(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
B60S 3/04 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B60S3/04
(21)【出願番号】P 2022207237
(22)【出願日】2022-12-23
【審査請求日】2024-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】河野 良輔
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-082854(JP,A)
【文献】特開2010-083342(JP,A)
【文献】特開2011-224541(JP,A)
【文献】特開2016-060329(JP,A)
【文献】中国実用新案第206199556(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を洗車する洗車機本体と、
前記車両の洗浄に用いられる洗浄液を前記洗車機本体に供給する第1経路と、
前記車両の仕上げ洗浄に用いられる前記洗浄液よりも電気伝導率の低い純水を供給する第2経路と、を備え、
前記第2経路は、前記洗車機本体よりも上流において前記第1経路と合流している、洗車機。
【請求項2】
前記洗車機本体の各部を制御する制御部と、
前記車両の前後方向に相対移動するとともに、前記車両の外形に関する情報を取得するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記第2経路を介して前記純水を供給し、前記車両の仕上げ洗浄を行う仕上げ洗浄工程において、前記センサからの前記情報に基づいて、予め規定された前記車両の指定部位において、前記洗車機本体が一時的な移動停止または反復移動をするように制御する、請求項1に記載の洗車機。
【請求項3】
前記洗車機本体の各部を制御する制御部を備えており、
前記制御部は、前記第1経路を介して前記洗浄液を供給し、前記車両を洗浄する洗浄工程の後、前記第2経路を介して前記純水を供給し、前記車両の仕上げ洗浄を行う仕上げ洗浄工程を実施する、請求項1または2に記載の洗車機。
【請求項4】
前記制御部は、前記洗浄工程の後半において、前記第1経路を介した前記洗浄液の供給を、前記第2経路を介した前記純水の供給に切り替える、請求項3に記載の洗車機。
【請求項5】
前記洗車機本体は、前記車両に液体を噴射する複数のノズルと、前記第1経路と前記複数のノズルとを接続する接続配管を有しており、
前記接続配管は、前記複数のノズルに液体を分配する分配配管部と、排水経路と、を含み、
前記制御部は、前記洗浄工程と前記仕上げ洗浄工程との間に、前記排水経路を介して前記洗浄液を排出しつつ、前記第2経路を介して前記純水を供給することにより、前記第2経路と前記排水経路との間の経路内を前記純水に置換する、請求項3に記載の洗車機。
【請求項6】
液体の電気伝導率を低減させる純水生成装置を備えており、
前記純水は、前記純水生成装置によって生成される、電気伝導率が0μS/cm以上、6μS/cm以下の水である、請求項1に記載の洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を洗浄する洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗車機によって洗車を行う際に用いられる洗車用水としては、地表水、地下水などを水源とする上水(水道水)、または工業用水などが用いられている。例えば、水道水は、消毒用の塩素の残留物、および、ナトリウム、カルシウムマグネシウムなどのミネラル類を含んでいる。そのため、洗車後、車両表面に残った水滴がそのまま乾燥した場合、これらの不純物がイオンデポジット(ウォータースポット)として車両表面に残ってしまう。
【0003】
近年、このイオンデポジットを低減するために、洗車用水として純水を用いる洗車機が開発されている。
【0004】
