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  • 特許-電池パックケース 図1
  • 特許-電池パックケース 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電池パックケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20241203BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241203BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20241203BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20241203BHJP
   H01M 50/231 20210101ALI20241203BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/209
H01M50/224
H01M50/227
H01M50/231
H01M50/262 M
H01M50/262 S
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022114857
(22)【出願日】2022-07-19
(65)【公開番号】P2024012980
(43)【公開日】2024-01-31
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 功
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129474(JP,A)
【文献】特開2020-047573(JP,A)
【文献】特開2013-025983(JP,A)
【文献】特開2018-056087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に積層される複数の電池を収容し、前記複数の電池を前記第一方向に拘束する電池パックケースであって、
前記第一方向の両側の前記電池と対向する一対の第一金属部と、前記一対の第一金属部の間に亘って延びる一対の第二金属部と、を有した第一板金と、
前記第一方向において前記第一金属部の前記電池とは反対側に位置される一対の第三金属部を有した第二板金と、
前記第一金属部と前記第三金属部との間に介在される一対の第一樹脂部と、前記第三金属部を間に挟むように前記第一方向において前記第三金属部の前記第一樹脂部とは反対側に位置される一対の第二樹脂部と、前記一対の第一樹脂部の間および前記一対の第二樹脂部の間に亘って延びる一対の第三樹脂部と、を有した、樹脂部材と、
を備えた、電池パックケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第一方向に積層される複数の電池を収容し、複数の電池を第一方向に拘束する電池パックケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-129474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の電池パックケースでは、例えば、SOC(States Of Charge)や温度変化等によって複数の電池の第一方向の拘束荷重が変動し、ひいては安定した電池性能が得られなくなってしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の電池の拘束荷重の変動をより抑制することのできる電池パックケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電池パックケースは、第一方向に積層される複数の電池を収容し、前記複数の電池を前記第一方向に拘束する電池パックケースであって、前記第一方向の両側の前記電池と対向する一対の第一金属部と、前記一対の第一金属部の間に亘って延びる一対の第二金属部と、を有した第一板金と、前記第一方向において前記第一金属部の前記電池とは反対側に位置される一対の第三金属部を有した第二板金と、前記第一金属部と前記第三金属部との間に介在される一対の第一樹脂部と、前記第三金属部を間に挟むように前記第一方向において前記第三金属部の前記第一樹脂部とは反対側に位置される一対の第二樹脂部と、前記一対の第一樹脂部の間および前記一対の第二樹脂部の間に亘って延びる一対の第三樹脂部と、を有した、樹脂部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第一板金および第二板金と樹脂部材の線膨張係数差を利用し、第一板金および第二板金と樹脂部材との界面に荷重が発生することで複数の電池の拘束荷重が増減するのを抑制できる。例えば、高温移行時や高SOC時において複数の電池が第一方向に膨らんだ場合には、樹脂部材の膨張で第一板金および第二板金を第一方向の両側に向けて押し広げることで複数の電池の第一方向の拘束荷重が増加するのを抑制できる。また、低温移行時や低SOC時において複数の電池が第一方向に縮んだ場合には、樹脂部材の収縮で第一板金および第二板金を第一方向の中央側に向けて引っ張ることで複数の電池の第一方向の拘束荷重が低下するのを抑制できる。その結果、複数の電池の拘束荷重の変動をより抑制することのできる電池パックケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の電池パックケースが適用された電池パックの例示的かつ模式的な断面図である。
