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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】車両輸送管理装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
G08G1/123 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022087617
(22)【出願日】2022-05-30
(65)【公開番号】P2023175262
(43)【公開日】2023-12-12
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 誠人
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-149258(JP,A)
【文献】特開2020-046725(JP,A)
【文献】特開2001-315918(JP,A)
【文献】特開2011-230535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両の位置情報を取得する第1取得部と、
前記複数の車両の輸送計画情報を取得する第2取得部と、
前記複数の車両の位置情報と、当該複数の車両の輸送計画情報とに基づいて、作業者が当該複数の車両を移動するべき場所情報を生成する生成部と、
前記複数の車両を移動する順番を取得する第3取得部と、
前記車両を移動するべき場所を当該車両に通知し、前記複数の車両を移動する順番を前記作業者の端末装置に通知する通知部と、
を備え
前記複数の車両を移動するべき場所は、自動車専用船内の場所であり、
前記複数の車両を移動する順番は、バッテリ残量または燃料残量が所定値より少ない車両の走行距離が短くなるように決定されている、
ことを特徴とする車両輸送管理装置。
【請求項2】
前記第1取得部は、前記車両のイグニッションスイッチがオンの場合に当該車両から送信された当該車両の位置情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両輸送管理装置。
【請求項3】
記通知部は、前記複数の車両のそれぞれの位置情報を前記作業者の端末装置に通知する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両輸送管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の輸送を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場で生産された自動車等の車両は、キャリアカーや船に積載されて販売店等に輸送される。特許文献1は、車両の輸送状況が輸送計画と乖離している場合、車両の輸送状況を示す輸送情報を管理サーバに送信する車両輸送状況管理装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-046725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輸送対象の車両は、作業者の運転によりキャリアカーまたは船に積まれたり、降ろされたりする。工場や港などの車両積み降ろし場内において、車両は、作業者の運転によりある位置から別の位置に移動される場合もある。このような状況において、車両を運転する作業者の作業効率を改善することが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、車両の輸送時に、車両を運転する作業者の作業効率を改善できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両輸送管理装置は、複数の車両の位置情報を取得する第1取得部と、前記複数の車両の輸送計画情報を取得する第2取得部と、前記複数の車両の位置情報と、当該複数の車両の輸送計画情報とに基づいて、作業者が当該複数の車両を移動するべき場所情報を生成する生成部と、前記複数の車両を移動する順番を取得する第3取得部と、前記車両を移動するべき場所を当該車両に通知し、前記複数の車両を移動する順番を前記作業者の端末装置に通知する通知部と、を備える。前記複数の車両を移動するべき場所は、自動車専用船内の場所である。前記複数の車両を移動する順番は、バッテリ残量または燃料残量が所定値より少ない車両の走行距離が短くなるように決定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の輸送時に、車両を運転する作業者の作業効率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態の車両輸送管理システムの構成を示す図である。
