(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241203BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241203BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20241203BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20241203BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2023160331
(22)【出願日】2023-09-25
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】臼井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】澤井 悠利
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-114666(JP,A)
【文献】特開2023-081221(JP,A)
【文献】特開2007-176331(JP,A)
【文献】特開2023-047533(JP,A)
【文献】特開2023-110281(JP,A)
【文献】特開2020-024475(JP,A)
【文献】特開2023-118448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面における塩害を受ける程度を示す塩害情報を含む路面情報と、車両の運行する経路を示す経路情報と、
前記車両の経路における滞在時間と、に基づいて、前記車両が有する所定の部品の疲労度を特定する特定部と、
前記特定された疲労度に基づいて、前記疲労度に関する情報をユーザに通知する通知部と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記路面情報は、前記路面の凹凸を示す情報
をさらに含み、
前記特定部は、前記車両が運行した経路における路面の凹凸の状態に基づいて、前記疲労度を特定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記特定部は、前記車両が運行した経路における路面の凹凸が大きいほど、前記疲労度が大きくなるように、前記疲労度を特定する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記路面情報を格納する記憶媒体と、
前記経路情報を、前記車両から受信する通信部と、
をさらに有する
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
車両の時間毎の位置を示す位置情報と、当該車両の環境を示す環境情報と、に基づいて、前記車両が有する所定の部品の疲労度を特定する特定部と、
前記特定された疲労度に基づいて、前記疲労度に関する情報をユーザに通知する通知部と、
を備
え、
前記環境情報は、路面の状態を示す路面情報と、車両の運行する経路を示す経路情報と、前記車両の前記位置における滞在時間を含む、
システム。
【請求項6】
前記環境情報は、前記路面情報がマップ上に表された第1マップ情報および塩害を受ける程度を示す塩害情報がマップ上に表された第2マップ情報の中の少なくとも一方を含む、
請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1マップ情報および前記第2マップ情報の中の少なくとも一方を記憶する記憶部
をさらに備える、
請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記部品は、前記車両のシャシ系を構成するシャシ系部品を含む、
請求項
1乃至7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記通知部は、前記特定された疲労度に応じた時間および走行距離の少なくとも一方を前記ユーザに通知する、
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中古車両の評価を行う上で、車両の走行距離や年式に基づいて、車両の疲労度(寿命)を判断することが知られている。
【0003】
