(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電池制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 M
(21)【出願番号】P 2022088168
(22)【出願日】2022-05-31
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】内田 義宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 信行
(72)【発明者】
【氏名】久保 和樹
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-141720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定置用電池装置に用いられる定置用電池を制御する電池制御装置であって、
前記定置用電池装置を含む複数の機器の各々における所定のシステムと通信可能な通信部と、
前記定置用電池を制御する制御部と、を備え、
前記通信部は、
前記複数の機器の各々の前記所定のシステムから第1信号を取得可能であり、
前記定置用電池装置の前記所定のシステムの起動待機状態のオンオフを切り替えるための第2信号を前記所定のシステムに送信し、
前記通信部により取得された前記第1信号が前記定置用電池装置の前記所定のシステムから送信されたものである場合に、前記制御部を起動させる、電池制御装置。
【請求項2】
前記通信部により取得された前記第1信号が第1値を有する場合に、前記制御部を起動させる、請求項1に記載の電池制御装置。
【請求項3】
前記通信部により取得された前記第1信号が前記第1値とは異なる第2値を有する場合に、前記制御部の起動待機状態を継続する、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記定置用電池装置の起動時に前記定置用電池装置の前記所定のシステムから送信された前記第1信号に基づいて起動される、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-005939号公報(特許文献1)には、車両において使用済みの電池パックを用いた定置用蓄電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、上記のように、車両において使用されていた電池パックが定置用蓄電システムに用いられる。上記特許文献1には明記されていないが、上記電池パックには、車両の電池を制御するための制御装置が備えられていると考えられる。また、上記電池パックを定置用蓄電システムに用いる為には、上記車両の電池用の制御装置に代えて、定置用蓄電システムの電池を制御するための制御装置を使用する必要がある。ここで、定置用蓄電システムの電池を制御するための制御装置が設けられた電池パックを定置用蓄電システム以外の機器(たとえば車両)に使用した場合、上記制御装置により上記機器を正常に動作することが困難になる場合がある。したがって、定置用蓄電システム(定置用電池装置)用の制御装置(電池制御装置)が定置用蓄電システム以外の機器に使用されるのを防止することが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、定置用電池装置用の電池制御装置が定置用電池装置以外の機器に使用されるのを防止することが可能な電池制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面に係る電池制御装置は、定置用電池装置に用いられる定置用電池を制御する電池制御装置であって、定置用電池装置を含む複数の機器の各々における所定のシステムと通信可能な通信部と、定置用電池を制御する制御部と、を備える。通信部は、複数の機器の各々の所定のシステムから第1信号を取得可能である。電池制御装置は、通信部により取得された第1信号が定置用電池装置の所定のシステムから送信されたものである場合に、制御部を起動させる。
【0007】
本開示の一の局面に係る電池制御装置では、上記のように、通信部により取得された第1信号が定置用電池装置の所定のシステムから送信されたものである場合に、制御部が起動される。これにより、通信部により取得された第1信号が定置用電池装置以外の機器の所定のシステムから送信された場合に、制御部が起動されるのを防止することができる。その結果、定置用電池装置用の電池制御装置が定置用電池装置以外の機器に使用されるのを防止することができる。
【0008】
上記一の局面に係る電池制御装置において、好ましくは、通信部により取得された第1信号が第1値を有する場合に、制御部を起動させる。このように構成すれば、第1信号の値を参照するだけで制御部を起動させることができるので、制御部の起動に関する処理を簡易化することができる。
【0009】
この場合、好ましくは、通信部により取得された第1信号が第1値とは異なる第2値を有する場合に、制御部の起動待機状態を継続する。このように構成すれば、第1信号の値を参照するだけで制御部を起動待機状態にすることができるので、制御部の起動待機に関する処理を簡易化することができる。