図2図1の車両輸送管理システムで管理される複数の車両の輸送の一例を説明するための図である。
図3図1の車両輸送管理装置と車載装置の構成を示す図である。
図4図3の車両輸送管理装置における移動対象車両の位置通知処理を示すフローチャートである。
図5図3の車両輸送管理装置における車両を移動するべき場所の通知処理を示すフローチャートである。
図6図3の車両輸送管理装置における車両情報の提供処理を示すフローチャートである。
図7図3の車載装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施の形態の車両輸送管理システム1の構成を示す。図1では、一部のデータの流れも示す。車両輸送管理システム1は、工場で製造された複数の車両の販売店等への輸送を管理する。輸送中、複数の車両は作業者に運転されてキャリアカーまたは船に積まれたり、降ろされたりする。実施の形態では、作業者が車両を運転するとき、車内のディスプレイが車両の移動先を表示することで、作業者に車両の移動先を短時間で容易に把握させることができ、移動先を間違い難くできる。
【0011】
車両輸送管理システム1は、車両輸送管理装置10、通信サーバ12、車載装置14、第1の端末装置16、第2の端末装置18、第3の端末装置20、第4の端末装置22a、および第4の端末装置22bを備える。第4の端末装置22aと第4の端末装置22bをまとめて第4の端末装置22と呼ぶ。
【0012】
車両輸送管理装置10は、サーバとして構成され、例えば、自動車製造者のデータセンタに設けられる。通信サーバ12もデータセンタに設けられてよい。車両輸送管理装置10と通信サーバ12は、一体に構成されてもよい。
【0013】
車載装置14は、輸送対象の自動車である車両に搭載される。第1の端末装置16は、車両を運転してキャリアカーまたは船に積んだり、降ろしたりする作業者に所持される。
【0014】
第2の端末装置18は、積載した複数の車両を陸路で輸送するキャリアカーに搭載される。第3の端末装置20は、積載した複数の車両を海路で輸送する自動車専用船に搭載される。第4の端末装置22aは、キャリアカーで車両を輸送する輸送業者に利用される。第4の端末装置22bは、自動車専用船で車両を輸送する輸送業者に利用される。
【0015】
車載装置14は、無線通信機能を有し、図示しない無線基地局や無線アクセスポイントを介して通信サーバ12に接続する。通信サーバ12、第1の端末装置16、第2の端末装置18、第3の端末装置20、および第4の端末装置22は、それぞれ有線通信または無線通信によりネットワークに接続する。ネットワークには車両輸送管理装置10が接続されており、車両輸送管理装置10は、通信サーバ12、車載装置14、第1の端末装置16、第2の端末装置18、第3の端末装置20、および第4の端末装置22とネットワーク経由で通信可能である。
【0016】
図示は省略するが、輸送対象の車両、作業者、輸送業者、キャリアカー、自動車専用船は複数であり、車載装置14、第1の端末装置16から第4の端末装置22a,22bは、それぞれ複数設けられてよい。
【0017】
車載装置14は、イグニッションスイッチがオンの間、自車両の車両情報を定期的に取得して、この車両情報を定期的に通信サーバ12に送信する。車両情報には、取得された日時が添付される。車両情報は、例えば、現在位置、リチウムイオン二次電池である駆動用バッテリの残量、車両サイズ、および車両重量などの情報を含む。車両情報は、駆動用バッテリの残量に替えて、燃料の残量の情報を含んでもよい。現在位置は、緯度と経度を含む。車両サイズと車両重量は、一度だけ送信されればよい。送信される車両情報には、車両を識別するための識別情報が添付される。車両の識別情報は、たとえば車両識別番号(以下、VINと呼ぶ)である。車載装置14は、イグニッションスイッチがオフの間、車両情報を取得せず、送信もしない。そのため、車載装置14の消費電力を削減できる。なお、イグニッションスイッチがオフに切り替わったとき、何らかのデータを送信中または受信中であれば、そのデータの送信または受信は完了させる。
【0018】
通信サーバ12は、複数の車両のそれぞれの車載装置14から車両情報を定期的に取得し、取得した車両情報を車両の識別情報に関連付けて車両ごとに蓄積する。
【0019】
第2の端末装置18は、キャリアカーの位置情報を定期的に取得し、車両輸送管理装置10に送信する。第3の端末装置20は、自動車専用船の位置情報を定期的に取得し、車両輸送管理装置10に送信する。
