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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】光学センサー用組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20241203BHJP
   C09B 47/04 20060101ALI20241203BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G02B5/22
C09B47/04
C09B67/20 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023196021
(22)【出願日】2023-11-17
(62)【分割の表示】P 2020550546の分割
【原出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2024020454
(43)【公開日】2024-02-14
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018189759
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】畠山 耕治
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】川部 泰典
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩平
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-138382(JP,A)
【文献】特開平1-108265(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186489(WO,A1)
【文献】特開2018-180167(JP,A)
【文献】特開2019-159120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
C08L 101/00
H01L 27/146
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるフタロシアニン化合物、及び
(メタ)アクリロイル基を有するバインダー樹脂
を含有する光学センサー用組成物。
【化1】
(式(1)中、複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有する若しくは非置換のアルキル基、又は置換基を有する若しくは非置換のアリール基である。複数のXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。複数のXは、互いに結合してこれらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成していてもよい。Mは、2つの水素原子、2価の金属原子、又は3若しくは4価の金属原子の誘導体である。複数のnは、それぞれ独立して、3~6の整数である。)
【請求項2】
下記式(1)で表されるフタロシアニン化合物、及び
主鎖に環構造を有するバインダー樹脂
を含有し、
上記バインダー樹脂が、N置換マレイミド系単量体に由来する構造単位を有する光学センサー用組成物。
【化2】
(式(1)中、複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有する若しくは非置換のアルキル基、又は置換基を有する若しくは非置換のアリール基である。複数のXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。複数のXは、互いに結合してこれらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成していてもよい。Mは、2つの水素原子、2価の金属原子、又は3若しくは4価の金属原子の誘導体である。複数のnは、それぞれ独立して、3~6の整数である。)
【請求項3】
上記複数のRが、それぞれ独立して、置換基を有するアルキル基、又は置換基を有するアリール基である請求項1又は請求項2に記載の光学センサー用組成物。
【請求項4】
上記複数のRでそれぞれ表されるアルキル基及びアリール基が有する置換基が、ヘテロ原子を有する基である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学センサー用組成物。
【請求項5】
上記置換基が、ハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基又はこれらの組み合わせである請求項4に記載の光学センサー用組成物。
【請求項6】
金属酸化物、銅化合物(上記フタロシアニン化合物を除く)又はこれらの組み合わせである赤外線遮蔽剤
をさらに含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光学センサー用組成物。
【請求項7】
上記金属酸化物が、セシウム酸化タングステンである請求項6に記載の光学センサー用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学センサー用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルカメラ、カメラ機能付き携帯電話等には、光学センサーである固体撮像素子が搭載されている。固体撮像素子としては、具体的にはCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサーやCMOS(Complementary MOS)イメージセンサー等が知られている。これらの固体撮像素子に備わるフォトダイオードの感度は、可視光領域から赤外線領域にわたる。このため、固体撮像素子においては、赤外線を遮断するためのフィルターが設けられている。この光学フィルター(赤外線遮断フィルター)により、固体撮像素子の感度を人間の視感度に近づくように補正することができる。固体撮像素子以外の光学センサーにおいても、同様に、赤外線を遮断するためのフィルターが設けられることがある。
【0003】
上記光学フィルターには、赤外線遮蔽剤としての色素や顔料が含有されている。上記赤外線遮蔽剤には、可視光を十分に透過させつつ、赤外線を吸収する特性が求められる。このような赤外線遮蔽剤の一つとして、特に、近赤外線の良好な遮蔽剤として、フタロシアニン化合物を用いることが検討されている(特開2008-201952号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-201952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フタロシアニン化合物を用いた従来の光学フィルターにおいては、相溶性等の影響からか、異物等の欠陥が生じることがある。このような欠陥は、光学フィルターの可視光透過性や赤外線遮蔽性等に影響を与える場合がある。また、フタロシアニン化合物等の色素を含む組成物の塗工により光学フィルターの赤外線遮蔽膜を形成する際、塗工後の放置時間が長いと、得られる赤外線遮蔽膜に異物等の欠陥が発生しやすい。生産工程上、塗工後しばらく放置した後に硬化させても、異物等の欠陥が少ない赤外線遮蔽膜が得られることが望まれる。
【0006】
さらに、従来の光学フィルターにおいては、可視光透過性や赤外線遮蔽性についても、十分に満足されるものではない。具体的には、固体撮像素子等の光学センサーの赤外線遮断フィルターとして光学フィルターが用いられる場合、単に可視光透過率が高く、かつ赤外線透過率が低いのみでは無く、可視光透過率が高い波長領域や赤外線透過率が低い波長領域が広いことや、可視光透過率が高い波長領域と赤外線透過率が低い波長領域とが近接していることが求められる。このような特性を有する光学フィルターを固体撮像素子等の光学センサーに用いると、感度、ノイズ遮蔽機能、色再現性等を高めることができる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、異物等の欠陥が少なく、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する良好な特性を有する光学センサー用の光学フィルターを形成することができる光学センサー用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、下記式(1)で表されるフタロシアニン化合物、及びバインダー樹脂を含有する光学センサー用組成物である。
【化1】
(式(1)中、複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有する若しくは非置換のアルキル基、又は置換基を有する若しくは非置換のアリール基である。複数のXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。複数のXは、互いに結合してこれらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成していてもよい。Mは、2つの水素原子、2価の金属原子、又は3若しくは4価の金属原子の誘導体である。複数のnは、それぞれ独立して、3~6の整数である。)
【0009】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、下記式(2)で表されるフタロシアニン化合物を含有する光学センサー用組成物である。
【化2】
(式(2)中、複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有するアルキル基、又は置換基を有するアリール基である。複数のXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。複数のXは、互いに結合してこれらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成していてもよい。Mは、2つの水素原子、2価の金属原子、又は3若しくは4価の金属原子の誘導体である。複数のnは、それぞれ独立して、3~6の整数である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異物等の欠陥が少なく、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する良好な特性を有する光学センサー用の光学フィルターを形成することができる光学センサー用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る光学センサー用組成物について詳説する。
【0012】
<光学センサー用組成物(I)>
本発明の一実施形態に係る光学センサー用組成物(I)(以下、単に「組成物(I)」とも称する。)は、[A1]フタロシアニン化合物及び[B]バインダー樹脂を含有する。当該組成物は、金属酸化物、銅化合物([A]フタロシアニン化合物を除く)又はこれらの組み合わせである[C]赤外線遮蔽剤をさらに含有することが好ましい。
【0013】
([A1]フタロシアニン化合物)