純水を用いた洗浄が可能な洗車機として、全ての洗車工程において純水を用いる全純水型洗車機、および最終の濯ぎ工程にのみ純水を用いる仕上げ純水型洗車機が従来技術として知られている。仕上げ純水型洗車機は、純水の使用量を低減できるため、コスト面でメリットがある。仕上げ純水型洗車機として、例えば、特許文献1に記載の洗車装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の洗車装置では、純水を供給する配管系統は、洗剤または水を供給する配管系統とは別に配設されている。この純水を供給する配管系統は、洗車機本体内部に純水専用の配管および噴射ノズルを有している。
【0007】
本発明の一態様は、洗車機本体内部に純水用の配管を備えていない場合であっても仕上げ純水型洗車機として機能し得る洗車機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る洗車機は、車両を洗車する洗車機本体と、前記車両の洗浄に用いられる洗浄液を前記洗車機本体に供給する第1経路と、前記車両の仕上げ洗浄に用いられる純水を供給する第2経路と、を備え、前記第2経路は、前記洗車機本体よりも上流において前記第1経路と合流している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、洗車機本体内部に純水用の配管を備えていない場合であっても仕上げ純水型洗車機として機能し得る洗車機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係る洗車機を示す概略正面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る洗車機を示す概略側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る洗車機の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る洗車機2を示す概略正面図である。
図2は、本実施形態に係る洗車機を示す概略側面図である。
図3は、本実施形態に係る洗車機の構成を示すブロック図である。
【0013】
(洗車機の構成)
洗車機2は、仕上げ純水型洗車機である。より具体的には、洗車機2は、ブラッシングを伴う洗浄工程と、純水を用いた仕上げ洗浄を行う仕上げ洗浄工程とを含む洗車処理を実行可能な洗車機である。洗車機2が実施する洗浄工程において使用される水を洗浄液、仕上げ洗浄工程において使用される水を純水と称する。
【0014】
本開示において、洗浄液は、例えば、地表水、地下水などを水源とする上水(水道水)、または工業用水である。洗浄液は、取水する地域、原水の種類により様々であるが、通常、70~300μS/cm程度の電気伝導率を有している。純水は、当該洗浄液よりも電気伝導率の低い水である。例えば、本開示に係る純水の電気伝導率は、0μS/cm以上、20μS/cm以下であってよい。
【0015】
図1~
図3に示すように、洗車機2は、洗車機本体4と、第1洗浄機構60と、第2洗浄機構70を備えている。第1洗浄機構60は、車両Xに対して洗浄液を噴射するための機構であり、第1タンク62と、洗浄液を洗車機本体4に供給する第1経路61と、車両Xに対して洗浄液を噴射する第1ノズル24および第2ノズル26と、を備えている。第1ノズル24および第2ノズル26は、洗車機本体4が備えるノズルであり、後で詳述する。第1タンク62は、洗浄液を貯留するタンクであり、第1ポンプP1を備えている。第1ポンプP1は、後述する制御部44によって制御され得る。第1洗浄機構60において、第1タンク62は必須ではなく、第1経路61は、開閉制御可能なバルブを介して水道管などに連結されていてもよい。この場合、当該バルブが制御部44によって制御され得る。
【0016】
