15のランド部Ra15及びランド部Rb15以外の部分に接続されていてもよい。
【0214】
積層型コイル部品1は、引き出し導体として、第1引き出し導体41及び第2引き出し導体42のみを有していてもよいし、第3引き出し導体43及び第4引き出し導体44のみを有していてもよいし、第1引き出し導体41、第2引き出し導体42、第3引き出し導体43、及び、第4引き出し導体44のすべてを有していてもよい。
【0215】
以上では、並走区間で並列接続されるコイル導体の数が3つである態様を例示したが、並走区間で並列接続されるコイル導体の数が2つである態様についても同様であり、更には、並走区間で並列接続されるコイル導体の数が4つ以上である態様についても同様である。中でも、コイルの直流抵抗を低くする観点から、並走区間で並列接続されるコイル導体の数は、3つ以上であることが好ましい。つまり、本発明の積層型コイル部品において、上記積層部は、3つ以上の上記コイル導体からなることが好ましい。
【0216】
以上では、同一の外部電極に接続される引き出し導体の数が2つである態様を例示したが、同一の外部電極に接続される引き出し導体の数が3つ以上である態様についても同様である。
【0217】
積層型コイル部品1は、例えば、以下の方法で製造される。
【0218】
<磁性材料の作製工程>
まず、Fe2O3、ZnO、CuO、及び、NiOを所定の比率になるように秤量する。
【0219】
次に、これらの秤量物、純水等を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕する。混合・粉砕時間については、例えば、4時間以上、8時間以下とする。
【0220】
そして、得られた粉砕物を乾燥させた後、仮焼成する。仮焼成温度については、例えば、700℃以上、800℃以下とする。仮焼成時間については、例えば、2時間以上、5時間以下とする。
【0221】
このようにして、粉末状の磁性材料、より具体的には、粉末状の磁性フェライト材料を作製する。
【0222】
フェライト材料は、Ni-Cu-Zn系フェライト材料であることが好ましい。
【0223】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、全量を100mоl%としたとき、FeをFe2O3換算で40mol%以上、49.5mol%以下、ZnをZnO換算で2mol%以上、35mol%以下、CuをCuO換算で6mol%以上、13mol%以下、NiをNiO換算で10mol%以上、45mol%以下含むことが好ましい。
【0224】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、Co、Bi、Sn、Mn等の添加物を更に含んでいてもよい。
【0225】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、不可避不純物を更に含んでいてもよい。
【0226】
<グリーンシートの作製工程>
まず、磁性材料と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤と、等を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製する。
【0227】
次に、スラリーを、ドクターブレード法等で、所定の厚みのシート状に成形した後、所定の形状に打ち抜くことにより、グリーンシートを作製する。グリーンシートの厚みについては、例えば、20μm以上、30μm以下とする。グリーンシートの形状については、例えば、矩形状とする。
【0228】
グリーンシートの材料としては、磁性材料に代えて、ホウケイ酸ガラス材料等の非磁性材料を用いてもよいし、磁性材料及び非磁性材料の混合材料を用いてもよい。
【0229】
<導体パターンの形成工程>
まず、グリーンシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことにより、ビアホールを形成する。
【0230】
次に、Agペースト等の導電性ペーストを、スクリーン印刷法等で、ビアホールに充填しつつグリーンシートの表面に塗工する。これにより、グリーンシートに対して、ビア導体用導体パターンをビアホールに形成しつつ、ビア導体用導体パターンに接続されたコイル導体用導体パターンを表面上に形成する。このようにして、グリーンシートにコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンが形成されたコイルシートを作製する。コイルシートについては複数枚作製し、各コイルシートに対して、
図2及び