[A1]フタロシアニン化合物は、下記式(1)で表される化合物である。[A1]フタロシアニン化合物は、可視光領域(例えば430nm以上580nm以下の波長領域)の透過性が高く、一方、近赤外線領域(例えば700nm以上800nm以下の波長領域)の遮蔽性が高い。また、[A1]フタロシアニン化合物は、他の成分との相溶性に優れる。当該組成物(I)は、このような[A1]フタロシアニン化合物を含有するため、異物等の欠陥が少なく、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する良好な特性を有する光学フィルターを形成することができる。
【0014】
【化3】
【0015】
式(1)中、複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有する若しくは非置換のアルキル基、又は置換基を有する若しくは非置換のアリール基である。複数のXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。複数のXは、互いに結合してこれらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成していてもよい。Mは、2つの水素原子、2価の金属原子、又は3若しくは4価の金属原子の誘導体である。複数のnは、それぞれ独立して、3~6の整数である。
【0016】
上記Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、t-ブチル基等の炭素数1~30の直鎖状又は分岐状のアルキル基を挙げることができる。このアルキル基の炭素数の上限としては、12が好ましく、8がより好ましく、4がさらに好ましい。
【0017】
上記Rで表されるアリール基としては、芳香環のみから構成される1価の基、及び芳香環にアルキル基が結合してなる1価の基が挙げられる。上記Rで表されるアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基等を挙げることができる。このアリール基としては、芳香環のみから構成される基が好ましく、フェニル基及びナフチル基がより好ましく、可視光透過性等の点からフェニル基がさらに好ましい。
【0018】
上記Rとしては、得られる光学フィルターの耐熱性等の点から、置換基を有する又は非置換のアリール基であることが好ましい。
【0019】
上記複数のRでそれぞれ表されるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していても、有していなくてもよいが、置換基を有していることが好ましい。すなわち、上記複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有するアルキル基、又は置換基を有するアリール基であることが好ましい。このように、上記複数のRが置換基を有することで、[A1]フタロシアニン化合物の相溶性がより高まり、得られる光学フィルターの異物等の欠陥がより抑制され、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性もより良好になる。さらに、上記複数のRが置換基を有することで、得られる光学フィルターの耐熱性も向上する。
【0020】
上記複数のRでそれぞれ表されるアルキル基及びアリール基が有することができる置換基としては、アルケニル基、アルキニル基等の炭化水素基であってもよいが、ヘテロ原子を有する基であることが好ましい。ヘテロ原子とは、水素原子及び炭素原子以外の原子をいう。上記複数のRでそれぞれ表されるアルキル基及びアリール基が、ヘテロ原子を有する置換基を有することで、相溶性等がより高まり、得られる光学フィルターの異物等の欠陥がより抑制され、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性もより良好になる。さらに、上記複数のRが、ヘテロ原子を有する置換基を有することで、得られる光学フィルターの耐熱性も向上する。上記ヘテロ原子としては、ハロゲン原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、ハロゲン原子及び酸素原子がより好ましい。
【0021】
ヘテロ原子を有する置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基等を挙げることができる。
【0022】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等を挙げることができ、フッ素原子が好ましい。
【0023】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等を挙げることができ、メトキシ基及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0024】
アルキルチオ基としては、メチルチオ基(CH-S-)、エチルチオ基(C-S-)、プロピルチオ基(C-S-)等を挙げることができ、メチルチオ基及びエチルチオ基がより好ましい。
【0025】
ヘテロ原子を有する置換基の中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキルチオ基が好ましく、ハロゲン原子及びアルコキシ基がより好ましい。また、ハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基又はこれらの組み合わせであることも好ましい。
【0026】
上記複数のRは、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0027】
上記Xで表されるハロゲン原子としては、上記置換基としてのハロゲン原子として例示したものを挙げることができる。
【0028】
上記Xで表されるアルキル基としては、上記Rで表されるアルキル基として例示したものを挙げることができる。
【0029】
上記複数のXは、互いに結合していてよい。通常、複数のXのうち、同一のベンゼン環に結合している2つのXが互いに結合し、これらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成する。形成される芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等を挙げることができる。これらの芳香環の水素原子は、炭化水素基やその他の置換基で置換されていてもよい。
【0030】
上記Xとしては、水素原子が好ましい。また、複数のXは、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0031】
上記Mで表される2価の金属原子としては、Pd、Cu、Zn、Pt、Ni、Co、Fe、Mn、Sn、In、Ru、Rh、Pb等を挙げることができる。なお、2価の金属原子とは、2価のカチオンになることができる金属原子をいう。
【0032】
ここで、金属原子の誘導体とは、金属原子を含む原子群をいう。3価の金属原子とは、3価のカチオンになることができる金属原子をいう。3価の金属原子としては、Al、In等が挙げられる。4価の金属原子とは、4価のカチオンになることができる金属原子をいう。4価の金属原子としては、Si、Ge、Sn等を挙げることができる。なお、金属原子には、半金属原子も含まれる。上記Mで表される3又は4価の金属原子の誘導体としては、AlCl、AlBr、AlI、AlOH、InCl、InBr、InI、InOH、SiCl、SiBr、SiI、Si(OH)、GeCl、GeBr、GeI、SnCl、SnBr、SnI、Sn(OH)、VO、TiO等を挙げることができる。
【0033】
上記Mとしては、H(2つの水素原子)、Pd、Cu、Zn、Pt、Ni、Co、Fe、Mn、Sn、In、SnCl、AlCl、VO及びTiOが好ましく、VOがより好ましい。
【0034】
上記nの下限としては、4が好ましい。上記nの上限としては、5が好ましく、4がより好ましい。複数のnは、同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。
【0035】
[A1]フタロシアニン化合物の極大吸収波長の下限は、680nmが好ましく、700nmがより好ましく、720nmがさらに好ましい。一方、この極大吸収波長の上限は、1,000nmが好ましく、900nmがより好ましく、800nmがさらに好ましく、750nmがよりさらに好ましい。[A1]フタロシアニン化合物の極大吸収波長が上記範囲であることにより、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関するより良好な特性を有する光学フィルターを形成することができる。
【0036】
[A1]フタロシアニン化合物の合成方法は特に限定されず、公知の方法を組み合わせて合成することができる。例えば、下記式(i)で表されるフタロニトリル系化合物又は式(ii)で表される1,3-ジイミノイソンインドリン系化合物と、金属又は金属誘導体とを反応させることにより合成することができる。
【0037】
【化4】
【0038】
式(i)及び(ii)中、R、X及びnは式(1)におけるものと同義である。
【0039】
金属又は金属誘導体としてはAl、Si、Ti,V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Pt、Pb及びこれらのハロゲン化物、カルボン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、カルボニル化合物、酸化物、錯体等が挙げられる。これらの中でも、特に金属のハロゲン化物及びカルボン酸塩が好ましく用いられる。これらの例としては塩化銅、臭化銅、沃化銅、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化コバルト、塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化バナジウム、オキシ塩化バナジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン、塩化鉛、酢酸鉛、塩化インジウム、塩化チタン、塩化スズ等が挙げられる。
【0040】
反応温度は、例えば60~300℃であり、好ましくは100~220℃である。反応時間は、例えば30分~72時間であり、好ましくは1時間~48時間である。反応においては、溶媒を使用することが好ましい。反応に使用される溶媒としては、沸点60℃以上の有機溶媒が好ましく、80℃以上の有機溶媒がより好ましい。
【0041】
用いる有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-アミルアルコール、n-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ドデカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ジメチルエタノール、ジエチルエタノール等のアルコール溶媒、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、スルフォラン、ニトロベンゼン、キノリン、DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、尿素等の高沸点溶媒が挙げられる。
【0042】
反応は、触媒の存在下又は非存在下に行われるが、触媒存在下の方が好ましい。触媒としては、モリブデン酸アンモニウム等の無機触媒、又はDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)等の塩基性有機触媒が使用できる。
【0043】