第2洗浄機構70は、車両Xに対して純水を噴射するための機構であり、純水生成装置73と、第2タンク72と、純水を洗車機本体に供給する第2経路71と、車両Xに対して純水を噴射する第1ノズル24および第2ノズル26と、を備えている。第1ノズル24および第2ノズル26は、洗浄液および純水のいずれを噴射する場合にも用いられる。つまり、第1洗浄機構60において洗浄液を噴射するノズルと、第2洗浄機構70において純水を噴射するノズルは共通である。純水生成装置73は、液体の電気伝導率を低減させる装置である。純水生成装置73は、例えば、逆浸透膜法によって純水を生成する装置であってよい。第2タンク72は、純水生成装置73によって生成された純水を貯留するタンクであり、第2ポンプP2を備えている。第2ポンプP2は、後述する制御部44によって制御され得る。本開示に係る純水は、純水生成装置73によって生成される、電気伝導率が0μS/cm以上、6μS/cm以下の水であってもよい。
【0017】
第2経路71は、洗車機本体4よりも上流において、第1経路61と合流している。洗浄液を供給する第1経路61が洗車機本体4と接続されており、純水を供給する第2経路71は、当該接続部よりも上流において第1経路61に接続されていてもよい。この場合、洗浄液は第1経路61を介して洗車機本体4に供給され、純水は第2経路71および第1経路61の一部を介して洗車機本体4に供給される。あるいは、第1経路61と、第2経路71は、合流して1つの経路80に接続されており、経路80が洗車機本体4に接続されていてもよい。この場合、洗浄液は第1経路61および経路80を介して洗車機本体4に供給され、純水は第2経路71および経路80を介して洗車機本体4に供給される。
【0018】
洗車機2は、さらに、洗車機本体4による車両Xの洗車条件を取得するリモートパネル6を備える。
図2において、車両Xがリモートパネル6よりも、紙面に向かって奥側に位置することを示すために、車両Xの外形を点線にて示している。
【0019】
なお、本明細書においては、車両Xとしてセダンタイプの車両を例に挙げて説明する。例えば、車両Xは、その上面に、ボンネット、フロントガラス、ルーフ、リアガラス、およびトランクを前側から順に備える。ただし、本明細書において、車両Xの種類および形状は、洗車機本体4によって洗浄可能である限り特に制限されない。
【0020】
(洗車機本体の構成)
図1に示すように、洗車機本体4は、例えば、2つのフレーム8と、当該2つのフレーム8の上端同士を連結する天井部10とを備える。洗車機本体4は、
図2に示す、車両Xの進入方向DAに沿って、車両Xが、フレーム8および天井部10によって囲まれた空間4Sを通過できる構造を有している。なお、本明細書において、進入方向DAは、洗車機本体4の前面4Aから後面4Bに向かう方向とする。なお、本実施形態において、前面4Aは、例えば、後述する操作パネル42が備えられる面である。
【0021】
洗車機本体4は、駆動部4Xと、清掃部4Yとを備える。駆動部4Xは、フレーム8それぞれの下部に設けられる車輪12と、車輪12を回転駆動させる駆動装置11とを備える。駆動装置11が車輪12を回転駆動することにより、洗車機本体4は、地面Gに配されたレールRに沿って、車両Xに対し前後方向に相対移動する。レールRは、例えば、進入方向DAに沿って形成されている。ここで、洗車機本体4は、車両Xに対する相対移動を行いつつ、空間4S中の車両Xに対する洗浄(洗車)を実施する。
【0022】
清掃部4Yは、車両X上を摺動してブラッシングする複数の回転ブラシを備える。例えば、清掃部4Yは、それぞれが回転モータ(不図示)によって回転するトップブラシ14、サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18を含む。トップブラシ14は、車両Xの上面に沿って摺動し、車両Xの上面を洗浄する。サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18は、車両Xの両側面を洗浄する。
【0023】
清掃部4Yはまた、車両Xに対して液体を噴射する複数のノズルを有している。当該複数のノズルは、第1ノズル24、第2ノズル26を含む。第1ノズル24および第2ノズル26は、車両Xに対して洗浄液または純水を噴射するノズルである。第1ノズル24および第2ノズル26は、