例えば、車両を構成する部品の疲労度(寿命)を予測する残存寿命予測装置として、寿命関連データが車両の走行に関する累積走行距離と共に無線通信を介して残存寿命管理センタのサーバに送信されるため、累積走行距離が不連続に変化している走行距離を、残存寿命管理センタが寿命関連データを受信できなかったデータ未取得走行距離として特定し、未取得走行距離に基づいて、そのデータ未取得走行距離における部品の寿命低下を加味して、残存寿命を予測することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、車両を構成する部品における疲労の度合いを示す疲労損傷度を算出する際に用いられるパラメータを検出するパラメータ検出部の検出結果を車両の単位走行距離毎に取得する取得部と、単位走行距離毎に取得された検出結果に基づいて、疲労損傷度を単位走行距離毎に算出する算出部と、を備える疲労損傷度推定装置が記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-67594特開号公報
【文献】特開2017-96672特開号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に係る残存寿命予測装置は、累積走行距離に基づいて残存寿命を予測するものである。
【0007】
また、上記の特許文献2に係る疲労損傷度推定装置は、単位走行距離に基づいて疲労損傷度を算出するものである。
【0008】
ところで、車両を構成する部品は、車両の走行環境によって負荷のかかり方が異なる。したがって、同じ走行距離であっても、車両の走行環境が異なれば、部品ごとの疲労度も異なる。
【0009】
部品の疲労度を特定する場合には、車両の走行環境を十分に考慮していなかった。これにより、部品の疲労度を特定する精度が低下するおそれがある。
【0010】
本開示の目的は、車両を構成する部品の疲労度を特定する精度を上げることが可能なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本開示におけるシステムは、
路面における塩害を受ける程度を示す塩害情報を含む路面情報と、車両の運行する経路を示す経路情報と、前記車両の経路における滞在時間と、に基づいて、前記車両が有する所定の部品の疲労度を特定する特定部と、
前記特定された疲労度に基づいて、前記疲労度に関する情報をユーザに通知する通知部と、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、車両を構成する部品の疲労度を特定する精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態におけるシステムの機能構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ダメージ量と時系列データおよび環境データのそれぞれとの関係を示す図である。
【
図3】
図3は、各部品のそれぞれの金属疲労のダメージ量を示す図である。
【
図4】
図4は、各車両のメンテナンスアラートを示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態におけるシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本開示の実施の形態におけるシステムは、車両がユーザに使用されるときの車両の環境が異なることで、車両を構成する部品の疲労度が異なる場合があるため、環境を示すデータに基づいて、部品の疲労度を特定する。本実施の形態では、環境を示すデータの一例として路面環境について説明する。また、疲労度を特定する部品の一例として、車両のシャシ系を構成するシャシ系部品について説明する。さらに、疲労度の一例として金属疲労の疲労度について説明する。なお、本開示においては、環境を示すデータを路面環境に限定するものでなく、また、疲労度を特定する部品をシャシ系部品に限定するものでなく、疲労度を金属疲労の疲労度に限定するものでない。以下の説明で、シャシ系部品を単に「部品」という場合がある。
【0015】
図1は、本開示の実施の形態におけるシステムの機能構成を模式的に示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態におけるシステム100はサーバ1aを有している。
図1において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図1に示していないデータの流れがあってもよい。
図1において、各機能ブロックは、ハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図1に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、通信ネットワーク等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0016】
サーバ1aは、制御装置1を有している。制御装置1は、記憶部2と制御部3とを備えている。また、サーバ1aは、通信部4を有している。
【0017】
(通信部4)