式(1)中のMが2つの水素原子であるフタロシアニン化合物の場合は、式(i)で表されるフタロニトリル系化合物又は式(ii)で表される1,3-ジイミノイソンインドリン系化合物と、金属ナトリウム又は金属カリウムとを上記反応条件にて反応させた後、中心金属であるナトリウム又はカリウムを塩酸、硫酸等で脱離処理することにより製造できる。
【0044】
反応終了後、溶媒を留去するか、又は反応液をフタロシアニン化合物に対する貧溶媒に排出して目的物を析出させ、析出物をろ過することにより、式(1)で表されるフタロシアニン化合物を得ることができる。必要に応じて、更に再結晶又はカラムクロマトグラフィー等公知の精製方法で精製することにより、より高純度の目的物を得ることができる。
【0045】
なお、式(i)で表されるフタロニトリル系化合物及び式(ii)で表される1,3-ジイミノイソンインドリン系化合物は、公知の方法を参考にして合成することができる。例えば、特表2003-516421号に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0046】
当該組成物(I)における全固形分(溶媒以外の全成分)に占める[A1]フタロシアニン化合物の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましく、2質量%がよりさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、30質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、8質量%がよりさらに好ましい。[A1]フタロシアニン化合物の含有量を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性がより良好になる。
【0047】
[A1]フタロシアニン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
([B]バインダー樹脂)
[B]バインダー樹脂は、得られる光学フィルターにおいて[A1]フタロシアニン化合物等を保持し、マトリクスとなる成分である。
【0049】
[B]バインダー樹脂は、強度、感度、耐熱性等の向上のため、重合性基を有することが好ましく、重合性基を含む構造単位を有していることがより好ましい。重合性基としては、オキシラニル基、オキセタニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アルコキシシリル基等を挙げることができ、オキシラニル基、オキセタニル基、(メタ)アクリロイル基、アルコキシシリル基又はこれらの組み合わせが好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0050】
重合性基を含む構造単位を与える単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、3-(メタ)アクリロイルオキシメチル-3-エチルオキセタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02.6]デシル(メタ)アクリレート、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0051】
また、例えば、カルボキシ基を有する構造単位を有する樹脂に、カルボキシ基と反応する基(オキシラニル基、オキセタニル基等)と、(メタ)アクリロイル基等の重合性基とを有する化合物を反応させることによっても、重合性基を含む構造単位を導入することができる。
【0052】
[B]バインダー樹脂における重合性基を有する構造単位の含有量の下限としては、[B]バインダー樹脂100質量%に対して、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましく、30質量%、50質量%又は75質量%がよりさらに好ましいこともある。一方、この含有量の上限としては、95質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。
【0053】
[B]バインダー樹脂は、耐熱性向上のため、主鎖に環構造を有することが好ましい。この環構造の環員数としては、例えば3~12であってもよいが、5~8が好ましい。
【0054】
主鎖に環構造を含む構造単位を与える単量体としては、N置換マレイミド系単量体、シクロオレフィン等を挙げることができる。
【0055】
N置換マレイミド系単量体とは、マレイミドにおける窒素原子に結合する水素原子が置換基により置換された化合物である。上記置換基としては、炭化水素基が好ましく、環構造を有する炭化水素基がより好ましく、芳香族炭化水素基がより好ましい。N置換マレイミド系単量体としては、N-フェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロオクチルマレイミド、N-メチルマレイミド等を挙げることができる。
【0056】
シクロオレフィンとしては、ノルボルネン系オレフィン、テトラシクロドデセン系オレフィン、ジシクロペンタジエン系オレフィン等を挙げることができる。
【0057】
その他、主鎖に環構造を有するバインダー樹脂として、フェノール樹脂等を用いることもできる。
【0058】
[B]バインダー樹脂における主鎖に環構造を含む構造単位の含有量としては、[B]バインダー樹脂100質量%に対して、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%である。
【0059】
[B]バインダー樹脂は、酸性基が含まれることが好ましい。酸性基としては、例えばカルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、スルホ基等が挙げられる。上記の中でも、酸性基としては、カルボキシ基が好ましい。[B]バインダー樹脂は、1個以上の酸性基を有する構造単位を含む樹脂であることが好ましい。[B]バインダー樹脂が、酸性基を有する場合、良好なアルカリ可溶性を示すことができる。[B]バインダー樹脂がアルカリ可溶性を有する場合、アルカリ現像を可能とし、所望のパターン形状を有する光学フィルターを形成することができる。
【0060】
酸性基を含む構造単位を与える単量体としては、カルボキシ基を有する単量体として、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、桂皮酸の如き不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物;こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、フタル酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕の如き2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル;ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートの如き両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0061】
フェノール性水酸基を有する単量体としては、4-ビニルフェノール、4-イソプロペニルフェノール、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0062】
[B]バインダー樹脂における酸性基を含む構造単位の含有量としては、[B]バインダー樹脂100質量%に対して、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%である。
【0063】
[B]バインダー樹脂は、さらにその他の構造単位を含むことができる。その他の構造単位を与える単量体としては、例えば
スチレン、α-メチルスチレン、p-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、アセナフチレン等の芳香族ビニル化合物、
メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度2~10)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度2~10)モノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3-〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕オキセタン、3-〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕-3-エチルオキセタン等の(メタ)アクリル酸エステル、
シクロヘキシルビニルエーテル、イソボルニルビニルエーテル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカニルビニルエーテル、3-(ビニルオキシメチル)-3-エチルオキセタン等のビニルエーテル、
ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー等を挙げることができる。
【0064】
[B]バインダー樹脂は、上述した各単量体等を用いて公知の方法により重合することで得ることができる。また、[B]バインダー樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0065】
[B]バインダー樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値において、好ましくは2,000~500,000、より好ましくは3,000~100,000、さらに好ましくは4,000~30,000である。Mwが上記範囲にあると、溶媒や現像液に対する溶解性に優れ、十分な機械的特性を有する[B]バインダー樹脂を得ることができる。
【0066】
当該組成物(I)における全固形分に占める[B]バインダー樹脂の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。[B]バインダー樹脂の含有量を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性を十分に発揮しつつ、耐熱性等も高めることができる。
【0067】
([C]赤外線遮蔽剤)
[C]赤外線遮蔽剤は、金属酸化物、銅化合物([A1]フタロシアニン化合物を除く)又はこれらの組み合わせである。[C]赤外線遮蔽剤としては、800nm以上2000nm以下の範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましい。このような[C]赤外線遮蔽剤を[A1]フタロシアニン化合物と併用することにより、得られる光学フィルターの赤外線遮蔽性能がより向上する。
【0068】
[C]赤外線遮蔽剤としての金属酸化物としては、例えば酸化タングステン系化合物、石英(SiO)、磁鉄鉱(Fe)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、スピネル(MgAl)等を挙げることができる。
【0069】
[C]赤外線遮蔽剤としての銅化合物としては、銅フタロシアニン系化合物やその他の銅錯体などを挙げることができる。銅フタロシアニン系化合物としては、銅フタロシアニン、塩素化銅フタロシアニン、塩素化臭素化銅フタロシアニン、臭素化銅フタロシアニン等を挙げることができる。
【0070】