図2に示すように、例えば、洗車機本体4の各フレーム8の前面4A側、および後面4B側にそれぞれ配されていてもよい。洗浄液または純水を噴射するノズルは、第1ノズル24および第2ノズル26の他に、天井部10にも配されていてもよい。
【0024】
洗車機本体4は、洗車機本体4の外部に位置する経路80と、第1ノズル24・第2ノズル26とを接続する第1接続配管を有している。第1接続配管は、経路80を介して流入した液体を各ノズルに分配する分配配管部22と、分配配管部22と連通する排水経路23と、を含む。分配配管部22からは、第1ノズル24および第2ノズル26がそれぞれ電磁弁(不図示)を介して導出されている。
【0025】
清掃部4Yはまた、第1洗剤ノズル28、第2洗剤ノズル30、撥水コートノズル32、およびワックスノズル34を備えている。第1洗剤ノズル28、第2洗剤ノズル30は、各フレーム8の前面4A側、および後面4B側にそれぞれ配されており、車両Xに対してシャンプー等を含む洗剤を噴射する。撥水コートノズル32およびワックスノズル34は洗車機本体4の後面4Bに配されている。撥水コートノズル32は車両Xに対して撥水コート剤の液剤を噴射する。ワックスノズル34は車両Xに対してワックスを噴射する。洗車機本体4の側部には、洗剤またはワックス等を含む各種液剤を貯液した複数の貯液タンク(不図示)を収納するタンク収納部20が配されている。各貯液タンクからの液剤は、それぞれ上述した分配配管部22と同様の分配配管部を介して、対応する各種ノズルに分配される。
【0026】
また、洗車機本体4は、清掃部4Yの一部として、気流を発生させるブロワ36を備えている。ブロワ36にはトップ送風ノズル38、およびサイド送風ノズル40が接続される。トップ送風ノズル38は、洗車機本体4の中央上部に設けられ、車両Xの天井面に向けて送風する。サイド送風ノズル40は、洗車機本体4の両側部に設けられ、車両Xの側面に向けて送風する。洗車機本体4は、トップ送風ノズル38、およびサイド送風ノズル40から車両Xに対して送風することによって、洗浄後の車両Xの水切りまたは乾燥を行う。
【0027】
なお、添付の各図においては、図示の簡単のために、上述した洗車機本体4が備える、車両Xの洗浄のための各装置に関する図示を省略している場合がある。また、各図に示す、洗車機本体4が備える各装置は、単なる例示であり、洗車機本体4は、上述した装置の他、従来公知の構成を含む、車両Xの洗浄のための装置、および当該洗浄を補助する装置を、フレーム8または天井部10に備えていてもよい。
【0028】
洗車機本体4の一方のフレーム8の前面には操作パネル42が配される。操作パネル42は洗車条件を設定する操作ボタン(不図示)を備える。例えば、車両Xから降車したユーザ、またはその他の技術者等は、操作ボタンを操作して、洗車条件の設定等を行ってもよい。
【0029】
<制御部およびリモートパネル>
洗車機2は、洗車機本体4を制御する制御部44を備えている。制御部44は、洗車機本体4のレールRに沿った移動、および、清掃部4Yの各部の動作を制御することにより、洗車機本体4による車両Xの洗浄を制御する。また、制御部44は、第1洗浄機構60および第2洗浄機構70を制御し得る。制御部44は、
図2に示すように、洗車機本体4に備えられていてもよい。あるいは、制御部44は、洗車機本体4の外部に位置していてもよい。制御部44は、不図示の通信装置等により、洗車機本体4、第1洗浄機構60、第2洗浄機構70または後述するリモートパネル6との間における情報の送受信を行い、洗車機2が備える各部を制御してもよい。制御部44は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成され、メモリに格納された制御プログラムがプロセッサ上で実行されることにより、各制御が実現される。
【0030】
リモートパネル6は、例えば、洗車機本体4の前方側に位置し、洗車機本体4の移動方向に沿って配置される。また、リモートパネル6は、
図2に示すように、その正面が、洗車機本体4により洗浄される前、換言すれば、洗車機本体4の内部に進入する前の車両Xの側面と対向するように配置される。このため、
