(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】遠隔操作装置及び遠隔操作方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20241203BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D101:00
(21)【出願番号】P 2023167750
(22)【出願日】2023-09-28
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 康之
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-77649(JP,A)
【文献】特開2004-206218(JP,A)
【文献】特開2023-117981(JP,A)
【文献】特開2022-121997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を遠隔操作するための遠隔操作装置であって、
路面から前記車両が備えるタイヤに作用する反力に基づく操舵トルクを含む、前記車両の状態情報を取得する取得部と、
前記操舵トルクに基づいて、前記遠隔操作装置が備えるステアリングホイールに操舵反力を付与するアクチュエータを動作させる操舵制御部と、
を有し、
前記操舵制御部は、前記取得部が所定の時刻に所定の量の前記状態情報を取得していない場合、前記所定の時刻より前の時刻に取得した前記状態情報に基づいて、前記所定の時刻の前記操舵トルクを決定する、
遠隔操作装置。
【請求項2】
前記操舵制御部は、前記取得部が前記所定の時刻から所定の周期で前記所定の量の前記状態情報を取得していない状態が所定の時間未満継続していることを条件として、前記所定の周期が経過した時刻毎に、当該時刻より前の時刻に取得した前記状態情報に基づいて前記操舵トルクを決定する、
請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記状態情報は、前記車両の車速、前記車両の加速度、前記車両の角速度、前記車両の重量及び前記車両の位置をさらに含み、
前記操舵制御部は、路面の形状を示す地図情報と前記車両の位置とに基づく、前記車両が走行する車線の路面形状、前記車速と前記加速度と前記角速度と前記重量とに基づく前記車両の運動状態、及び前記路面形状と前記運動状態とに基づく前記車両の接地状態に基づいて、前記操舵トルクを決定する、
請求項1又は2に記載の遠隔操作装置。
【請求項4】
前記操舵制御部は、前記操舵トルクと、前記接地状態が示す接地面の重心位置と、に基づいて、前記操舵反力を決定する、
請求項3に記載の遠隔操作装置。
【請求項5】
前記操舵制御部は、前記取得部が前記所定の時刻から所定の周期で前記所定の量の前記状態情報を取得していない状態が所定の時間以上継続していることを条件として、前記所定の周期が経過した時刻毎に、前記車両が走行する予定の位置と時刻とを含む走行計画情報、及び路面の形状を示す地図情報に基づいて、前記所定の周期が経過した時刻において前記車両が走行すると推定された位置の前記操舵トルクを決定する、
請求項1又は2に記載の遠隔操作装置。
【請求項6】
前記操舵制御部は、前記所定の周期が経過した時刻に決定した第1操舵トルクと、当該時刻より前記所定の周期前の時刻に決定した第2操舵トルクとの差が所定の操舵トルク未満になるように前記第1操舵トルクを決定する、
請求項5に記載の遠隔操作装置。
【請求項7】
前記操舵制御部は、前記所定の時刻に決定した第3操舵トルクと、前記所定の時刻より後の時刻に前記取得部が取得した第4操舵トルクと、の差が所定の操舵トルク以上である場合、前記所定の時刻より後の時刻において、前記第3操舵トルクに、前記車両の車速に基づく補正トルクを加算する、
請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項8】
前記操舵制御部は、前記所定の時刻に決定した第3操舵トルクの向きと、前記所定の時刻より後の時刻に前記取得部が取得した第4操舵トルクの向きが異なる場合、前記所定の時刻より後の時刻において、前記第3操舵トルクに、前記車両の車速に基づく補正トルクを加算する、
請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項9】
プロセッサが実行する、
路面から車両が備えるタイヤに作用する反力に基づく操舵トルクを含む、前記車両の状態情報を取得する取得工程と、
前記操舵トルクに基づいて、前記車両を遠隔操作するための遠隔操作装置が備えるステアリングホイールに操舵反力を付与するアクチュエータを動作させる制御工程と、
を有し、
前記取得工程において所定の時刻に所定の量の前記状態情報を取得していない場合、前記制御工程において、前記所定の時刻より前の時刻に取得した前記状態情報に基づいて、前記所定の時刻の前記操舵トルクを決定する、
