(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241203BHJP
H02M 1/12 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/48 R
H02M1/12
(21)【出願番号】P 2022572128
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045424
(87)【国際公開番号】W WO2022138215
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2020210981
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石倉 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】高辻 寛之
(72)【発明者】
【氏名】細谷 達也
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066176(WO,A1)
【文献】特開2011-147238(JP,A)
【文献】特開2018-046677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路とノイズ低減回路とを備え、
前記インバータ回路は、
直流入力ラインと、
交流出力ラインと、
インダクタと、
前記インダクタにスイッチング電流を流すスイッチング回路と、
前記直流入力ライン間に並列接続された入力コンデンサと、
前記交流出力ライン間に並列接続された出力コンデンサと、
前記直流入力ライン間の電圧を検出する直流入力電圧検出回路と、
前記交流出力ライン間の電圧を検出する交流出力電圧検出回路と、
前記交流出力ラインの電流を検出する交流出力電流検出回路と、
基準電位が前記直流入力ラインの基準電位ラインに接続され、前記直流入力ラインの電圧に基づいて前記交流出力ラインの交流出力電圧又は交流出力電流が所定値となるように前記スイッチング回路を制御するフィードバック制御回路と、
を備え、
前記ノイズ低減回路は、
前記直流入力ライン間に接続された第1ハーフブリッジコンデンサ回路と、
前記交流出力ライン間に接続された第2ハーフブリッジコンデンサ回路と、
前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路と前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路との間に接続された第1コモンモードチョークコイルと、
前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路の中点と前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路の中点とを電気的に接続されたノイズ平衡回路を構成する電気経路と、を備え
、
前記直流入力電圧検出回路は、前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路と前記スイッチング回路との間に接続され、
前記交流出力電圧検出回路は、前記出力コンデンサと前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路との間に接続される、
スイッチング電源装置。
【請求項2】
インバータ回路とノイズ低減回路とを備え、
前記インバータ回路は、
直流入力ラインと、
交流出力ラインと、
インダクタと、
前記インダクタにスイッチング電流を流すスイッチング回路と、
前記直流入力ライン間に並列接続された入力コンデンサと、
前記交流出力ライン間に並列接続された出力コンデンサと、
前記直流入力ライン間の電圧を検出する直流入力電圧検出回路と、
前記交流出力ライン間の電圧を検出する交流出力電圧検出回路と、
前記交流出力ラインの電流を検出する交流出力電流検出回路と、
基準電位が前記直流入力ラインの基準電位ラインに接続され、前記直流入力ラインの電圧に基づいて前記交流出力ラインの交流出力電圧又は交流出力電流が所定値となるように前記スイッチング回路を制御するフィードバック制御回路と、
を備え、
前記ノイズ低減回路は、
前記直流入力ライン間に接続された第1ハーフブリッジコンデンサ回路と、
前記交流出力ライン間に接続された第2ハーフブリッジコンデンサ回路と、
前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路と前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路との間に接続された第1コモンモードチョークコイルと、
前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路の中点と前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路の中点とを電気的に接続され、グランドとは異なる電位のコモンモードノイズを平衡化するノイズ平衡回路を構成する電気経路と、を備え