[C]赤外線遮蔽剤としては、金属酸化物が好ましく、酸化タングステン系化合物がより好ましい。酸化タングステン系化合物は、赤外線(特に波長が約800nm以上1200nm以下の赤外線)に対しては吸収が高く(すなわち、赤外線に対する遮蔽性が高く)、可視光に対しては吸収が低い赤外線遮蔽剤である。よって、当該組成物(I)が、酸化タングステン系化合物を含有することにより、得られる光学フィルターの良好な可視光透過性を維持しつつ、赤外線遮蔽性を高めることができる。[C]赤外線遮蔽剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
酸化タングステン系化合物としては、下記式(3)で表される酸化タングステン系化合物であることがより好ましい。
WO ・・・(3)
【0072】
式(3)中、Aは金属元素である。0.001≦x≦1.1である。2.2≦y≦3.0である。
【0073】
上記式(3)中のAで表される金属元素としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi等が挙げられる。Aで表される金属元素は1種でも2種以上でも良い。
【0074】
上記Aとしては、アルカリ金属が好ましく、Rb及びCsがより好ましく、Csがさらに好ましい。すなわち、金属酸化物は、セシウム酸化タングステンであることがより好ましい。
【0075】
上記式(3)中のxが0.001以上であることにより、赤外線を十分に遮蔽することができる。xの下限は、0.01が好ましく、0.1がより好ましい。一方、xが1.1以下であることにより、酸化タングステン系化合物中に不純物相が生成されることをより確実に回避することできる。xの上限は、1が好ましく、0.5がより好ましい。
【0076】
上記式(3)中のyが2.2以上であることにより、材料としての化学的安定性をより向上させることができる。yの下限は、2.5が好ましい。一方、yが3.0以下であることにより赤外線を十分に遮蔽することができる。
【0077】
上記式(3)で表される酸化タングステン系化合物の具体例としては、Cs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができ、Cs0.33WO及びRb0.33WOが好ましく、Cs0.33WOがさらに好ましい。
【0078】
[C]赤外線遮蔽剤は微粒子であることが好ましい。[C]赤外線遮蔽剤の平均粒子径(D50)の上限としては、500nmが好ましく、200nmがより好ましく、50nmがさらに好ましく、30nmがよりさらに好ましい。平均粒子径が上記上限以下であることによって、可視光透過性をより高めることができる。一方、製造時における取り扱い容易性などの理由から、[C]赤外線遮蔽剤の平均粒子径は、通常、1nm以上であり、10nm以上であってもよい。
【0079】
[C]赤外線遮蔽剤は、公知の方法によって合成することもできるが、市販品として入手可能である。金属酸化物が、例えば酸化タングステン系化合物である場合、酸化タングステン系化合物は、例えばタングステン化合物を不活性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気中で熱処理する方法により得ることができる。また、酸化タングステン系化合物は、例えば住友金属鉱山社の「YMF-02」等のタングステン微粒子の分散物としても、入手可能である。
【0080】
当該組成物(I)における全固形分に占める[C]赤外線遮蔽剤の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、15質量%がよりさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、70質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましく、30質量%がよりさらに好ましい。[C]赤外線遮蔽剤の含有量を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性がより良好になる。
【0081】
[A1]フタロシアニン化合物の含有量に対する[C]赤外線遮蔽剤の含有量の質量比([C]/[A1])の下限としては、1が好ましく、2が好ましく、3がさらに好ましい。一方、この質量比([C]/[A1])の上限としては、40が好ましく、20がより好ましく、10がさらに好ましい。[A1]フタロシアニン化合物と[C]赤外線遮蔽剤との含有量比を上記範囲とすることで、得られる光学フィルターの可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性がより良好になる。
【0082】
([D]分散剤)
当該組成物(I)は、[D]分散剤をさらに含むことが好ましい。[D]分散剤により[C]赤外線遮蔽剤(特に、金属酸化物)の均一分散性を高め、得られる光学フィルターの可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する特性がより良好になる。
【0083】
[D]分散剤としては、例えばウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系分散剤、ポリエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪酸エステル系分散剤、ポリエステル系分散剤、(メタ)アクリル系分散剤等を挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル系分散剤が好ましい。[D]分散剤は、ブロック共重合体であることが好ましい。
【0084】
[D]分散剤は商業的に入手することができ、例えば(メタ)アクリル系分散剤として、Disperbyk-2000、Disperbyk-2001、BYK-LPN6919、BYK-LPN21116、BYK-LPN22102(以上、ビックケミー(BYK)社製)、ウレタン系分散剤として、Disperbyk-161、Disperbyk-162、Disperbyk-165、Disperbyk-167、Disperbyk-170、Disperbyk-182、Disperbyk-2164(以上、ビックケミー(BYK)社製)、ソルスパース76500(ルーブリゾール(株)社製)、ポリエチレンイミン系分散剤として、ソルスパース24000(ルーブリゾール(株)社製)、ポリエステル系分散剤として、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB880、アジスパーPB881(以上、味の素ファインテクノ(株)社製)の他、BYK-LPN21324(ビックケミー(BYK)社製)等を挙げることができる。
【0085】
[D]分散剤のアミン価の下限としては、10mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gがより好ましく、80mgKOH/gがさらに好ましい。一方、このアミン価の上限としては、300mgKOH/gが好ましく、200mgKOH/gがより好ましく、160mgKOH/gがさらに好ましい。このようなアミン価を有する分散剤を用いることで、[C]赤外線遮蔽剤の分散性が向上し、得られる光学フィルターの特性をより高めることができる。なお、「アミン価」とは、分散剤固形分1gを中和するのに必要なHClと当量のKOHのmg数である。
【0086】
[D]分散剤の含有量の下限は、[C]赤外線遮蔽剤100質量部に対して、5質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。一方、この含有量の上限は、200質量部が好ましく、100質量部がより好ましく、60質量部がさらに好ましい。
【0087】
([E]重合性化合物)
当該組成物(I)は、[E]重合性化合物をさらに含むことが好ましい。当該組成物(I)が[E]重合性化合物を含有する場合、良好な硬化性や得られる光学フィルターの良好な耐熱性等を発揮することができる。[E]重合性化合物とは、2個以上の重合可能な基を有する化合物をいう。なお、2個以上の重合可能な基を有する[B]バインダー樹脂は、[E]重合性化合物には含まれない。重合可能な基としては、例えばエチレン性不飽和基、オキシラニル基、オキセタニル基、N-アルコキシメチルアミノ基等を挙げることができる。[E]重合性化合物としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましく、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。[E]重合性化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0088】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物等である多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートとの反応物等である多官能ウレタン(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物等であるカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0089】
ここで、上記脂肪族ポリヒドロキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価の脂肪族ポリヒドロキシ化合物や、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物を挙げることができる。上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールジメタクリレート等を挙げることができる。上記多官能イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。上記酸無水物としては、例えば無水こはく酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の二塩基酸の無水物や、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の四塩基酸二無水物を挙げることができる。
【0090】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、例えばω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2-(2’-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、こはく酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。
【0091】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中でも、多官能(メタ)アクリレートが好ましく、3個以上10個以下の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0092】
2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物としては、例えばメラミン構造、ベンゾグアナミン構造、ウレア構造を有する化合物等を挙げることができる。2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物の具体例としては、N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサ(アルコキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’-テトラ(アルコキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N’,N’-テトラ(アルコキシメチル)グリコールウリル等を挙げることができる。