【0010】
上記一の局面に係る電池制御装置において、好ましくは、制御部は、定置用電池装置の起動時に定置用電池装置の所定のシステムから送信された第1信号に基づいて起動される。このように構成すれば、定置用電池装置の起動時に制御部を起動させることができる。
【0011】
上記一の局面に係る電池制御装置において、好ましくは、通信部は、定置用電池装置の所定のシステムの起動待機状態のオンオフを切り替えるための第2信号を上記所定のシステムに送信する。このように構成すれば、第2信号に基づいて定置用電池装置のシステムの起動を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、定置用電池装置用の電池制御装置が定置用電池装置以外の機器に使用されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態による定置用電池装置の構成を示す図である。
【
図2】一実施形態によるバッテリパックの構成を示す図である。
【
図3】一実施形態による電池ECUとIFECUとの間の信号を示す図である。
【
図4】一実施形態の電池ECUと車両システムとが接続されている状態を示す図である。
【
図5】一実施形態の電池ECUにおいてプロセッサの起動を制御する回路構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る定置用電池装置100の構成を示す図である。定置用電池装置100は、家200に単相の交流電力を供給する。なお、定置用電池装置100は、家200に併設されている。
【0016】
定置用電池装置100は、バッテリパック10と、DC/DCコンバータ20と、PCS(Power Conditioning System)30とを備える。
【0017】
DC/DCコンバータ20は、バッテリパック10からの直流電圧を昇圧する。PCS30は、DC/DCコンバータ20からの直流電圧を交流電圧に変換して、家200および図示しない電力系統に供給する。
【0018】
バッテリパック10は、電池スタック1と、電池ECU(Electronic Control Unit)2と、IFECU(Interface Electronic Control Unit)3とを含む。なお、電池ECU2およびIFECU3は、それぞれ、本開示の「電池制御装置」および「所定のシステム」の一例である。
【0019】
電池スタック1は、互いに積層された図示しない複数の電池セルにより構成されている。バッテリパック10には、電池スタック1が1つまたは複数設けられている。なお、電池スタック1は、本開示の「定置用電池」の一例である。
【0020】
電池ECU2は、電池スタック1の電池セルを制御する。具体的には、電池ECU2は、電池スタック1の各電池セルの温度、電圧、および、電流等の監視および制御を行う。
【0021】
IFECU3は、電池ECU2の通信規格(たとえばCAN(Controller Area Network))から、DC/DCコンバータ20およびPCS30の通信規格(たとえばRS485)への変換処理を行っている。また、IFECU3は、電池ECU2とDC/DCコンバータ20との間の電気的な絶縁機能を有する。
【0022】
図2に示すように、電池ECU2は、接続端子2aと、接続端子2bと、接続端子2cとを有する。また、IFECU3は、接続端子3aと、接続端子3bと、接続端子3cとを有する。接続端子2aと接続端子3aとは、通信線11により互いに通信可能に接続されている。また、接続端子2bと接続端子3bとは、通信線12により互いに通信可能に接続されている。また、接続端子2cと接続端子3cとは、通信線13により互いに通信可能に接続されている。なお、接続端子2a~2cの各々は、本開示の「通信部」の一例である。
【0023】
また、電池ECU2は、プロセッサ2dと、メモリ2eとを有する。プロセッサ2dは、電池ECU2内のシステムの動作を制御する。また、IFECU3は、プロセッサ3dを有する。プロセッサ3dは、IFECU3内のシステムの動作を制御する。
【0024】
メモリ2eには、プロセッサ2dに実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、および各種パラメータ)が記憶されている。
【0025】
電池ECU2は、接続端子2b(通信線12)を通じて、IFECU3から信号12aを受信(取得)する。
【0026】
ここで、定置用電池装置100用の電池ECU2を定置用電池装置100以外の機器(たとえば車両300、
図4参照)に使用した場合、電池ECU2により上記機器を正常に動作することが困難になる場合がある。したがって、定置用電池装置100用の電池ECU2が定置用電池装置100以外の機器に使用されるのを防止することが望まれている。なお、定置用電池装置100以外の機器が車両以外の機器であってもよい。
【0027】
そこで、本実施形態では、電池ECU2は、接続端子2bにより取得された信号12aがIFECU3から送信されたものである場合に、プロセッサ2dを起動させる。たとえば、