遠隔操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作装置及び遠隔操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の移動体遠隔操作システムは、バイラテラル制御をすることにより、操作システムと移動体システムとの間で、直進運動、回転運動、及びステアリング反力の状態を一致させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の移動体遠隔操作システムにおいては、車両と、車両を遠隔から操作する遠隔操作装置との間でバイラテラル制御を実行した場合、車両と遠隔操作装置との通信においてデータが遅延したり欠損したりすると、遠隔操作装置は、誤ったステアリング反力を発生する。その結果、遠隔操作装置の操作者は、遠隔操作装置を用いて車両を正しく操作することができないため、車両が不安定な動作をするという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ステアリング反力の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る遠隔操作装置は、車両を遠隔操作するための遠隔操作装置であって、路面から前記車両が備えるタイヤに作用する反力に基づく操舵トルクを含む、前記車両の状態情報を取得する取得部と、前記操舵トルクに基づいて、前記遠隔操作装置が備えるステアリングホイールに操舵反力を付与するアクチュエータを動作させる操舵制御部と、を有し、前記操舵制御部は、前記取得部が所定の時刻に所定の量の前記状態情報を取得していない場合、前記所定の時刻より前の時刻に取得した前記状態情報に基づいて、前記所定の時刻の前記操舵トルクを決定する。
【0007】
前記操舵制御部は、前記取得部が前記所定の時刻から所定の周期で前記所定の量の前記状態情報を取得していない状態が所定の時間未満継続していることを条件として、前記所定の周期が経過した時刻毎に、当該時刻より前の時刻に取得した前記状態情報に基づいて前記操舵トルクを決定してもよい。
【0008】
前記状態情報は、前記車両の車速、前記車両の加速度、前記車両の角速度、前記車両の重量及び前記車両の位置をさらに含み、前記操舵制御部は、路面の形状を示す地図情報と前記車両の位置とに基づく、前記車両が走行する車線の路面形状、前記車速と前記加速度と前記角速度と前記重量とに基づく前記車両の運動状態、及び前記路面形状と前記運動状態とに基づく前記車両の接地状態に基づいて、前記操舵トルクを決定してもよい。
【0009】
前記操舵制御部は、前記操舵トルクと、前記接地状態が示す接地面の重心位置と、に基づいて、前記操舵反力を決定してもよい。
【0010】
前記操舵制御部は、前記取得部が前記所定の時刻から所定の周期で前記所定の量の前記状態情報を取得していない状態が所定の時間以上継続していることを条件として、前記所定の周期が経過した時刻毎に、前記車両が走行する予定の位置と時刻とを含む走行計画情報、及び路面の形状を示す地図情報に基づいて、前記所定の周期が経過した時刻において前記車両が走行すると推定された位置の前記操舵トルクを決定してもよい。
【0011】
前記操舵制御部は、前記所定の周期が経過した時刻に決定した第1操舵トルクと、当該時刻より前記所定の周期前の時刻に決定した第2操舵トルクとの差が所定の操舵トルク未満になるように前記第1操舵トルクを決定してもよい。
【0012】
前記操舵制御部は、前記所定の時刻に決定した第3操舵トルクと、前記所定の時刻より後の時刻に前記取得部が取得した第4操舵トルクと、の差が所定の操舵トルク以上である場合、前記所定の時刻より後の時刻において、前記第3操舵トルクに、前記車両の車速に基づく補正トルクを加算してもよい。
【0013】
前記操舵制御部は、前記所定の時刻に決定した第3操舵トルクの向きと、前記所定の時刻より後の時刻に前記取得部が取得した第4操舵トルクの向きが異なる場合、前記所定の時刻より後の時刻において、前記第3操舵トルクに、前記車両の車速に基づく補正トルクを加算してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様に係る遠隔操作方法は、プロセッサが実行する、路面から車両が備えるタイヤに作用する反力に基づく操舵トルクを含む、前記車両の状態情報を取得する取得工程と、前記操舵トルクに基づいて、前記車両を遠隔操作するための遠隔操作装置が備えるステアリングホイールに操舵反力を付与するアクチュエータを動作させる制御工程と、を有し、前記取得工程において所定の時刻に所定の量の前記状態情報を取得していない場合、前記制御工程において、前記所定の時刻より前の時刻に取得した前記状態情報に基づいて、前記所定の時刻の前記操舵トルクを決定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステアリング反力の精度を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る遠隔操作システムSの概要を説明するための図である。
【
図2】路面反力がかかる方向を説明するための図である。
【
図3】操舵トルクを決定する動作を説明するための図である。
【
図4】操舵トルクを決定する手段を切り替える動作を説明するための図である。
【
図5】遠隔操作装置40における処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<遠隔操作システムSの概要>
図1は、本実施形態に係る遠隔操作システムSの概要を説明するための図である。
図1に示す遠隔操作システムSは、車両10及び遠隔操作装置40を備える。遠隔操作システムSは、ユーザが遠隔操作装置40を操作することにより、車両10の外部から車両10を走行させる機能を有する。車両10と遠隔操作装置40とは、5G(5th Generation)等の移動通信ネットワークを介して、遠隔操作装置40から車両10を走行させるための各種の情報を送受信する。
【0018】
車両10は、測定装置11、車速センサ12、加速度センサ13、ジャイロセンサ14、重量センサ15、受信装置16、操舵機構21、駆動力源22、制動装置23、変速機24及び制御装置31を有する。車両10は、遠隔操作装置40から車両10の操作を受け付け、当該操作に基づく走行をする処理を実行する。
