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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】バッテリの管理装置および管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241203BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20241203BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241203BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20241203BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241203BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20241203BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20241203BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20241203BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H02J7/10 B
H01M10/42 P
H01M10/48 301
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023105138
(22)【出願日】2023-06-27
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 将
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃太
(72)【発明者】
【氏名】島貫 伊紀子
(72)【発明者】
【氏名】宮川 仁
(72)【発明者】
【氏名】西谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】臼井 俊行
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-070920(JP,A)
【文献】特開2018-029430(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002398(WO,A1)
【文献】特開2022-123329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
G01R 31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの使用履歴、バッテリの劣化度、および、バッテリの劣化に起因する温度であるバッテリの温度のそれぞれのデータを取得する取得部と、
取得された前記データに基づいて、前記バッテリの温度に応じた前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す近似線を算出する第1の算出部と、
所定期間に取得された前記バッテリの温度の平均値を算出する第2の算出部と、
算出された前記平均値に基づいて、バッテリの劣化速度を算出する第3の算出部と、
取得された前記劣化度が、前記近似線に対して許容範囲内であるか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記第1の算出部は、算出された前記劣化速度に基づいて前記所定期間における前記近似線を算出し、
前記第1の算出部は、さらに、前記近似線に対する判定基準線を前記バッテリの温度に基づいて算出し、
前記判定部は、前記取得された前記劣化度が前記近似線に対して許容範囲内であるか否かを前記判定基準線に基づいて判定する、
バッテリの管理装置。
【請求項2】
前記判定基準線は、前記バッテリの温度に応じて調整可能にされる、
請求項1に記載のバッテリの管理装置。
【請求項3】
バッテリの前記使用履歴は、前記バッテリのサイクル数、使用時間、前記バッテリの温度、前記バッテリの電圧のうち少なくともいずれかを含む
請求項に記載のバッテリの管理装置。
【請求項4】
前記バッテリの前記劣化度は、前記バッテリの残存容量率を含む
請求項に記載のバッテリの管理装置。
【請求項5】
バッテリの使用履歴、バッテリの劣化度、および、バッテリの劣化に起因する温度であるバッテリの温度のそれぞれのデータを取得し、
取得された前記データに基づいて、前記バッテリの温度に応じた前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す近似線を算出し、
