(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2023089627
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2019015324の分割
【原出願日】2019-01-31
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】依田 智裕
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-28095(JP,A)
【文献】特開2018-24133(JP,A)
【文献】特開2018-34412(JP,A)
【文献】特開2014-181102(JP,A)
【文献】特開2013-216048(JP,A)
【文献】特開2016-215428(JP,A)
【文献】特開2015-178418(JP,A)
【文献】特開2015-20417(JP,A)
【文献】特開2013-67081(JP,A)
【文献】特開2019-158243(JP,A)
【文献】特開2013-22824(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102059858(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に媒体を搬送する搬送部と、
前記媒体に液体を吐出する吐出部と、
前記媒体を支持する支持部と、
前記支持部に対向する非接触ヒーターと、
を備え、
前記支持部は、第1支持部と、前記第1支持部よりも前記搬送方向の下流に位置する第
2支持部と、を有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部よりも熱膨張係数が小さい材料で構成され、
前記非接触ヒーターは、気体を取り込む吸気口と前記気体を送り出す送風口とを繋ぐ循
環路と、前記循環路内に設けられる加熱部と、を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
搬送方向に媒体を搬送する搬送部と、
前記媒体に液体を吐出する吐出部と、
前記媒体を支持する支持部と、
前記支持部に対向する非接触ヒーターと、
前記媒体を巻き取る巻取部
と、
を備え、
前記支持部は、第1支持部と、前記第1支持部よりも前記搬送方向の下流に位置する第
2支持部と、を有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部よりも熱膨張係数が小さい材料で構成され、
前記非接触ヒーターは、気体を取り込む吸気口と前記気体を送り出す送風口とを繋ぐ循
環路と、前記循環路内に設けられる加熱部と、を有し、
前記巻取部は、前記第2支持部よりも前記搬送方向の下流に位置することを特徴とする
液体吐出装置。
【請求項3】
搬送方向に媒体を搬送する搬送部と、
前記媒体に液体を吐出する吐出部と、
前記媒体を支持する支持部と、
前記支持部に対向する非接触ヒーターと、
前記媒体にテンションを付与するテンション付与部材
と、
を備え、
前記支持部は、第1支持部と、前記第1支持部よりも前記搬送方向の下流に位置する第
2支持部と、を有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部よりも熱膨張係数が小さい材料で構成され、
前記非接触ヒーターは、気体を取り込む吸気口と前記気体を送り出す送風口とを繋ぐ循
環路と、前記循環路内に設けられる加熱部と、を有し、
前記テンション付与部材は、前記第2支持部よりも前記搬送方向の下流に位置すること
を特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1支持部は、アルミ材で構成され、前記アルミ材の表面は酸化皮膜が形成される
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2支持部は、SUS材で構成されることを特徴とする請求項1から請求項4の何