図3に示すコイル導体に相当するコイル導体用導体パターンと、
図2及び
図3に示すコイル導体に接続されたビア導体(
図2及び
図3に示す、引き出し用ビア導体Saa1及び引き出し用ビア導体Sab1を含む)に相当するビア導体用導体パターンとを形成する。
【0231】
また、Agペースト等の導電性ペーストを、スクリーン印刷法等で、ビアホールに充填しつつグリーンシートの表面に塗工する。これにより、グリーンシートに対して、ビア導体用導体パターンをビアホールに形成しつつ、ビア導体用導体パターンに接続されたランド部用導体パターンを表面上に形成する。このようにして、グリーンシートにランド部用導体パターン及びビア導体用導体パターンが形成されたビアシートを、コイルシートとは別に作製する。ビアシートについても複数枚作製し、各ビアシートに対して、
図2及び
図3に示す引き出し導体を構成する引き出し用ランド部に相当するランド部用導体パターンと、
図2及び
図3に示す引き出し用ランド部に接続された引き出し用ビア導体(
図2及び
図3に示す、引き出し用ビア導体Saa1及び引き出し用ビア導体Sab1を除く)に相当するビア導体用導体パターンとを形成する。
【0232】
コイルシート及びビアシートを作製する際、後に引き出し用ビア導体となるビア導体用導体パターンのうちの最大径が、後述する焼成後に100μm以下となるようする。
【0233】
<積層体ブロックの作製工程>
コイルシート及びビアシートを、
図2及び
図3に相当する順序で積層方向(
図2及び
図3では、長さ方向L)に積層した後、熱圧着することにより、積層体ブロックを作製する。
【0234】
<素体及びコイルの作製工程>
まず、積層体ブロックをダイサー等で所定の大きさに切断することにより、個片化されたチップを作製する。
【0235】
次に、個片化されたチップを焼成する。焼成温度については、例えば、900℃以上、920℃以下とする。焼成時間については、例えば、2時間以上、4時間以下とする。
【0236】
個片化されたチップを焼成すると、コイルシート及びビアシートのグリーンシートは、絶縁層となる。その結果、複数の絶縁層が、積層方向(
図2及び
図3では、長さ方向L)に積層されてなる素体が作製される。
【0237】
個片化されたチップを焼成すると、コイルシートのコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンは、各々、コイル導体及びビア導体(
図2及び
図3に示す、引き出し用ビア導体Saa1及び引き出し用ビア導体Sab1を含む)となる。その結果、積層方向(
図2及び
図3では、長さ方向L)に積層された複数のコイル導体がビア導体を介して電気的に接続されてなるコイルが作製される。
【0238】
以上により、素体と、素体の内部に設けられたコイルとが作製される。
【0239】
一方、個片化されたチップを焼成すると、ビアシートのランド部用導体パターン及びビア導体用導体パターンは、各々、引き出し用ランド部及び引き出し用ビア導体となる。その結果、積層方向(
図2及び
図3では、長さ方向L)に積層された複数の引き出し用ランド部及び複数の引き出し用ビア導体が交互に接続されてなる、第1引き出し導体、第2引き出し導体、第3引き出し導体、及び、第4引き出し導体が作製される。第1引き出し導体及び第2引き出し導体は、素体の第1端面から露出することになる。第3引き出し導体及び第4引き出し導体は、素体の第2端面から露出することになる。
【0240】
素体に対しては、例えば、バレル研磨を施すことにより、角部及び稜線部に丸みを付けてもよい。
【0241】
<外部電極の形成工程>
まず、Ag及びガラスフリットを含むペースト等の導電性ペーストを塗工することにより、素体の第1端面から露出した第1引き出し導体及び第2引き出し導体に接続された第1塗膜を、素体の第1端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延びるように形成する。
【0242】
また、Ag及びガラスフリットを含むペースト等の導電性ペーストを塗工することにより、素体の第2端面から露出した第3引き出し導体及び第4引き出し導体に接続された第2塗膜を、素体の第2端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延びるように形成する。
【0243】
このようにして、第1塗膜及び第2塗膜を、素体の表面上で互いに離隔した位置に形成する。
【0244】
第1塗膜及び第2塗膜を形成する際、第1塗膜及び第2塗膜を、異なるタイミングで形成してもよいし、同じタイミングで形成してもよい。
【0245】
