(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】マンコンベヤ
(51)【国際特許分類】
B66B 25/00 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B66B25/00 A
(21)【出願番号】P 2023137132
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅昭
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-3127(JP,A)
【文献】特開2016-166060(JP,A)
【文献】特開2017-137156(JP,A)
【文献】特開2009-78870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステップと、
前記複数のステップが接続される無端環状のチェーンと、
前記チェーンの第1横方向の第1端部が巻き掛けられる回転可能なスプロケットと、
前記チェーンの前記第1横方向の第2端部を支持する支持部と、
前記チェーンに張力を付与するために、前記支持部に前記第1横方向の弾性復元力を加える弾性部と、
前記スプロケットを回転させるモータと、
前記モータに供給する電力の周波数を変更するインバータと、
前記チェーンの走行速度を検出する速度検出部と、
前記インバータを制御する処理部と、を備え、
前記処理部は、前記速度検出部の検出に基づいて、前記チェーンの走行速度が一定となるように、前記電力の周波数を変更する周波数制御を実行する、マンコンベヤ。
【請求項2】
前記マンコンベヤに乗る人を検出する人検出部を備え、
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記人検出部が人を検出した場合に、前記周波数制御を実行する、請求項1に記載のマンコンベヤ。
【請求項3】
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記速度検出部で検出した走行速度の変化の大きさが設定値よりも大きい場合に、前記周波数制御を実行する、請求項1又は2に記載のマンコンベヤ。
【請求項4】
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記速度検出部で検出した走行速度の変化の周期の長さが設定値よりも長い場合に、前記周波数制御を実行する、請求項1又は2に記載のマンコンベヤ。
【請求項5】
前記弾性部の弾性変形の変化を検出する変形検出部を備え、
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記変形検出部が弾性変形の変化を検出した場合に、前記周波数制御を実行する、請求項1又は2に記載のマンコンベヤ。
【請求項6】
前記モータの出力トルクを検出するトルク検出部を備え、
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記トルク検出部で検出した出力トルクの大きさの変化が設定値よりも大きい場合に、前記周波数制御を実行する、請求項1又は2に記載のマンコンベヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、マンコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、マンコンベヤは、複数のステップと、複数のステップが接続される無端環状のチェーンと、チェーンの第1横方向の第1端部が巻き掛けられる回転可能なスプロケットと、チェーンの第1横方向の第2端部を支持する支持部と、チェーンに張力を付与するために、支持部に第1横方向の弾性復元力を加える弾性部とを備えている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、特許文献1に係るマンコンベヤにおいては、人がステップに乗ったり、人がステップから降りたり、人がステップを歩いたりすることによって、搬送負荷が変化した場合に、弾性部は、基準の弾性変形の状態から、大きく弾性変形する状態と小さく弾性変形する状態とを繰り返す(例えば、伸縮を繰り返す)。これにより、チェーンに脈動が発生する。具体的には、チェーンの走行速度に定期的な増減の変化が発生する。その結果、例えば、ステップに乗っている人に不快感を与える場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、チェーンの走行速度が変化することを抑制することができるマンコンベヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
マンコンベヤは、
複数のステップと、
前記複数のステップが接続される無端環状のチェーンと、
前記チェーンの第1横方向の第1端部が巻き掛けられる回転可能なスプロケットと、
前記チェーンの前記第1横方向の第2端部を支持する支持部と、