【0020】
車両輸送管理装置10は、通信サーバ12に蓄積された複数の車両の車両情報、キャリアカーの位置情報、自動車専用船の位置情報を取得し、それらの情報をもとに複数の車両の輸送を管理する。
【0021】
図2は、図1の車両輸送管理システム1で管理される複数の車両の輸送の一例を説明するための図である。工場で製造された複数の車両80は、それぞれ、工場の車両積み降ろし場100まで走行し、そこに駐車される。工場の車両積み降ろし場100の複数の車両80のそれぞれは、予め作成された全体の輸送計画に従い、キャリアカー82,86等と自動車専用船90により、予め定められた販売店106などの目的地に輸送される。自動車専用船90を利用せず、図示しない目的地まで輸送される車両も存在しうる。
【0022】
輸送計画情報は、例えば、日付、当該日付に移動させる複数の車両の識別情報、輸送手段、当該複数の車両の移動元、および当該複数の車両の移動先の情報の組を複数含む。輸送計画情報は、輸送管理者などにより予め作成され、車両輸送管理装置10に保持されている。
【0023】
図2の例では、輸送計画は、例えば、日付として5月10日から5月18日、車両の識別情報として1000台の車両のVIN、輸送手段としてキャリアカー、移動元として工場の車両積み降ろし場100の第1エリア100a、移動先として第1の港の車両積み降ろし場102の第1エリア102aという情報を含む。
【0024】
また、輸送計画は、例えば、日付として5月20日から6月30日、車両の識別情報として2000台の車両のVIN、輸送手段として船、移動元として第1の港の車両積み降ろし場102の第1エリア102a、移動先として第2の港の車両積み降ろし場104の第1エリア104aという情報をさらに含む。
【0025】
キャリアカーで輸送する輸送業者は、輸送を開始すべき日までに、第4の端末装置22aを用いて、輸送計画をもとにキャリアカーによる輸送に関する作業計画を作成する。作業計画は、作業者ごとに作成され、当該作業者が行うべき作業内容を含む。
【0026】
作業者は、移動元の車両積み降ろし場において輸送対象の車両を運転してキャリアカーに積み込み、キャリアカーを移動先の車両積み降ろし場まで運転し、そこで車両を運転してキャリアカーから降ろす。
【0027】
作業計画は、例えば、作業者の識別情報ごとに、作業日、キャリアカーの識別情報、車両の移動元、車両の移動先、移動対象の車両の識別情報、車両を移動する順番、キャリアカーの2階に積み込む車両の識別情報を含む。
【0028】
図2の例では、車両の移動元は、工場の車両積み降ろし場100の第1エリア100aであり、車両の移動先は、第1の港の車両積み降ろし場102の第1エリア102aである。
【0029】
第4の端末装置22aは、車両輸送管理装置10から輸送計画情報を取得し、作業計画情報を作成する。第4の端末装置22aは、キャリアカーによる輸送対象の複数の車両の識別情報と、車両情報の要求とを車両輸送管理装置10に送信する。車両輸送管理装置10は、車両情報の要求を受信すると、受信した車両の識別情報に対応付けられた車両情報を第4の端末装置22aに送信する。第4の端末装置22aは、車両情報に含まれる車両サイズをもとに、全高が所定値より高い車両の積み込み先をキャリアカーの2階に割り当てる。第4の端末装置22aは、バッテリ残量または燃料残量が所定値より少ない車両があれば、輸送計画と矛盾しない範囲で、バッテリ残量が少ない車両の走行距離が短くなるように積み込みの順番を決定してもよい。第4の端末装置22aは、作成された作業計画情報を車両輸送管理装置10に送信する。
【0030】
自動車専用船で輸送する輸送業者は、自動車専用船への車両の積み込みを開始すべき日までに、第4の端末装置22bを用いて、輸送計画をもとに自動車輸送船による輸送に関する作業計画を作成する。例えば、作業計画は、複数の作業者で構成される作業グループごとに作成され、当該複数の作業者が行うべき作業内容を含む。
【0031】
複数の作業者は、出発地の港において輸送対象の複数の車両を運転して船に積み込む。到着地の港において、複数の別の作業者は、複数の車両を運転して船から降ろす。
【0032】
作業計画は、例えば、作業グループごとに、複数の作業者の識別情報、作業日、船の識別情報、車両の移動元、車両の移動先、移動対象の複数の車両の識別情報、車両を移動する順番の情報を含む。車両を移動する順番は、数十台程度の車両のグループ毎に定められてよい。
【0033】