所定期間に取得された前記バッテリの温度の平均値を算出し、
算出された前記平均値に基づいて、バッテリの劣化速度を算出し、
算出された前記劣化速度に基づいて前記所定期間における前記近似線を算出し、
前記近似線に対する判定基準線を前記バッテリの温度に基づいて算出し、
取得された前記劣化度が、前記近似線に対して許容範囲内であるか否かを前記判定基準線に基づいて判定する、
バッテリの管理方法。
【請求項6】
前記判定基準線は、前記バッテリの温度に応じて調整可能にされる、
請求項5に記載のバッテリの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリの管理装置および管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(Electric Vehicle:EV)やハイブリッド車においては、走行用の動力源に電力を供給するためのバッテリが車両に搭載されている。バッテリは、繰り返し使用することで、徐々に劣化する。また、バッテリの使用状況に応じて劣化スピードが速まる場合がある。そこで、バッテリの使用履歴に基づいて、バッテリの劣化度を予測することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バッテリの使用方法に応じた劣化曲線からバッテリの劣化度を予測することが開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、使用履歴および環境条件に基づいて膨張曲線および劣化曲線のそれぞれを補正し、補正した膨張曲線および劣化曲線に基づいて、バッテリの劣化度を予測することが開示されている。
また、例えば、特許文献3には、バッテリの使用継続時間、温度履歴、過充放電履歴の少なくとも1つに基づいて、バッテリの劣化度を推定する推定部が記載されている。また、バッテリの温度が所定温度を超えた回数に応じて劣化度が進むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-084198号公報
【文献】特開2020-071035号公報
【文献】特開2017-159741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バッテリの劣化度の変化はバッテリ温度に依存するため、バッテリの温度を考慮した劣化曲線に基づいてバッテリの劣化度を予測することが好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1から特許文献3のそれぞれに記載された発明においては、バッテリの温度に応じたバッテリの使用履歴とバッテリの劣化度との関係を考慮した劣化曲線に基づいてバッテリの劣化度を予測していないため、バッテリの劣化度を誤判定するおそれがある。
【0008】
本開示の目的は、バッテリの温度を考慮することによって、バッテリの劣化度の誤判定を防止することが可能なバッテリの管理装置および管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示におけるバッテリの管理装置は、
バッテリの使用履歴、バッテリの劣化度、および、バッテリの劣化に起因する温度であるバッテリの温度のそれぞれのデータを取得する取得部と、
取得された前記データに基づいて、前記バッテリの温度に応じた前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す近似線を算出する第1の算出部と、
所定期間に取得された前記バッテリの温度の平均値を算出する第2の算出部と、
算出された前記平均値に基づいて、バッテリの劣化速度を算出する第3の算出部と、
取得された前記劣化度が、前記近似線に対して許容範囲内であるか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記第1の算出部は、算出された前記劣化速度に基づいて前記所定期間における前記近似線を算出し、
前記第1の算出部は、さらに、前記近似線に対する判定基準線を前記バッテリの温度に基づいて算出し、
前記判定部は、前記取得された前記劣化度が前記近似線に対して許容範囲内であるか否かを前記判定基準線に基づいて判定する。
【0010】
本開示におけるバッテリの管理方法は、
バッテリの使用履歴、バッテリの劣化度、および、バッテリの劣化に起因する温度であるバッテリの温度のそれぞれのデータを取得し、
取得された前記データに基づいて、前記バッテリの温度に応じた前記使用履歴と前記劣化度との関係を表す近似線を算出し、
所定期間に取得された前記バッテリの温度の平均値を算出し、
算出された前記平均値に基づいて、バッテリの劣化速度を算出し、
算出された前記劣化速度に基づいて前記所定期間における前記近似線を算出し、
前記近似線に対する判定基準線を前記バッテリの温度に基づいて算出し、