【0093】
当該組成物(I)における全固形分に占める[E]重合性化合物の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40%がさらに好ましい。
【0094】
([F]重合開始剤)
当該組成物(I)は、[F]重合開始剤を含有することが好ましい。[F]重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤等を挙げることができるが、光重合開始剤が好ましい。これにより、当該組成物(I)に感光性(感放射線性)を付与することができる。光重合開始剤とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により、[E]重合性化合物等の重合を開始しうる活性種を発生する化合物をいう。[F]重合開始剤は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0095】
[F]重合開始剤としては、例えばチオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物、オニウム塩系化合物等を挙げることができる。これらの中でも、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物及びO-アシルオキシム系化合物が好ましく、O-アシルオキシム系化合物がより好ましい。
【0096】
チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等を挙げることができる。
【0097】
アセトフェノン系化合物としては、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン等を挙げることができる。
【0098】
ビイミダゾール系化合物としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0099】
なお、ビイミダゾール系化合物を用いる場合、水素供与体を併用することが、感度を改良することができる点で好ましい。ここでいう「水素供与体」とは、露光によりビイミダゾール系化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味する。水素供与体としては、例えば2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール等のメルカプタン系水素供与体;4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン系水素供与体を挙げることができる。
【0100】
トリアジン系化合物としては、例えば特公昭57-6096号公報、特開2003-238898号公報の段落[0063]~[0065]に記載の化合物を挙げることができる。
【0101】
O-アシルオキシム系化合物としては、1,2-オクタンジオン-1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)等を挙げることができる。O-アシルオキシム系化合物の市販品としては、NCI-831、NCI-930(以上、株式会社ADEKA社製))、OXE-03、OXE-04(以上、BASF社製)等を使用することもできる。
【0102】
光重合開始剤を用いる場合には、増感剤を併用することもできる。このような増感剤としては、例えば4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジエチルアミノアセトフェノン、4-ジメチルアミノプロピオフェノン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7-ジエチルアミノ-3-(4-ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4-(ジエチルアミノ)カルコン等を挙げることができる。
【0103】
当該組成物(I)における全固形分に占める[F]重合開始剤の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。一方、この含有量の上限としては、30質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。
【0104】
(その他の有機色素)
当該組成物(I)は、[A1]フタロシアニン化合物及び[B]赤外線遮蔽剤である銅化合物としての有機色素以外の公知の有機色素を含有していてもよい。その他の有機色素としては、ジイミニウム化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ポルフィリン化合物、ピロロピロール化合物、オキソノール化合物、クロコニウム化合物、ヘキサフィリン化合物等(銅原子を含むものを除く)を挙げることができる。また、[A1]フタロシアニン化合物、及び[B]赤外線遮蔽剤としてのフタロシアニン化合物以外のフタロシアニン化合物を用いることもできる。
【0105】
なお、[A1]フタロシアニン化合物と、[A1]フタロシアニン化合物以外のフタロシアニン化合物(以下、「[a]フタロシアニン化合物」とも称する)とを併用することが好ましい。[a]フタロシアニン化合物の極大吸収波長の下限としては、600nmが好ましく、650nmがより好ましい。一方、[a]フタロシアニン化合物の極大吸収波長の上限としては、900nmが好ましく、850nmがより好ましく、800nmがさらに好ましいこともあり、750nmがさらに好ましいこともある。[A1]フタロシアニン化合物の極大吸収波長と[a]フタロシアニン化合物の極大吸収波長の差の下限としては、10nmが好ましく、30nmがより好ましい。一方、この差の上限としては、100nmが好ましく、80nmがより好ましく、60nmがさらに好ましい。[a]フタロシアニン化合物は、従来公知の各種フタロシアニン化合物を挙げることができる。
【0106】
当該組成物(I)における全有機色素に占める[A1]フタロシアニン化合物の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がより好ましいこともあり、90質量%がより好ましいこともあり、99質量%がより好ましいこともある。有機色素として、[A1]フタロシアニン化合物のみを実質的に含有することが好ましいこともある。当該組成物(I)は、このようにその他の有機色素の含有量を少なくすることで、生産性を高めることができる。
【0107】
(添加剤)
当該組成物(I)は、上述した[A1]~[F]成分及びその他の有機色素以外に、必要に応じて種々の添加剤を含有することもできる。
【0108】
添加剤としては、例えば界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、残渣改善剤、現像性改善剤、反応調整剤等を挙げることができる。
【0109】
界面活性剤としては、フッ素界面活性剤、シリコーン界面活性剤等を挙げることができる。
【0110】
密着促進剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0111】
酸化防止剤としては、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサ-スピロ[5.5]ウンデカン、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を挙げることができる。酸化防止剤の含有量としては、[A]フタロシアニン化合物100質量部に対して、通常0.01質量部以上10質量部以下とすることができる。
【0112】
紫外線吸収剤としては、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類等を挙げることができる。
【0113】
凝集防止剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0114】
残渣改善剤としては、マロン酸、アジピン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、4-アミノ-1,2-ブタンジオール等を挙げることができる。
【0115】
現像性改善剤としては、こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、フタル酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等剤等を挙げることができる。
【0116】
反応調整剤としては、多官能チオール等を挙げることができる。
【0117】
当該組成物(I)における全固形分に占める、上述した[A1]~[F]成分及びその他の有機色素以外の成分剤の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。一方、この含有量の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。
【0118】
(溶媒)
当該組成物(I)は、通常溶媒(分散媒)を含有する液状組成物として調製される。溶媒としては、他の成分を分散又は溶解し、かつこれらの成分と反応せず、適度の揮発性を有するものである限り、適宜に選択して使用することができる。
【0119】
このような溶媒としては、例えば
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、
乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類、
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール等の(シクロ)アルキルアルコール類、
ジアセトンアルコール等のケトアルコール類、
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類、
メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等の鎖状ケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン等のケトン類、
プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート等のジアセテート類、
3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート等のアルコキシカルボン酸エステル類、
酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、ぎ酸n-アミル、酢酸i-アミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類、
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド又はラクタム類
等を挙げることができる。
【0120】
当該組成物(I)における溶媒の含有量は、特に限定されるものではない。当該組成物(I)における固形分濃度(溶媒を除いた各成分の合計濃度)の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、この固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。固形分濃度を上記範囲とすることにより、分散性、安定性、塗布性等がより良好なものとなる。