図2の例では、ある作業グループの作業計画において、車両の移動元は、第1の港の車両積み降ろし場102の第1エリア102aであり、車両の移動先は、自動車専用船90の所定エリア、例えば3階のBエリアである。
【0034】
第4の端末装置22bは、車両輸送管理装置10から輸送計画情報を取得し、作業計画情報を作成する。第4の端末装置22bは、自動車専用船による輸送対象の複数の車両の識別情報と、車両情報の要求とを車両輸送管理装置10に送信する。車両輸送管理装置10は、受信した車両の識別情報に対応付けられた車両情報を第4の端末装置22bに送信する。第4の端末装置22bは、車両情報に含まれる車両サイズと車両重量をもとに、車両の積み込み先を割り当てる。第4の端末装置22bは、バッテリ残量または燃料残量が所定値より少ない車両があれば、輸送計画と矛盾しない範囲で、バッテリ残量等が少ない車両の走行距離が短くなるように積み込みの順番と積み込み先を決定してもよい。第4の端末装置22bは、作成された作業計画情報を車両輸送管理装置10に送信する。
【0035】
このように、輸送業者の第4の端末装置22は車両情報を取得できるので、車両情報をもとに効率的な作業計画を作成できる。また、バッテリ残量等が少ない車両の走行距離が短くなるように積み込むことで、輸送中に車両が走行できなくなることを抑制できる。
【0036】
車両輸送管理装置10は、第4の端末装置22から受け取った作業計画情報に基づいて、車両ごとの輸送計画を作成する。車両ごとの輸送計画は、車両の識別情報と、時系列順の移動元と移動先の情報とを含む。図2の例では、ある車両について、車両ごとの輸送計画は、工場の車両積み降ろし場100の第1エリア100aからキャリアカーの2階へ、工場の車両積み降ろし場100から第1の港の車両積み降ろし場102へ、第1の港の車両積み降ろし場102においてキャリアカーから第1エリア102aへ、第1エリア102aから自動車専用船90の3階のBエリアへ、第1の港の車両積み降ろし場102から第2の港の車両積み降ろし場104へ、等の情報を含む。
【0037】
図3は、図1の車両輸送管理装置10と車載装置14の構成を示す。車両輸送管理装置10は、処理部30および記憶部32を備える。処理部30は、第1取得部40、第2取得部42、第3取得部44、生成部46、および通知部48を備える。記憶部32は、全体の輸送計画情報、車両ごとの輸送計画情報、および作業計画情報を記憶している。
【0038】
処理部30の構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0039】
車載装置14は、通信部60、位置取得部62、および表示部64を備える。車載装置14には、車両のイグニッションスイッチがオンであるかオフであるかを示す信号IGが供給される。
【0040】
以下、図1図3を参照し、車両の輸送管理の例について説明する。
【0041】
(1)工場の車両積み降ろし場100から第1の港の車両積み降ろし場102への輸送
第1の端末装置16は、工場の車両積み降ろし場100における作業者の操作に応じて、移動対象車両の位置の通知要求を車両輸送管理装置10に送信する。通知要求には、作業者が指定した積み込み作業または降ろし作業を指定する情報と、作業者の識別情報が添付される。
【0042】
車両輸送管理装置10において、第3取得部44は、積み込み作業が指定された通知要求に応じて、作業者の識別情報に対応する作業計画情報から、当該作業者が工場の車両積み降ろし場100で移動するべき1以上の車両の識別情報、複数の車両を移動する順番、輸送ステータスを取得する。輸送ステータスは、「キャリアカーへの積み込み」である。
【0043】
第1取得部40は、第3取得部44で取得された車両の識別情報に基づいて、1以上の車両のそれぞれの位置情報を通信サーバ12から取得する。車両の位置情報は、現在の駐車位置であり、最後にイグニッションスイッチがオフになったときの位置である。
【0044】
通知部48は、移動させるべき1以上の車両のそれぞれの位置情報、複数の車両を移動する順番、および輸送ステータスの情報を作業者の第1の端末装置16に通知する。通知部48は、移動させるべき車両の車種、色、VINを取得し、送信してもよい。
【0045】
第1の端末装置16は、作業者が移動するべき複数の車両の位置、移動する順番、および輸送ステータスの情報をディスプレイに表示する。移動するべき車両の位置は、例えば、工場の車両積み降ろし場100の見取り図上に図形などのマークで表示される。移動する順番は、マークに表示された数字で表されてもよい。作業者は、第1の端末装置16に表示された車両の位置を確認し、移動するべき車両の位置を容易に把握でき、その車両を短時間で見つけることができる。また、移動すべき車両を間違え難くなる。複数の車両を移動する順番も容易に把握でき、積み込み順も間違え難くなる。また、例えば、輸送の当日に輸送計画が変更され、移動するべき車両や移動する順番が変更されても、広い工場の車両積み降ろし場100において移動すべき車両を探す時間を短縮できる。よって、作業効率を改善できる。