れか一項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送される媒体を支持する支持部と、支持部に支持される媒体に赤外線を照射することにより媒体を乾燥させる照射部とを備える乾燥装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした乾燥装置においては、照射部による熱によって、支持部が膨張することがある。支持部が膨張すると、支持部の形状が変化することによって、支持部上を搬送される媒体が斜めに傾くことがある。支持部上において媒体が斜めに傾くと、媒体が適切に搬送されないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する乾燥装置は、搬送される媒体を乾燥させる乾燥装置であって、前記媒体を支持する支持部と、前記支持部に対向する非接触ヒーターと、を備え、前記支持部は、第1支持部と、搬送される前記媒体の搬送方向において前記第1支持部と異なる位置に位置する第2支持部とを有し、前記媒体は、前記第2支持部に沿って屈曲し、前記第1支持部は、アルミ材で構成され、前記第2支持部は、前記アルミ材よりも熱膨張係数が小さい材料で構成される。
【0006】
上記課題を解決する液体吐出装置は、媒体を支持する支持部と、前記支持部に対向する非接触ヒーターと、前記媒体を搬送する搬送部と、を備え、前記支持部は、第1支持部と、搬送される前記媒体の搬送方向において前記第1支持部と異なる位置に位置する第2支持部とを有し、前記媒体は、前記第2支持部に沿って屈曲し、前記第1支持部は、アルミ材で構成され、前記第2支持部は、前記アルミ材よりも熱膨張係数が小さい材料で構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】乾燥装置を備える液体吐出装置の一実施形態を模式的に示す側面図。
【
図3】支持部を変更した乾燥装置を備える液体吐出装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、乾燥装置を備える液体吐出装置の一実施形態について図を参照しながら説明する。液体吐出装置は、例えば、用紙等の媒体に液体の一例であるインクを吐出することによって、文字、写真等の画像を記録するインクジェット式のプリンターである。
【0009】
図1に示すように、液体吐出装置11は、搬送される媒体99に液体を吐出する吐出部28を備える。液体吐出装置11は、搬送される媒体99を乾燥させる乾燥装置31を備える。本実施形態の乾燥装置31は、吐出部28により液体を吐出された媒体99を乾燥させる。
【0010】
液体吐出装置11は、筐体12を備える。液体吐出装置11は、筐体12を支持する基台13を備える。本実施形態においては、基台13の上方に筐体12が位置する。
液体吐出装置11は、媒体99を搬送する搬送部14を備える。搬送部14は、筐体12内に設けられる。本実施形態の搬送部14は、筐体12外に載置された媒体99を搬送する。
【0011】
液体吐出装置11は、媒体99が巻き重ねられたロール体100を載置可能な載置部16を備えてもよい。載置部16は、例えば基台13に取り付けられる。載置部16は、液体が吐出される前の媒体99が巻き重ねられたロール体100を回転可能な状態で支持する。搬送部14が駆動すると、ロール体100から媒体99が繰り出される。
【0012】
液体吐出装置11は、液体吐出装置11が設置される設置面に載置されたロール体100から繰り出される媒体99に液体を吐出するように構成されてもよい。液体吐出装置11は、液体吐出装置11とは別の装置から繰り出される媒体99に液体を吐出するように構成されてもよい。例えば、液体吐出装置11とは別の装置が載置部16を備えてもよい。液体吐出装置11は、ロール体100から繰り出される媒体99に液体を吐出する構成に限らない。例えば、液体吐出装置11は、ファンホールド紙のような長尺な媒体99に液体を吐出する構成であってもよい。
【0013】
液体吐出装置11は、媒体99を巻き取る巻取部17を備えてもよい。巻取部17は、例えば基台13に取り付けられる。巻取部17は、液体が吐出された媒体99をロール体100として巻き取る。巻取部17は、乾燥装置31を通過した媒体99を巻き取る。液体吐出装置11は、液体が吐出された媒体99を液体吐出装置11とは別の装置に搬送するように構成されてもよい。例えば、液体吐出装置11とは別の装置が巻取部17を備えてもよい。液体吐出装置11は、液体が吐出された媒体99を液体吐出装置11とは別の装置に巻き取らせるように構成されてもよい。
【0014】
液体吐出装置11は、媒体99にテンションを付与するテンション付与部材18を備えてもよい。テンション付与部材18は、媒体99に接触することによって媒体99にテンションを付与する。テンション付与部材18が媒体99にテンションを付与することにより、媒体99に対して精度よく液体を着弾させることができる。本実施形態のテンション付与部材18は、媒体99において乾燥装置31を通過した部分に接触する。
【0015】
テンション付与部材18は、例えば基台13に取り付けられる。テンション付与部材18は、基台13に対して変位可能に取り付けられてもよい。こうすると、テンション付与部材18を変位させることによって、媒体99に付与するテンションの大きさを調節できる。