取得された前記劣化度が、前記近似線に対して許容範囲内であるか否かを前記判定基準線に基づいて判定する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、バッテリの温度を考慮することによって、バッテリの劣化度の誤判定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施の形態におけるバッテリの管理装置の一例を示す図である。
図2図2は、記憶部に蓄積される蓄積データの一例を示す図である。
図3A図3Aは、季節と気温との関係を示す図である。
図3B図3Bは、本実施の形態における散布図および近似線である。
図4図4は、バッテリの温度とバッテリの劣化速度との関係を示す図である。
図5図5は、サイクル数とSOHとの関係を示す図である。
図6図6は、比較例に係る散布図おより近似線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施の形態におけるバッテリの管理装置の一例を示す図である。なお、本実施の形態におけるバッテリの管理装置は、トラックや、バスなどの商用車に適用することが可能であるが、乗用車などの車両にも適用することが可能である。
【0014】
本実施の形態におけるバッテリの管理装置が適用される車両10は、電気自動車(Electric Vehicle:EV)や、ハイブリッド車である。EV10には、走行用の動力源(モータ)に電力を供給するためのバッテリ(不図示)が搭載されている。バッテリは、充放電の繰り返し回数であるサイクル数に応じて、徐々に劣化する。また、バッテリは、使用状況に応じてその劣化スピードが速まることが知られている。以下の説明で、バッテリから電力が供給されるモータなどの電力供給先を「負荷」という場合がある。
【0015】
EV10には、車両制御装置30(Vehicle Control Unit:VCU)が設けられている。VCU30は、EV10の状態を判断し、EV10を最適な状態に維持する制御を実行する。具体的には、VCU30は、EV10の異常を検知した場合、EV10を停止するようにモータを制御する。VCU30は、バッテリをモニタリングし、バッテリの稼働時間を取得する。VCU30は、EV10の走行距離を取得する。また、VCU30は、バッテリと負荷との間の電圧を変化させることで、バッテリから負荷への供給電力を制御する。また、VCU30は、バッテリを充電するときの充電電力が充電可能電力を超過しないように充電器(不図示)を制御する。
【0016】
バッテリの稼働時間およびEV10の走行距離は、VCU30からバッテリの管理装置20に送られる。
【0017】
バッテリは、温度センサ(不図示)と電圧センサ(不図示)とを有している。温度センサは、バッテリの温度およびバッテリの周囲温度を検出する。電圧センサは、バッテリの電圧を検出する。
【0018】
EV10には、バッテリの使用状況を監視する監視部40が設けられている。監視部40は、温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果を取得し、取得した検出結果に基づいて、残存容量率(State Of Health:SOH)を特定する。また、監視部40は、バッテリのサイクル数を取得する。サイクル数は、バッテリが第1の残量以上の充電量から第2の残量以下の充電量まで放電し、再度第1の残量以上の充電量に充電するまでの充放電サイクルを1とするパラメータである。なお、第1の残量は、第2の残量よりも高く、第1の残量は満充電としてもよい。監視部40は、バッテリの残量などを監視して、バッテリが経過したサイクル数を取得する。
【0019】
監視部40は、バッテリを安全かつ有効に使うための制御を行う。具体的には、監視部40は、温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果に基づいて、バッテリと負荷との間の接続/切断を行うリレー(不図示)を制御する。
【0020】
温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果、サイクル数、および、SOHは、監視部40からバッテリの管理装置20に送られる。なお、温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果、並びに、サイクル数が本開示の「バッテリの使用履歴」に対応する。また、SOHが本開示の「バッテリの劣化度」に対応する。
【0021】