【0046】
車両が移動された場合、車両輸送管理装置10は、第1の端末装置16に表示される車両の位置を更新し、キャリアカーへ移動済みの車両の位置が表示されないようにしてもよい。
【0047】
作業者が移動対象の車両に乗り、イグニッションスイッチがオンになると、車載装置14の位置取得部62は、GPS衛星から信号を受信し、車両の位置を導出する。通信部60は、車両情報を通信サーバ12に送信する。通信サーバ12は、受信した車両情報を車両輸送管理装置10に送信する。
【0048】
車両輸送管理装置10において、第1取得部40は、受信した車両情報に添付された車両の識別情報に対応する車両、即ち車両を移動するべき場所の通知対象の車両の位置情報を取得する。つまり、第1取得部40は、車両のイグニッションスイッチがオンの場合に当該車両から送信された当該車両の位置情報を取得する。第2取得部42は、通知対象の車両の輸送計画情報を記憶部32から取得する。生成部46は、通知対象の車両の位置情報と、通知対象の車両の輸送計画情報とに基づいて、作業者が車両を移動するべき場所に関する情報と、輸送ステータスを生成する。生成部46は、車両の現在位置から移動するべき場所までの移動ルートも生成する。通知部48は、車両を移動するべき場所に関する情報、輸送ステータス、および移動ルートを対象の車両に通知する。
【0049】
図2の例では、車両の現在位置が工場の車両積み降ろし場100の第1エリア100aである場合、車両を移動するべき場所は、キャリアカーの位置であることが特定される。車両を移動するべき場所は、キャリアカーの1階または2階を特定する情報を含む。
【0050】
車載装置14において、通信部60は、車両を移動するべき場所に関する情報、輸送ステータス、および移動ルートを車両輸送管理装置10から通信サーバ12を介して受信する。表示部64は、例えばナビゲーションシステムのディスプレイであり、車両を移動するべき場所、輸送ステータス、および移動ルートを表示する。
【0051】
表示部64は、例えば、車両を移動するべき場所を工場の車両積み降ろし場100の見取り図上に重ねてマークで表示する。これにより、作業者は、車両に乗るだけで、どこに移動させればよいか容易に把握できるので、作業時間を削減できる。図2に示すように、キャリアカー82の他にキャリアカー84も駐車している状況でも、キャリアカー82の位置が車両を移動するべき場所として表示されることで、積み間違いが起こりにくくなる。
【0052】
車両輸送管理装置10において、通知部48は、車両の現在位置が輸送計画から乖離している場合、移動先の間違いの警告と、車両を移動するべき場所を車両に通知する。例えば、車両の現在位置が移動ルートから所定距離以上離れた場合、または、車両の現在位置が別のキャリアカーの位置になった場合、輸送計画から乖離していると判定してよい。
【0053】
警告が通知された場合、車載装置14の表示部64は、警告と、車両を移動するべき場所を表示する。車載装置14は、警告を音声により出力してもよい。これにより、作業者は、移動先を間違えたことを把握できる。
【0054】
車両を移動するべき場所に車両が到着し、イグニッションスイッチがオフされると、車載装置14は、位置情報の取得と送信を停止する。つまり、積載時、即ち作業者の降車時に位置が確定する。イグニッションスイッチがオンの場合に限り位置情報等を送信するので、車載装置14の消費電力を削減できる。
【0055】
作業者は、上述の積み込み作業を繰り返し、移動するべき全ての車両をキャリアカーに積み込むと、キャリアカーを運転する。
【0056】
キャリアカーによる輸送中、車載装置14は位置情報を送信しない。キャリアカーの第2の端末装置18は、キャリアカーの位置情報を定期的に取得し、その位置情報を車両輸送管理装置10に送信する。車両輸送管理装置10は、キャリアカーの現在位置が輸送計画から乖離している場合、第2の端末装置18および輸送管理者に警告する。警告により、キャリアカーの運転者は、正しい到着地に向けて輸送できる。
【0057】