【0016】
テンション付与部材18は、媒体99に付与されるテンションが一定となるように変位してもよい。この場合、テンション付与部材18は、例えば巻取部17が媒体99を巻き取る速度に応じて変位する。
【0017】
液体吐出装置11とは別の装置が媒体99にテンションを付与してもよい。例えば、液体吐出装置11とは別の装置がテンション付与部材18を備えてもよい。
本実施形態の液体吐出装置11は、第1支持台21及び第2支持台22を備える。第1支持台21及び第2支持台22は、搬送部14によって搬送される媒体99を支持する。
搬送される媒体99の搬送方向において、第1支持台21、第2支持台22の順に位置する。第2支持台22は、筐体12内に位置する。なお、本実施形態においては、搬送経路に沿って媒体99が搬送される方向を、搬送方向とする。
【0018】
吐出部28は、筐体12内に位置する。本実施形態の吐出部28は、第2支持台22と対向する位置に位置する。そのため、吐出部28は、第2支持台22に支持される媒体99に液体を吐出する。
【0019】
本実施形態の液体吐出装置11は、吐出部28を搭載するキャリッジ29を備える。キャリッジ29は、搬送される媒体99に対して走査する。すなわち、本実施形態の液体吐出装置11は、吐出部28が媒体99に対して走査するシリアルプリンターである。液体吐出装置11は、吐出部28が長尺に設けられるラインプリンターでもよい。
【0020】
本実施形態の搬送部14は、第1ローラー25と、第2ローラー26とを有する。第1ローラー25及び第2ローラー26は、媒体99を挟み込む状態で回転することにより媒体99を搬送する。第1ローラー25及び第2ローラー26は、搬送方向において第1支持台21と第2支持台22との間で媒体99を挟み込むように位置する。
【0021】
次に、乾燥装置31について説明する。
乾燥装置31は、媒体99を支持する支持部32と、支持部32に対向する非接触ヒーターとしての照射ヒーター33とを備える。本実施形態の支持部32は、巻取部17に巻き取られる媒体99を支持する。本実施形態の支持部32は、テンション付与部材18によってテンションを付与される媒体99を支持する。本実施形態の支持部32は、吐出部28によって液体を吐出される媒体99を支持する。なお、本実施形態の乾燥装置31は、非接触ヒーターとして照射ヒーター33を備えるが、支持部32に対向するヒーターであればよい。例えば、後述の循環路44内に加熱部が設けられ、加熱された空気が、後述の送風口47から送られる構成でもよい。
【0022】
支持部32は、例えば金属で構成される。支持部32は、第1支持部35と、搬送方向において第1支持部35と異なる位置に位置する第2支持部36とを有する。本実施形態の第2支持部36は、搬送方向において、第1支持部35よりも下流に位置する。
【0023】
本実施形態の第1支持部35は、第2支持部36と連なるように構成される。そのため、本実施形態において、第1支持部35の下流端35Bは、第2支持部36の上流端36Aと接触する。下流端35Bとは、第1支持部35において搬送方向の下流の端部を指す。上流端36Aとは、第2支持部36において搬送方向の上流の端部を指す。
【0024】
媒体99は、第2支持部36に接触することによって屈曲する。すなわち、媒体99は、第2支持部36に沿って屈曲する。媒体99は、例えば、第2支持部36の下流端36Bにおいて屈曲する。下流端36Bとは、第2支持部36において搬送方向の下流の端部を指す。本実施形態において、媒体99は、第2支持部36の下流端36Bに巻き掛かるように屈曲する。なお、本明細書において、屈曲するとは、単に曲がることを指し、湾曲することも含む。
【0025】
本実施形態において、媒体99は、巻取部17に巻き取られることによって、第2支持部36の下流端36Bにおいて屈曲する。すなわち、媒体99は、巻取部17に巻き取られることによって引っ張られる。このとき、媒体99は、第2支持部36の下流端36Bに巻き掛かるように接触する。これにより、媒体99は、第2支持部36の下流端36Bにおいて屈曲する。第2支持部36の下流端36Bは、媒体99を巻取部17に向けてガイドするともいえる。媒体99は、液体吐出装置11とは別の装置に搬送されることによって、第2支持部36の下流端36Bにおいて屈曲されてもよい。
【0026】
本実施形態のテンション付与部材18は、媒体99を第2支持部36に押し付けるように接触する。これにより、媒体99は、第2支持部36の下流端36Bに沿うように屈曲する。第2支持部36の下流端36Bは、媒体99をテンション付与部材18に向けてガイドするともいえる。