第1塗膜及び第2塗膜を異なるタイミングで形成する場合、第1塗膜、第2塗膜の順に形成してもよいし、第2塗膜、第1塗膜の順に形成してもよい。
【0246】
次に、第1塗膜を焼き付けることにより、素体の第1端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延び、かつ、第1引き出し導体及び第2引き出し導体に接続された第1下地電極を形成する。
【0247】
また、第2塗膜を焼き付けることにより、素体の第2端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延び、かつ、第3引き出し導体及び第4引き出し導体に接続された第2下地電極を形成する。
【0248】
第1塗膜及び第2塗膜の焼き付け温度については、例えば、800℃以上、820℃以下とする。
【0249】
第1下地電極及び第2下地電極の厚みについては、例えば、5μmとする。
【0250】
そして、第1下地電極の表面上に、電解めっき等で、Niめっき電極及びSnめっき電極を順に形成する。これにより、第1下地電極、Niめっき電極、及び、Snめっき電極を素体の表面側から順に有する第1外部電極が形成される。
【0251】
また、第2下地電極の表面上に、電解めっき等で、Niめっき電極及びSnめっき電極を順に形成する。これにより、第2下地電極、Niめっき電極、及び、Snめっき電極を素体の表面側から順に有する第2外部電極が形成される。
【0252】
このようにして、第1引き出し導体及び第2引き出し導体を介してコイルに電気的に接続された第1外部電極と、第3引き出し導体及び第4引き出し導体を介してコイルに電気的に接続された第2外部電極とが、素体の表面上に形成される。
【0253】
以上により、積層型コイル部品1が製造される。
【実施例】
【0254】
以下、本発明の積層型コイル部品を具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0255】
[実施例1]
実施例1の積層型コイル部品を、以下の方法で製造した。
【0256】
<磁性材料の作製工程>
まず、Fe2O3、ZnO、CuO、及び、NiOを所定の比率になるように秤量した。
【0257】
次に、これらの秤量物及び純水を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕した。混合・粉砕時間については、6時間とした。
【0258】
そして、得られた粉砕物を乾燥させた後、仮焼成した。仮焼成温度については、800℃とした。仮焼成時間については、3時間とした。
【0259】
このようにして、粉末状の磁性材料、より具体的には、粉末状の磁性フェライト材料を作製した。
【0260】
<グリーンシートの作製工程>
まず、磁性材料と、有機バインダとしてのポリビニルブチラール系樹脂と、有機溶剤としてのエタノール及びトルエンと、可塑剤とを、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製した。
【0261】
次に、スラリーを、ドクターブレード法でシート状に成形した後、打ち抜くことにより、グリーンシートを作製した。グリーンシートの厚みについては、25μmとした。グリーンシートの形状については、矩形状とした。
【0262】
<導体パターンの形成工程>
まず、グリーンシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことにより、ビアホールを形成した。
【0263】
次に、Agペーストを、スクリーン印刷法で、ビアホールに充填しつつグリーンシートの表面に塗工した。これにより、グリーンシートに対して、ビア導体用導体パターンをビアホールに形成しつつ、ビア導体用導体パターンに接続されたコイル導体用導体パターンを表面上に形成した。このようにして、グリーンシートにコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンが形成されたコイルシートを作製した。コイルシートについては複数枚作製し、各コイルシートに対して、
図2及び
図3に示すコイル導体に相当するコイル導体用導体パターンと、
図2及び
図3に示すコイル導体に接続されたビア導体(
図2及び
図3に示す、引き出し用ビア導体Saa1及び引き出し用ビア導体Sab1を含む)に相当するビア導体用導体パターンとを形成した。
【0264】
コイルシートを作製する際、コイル導体用導体パターンの長さ方向における寸法及び幅方向における寸法が、各々、後述する焼成後に17.5μm及び200μmとなるようにした。
【0265】