キャリアカー82が第1の港の車両積み降ろし場102に到着すると、運転者である作業者は、キャリアカー82から車両を降ろす。例えば、一部の車両のみを降ろすことが分かっている場合、作業者は、既述のように第1の端末装置16を操作して、移動対象車両の位置の通知要求を送信してよい。この場合、作業者は、通知要求に対して降ろし作業を指定する。車両輸送管理装置10は、作業者の識別情報に対応する作業計画情報から、当該作業者がキャリアカーから移動するべき車両の識別情報と、輸送ステータスを取得する。輸送ステータスは、「キャリアカーから降ろす」である。車両輸送管理装置10は、取得された車両の識別情報をもとに、車両の位置情報を通信サーバ12から取得する。車両の位置情報は、キャリアカーに積み込まれてイグニッションスイッチがオフになったときの位置である。そのため、第1の端末装置16は、移動するべき車両の位置をキャリアカー内の位置に変換し、キャリアカーの見取り図上に表示する。位置情報は、高度を含んでもよく、高度に基づいて1階か2階かを示してもよい。
【0058】
車載装置14の処理は、基本的には既述の通りであるため、相違点を中心に説明する。作業者が移動対象の車両に乗り、イグニッションスイッチがオンになると、車載装置14は、車両情報を車両輸送管理装置10に送信し、車両を移動するべき場所に関する情報等を車両輸送管理装置10から受信する。図2の例では、車両を移動するべき場所は、第1の港の積み降ろし場102の第1エリア102aであることが特定される。
【0059】
車載装置14において、車両を移動するべき場所は、例えば、第1の港の車両積み降ろし場102の見取り図上に重ねてマークで表示される。作業者は、車両を運転してキャリアカーから降ろし、第1エリア102aまで走行し、駐車する。
【0060】
(2)第1の港の車両積み降ろし場102から第2の港の車両積み降ろし場104への輸送)
第1の端末装置16の処理は、基本的には既述の通りであるため、相違点を中心に説明する。第1の端末装置16は、第1の港の車両積み降ろし場102における作業者の操作に応じて、移動対象車両の位置の通知要求を車両輸送管理装置10に送信する。この場合、作業者は、通知要求に対して積み込み作業を指定してもよい。
【0061】
車両輸送管理装置10は、作業者の識別情報に対応する作業計画情報から、当該作業者が第1の港の車両積み降ろし場102で移動するべき複数の車両の識別情報、車両を移動する順番、および輸送ステータスを取得する。輸送ステータスは、「船への積み込み」である。
【0062】
車両輸送管理装置10は、取得された複数の車両の識別情報をもとに、複数の車両の位置情報を通信サーバ12から取得し、移動させるべき複数の車両の位置情報、車両を移動する順番、および輸送ステータスの情報を作業者の第1の端末装置16に送信する。車両の位置情報は、現在の駐車位置である。
【0063】
第1の端末装置16は、複数の作業者が移動するべき複数の車両の位置、移動する順番、および輸送ステータスの情報をディスプレイに表示する。同一作業グループの複数の作業者が順番に車両を自動車専用船90の同一エリアに移動させることが想定されるため、それぞれの作業者の第1の端末装置16は、共通の情報を表示してよい。
【0064】
車両が移動された場合、車両輸送管理装置10は、第1の端末装置16に表示される車両の位置を更新し、自動車専用船90へ移動済みの車両の位置が表示されないようにする。
【0065】
車載装置14の処理も基本的には既述の通りであるため、相違点を中心に説明する。作業者が移動対象の車両に乗り、イグニッションスイッチがオンになると、車載装置14は、車両情報を送信し、車両を移動するべき場所に関する情報等を受信し、表示する。図2の例では、車両の現在位置が第1の港の車両積み降ろし場102の第1エリア102aである場合、車両を移動するべき場所は、自動車専用船の3階のBエリアであることが特定される。車両輸送管理装置10は、車両の現在位置から自動車専用船90の3階のBエリアまでの移動ルートを生成し、車載装置14に送信する。作業者は、車内のディスプレイに表示された情報を確認し、車両を運転して自動車専用船90の3階のBエリアまで走行し、駐車する。
【0066】
ここで、船内において、車載装置14はGPS衛星から信号を受信できないことが想定される。これに対処するため、船内の各階に複数の無線アクセスポイントが設置されている。無線アクセスポイントの設置間隔は、必要な位置の精度に応じて適宜定められる。車両のイグニッションスイッチがオンであり、車載装置14の位置取得部62がGPS衛星から信号を受信できない場合、通信部60は、周辺の無線アクセスポイントにWiFi(登録商標)通信により接続し、接続した無線アクセスポイントを識別するための情報を取得する。位置取得部62は、無線アクセスポイントの識別情報と、所定のデータベースとに基づいて、接続した無線アクセスポイントの位置情報を車両の位置情報として取得する。所定のデータベースは、無線アクセスポイントの識別情報と位置情報とを関連付けて保持している。なお、車両積み降ろし場において建物内に車両が駐車され、GPS衛星から信号を受信できない場合、同様に、建物内に複数の無線アクセスポイントを設置してよい。