【0019】
測定装置11は、車両10の進行方向前方の路面を含む領域を撮像して生成した撮像画像、又は当該領域を測定して生成した点群データに基づいて、車両10の進行方向前方の路面の形状を特定する装置である。測定装置11は、例えば、車両10の前面に設けられたカメラ、RADER(Radio Detection And Ranging)、LiDAR(Light Detection And Ranging)の少なくともいずれかである。
【0020】
車速センサ12は、車両10の車速を検出するためのセンサである。加速度センサ13は、車両10の3軸方向それぞれの加速度を検出するためのセンサであり、例えば、車両10が備えるIMU(Inertial Measurement Unit;慣性計測装置)(不図示)に含まれている。ジャイロセンサ14は、車両10の回転運動における角速度(一例として、ヨーレート)を検出するためのセンサであり、例えば、車両10が備えるIMUに含まれている。重量センサ15は、車両10の重量を検出するためのセンサである。重量センサ15は、車両10に架装が連結されている場合は、架装の重量を含めた車両10の重量を検出する。重量センサ15は、車両10に連結された架装に積載物がある場合は、架装の重量と積載物の重量とを含めた車両10の重量を検出する。
【0021】
受信装置16は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の外部の測位システムから電波を受信するための装置である。受信装置16は、受信した電波に含まれている情報に基づいて、車両10の位置(例えば、緯度及び経度)を算出したり、現在の時刻(日時を含む)を特定したりする。なお、本実施形態における「時刻」は、「日時」を含むものとする。
【0022】
操舵機構21は、進行方向に対する車両10の駆動輪の角度を変化させるための機構であり、例えば、ステアリングホイール、ステアリングシャフト、ステアリングコラム、ステアリングギアボックス及びタイロッドを含む。駆動力源22は、車両10を駆動させるためのエンジン又はモータである。制動装置23は、車両10を減速又は停止させるための装置であり、例えば、ブレーキマスタシリンダと、ディスクブレーキ及びドラムブレーキの少なくともいずれかと、を含む。変速機24は、駆動力源22と駆動輪との間に設けられ、駆動力源22が発生させたトルク、回転数及び回転方向を変化させて駆動輪の活軸に伝達する部品である。
【0023】
制御装置31は、車両10の操舵トルク(以下、「実操舵トルク」という)を算出し、実操舵トルクを含む状態情報を遠隔操作装置40に出力する機能と、遠隔操作装置40から取得した操作情報に基づいて車両10を走行させる機能と、を有する。状態情報及び操作情報の詳細は後述する。制御装置31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサと、移動通信ネットワークを介して遠隔操作装置40と情報の送受信をするための通信コントローラと、を含む。
【0024】
制御装置31は、例えば、路面から車両10が備えるタイヤに作用する路面反力に基づいて、車両10が備える操舵機構21にかかるステアリング反力を特定する。そして、制御装置31は、ステアリング反力により操舵機構21に発生した回転力を実操舵トルクとして算出する。
図2は、路面反力がかかる方向を説明するための図である。
図2(a)は、駆動輪のタイヤTを進行方向の前方から見た場合の図である。
図2(b)は、タイヤTを上方から見た場合の図である。
図2においては、タイヤT、ホイールW、車軸Aを示している。
図2(a)に示すように、傾斜面に対してタイヤTが接している場合、傾斜面と垂直方向(白抜きの矢印の方向)に路面反力がかかる。また、
図2(b)に示すように、進行方向と車輪の向きとが異なり、トー角θが発生している場合、車輪の向きに対して垂直方向(白抜きの矢印の方向)に路面反力がかかる。
【0025】
制御装置31は、路面反力に基づいて実操舵トルクを算出するために、車両10の動力学モデルをシステム同定したプラントモデルに基づくフィードフォワード制御器を用いる。制御装置31は、例えば、所定の時刻において、測定装置11が特定した路面の形状、車速センサ12が検出した車速、加速度センサ13が検出した加速度、ジャイロセンサ14が検出した角速度、重量センサ15が検出した重量を取得する。そして、制御装置31は、取得した路面の形状、車速、加速度、角速度(ヨーレート)及び重量をフィードフォワード制御器に入力することにより、所定の時刻から単位時間(例えば20ミリ秒)後の実操舵トルクを算出する。制御装置31は、算出した実操舵トルクと、実操舵トルクに基づく操舵角(以下、「実操舵角」という)と、取得した車速、加速度、角速度及び重量と、受信装置16が特定した車両10の位置と、を含む状態情報を遠隔操作装置40に出力する。
【0026】
また、制御装置31は、遠隔操作装置40から車両10を操作するための操作情報を取得する。操作情報は、操舵角を操作するための目標操舵角、速度を操作するための目標速度、加速度を操作するための目標加速度、アクセルペダル又はブレーキペダルの踏込量を操作するための目標ペダル操作量、及び車両10の目標位置を含む。制御装置31は、取得した操作情報に基づいて、操舵機構21が制御する駆動輪の角度、駆動力源22が発生させる出力、制動装置23が発生させる制動力、及び変速機24が駆動輪の活軸に伝達する、駆動力源22のトルク、回転数及び回転方向を変化させる。制御装置31がこのように動作することで、遠隔操作装置40は車両10を遠隔操作することができる。