【0121】
(調製方法)
当該組成物(I)の調製方法としては、特に限定されず、各成分を混合することによって調製することができる。例えば、当該組成物が、[C]赤外線遮蔽剤としての金属酸化物、及び[D]分散剤を含むものである場合、まず、[C]赤外線遮蔽剤、[D]分散剤及び溶媒を含有する分散液を調製し、この分散液に[A1]フタロシアニン化合物、[B]バインダー樹脂、及び必要に応じその他の成分を添加し、混合する方法を採用することができる。分散液又は当該組成物(I)は、必要に応じろ過処理を施し、凝集物を除去することができる。
【0122】
<光学センサー用組成物(II)>
本発明の一実施形態に係る光学センサー用組成物(II)(以下、単に「組成物(II)」とも称する。)は、[A2]フタロシアニン化合物を含有する。[A2]フタロシアニン化合物は、下記式(2)で表される化合物である。当該組成物(II)は、このような[A2]フタロシアニン化合物を含有するため、異物等の欠陥が少なく、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する良好な特性を有する光学フィルターを形成することができる。
【0123】
【化5】
【0124】
式(2)中、複数のRは、それぞれ独立して、置換基を有するアルキル基、又は置換基を有するアリール基である。複数のXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。複数のXは、互いに結合してこれらが結合する炭素鎖と共に芳香環を形成していてもよい。Mは、2つの水素原子、2価の金属原子、又は3若しくは4価の金属原子の誘導体である。複数のnは、それぞれ独立して、3~6の整数である。
【0125】
[A2]フタロシアニン化合物は、上記複数のRが、それぞれ独立して、置換基を有するアルキル基、又は置換基を有するアリール基であること以外は、上述した[A1]フタロシアニン化合物と同様である。[A2]フタロシアニン化合物の好ましい形態も、上述した[A1]フタロシアニン化合物と同様である。
【0126】
当該組成物(II)は、[A1]フタロシアニン化合物の代わりに[A2]フタロシアニン化合物を含有し、[B]バインダー樹脂を必須成分としないこと以外は、上述した組成物(I)と同様である。当該組成物(II)は、[B]バインダー樹脂を含有することが好ましい。その他、当該組成物(II)の具体的形態及び好適形態は、上述した組成物(I)と同様である。
【0127】
<赤外線遮蔽膜>
本発明の一実施形態に係る組成物(I)及び組成物(II)(以下、組成物(I)及び組成物(II)をまとめて単に「組成物」とも称する。)からは、光学フィルター用の赤外線遮蔽膜を形成することができる。この赤外線遮蔽膜は、異物等の欠陥が少なく、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する良好な特性を有する。
【0128】
当該赤外線遮蔽膜は、例えば以下の方法によって形成することができる。まず、支持体上に、当該組成物を塗布した後、プレベークを行って溶媒を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜を露光したのち、現像液を用いて現像して、塗膜の非露光部を溶解除去する。その後、ポストベークすることにより、所定形状にパターニングされた赤外線遮蔽膜(I)が得られる。なお、当該組成物が、[E]重合性化合物及び[F]重合開始剤を含有しない場合は、露光等の硬化処理を行わなくてもよい。また、現像処理を行わなくてもよく、この場合、パターニングされていない赤外線遮蔽膜を形成することができる。
【0129】
当該組成物を塗布する上記支持体としては、上記透明基板、マイクロレンズ、カラーフィルター等が相当する。上記塗布は、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法(スリット塗布法)、バー塗布法等の適宜の塗布法を採用することができる。
【0130】
上記プレベークにおける加熱乾燥の条件としては、例えば70℃以上110℃以下、1分以上10分以下程度である。
【0131】
塗膜の露光に用いる放射線の光源としては、例えばキセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、XeClエキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等を挙げることができる。露光光源として、紫外線LEDを使用することもできる。波長は、190nm以上450nm以下の範囲にある放射線が好ましい。放射線の露光量は、一般的には10J/m以上50,000J/m以下程度である。
【0132】
上記現像液としては、アルカリ現像液が一般的である。アルカリ現像液としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の水溶液が好ましい。アルカリ現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、現像後は、通常、水洗する。
【0133】
現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温で5秒以上300秒以下程度である。
【0134】
ポストベークの条件としては、通常180℃以上280℃以下、1分以上60分以下程度である。
【0135】
このようにして形成された赤外線遮蔽膜の平均膜厚の下限としては、通常0.5μmであり、1μmが好ましい。一方、この平均膜厚の上限としては、通常10μmであり、5μmが好ましい。赤外線遮蔽の平均膜厚が上記範囲であることによって、可視光透過性と赤外線遮蔽性とのバランスがより良好なものとなる。
【0136】
<光学フィルター>
本発明の一実施形態に係る組成物から形成される赤外線遮蔽膜は、光学フィルターに用いることができる。上記赤外線遮蔽膜を有する光学フィルターは、異物等の欠陥が少なく、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する良好な特性を有する。当該光学フィルターは、固体撮像素子等の光学センサーの光学フィルターとして用いられる。
【0137】
当該光学フィルターは、上記赤外線遮蔽膜のみからなるものであってもよいし、上記赤外線遮蔽膜と他の構成部材とからなるものであってもよい。例えば、当該光学フィルターは、上記赤外線遮蔽膜と他の層とを有する積層体であってもよい。
【0138】
当該赤外線遮蔽膜は、一構成部材として、固体撮像素子等の光学センサーに組み込まれているものであることが好ましい。この場合、当該赤外線遮蔽膜が、単体で光学フィルター(赤外線カットフィルター)として機能する。光学センサーに当該赤外線遮蔽膜が組み込まれていることで、大きなプロセスマージンを獲得することなどができ好ましい。当該赤外線遮蔽膜(が固体撮像素子に組み込まれている場合、当該赤外線遮蔽膜は、例えば固体撮像素子のマイクロレンズの外面側、マイクロレンズとカラーフィルターとの間、カラーフィルターとフォトダイオードとの間などに配することができる。当該赤外線遮蔽膜は、マイクロレンズとカラーフィルターとの間又はカラーフィルターとフォトダイオードとの間に積層されることが好ましい。
【0139】
上記光学フィルターとしては、透明基板の表面に当該赤外線遮蔽膜が積層されてなるものであってもよい。上記透明基板としては、ガラスや透明樹脂等が採用される。上記透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。このような光学フィルターも、固体撮像素子における赤外線カットフィルターなどとして好適に用いられる。
【0140】
上記光学フィルターを備える固体撮像素子等の光学センサーは、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器等に有用である。
【0141】
<光学センサー>
上記光学フィルターは、固体撮像素子等の光学センサーに用いられる。上記光学フィルターは異物等の欠陥が少なく、可視光透過性及び赤外線遮蔽性に関する良好な特性を有するため、当該光学フィルターを有する固体撮像素子等の光学センサーは、感度、色再現性等が高く、実用性に優れる。
【0142】
以下、光学センサーの一例として固体撮像素子について説明する。当該固体撮像素子は、一般的に、複数のフォトダイオードが配置される層、カラーフィルター、及びマイクロレンズがこの順に積層されてなる構造を有する。また、これらの層間には、平坦化層が設けられていてもよい。当該固体撮像素子においては、マイクロレンズ側から光が入射する。入射光は、マイクロレンズ及びカラーフィルターを透過し、フォトダイオードに到達する。なお、カラーフィルターについては、例えばR(赤)、G(緑)及びB(青)のフィルターのそれぞれにおいて、特定の波長範囲の光のみが透過するよう構成されている。
【0143】
当該固体撮像素子において、上記光学フィルター(赤外線遮蔽膜)は、上記マイクロレンズの外面側、上記マイクロレンズと上記カラーフィルターとの間、上記カラーフィルターと上記複数のフォトダイオードが配置される層との間などに設けられることができる。当該光学フィルターは、マイクロレンズとカラーフィルターとの間又はカラーフィルターとフォトダイオードとの間に積層されることが好ましい。なお、当該光学フィルターと、マイクロレンズ、カラーフィルター、フォトダイオード等との間には、さらに別の層(平坦化層等)が設けられていてもよい。
【0144】
当該固体撮像素子の具体例としては、カメラモジュールとしてのCCDやCMOSなどが挙げられる。当該固体撮像素子は、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器等に有用である。
【実施例
【0145】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0146】
<合成例1>フタロシアニン化合物(a-1)の合成
4,7-ビス(4-(2、6-ジメトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン32.9g、三塩化バナジウム4.76g、及びDBU13.74gを1-ペンタノール100mL中、内温125℃にて24時間撹拌した。その後、メタノール600mLを添加し、析出物をろ取し、乾燥した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン)で精製して緑色粉末11.2gを得た。得られた化合物は、下記の分析結果より目的の下記式(a-1)で表される化合物(a-1)であることを確認した。
・MS:(EI)m/z 2245M+)
・元素分析値:実測値(C:68.44%、H:6.44%、N:4.99%);
理論値(C:68.47%、H:6.46%、N:4.99%)
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は734.5nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は6.75×10mL/g・cmであった。
【0147】
【化6】
なお、上記式中、「*」は、結合手を示す(以下の化学式においても同様)。
【0148】
<合成例2>フタロシアニン化合物(a-2)の合成