、
前記直流入力電圧検出回路は、前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路と前記スイッチング回路との間に接続され、
前記交流出力電圧検出回路は、前記出力コンデンサと前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路との間に接続される、
スイッチング電源装置。
【請求項3】
インバータ回路とノイズ低減回路とを備え、
前記インバータ回路は、
直流入力ラインと、
交流出力ラインと、
インダクタと、
前記インダクタにスイッチング電流を流すスイッチング回路と、
前記直流入力ライン間に並列接続された入力コンデンサと、
前記交流出力ライン間に並列接続された出力コンデンサと、
前記直流入力ライン間の電圧を検出する直流入力電圧検出回路と、
前記交流出力ライン間の電圧を検出する交流出力電圧検出回路と、
前記交流出力ラインの電流を検出する交流出力電流検出回路と、
基準電位が前記直流入力ラインの基準電位ラインに接続され、前記直流入力ラインの電圧に基づいて前記交流出力ラインの交流出力電圧又は交流出力電流が所定値となるように前記スイッチング回路を制御するフィードバック制御回路と、
を備え、
前記ノイズ低減回路は、
前記直流入力ライン間に接続された第1ハーフブリッジコンデンサ回路と、
前記交流出力ライン間に接続された第2ハーフブリッジコンデンサ回路と、
前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路と前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路との間に接続された第1コモンモードチョークコイルと、
前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路の中点と前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路の中点とを電気的に接続して、グランドとは異なる電位のコモンモードノイズを平衡化するノイズ平衡回路を構成する電気経路と、を備え、
前記ノイズ平衡回路は、前記コモンモードノイズが前記フィードバック制御回路に与える影響を抑制
し、
前記直流入力電圧検出回路は、前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路と前記スイッチング回路との間に接続され、
前記交流出力電圧検出回路は、前記出力コンデンサと前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路との間に接続される、
ことを特徴とする、
スイッチング電源装置。
【請求項4】
前記電気経路に直列に接続され、インダクタンス成分又は抵抗成分を有するインピーダンス素子を備える、
請求項1から3のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記電気経路とグランドとの間に接続され、キャパシタンス成分、インダクタンス成分又は抵抗成分を有するインピーダンス素子を備える、
請求項1から4のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路の負荷側に接続された第2コモンモードチョークコイルを備える、
請求項1から5のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
直列接続された2つのコンデンサを備え、前記交流出力ライン間に接続され、中点がグランドに接続された、
請求項1から6のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記フィードバック制御回路の基準電位と前記電気経路との間に接続されたコンデンサを備える、
請求項1から7のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記フィードバック制御回路の基準電位とグランドとの間に接続されたコンデンサを備える、
請求項1から8のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記直流入力電圧検出回路および前記交流出力電圧検出回路のそれぞれは、直列接続された複数の抵抗素子の直列回路によって構成され、それぞれの直列回路の中点電圧を検出する、