前記チェーンに張力を付与するために、前記支持部に前記第1横方向の弾性復元力を加える弾性部と、
前記スプロケットを回転させるモータと、
前記モータに供給する電力の周波数を変更するインバータと、
前記チェーンの走行速度を検出する速度検出部と、
前記インバータを制御する処理部と、を備え、
前記処理部は、前記速度検出部の検出に基づいて、前記チェーンの走行速度が一定となるように、前記電力の周波数を変更する周波数制御を実行する。
【0007】
[2]
また、上記[1]のマンコンベヤは、
前記マンコンベヤに乗る人を検出する人検出部を備え、
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記人検出部が人を検出した場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成でもよい。
【0008】
[3]
また、上記[1]又は[2]のマンコンベヤにおいては、
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記速度検出部で検出した走行速度の変化の大きさが設定値よりも大きい場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成でもよい。
【0009】
[4]
また、上記[1]~[3]の何れか1つのマンコンベヤにおいては、
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記速度検出部で検出した走行速度の変化の周期の長さが設定値よりも長い場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成でもよい。
【0010】
[5]
また、上記[1]~[4]の何れか1つのマンコンベヤは、
前記弾性部の弾性変形の変化を検出する変形検出部を備え、
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記変形検出部が弾性変形の変化を検出した場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成でもよい。
【0011】
[6]
また、上記[1]~[5]の何れか1つのマンコンベヤは、
前記モータの出力トルクを検出するトルク検出部を備え、
前記処理部は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部は、前記トルク検出部で検出した出力トルクの大きさの変化が設定値よりも大きい場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】同実施形態に係るステップ及びチェーンの斜視図
【
図5】同実施形態に係るマンコンベヤの制御ブロック図
【
図6】同実施形態に係る弾性部に起因する脈動を示す時間と速度との関係図
【
図7】同実施形態に係るチェーン及びスプロケットに起因する脈動を示す時間と速度との関係図
【発明を実施するための形態】
【0013】
各図面において、構成要素の寸法は、例えば、理解を容易にするために、実際の寸法に対して拡大、縮小して示す場合があり、また、各図面の間での寸法比は、一致していない場合がある。なお、各図面において、例えば、理解を容易にするために、構成要素の一部を省略して示す場合がある。
【0014】
第1、第2等の序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、構成要素は、この用語によって特に限定されるものではない。なお、序数を含む構成要素の個数は、特に限定されず、例えば、一つでもよい場合がある。また、以下の明細書及び図面で用いられる序数は、特許請求の範囲に記載された序数と異なる場合がある。
【0015】
以下、マンコンベヤにおける一実施形態について、
図1~
図7を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、マンコンベヤの構成等の理解を助けるために例示するものであり、マンコンベヤの構成を限定するものではない。
【0016】
図1及び
図2に示すように、マンコンベヤ1は、例えば、躯体に設置される構造体2と、人(乗客)を搬送する搬送部3と、搬送部3を第2方向D2で挟むように配置される一対(
図1においては、一つのみ図示している)の欄干部4と、搬送部3及び欄干部4を駆動させる駆動部5と、装置全体を制御する処理部6とを備えていてもよい。
【0017】
各図において、第1方向D1は、水平方向と平行な方向である第1横方向(「前後方向」ともいう)D1であり、第2方向D2は、水平方向と平行な方向であって、且つ、第1横方向D1と直交する第2横方向(「幅方向」ともいう)D2であり、第3方向D3は、第1横方向D1及び第2横方向D2と直交する鉛直方向であって、上下方向D3である。
【0018】