【0027】
遠隔操作装置40は、遠隔操作装置40の操作者が生成した操作情報を車両10に出力することにより車両10を遠隔操作する機能と、車両10から取得した状態情報に含まれる実操舵トルクに基づいて遠隔操作装置40が備えるステアリング機構に作用する操舵反力を算出する機能と、を実行する。ステアリング機構は、ステアリングホイールとステアリングシャフトとを含む。以下の説明においては、ステアリング機構を「ステアリング」という場合がある。遠隔操作装置40は、例えば、携帯電話(スマートフォンを含む)、タブレット端末又はパーソナルコンピュータ等の情報処理端末である。遠隔操作装置40は、1若しくは複数の物理的なサーバから構成されたコンピュータ、又はクラウドサーバを用いて構成されていてもよい。また、遠隔操作装置40は、車両10が有するプラントモデルに基づくフィードフォワード制御器を有する。
【0028】
遠隔操作装置40は、例えば、操作者が、遠隔操作装置40が備えるステアリングホイールを回転させた際の角度を、操作情報に含まれる目標操舵角として特定する。遠隔操作装置40は、例えば、操作者が遠隔操作装置40に接続された入力デバイスを用いて入力した速度、加速度、ペダル操作量及び車両10の位置を、操作情報に含まれる目標速度、目標加速度、目標ペダル操作量及び目標位置として特定する。入力デバイスは、例えば、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチパネル及びマイクの少なくともいずれかである。遠隔操作装置40は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びシフトレバー等の操作機器が接続されている場合、操作者が操作機器を操作したことに基づいて目標速度、目標加速度及び目標ペダル操作量を特定してもよい。
【0029】
遠隔操作装置40は、車両10から取得した状態情報に含まれる実操舵トルクに基づいて、ステアリングに作用する操舵反力を算出し、操舵反力を付与するアクチュエータ43を調整する。遠隔操作装置40がこのように動作することで、操作者は、遠隔操作装置40が備えるステアリングを操作する際に、車両10に設けられた操舵機構21に作用する操舵反力を受けることができる。しかしながら、車両10から遠隔操作装置40に出力した状態情報が、通信障害により欠損したり遅延したりすると、遠隔操作装置40は、誤った操舵反力を付与するため、操作者が正しく操作できなくなる。
【0030】
そこで、遠隔操作装置40は、車両10から取得した状態情報に、取得時間の遅延又はデータの欠損が発生した場合は、所定の時刻よりも前の時刻に取得した状態情報に基づいて操舵反力を算出する。例えば、遠隔操作装置40は、取得した状態情報にデータの欠損又は取得時間の遅延が発生した場合、記憶部に記憶された、路面の形状を示す地図情報を参照することにより、当該前の時刻に取得した状態情報に含まれる車両10の位置に対応する路面の形状を特定する。遠隔操作装置40は、特定した路面の形状と、当該前の時刻に取得した状態情報に含まれる車速、加速度、角速度(ヨーレート)及び重量とを、遠隔操作装置40が有するフィードフォワード制御器に入力することにより操舵トルクを決定し、当該操舵トルクに基づいて操舵反力を算出する。遠隔操作装置40がこのように動作することで、車両10から取得した状態情報に欠損又は遅延が発生した場合であっても、車両10の走行状態に適した操舵反力を付与するようにアクチュエータを動作させることができる。
【0031】
<遠隔操作装置40の構成>
以下、遠隔操作装置40の構成及び動作を詳細に説明する。遠隔操作装置40は、通信部41、記憶部42、アクチュエータ43、操舵部44及び制御部45を有する。制御部45は、取得部451及び操舵制御部452を有する。
【0032】
通信部41は、移動通信ネットワークを介して車両10との間で無線通信を行うための通信コントローラを有する。通信部41は、車両10から入力されたデータ(状態情報)を制御部45に通知する。通信部41は、操舵部44から入力されたデータ(操作情報)を車両10に送信する。
【0033】
記憶部42は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部42は、制御部45が実行するプログラムを記憶している。記憶部42は、操舵部44が実行するプログラムを記憶していてもよい。記憶部42は、ステアリングの操舵反力を算出するための各種の情報を記憶している。各種の情報の一例として、記憶部42は、路面の形状を示す地図情報を記憶している。また、記憶部42は、遠隔操作装置40の操作者が設定した、車両10が走行する予定の位置と時刻とを含む走行計画情報を記憶する。
【0034】
アクチュエータ43は、遠隔操作装置40が有するステアリングのステアリングシャフトに設けられたモータである。アクチュエータ43は、制御部45が算出した操舵反力に基づいて回転運動をすることにより、ステアリングシャフトにトルク(すなわち操舵反力)を付与する。これにより、ステアリングシャフトに接続されたステアリングホイールに操舵反力が伝わる。
【0035】
操舵部44は、操作者が車両10を遠隔操作するための操作機器とCPU等のプロセッサとを含み、操作者が操作したことにより生成した操作情報を車両10に出力する。操舵部44は、例えば、操作機器として、アクチュエータ43が操舵反力を付与するステアリングを含む。操舵部44は、操作機器として、車両10の車速、加速度、ペダル操作量を入力するための入力デバイスを含んでもよい。操舵部44に含まれるプロセッサは、制御部45に含まれていてもよい。