図5に示すように、接続端子2bとプロセッサ2dとの間の回路2fが信号12aによって開状態に切り替えられることによって、電池ECU2内の電源2gからプロセッサ2dに電力(電圧)が供給されるように構成されていてもよい。なお、回路2fおよび電源2gを用いることはあくまで一例であり、他の構成によりプロセッサ2dの起動が制御されていてもよい。
【0028】
詳細には、電池ECU2は、接続端子2bにより取得された信号12aの論理値が1である場合に、プロセッサ2dを起動させる。すなわち、信号12aは、デジタル信号である。IFECU3は、接続端子3b(通信線12)を通じて、論理値が1の信号12aを送信する(
図3(B)参照)ように構成されている。なお、論理値が1とは、本開示の「第1値」の一例である。
【0029】
一方、IFECU3とは異なる車両システム310(
図4参照)は、通信線12を通じて論理値が0の信号12a(
図3(D)参照)を送信するように構成されている。したがって、電池ECU2と車両システム310とが接続された場合、電池ECU2の接続端子2bは通信線12を通じて論理値が0の信号12aを受信(取得)する。なお、車両300および車両システム310は、それぞれ、本開示の「機器」および「所定のシステム」の一例である。また、なお、論理値が0とは、本開示の「第2値」の一例である。
【0030】
この場合、電池ECU2は、プロセッサ2dの起動待機状態を継続する。具体的には、接続端子2bとプロセッサ2dとの間に設けられた回路2f(
図5参照)は、論理値が0の信号12aによって開状態とならず閉状態が維持される。このため、電池ECU2内の電源2g(
図5参照)からプロセッサ2dに電力(電圧)が供給されずにプロセッサ2dの起動待機状態が継続される。
【0031】
また、本実施形態では、プロセッサ2dは、定置用電池装置100の起動時にIFECU3から送信された信号12aに基づいて起動される。具体的には、定置用電池装置100の起動に伴って信号12aの論理値が0から1に変化することにより、プロセッサ2dが起動される。したがって、定置用電池装置100の起動とプロセッサ2dの起動とは、互いに略同時に行われる。
【0032】
また、プロセッサ2dは、定置用電池装置100が一端停止した後に復帰した際(定置用電池装置100の再起動時)にも、IFECU3から送信された信号12aに基づいて起動されてもよい。
【0033】
再び
図2を参照して、電池ECU2は、接続端子2a(通信線11)を通じて、論理理が1の信号11aを送信する(
図3(A)および(C)参照)。IFECU3は、論理値が1の信号11aを接続端子3aを通じて取得した場合に、プロセッサ3dを起動させる。なお、IFECU3は、電池ECU2とは異なるECU(たとえば車両ECU等)から論理値が0の信号11aを取得した場合、プロセッサ3dの起動待機状態を継続する。
【0034】
また、本実施形態では、接続端子2cは、IFECU3の起動待機状態のオンオフを切り替えるための信号13aをIFECU3に送信する。信号13aは、デジタル信号である。なお、信号13aは、本開示の「第2信号」の一例である。
【0035】
IFECU3は、論理値が1の信号13aを接続端子3cを通じて取得した場合に、起動待機状態を解除する。具体的には、IFECU3は、信号13aにより起動待機が解除された状態で、論理値が1の信号11aを受信した場合に、プロセッサ3dを起動させる。
【0036】
一方、IFECU3は、信号13aにより起動待機が解除されていない状態で論理値が1の信号11aを受信しても、プロセッサ3dを起動せずにプロセッサ3dの起動待機状態を継続する。この場合、信号13aの論理値が1になるまで、プロセッサ3dの起動待機状態が継続される。
【0037】
以上のように、本実施形態においては、電池ECU2は、接続端子12bにより取得された信号12aがIFECU3から送信されたものである場合に、プロセッサ2dを起動させる。これにより、電池ECU2がIFECU3と接続されていない場合にプロセッサ2dが起動されるのを防止することができる。したがって、電池ECU2と他のシステムとが誤って組み付けられて、そのまま使用されるのを防止することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、電池ECU2とIFECU3とが互いに有線で通信する例を示したが、本開示はこれに限られない。電池ECU2とIFECU3とが互いに無線通信してもよい。
【0039】
なお、上記実施形態に記載されている構成、および、上記の各種変形例は、任意に組み合わされて実施されてもよい。
【0040】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 電池スタック(定置用電池),2 電池ECU(電池制御装置),2a~2c 接続端子(通信部),2d プロセッサ(制御部),3 IFECU(所定のシステム),12a 信号(第1信号),13a 信号(第2信号),100 定置用電池装置,300 車両(機器),310 車両システム(所定のシステム)。