合成例1における4,7-ビス(4-(2、6-ジメトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン32.9gの代わりに4,7-ビス(4-メトキシブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン18.6gを使用した以外は合成例1と同様にして緑色粉末14.5gを得た。得られた化合物は、下記の分析結果より目的の下記式(a-2)で表される化合物(a-2)であることを確認した。
・MS:(EI)m/z 1267M+)
・元素分析値:実測値(C:68.20%、H:7.66%、N:8.82%);
理論値(C:68.17%、H:7.63%、N:8.83%)
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は734.0nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は1.21×10mL/g・cmであった。
【0149】
【化7】
【0150】
<合成例3>フタロシアニン化合物(a-3)の合成
合成例1における4,7-ビス(4-(2、6-ジメトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン32.9gの代わりに4,7-ビス(4-(3-メトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン29.4gを使用した以外は合成例1と同様にして緑色粉末5.9gを得た。得られた化合物は、下記の分析結果より目的の下記式(a―3)で表される化合物(a-3)であることを確認した。
・MS:(EI)m/z 2003M+)
・元素分析値:実測値(C:71.85%、H:6.44%、N:5.57%);
理論値(C:71.87%、H:6.43%、N:5.59%)
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は735.5nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は7.40×10mL/g・cmであった。
【0151】
【化8】
【0152】
<合成例4>フタロシアニン化合物(a-4)の合成
合成例1における4,7-ビス(4-(2、6-ジメトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン32.9gの代わりに4,7-ビス(4-(2-フルオロフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン28.0gを使用した以外は合成例1と同様にして緑色粉末11.2gを得た。得られた化合物は、下記の分析結果より目的の下記式(a―4)で表される化合物(a-4)であることを確認した。
・MS:(EI)m/z 1908M+)
・元素分析値:実測値(C:70.49%、H:5.51%、N:5.85%);
理論値(C:70.47%、H:5.49%、N:5.87%)
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は735.5nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は7.89×10mL/g・cmであった。
【0153】
【化9】
【0154】
<合成例5>フタロシアニン化合物(a-5)の合成
合成例1における4,7-ビス(4-(2、6-ジメトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン32.9gの代わりに4,7-ビス(4-((1,6-ジメトキシナフタレン-2-イル)オキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン38.8gを使用した以外は合成例1と同様にして緑色粉末31.0gを得た。得られた化合物は、下記の分析結果より目的の下記式(a-5)で表される化合物(a-5)であることを確認した。
・MS:(EI)m/z 2645M+)
・元素分析値:実測値(C:72.62%、H:6.05%、N:4.30%);
理論値(C:72.63%、H:6.10%、N:4.23%)
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は735.5nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は5.85×10mL/g・cmであった。
【0155】
【化10】
【0156】
<合成例6>フタロシアニン化合物(a-6)の合成
合成例1における4,7-ビス(4-(2、6-ジメトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン32.9gの代わりに4,7-ビス(4-((1,6-ジメトキシナフタレン-2-イル)オキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン19.4gおよび4,7-ビス(4-(2,6-ジメトキシフェノキシ)ブチル)-1,3-ジイミノイソインドリン16.5gを使用した以外は合成例1と同様にして緑色粉末28.1gを得た。得られた化合物は、LC-MSにて各成分のm/zの一致より目的の下記式(a-6)で表される化合物(a-6)であることを確認した。
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は735.5nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は6.30×10mL/g・cmであった。
【0157】
【化11】
【0158】
なお、上記フタロシアニン化合物(a-1)~(a-6)は、いずれも上記式(1)で表されるフタロシアニン化合物である。
【0159】
<合成例7>フタロシアニン化合物(a’-1)の合成
特開平02-138382の実施例(65)の記載に沿って、下記式で表される比較例用のフタロシアニン(a’-1)(極大吸収波長725nm)を合成した。
【0160】
【化12】
【0161】
<合成例8>フタロシアニン化合物(a’-2)の合成
特開2016-204536号公報の段落[0075](実施例4)に記載の方法を用いて、下記式で表される比較例用のフタロシアニン化合物(a’-2)(極大吸収波長728nm)を合成した。
【0162】
【化13】
【0163】
<合成例9>フタロシアニン化合物(a’-3)の合成
特開平05-25177の段落[0020]~[0025](実施例1)に記載の方法を用いて、下記式で表されるその他色素用のフタロシアニン化合物(a’-3)(極大吸収波長692nm)を合成した。
【0164】
【化14】
【0165】
<合成例10>セシウム酸化タングステン粉末の合成
特許第4096205号公報の段落[0113]に記載の方法を用いて、セシウム酸化タングステン(Cs0.33WO)粉末を合成した。
【0166】
<合成例11>バインダー樹脂(b-1)の合成
反応容器に、ベンジルメタクリレート14質量部、スチレン10質量部、N-フェニルマレイミド12質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート29質量部及びメタクリル酸20質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部に溶解し、更に2,2’-アゾイソブチロニトリル3質量部及びα-メチルスチレンダイマー5質量部を投入した。反応容器内を窒素パージ後、攪拌及び窒素バブリングしながら80℃で5時間加熱し、バインダー樹脂(b-1)を含む溶液(バインダー樹脂溶液(B-1):固形分濃度35質量%)を得た。得られたバインダー樹脂(b-1)について、昭和電工社ゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-104型、カラム:昭和電工社製LF-604を3本とKF-602を結合したもの、展開溶剤:テトラヒドロフラン)を用いて、ポリスチレン換算の分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が9700、数平均分子量(Mn)が5700であり、Mw/Mnが1.70であった。なお、本合成例において、各単量体の仕込比(質量比)と、得られたバインダー樹脂における各単量体に由来する構造単位の含有量比(質量比)とは、実質的に同じとみなすことができる(以下の合成例14においても同様である)。
【0167】
<合成例12>バインダー樹脂(b-2)の合成
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を仕込み、温度を80℃に上昇した。同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテル100質量部、メタクリル酸100質量部、及び2,2’-アゾイソブチロニトリル5質量部の混合溶液を3時間かけて滴下し、滴下後に温度を保持して3時間重合した。その後、反応溶液の温度を100~120℃に昇温させ、さらに2時間反応を行った。冷却後、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート116質量部、及び触媒量のジメチルベンジルアミンを投入し、110℃に昇温させて9時間反応することで、下記式で表されるバインダー樹脂(b-2)を含む溶液(バインダー樹脂溶液(B-2):固形分濃度40質量%)を得た。得られたバインダー樹脂について合成例11と同様に分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が15100、数平均分子量(Mn)が7000であり、Mw/Mnが2.16であった。
【0168】
【化15】
(上記式において、組成比は質量比である。)
【0169】
<合成例13>バインダー樹脂(b-3)の合成
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を仕込み、温度を80℃に上昇した。同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部、メタクリル酸67質量部、N-シクロヘキシルマレイミド33質量部、及び2,2’-アゾイソブチロニトリル5質量部の混合溶液を3時間かけて滴下し、滴下後に温度を保持して3時間重合した。その後、反応溶液の温度を100~120℃に昇温させ、さらに3時間反応を行った。冷却後、プロピレングリコールモノメチルエーテル28質量部、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート119質量部、及び触媒量のジメチルベンジルアミンを投入し、110℃に昇温させて30時間反応することで、下記式で表されるバインダー樹脂(b-3)を含む溶液(バインダー樹脂溶液(B-3):固形分濃度40質量%)を得た。得られたバインダー樹脂について合成例11と同様に分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が17000、数平均分子量(Mn)が7700であり、Mw/Mnが2.21であった。
【0170】
【化16】
(上記式において、組成比は質量比である。)
【0171】
<合成例14>バインダー樹脂(b-4)の合成