【0036】
操舵部44は、例えば、操作者がステアリングホイールを回転させた際の回転角度を目標操舵角として特定し、操作者が入力デバイスを用いて入力した車速、加速度、ペダル操作量を、目標車速、目標加速度、目標ペダル操作量として特定する。操舵部44は、例えば、記憶部42に記憶された走行計画情報を参照することにより、現在の時刻に対応する、車両10の走行予定位置を目標位置として特定する。操舵部44は、特定した目標操舵角、目標車速、目標加速度、目標ペダル操作量及び目標位置を含む操作情報を車両10に出力する。
【0037】
制御部45は、例えばCPU等のプロセッサである。制御部45は、記憶部42に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部451及び操舵制御部452として機能する。なお、制御部45は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部45により実現される各部の構成を説明する。
【0038】
取得部451は、路面から車両10が備えるタイヤに作用する路面反力に基づく実操舵トルクを含む、車両10の状態情報を取得する。状態情報は、車両10の車速、車両10の加速度、車両10の角速度、車両10の重量及び車両10の位置をさらに含む。状態情報は、車両10が備える各タイヤの空気圧を含んでいてもよい。取得部451は、例えば、単位時間が経過する度に、車両10から状態情報を取得する。単位時間は、車両10のCAN(Controller Area Network)通信の速度に応じた時間であり、例えば、20ミリ秒である。
【0039】
操舵制御部452は、操舵トルクに基づいて、遠隔操作装置40の操舵部44が備えるステアリングホイールに操舵反力を付与するアクチュエータ43を動作させる。操舵制御部452は、例えば、取得部451が所定の時刻に所定の量の状態情報を取得した場合、状態情報に含まれる実操舵トルクに基づいて操舵反力を算出し、操舵部44が備えるステアリングシャフトに操舵反力を付与する。所定の時刻は、例えば、遠隔操作システムSが動作を開始した時刻から、周期(例えば、単位時間)毎の時刻である。所定の量は、例えば、車両10との通信において付加された情報(例えば、送信時刻及び送信するデータ量を示す情報)のデータ量と、状態情報のデータ量との加算値である。
【0040】
操舵制御部452は、例えば、単位時間が経過する度に加算されるカウンタを用いることにより、状態情報を所定の時刻に取得したか否かを判定する。操舵制御部452は、例えば、カウンタ値が、現在の時刻より前の時刻に状態情報を取得した際のカウンタ値に2を加算したカウンタ値に変化したことにより、所定の時刻に状態情報を取得していないと判定する。一方、操舵制御部452は、現在の時刻に状態情報を取得した際のカウンタ値と、現在の時刻より前の時刻に状態情報を取得した際のカウンタ値とが連続している場合は、所定の時刻に状態情報を取得したと判定する。操舵制御部452は、取得した状態情報に付加された送信時刻と状態情報を受信した受信時刻との差が単位時間であるか否かにより、状態情報を所定の時間に取得したか否かを判定してもよい。
【0041】
操舵制御部452は、例えば、状態情報のデータ量が定められたデータ量と一致するか否かを特定することにより、所定の量の状態情報を取得したか否かを判定する。操舵制御部452は、移動通信ネットワークにおいてデータが欠落したことを示す情報を通信部41が取得したか否かに基づいて、所定の量の状態情報を取得したか否かを判定してもよい。
【0042】
操舵制御部452は、取得部451が所定の時刻に所定の量の状態情報を取得していない場合、所定の時刻より前の時刻に取得した状態情報に基づいて、所定の時刻の操舵トルクを決定する。「所定の時刻に所定の量の状態情報を取得していない」状態とは、「所定の時刻に状態情報を取得していない」状態及び「所定の量の状態情報を取得していない」状態の少なくともいずれかである。
【0043】
図3は、操舵トルクを決定する動作を説明するための図である。
図3の横軸は時刻を示し、
図3の縦軸は操舵トルクを示す。
図3(a)は、所定の時刻に状態情報を取得できない状態の操舵トルクを示す。
図3(b)は、所定の時刻の操舵トルクを決定した状態の操舵トルクを示す。
図3に示す時刻T1から時刻T2までの時間、時刻T2から時刻T3までの時間、及び時刻T3から時刻T4までの時間は、例えば、単位時間である。一例として、操舵トルクが0以上の場合は、車両10の進行方向に対して車両10の右向きにかかるトルクを示し、操舵トルクが0未満の場合は、車両10の進行方向に対して車両10の左向きにかかるトルクを示す。
【0044】
図3(a)に示すように、操舵制御部452は、時刻T2において状態情報を取得していないと判定した場合、記憶部42に記憶された地図情報を参照することにより、時刻T1に取得した状態情報に含まれる車両10の位置の路面の形状を特定する。そして、操舵制御部452は、特定した路面の形状と、時刻T1に取得した状態情報に含まれる車速、加速度、角速度(ヨーレート)及び重量とを、車両10のプラントモデルに基づくフィードフォワード制御器に入力することで、
図3(b)に示すように、時刻T2の操舵トルクを算出する。
【0045】
操舵制御部452が上記のように動作することで、車両10から実操舵トルクを取得できない場合であっても、現在の時刻より前の時刻に取得した状態情報を用いて操舵トルクを決定することができる。さらに、操舵制御部452が、車両10が有するプラントモデルと同じプラントモデルに基づくフィードフォワード制御器を用いることで、適切な操舵トルクを決定することができる。