また、Agペーストを、スクリーン印刷法で、ビアホールに充填しつつグリーンシートの表面に塗工した。これにより、グリーンシートに対して、ビア導体用導体パターンをビアホールに形成しつつ、ビア導体用導体パターンに接続されたランド部用導体パターンを表面上に形成した。このようにして、グリーンシートにランド部用導体パターン及びビア導体用導体パターンが形成されたビアシートを、コイルシートとは別に作製した。ビアシートについても複数枚作製し、各ビアシートに対して、
図2及び
図3に示す引き出し導体を構成する引き出し用ランド部に相当するランド部用導体パターンと、
図2及び
図3に示す引き出し用ランド部に接続された引き出し用ビア導体(
図2及び
図3に示す、引き出し用ビア導体Saa1及び引き出し用ビア導体Sab1を除く)に相当するビア導体用導体パターンとを形成した。
【0266】
コイルシート及びビアシートを作製する際、後に引き出し用ビア導体となるビア導体用導体パターンの径が、後述する焼成後に92μmとなるようにした。
【0267】
<積層体ブロックの作製工程>
コイルシート及びビアシートを、
図2及び
図3に相当する順序で積層方向(
図2及び
図3では、長さ方向L)に積層した後、熱圧着することにより、積層体ブロックを作製した。
【0268】
<素体及びコイルの作製工程>
まず、積層体ブロックをダイサーで所定の大きさに切断することにより、個片化されたチップを作製した。
【0269】
次に、個片化されたチップを焼成した。焼成温度については、900℃とした。焼成時間については、3時間とした。
【0270】
個片化されたチップを焼成すると、コイルシート及びビアシートのグリーンシートは、絶縁層となった。その結果、複数の絶縁層が、積層方向(
図2及び
図3では、長さ方向L)に積層されてなる素体が作製された。
【0271】
個片化されたチップを焼成すると、コイルシートのコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンは、各々、コイル導体及びビア導体(
図2及び
図3に示す、引き出し用ビア導体Saa1及び引き出し用ビア導体Sab1を含む)となった。その結果、積層方向(
図2及び
図3では、長さ方向L)に積層された複数のコイル導体がビア導体を介して電気的に接続されてなるコイルが作製された。
【0272】
以上により、素体と、素体の内部に設けられたコイルとが作製された。
【0273】
一方、個片化されたチップを焼成すると、ビアシートのランド部用導体パターン及びビア導体用導体パターンは、各々、引き出し用ランド部及び引き出し用ビア導体となった。その結果、積層方向(
図2及び
図3では、長さ方向L)に積層された複数の引き出し用ランド部及び複数の引き出し用ビア導体が交互に接続されてなる、第1引き出し導体、第2引き出し導体、第3引き出し導体、及び、第4引き出し導体が作製された。第1引き出し導体及び第2引き出し導体は、素体の第1端面から露出した。第3引き出し導体及び第4引き出し導体は、素体の第2端面から露出した。
【0274】
そして、素体をメディアとともに回転バレル機に入れて、素体にバレル研磨を施すことにより、角部及び稜線部に丸みを付けた。
【0275】
<外部電極の形成工程>
まず、Ag及びガラスフリットを含む導電性ペーストを塗工することにより、素体の第1端面から露出した第1引き出し導体及び第2引き出し導体に接続された第1塗膜を、素体の第1端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延びるように形成した。
【0276】
また、Ag及びガラスフリットを含む導電性ペーストを塗工することにより、素体の第2端面から露出した第3引き出し導体及び第4引き出し導体に接続された第2塗膜を、素体の第2端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延びるように形成した。
【0277】
このようにして、第1塗膜及び第2塗膜を、素体の表面上で互いに離隔した位置に形成した。
【0278】
次に、第1塗膜を焼き付けることにより、素体の第1端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延び、かつ、第1引き出し導体及び第2引き出し導体に接続された第1下地電極を形成した。
【0279】
また、第2塗膜を焼き付けることにより、素体の第2端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延び、かつ、第3引き出し導体及び第4引き出し導体に接続された第2下地電極を形成した。
【0280】
第1塗膜及び第2塗膜の焼き付け温度については、800℃とした。
【0281】