請求項1から請求項9のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路とノイズ低減回路とを備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ回路は、直流入力ラインの直流入力電力を、スイッチング回路を用いて交流電力に変換して交流出力ラインに交流電力を出力する回路であり、直流入力ラインの電位はグランド電位に対して実質的にフローティングである。そのため、直流電位部には、スイッチング動作に起因する電磁雑音が重畳される。このことによりコモンモードノイズが発生してEMI(電磁妨害)が問題となる。そのため一般的に、インバータ回路を備えるスイッチング電源装置においては、EMIを抑制するためにノイズ低減回路が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータ回路と共にEMI対策回路を備えた送電装置としては例えば特許文献1が示されている。この送電装置のEMI対策回路の第1のYコンデンサは、グランドに接続されておらず、ACラインとインバータ回路との間の電力線に接続されている。電力線に接続されている配線は、グランドには接続されておらず、配線が長くなるとインピーダンスが高くなる。インピーダンスの高い配線に近接して電圧や電流の検出信号線があると、信号線はインピーダンスが高い配線からノイズを受け、電圧や電流を正確に検出できない。そのため、インバータ回路の設計を変更するなどの対策が必要となり、設計期間の延長が問題となる。
【0005】
しかし、一般に、スイッチング電源装置のノイズ対策は、インバータ回路の設計が完了してから実施される。ノイズ対策のためにEMI対策回路を調整すると、その調整がインバータ回路のフィードバック制御回路の動作に影響を与え、インバータ回路が誤動作したり、その誤動作を抑制するためにインバータ回路の設計をやり直す必要が生じたりする。そのため設計期間が長期化するなどの新たな問題も発生する。また、大型のEMI対策回路を追加するなどの対策が必要となって、スイッチング電源装置の大型化などが問題となる。
【0006】
また、EMIを低減させるにはYコンデンサの容量を大きくする必要があるが、Yコンデンサの容量を大きくすると、インバータのフィードバック制御に悪影響を与え、電力変換動作が誤動作する問題が生じる場合がある。また、グランドに接続されるYコンデンサの容量を大きくすると、漏れ電流が増大し、感電の危険性が高まるなどの問題も生じる。
【0007】
このように、インバータ回路を備えるスイッチング電源装置においては、EMIの抑制とパワーインテグリティ(電源品質の確保)、そしてスイッチング電源装置の設計期間の短縮などを同時に実現することが求められている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、インバータ回路とフィードバック制御回路とを備えたスイッチング電源装置において、コモンモードノイズがフィードバック制御に与える影響を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一例としてのスイッチング電源装置は、
インバータ回路とノイズ低減回路とを備え、
前記インバータ回路は、
直流入力ラインと、
交流出力ラインと、
インダクタと、
前記インダクタにスイッチング電流を流すスイッチング回路と、
前記直流入力ライン間に並列接続された入力コンデンサと、
前記交流出力ライン間に並列接続された出力コンデンサと、
前記直流入力ライン間の電圧を検出する直流入力電圧検出回路と、
前記交流出力ライン間の電圧を検出する交流出力電圧検出回路と、
前記交流出力ラインの電流を検出する交流出力電流検出回路と、
基準電位が前記直流入力ラインの基準電位ラインに接続され、前記直流入力電圧に基づいて前記交流出力ラインの交流出力電圧又は交流出力電流が所定値となるように前記スイッチング回路を制御するフィードバック制御回路と、
を備え、
前記ノイズ低減回路は、
前記直流入力ライン間に接続された第1ハーフブリッジコンデンサ回路と、
前記交流出力ライン間に接続された第2ハーフブリッジコンデンサ回路と、
前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路と前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路との間に接続された第1コモンモードチョークコイルと、
前記第1ハーフブリッジコンデンサ回路の中点と前記第2ハーフブリッジコンデンサ回路の中点とを電気的に接続して、グランドとは異なる電位のコモンモードノイズを平衡化するノイズ平衡回路を構成する電気経路を備える。
【0010】
そして、この構成により、前記ノイズ平衡回路は、コモンモードノイズが前記フィードバック制御回路に与える影響を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インバータ回路とフィードバック制御回路とを備えたスイッチング電源装置において、コモンモードノイズがフィードバック制御に与える影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は第1の実施形態に係るスイッチング電源装置101の回路図である。
【
図2】
図2は第2の実施形態に係るスイッチング電源装置102A及び102Bの回路図である。
【
図3】
図3は第2の実施形態に係る更に別のスイッチング電源装置102C,102D,102Eの回路図である。
【
図4】
図4は第3の実施形態に係るスイッチング電源装置103の回路図である。
【
図5】
図5は第4の実施形態に係るスイッチング電源装置104の回路図である。
【
図6】
図6は第5の実施形態に係るスイッチング電源装置105の回路図である。
【
図7】