【0046】
ここで、操舵制御部452がプラントモデルに基づくフィードフォワード制御器を用いて操舵反力を決定する動作の一例を説明する。最初に、操舵制御部452は、例えば、車両10が走行する車線の路面の形状と、車両10の運動状態と、車両10の接地状態とを特定することにより、操舵トルクを決定する。次に、操舵制御部452は、決定した操舵トルクと接地状態とに基づいて、操舵反力を決定する。
【0047】
具体的には、操舵制御部452は、記憶部42に記憶された、路面の形状を示す地図情報と、状態情報に含まれる車両10の位置と、を参照することにより、車両10の前方の車線の路面の形状を特定する。路面の形状は、例えば、路面のカーブの曲率を示すクロソイド曲線の曲率、道路横断面の傾斜角度である。操舵制御部452は、状態情報に含まれる車両10の車速、加速度(いわゆる、縦G及び横G)、角速度(例えば、ヨーレート)及び重量を、車両10の運動状態として特定する。
【0048】
操舵制御部452は、特定した路面の形状及び車両10の運動状態に基づいて、車両10の接地状態を特定する。操舵制御部452は、例えば、車両10の運動状態をフィードフォワード制御器に入力することにより、特定した路面の形状において、車両10が備えるタイヤのそれぞれが単位時間後に到達する路面の位置を特定する。そして、操舵制御部452は、特定した路面の位置と車両10の運動状態と車両10が備える各タイヤの空気圧とをフィードフォワード制御器に入力することにより、車両10の接地状態として、各タイヤの接地面の位置と、接地面の形状とを特定する。操舵制御部452は、状態情報に含まれるタイヤの空気圧と、特定した車両10の前方の車線の路面の形状、車両10の運動状態及び車両10の接地状態とをフィードフォワード制御器に入力することにより、単位時間後(
図3に示す時刻T2)の操舵トルクを決定する。
【0049】
操舵制御部452は、特定した接地状態が示す接地面の重心位置と、車両10の車軸の位置とをフィードフォワード制御器に入力することにより、決定した操舵トルクのうち、ステアリングにかかる力の成分を特定することにより、操舵反力を決定する。
以上、操舵制御部452がプラントモデルに基づくフィードフォワード制御器を用いて操舵反力を決定する動作の一例を説明した。
【0050】
ところで、操舵制御部452は、単位時間毎に所定の量の状態情報を取得しない状態(すなわち、取得した状態情報に取得時間の遅延又はデータの欠損が発生した状態)が連続した場合、単位時間前の時刻に用いた状態情報に基づいて操舵トルクを決定する。一例として、
図3に示す時刻T3において状態情報が取得できない場合、操舵制御部452は、
図3に示す時刻T1に取得した状態情報を用いて車両10の前方の路面の形状を特定する。そして、操舵制御部452は、特定した路面の形状と、時刻T1に取得した状態情報に含まれる車速、加速度、角速度及び重量に基づいて時刻T3の操舵トルクを決定する。
【0051】
しかしながら、単位時間毎に所定の量の状態情報を取得しない状態が連続するほど、操舵制御部452が決定する操舵トルク及び操舵反力の精度は低下する。そこで、操舵制御部452は、単位時間毎に所定の量の状態情報を取得しない状態が連続する時間が閾値未満である場合は、単位時間毎に取得した所定の量の状態情報のうち、もっとも現在の時刻に近い状態情報を用いて操舵トルク及び操舵反力を決定する。一方、操舵制御部452は、単位時間毎に所定の量の状態情報を取得しない状態が連続する時間が閾値以上である場合は、記憶部42に記憶された走行計画情報を参照することにより、操舵トルク及び操舵反力を決定する。以下の説明においては、単位時間毎に所定の量の状態情報を取得しない状態が連続する時間を「障害継続時間」という。
【0052】
操舵制御部452は、例えば、取得部451が所定の時刻から所定の周期(単位時間)で所定の量の状態情報を取得していない状態が所定の時間未満継続していることを所定の条件として特定する。そして、操舵制御部452は、所定の条件を満たした場合に、所定の周期が経過した時刻毎に、当該時刻より前の時刻に取得した状態情報に基づいて操舵トルクを決定する。所定の時刻は、例えば、単位時間毎に所定の量の状態情報を取得した状態から、単位時間毎に所定の量の状態情報を取得していない状態に変化した時刻(例えば、
図3に示す時刻T2)である。所定の時間は、例えば、所定の周期の整数倍(例えば、所定の周期が20ミリ秒である場合、所定の時間は1秒)であり、実験又はシミュレーションにより決定された時間である。
【0053】
例えば、操舵制御部452は、
図3に示す時刻T3において、所定の時刻(時刻T2)から所定の周期(単位時間)で所定の量の状態情報を取得していない状態が所定の時間未満(すなわち、障害継続時間が所定の時間未満)であることを特定する。操舵制御部452は、障害継続時間が所定の時間未満であることを特定したことにより、地図情報と時刻T1に取得した状態情報とに基づく、路面の形状、運動状態及び接地状態をフィードフォワード制御器に入力し、操舵トルクを決定する。
【0054】
一方、操舵制御部452は、例えば、取得部451が所定の時刻から所定の周期で所定の量の状態情報を取得していない状態が所定の時間以上継続していることを所定の条件として特定する。そして、操舵制御部452は、所定の条件を満たした場合に、所定の周期が経過した時刻毎に、車両10が走行する予定の位置と時刻とを含む走行計画情報、及び路面の形状を示す地図情報に基づいて、所定の周期が経過した時刻において車両10が走行すると推定された位置の操舵トルクを決定する。