本実施形態に係るマンコンベヤ1は、人を搬送するために、踏面が階段状になるエスカレータであるが、斯かる構成に限られない。例えば、マンコンベヤ1は、人を搬送するために、踏面が平面状となる移動歩道(動く歩道)であってもよい。
【0019】
搬送部3は、例えば、本実施形態のように、第2横方向D2に離れる一対の無端環状のチェーン7,7と、一対のチェーン7,7にそれぞれ連結される連結軸8と、一対のチェーン7,7の間に配置され、連結軸8に回転可能に接続されることによって、チェーン7に接続される複数のステップ9とを備えていてもよい。
【0020】
これにより、ステップ9は、チェーン7と共に走行し、また、チェーン7に対して、第2横方向D2を軸にして回転可能に接続されている。なお、チェーン7は、駆動部5に駆動されることによって、回転して走行する。
【0021】
チェーン7は、例えば、本実施形態のように、互いに回転可能に接続されるリンク7aと、リンク7aに回転可能に接続されるローラ7bとを備えていてもよい。即ち、本実施形態においては、チェーン7は、ローラチェーンとしている。なお、チェーン7は、斯かる構成に限られない。
【0022】
ステップ9は、例えば、本実施形態のように、ステップ本体9aと、ステップ本体9aに回転可能に接続されるローラ9bとを備えていてもよい。また、ステップ本体9aは、例えば、本実施形態のように、人に乗られる踏面部9cと、湾曲状に形成される蹴上部9dと、連結軸8に回転可能に連結される連結部9eとを備えていてもよい。
【0023】
欄干部4は、例えば、回転して走行する無端環状の手摺ベルト4aと、手摺ベルト4aを支持する欄干本体部4bと、欄干本体部4bの下部を覆うカバー部4cとを備えていてもよい。なお、例えば、手摺ベルト4aが駆動部5の駆動によって走行し、手摺ベルト4aの走行は、ステップ9の走行と同期してもよい。
【0024】
駆動部5は、例えば、本実施形態のように、チェーン7の第1横方向D1の第1端部が巻き掛けられる回転可能なスプロケット(「駆動スプロケット」ともいう)10と、チェーン7の第1横方向D1の第2端部を支持する支持部11と、スプロケット10を回転させるモータ12と、モータ12の駆動をスプロケット10に伝達させる伝達部13とを備えていてもよい。
【0025】
伝達部13は、例えば、本実施形態のように、スプロケット10と一体となって回転する回転体13aと、モータ12の駆動軸と回転体13aとにそれぞれ巻き掛けられる無端環状の伝達体13bとを備えていてもよい。これにより、モータ12の駆動は、スプロケット10に伝達される。
【0026】
特に限定されないが、
図3に示すように、スプロケット10は、例えば、同軸となるように、回転体13aに固定されていてもよい。これにより、スプロケット10は、回転体13aと一体となって第2横方向D2を軸にして回転する。また、スプロケット10は、例えば、本実施形態のように、チェーン7のローラ7bを引っ掛ける複数の歯10aを備えていてもよい。
【0027】
図4に示すように、構造体2は、例えば、複数の枠材2a~2cで構成されるトラス構造又はケタ構造としてもよい。支持部11は、例えば、本実施形態のように、チェーン7(
図4においては、ローラ7bのみ図示している)をガイドするガイド部11aを備えていてもよい。なお、斯かる構成に限られず、支持部11は、例えば、チェーン7が巻き掛けられ、第2横方向D2を軸にして回転可能なスプロケット(従動スプロケット)としてもよい。
【0028】
マンコンベヤ1は、例えば、本実施形態のように、支持部11を第1横方向D1へガイドするガイド機構14と、チェーン7に張力を付与する張力付与部15とを備えていてもよい。ガイド機構14は、例えば、本実施形態のように、支持部11に固定されるローラ14aと、構造体2に固定され、ローラ14aを第1横方向D1へガイドするために、第1横方向D1へ沿って延びるレール14bとを備えていてもよい。
【0029】
張力付与部15は、例えば、本実施形態のように、支持部11に第1横方向D1の弾性復元力を加える弾性部15aを備えていてもよい。特に限定されないが、例えば、本実施形態のように、弾性部15aは、弦巻バネとし、張力付与部15は、支持部11に固定されて第1横方向D1へ延びる連結部15bと、連結部15bに固定されて弾性部15aの第1端を保持する第1保持部15cと、構造体2の枠材2cに固定されて弾性部15aの第2端を保持する第2保持部15dとを備えている、という構成でもよい。
【0030】
これにより、弾性部15aが第1横方向D1へ圧縮の弾性変形をすることによって、第1横方向D1(具体的には、
図4における左方向)の弾性復元力が、支持部11に加えられるため、チェーン7に張力を付与することができる。なお、斯かる構成に限られず、張力付与部15は、弾性部15aが支持部11に第1横方向D1の弾性復元力を加えることによって、チェーン7に張力を付与する、という構成であればよい。
【0031】