【0027】
本実施形態の支持部32は、第3支持部37を有する。第3支持部37は、搬送方向において、第1支持部35よりも上流に位置する。そのため、搬送方向において、第3支持部37、第1支持部35、第2支持部36の順に位置する。すなわち、第3支持部37は支持部32の上流部分を構成し、第1支持部35は支持部32の中流部分を構成し、第2支持部36は支持部32の下流部分を構成する。第3支持部37は、搬送方向において、吐出部28によって液体が吐出される位置よりも下流に位置する。
【0028】
本実施形態の第3支持部37は、第1支持部35と連なるように構成される。そのため、本実施形態において、第3支持部37の下流端37Bは、第1支持部35の上流端35Aと接触している。下流端37Bとは、第3支持部37において搬送方向の下流の端部を指す。上流端35Aとは、第1支持部35において搬送方向の上流の端部を指す。第3支持部37の上流端37Aは、筐体12内に位置する。上流端37Aとは、第3支持部37において搬送方向の上流の端部を指す。
【0029】
媒体99は、第3支持部37に接触することによって屈曲する。すなわち、媒体99は、第3支持部37に沿って屈曲する。本実施形態の第3支持部37は、屈曲する屈曲部38を有する。そのため、第3支持部37に支持される媒体99は、屈曲部38に沿うように屈曲する。媒体99は、第3支持部37の屈曲部38に巻き掛かるように屈曲する。
【0030】
屈曲部38は、第3支持部37において、上流端37Aと下流端37Bとの間において上流端37A寄りとなる位置に位置する。本実施形態において、媒体99を屈曲させながら支持する第3支持部37に対し、第1支持部35及び第2支持部36は、媒体99を平坦な状態で支持する。
【0031】
媒体99は、第2支持部36の下流端36Bと第3支持部37の屈曲部38によって屈曲する。媒体99が屈曲すると、媒体99の搬送される向きが変化する。本実施形態においては、屈曲部38において媒体99が屈曲すると、媒体99の搬送される向きが、第2支持台22に沿う向きから第1支持部35に沿う向きに変更される。第2支持部36の下流端36Bにおいて媒体99が屈曲すると、媒体99の搬送される向きが、第1支持部35に沿う向きから第2支持部36の下流端36Bからテンション付与部材18に向かう向きに変更される。
【0032】
照射ヒーター33は、支持部32に向けて赤外線を照射する。照射ヒーター33は、支持部32及び支持部32に支持される媒体99を加熱する。これにより、媒体99は、支持部32上を搬送される際に加熱される。その結果、媒体99が乾燥される。
【0033】
本実施形態の照射ヒーター33は、ヒーター管で構成される。照射ヒーター33は、支持部32において媒体99に接触する面である支持部32の表面に対向するように位置する。照射ヒーター33は、搬送される媒体99の幅方向において長尺となるように構成される。
【0034】
本実施形態の乾燥装置31は、2つの照射ヒーター33を有する。2つの照射ヒーター33は、互いに平行となる姿勢で位置する。2つの照射ヒーター33は、支持部32に沿うように位置する。
【0035】
本実施形態の乾燥装置31は、照射ヒーター33を収容するケース42と、ケース42内において気体を循環させる循環部43とを有する。ケース42は、ケース42の開口が支持部32の表面を向くように位置する。
【0036】
循環部43は、気体が流れる循環路44と、循環路44に位置するファン45とを有する。循環路44は、気体を取り込む吸気口46と、気体を送り出す送風口47とを繋ぐ流路である。循環路44は、照射ヒーター33を囲むように延びる。吸気口46は、第2支持部36と対向するように位置する。送風口47は、第3支持部37と対向するように位置する。循環部43は、照射ヒーター33によって加熱された気体をケース42内において循環させる。これにより、媒体99の乾燥が促進される。
【0037】
乾燥装置31は、照射ヒーター33の熱を支持部32に向けて反射する反射板48を有してもよい。こうすると、支持部32に支持される媒体99を照射ヒーター33によって効果的に加熱できる。
【0038】
第1支持部35は、アルミ材で構成される。一般的に、アルミ材は、高い熱伝導率を有する。そのため、照射ヒーター33の熱によって第1支持部35が温まりやすい。これにより、第1支持部35に支持される媒体99を効果的に加熱できる。
【0039】
アルミ材とは、例えばJIS H 4000に規定される材料である。本実施形態の第1支持部35は、A5052Pで示される材料で構成される。第1支持部35を熱伝導率の高い材料で構成することにより、第1支持部35において媒体99を効果的に加熱できる。