【0055】
例えば、操舵制御部452は、
図3に示す時刻T4において、障害継続時間が所定の時間以上であることを特定したことにより、記憶部42に記憶された走行計画情報と地図情報とを参照し、時刻T4における車両10の前方の路面の形状を特定する。走行計画情報は、車両10が走行する予定の時刻に関連付けられた、車両10が走行する予定の位置を示す。操舵制御部452は、特定した路面の形状と、走行計画情報に含まれる時刻及び位置から推定した車両10の速度、加速度及び角速度と、に基づいて、操舵トルクを決定する。
【0056】
上記のように、操舵制御部452は、障害継続時間に基づいて、操舵トルクを決定する手段を信頼性が高い手段に切り替えることができる。具体的には、操舵制御部452は、障害継続時間が閾値未満の場合は、所定の時刻に近い時刻に取得した状態情報に基づいて操舵トルクを決定する。このように、操舵制御部452は、実際の走行に基づく操舵トルクを決定できるので、走行計画情報を用いた場合よりも高い精度で操舵トルクを決定できる。一方、操舵制御部452は、障害継続時間が閾値以上の場合は、走行計画情報に基づいて操舵トルクを決定する。すなわち、操舵制御部452は、障害継続時間が長いことにより、状態情報の信頼性が低下するような場合は、走行計画情報に基づく操舵トルクを決定できる。その結果、操舵制御部452は、障害継続時間に適した手段を用いて操舵トルクを決定できるため、決定する操舵反力の精度を向上できる。
【0057】
障害継続時間が閾値未満から閾値以上に変化したことにより、操舵制御部452が操舵トルクを決定する手段を切り替えると、切り替えたタイミングにおいて操舵トルクが大きく変化する場合がある。
図4は、操舵トルクを決定する手段を切り替える動作を説明するための図である。
図4の横軸は時刻を示し、
図4の縦軸は操舵トルクを示す。
図4においては、時刻T5において障害継続時間が閾値以上に変化し、時刻T6において障害継続時間が終了(すなわち、所定の時間に所定の量の状態情報を取得)する。一例として、操舵トルクが0以上の場合は、車両10の進行方向に対して車両10の右向きにかかるトルクを示し、操舵トルクが0未満の場合は、車両10の進行方向に対して車両10の左向きにかかるトルクを示す。
【0058】
図4に示すように、時刻T5において、操舵制御部452は、障害継続時間が閾値以上であることにより操舵トルクを決定する手段を切り替える。その結果、操舵トルクN1から操舵トルクN2に変化し、操舵反力の変化が大きくなるため、遠隔操作装置40の操作者は、ステアリングを操作することが困難になる。
【0059】
そこで、操舵制御部452は、操舵トルクを決定する手段を変更した時刻から一定の時間においては、現在の時刻に決定した操舵トルクと現在の時刻の単位時間前の時刻に決定した操舵トルクとの差が一定の範囲内になるように、操舵トルクを決定する。操舵制御部452は、例えば、所定の周期が経過した時刻に決定した第1操舵トルクと、当該時刻より所定の周期前の時刻に決定した第2操舵トルクとの差が所定の操舵トルク未満になるように第1操舵トルクを決定する。所定の操舵トルクは、操作者がステアリングを操作することに影響を与える蓋然性が低い操舵トルクであり、実験又はシミュレーションにより決定された操舵トルクである。操舵制御部452は、例えば、所定の操舵トルク未満になるように第1操舵トルクを決定することで、時刻T5から時刻T6までの時間の第1操舵トルクNAを第1操舵トルクNBに補正する。
【0060】
操舵制御部452は、第1操舵トルクと第2操舵トルクとの差を所定の操舵トルク未満にするために、第1操舵トルクにオフセット値を加減算してもよいし、時間の経過に伴い1に収束するゲインを第1操舵トルクに積算してもよい。操舵制御部452がこのように動作することで、
図4に示すように、時刻T5から時刻T6までの時間において、第1操舵トルクNAから第1操舵トルクNBに変更できる。その結果、操舵制御部452は、第1操舵トルクの変化量を小さくすることができるため、操作者が違和感を与えない操舵反力を決定できる。
【0061】
障害継続時間が閾値以上である状態から、所定の量の状態情報を所定の周期毎に取得できる状態に変化した時刻においては、実操舵トルクと遠隔操作装置40が決定した操舵トルクとの差が所定の操舵トルク以上になる場合がある。一例として、
図4に示す時刻T6においては、時刻T6に取得した状態情報に含まれる実操舵トルクと、遠隔操作装置40が時刻T6より所定の周期前に決定した操舵トルクとの差が所定の操舵トルク以上になる場合がある。また、操舵トルクは、車両10の速度が速いほど大きくなる。
【0062】
そこで、操舵制御部452は、所定の時刻に決定した第3操舵トルクと、所定の時刻より後の時刻に取得部451が取得した第4操舵トルクと、の差が所定の操舵トルク以上である場合、所定の時刻より後の時刻において、第3操舵トルクに、車両10の車速に基づく補正トルクを加算する。操舵制御部452は、例えば、
図4に示す時刻T6において取得部451が取得した状態情報に含まれる第4操舵トルクと、時刻T6より所定の周期前の時刻に操舵制御部452が決定した第3操舵トルクとの差が所定の操舵トルク以上であると判定する。操舵制御部452は、時刻T6に取得した状態情報に含まれる車両10の車速に基づく補正トルクを第3操舵トルクに加算した操舵トルクを第4操舵トルクに決定する。操舵制御部452がこのように動作することで、遠隔操作装置40の操作者が操作するステアリングにかかる操舵反力が大きく変化することを抑制できる。