図7は第6の実施形態に係るスイッチング電源装置106の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0014】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係るスイッチング電源装置101の回路図である。このスイッチング電源装置101は直流電源Vinと負荷回路RLとの間に接続される。負荷回路RLには、並列に商用電力系統が接続されていてもよい。また、このスイッチング電源装置101は、インバータ回路10とノイズ低減回路とを備えている。
【0015】
インバータ回路10は、直流入力ラインDCinと、交流出力ラインACoutと、インダクタL1,L2と、インダクタL1,L2にスイッチング電流を流すスイッチング回路12と、直流入力ラインDCin間に並列接続された入力コンデンサCiと、交流出力ラインACout間に並列接続された出力コンデンサCoと、直流入力ラインDCin間の電圧を検出する直流入力電圧検出回路13と、交流出力ラインACout間の電圧を検出する交流出力電圧検出回路15と、交流出力ラインACoutの電流を検出する交流出力電流検出回路16と、フィードバック制御回路14と、を備える。フィードバック制御回路14は、アナログ回路又はMCU(Micro Controller Unit)やDSP(Digital Signal processor)などのデジタル回路で構成されている。
【0016】
フィードバック制御回路14は、その基準電位が直流入力ラインDCinの基準電位ラインに接続され、直流入力電圧に基づいて交流出力ラインACoutの交流出力電圧又は交流出力電流が所定値となるようにスイッチング回路12を制御する。
【0017】
ノイズ低減回路は、直流入力ラインDCin間に接続された第1ハーフブリッジコンデンサ回路21と、交流出力ラインACout間に接続された第2ハーフブリッジコンデンサ回路22と、第1ハーフブリッジコンデンサ回路21と第2ハーフブリッジコンデンサ回路22との間に接続された第1コモンモードチョークコイル31と、第1ハーフブリッジコンデンサ回路21の中点と第2ハーフブリッジコンデンサ回路22の中点とを電気的に接続する電気経路1と、を備える。第1コモンモードチョークコイル31は、互いに磁気結合するコイルL11,L12で構成されている。第1ハーフブリッジコンデンサ回路21、第2ハーフブリッジコンデンサ回路22及び電気経路1は、グランドとは異なる電位のコモンモードノイズを平衡化するノイズ平衡回路を構成する。言い換えれば、ノイズ低減回路は、ノイズ平衡回路および第1コモンモードチョークコイル31を含む。
【0018】
上記ノイズ平衡回路は、コモンモードノイズがフィードバック制御回路14に与える影響を抑制する。第1ハーフブリッジコンデンサ回路21の中点は直流入力ラインDCinの中間電位、第2ハーフブリッジコンデンサ回路22の中点は交流出力ラインACoutの中間電位であり、両中間電位部が電気経路1を通して共通接続されることで、スイッチング回路12で発生するコモンモードノイズ成分の電流が電気経路1を通じて入力直流ラインと出力交流ライン間を流れる。コモンモードノイズは、比較的周波数が高く、位相も揃っていない。したがって、これらのコモンモードノイズが電気経路1に流れることによって互いに相殺される。これにより、グランドとは異なる電位のコモンモードノイズは平衡化される。
【0019】
電気経路1は金属プレートで構成されることが好ましい。そのことにより、電気経路1による電圧降下が小さくなって、第1ハーフブリッジコンデンサ回路21の中点と第2ハーフブリッジコンデンサ回路22の中点との電位差が小さくなる。そのため、上記コモンモードノイズの平衡化がより有効に作用する。
【0020】
また、第1コモンモードチョークコイル31は第1ハーフブリッジコンデンサ回路21と第2ハーフブリッジコンデンサ回路22との間に接続されている。この第1コモンモードチョークコイル31は、スイッチング回路12で発生されるコモンモードノイズ成分の電流を小さくし、コモンモードノイズがフィードバック制御回路14に与える影響を抑制する。
【0021】
EMI対策のためには、コンデンサC11,C12,C21,C22の容量を最適化する必要がある。コンデンサ容量を調整(変更)すると、従来はフィードバック制御回路14に影響を与えることになる。この場合、フィードバック制御回路14の再設計が必要となり、設計期間が長期化する。本実施形態によれば、スイッチング回路12で発生するコモンモードノイズ成分の電流が電気経路1を通じて入力直流ラインと出力交流ライン間を流れる電流が小さくなるといった作用によって、フィードバック制御回路14に与える影響が小さい。
【0022】
このようにして、設計期間を短縮化でき、安全性を確保でき、かつ小型で低価格なスイッチング電源装置が得られる。すなわち、スイッチング電源装置101は、インバータ回路とフィードバック制御回路とを備えた構成において、コモンモードノイズがフィードバック制御に与える影響を抑制しながら、次の作用効果も奏することができる。スイッチング電源装置101は、EMI対策回路を構成するコンデンサの容量を調整する場合(最適化する場合)に設計期間を短縮化でき、かつ、漏洩電流を増大させることなく電力変換動作を実現して安全性を確保できる。さらには、スイッチング電源装置101は、小型で低価格な構成を実現できる。