図2図2は、実施形態の電池パックケースの樹脂部材の例示的かつ模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態の電池パックケース10が適用された電池パック1の模式的な断面図である。なお、以下の説明では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、電池パックケース10の前後方向(縦幅)に沿い、Y方向は、電池パックケース10の左右方向(横幅)に沿い、Z方向は、電池パックケース10の上下方向に沿う。
【0011】
図1に示されるように、電池パック1は、例えば、電気自動車等に搭載される車載用の電池パックであり、複数の電池セル2と、スペーサ3と、複数の電池セル2およびスペーサ3をY方向に圧縮拘束した状態で収容する電池パックケース10と、を備えている。本実施形態では、Y方向は、第一方向の一例であり、電池セル2は、電池の一例である。
【0012】
電池セル2は、例えば、角型缶タイプのリチウムイオン二次電池等である。複数の電池セル2は、縦置きの姿勢、すなわちそれぞれの端子面がZ方向の一方を向いた姿勢でY方向に積層されている。複数の電池セル2は、不図示のバスバー等を介して直列あるいは並列に接続されている。
【0013】
スペーサ3は、例えば、絶縁性の樹脂によって構成されるプレート状の部材である。スペーサ3は、Y方向の両側の電池セル2と電池パックケース10との間、およびY方向に隣接した二つの電池セル2の間に介在し、電池セル2同士を絶縁している。本実施形態では、電池パックケース10内において複数の電池セル2とスペーサ3とがY方向に交互に積層されている。
【0014】
電池パックケース10は、例えば、Y方向に横長の直方体状の箱型に構成されている。電池パックケース10は、底壁10cや、不図示の天壁、一対の端壁10a、一対の側壁10b、中壁10d等の複数の壁部を有している。底壁10cは、下壁等とも称され、天壁は、上壁等とも称される。また、端壁10aおよび側壁10bは、周壁や側壁等とも称され、中壁10dは、仕切壁等とも称される。
【0015】
底壁10cおよび天壁は、いずれも、Z方向と直交する方向(XY平面)に沿って延びており、Z方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。底壁10cは、電池パックケース10の下端部を構成し、天壁は、電池パックケース10の上端部を構成している。底壁10cは、電池セル2のそれぞれの下面を支持する。
【0016】
一対の端壁10aは、いずれも、Y方向と直交する方向(XZ平面)に沿って延びており、Y方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。端壁10aのうち一方は、電池パックケース10の左端部を構成し、他方は、電池パックケース10の右端部を構成している。一対の端壁10aは、電池セル2のそれぞれのY方向の側面を支持する。
【0017】
一対の側壁10bは、いずれも、X方向と直交する方向(YZ平面)に沿って延びており、X方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。側壁10bのうち一方は、電池パックケース10の前端部を構成し、他方は、電池パックケース10の後端部を構成している。一対の側壁10bは、電池セル2のそれぞれのX方向の側面を支持する。
【0018】
中壁10dは、一対の側壁10bの間に位置され、当該側壁10bと平行に延びて一対の端壁10aの間に亘っている。中壁10dは、電池パックケース10内をX方向に複数の空間(電池室)に仕切っている。本実施形態では、複数の電池セル2は、中壁10dよりもX方向の一方の空間でY方向に積層された第一積層体2Aと、中壁10dよりもX方向の他方の空間でY方向に積層された第二積層体2Bと、を含んでいる。第一積層体2Aおよび第二積層体2Bは、電池セル列や、電池セル群、電池セル集合体等とも称される。
【0019】
また、電池パックケース10は、例えば、第一板金11や、第二板金12、第三板金13等の複数の板金部材や、樹脂部材14等の部材を組み合わせた所謂マルチマテリアルケースとして構成されている。電池パックケース10は、例えば、インサート成形や二色成形等によって樹脂部材14と、第一板金11、第二板金12、および第三板金13とが一体化されている。
【0020】
第一板金11は、例えば、複数の金属部11a~11dを有している。金属部11cは、Z方向と直交する方向(XY平面)に沿って延びた四角形状の板状に構成されている。金属部11cは、上述した電池パックケース10の底壁10cを構成している。
【0021】
金属部11aは、金属部11cのY方向の両端部に設けられており、Y方向と直交する方向(XZ平面)に沿って延びた長方形状の板状に構成されている。一対の金属部11aは、上述した電池パックケース10の端壁10aを構成しており、スペーサ3を介してY方向の両側の電池セル2と対向している。金属部11aは、第一金属部の一例である。
【0022】