図2においては、リモートパネル6の背面を図示している。
【0031】
図2に示すように、リモートパネル6は、筐体46と、地面Gに立設された、筐体46を支持する支持柱48とを備える。リモートパネル6は、筐体46に設けられた、不図示のタッチパネルまたはボタン等の操作により、洗車機本体4による車両Xの洗車条件の少なくとも一部を取得してもよい。制御部44は、リモートパネル6が取得した洗車条件の少なくとも一部に基づいて、洗車機本体4を制御し、車両Xを洗浄してもよい。
【0032】
<センサ>
洗車機本体4は、さらに、センサ52を備える。センサ52は、例えば、サイドブラシ16よりも洗車機本体4の前面4Aの側に位置する。
【0033】
センサ52は、洗浄する対象である車両Xの外形に関する情報を取得するためのセンサである。より具体的には、センサ52は、所定地点を横切る車両Xの高さを検出し得る。例えば、センサ52は、洗車機本体4のフレーム8の前面側かつ空間4S側において、2つのフレーム8にそれぞれ発光部と受光部とが一対となるように配置された、多軸光軸センサで構成されていてよい。ここで多軸光軸センサにおいて、上下方向に複数の光軸が並ぶように、かつ、各光軸が略水平面上になるように、個々の光軸センサが配置される。よって、多軸光軸センサにおける個々の光軸センサは、異なる高さにおける車両の有無を検知できるように構成されている。この場合、センサ52は、例えば、洗車機本体4が車両Xの前側から後側に相対移動する間、車両Xを検出する光軸センサの個数を確認することにより、車両Xの高さを検出してもよい。
【0034】
これにより、洗車機本体4は、センサ52が含む多軸光軸センサのうち車両Xを検出する光軸センサの個数の変化から、平面視における位置ごとに車両Xの高さを推定することができる。換言すれば、センサ52は、車両Xの形状の少なくとも一部を推定するための情報を生成する。これにより、センサ52は、平面視における位置ごとに車両Xの外形の少なくとも一部を割り出してもよい。制御部44は、センサ52により割り出された車両Xの外形に基づいて、清掃部の各部を制御し車両Xの洗浄を行ってもよい。
【0035】
(制御部44による洗車機2の制御)
制御部44による、洗車機2を用いた車両Xの例示的な洗車処理について以下に説明する。
【0036】
<受付工程>
本実施形態において、洗車機2は、まず車両Xのユーザ等からの車両Xの洗車の要求を受け付ける受付工程を実施する。具体的には、制御部44が、洗車機本体4またはリモートパネル6の各部を制御することにより、車両Xのユーザ等からの車両Xの洗車条件を取得する。例えば、制御部44は、リモートパネル6または操作パネル42を制御し、上記ユーザからのリモートパネル6または操作パネル42等の操作を受け付ける。これにより、洗車機2は、車両Xの洗車条件、および洗車料金の支払い等の情報をユーザから取得する。
【0037】
次いで、制御部44は、洗車機本体4のスピーカまたは洗車機本体4のモニターを制御し、車両X内のユーザに、車両Xを所定位置まで移動させ停止させるよう案内する。これにより、ユーザは、車両Xを、例えば、洗車機本体4の前方側の所定の位置に停車させる。
【0038】
<洗浄工程>
受付工程に次いで、洗車機2は、洗浄液を用いて車両Xを洗浄する洗浄工程を実施する。具体的には、制御部44が、第1洗浄機構60および洗車機本体4の各部を制御することにより、空間4S内部を通過する車両Xの表面の洗浄を行う。洗浄工程の実行直前において、洗車機本体4は車両Xの前方側に位置する。洗浄工程において、制御部44は、洗車機本体4の駆動部4Xを制御し、洗車機本体4を前進させつつ、洗浄液を用いた洗浄を行う。洗車機本体4の前進とは、洗車機本体4の前面4Aが進行方向を向いて進むことを意味する。洗車機本体の後退とは、洗車機本体4の後面4Bが進行方向を向いて進むことを意味する。
【0039】