【0067】
移動するべき全ての車両が自動車専用船90に積み込まれた後、自動車専用船90は第2の港に向けて出港する。
【0068】
自動車専用船90による輸送中、車載装置14は位置情報を送信しない。第3の端末装置20は、自動車専用船90の位置情報を定期的に取得し、その位置情報を車両輸送管理装置10に送信する。車両輸送管理装置10は、自動車専用船90の現在位置が輸送計画から乖離している場合、第3の端末装置20および輸送管理者に警告する。警告に応じて、自動車専用船90の操縦者は、正しい到着地に向けて輸送できる。
【0069】
自動車専用船90が第2の港の車両積み降ろし場104に到着すると、複数の作業者は、自動車専用船90から車両を降ろす。作業者は、既述のように第1の端末装置16を操作して、移動対象車両の位置の通知要求を送信する。この場合、作業者は、通知要求に対して降ろし作業を指定してもよい。車両輸送管理装置10は、作業者の識別情報に対応する作業計画情報から、当該作業者が自動車専用船90から移動するべき車両の識別情報と、輸送ステータスを取得する。輸送ステータスは、「船から降ろす」である。車両輸送管理装置10は、取得された車両の識別情報をもとに、車両の位置情報を通信サーバ12から取得する。車両の位置情報は、船に積み込まれてイグニッションスイッチがオフになったときの位置である。そのため、第1の端末装置16は、移動するべき車両の位置を船内の位置に変換し、船の見取り図上に表示する。
【0070】
車載装置14の処理も基本的には既述の通りであるため、相違点を中心に説明する。作業者が移動対象の車両に乗り、イグニッションスイッチがオンになると、車載装置14は、車両情報を送信し、車両を移動するべき場所に関する情報等を受信する。図2の例では、車両を移動するべき場所は、積み降ろし場104の第1エリア104aであることが特定される。車載装置14において、車両を移動するべき場所は、例えば、積み降ろし場104の見取り図上に重ねて表示される。作業者は、車両を運転して船から降ろし、第1エリア104aまで走行し、駐車する。
【0071】
第2の港の車両積み降ろし場104から販売店への輸送の際の処理も、既述の様に行うことができる。
【0072】
(3)第1の港の車両積み降ろし場102内での移動
ある目的地行きの船の入港が遅れることなどのため、第1の港の車両積み降ろし場102内で、その船に積み込む予定であった車両を移動させ、別の船に先に積み込む車両のためのスペースを空ける必要性が生じることがある。
【0073】
この場合、追加の輸送計画が作成される。輸送計画は、例えば、日付として5月25日、車両の識別情報として100台の車両のVIN、輸送手段として自車両、移動元として第1の港の車両積み降ろし場102の第1エリア102a、移動先として第1の港の車両積み降ろし場102の第2エリア102bという情報をさらに含む。
【0074】
自動車専用船で輸送する輸送業者は、輸送計画をもとに、第4の端末装置22bを用いて、港内での移動に関する作業計画を作成する。この作業計画は、輸送管理者が作成してもよい。
【0075】
作業者は、第1エリア102aの輸送対象の車両を運転して第2エリア102bに移動する。作業計画は、例えば、作業者の識別情報ごとに、作業日、車両の移動元、車両の移動先、移動対象の車両の識別情報、車両を移動する順番を含む。
【0076】
第1の端末装置16の処理は、基本的には既述の通りであるため、相違点を中心に説明する。作業者は、第1の端末装置16を操作して、移動対象車両の位置の通知要求を送信する。車両輸送管理装置10は、作業者の識別情報に対応する作業計画情報から、当該作業者が移動するべき車両の識別情報、車両を移動する順番、輸送ステータスを取得し、移動するべき複数の車両の位置情報を取得し、これらを作業者の第1の端末装置16に送信する。輸送ステータスは、「車両積み降ろし場内での移動」である。第1の端末装置16は、受信した情報を表示する。
【0077】
車載装置14の処理も基本的には既述の通りであるため、相違点を中心に説明する。作業者が移動対象の車両に乗り、イグニッションスイッチがオンになると、車載装置14は、車両情報を送信し、車両を移動するべき場所に関する情報等を受信し、表示する。図2の例では、車両を移動するべき場所は、第1の港の車両積み降ろし場102の第2エリア102bであることが特定される。作業者は、車両を運転して第2エリア102bまで走行し、駐車する。