【0040】
また、熱伝導率が高い部材で第1支持部35が構成されると、熱伝導率が低い部材で第1支持部35が構成される場合と比べて、幅方向における媒体99の温度ばらつきが生じにくい。一般的に、媒体99の熱容量よりも金属で構成される支持部32の熱容量が大きいために、照射ヒーター33によって媒体99と支持部32とが同様に加熱されるとき、支持部32の温度の方が媒体99の温度よりも低くなる。また、支持部32上を媒体99が搬送される際、支持部32において媒体99が通過する領域においては、照射ヒーター33から発する熱が媒体99によって遮蔽され、支持部32よりも媒体99の方が高温になる。そのため、媒体99から第1支持部35に熱が移動するが、特に熱が移動しやすい媒体99の幅方向の端部の温度が下がりやすい。したがって、媒体99において、端部分の温度が中央部分の温度と比べて低くなる。
【0041】
媒体99において温度のばらつきがあると、温度の高い部分では熱によるダメージが発生するおそれがあり、温度の低い部分では乾燥が不足するおそれがある。そのため、媒体99においては、温度のばらつきが小さい方が好ましい。この点、熱伝導率が高い部材で第1支持部35が構成されると、比較的温度が高い媒体99の中央部分からも熱が移動しやすく、また、第1支持部35内で熱が移動しやすいため、媒体99の中央部分の温度と媒体99の端部分の温度との差が小さくなりやすい。したがって、幅方向における媒体99の温度ばらつきが小さくなりやすい。
【0042】
乾燥装置31は、支持部32上を搬送される媒体99に対し、第1支持部35上において最も乾燥を促進させる。そのため、第1支持部35は、輻射率の高い材料で構成されるとよい。この点、アルミ材は、その表面に酸化皮膜が形成されることにより、高い輻射率を発揮する。
【0043】
輻射率の高いアルミ材で第1支持部35が構成されると、照射ヒーター33によって第1支持部35を素早く高温にできる。すなわち、第1支持部35は、輻射率が高いために、照射ヒーター33からの赤外線を効果的に吸収する。これにより、第1支持部35が素早く温められる。第1支持部35がアルミ材で構成されると、乾燥装置31を稼動させる際のウォームアップに要する時間を短縮できる。
【0044】
輻射率の高いアルミ材で第1支持部35が構成されると、媒体99の幅方向における温度のばらつきを低減できる。輻射率の高いアルミ材で第1支持部35が構成されると、媒体99と支持部32との温度差が少なくなる。媒体99は、例えば用紙である場合、高い輻射率を有する。第1支持部35は、アルミ材で構成されることにより、高い輻射率を有する。そのため、媒体99及び第1支持部35は、照射ヒーター33からの赤外線を効果的に吸収する。これにより、媒体99と第1支持部35との温度差が低減される。これにより、媒体99の端部の温度が低下しにくくなり、幅方向における媒体99の温度ばらつきが低減される。仮に、輻射率の低い材料で第1支持部35を構成すると、媒体99と第1支持部35との温度差が大きくなりやすい。
【0045】
本実施形態の第1支持部35の表面51は、アルマイト処理されている。第1支持部35の表面51にアルマイト処理を施すと、第1支持部35の輻射率が向上する。これにより、媒体99の乾燥を促進させることができる。
【0046】
支持部32は、照射ヒーター33による加熱によって膨張することがある。支持部32が膨張すると、支持部32上を搬送される媒体99の姿勢が変化するおそれがある。特に、媒体99を屈曲させる第2支持部36が膨張すると、第2支持部36の形状が変化することによって、支持部32上を搬送される媒体99の姿勢が変化するおそれがある。媒体99は、第2支持部36の下流端36Bに沿うように屈曲する。すなわち、媒体99は、第2支持部36の下流端36Bに強く接触する。そのため、第2支持部36の下流端36Bの形状が媒体99の姿勢に影響する。
【0047】
第2支持部36が膨張すると、搬送部14が媒体99を挟む位置から第2支持部36の下流端36Bまでの距離である経路長が変化する。このとき、媒体99の幅方向においてこの経路長に差が生じると、支持部32上において媒体99が斜めに傾きやすい。
【0048】
本実施形態においては、屈曲部38を有する第3支持部37が膨張すると、第3支持部37の形状が変化することによって、支持部32上を搬送される媒体99の姿勢が変化するおそれがある。媒体99は、屈曲部38に沿うように屈曲する。すなわち、媒体99は、第3支持部37の屈曲部38に強く接触する。そのため、第3支持部37の屈曲部38の形状が媒体99の姿勢に影響する。
【0049】