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2-アゾビスイソブチロニトリル5質量部、3-メトキシプロピオン酸メチル140質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル60質量部を仕込み、さらにメタクリル酸グリシジル32質量部、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン40質量部、ベンジルメタクリレート11質量部、n-ブチルメタクリレート3質量部及びメタクリル酸14質量部を仕込んで窒素置換した後、緩やかに撹拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇した。この温度で5時間保持して重合することにより、バインダー樹脂(b-4)を含む溶液(以下バインダー樹脂溶液(B-4)固形分濃度35質量%)を得た。得られたバインダー樹脂について、合成例11と同様に分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が9500、数平均分子量(Mn)が5800であり、Mw/Mnが1.64であった。
【0172】
<合成例15>分散剤(d-2)
文献(Macromolecules 1992,25,p5907-5913)に記載の方法を用いて、ジメチルアミノエチルメタクリレート45質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート20質量部、n-ブチルメタクリレート5質量部、PME-200(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、及びCH=C(CH)COO(CO)-CH(n≒4)で表されるモノマーの重合体)30質量部を一括で重合し、ランダム共重合体を含む反応溶液を得た。続いて、反応溶液をメタノールを用いてクエンチを行い、得られた反応溶液を7質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで水にて洗浄した。この後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶媒置換を行うことで、分散剤(d-2)を含む分散剤溶液(D-2)を収率80質量%で得た。得られた分散剤(d-2)のアミン価は160mgKOH/g、Mwは9500、Mw/Mnは1.21、分散剤溶液(D-2)の固形分量は39.6質量%であった。
【0173】
[調製例1]分散液(C-1)の調製
上記セシウム酸化タングステン25.00質量部、分散剤(d-1)としてのビックケミー社の「BYK-LPN6919」(固形分濃度60質量%、アミン価120mgKOH/g)13.30質量部、及び溶媒(分散媒)としてのシクロペンタノン(CPN)61.70質量部を用意した。これらを0.1mm径のジルコニアビーズ2000質量部と共に容器に充填し、ペイントシェーカーで分散を行うことで、平均粒子径(D50)が19nmの分散液(C-1)を得た。なお、平均粒子径は、光散乱測定装置(ドイツALV社の「ALV-5000」)を用いて、DLS法により測定した。
【0174】
[調製例2]分散液(C-2)の調製
分散剤溶液(D-2)を20.20質量部、溶媒をCPN54.80質量部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、平均粒子径が19nmの分散液(C-2)を得た。
【0175】
[調製例3]色素溶液(A-1)~(A-9)の調製
フタロシアニン化合物(a-1)5.00質量部、及び溶媒としてCPN95.00質量部を容器に量り取り、攪拌機で混合した。得られた溶液を0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを用いて0.05MPaの一定加圧条件で加圧ろ過することで、色素溶液(A-1)を得た。また、フタロシアニン化合物としてフタロシアニン化合物(a-2)~(a-6)、(a-8)及び(a-9)をそれぞれ用いたこと以外は上記と同様の方法で表1に記載の各色素溶液(A-2)~(A-6)、(A-8)及び(A-9)を得た。
色素溶液(A-7)に関しては、フタロシアニン化合物(a-1)4.50質量部、フタロシアニン化合物(a’-3)1.20質量部及び溶媒としてCPN94.30質量部を用いたこと以外は同様にして調製した。
【0176】
[実施例1]
上記分散液(C-1)20.00質量部、色素溶液(A-1)23.15質量部、バインダー樹脂溶液(B-1)21.01質量部、重合性化合物として日本化薬社の「KAYARAD DPHA」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)8.14質量部、重合開始剤としてADEKA社の「NCI-930」(O-アシルオキシム系化合物)1.53質量部、界面活性剤としてネオス社の「FTX-218D」(フッ素系界面活性剤)0.05質量部、反応調整剤として昭和電工社の「カレンズMT PE1」(多官能チオール)0.31質量部、酸化防止剤としてBASF社の「Irganox1010」(フェノール系酸化防止剤)0.10質量部、及び溶媒としてシクロペンタノン(CNP)25.71質量部を容器に量り取り、攪拌機で混合した。この混合物約100mLを0.5μmのPTFE製フィルターを用いて0.05MPaの一定加圧条件で加圧ろ過することにより、実施例1の組成物を得た。
【0177】
[実施例2~13、比較例1~3]
分散液、色素溶液及びバインダー樹脂溶液の種類及び配合量(質量部)、並びに重合性化合物、重合開始剤、界面活性剤、反応調整剤、酸化防止剤及び溶媒の配合量(質量部)を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~13及び比較例1~3の各組成物を得た。なお、表1には、得られた各組成物における[A]フタロシアニン化合物、[B]バインダー樹脂、[C]赤外線遮蔽剤、[D]分散剤及びその他色素の種類及び固形分中の含有量も示す。表1中の「CsWO」は、合成例10で得られたセシウム酸化タングステン(Cs0.33WO)を表す。
【0178】
[評価]
得られた各組成物を用い、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0179】
各組成物をガラス基板上に所定の膜厚になるようにスピンコート法にて塗布した。その後、塗膜を100℃で120秒間加熱し、i線ステッパにて500mJ/cmとなるように露光を行った。次いで220℃で300秒間加熱することで、ガラス基板上に平均膜厚2.0~4.0μmの赤外線遮蔽膜を作製した。各平均膜厚は表1に示す。なお、膜厚は触針式段差計(ヤマト科学社の「アルファステップIQ」)にて測定した。次に、上記ガラス基板上に作製した赤外線遮蔽膜の各波長領域における透過率を、分光光度計(日本分光社の「V-7300」)を用いて、ガラス基板対比で測定した。得られたスペクトルより、以下のような評価基準により評価を行った。
【0180】
(可視光透過性)
430-580nmの平均透過率を算出した。平均透過率が70%未満の場合は赤外線遮蔽膜として使用した際の感度が低下する。また、上記平均透過率について、以下の基準で評価した。
A:80%以上
B:70%以上80%未満
C:70%未満
【0181】
(可視透過窓範囲)
430-580nmの範囲における透過率が、連続で70%以上となる範囲を求めた。連続で70%以上となる範囲が175nm以上の場合は赤外線遮蔽膜として使用した際に、高い感度を有するため実用性が高いと推定される。また、上記可視透過窓範囲については、以下の基準で評価した。
A:200nm以上
B:175nm以上200nm未満
C:175nm未満
【0182】
(赤外線遮蔽範囲)
700-800nmの範囲における透過率が、連続で20%以下となる範囲を求めた。連続で20%以下となる範囲が20nm以上の場合は赤外線遮蔽膜として使用した際に、高いノイズ遮蔽機能を有するため実用性が高いと推定される。また、上記赤外線遮蔽範囲について、以下の基準で評価した。
A:30nm以上
B:20nm以上30nm未満
C:20nm未満
【0183】
(平均Off-Slope)
500-750nmの範囲で、透過率が80%以上になる最も長い波長を(X)、透過率が20%以下になる最も短い波長を(Y)とし、平均Off-Slope(Z)を以下の式で算出した。平均Off-Slopeは0.45以上の場合は赤外線遮蔽膜として使用した際に、得られる画像の色再現性、ノイズ遮蔽機能を高めることが可能となり、実用性が高いと推定される。また、上記平均Off-Slopeについて、以下の基準で評価した。
(Z)=60/((Y)-(X))
AA:0.60以上
A:0.50以上0.60未満
B:0.45以上0.50未満
C:0.45未満
【0184】
(耐熱性)
上記ガラス基板上に作製した赤外線遮蔽膜について、ホットプレートを用いて260℃で300秒間加熱し、加熱前後の各波長領域における透過率を、分光光度計(日本分光社の「V-7300」)を用いて、ガラス基板対比で測定した。この時、作製した赤外線遮蔽膜の700-800nmの範囲で透過率が最も低くなる波長での吸光度を(A1)、同波長における260℃の加熱後の吸光度を(A2)、吸光度保持率=100×(A1)/(A2)として、以下の基準で260℃の耐熱性を評価した。保持率が30%以上の場合は、赤外線遮蔽膜として使用した際に、保護膜等と併用することで高い耐熱性を維持することが可能となり、実用性が高いと推定される。また、上記保持率について、以下の基準で評価した。
AA:90%以上
A:60%以上90%未満
B:30%以上60%未満
C:30%未満
【0185】
(欠陥抑制性)
各組成物をシリコン基板上にスピンコート法により塗布し、この塗膜を硬化させ、膜厚が約1μmの硬化膜を形成した。欠陥/異物検査装置(KLA-Tencor社の「KLA 2351」)を用いて、硬化膜の欠陥密度(Defect density)を測定した。この欠陥密度の値が小さいほど、欠陥抑制性が高いと判断できる。なお、欠陥とは、サイズが1μm以上となる検出点をさす。上記欠陥密度に基づき、以下の基準で欠陥抑制性を評価した。
A:10/cm以下
B:10/cm超50/cm以下
C:50/cm
【0186】
(PCD安定性)
各組成物をシリコン基板上にスピンコート法により塗布し、この塗膜を硬化させない状態で、膜厚が約1μmの塗布膜を形成した。欠陥/異物検査装置(KLA-Tencor社の「KLA 2351」)を用いて、塗布膜の欠陥密度(Defect density)を測定した。続いて、一定時間置きに塗布膜の欠陥密度を測定し、初期値に対して欠陥数が20%以上増加した時間を計測し、以下の基準で塗膜後の塗布後引き置き(PCD:Post Coating Delay)安定性を評価した。PCD安定性は、値が大きいほど実用性が高いと推定される。
A:24時間以上
B:12時間以上24時間未満
C:12時間未満
【0187】
【表1】
【0188】
上記表1に示されるように、実施例1~13のいずれも、可視光透過性、可視光透過窓範囲、赤外線遮蔽範囲、平均Off-Slope、耐熱性、欠陥抑制性、及びPCD安定性の評価が良好であった。なお、上記式(1)で表されるフタロシアニン化合物を用いた各実施例のうち、Rが置換基を有するフタロシアニン化合物(a-1、a-3~a-6)を用いた実施例1、3~6は、Rが置換基を有さないフタロシアニン化合物(a-2)を用いた実施例2と比較して高い耐熱性を有することが分かる。また、Rが置換基を有するフタロシアニン化合物を用いた上記実施例のうち、実施例1、3及び4は可視光透過性も良好であることもわかる。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明の光学センサー用組成物は、固体撮像素子等の光学センサーの光学フィルターの形成材料として好適に用いることができる。