金属部11bは、金属部11cのX方向の両端部に設けられており、X方向と直交する方向(YZ平面)に沿って延びた長方形状の板状に構成されている。一対の金属部11bは、上述した電池パックケース10の側壁10bを構成しており、一対の金属部11aの間に亘って延びている。金属部11bは、第二金属部の一例である。
【0023】
金属部11dは、金属部11cのX方向の中央部に設けられており、X方向と直交する方向(YZ平面)に沿って延びた長方形状の板状に構成されている。金属部11dは、上述した電池パックケース10の中壁10dを構成しており、一対の金属部11aの間に亘って延びている。
【0024】
第二板金12は、複数の電池セル2のY方向の両側に設けられている。具体的には、本実施形態では、複数の電池セル2の第一積層体2Aおよび第二積層体2Bに対応して四つの第二板金12が電池パックケース10の四隅に設けられている。第二板金12は、例えば、複数の金属部12a,12bをそれぞれ有している。
【0025】
金属部12aは、金属部11aに沿って延びた長方形状の板状に構成されている。金属部12aは、金属部11aとともに電池パックケース10の端壁10aを構成しており、Y方向において金属部11aの電池セル2とは反対側に位置されている。金属部12aは、第三金属部の一例である。
【0026】
金属部12bは、金属部12aのX方向の両端部に設けられており、金属部11bに沿って延びた長方形状の板状に構成されている。一対の金属部12bは、金属部11bとともに電池パックケース10の側壁10bを構成するとともに、金属部11dとともに電池パックケース10の中壁10dを構成している。第二板金12は、ネジやボルト等の結合具によって第一板金11に固定されている。
【0027】
第三板金13は、第二板金12のY方向の両側に設けられている。一対の第三板金13は、金属部11a,12aに沿って延びた長方形状の板状に構成され、金属部11a,12aとともに電池パックケース10の端壁10aを構成している。第三板金13は、ネジやボルト等の結合具によって第二板金12に固定されている。
【0028】
図2は、電池パックケース10の樹脂部材14の模式的な断面図である。図2に示されるように、樹脂部材14は、例えば、複数の樹脂部14a~14dを有している。樹脂部14aは、複数の電池セル2のY方向の両側に設けられている。一対の樹脂部14aは、上述した金属部11aと金属部12aとの間に介在され、金属部11a,12aとともに電池パックケース10の端壁10aを構成している。樹脂部14aは、第一樹脂部の一例である。
【0029】
樹脂部14bは、一対の樹脂部14aのY方向の両側に設けられており、上述した金属部11a,12aとともに電池パックケース10の端壁10aを構成している。一対の樹脂部14bは、金属部12aを間に挟むようにY方向において金属部12aの樹脂部14aとは反対側に位置されている。言い換えると、金属部12aは、樹脂部14aと樹脂部14bとの間に介在され、樹脂部14bは、金属部12aと第三板金13との間に介在されている。樹脂部14bは、第二樹脂部の一例である。
【0030】
樹脂部14cは、樹脂部14bのX方向の両端部に設けられており、一対の樹脂部14aの間および一対の樹脂部14bの間に亘って延びている。すなわち、樹脂部14cは、樹脂部14a,14bのそれぞれと接続されている。樹脂部14cは、上述した金属部11b,12bとともに電池パックケース10の側壁10bを構成している。樹脂部12cは、第三樹脂部の一例である。
【0031】
樹脂部14dは、樹脂部14bのX方向の中央部に設けられており、一対の樹脂部14aの間および一対の樹脂部14bの間に亘って延びている。すなわち、樹脂部14dは、樹脂部14a,14bのそれぞれと接続されている。樹脂部14cは、上述した金属部11d,12bとともに電池パックケース10の中壁10dを構成している。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、電池パックケース10は、第一板金11と第二板金12と樹脂部材14とを備えるため、第一板金11および第二板金12と樹脂部材14の線膨張係数差を利用し、第一板金11および第二板金12と樹脂部材14との界面に荷重が発生することで複数の電池セル2の拘束荷重が増減するのを抑制できる。例えば、高温移行時や高SOC時において複数の電池セル2がY方向に膨らんだ場合には、樹脂部材14の膨張で第一板金11および第二板金12をY方向の両側に向けて押し広げることで複数の電池セル2のY方向の拘束荷重が増加するのを抑制できる。また、低温移行時や低SOC時において複数の電池セル2がY方向に縮んだ場合には、樹脂部材14の収縮で第一板金11および第二板金12をY方向の中央側に向けて引っ張ることで複数の電池セル2のY方向の拘束荷重が低下するのを抑制できる。その結果、複数の電池セル2の拘束荷重の変動をより抑制することのできる電池パックケース10を提供することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1…電池パック、2…電池セル(電池)、10…電池パックケース、11…第一板金、11a…金属部(第一金属部)、11b…金属部(第二金属部)、12…第二板金、12a…金属部(第三金属部)、14…樹脂部材、14a…樹脂部(第一樹脂部)、14b…樹脂部(第二樹脂部)、14c…樹脂部(第三樹脂部)、Y…第一方向。
図1
図2