通信部4は、車両との間でデータの送受信を行う。センサにより検出された検出結果を示す検出データや、計測器により計測された計測結果を示す測定データは、第1車両から通信部4に送信される。以下の説明で、第1車両から送信される検出データや、測定データを「管理データ」という。管理データには、車両の位置を示す情報が時間の経過順に並べられた時系列データである車両位置情報が含まれる。車両の位置を示す情報が時間の経過順に並べられた時系列データである車両位置情報は、例えば、車両の運行する経路を示す経路情報であるといえる。通信部4は、車両から経路情報を受信する。また、管理データには、車速情報および車重情報(積載量を含む)が含まれる。車両は、種々の管理データを、当該管理データの種類に応じて所定の時間毎に通信部4に送信する。
【0018】
(記憶部2)
記憶部2は、制御装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や制御装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報、各種のマップを格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【0019】
記憶部2は、通信部4により受信された管理データを記憶する。また、記憶部2は、環境を示す環境データを記憶する。
【0020】
(環境データ、第1マップ情報)
次に、環境データについて
図2を参照して説明する。
図2は、ダメージ量と時系列データおよび環境データのそれぞれとの関係を示す図である。環境データは、第1マップ情報を含む。第1マップ情報201(
図5参照)は、路面情報がマップ上に所定色の点として表されたものである。路面情報は、路面の状態を示す情報である。路面情報は、例えば、路面の凹凸区間と、路面の凹凸状態の程度を表す指数であるIRI(国際ラフネス指数)とを含むものである。例えば、凹凸区間は、IRIが所定の閾値よりも高い区間であるとする。なお、IRIは、区間累積値を走行距離で除した数値(mm/mあるいはm/km)である。車両のシャシ系を構成するシャシ系部品は、車両がIRIにより表された凹凸区間を走行する場合のIRIの大きさに応じて金属疲労のダメージを受ける。また、部品は、車両が凹凸区間を走行する回数に応じて金属疲労のダメージを受ける。したがって、金属疲労のダメージは、IRIの大きさおよび回数(N)のそれぞれに関係する。
図2に、金属疲労のダメージと、第1マップ情報(IRI)および回数(N)のそれぞれとの関係を「○」で示す。
【0021】
制御部3は、制御装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部2に記憶されたプログラムを実行することによって取得部30、算出部31および特定部32として機能する。
【0022】
なお、
図1は、制御装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、制御装置1は、例えば複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部3を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0023】
(取得部30)
取得部30は、通信部4から管理データを取得する。制御部3は、取得部30により取得された管理データ(車両位置情報、車速情報、および、車重情報を示すデータ)を記憶部2に記憶させる。なお、車両位置情報203(
図5参照)をGPS(Global Positioning System)情報という場合がある。
【0024】
(算出部31)
算出部31は、車両位置情報に基づいて、車両が凹凸区間を走行した回数を算出する。
【0025】
図3は、各部品のそれぞれの金属疲労のダメージ量を示す図である。算出部31は、車両位置情報および第1マップ情報に基づいて、部品の金属疲労のダメージ量を算出する。具体的には、算出部31は、IRIの大きさと回数(N)とに基づいて、部品の金属疲労のダメージ量を算出する。例えば、金属疲労のダメージ量は、IRIの大きさと回数(N)とを乗算した乗算値となる。
図3に、部品A、部品Bおよび部品Cのそれぞれの金属疲労のダメージ量である「320,000」、「12,900」および「84,200」を示す。なお、路面の凹凸によるダメージ量は、上述の方法に限らず、車両の通過した経路における路面の凹凸の程度を示すIRIの大きさの積分量に基づいてダメージ量を算出することも可能である。算出部31は、車両が凹凸の程度の大きい路面を、多くの回数もしくは長い時間にわたって走行した場合に、より大きなダメージ量を算出する。
【0026】
(特定部32)