第3支持部37が膨張すると、搬送部14が媒体99を挟む位置から屈曲部38までの距離である経路長が変化する。このとき、媒体99の幅方向においてこの経路長に差が生じると、支持部32上において媒体99が斜めに傾きやすい。
【0050】
上述したように、支持部32のうち、媒体99を屈曲させるように支持する第2支持部36、第3支持部37が膨張すると、媒体99の姿勢に影響しやすい。そのため、第2支持部36又は第3支持部37が膨張すると、支持部32上を搬送される媒体99が斜めに傾くおそれがある。第1支持部35は、搬送される媒体99を平坦な状態で支持するだけであり、媒体99を屈曲させるように接触しないため、膨張したとしても媒体99の姿勢に影響しにくい。
【0051】
第1支持部35を構成するアルミ材は、熱伝導率及び輻射率が高い反面、熱膨張係数が高い材料である。そのため、第2支持部36を熱膨張係数の高いアルミ材で構成すると、照射ヒーター33による加熱によって第2支持部36が膨張しやすくなる。第2支持部36が膨張すると、媒体99が斜めに傾くおそれがある。
【0052】
熱膨張係数は、温度域によって変化する。本明細書において、任意の部材の熱膨張係数とは、照射ヒーター33が加熱する温度範囲における平均の熱膨張係数を指す。照射ヒーター33は、例えば60℃から100℃の温度範囲で駆動する。この場合、本実施形態における、任意の部材の熱膨張係数は、60℃から100℃の温度範囲における平均値である。
【0053】
図2に示すように、例えば、照射ヒーター33の熱によって第2支持部36が膨張すると、第2支持部36の下流端36Bの形状が2点鎖線で示すように斜めになることがある。この場合、第2支持部36の下流端36Bの形状に合わせて、媒体99が斜めに傾くおそれがある。本実施形態の第2支持部36においては、上流端36Aが第1支持部35の下流端35Bと接触しているため、膨張による形状の変化が下流端36Bにあらわれやすい。そのため、第2支持部36は、アルミ材よりも熱膨張係数の小さい材料で構成される。これにより、第2支持部36は、第1支持部35と比較して膨張しにくくなる。第2支持部36が膨張しにくくなることによって、支持部32上を搬送される媒体99が斜めに傾くことを抑制できる。
【0054】
本実施形態の第2支持部36は、SUS材で構成される。一般的に、SUS材の熱膨張係数は、アルミ材の熱膨張係数よりも小さい。第2支持部36は、例えばSUS304で構成される。
【0055】
照射ヒーター33の熱によって第3支持部37が膨張すると、屈曲部38の形状が斜めになることがある。この場合、屈曲部38の形状に合わせて、媒体99が斜めに傾くおそれがある。本実施形態の第3支持部37においては、下流端37Bが第1支持部35の上流端35Aと接触しているため、膨張による形状の変化が上流端37Aにあらわれやすい。そのため、上流端37A寄りに位置する屈曲部38の形状が変化しやすい。
【0056】
本実施形態の第3支持部37は、アルミ材よりも熱膨張係数が小さい材料で構成される。これにより、第3支持部37は、第1支持部35と比較して膨張しにくくなる。第3支持部37が膨張しにくくなることによって、支持部32上を搬送される媒体99が斜めに傾くことを抑制できる。第3支持部37は、例えば第2支持部36と同様の材料で構成される。そのため、第3支持部37は、SUS材で構成される。第3支持部37は、SUS304で構成される。
【0057】
本実施形態の第2支持部36は、搬送方向において、第1支持部35よりも下流且つ巻取部17よりも上流に位置する。そのため、搬送される媒体99が斜めに傾くことを抑制することにより、斜めに傾いた状態の媒体99を巻取部17が巻き取るおそれを低減できる。
【0058】
本実施形態の第2支持部36は、搬送方向において、第1支持部35よりも下流且つテンション付与部材18が媒体99に接触する位置よりも上流に位置する。こうすると、テンション付与部材18により媒体99にテンションが付与される場合において、搬送される媒体99が斜めに傾くことを抑制できる。
【0059】
テンション付与部材18により媒体99が第2支持部36に押し付けられる場合、第2支持部36が膨張すると、媒体99が一層斜めに傾きやすい。そのため、第2支持部36を熱膨張係数の高い材料で構成することにより、テンション付与部材18が媒体99を第2支持部36に押し付けることによって媒体99の姿勢の変化が促進されるおそれを低減できる。
【0060】