第1下地電極及び第2下地電極の厚みについては、5μmとした。
【0282】
そして、第1下地電極の表面上に、電解めっきで、Niめっき電極及びSnめっき電極を順に形成した。これにより、第1下地電極、Niめっき電極、及び、Snめっき電極を素体の表面側から順に有する第1外部電極が形成された。
【0283】
また、第2下地電極の表面上に、電解めっきで、Niめっき電極及びSnめっき電極を順に形成した。これにより、第2下地電極、Niめっき電極、及び、Snめっき電極を素体の表面側から順に有する第2外部電極が形成された。
【0284】
このようにして、第1引き出し導体及び第2引き出し導体を介してコイルに電気的に接続された第1外部電極と、第3引き出し導体及び第4引き出し導体を介してコイルに電気的に接続された第2外部電極とが、素体の表面上に形成された。
【0285】
以上により、実施例1の積層型コイル部品1が製造された。
【0286】
実施例1の積層型コイル部品は、長さ方向における寸法が2.0mm、高さ方向における寸法が1.25mm、幅方向における寸法が1.25mmであった。
【0287】
実施例1の積層型コイル部品では、第1引き出し導体、第2引き出し導体、第3引き出し導体、及び、第4引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の径が、すべて92μmであった。つまり、実施例1の積層型コイル部品では、高さ方向及び幅方向に沿う同一の第1断面で定められる、第1引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第2引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計が、約13300μm2であった。また、実施例1の積層型コイル部品では、高さ方向及び幅方向に沿う同一の第1断面で定められる、第3引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第4引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計が、約13300μm2であった。
【0288】
実施例1の積層型コイル部品では、すべてのコイル導体の長さ方向における寸法が17.5μm、すべてのコイル導体の幅方向における寸法が200μmであった。つまり、実施例1の積層型コイル部品では、長さ方向及び幅方向に沿う同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計が、10500μm2であった。
【0289】
以上のことから、実施例1の積層型コイル部品では、同一の第1断面で定められる、第1引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第2引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計が、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計以上であった。また、実施例1の積層型コイル部品では、同一の第1断面で定められる、第3引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第4引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計が、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計以上であった。
【0290】
[比較例1]
第2引き出し導体及び第4引き出し導体を作製しなかったこと以外、実施例1の積層型コイル部品と同様にして、比較例1の積層型コイル部品を製造した。
【0291】
比較例1の積層型コイル部品では、第1引き出し導体及び第3引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の径が、すべて130μmであった。つまり、比較例1の積層型コイル部品では、高さ方向及び幅方向に沿う第1断面で定められる、第1引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積が、約13300μm2であった。また、比較例1の積層型コイル部品では、高さ方向及び幅方向に沿う第1断面で定められる、第3引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積が、約13300μm2であった。
【0292】