【0023】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、電気経路1にインピーダンス素子が接続されたスイッチング電源装置について例示する。
【0024】
図2は第2の実施形態に係るスイッチング電源装置102A及び102Bの回路図である。これらスイッチング電源装置102A,102Bは、インバータ回路10と、第1ハーフブリッジコンデンサ回路21と、第2ハーフブリッジコンデンサ回路22と、第1コモンモードチョークコイル31と、を備える。また、第1ハーフブリッジコンデンサ回路21の中点と第2ハーフブリッジコンデンサ回路22の中点とを電気的に接続する電気経路1を備える。
【0025】
スイッチング電源装置102Aの電気経路1にはインピーダンス素子Z1が直列に接続されている。このインピーダンス素子Z1は少なくともインダクタンス成分又は抵抗成分を有する。
【0026】
スイッチング電源装置102Bの電気経路1とグランドとの間にはインピーダンス素子Z2が接続されている。このインピーダンス素子Z2は、少なくともキャパシタンス成分、インダクタンス成分又は抵抗成分を有する。この「グランド」は、アースやフレームグランドである。
【0027】
スイッチング電源装置102Aのように、電気経路1にインピーダンス素子Z1を直列接続することにより、第1コモンモードチョークコイル31によるコモンモードノイズの抑制効果が不十分であっても、インピーダンス素子Z1により、コモンモードノイズの抑制が補われる。つまり、インピーダンス素子Z1が電気経路1に流れる高周波コモンモード電流の振動を減衰し、コモンモードノイズが抑制される。
【0028】
スイッチング電源装置102Bでは、電気経路1とグランドとの間にインピーダンス素子Z2が接続されている。このインピーダンス素子Z2は少なくともキャパシタンス成分、インダクタンス成分又は抵抗成分を有する。
【0029】
このように、電気経路1とグランドとの間にインピーダンス素子Z2を接続することにより、第1コモンモードチョークコイル31によるコモンモードノイズの抑制効果が不十分であっても、インピーダンス素子Z2により、コモンモードノイズの抑制が補われる。つまり、第1ハーフブリッジコンデンサ回路21と第2ハーフブリッジコンデンサ回路22とが電気経路1を通して平衡するために流れるコモンモード電流がインピーダンス素子Z2を通してグランドに流れる。この電流(漏れ電流)はラインバイパスコンデンサ回路を設けた場合に、そのラインバイパスコンデンサ回路からグランドに漏れる電流に比べれば少ない。そのため、漏れ電流を低減しつつ、コモンモードノイズを抑制できる。
【0030】
図3は第2の実施形態に係る更に別のスイッチング電源装置102C,102D,102Eの回路図である。これらスイッチング電源装置102C,102D,102Eでは、電気経路1とグランドとの間にインピーダンス素子Z2が接続されている。
【0031】
スイッチング電源装置102Cでは、電気経路1に対するインピーダンス素子Z2の接続点と第2ハーフブリッジコンデンサ回路22の中点との間にインピーダンス素子Z1が直列に接続されている。また、スイッチング電源装置102Dでは、電気経路1に対するインピーダンス素子Z2の接続点と第1ハーフブリッジコンデンサ回路21の中点との間にインピーダンス素子Z3が直列に接続されている。スイッチング電源装置102Eでは、電気経路1に対するインピーダンス素子Z2の接続点と第2ハーフブリッジコンデンサ回路22の中点との間にインピーダンス素子Z1が直列に接続されていて、電気経路1に対するインピーダンス素子Z2の接続点と第1ハーフブリッジコンデンサ回路21の中点との間にインピーダンス素子Z3が直列に接続されている。
【0032】
図3に示した各スイッチング電源装置102C,102D,102Eにおいて、インピーダンス素子Z1,Z3が抵抗又はインダクタであり、インピーダンス素子Z2がコンデンサであれば、これらインピーダンス素子によってローパスフィルタが構成される。また、インピーダンス素子Z1,Z3がコンデンサであり、インピーダンス素子Z2が抵抗又はインダクタであれば、これらインピーダンス素子によってハイパスフィルタが構成される。
【0033】
このように、電気経路1に周波数フィルタを接続することにより、交流出力ラインACoutへ出力されるコモンモード電圧の変動に対する、直流入力ラインDCinのコモンモード電圧へのフィードバックの応答性を適宜定めることができる。
【0034】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第2コモンモードチョークコイル32を備えるスイッチング電源装置103について例示する。
【0035】
図4は第3の実施形態に係るスイッチング電源装置103の回路図である。このスイッチング電源装置103は直流電源Vinと負荷回路RLとの間に接続される。また、このスイッチング電源装置103は、インバータ回路10とノイズ低減回路とを備えている。
図4において、インバータ回路10以外の回路がノイズ低減回路を構成している。