バッテリの管理装置20は、車両10毎に設けられる。バッテリの管理装置20は、制御部21と記憶部27とを備える。図1において、矢印は主なデータの流れを示しており、図1に示していないデータの流れがあってもよい。図1において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図1に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、コントローラエリアネットワーク(CANバス)等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0022】
なお、管理装置20は、複数の車両10に対して設けられてもよい。この場合の一例として、管理装置20は、サーバ(不図示)に設けられる。車両10およびサーバのそれぞれは通信部を有し、車両10とサーバとはネットワークを介して通信する。
【0023】
記憶部27は、管理装置20を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input System)等を格納するROM(Read Only Memory)や管理装置20の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【0024】
制御部21は、管理装置20のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphic Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部27に記憶されたプログラムを実行することによって、取得部22、第1の算出部23、第2の算出部24、第3の算出部25、判定部26および特定部28として機能する。
【0025】
図1は、管理装置20が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、管理装置20は、例えば複数のプロセッサやメモリ等の計算ソースによって実現されてもよい。この場合、制御部21を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。なお、管理装置20が単一の装置で構成される場合、例えば、管理装置20は、図1に示すVCU30、および、監視部40の全部により構成されてもよい。管理装置20が複数の装置で構成される場合、例えば、管理装置20は、VCU30、および、監視部40のそれぞれで構成されてもよく、また、いずれかの2つの装置を組み合わせたものと、他の一つの装置で構成されてもよい。
【0026】
取得部22は、監視部40からバッテリの使用履歴(温度センサおよび電圧センサのそれぞれの検出結果、並びに、サイクル数)を取得する。また、取得部22は、監視部40からSOHを取得する。
【0027】
記憶部27は、取得部22により取得されたバッテリの使用履歴およびSOHを記憶する。図2は、記憶部27に蓄積される蓄積データの一例を示す図である。図2に示すように、記憶部27には、SOH、稼働時間、走行距離、電力積算量のそれぞれのデータが年月日毎に蓄積される。ここで、「稼働時間」は、バッテリの稼働時間、「走行距離」はEV10の走行距離、「電力積算量」は、バッテリの消費電力積算量である。記憶部27には、SOH、稼働時間、走行距離、電力積算量のそれぞれのデータが、それぞれのデータを取得したタイミングに関連付けられて記憶されるといえる。
【0028】
第1の算出部23は、使用履歴およびSOHに基づいて、使用履歴と劣化度との関係を表す近似線を算出する。なお、「近似線」は、近似曲線や、劣化曲線と呼ばれる。近似線の算出方法には、公知の方法が用いられる。例えば、第1の算出部23は、横軸に「年月日」、縦軸にSOHとする散布図に、記憶部27に蓄積された蓄積データをプロットして近似線を算出する。なお、本開示において、近似線の算出に用いられる蓄積データは、「年月日」に限定されない。例えば、「走行距離」や、「電力積算量」や、「サイクル数」でもよい。
【0029】
図3Aは、季節と気温との関係を示す図である。図3Bは、本実施の形態における散布図および近似線である。図3Bにおける横軸に「年月日」を示し、縦軸に「SOH」を示す。図3Bに示すように、散布図には、年月日に対応するSOHがプロットされる。なお、散布図には複数の季節のそれぞれに対応する複数のSOHがプロットされるが、図3Bでは、プロットされる複数のSOHを代表してS31,S32を示す。
【0030】
図3Aに、「夏」から「秋」に向かって気温が下降し、「秋」から「冬」に向かって気温がさらに下降し、「冬」から「春」向かって気温が上昇し、「春」から「夏」に向かって気温がさらに上昇することを示している。ところで、バッテリの温度は、季節の気温に応じて変化する。また、バッテリの劣化速度は、バッテリの温度に応じて変化する。
【0031】
図4は、バッテリの温度とバッテリの劣化速度との関係を示す図である。図4の横軸にバッテリの温度を示し、縦軸にバッテリの劣化速度を示す。ここで、バッテリの劣化速度は、劣化度(SOH)とサイクル数Nと比で表される(=SOH/N)。図4に示すように、バッテリの劣化速度はバッテリの温度が高くなるに伴って上昇する。