図5に示すように、マンコンベヤ1は、例えば、各種情報が入力される入力部16と、各種情報が出力される出力部17とを備えていてもよい。特に限定されないが、入力部16は、例えば、スイッチ(押しボタンスイッチ、セレクトスイッチ等)、タッチパネル等としてもよく、また、出力部17は、例えば、情報を表示する表示部(例えば、電光掲示板、表示灯)、情報を音で発する発音部(例えば、ブザー、スピーカ)、外部(例えば、中央監視盤等)へ信号を出力する信号出力部等としてもよい。
【0032】
また、マンコンベヤ1は、例えば、本実施形態のように、チェーン7の走行速度を検出する速度検出部18と、マンコンベヤ1に乗る人を検出する人検出部19と、モータ12に供給する電力の周波数を変更するインバータ20とを備えていてもよい。
【0033】
速度検出部18は、例えば、回転体13aの外周の歯を検出するセンサ(例えば、近接センサ、光電センサ)としてもよく、また、例えば、回転体13a又はスプロケット10の回転を検出するセンサ(例えば、エンコーダ)としてもよく、また、例えば、ステップ9に接することによって回転するローラの回転を検出するセンサ(例えば、エンコーダ)としてもよい。また、速度検出部18は、例えば、チェーン7に接することによって回転するローラの回転を検出するセンサ(例えば、エンコーダ)としてもよい。
【0034】
このように、速度検出部18は、例えば、回転体13aの回転速度、スプロケット10の回転速度、ステップ9の走行速度を検出することによって、間接的にチェーン7の走行速度を検出してもよく、また、例えば、チェーン7の走行速度を検出することによって、直接的にチェーン7の走行速度を検出してもよい。
【0035】
人検出部19は、マンコンベヤ1に乗る人を検出するために、例えば、乗降部に人が存在するか否かを検出してもよい。特に限定されないが、人検出部19は、例えば、欄干部4の内部に配置される光電センサとしてもよく、また、例えば、乗降部の上方及び側方から撮像するカメラとしてもよく、また、例えば、乗降部の下方から人の荷重を検出するロードセルとしてもよい。
【0036】
処理部6は、例えば、本実施形態のように、各部16,18,19から各情報(データ)を取得する取得部6aと、各情報を記憶する記憶部6bと、各情報を演算する演算部6cと、各部を制御する制御部6dとを備えていてもよい。なお、本明細書においては、記憶とは、例えば、削除指示の入力によって削除されるまで記憶し続ける場合だけでなく、例えば、演算部6cの演算に用いるために一時的に記憶し、削除指示の入力に関係なく演算終了後に削除される場合も含む。
【0037】
処理部6は、例えば、CPU及びMPU等のプロセッサ(例えば、演算部6c、制御部6d)、ROM及びRAM等のメモリ(例えば、取得部6a、記憶部6b)、各種インターフェイス等を備えるコンピュータとしてもよい。これにより、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行し、ソフトウェア及びハードウェアが協働することによって、処理部6の各部6a~6dが実現される。
【0038】
また、処理部6は、例えば、一つの装置で構成されていてもよく、また、例えば、互いに通信可能な複数の装置で構成されていてもよい。具体的には、処理部6の各部6a~6dは、例えば、一つの装置に備えられていてもよく、また、例えば、互いに通信可能な複数の装置に分散して備えられていてもよい。
【0039】
なお、処理部6の制御部6dは、例えば、インバータ20を制御することによって、インバータ20がモータ12に供給する電力の周波数を制御する。これにより、供給電力の周波数が変わることによって、回転体13a及びスプロケット10の回転速度が変わるため、チェーン7の走行速度を変えることができる。
【0040】
本実施形態に係るマンコンベヤ1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るマンコンベヤ1の制御について説明する。なお、以下の内容は、マンコンベヤ1の制御等の理解を助けるために例示するものであり、マンコンベヤ1の制御を限定するものではない。
【0041】
処理部6は、通常時には、モータ12へ供給する電力の周波数(以下「供給電力周波数」という)を一定にする基準制御を実行する。ところで、基準制御が実行されている場合に、チェーン7に脈動が発生する場合がある。ここで、チェーン7の脈動について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0042】
まず、例えば、人がステップ9に乗ったり、人がステップ9から降りたり、人がステップ9を歩いたりすることによって、搬送負荷が変化した場合に、弾性部15aは、基準の弾性変形の状態から、大きく弾性変形する状態と小さく弾性変形する状態とを繰り返す(例えば、伸縮を繰り返す)。これにより、
図6に示すように、チェーン7に第1の脈動が発生する。
【0043】
第1の脈動においては、定格速度V0に対する変化速度の大きさV1は、例えば、定格速度V0の5%~10%である。また、第1の脈動においては、速度変化の周期の長さT1は、例えば、0.25秒~0.30秒である。
【0044】