具体的には、洗浄工程において、制御部44は、第1ポンプP1を制御し、第1経路61を介して洗浄液を洗車機本体4に供給し、第1ノズル24および第2ノズル26を介して洗浄液を車両Xに対して噴射する。さらに、制御部44は、各種ブラシなどの清掃部4Yの各部を制御して、車両Xを洗浄する。
【0040】
洗浄工程では、洗浄液を噴射しながらブラッシングするブラッシング処理、または洗剤および洗浄液を噴射しながらブラッシングするブラッシングシャンプー処理など、リモートパネル6を介してユーザが選択した洗車条件に基づいた洗浄処理が実施される。洗車条件に応じて、洗車機2が前進し、車両Xが洗車機2を通過する第1往路、洗車機2が後退し、車両Xが洗車機2を通過する第1復路、洗車機2が再び前進し、車両Xが洗車機2を通過する第2往路の間、洗浄工程が実行されてもよい。あるいは、第1往路および第1復路の間、洗浄工程が実行されてもよい。
【0041】
制御部44は、洗車条件に応じて、洗浄工程の間に、洗車機本体4の移動速度を適宜変動させてもよく、また、必要に応じて洗車機本体4の移動を一時停止させてもよい。
【0042】
また、制御部44は、洗車機本体4を前進させ、センサ52に車両Xを検出させることにより、車両Xの外形に関する情報を取得する。
【0043】
制御部44は、洗浄工程の後半において、第1経路61を介した洗浄液の供給を、第2経路71を介した純水の供給に切り替えてもよい。
【0044】
<水切り工程>
洗浄工程の後、洗車機2は、洗浄液の水切りを行う水切り工程を実行する。具体的には、制御部44が、洗車機本体4の各部を制御することにより、水切り工程を実行する。水切り工程において、制御部44は、駆動部4Xを制御して洗車機本体4を前進方向と反対方向に向かって進行(後退)させつつ、ブロワ36を制御することにより、車両Xへ送風を行い、車両Xの表面の洗浄液の水切りを行う。洗浄工程が、第1復路、第2復路などの任意の復路まで行われた場合、水切り工程において、制御部44は、洗車機本体4を前進方向に向かって進行(前進)させつつ、ブロワ36を制御することにより洗浄液の水切りを行ってもよい。また、洗車機本体4が、復路と往路にかけて進行する間、または往路と復路にかけて進行する間、水切り工程が行われてもよい。
【0045】
制御部44は、水切り工程において、センサ52からの車両Xの外形に関する情報に基づいて、ブロワ36と車両Xとの距離を調整してもよい。制御部44は、センサ52が含む多軸光軸センサのうち車両Xを検出する光軸センサの個数の変化から、平面視における位置ごとに車両Xの高さを推定することができる。制御部44は、当該平面視における位置ごとの車両Xの高さに基づいて、ブロワ36と車両Xとの距離を調節し得る。例えば、制御部44は、ブロワ36の位置を、車両Xに近接しつつ、ほぼ一定の距離が保てるよう制御してもよい。これにより、車両Xに対するブロワ36からの送風の強さを保つことができ、より確実に水切りを行うことができる。洗浄液の水切りの効果を向上させることにより、イオンデポジットの発生を有意に低減することができる。
【0046】
あるいは、制御部44は、水切り工程において、センサ52からの車両Xの外形に関する情報に基づいて、ブロワ36と車両Xとの距離に応じてブロワ36の風量を調整してもよい。例えば、制御部44は、車両Xとブロワ36との距離が大きいほどブロワ36の風量を大きく、当該距離が小さいほどブロワ36の風量を小さくしてもよい。これにより、ブロワ36が洗車機本体4に固定されている場合であっても車両Xに対するブロワ36からの送風の強さを保つことができ、より確実に水切りを行うことができる。洗浄液の水切りの効果を向上させることにより、イオンデポジットの発生を有意に低減することができる。
【0047】
さらに、制御部44は、水切り工程において、センサ52からの車両Xの外形に関する情報に基づいて、予め規定された車両Xの指定部位において、ブロワ36が一時的な移動停止または反復移動をするように制御してもよい。予め規定された車両Xの指定部位とは、例えば、サイドミラーが付いている部位、ワイパーが付いている部位、ルーフとリアガラスとの境界、バックドアとバンパーとの段差部位など、ブロワ36による送風が届きにくい部分を有する部位であってよい。