特定部32は、部品の金属疲労のダメージ量に基づいて、当該部品の金属疲労の疲労度を特定する。特定部32は、部品の金属疲労のダメージ量が大きいほど、当該部品の金属疲労の疲労度が大きくなるとして疲労度を特定する。特定部32は、部品の疲労度を「R」、「G」および「Y」のそれぞれの状態で特定する。なお、「R」の状態は、疲労度が高いことを示し、安全性の観点から速やかにメンテナンスや、部品交換を必要とする状態である。「G」の状態は、疲労度が低いことを示し、車検時(1年点検時)に状況に応じてメンテナンスを必要とする状態である。「Y」の状態は、疲労度が中程度であることを示し、定期点検時(3ヶ月点検時)に状況に応じてメンテナンスを必要とする状態である。
【0027】
また、特定部32は、部品の金属疲労のダメージ量に基づいて、故障のおそれが一定以上高まるまでの時間又は走行距離を特定する。詳細については、後述する変形例3において
図4を参照して説明する。故障のおそれが一定以上高まるまでの時間又は走行距離は、すなわち、点検や修理、交換などの対応が必要となる時間(点検時間)又は走行距離(点検走行距離)であるともいえる。
【0028】
(報知部5)
報知部5は表示部を有している。表示部には、ダメージ量、および、部品の疲労度が表示される(部品蓄積ダメージ量)。また、標準査定では、内外装のダメージを査定している。標準査定のみでは、部品の疲労度を特定する精度を上げることは困難であったが、ダメージ量、および、部品の疲労度が表示されることにより、部品の疲労度を特定する精度を上げることが可能となる。報知部5は、本開示の「通知部」に対応する。
【0029】
次に、本開示の実施の形態におけるシステムの動作の一例について
図5を参照して説明する。
図5は本開示の実施の形態におけるシステムの動作の一例を示すフローチャートである。本フローは、例えば、端末装置(タブレット端末)を用いたユーザの入力操作により開始される。
【0030】
先ず、ステップS110において、取得部30は、車両位置情報203(GPS情報)を取得する。また、取得部30は、第1マップ情報201を取得する。
【0031】
次に、ステップS120において、算出部31は、車両位置情報203および第1マップ情報201に基づいて、金属疲労のダメージ量を算出する。
【0032】
次に、ステップS130において、特定部32は、算出されたダメージ量に基づいて、部品の疲労度を特定する。
【0033】
次に、ステップS140において、制御装置1は、部品の疲労度を示す情報を報知部5(表示部)に出力する。その後、本フローは終了する。
【0034】
上記実施の形態におけるシステム100は、路面の状態を示す路面情報と、車両の運行する経路を示す経路情報と、に基づいて、車両が有する所定の部品の疲労度を特定する特定部32と、特定された疲労度に基づいて、疲労度に関する情報をユーザに報知する報知部5と、を備える。これにより、的確な情報を用いて部品の疲労度を特定しているため、部品の疲労度を特定する精度を上げることが可能となる。また、疲労度に関するより明確な情報をユーザに報知することが可能となる。
また、上記実施の形態におけるシステム100は、車両を構成する部品の疲労度を特定するシステムであって、車両の位置を示す情報が時間の経過順に並べられた時系列データである車両位置情報203および環境データである第1マップ情報201のそれぞれを取得する取得部30と、車両位置情報203および第1マップ情報201に基づいて、部品のダメージ量を算出する算出部31と、算出されたダメージ量に基づいて部品の疲労度を特定する特定部32と、を備える。
【0035】
上記構成により、車両がユーザに使用されるときの当該車両の環境を示すデータに基づいて、車両を構成する部品のダメージ量を算出するため、部品の疲労度を特定する精度を上げることが可能となる。
【0036】
また、上記実施の形態におけるシステム100では、データは、車両の位置を示す情報が時間の経過順に並べられた車両位置情報を含む時系列データおよび車両の周囲環境を示す環境データを含み、算出部31は、時系列データおよび環境データに基づいて、部品のダメージ量を算出する。これにより、車両が使用されている環境がより明確になり、明確になるに応じて、部品のダメージ量を算出する精度が上がるため、部品の疲労度を特定する精度をより上げることが可能となる。
【0037】
また、上記実施の形態におけるシステム100では、部品は、車両のシャシ系を構成するシャシ系部品を含む。これにより、シャシ系部品を比較的容易に査定することが可能となる。また、シャシ系部品の疲労度を特定する精度を上げることができるため、車両をより安全に運用することが可能となる。
【0038】
また、上記実施の形態におけるシステム100では、環境データは、路面情報がマップ上に表された第1マップ情報201および塩害情報がマップ上に表された第2マップ情報202の中の少なくとも一方を含む。これにより、路面情報あるいは塩害情報に基づいて、部品の疲労度を特定するため、車両が使用されている環境がより明確になり、明確になるに応じて、部品のダメージ量を算出する精度が上がる。その結果、部品の疲労度を特定する精度をより上げることが可能となる。