【0036】
第3の実施形態に係るスイッチング電源装置103は、第2ハーフブリッジコンデンサ回路22の負荷側に接続された第2コモンモードチョークコイル32を備える。その他の構成は
図1に示したスイッチング電源装置101と同様である。
【0037】
第2コモンモードチョークコイル32は、互いに磁気結合するコイルL21,L22で構成されている。第2コモンモードチョークコイル32は、インバータ回路10の交流出力ラインACoutに重畳されるコモンモードノイズを抑制する。
【0038】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、交流出力ラインに接続されたフィルタ用コンデンサが接続されたスイッチング電源装置について例示する。
【0039】
図5は第4の実施形態に係るスイッチング電源装置104の回路図である。このスイッチング電源装置104は直流電源Vinと負荷回路RLとの間に接続される。また、このスイッチング電源装置104は、インバータ回路10とノイズ低減回路とを備えている。
図5において、インバータ回路10以外の回路がノイズ低減回路を構成している。
【0040】
第4の実施形態に係るスイッチング電源装置104は、直列接続された2つのコンデンサC31,C32を備え、この回路が交流出力ラインACout間に接続され、中点がグランドに接続されている。その他の構成は
図4に示したスイッチング電源装置103と同様である。
【0041】
コンデンサC31,C32による回路は、インバータ回路10の交流出力ラインACoutに重畳されるコモンモードノイズを抑制する。
【0042】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、フィードバック制御回路14の基準電位と電気経路1との間に接続されたコンデンサC4を備えるスイッチング電源装置について例示する。
【0043】
図6は第5の実施形態に係るスイッチング電源装置105の回路図である。このスイッチング電源装置105は直流電源Vinと負荷回路RLとの間に接続される。また、このスイッチング電源装置105は、インバータ回路10とノイズ低減回路とを備えている。
図6において、インバータ回路10以外の回路がノイズ低減回路を構成している。
【0044】
第5の実施形態に係るスイッチング電源装置105は、フィードバック制御回路14の基準電位と電気経路1との間に接続されたコンデンサC4を備える。その他の構成は
図5に示したスイッチング電源装置104と同様である。
【0045】
フィードバック制御回路14の基準電位と電気経路1との間にコンデンサC4が接続されていることにより、電気経路1の電位が安定し、コモンモードノイズを抑制しつつ、電気経路が電圧や電流の検出信号線に与える影響を低減できる。
【0046】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、フィードバック制御回路14の基準電位とグランドとの間に接続されたコンデンサC5を備えるスイッチング電源装置について例示する。
【0047】
図7は第6の実施形態に係るスイッチング電源装置106の回路図である。このスイッチング電源装置106は直流電源Vinと負荷回路RLとの間に接続される。また、このスイッチング電源装置106は、インバータ回路10とノイズ低減回路とを備えている。
図7において、インバータ回路10以外の回路がノイズ低減回路を構成している。
【0048】
第6の実施形態に係るスイッチング電源装置106は、フィードバック制御回路14の基準電位とグランドとの間に接続されたコンデンサC5を備える。その他の構成は
図5に示したスイッチング電源装置104と同様である。
【0049】
フィードバック制御回路14の基準電位とグランドとの間にコンデンサC5が接続されていることにより、電気経路1の電位が安定し、コモンモードノイズを抑制しつつ、電気経路1が電圧や電流の検出信号線に与える影響を低減できる。
【0050】
最後に、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。当業者によって適宜変形及び変更が可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【符号の説明】
【0051】
ACout…交流出力ライン
C11,C12,C21,C22,C31,C32,C4,C5…コンデンサ
Ci…入力コンデンサ
Co…出力コンデンサ
DCin…直流入力ライン
L1,L2…インダクタ
L11,L12…コイル
L21,L22…コイル
RL…負荷回路
Vin…直流電源
Z1,Z2,Z3…インピーダンス素子
1…電気経路
10…インバータ回路
12…スイッチング回路
13…直流入力電圧検出回路
14…フィードバック制御回路
15…交流出力電圧検出回路
16…交流出力電流検出回路
21…第1ハーフブリッジコンデンサ回路
22…第2ハーフブリッジコンデンサ回路
31…第1コモンモードチョークコイル
32…第2コモンモードチョークコイル
101,102A,102B,102C,102D,102E,103,104,105,106…スイッチング電源装置