【0048】
車両Xが大型車の場合、予め規定された車両Xの指定部位は、イオンデポジットが目立ちやすい場所であってもよい。例えば、車両Xがバスである場合は、ドアミラー、窓ガラス部分であってよい。車両Xがトラックである場合は、ドアミラーを含むキャビン部分であってよい。
【0049】
センサ52は、センサ52が含む多軸光軸センサのうち車両Xを検出する光軸センサの個数の変化から、指定部位の平面視における位置を割り出すことができる。例えば、制御部44は、駆動部4Xを制御し、ブロワ36が指定部位の水切りを行う間、洗車機本体4の移動速度を遅くしてもよいし、洗車機本体4を反復移動させてもよい。あるいは、必要に応じて洗車機本体4の移動を一時停止させてもよい。指定部位において水切りを重点的に行う制御をすることにより、より確実に水切りを行うことができる。洗浄液の水切りの効果を向上させることにより、イオンデポジットの発生を有意に低減することができる。
【0050】
制御部44は、水切り工程の間に、排水経路23を介して洗浄液を排出しつつ、第2タンク72から純水を供給することにより、第2タンク72と排水経路23との間の経路内を純水に置換してもよい。
【0051】
<仕上げ洗浄工程>
水切り工程の後、洗車機2は、純水を用いて車両の仕上げ洗浄を行う仕上げ洗浄工程を実行する。具体的には、制御部44が第2洗浄機構70および洗車機本体4の各部を制御することにより、仕上げ洗浄工程が実行される。仕上げ洗浄工程において、制御部44は、洗車機本体4の駆動部4Xを制御し、洗車機本体4を前進させつつ、純水を車両Xに対して噴射することにより、仕上げ洗浄を行う。具体的には、仕上げ洗浄工程において、制御部44は、第2ポンプP2を制御し、第2経路71を介して純水を洗車機本体4に供給し、第1ノズル24および第2ノズル26を介して純水を車両Xに対して噴射する。
【0052】
制御部44は、仕上げ洗浄工程において、センサ52からの車両Xの外形に関する情報に基づいて、予め規定された車両Xの指定部位において、洗車機本体4が一時的な移動停止または反復移動をするように制御してもよい。当該制御により、指定部位において、純水を重点的に噴射することができる。予め規定された車両Xの指定部位とは、構造が複雑で、洗浄残りが発生しやすい部位であってよく、例えば、サイドミラーが付いている部位、ワイパーが付いている部位、ルーフとリアガラスとの境界、バックドアとバンパーとの段差部位など、洗浄残りが発生しやすい部位であってよい。あるいは、ドアミラー、窓など、イオンデポジットの発生を有意に低減したい部位であってもよい。
【0053】
<乾燥工程>
仕上げ洗浄工程の後、洗車機2は、乾燥工程を実行する。具体的には、制御部44が洗車機本体4の各部を制御することにより、乾燥工程が実行される。乾燥工程において、制御部44は、洗車機本体4を後退させつつブロワ36を動作させることにより、車両Xへ送風を行い、車両Xの乾燥を実行してもよい。
【0054】
〔まとめ〕
(1)本開示の態様1に係る洗車機は、車両を洗車する洗車機本体と、前記車両の洗浄に用いられる洗浄液を前記洗車機本体に供給する第1経路と、前記車両の仕上げ洗浄に用いられる前記洗浄液よりも電気伝導率の低い純水を供給する第2経路と、を備え、前記第2経路は、前記洗車機本体よりも上流において前記第1経路と合流している。
【0055】
第2経路が洗車機本体よりも上流において第1経路と合流していることにより、洗車機本体内部に純水用の配管を備えていない場合であっても仕上げ純水型洗車機として機能し得る洗車機を実現できる。例えば、大型車用の洗車機に対し、従来のように純水を供給する配管系統を別に配設するためには、非常にコストがかかる。第2経路が洗車機本体よりも上流において第1経路と合流している洗車機は、洗車機本体に複雑な改良を施すことなく、通常の洗車機を仕上げ純水型洗車機として機能させることができる。また、大型車用の洗車機は、天井部のノズルを点検・清掃する際に高所作業車が必要であり、大掛かりな作業となる。本開示に係る洗車機は、洗浄液と純水の配管が1系統であるため、このような点検・清掃にかかる作業量を低減することができる。