一方で、例えば、チェーン7のローラ7bがスプロケット10の歯10aに引っ掛けられるタイミングによって、スプロケット10にかかるトルクが変化するため、スプロケット10が振動する(例えば、特開2015-117092号公報参照)。これにより、
図7に示すように、チェーン7の第2の脈動が発生する。
【0045】
第2の脈動においては、定格速度V0に対する変化速度の大きさV2は、例えば、定格速度V0の0.5%~1.0%である。また、第2の脈動においては、速度変化の周期の長さT2は、例えば、0.05秒~0.10秒である。
【0046】
このように、第1の脈動においては、チェーン7の走行速度の変化速度の大きさV1が大きいため、第1の脈動が発生した場合には、例えば、ステップ9に乗っている人に不快感を与える場合がある。一方で、第2の脈動においては、チェーン7の走行速度の変化速度の大きさV2が小さいため、第2の脈動が発生した場合でも、例えば、ステップ9に乗っている人に対しての影響は、殆どない。
【0047】
それに対して、処理部6は、チェーン7の第1の脈動が発生したと判定した場合に、周波数制御を実行する。周波数制御においては、処理部6は、例えば、速度検出部18の検出に基づいて、チェーン7の走行速度が一定となるように、供給電力周波数を変更するフィードバック制御を行う。これにより、チェーン7の第1の脈動が発生しても、チェーン7の走行速度が変化することを抑制することができる。
【0048】
なお、第2の脈動においては、速度変化の周期の長さT2が短いことに対して、チェーン7の第2の脈動が発生した場合には、処理部6は、基準制御の実行を継続している。これにより、例えば、周波数の制御が第2の脈動に追従できずにチェーン7の脈動が不要に大きくなることを抑制することができる。
【0049】
次に、処理部6の演算部6cがチェーン7の第1の脈動が発生したと判定する要件について、説明する。
【0050】
まず、チェーン7の第1の脈動が人(具体的には、搬送負荷)に起因しているため、第1の要件は、人検出部19が人を検出することとしている。特に限定されないが、例えば、第1の要件は、人検出部19が人を検出してから、設定時間を経過するまでの期間である、としてもよい。
【0051】
特に限定されないが、例えば、第1の要件は、自動運転中においてチェーン7が定格速度で走行していることとしてもよい。自動運転中においては、例えば、人検出部19が人を検出した場合に、処理部6は、チェーン7を定格速度で走行し、人検出部19が最後に人を検出した後に、所定時間(例えば、ステップ9が1/2周の距離を走行する時間+30秒)が経過した場合に、処理部6は、チェーン7を低速度で走行させてもよい。
【0052】
また、
図6及び
図7に示すように、チェーン7の第1脈動においては、走行速度の変化速度の大きさV1が大きいため、第2の要件は、速度検出部18で検出した走行速度の変化の大きさV1が設定値よりも大きいこととしている。特に限定されないが、設定値は、例えば、定格速度V0の3%~10%としてもよく、また、例えば、定格速度V0の5%~10%としてもよい。また、特に限定されないが、設定値は、例えば、31m/分~31.5m/分としてもよく、また、例えば、31.5m/分~33m/分としてもよい。
【0053】
また、チェーン7の第1脈動においては、走行速度の変化の周期の長さT1が長いため、第3の要件は、速度検出部18で検出した走行速度の変化の周期の長さT1が設定値よりも長いこととしている。特に限定されないが、設定値は、例えば、0.20秒~0.30秒としてもよく、また、例えば、0.25秒~0.30秒としてもよい。
【0054】
そして、特に限定されないが、演算部6cは、例えば、第1の要件と、第2の要件及び第3の要件の少なくとも一方とが成立した場合に、チェーン7の第1の脈動が発生したと判定してもよい。これにより、対象となるチェーン7の第1の脈動が発生した場合に、周波数制御が実行される。
【0055】
以上より、マンコンベヤ1は、本実施形態のように、
複数のステップ9と、
前記複数のステップ9が接続される無端環状のチェーン7と、
前記チェーン7の第1横方向D1の第1端部が巻き掛けられる回転可能なスプロケット10と、
前記チェーン7の前記第1横方向D1の第2端部を支持する支持部11と、
前記チェーン7に張力を付与するために、前記支持部11に前記第1横方向D1の弾性復元力を加える弾性部15aと、
前記スプロケット10を回転させるモータ12と、
前記モータ12に供給する電力の周波数を変更するインバータ20と、
前記チェーン7の走行速度を検出する速度検出部18と、
前記インバータ20を制御する処理部6と、を備え、
前記処理部6は、前記速度検出部18の検出に基づいて、前記チェーン7の走行速度が一定となるように、前記電力の周波数を変更する周波数制御を実行する、
という構成が好ましい。
【0056】
斯かる構成によれば、処理部6は、速度検出部18の検出に基づいて、電力の周波数を変更する周波数制御を実行する。これにより、チェーン7の脈動が発生しても、チェーン7の走行速度が一定となるように、周波数制御が実行される。したがって、チェーン7の走行速度が変化することを抑制することができる。