【0039】
また、上記実施の形態におけるシステム100では、第1マップ情報201および第2マップ情報202の中の少なくとも一方を記憶する記憶部2をさらに備える。記憶部2から第1マップ情報201または第2マップ情報202適宜読み出し、読み出したマップを用いて、部品の疲労度を特定することが可能となる。
【0040】
また、上記実施の形態におけるシステム100では、ダメージ量は、錆の程度を示す情報および金属疲労の程度を示す情報の中の少なくとも一方を含む。これにより、錆や金属疲労の観点から部品の疲労度をより正確に特定することができるため、部品の疲労度の精度をより上げることが可能となる。
【0041】
(変形例1)
上記実施の形態におけるシステム100では、時系列データである車両位置情報203および環境データである第1マップ情報201に基づいて、部品の金属疲労のダメージ量を算出し、算出したダメージ量に基づいて、部品の疲労度を特定した。これに対して、変形例1におけるシステム100では、環境データを第1マップ情報201から第2マップ情報202に代え、第2マップ情報202を用いて、部品の錆のダメージ量を算出する。以下、変形例1におけるシステム100について説明する。変形例1の説明においては、上記実施の形態と異なる構成について主に説明し、同じ構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
(環境データ、第2マップ情報)
第2マップ情報202(
図5参照)は、塩害区域と、部品に対するストレスを定量化したストレス量の大きさを示すマップ情報とがマップ上に表されたものである。塩害は、例えば、海に近いエリアにおいて、大気中に海水に起因する塩分が多く含まれる場合に、当該塩分により引き起こされる。例えば、塩害は、部品に対して錆を発生させることである。塩害区域は、塩害が発生する程度が大きい区域である。例えば、塩害区域は海(海岸)からの距離が所定の距離よりも小さい範囲の区域であるとする。ストレス量は、例えば、大気中に含まれる塩分濃度に応じてあらかじめ設定されたパラメータであるとする。ストレス量が大きいほど、そこに滞在した車両の部品に錆などの影響が大きく表れる。「塩害情報」とは、塩害区域とストレス量の大きさを示す情報をいう。ストレス量の大きさに応じて複数段階に区分けされ、区分けされたストレス量のそれぞれは、所定色で表されている。部品は塩害によるダメージを受ける。なお、部品が有する防錆性能の高さに応じて、部品に対するストレス量が小さくなる。したがって、塩害区域の部品に対するストレス量の大きさは、部品の防錆性能の高さを加味した、相対的な大きさである。
【0043】
塩害によるダメージには、風などにより塩害区域(例えば、沿岸部)に運ばれる海水に含まれる塩分によるダメージが含まれる。車両が塩害区域を走行した場合や、車両が塩害区域に駐車、停車される場合、部品は、車両が塩害区域に滞在した時間(走行時間、駐車時間、停車時間)に応じて、海水による錆のダメージを受ける。また、部品は、ストレス量の大きさに応じて、海水による錆のダメージを受ける。したがって、錆のダメージは、滞在した時間(sec)および第2マップ(ストレス量)のそれぞれに関係する。
図2に、錆(海水)のダメージと、第2マップ(ストレス量)および時間(sec)のそれぞれとの関係を「○」で示す。
【0044】
変形例1におけるシステム100では、算出部31が車両位置情報に基づいて車両が塩害区域(例えば、沿岸部)に滞在した時間(sec)を算出し、滞在した時間と第2マップ情報(ストレス量)とに基づいて、部品の錆のダメージ量を算出する。特定部32がダメージ量に基づいて、部品の疲労度を特定する。
【0045】
なお、変形例1では、環境データを第1マップ情報から第2マップ情報に代え、第2マップに基づいて部品の海水(塩分)による錆のダメージ量を算出したが、本開示はこれに限らず、第1マップ情報と第2マップ情報との両方に基づいて、部品のダメージ量(金属疲労によるダメージ量、塩分による錆のダメージ量)を算出してもよい。
【0046】
(変形例2)
次に、変形例2におけるシステム100について説明する。変形例2の説明においては、上記実施の形態と異なる構成について主に説明し、同じ構成については同一符号を付してその説明を省略する。塩害によるダメージには、海水に含まれる塩分によるダメージの他に、路面に散布される融雪剤に含まれる塩分(塩化カルシウムや、塩化ナトリウム)によるダメージが含まれる。以下の説明で、路面に融雪剤が散布された区域を「融雪剤散布区域」という。
【0047】
変形例1において述べたように、第2マップ情報202(