【0078】
次に、以上の構成による車両輸送管理システム1の全体的な動作を説明する。図4は、図3の車両輸送管理装置10における移動対象車両の位置通知処理を示すフローチャートである。図4の処理は、定期的に行われる。作業者の第1の端末装置16から移動対象車両の位置の通知要求を受信した場合(S10のY)、第3取得部44は、作業者が移動するべき車両の識別情報を取得し(S12)、第1取得部40は、取得された識別情報にもとづいて車両の位置情報を取得する(S14)。通知部48は、車両の位置情報を作業者の第1の端末装置16に通知し(S16)、処理を終了する。移動対象車両の位置の通知要求を受信しない場合(S10のN)、処理を終了する。
【0079】
図5は、図3の車両輸送管理装置10における車両を移動するべき場所の通知処理を示すフローチャートである。図5の処理は、定期的に行われる。第1取得部40が車両の位置情報を取得した場合(S20のY)、車両の位置が輸送計画から乖離していなければ(S22のN)、通知部48は、車両を移動するべき場所と輸送ステータスを車両に通知し(S24)、処理を終了する。車両の位置が輸送計画から乖離している場合(S22のY)、通知部48は、警告と、車両を移動するべき場所を車両に通知し(S26)、処理を終了する。第1取得部40が車両の位置情報を取得していない場合(S20のN)、処理を終了する。
【0080】
図6は、図3の車両輸送管理装置10における車両情報の提供処理を示すフローチャートである。図6の処理は、定期的に行われる。車両輸送管理装置10は、車両情報の要求を受信した場合(S30のY)、車両情報を輸送業者の第4の端末装置22に提供し(S32)、処理を終了する。車両情報の要求を受信していない場合(S30のN)、処理を終了する。
【0081】
図7は、図3の車載装置14の処理を示すフローチャートである。図7の処理は、イグニッションスイッチがオンの間に定期的に行われる。位置取得部62は、自車両の位置情報を取得し(S40)、通信部60は、通信サーバ12に位置情報を送信する(S42)。通信部60は、通信サーバ12から車両を移動するべき場所と輸送ステータスを受信し(S44)、表示部64は、車両を移動するべき場所と輸送ステータスを表示し(S46)、処理を終了する。
【0082】
実施の形態によれば、作業者が車両を移動するべき場所に関する情報を当該車両に通知するので、車両に乗車した作業者に車両の移動作業の内容を容易に把握させることができる。そのため、移動作業の内容を間違い難くなり、作業者の作業時間を短縮でき、作業効率を改善できる。作業者は、車両の移動先を間違いにくくなる。
【0083】
また、輸送管理者は、車両輸送管理装置10に収集された複数の車両の位置情報を取得できるので、作業者が中継点で車両の位置を端末に入力する作業などが必要なくなり、作業者の工数を削減できる。また、輸送管理者は、現在の車両の輸送状況を常に把握できるので、輸送の遅延が発生した場合などに到着予定日の変更を販売店などに迅速に連絡できる。また、輸送業者に対する発注精度を向上でき、港などでの待ち時間を削減できる。
【0084】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態はあくまでも例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0085】
例えば、車両輸送管理装置10の機能のうち、作業者が車両を移動するべき場所に関する情報を生成し、その情報を当該車両に通知する機能は、当該車両の車載装置14が有してもよい。この場合、第2取得部42、生成部46、通知部48は、車載装置14に設けられる。第2取得部42は、車両輸送管理装置10から車両の輸送計画情報を取得する。通知部48は、車両を移動するべき場所に関する情報を車両に、具体的には車両の運転者である作業者に通知する。この変形例では、車両輸送管理システム1の構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0086】
1…車両輸送管理システム、10…車両輸送管理装置、12…通信サーバ、14…車載装置、16…第1の端末装置、18…第2の端末装置、20…第3の端末装置、22,22a,22b…第4の端末装置、40…第1取得部、42…第2取得部、44…第3取得部、46…生成部、48…通知部、60…通信部、62…位置取得部、64…表示部、80…車両。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7