【0057】
また、マンコンベヤ1は、本実施形態のように、
前記マンコンベヤ1に乗る人を検出する人検出部19を備え、
前記処理部6は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部6は、前記人検出部19が人を検出した場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成が好ましい。
【0058】
斯かる構成によれば、処理部6は、電力の周波数を一定にする基準制御を実行する。そして、対象となるチェーン7の脈動が人(具体的には、搬送負荷)に起因しているため、人検出部19が人を検出した場合に、処理部6は、周波数制御を実行する。これにより、対象となるチェーン7の脈動が発生する虞がある場合に、周波数制御が実行される。
【0059】
また、マンコンベヤ1においては、本実施形態のように、
前記処理部6は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部6は、前記速度検出部18で検出した走行速度の変化の大きさV1が設定値よりも大きい場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成でもよい。
【0060】
斯かる構成によれば、処理部6は、電力の周波数を一定にする基準制御を実行する。そして、対象となるチェーン7の脈動においては、走行速度の変化の大きさV1が大きいため、速度検出部18で検出した走行速度の変化の大きさV1が設定値よりも大きい場合に、処理部6は、周波数制御を実行する。これにより、対象となるチェーン7の脈動が発生した場合に、周波数制御が実行される。
【0061】
また、マンコンベヤ1においては、本実施形態のように、
前記処理部6は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部6は、前記速度検出部18で検出した走行速度の変化の周期の長さT1が設定値よりも長い場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成が好ましい。
【0062】
斯かる構成によれば、処理部6は、電力の周波数を一定にする基準制御を実行する。そして、対象となるチェーン7の脈動においては、走行速度の変化の周期の長さT1が長いため、速度検出部18で検出した走行速度の変化の周期の長さT1が設定値よりも長い場合に、処理部6は、周波数制御を実行する。これにより、対象となるチェーン7の脈動が発生した場合に、周波数制御が実行される。
【0063】
なお、マンコンベヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、マンコンベヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0064】
(A)上記実施形態に係るマンコンベヤ1においては、処理部6は、第1の要件(人検出部19が人を検出した場合)と、第2の要件(速度検出部18で検出した走行速度の変化の大きさV1が設定値よりも大きい場合)及び第3の要件(速度検出部18で検出した走行速度の変化の周期の長さT1が設定値よりも長い場合)の少なくとも一方とが成立した場合に、周波数制御を実行する、という構成である。しかしながら、マンコンベヤ1は、斯かる構成に限られない。
【0065】
(A-1)処理部6は、例えば、第1の要件が成立した場合に、周波数制御を実行する、という構成でもよく、また、例えば、第2の要件が成立した場合に、周波数制御を実行する、という構成でもよく、また、例えば、第3の要件が成立した場合に、周波数制御を実行する、という構成でもよい。また、処理部6は、例えば、第2及び第3の要件が成立した場合に、周波数制御を実行する、という構成でもよく、また、例えば、第1~第3の要件が成立した場合に、周波数制御を実行する、という構成でもよい。
【0066】
(A-2)また、対象となるチェーン7の第1の脈動は、弾性部15aの弾性変形量の変化に起因している。それに対して、例えば、マンコンベヤ1は、弾性部15aの弾性変形の変化を検出する変形検出部を備え、変形検出部が弾性変形の変化を検出した場合に、処理部6は、周波数制御を実行する、という構成でもよい。特に限定されないが、例えば、弾性部15aの弾性変形の変化を検出する変形検出部を備え、変形検出部が弾性部15aの弾性変形量が設定量を超えたことを検出した場合に、処理部6は、周波数制御を実行する、という構成でもよい。
【0067】
変形検出部は、例えば、連結部15bに固定される振動センサであり、連結部15bの振動を検出することによって、間接的に弾性部15aの弾性変形の変化を検出してもよい。また、変形検出部は、例えば、連結部15bの先端部の位置を検出する位置検出センサであり、連結部15bの先端部の移動を検出することによって、間接的に弾性部15aの弾性変形の変化を検出してもよい。