【0056】
なお、上述の実施例では、車両に対して相対移動する洗車機を例示して説明したが、態様1に係る洗車機は、移動を伴わない洗車機であってもよい。
【0057】
(2)本開示の態様2に係る洗車機は、上記態様1において、前記洗車機本体の各部を制御する制御部と、前記車両の前後方向に相対移動するとともに、前記車両の外形に関する情報を取得するセンサをさらに備え、前記制御部は、前記第2経路を介して前記純水を供給し、前記車両の仕上げ洗浄を行う仕上げ洗浄工程において、前記センサからの前記情報に基づいて、予め規定された前記車両の指定部位において、前記洗車機本体が一時的な移動停止または反復移動をするように制御する。
【0058】
当該構成により、予め規定された指定部位において、純水による仕上げ洗浄を重点的に行うことができる。これにより指定部位におけるイオンデポジットを有意に低減することができる。
【0059】
(3)本開示の態様3に係る洗車機は、上記態様1において、前記洗車機本体の各部を制御する制御部を備えており、前記制御部は、前記第1経路を介して前記洗浄液を供給し、前記車両を洗浄する洗浄工程の後、前記第2経路を介して前記純水を供給し、前記車両の仕上げ洗浄を行う仕上げ洗浄工程を実施する。
【0060】
洗浄工程の後、制御部が経路の切り替えを行うことにより、純水を用いた仕上げ洗浄を行うことができる。
【0061】
(4)本開示の態様4に係る洗車機は、上記態様3において、前記制御部は、前記洗浄工程の後半において、前記第1経路を介した前記洗浄液の供給を、前記第2経路を介した前記純水の供給に切り替える。
【0062】
仕上げ洗浄工程は純水で行うため、仕上げ洗浄工程の開始時には、第1ノズル24および第2ノズル26までの経路の大半が純水に置換されていることが好ましい。洗浄工程の後半において経路を切り替えることにより、仕上げ洗浄工程の開始時には第1ノズル24および第2ノズル26までの経路が既に純水に置換されている。これにより、純水仕上げの品質が向上する。また、仕上げ洗浄工程前に洗浄液と純水とを置換する時間を別途設ける必要がなくなるため、洗車時間を短縮することができる。
【0063】
(5)本開示の態様5に係る洗車機は、上記態様5において、前記洗車機本体は、前記車両に液体を噴射する複数のノズルと、前記第1経路と前記複数のノズルとを接続する接続配管を有しており、前記接続配管は、前記複数のノズルに液体を分配する分配配管部と、排水経路と、を含み、前記制御部は、前記洗浄工程と前記仕上げ洗浄工程との間に、前記排水経路を介して前記洗浄液を排出しつつ、前記第2経路を介して前記純水を供給することにより、前記第2経路と前記排水経路との間の経路内を前記純水に置換する。
【0064】
上記構成により、例えば、洗浄工程と仕上げ洗浄工程との間の水切り工程中に、排水経路を介して洗浄液を排出しつつ、第2経路を介して純水を供給することができる。これにより、仕上げ洗浄工程前に洗浄液と純水とを置換する時間を別途設ける必要がなくなるため、洗車時間を短縮することができる。
【0065】
(6)本開示の態様6に係る洗車機は、上記態様1から5のいずれかにおいて、液体の電気伝導率を低減させる純水生成装置を備えており、前記純水が、前記純水生成装置によって生成される、電気伝導率が0μS/cm以上、6μS/cm以下の水である。
【0066】
電気伝導率が0μS/cm以上、6μS/cm以下の純水を用いて仕上げ洗浄をすることにより、イオンデポジットをさらに低減することができる。
【0067】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
2・・・洗車機
4・・・洗車機本体
4X・・・駆動部
4Y・・・清掃部
22・・・分配配管部
23・・・排水経路
24・・・第1ノズル
26・・・第2ノズル
36・・・ブロワ
44・・・制御部
60・・・第1洗浄機構
61・・・第1経路
62・・・第1タンク
70・・・第2洗浄機構
71・・・第2経路
72・・・第2タンク
73・・・純水生成装置