【0032】
第2の算出部24は、所定期間に取得されたバッテリの温度の平均値を算出する。具体的には、第2の算出部24は、「春」、「夏」、「秋」、「冬」のそれぞれにおけるバッテリの温度の平均値を算出する。なお、「所定期間」は、複数の季節のそれぞれの期間である3か月に限らず、10日や、20日や、1か月や、2か月でもよい。
第3の算出部25は、バッテリの温度の平均値に基づいて、図4に示す図を参照してバッテリの劣化速度を算出する。
【0033】
図5は、バッテリの温度毎にサイクル数とSOHとの関係を示す図である。図5の横軸にサイクル数Nを示し、縦軸にSOHを示す。図5に、バッテリの温度が20℃である場合におけるサイクル数とSOHとの関係を点線で示す。また、バッテリの温度が40℃である場合におけるサイクル数とSOHとの関係を破線で示す。図5における破線の傾斜角度は、点線の傾斜角度よりも急角度である。傾斜角度は、バッテリの温度が高くなるに伴って急角度となる。また、バッテリの他の温度のそれぞれにおけるバッテリの劣化速度も、20℃および40℃の場合と同様に、傾斜角度として表すことが可能である。バッテリの劣化速度は、このように、直線の傾斜角度として表すことが可能である。なお、バッテリの劣化速度を、図5にサイクル数とSOHとの関係により示したが、「年月日」とSOHとの関係により示してもよい。例えば、「春」の3か月の平均温度が20℃であるとすれば、その3か月におけるバッテリの劣化度は、図5に示す点線の傾きに基づいて表すことが可能となる。また、例えば、「春」以外の「夏」、「秋」、「冬」のそれぞれの3か月におけるバッテリの劣化速度(傾斜角度)は、「夏」、「秋」、「冬」のそれぞれの平均温度に基づいて算出される。
【0034】
第1の算出部23は、算出された劣化速度(傾斜角度)に基づいて、例えば、「春」、「夏」、「秋」、「冬」のそれぞれにおける近似線を算出する。また、第1の算出部23は、バッテリの温度に基づいて近似線に対する判定基準線を算出する。図3Bに「春」、「夏」、「秋」、「冬」のそれぞれにおける近似線Lspr、Lsum、Laut、Lwinを示す。また、図3Bに、近似線Lspr、Lsum、Laut、Lwinのそれぞれに対する判定基準線を代表して、近似線Lsumに対する判定基準線Lrsumを示す。また、図3Bに、1年(12か月)における劣化速度(傾斜角度)に基づいて算出された近似線Lyを示し、また、近似線Lyに対する判定基準線Lryを示す。
【0035】
特定部28は、近似線Lspr、Lsum、Laut、Lwinに基づいて、バッテリの推定寿命を特定する。特定部28は、近似線Lspr、Lsum、Laut、Lwinと寿命ラインLbとの交点から、バッテリの推定寿命Daを特定する。特定部28は、近似線Lspr、Lsum、Laut、Lwinに沿って、SOHが寿命ラインLb上に到達する年月日を推定寿命Daとする。特定部28が特定した推定寿命Dbは、記憶部27に格納される。また、推定寿命Dbは、不図示の通信部を介して、EV10を管理する管理サーバに送信される。なお、推定寿命Dbを、EV10が有する表示デバイスに表示させることによって、EV10のユーザに通知してもよい。
【0036】
次に、比較例に係る散布図および近似線について図6を参照して説明する。図6は、比較例に係る散布図および近似線である。図6における横軸に「年月日」を示し、縦軸に「SOH」を示す。図6に、プロットされたSOHをS11,S12,S13,S14,S15,S16,S17,S21で示す。
【0037】
比較例においては、プロットされたSOHであるS11,S12,S13,S14,S15,S16,S17に基づいて、近似線Laが算出される。図6に「近似線La」を点線で示し、「寿命ラインLb(使用限界)」を一点鎖線で示す。また、近似線Laに基づいて、寿命ラインLbに達するSOHが推定される。図6に、推定されたSOHをS30で示す。また、S30に基づいて、SOHが寿命ラインLbに達する年月日Daが算出される。図6に、年月日Daを示す。
【0038】
ところで、比較例においては、近似線Laが作成される際に、バッテリの温度が考慮されない。図6に、近似線Laに対してバッテリの温度に伴って推移したSOHをS21で示す。図6に、プロットされたSOHであるS11,S12,S13,S14,S15,S21に基づいて算出された近似線La1で示す。比較例においては、近似線La1に基づいて、寿命ラインLbに達するSOHが推定される。また、推定されたSOHであるS31に基づいて、SOHが寿命ラインLbに達する年月日Da1が算出される。図6に推定されたSOHであるS31で示す。また、図6に年月日Da1を示す。
【0039】