比較例1の積層型コイル部品では、実施例1の積層型コイル部品と同様に、すべてのコイル導体の長さ方向における寸法が17.5μm、すべてのコイル導体の幅方向における寸法が200μmであった。つまり、比較例1の積層型コイル部品では、実施例1の積層型コイル部品と同様に、長さ方向及び幅方向に沿う同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計が、10500μm2であった。
【0293】
[評価]
まず、実施例1の積層型コイル部品及び比較例1の積層型コイル部品の各々を、素体の第2主面が上側に露出するように垂直に立てた状態で、周囲を樹脂で封止した。そして、各々の積層型コイル部品を、引き出し導体が露出するまで、素体の第2主面側から第1主面側に向かって高さ方向に研磨機で研磨した。その後、各々の積層型コイル部品の長さ方向及び幅方向に沿う断面での引き出し導体をデジタルマイクロスコープで観察した。
【0294】
引き出し用ビア導体の径が100μm以下である実施例1の積層型コイル部品では、素体の第1端面から露出した第1引き出し導体及び第2引き出し導体の露出部分が、周囲の絶縁層に対して大きく凹んでおらず、引き出し導体の露出部分の凹みに起因する外観不良の発生が抑制されていた。また、実施例1の積層型コイル部品では、素体の第2端面から露出した第3引き出し導体及び第4引き出し導体の露出部分が、周囲の絶縁層に対して大きく凹んでおらず、引き出し導体の露出部分の凹みに起因する外観不良の発生が抑制されていた。
【0295】
更に、同一の第1断面で定められる、第1引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積と第2引き出し導体を構成する引き出し用ビア導体の断面積との合計が、同一の第2断面で定められる、並走区間を構成する3つのコイル導体の断面積の合計以上である実施例1の積層型コイル部品では、1つの引き出し導体当たりの電流密度が充分に低くなっていることが確認された。
【0296】
一方、引き出し用ビア導体の径が100μmよりも大きい比較例1の積層型コイル部品では、素体の第1端面から露出した第1引き出し導体の露出部分が、周囲の絶縁層に対して大きく凹んでおり、引き出し導体の露出部分の凹みに起因する外観不良の発生が抑制されていなかった。また、比較例1の積層型コイル部品では、素体の第2端面から露出した第3引き出し導体の露出部分が、周囲の絶縁層に対して大きく凹んでおり、引き出し導体の露出部分の凹みに起因する外観不良の発生が抑制されていなかった。
【符号の説明】
【0297】
1 積層型コイル部品
10A 素体
11a 素体の第1端面
11b 素体の第2端面
12a 素体の第1主面
12b 素体の第2主面
13a 素体の第1側面
13b 素体の第2側面
21 第1外部電極
22 第2外部電極
30A コイル
41 第1引き出し導体
42 第2引き出し導体
43 第3引き出し導体
44 第4引き出し導体
C コイル軸
Ea1 第1積層部
Fa1 第2積層部
L 長さ方向
Ma1 第1並走区間
Na1 第2並走区間
P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10、P11、P12、P13、P14、P15、Px、Py 絶縁層
Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6、Q7、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12、Q13、Q14、Q15 コイル導体
Ra1、Rb1、Ra2、Rc2、Ra3、Rd3、Ra4、Rb4、Rb5、Rc5、Rc6、Rd6、Ra7、Rd7、Ra8、Rb8、Rb9、Rc9、Rc10、Rd10、Ra11、Rd11、Ra12、Rb12、Rb13、Rc13、Rb14、Rd14、Ra15、Rb15 ランド部
Rax、Rby 引き出し用ランド部
Sa2、Sb2、Sa3、Sb3、Sc3、Sb4、Sc4、Sd4、Sa5、Sc5、Sd5、Sa6、Sb6、Sd6、Sa7、Sb7、Sc7、Sb8、Sc8、Sd8、Sa9、Sc9、Sd9、Sa10、Sb10、Sd10、Sa11、Sb11、Sc11、Sb12、Sc12、Sd12、Sa13、Sc13、Sd13、Sa14、Sb14、Sd14、Sa15、Sb15 ビア導体
Saa1、Sab1、Saax、Sabx、Sbay、Sbby 引き出し用ビア導体
T 高さ方向
Ub2、Ub3、Uc3、Uc4、Ud4、Ua5、Ud5、Ua6、Ub6、Ub7、Uc7、Uc8、Ud8、Ua9、Ud9、Ua10、Ub10、Ub11、Uc11、Uc12、Ud12、Ua13、Ud13、Ua14 屈曲部
W 幅方向