【0063】
さらに、時刻T6において車両10が走行する車線が複数のカーブ路を含む場合、時刻T6より所定の周期前の時刻に操舵制御部452が決定した第3操舵トルクの向きと、時刻T6に取得した実操舵トルクの向きとが異なる場合がある。具体的には、第3操舵トルクの向きが車両10の進行方向に対して左方向である場合に、取得した第4操舵トルク(実操舵トルク)が車両10の進行方向に対して右方向である場合がある。
【0064】
そこで、操舵制御部452は、所定の時刻に決定した第3操舵トルクの向きと、所定の時刻より後の時刻に取得部451が取得した第4操舵トルク(実操舵トルク)の向きが異なる場合、所定の時刻より後の時刻において、第3操舵トルクに、車両10の車速に基づく補正トルクを加算する。操舵制御部452は、例えば、第3操舵トルクが0以上かつ実操舵トルクが0未満、又は第3トルクが0未満かつ実操舵トルクが0以上である場合、第3操舵トルクに、状態情報に含まれる車速に基づく補正トルクを加算した操舵トルクを決定する。操舵制御部452がこのように動作することで、遠隔操作装置40の操作者が操作するステアリングにかかる操舵反力の向きが変化することを抑制できる。
【0065】
<遠隔操作装置40における処理シーケンス>
図5は、遠隔操作装置40における処理シーケンスの例を示す図である。
図5に示す処理シーケンスは、遠隔操作装置40が操舵反力を決定し、アクチュエータ43に付与する動作を示すシーケンスである。遠隔操作装置40は、
図5に示す処理シーケンスを一定時間毎に(例えば、単位時間が経過した時刻毎に)繰り返す。
【0066】
取得部451は、車両10から状態情報を取得する(S11)。操舵制御部452は、状態情報を取得した時刻が所定の時刻であり、かつ状態情報のデータ量が所定の量である場合(S12のYES)、状態情報に含まれる実操舵トルクを操舵トルクに決定する(S16)。操舵制御部452は、状態情報を取得した時刻が所定の時刻ではない状態、及び状態情報のデータ量が所定の量ではない状態の少なくともいずれかである場合(S12のNO)、状態情報を取得した時刻の遅延及び状態情報の欠損が発生した時間(すなわち障害継続時間)が閾値未満であるか否かを判定する(S13)。
【0067】
障害継続時間が閾値未満である場合(S13のYES)、操舵制御部452は、所定の時刻より所定の周期前の時間の状態情報と記憶部42に記憶された地図情報とを参照し(S14)、地図情報と状態情報とに基づく路面の形状と、状態情報とをフィードフォワード制御器に入力することにより、操舵トルクを決定する(S16)。障害継続時間が閾値以上である場合(S13のNO)、操舵制御部452は、記憶部42に記憶された走行計画情報と地図情報とを参照することにより(S15)、走行計画情報と地図情報とに基づく路面の形状と、走行計画情報に基づく車両10の車速、加速度及び角速度を特定する。操舵制御部452は、特定した路面の形状と、車両10の車速、加速度及び角速度に基づいて操舵トルクを決定する(S16)。操舵制御部452は、決定した操舵トルクに基づいてステアリングにかかる操舵反力を決定し(S17)、アクチュエータ43を動作させる(S18)。
【0068】
<遠隔操作装置40における効果>
以上説明したように、遠隔操作装置40は、路面から車両10が備えるタイヤに作用する反力に基づく操舵トルクを含む、車両10の状態情報を取得する取得部451と、操舵トルクに基づいて、遠隔操作装置40が備えるステアリングホイールに操舵反力を付与するアクチュエータ43を動作させる操舵制御部452と、を有する。そして、操舵制御部452は、取得部451が所定の時刻に所定の量の状態情報を取得していない場合、所定の時刻より前の時刻に取得した状態情報に基づいて、所定の時刻の操舵トルクを決定する。
【0069】
遠隔操作装置40がこのように構成されることで、車両10から取得した状態情報を取得した時刻が所定の時刻と異なる時刻であったり、状態情報のデータ量が不足している場合であったりしたとしても、所定の時刻の操舵トルクを決定できる。さらに、遠隔操作装置40は、車両10が有するプラントモデルと同じプラントモデルに基づいて操舵トルクを決定することで、所定の時刻に所定の量の状態情報を取得できない場合であっても、適切な操舵トルクを決定できる。その結果、遠隔操作装置40の操作者は、遠隔操作装置40が有するステアリングに適切な操舵反力がかかる状態で操作することができる。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0071】
10 車両
11 測定装置
12 車速センサ
13 加速度センサ
14 ジャイロセンサ
15 重量センサ
16 受信装置
21 操舵機構
22 駆動力源
23 制動装置
24 変速機
31 制御装置
40 遠隔操作装置
41 通信部
42 記憶部
43 アクチュエータ
44 操舵部
45 制御部
451 取得部
452 操舵制御部
【要約】
【課題】ステアリング反力の精度を向上させる。
【解決手段】遠隔操作装置40は、車両10を遠隔操作するための遠隔操作装置40であって、路面から車両10が備えるタイヤに作用する反力に基づく操舵トルクを含む、車両10の状態情報を取得する取得部451と、操舵トルクに基づいて、遠隔操作装置40が備えるステアリングホイールに操舵反力を付与するアクチュエータを動作させる操舵制御部452と、を有し、操舵制御部452は、取得部451が所定の時刻に所定の量の状態情報を取得していない場合、所定の時刻より前の時刻に取得した状態情報に基づいて、所定の時刻の操舵トルクを決定する。
【選択図】
図1