【0068】
このように、マンコンベヤ1は、
前記弾性部15aの弾性変形の変化を検出する変形検出部を備え、
前記処理部6は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部6は、前記変形検出部が弾性変形の変化を検出した場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成でもよい。
【0069】
斯かる構成によれば、処理部6は、電力の周波数を一定にする基準制御を実行する。そして、対象となるチェーン7の脈動が弾性部15aの弾性変形量の変化に起因しているため、変形検出部が弾性部15aの弾性変形の変化を検出した場合に、処理部6は、周波数制御を実行する。これにより、対象となるチェーン7の脈動が発生する虞がある場合に、周波数制御が実行される。
【0070】
(A-3)また、対象となるチェーン7の脈動は、搬送負荷に起因している。それに対して、例えば、マンコンベヤ1は、モータ12の出力トルクを検出するトルク検出部を備え、トルク検出部で検出した出力トルクの大きさの変化が設定値よりも大きい場合に、処理部6は、周波数制御を実行する、という構成でもよい。
【0071】
トルク検出部は、例えば、モータ12の出力トルクを直接的に検出してもよく、また、例えば、モータ12の出力トルクとの間に相関関係が存在する情報(例えば、インバータ20の出力電力、出力電圧、電流等)を検出することによって、モータ12の出力トルクを間接的に検出してもよい。
【0072】
このように、マンコンベヤ1は、
前記モータ12の出力トルクを検出するトルク検出部を備え、
前記処理部6は、前記電力の周波数を一定にする基準制御を実行し、
前記処理部6は、前記トルク検出部で検出した出力トルクの大きさの変化が設定値よりも大きい場合に、前記周波数制御を実行する、
という構成でもよい。
【0073】
斯かる構成によれば、処理部6は、電力の周波数を一定にする基準制御を実行する。そして、対象となるチェーン7の脈動が搬送負荷に起因しているため、トルク検出部で検出した出力トルクの大きさの変化が設定値よりも大きい場合に、処理部6は、周波数制御を実行する。これにより、対象となるチェーン7の脈動が発生する虞がある場合に、周波数制御が実行される。
【0074】
(A-4)なお、変形検出部が弾性部15aの弾性変形の変化を検出した場合を、第4の要件とし、トルク検出部で検出した出力トルクの大きさの変化が設定値よりも大きい場合を、第5の要件とし、周波数制御を実行するための要件は、第1~第5の要件から任意に少なくとも一つの要件を選択してもよい。例えば、第1~第5の要件から少なくとも一つの要件を選択し、選択された要件のうち、一つの要件、複数の要件又は全ての要件が成立した場合に、処理部6は、周波数制御を実行する、という構成でもよい。
【0075】
(B)なお、例えば、特許請求の範囲、明細書及び図面において示したシステム、方法、プログラム、及び装置における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるものでない限り、任意の順序で実現できる。例えば、便宜上、「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0076】
1…マンコンベヤ、2…構造体、2a…枠材、2b…枠材、2c…枠材、3…搬送部、4…欄干部、4a…手摺ベルト、4b…欄干本体部、4c…カバー部、5…駆動部、6…処理部、6a…取得部、6b…記憶部、6c…演算部、6d…制御部、7…チェーン、7a…リンク、7b…ローラ、8…連結軸、9…ステップ、9a…ステップ本体、9b…ローラ、9c…踏面部、9d…蹴上部、9e…連結部、10…スプロケット、10a…歯、11…支持部、11a…ガイド部、12…モータ、13…伝達部、13a…回転体、13b…伝達体、14…ガイド機構、14a…ローラ、14b…レール、15…張力付与部、15a…弾性部、15b…連結部、15c…第1保持部、15d…第2保持部、16…入力部、17…出力部、18…速度検出部、19…人検出部、20…インバータ、D1…第1横方向、D2…第2横方向、D3…上下方向
【要約】
【課題】 チェーンの走行速度が変化することを抑制することができるマンコンベヤを提供する。
【解決手段】 マンコンベヤは、複数のステップと、複数のステップが接続される無端環状のチェーンと、チェーンの第1横方向の第1端部が巻き掛けられる回転可能なスプロケットと、チェーンの第1横方向の第2端部を支持する支持部と、チェーンに張力を付与するために、支持部に第1横方向の弾性復元力を加える弾性部と、スプロケットを回転させるモータと、モータに供給する電力の周波数を変更するインバータと、チェーンの走行速度を検出する速度検出部と、インバータを制御する処理部と、を備え、処理部は、速度検出部の検出に基づいて、チェーンの走行速度が一定となるように、電力の周波数を変更する周波数制御を実行する。
【選択図】
図5