図5参照)は、塩害区域と、部品に対するストレスを定量化したストレス量の大きさを示すマップ情報とがマップ上に表されたものである。また、「塩害情報」とは、塩害区域とストレス量の大きさを示す情報をいう。ストレス量の大きさに応じて複数段階に区分けされ、区分けされたストレス量のそれぞれは、所定色で表されている。部品は塩害によるダメージを受ける。
【0048】
塩害によるダメージには、車両が塩害区域(例えば、融雪剤散布区域)を走行した場合や、車両が融雪剤散布区域に駐車、停車される場合、部品は、錆のダメージを受ける。部品は、車両が塩害区域を走行した距離(m)に応じて、融雪剤による錆のダメージを受ける。また、部品は、ストレス量の大きさに応じて、融雪剤による錆のダメージを受ける。したがって、融雪剤による錆のダメージは、走行した距離(m)および第2マップ(ストレス量)のそれぞれに関係する。
図2に、錆(融雪剤)と、距離(m)および第2マップ情報(ストレス量)とのそれぞれの関係を「○」で示す。
【0049】
変形例2におけるシステム100では、算出部31が車両位置情報に基づいて車両が塩害区域(例えば、融雪剤散布区域)を走行した距離(m)を算出し、走行した距離(m)と第2マップ情報(ストレス量)とに基づいて、部品の錆のダメージ量を算出する。特定部32がダメージ量に基づいて、部品の疲労度を特定する。
【0050】
なお、道路管理者は気象状況に応じて融雪剤散布区域を指定し、路面に融雪剤を散布する。サーバ1aは、車載端末を介して融雪剤散布区域を示す情報を収集し、収集した融雪剤散布区域を第2マップ上に表するようにしてもよい。
【0051】
なお、変形例2では、環境データを第1マップ情報から第2マップ情報に代え、第2マップに基づいて部品の融雪剤による錆のダメージ量を算出したが、本開示はこれに限らず、第1マップ情報と変形例2の第2マップ情報との両方に基づいて、部品のダメージ量(金属疲労によるダメージ量、融雪剤による錆のダメージ量)を算出してもよい。さらに、上記実施の形態の第1マップ情報と、変形例1の第2マップ情報と、変形例2の第2マップ情報とに基づいて、部品のダメージ量(金属疲労によるダメージ量、海水(塩分)による錆のダメージ量、融雪剤による錆のダメージ量)を算出してもよい。
【0052】
(変形例3)
次に、変形例3について
図4を参照して説明する。上記実施の形態におけるシステムでは、ダメージ量および部品の疲労度を報知部5(表示部)に表示したが、本開示はこれに限らない。例えば、運転手および/または管理者の端末装置(タブレット端末、PC端末)に各車両のメンテナンスアラートを出力するようにしてもよい。例えば、メンテナンスアラートは、故障のおそれが一定以上に高まるまでの時間および走行距離の少なくとも一方が含まれる。また、メンテナンスアラートと共に、ダメージ量を出力してもよく。
図4に、車両A、B、Cのそれぞれのダメージ量として「120,000」、「80,000」および「1,930,000」を示す。また、車両A、B、Cのそれぞれの故障のおそれが一定以上に高まるまでの時間として「26,000h」、「100,000h」および「200h」を示す。また、車両A、B、Cのそれぞれの故障のおそれが一定以上に高まるまでの走行距離として「243,000km」、「603,400km」および「3,400km」を示す。
図4に示すメテンスアラートから、車両Cは、部品交換が必須であることが明確となり、部品交換することで、故障を未然に防止することが可能となる。これにより、車両をより安全に運用することが可能となる。
【0053】
なお、変形例3おいては、メンテナンスアラートや、ダメージ量と共に、各部品の状態(
図3に示す「R」、「G」、「Y」)を出力してもよい。
【0054】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示は、車両を構成する部品の疲労度を特定する精度を上げることが要求されるシステムを備えた管理装置に好適に利用される。
【符号の説明】
【0056】
1 制御装置
1a サーバ
2 記憶部
3 制御部
4 通信部
5 報知部
30 取得部
31 算出部
32 特定部
100 システム
201 第1マップ情報
202 第2マップ情報
203 車両位置情報(GPS情報)
【要約】
【課題】車両を構成する部品の疲労度を特定する精度を上げることが可能なシステムを提供する。
【解決手段】システムは、路面の状態を示す路面情報と、車両の運行する経路を示す経路情報と、に基づいて、車両が有する所定の部品の疲労度を特定する特定部と、特定された疲労度に基づいて、疲労度に関する情報をユーザに通知する通知部と、を備える。例えば、路面情報は、路面の凹凸を示す情報であって、特定部は、車両が運行した経路における路面の凹凸の状態に基づいて、疲労度を特定する。
【選択図】
図1