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)媒体99は、第2支持部36に沿って屈曲する。そのため、第2支持部36が照射ヒーター33の加熱によって膨張すると、第2支持部36の形状が変化することによって、支持部32上を搬送される媒体99の姿勢が変化するおそれがある。その結果、搬送される媒体99が斜めに傾くおそれがある。これに対して、第1支持部35は、媒体99の乾燥を促進させるために、高い熱伝導率及び高い輻射率を有するアルミ材によって構成される。一方、第2支持部36は、アルミ材よりも熱膨張係数が小さい材料で構成される。すなわち、第2支持部36は、第1支持部35と比較して膨張しにくい。したがって、支持部32上において媒体99が斜めに傾くことを抑制できる。
【0061】
(2)第2支持部36は、搬送方向において、第1支持部35よりも下流且つ巻取部17よりも上流に位置する。この場合、斜めに傾いた状態の媒体99を巻取部17が巻き取るおそれを低減できる。
【0062】
(3)第2支持部36は、搬送方向において、第1支持部35よりも下流且つテンション付与部材18が媒体99に接触する位置よりも上流に位置する。テンション付与部材18により媒体99が第2支持部36に押し付けられる場合、第2支持部36が膨張すると、媒体99が一層斜めに傾きやすい。この点、上記実施形態によれば、テンション付与部材18により媒体99にテンションが付与される場合において、搬送される媒体99が斜めに傾くことを抑制できる。
【0063】
(4)媒体99は、第3支持部37に接触することによって屈曲する。そのため、第3支持部37が照射ヒーター33の加熱によって膨張すると、第3支持部37の形状が変化することによって、支持部32上を搬送される媒体99の姿勢が変化するおそれがある。
その結果、搬送される媒体99が斜めに傾くおそれがある。これに対して、第3支持部37は、アルミ材よりも熱膨張係数が小さい部材で構成される。すなわち、第3支持部37は、第1支持部35と比較して膨張しにくい。したがって、搬送される媒体99が斜めに傾くことを抑制できる。吐出部28と第3支持部37との間で媒体99が斜めに傾くことを抑制することによって、吐出部28によって吐出される液体の媒体99に対する着弾位置がずれるおそれを低減できる。
【0064】
(5)第1支持部35において媒体99に接触する表面51は、アルマイト処理されている。アルマイト処理を施すことにより、第1支持部35の輻射率が向上する。すなわち、第1支持部35が温まりやすいため、媒体99の乾燥を促進させることができる。
【0065】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・
図3に示すように、第2支持部36は、搬送方向において、第1支持部35よりも上流に位置してもよい。この場合、第2支持部36は、搬送方向において、吐出部28によって液体が吐出される位置よりも下流に位置する。
【0066】
この変更例における第2支持部36は、アルミ材よりも熱膨張係数の高い材料、例えばSUS材で構成され、屈曲部39を有する。支持部32上を搬送される媒体99は、第2支持部36が有する屈曲部39において屈曲される。乾燥装置31を通過した媒体99は、液体吐出装置11が設置される設置面に向けて搬送される。
【0067】
この変更例によれば、以下の効果を得ることができる。
(6)吐出部28と第2支持部36との間で媒体99が斜めに傾くことを抑制できる。
これにより、媒体99に対して精度よく液体を着弾させることができる。その結果、高品質な画像を媒体99に記録できる。
【0068】
・媒体99は、ロール体100から繰り出される長尺紙に限らず、単票紙でもよい。媒体99は、用紙に限らず、布帛でもよい。
・吐出部28が吐出する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などでもよい。例えば、吐出部28が液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材または画素材料などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を吐出してもよい。
【0069】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
乾燥装置は、搬送される媒体を乾燥させる乾燥装置であって、前記媒体を支持する支持部と、前記支持部に対向する非接触ヒーターと、を備え、前記支持部は、第1支持部と、搬送される前記媒体の搬送方向において前記第1支持部と異なる位置に位置する第2支持部とを有し、前記媒体は、前記第2支持部に沿って屈曲し、前記第1支持部は、アルミ材で構成され、前記第2支持部は、前記アルミ材よりも熱膨張係数が小さい材料で構成される。
【0070】