以上説明したように、比較例においては、近似線La1を作成する際にバッテリの温度が考慮されない。これにより、図6に示すように、寿命ラインLbに達する年月日がDa1となるとなるため、近似線Laに基づいて、寿命ラインLbに達する年月日が算出される場合の年月日Daに対して、バッテリの寿命が大幅に短く推定される。
【0040】
また、比較例においては、バッテリの温度に基づいて判定基準線が算出されない。例えば、比較例における判定基準線は一定に設定される。これにより、図3Bに示すように、近似線Lyに対する判定基準線Lryに基づいて、バッテリのSOHを推定する場合、プロットされたSOHであるS32は、判定基準線Lryの下側に位置しているため、バッテリの急激な劣化であると誤判定されるおそれがある。
【0041】
これに対して、本実施の形態においては、近似線が作成される際に、バッテリの温度が考慮される。また、バッテリの温度に基づいて判定基準線が算出される。これにより、本実施の形態においては、例えば、図3Bに示すように、近似線Lsumに対する判定基準線Lrsumに基づいて、バッテリのSOHを推定する場合、プロットされたSOHであるS32は、判定基準線Lrsumの上側に位置しているため、判定部26によりバッテリの通常劣化であると判定される。これにより、バッテリの劣化度の誤判定を防止することが可能となる。
【0042】
上記実施の形態におけるバッテリの管理装置20は、バッテリの使用履歴、バッテリの劣化度、および、バッテリの劣化に起因する温度であるバッテリの温度のそれぞれのデータを取得する取得部22と、取得されたデータに基づいて、バッテリの温度に応じた使用履歴と劣化度との関係を表す近似線を算出する第1の算出部23と、取得された劣化度が、近似線に対して許容範囲内であるか否かを判定する判定部26と、を備える。
【0043】
以上の構成により、例えば、散布図においてプロットされたSOHが近似線の下側に位置している場合であっても、許容範囲内である場合、バッテリの通常劣化である判断されるため、バッテリの劣化度の誤判定を防止することが可能となる。
【0044】
また、上記実施の形態におけるバッテリの管理装置20では、許容範囲は、バッテリの温度に応じて設定される。これにより、バッテリの温度に応じて許容範囲を広くとることができるためバッテリの劣化度の誤判定をさらに防止することが可能となる。
【0045】
また、上記実施の形態におけるバッテリの管理装置20では、許容範囲は、近似線に対する判定基準線であり、第1の算出部23は、バッテリの温度に基づいて判定基準線を算出する。これにより、バッテリの温度に応じて判定基準線を調整することができるため、バッテリの劣化度の誤判定をさらに防止することが可能となる。
【0046】
また、上記実施の形態におけるバッテリの管理装置20では、所定期間に取得されたバッテリの温度の平均値を算出する第2の算出部と、算出された平均値に基づいて、バッテリの劣化速度を算出する第3の算出部と、をさらに備え、第1の算出部23は、算出された劣化速度に基づいて所定期間における近似線を算出する。これにより、所定期間(例えば、夏季)のそれぞれの平均値に基づいて、近似線が算出されるため、バッテリの劣化度をより詳細に判定することが可能となる。
【0047】
また、上述の実施の形態では、年月日に対するSOHの近似線を用いて推定寿命を特定したが、これに限らない。他の使用履歴、例えば、温度センサの検出結果、電圧センサの検出結果、またはサイクル数に対するSOHの近似線を用いて、推定寿命を特定してもよい。
【0048】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示は、バッテリの温度を考慮することによって、バッテリの劣化度の誤判定を防止することが要求されるバッテリの管理装置を備えた車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0050】
La 近似線
La1 近似線
Lb 寿命ライン
Lspr 近似線
Lsum 近似線
Laut 近似線
Lwin 近似線
Ly 近似線
Lrsum 判定基準線
Lry 判定基準線
10 電気自動車(EV)
20 バッテリの管理装置
21 制御部
22 取得部
23 第1の算出部
24 第2の算出部
25 第3の算出部
26 判定部
27 記憶部
30 VCU
40 監視部
【要約】
【課題】バッテリの温度を考慮することによって、バッテリの劣化度の誤判定を防止することが可能なバッテリの管理装置および管理方法を提供する。
【解決手段】バッテリの管理装置は、バッテリの使用履歴、バッテリの劣化度、および、バッテリの劣化に起因する温度であるバッテリの温度のそれぞれのデータを取得する取得部と、取得されたデータに基づいて、バッテリの温度に応じた使用履歴と劣化度との関係を表す近似線を算出する第1の算出部と、取得された劣化度が、近似線に対して許容範囲内であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6