媒体は、第2支持部に沿って屈曲する。そのため、第2支持部が照射ヒーターの加熱によって膨張すると、第2支持部の形状が変化することによって、支持部上を搬送される媒体の姿勢が変化するおそれがある。その結果、搬送される媒体が斜めに傾くおそれがある。これに対して、第1支持部は、媒体の乾燥を促進させるために、高い熱伝導率及び高い輻射率を有するアルミ材によって構成される。一方、第2支持部は、アルミ材よりも熱膨張係数が小さい材料で構成される。すなわち、第2支持部は、第1支持部と比較して膨張しにくい。したがって、支持部上において媒体が斜めに傾くことを抑制できる。
【0071】
上記乾燥装置において、前記支持部は、巻取部によって巻き取られる前記媒体を支持し、前記第2支持部は、前記搬送方向において、前記第1支持部よりも下流且つ前記巻取部よりも上流に位置してもよい。
【0072】
この構成によれば、斜めに傾いた状態の媒体を巻取部が巻き取るおそれを低減できる。
上記乾燥装置において、前記支持部は、テンション付与部材によってテンションを付与される前記媒体を支持し、前記テンション付与部材は、前記媒体を前記第2支持部に押し付けるように前記媒体に接触し、前記第2支持部は、前記搬送方向において、前記第1支持部よりも下流且つ前記テンション付与部材が前記媒体に接触する位置よりも上流に位置してもよい。
【0073】
テンション付与部材により媒体が第2支持部に押し付けられる場合、第2支持部が膨張すると、媒体が一層斜めに傾きやすい。この点、上記構成によれば、テンション付与部材により媒体にテンションが付与される場合において、搬送される媒体が斜めに傾くことを抑制できる。
【0074】
上記乾燥装置において、前記支持部は、吐出部によって液体が吐出された前記媒体を支持し、前記第2支持部は、前記搬送方向において、前記第1支持部よりも上流且つ前記吐出部によって液体が吐出される位置よりも下流に位置してもよい。
【0075】
この構成によれば、吐出部と第2支持部との間で媒体が斜めに傾くことを抑制できる。
上記乾燥装置において、吐出部によって液体が吐出された前記媒体を支持する前記支持部は、前記搬送方向において、前記第1支持部よりも上流且つ前記吐出部によって液体が吐出される位置よりも下流に位置する第3支持部を有し、前記媒体は、前記第3支持部に接触することによって屈曲し、前記第3支持部は、前記アルミ材よりも熱膨張係数が小さい材料で構成されてもよい。
【0076】
媒体は、第3支持部に接触することによって屈曲する。そのため、第3支持部が照射ヒーターの加熱によって膨張すると、第3支持部の形状が変化することによって、支持部上を搬送される媒体の姿勢が変化するおそれがある。その結果、搬送される媒体が斜めに傾くおそれがある。これに対して、第3支持部は、アルミ材よりも熱膨張係数が小さい部材で構成される。すなわち、第3支持部は、第1支持部と比較して膨張しにくい。したがって、搬送される媒体が斜めに傾くことを抑制できる。吐出部と第3支持部との間で媒体が斜めに傾くことを抑制することによって、吐出部によって吐出される液体の媒体に対する着弾位置がずれるおそれを低減できる。
【0077】
上記乾燥装置において、前記第1支持部において前記媒体に接触する表面は、アルマイト処理されていてもよい。
アルマイト処理を施すことにより、第1支持部の輻射率が向上する。すなわち、第1支持部が温まりやすいため、媒体の乾燥を促進させることができる。
【0078】
上記液体吐出装置は、媒体を支持する支持部と、前記支持部に対向する非接触ヒーターと、前記媒体を搬送する搬送部と、を備え、前記支持部は、第1支持部と、搬送される前記媒体の搬送方向において前記第1支持部と異なる位置に位置する第2支持部とを有し、前記媒体は、前記第2支持部に沿って屈曲し、前記第1支持部は、アルミ材で構成され、前記第2支持部は、前記アルミ材よりも熱膨張係数が小さい材料で構成される。
【0079】
この構成によれば、上述した乾燥装置と同様の効果を得られる。
【符号の説明】
【0080】
11…液体吐出装置、12…筐体、13…基台、14…搬送部、16…載置部、17…巻取部、18…テンション付与部材、21…第1支持台、22…第2支持台、25…第1ローラー、26…第2ローラー、28…吐出部、29…キャリッジ、31…乾燥装置、32…支持部、33…非接触ヒーターとしての照射ヒーター、35…第1支持部、35A…上流端、35B…下流端、36…第2支持部、36A…上流端、36B…下流端、37…第3支持部、37A…上流端、37B…下流端、38…屈曲部、39…屈曲部、42…ケース、43…循環部、44…循環路、45…ファン、46…吸気口、47…送風口、48…反射板、51…表面、99…媒体、100…ロール体。